説明

光学素子の製造方法

【課題】配向性が良好な液晶分子を含む光学素子を製造可能な光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】基板に液晶分子を含む液晶インクを塗布し、基板上で液晶分子を配向させるステップ、液晶インクを塗布された基板の裏面に気体を吹き付けて基板を浮上させ、基板を搬送するステップ、及び搬送された基板上の液晶分子を固定するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学部材に関し、特に光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は薄型化や軽量化が容易であり、消費電力も低減可能であり、フリッカーも生じにくいため、テレビや医療機器等に幅広く使用されている。しかし視聴者に対する液晶表示画面の角度によっては、液晶セルからの光漏れや階調反転現象が生じ、視野角が狭くなる、色むらが発生する、あるいはコントラストが低下する等の問題があった。これに対し、液晶セルへの入射光及び液晶セルからの放出光の状態を制御する光学素子を液晶表示装置に設ける手法が提案されている。光を制御する光学素子としては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを1軸延伸又は2軸延伸処理した位相差フィルム、あるいは配向された液晶分子を含む液晶層が積層されたガラス基板等が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。従来、液晶層を製造する際には、ガラス基板上に液晶分子を塗布して液晶分子を配向させ、その後、ガラス基板を搬送ローラ又は搬送ベルト等によって紫外線照射装置等に搬送し、液晶分子を重合させていた。しかし、従来の製造方法で製造される液晶層においては、重合した液晶分子の配向性が不均一であるという問題があった。
【特許文献1】特開平5-142531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、配向性が良好な液晶分子を含む光学素子を製造可能な光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の特徴は、(イ)基板に液晶分子を含む液晶インクを塗布し、基板上で液晶分子を配向させるステップと、(ロ)液晶インクを塗布された基板の裏面に気体を吹き付けて基板を浮上させ、基板を搬送するステップと、(ハ)搬送された基板上の液晶分子を固定するステップとを含む光学素子の製造方法であることを要旨とする。
【0005】
本発明の第2の特徴は、(イ)基板に液晶分子を含む液晶インクを塗布し、基板上で液晶分子を配向させるステップと、(ロ)液晶インクを塗布された基板の外周のみを固体で保持して基板を搬送するステップと、(ハ)搬送された基板上の液晶分子を固定するステップとを含む光学素子の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、配向性が良好な液晶分子を含む光学素子を製造可能な光学素子の製造方法を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0008】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る光学素子は、図1に示すように、光透過性の基板2、基板2上に配置された配向膜3、及び配向膜3上に配置された複屈折層4を備える。基板2は単層であっても、多層膜であってもよい。基板2は光学的に等方性であることが好ましい。ただし基板2に光学的に異方性の領域や、遮光性の領域を局所的に設けてもよい。
【0009】
基板2としてはガラス基板が使用可能である。あるいはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース等からなるプラスチック基板も基板2として使用可能である。またポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン等のフィルムも基板2として使用可能である。フィルムは、1軸延伸フィルム及び2軸延伸フィルムが使用可能である。また内部にリタデーションを有するトリアセチルセルロース(TAC)フィルム等を使用してもよい。なお実施の形態に係る光学素子が液晶表示装置に用いる場合、基板2として無アルカリガラスを用いることが好ましい。
【0010】
配向膜3には、水平配向膜や垂直配向膜などを用いることができる。水平配向膜の作成は、配向膜をなす樹脂膜を構成する樹脂材料を調整し、樹脂材料を基板2上に塗布して水平配向膜形成用塗膜を形成し固化した後、水平配向膜形成用塗膜の表面をラビング処理や光配向処理を適宜施すことによって水平配向膜形成用塗膜を配向膜となすことにより、具体的に実現することができる。
【0011】
配向膜3の表面には、平行に延伸する複数の微細な溝がラビング処理等により設けられている。配向膜3はポリイミド、ポリアミド、及びポリビニルアルコール等の光学的に等方性である透明材料からなる。
【0012】
複屈折層4は、厚み方向に内部を透過する光を複屈折させる。ここで複屈折層4の厚み方向をz軸とし、複屈折層4表面とz軸との交点を原点として互いに直交する方向をx軸及びy軸とする。この場合、x軸方向の屈折率をnx、y軸方向の屈折率をny、z軸方向の屈折率をnzとする。複屈折層4においては、屈折率nx、ny、nzのいずれか一つの屈折率が、他の屈折率よりも大きいか又は小さい。屈折率がnx>ny=nz又はny>nx=nzの関係を満たす場合、複屈折層4は「+Aプレート(正のAプレート)」として機能する。複屈折Δnは好ましくは0.03〜0.20であり、さらに好ましくは0.05〜0.15である。
【0013】
複屈折層4において、個々の分子構造に応じた光軸を有し、複屈折特性を有する液晶分子が配向されている。液晶分子としては、分子構造中に不飽和2重結合等の重合性官能基を有するものが好ましく、液晶相の状態で架橋重合可能な重合性液晶分子が好ましい。重合性液晶分子としては分子の末端に不飽和2重結合を有するものが好ましい。さらに液晶分子としては、耐熱性の点から3次元に重合可能であり、分子の末端に不飽和2重結合を2以上有するものが好ましい。複屈折層4において、重合性液晶分子の架橋度は80以上であることが好ましく、90以上であることがさらに好ましい。重合性液晶分子の架橋度を80以上とすることにより、均一な配向性を効果的に維持することが可能となる。なお「架橋度」とは、重合性液晶分子の重合性官能基の総数を100とした場合、架橋重合反応した重合性官能基の数を示す。なお液晶分子として、重合性液晶分子のモノマー、オリゴマー、ポリマー等を単一種類又は複数種類用いてもよい。
【0014】
具体的には、ネマチック液晶相を形成可能な液晶分子として下記化学式(I)〜(XI)で与えられる化合物、及びそれらの組み合わせが使用可能である。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0015】
上記(XI)式において、jは4〜6の整数である。なおスメクチック液晶相を形成可能な液晶分子を用いてもよい。
【0016】
次に第1の実施の形態に係る光学素子の製造方法について説明する。
【0017】
(a) 石英ガラス等からなる基板2上にポリイミド等をフレキソ印刷法又はスピンコート法等を用いて塗布し、塗布されたポリイミドを硬化させて基板2上に配向膜3を形成する。次にレーヨン、綿、ポリアミド、又はポリメチルメタクリレート等からなるラビング布を金属製の棒に巻き付けたラビング処理ロールを用意する。次にラビング処理ロールを配向膜3表面で回転させ、配向膜3の表面に複数の微細な溝を平行に形成する。なおラビング処理ロールを固定し、基板2を搬送することによって、配向膜3の表面に複数の微細な溝を形成してもよい。
【0018】
(b) 化学式(I)〜(XI)に示した棒状構造の液晶分子、光重合開始剤、及び増感剤等を含有する液晶インクを調整する。次に液晶インクを配向膜3上に塗布し、液晶分子が液晶相を形成する温度よりも高く、液晶分子が等方相(液体相)を形成する温度よりも低い温度で液晶インクを乾燥させることによって、図2に示すように配向膜3上に塗布膜104を形成する。塗布膜104において、液晶分子は配向膜3表面に設けられた複数の溝に沿って配向する。なお液晶インクの乾燥は、赤外線照射装置で行ってもよいし、ホットプレート等の加熱装置で行ってもよい。
【0019】
(c) 図3に示すように、表面に複数の気体噴き出し口が設けられたエアシャワー装置50から基板2の裏面102に向けて気体を吹きつけて基板2を浮上させ、基板2を硬化装置に非接触で搬送する。その後、硬化装置で塗布膜104に紫外線(UV)等の光重合開始剤の感光波長の光を照射することによって液晶分子を光重合反応させ、配向膜3上に硬化した複屈折層4を形成し、第1の実施の形態に係る光学素子を得る。なお塗布膜104に照射する光は、単色光に限らず、感光波長を含む広波長帯域の光でもよい。また光重合反応後に、焼成することで塗布膜104をさらに硬化させて複屈折層4を形成してもよい。また、液晶化温度が熱硬化温度より高い液晶を用いて、焼成することで、塗布膜104を硬化させて複屈折層4を形成してもよい。
【0020】
従来、塗布膜104が形成された基板2は、例えば図4に示すように、複数のゴムローラ150A, 150B, 150C…を用いて硬化装置に搬送されていた。しかし塗布膜104中の液晶分子は誘電率異方性を有し、電圧を加えられると配向が変化する。そのため図5に示すように配向膜3で規定された配向方向に沿って配向していた塗布膜104中の液晶分子90が、図4に示す基板2と複数のゴムローラ150A, 150B, 150C…との摩擦による静電気によって、図6に示すように、電界方向に沿って配向されることがあった。したがって従来の製造方法によれば、塗布膜104中の重合前の液晶分子の配向が乱れることがあった。
【0021】
これに対し、第1の実施の形態に係る光学素子の製造方法によれば、図2に示す塗布膜104を乾燥させる装置から、液晶分子を重合させる装置までの搬送が、非接触で実施される。そのため、基板2に摩擦による静電気が生じず、重合前の液晶分子の配向が乱れることを防止することが可能となる。また第1の実施の形態に係る光学素子の製造方法で製造された光学素子は液晶分子の配向性が良好であるため、位相差を良好に制御することが可能となる。したがって光学素子を液晶装置に組み込むことにより、効果的に光漏れを低減することが可能となり、液晶装置の視野角を拡大し、コントラストを向上させ、色むらを低減させることが可能となる。さらに重合性官能基を有する液晶分子を重合させることにより、耐熱性が上昇する。したがって、カーナビゲーションシステムのような高温環境下での使用にも耐えうる。
【0022】
なお図3に示すエアシャワー装置50から基板2の裏面102に向けて吹き付ける気体としては、空気又は窒素等が使用可能である。また気体はフィルタ処理等されていることが好ましい。また気体が帯電していると基板2も帯電し、塗布膜104中に電位分布が生じて液晶分子の配向も乱れる場合がある。したがって、基板2の裏面102に吹き付ける前に、気体を除電しておくことが好ましい。さらに塗布膜104中に温度分布が生じても、液晶分子の配向が乱れる。そのため基板2の裏面102に向けて吹き付ける気体には温度分布がなく、周囲の環境温度と同じ温度であることが好ましい。さらに、基板2上に塗布膜104を乾燥させる工程も、基板2の裏面102に気体を吹き付けて基板2を非接触で浮上させた状態で行ってもよい。
【0023】
配向膜3の形成に用いるポリイミドを含む溶液としては、水平配向膜としては、日産化学社製のサンエバーシリーズ又はJSR社製のAL-1254等が使用可能である。垂直配向膜組成液としてはポリイミドを含む溶液が挙げられる。そのようなポリイミドを含む垂直配向膜組成液としては、具体的には、日産化学社製のSE−7511やSE−1211、あるいはJSR社製のJALS−2021−R2やJALS−688等を挙げることができる。また配向膜3の膜厚は、0.01〜1μmが好ましい。0.01μmよりも薄いと、液晶分子の配向が不良となる場合がある。1μmよりも厚いと、光学素子の透過率の低下の原因となる場合がある。
【0024】
また第1の実施の形態に係る光学素子の製造方法に用いる光重合開始剤としては、例えばベンジル(もしくはビベンゾイル)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4'メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオサントン等が使用可能である。
【0025】
液晶インクが光重合開始剤を含む場合、光重合開始剤の配合量は0.01〜10重量%である。なお光重合開始剤の配合量は、液晶分子の配向性を損なわないために、好ましくは0.1〜7重量%であり、より好ましくは0.5〜5重量%である。液晶インクが増感剤を含む場合、増感剤の配合量は液晶分子の配向を大きく損なわない範囲で適宜選択でき、具体的には0.01〜1重量%である。光重合開始剤及び増感剤は、それぞれ1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0026】
液晶インクを塗布する際には、グラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、静電印刷法、及び無版印刷法等の印刷方法、あるいはグラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、バーコート法、ディップコート法、キスコート法、スプレーコート法、ダイコート法、コンマコート法、インクジェット法、スピンコート法、スリットコート法、及びスライドコート法等の塗工方法、あるいはこれらを組み合わせた方法が使用可能である。塗布された液晶インクの乾燥は、減圧環境下で行われてもよいし、大気圧環境下で行われてもよい。また乾燥中に、所定の方向に電場又は磁場を加えて、液晶分子の配向性を向上させてもよい。また各種印刷法又はフォトリソグラフィ法等を用いて、複屈折層4をパターニングしてもよい。
【0027】
空気雰囲気下での液晶分子の架橋重合反応は、液晶分子が液晶相から等方相へ相転移する温度よりも1〜10℃、好ましくは3〜6℃低い温度に塗布膜を加熱しながら行うと、液晶分子の配向の乱れを低減することが可能となる。空気雰囲気下のみならず、不活性ガス雰囲気下で液晶分子を架橋重合反応させてもよい。不活性ガス雰囲気下で液晶分子を架橋重合反応させる場合、塗布膜の加熱を省略してもよく、あるいは液晶分子が液晶相を形成する温度まで加熱してもよい。さらに複屈折層4を形成した後、オーブン等の焼成装置を用いて、光学素子を空気雰囲気の大気圧下で焼成してもよい。焼成温度は200〜250℃、配向性を保つために好ましくは220〜230℃であり、焼成時間は30〜150分である。
【0028】
(第1の実施の形態の実施例)
(a) まず、ネマチック液晶相を形成可能な上記化学式(XI)で示された22重量部の重合性液晶分子、1.3重量部の光重合開始剤(チバガイギー社製、Irg907)、及び75重量部のクロロベンゼンを混合し、液晶インクを作成した。次に洗浄処理をしたガラス基板(コーニング社製、7059ガラス)の表面に、ポリイミド含有液(JSR社製、AL-1254)をフレキソ印刷を用いて塗工し、200℃で1時間焼成した後、ラビング処理を施して配向膜を形成した。その後、配向膜上に液晶インクをスピンコートし、塗布膜を形成した。
【0029】
(b) 基板をホットプレートに配置し、80℃で3分間加熱することにより、塗布膜に含まれる溶媒のクロロベンゼンを蒸発させ、塗布膜を液晶相に転移させた。相転移は、塗布膜が白濁から透明に変化したことにより確認された。次に基板の裏面に気体を吹き付けて、基板を非接触により紫外線照射装置に搬送した。
【0030】
(c) 紫外線照射装置において、塗布膜に波長362nmの紫外線を50mW/cm2の出力で4秒間照射することにより、液晶分子を架橋重合反応させて配向状態を固定して配向膜上に複屈折層を形成し、実施例に係る光学素子を得た。さらに光学素子を230℃で30分間焼成した。焼成後の複屈折層の膜厚は約1.0μmであった。
【0031】
以上示した工程で得られた実施例に係る光学素子を、クロスニコルに配置された2枚の偏光板の間に配置した。一方の偏光板の側から光を垂直に照射し、光学素子の厚み方向を光の進行方向と平行に保ちながら光学素子を回転させた。すると、2枚の偏光板を通過した光の光量は光学素子の回転によって変化するものの、面内における光量の分布は均一であった。また複屈折層の光軸が偏光板の光軸と一致した場合、光は均一に遮蔽された。したがって、塗布膜を塗布された基板を非接触に運搬することにより、複屈折層における液晶分子の配向に乱れが生じなかったことが示された。
【0032】
(第1の実施の形態の比較例)
基板の裏面に接触するシリコンゴム製の搬送ローラで基板を搬送した他は、実施例と同様の方法で比較例に係る光学素子を製造した。次に、比較例に係る光学素子をクロスニコルに配置された2枚の偏光板の間に配置した。この時、実施例と同様に光学素子を回転させても、2枚の偏光板を通過した光の光量の面内分布は不均一であり、ムラがあった。また複屈折層の光軸と偏光板の光軸を一致させても、光は均一に遮蔽されず、光漏れが観察された。よって、基板の裏面と搬送ローラとの接触によって静電気が生じ、複屈折層における液晶分の配向が乱されたことが示された。
【0033】
(第1の実施の形態の第1の変形例)
第1の実施の形態の第1の変形例に係る光学素子の製造方法においては、図7に示すように、塗布膜104が形成された基板2の外周の側面112のみを搬送ローラ250等の固体で保持して、基板2を傾斜した状態で硬化装置に搬送する。側面112に固体が接触しても、裏面102に固体が接触しなければ、塗布膜104中の液晶分子の配向は乱されない。また基板2が撓む場合は、図8に示すように、エアシャワー装置50で基板2の裏面102に空気を吹き付けながら、搬送ローラ250等の固体で基板2を搬送してもよい。
【0034】
(第1の実施の形態の第2の変形例)
第1の実施の形態の第1の変形例に係る光学素子の製造方法においては、図9に示すように、塗布膜104が形成された基板2の裏面102の外周のみを搬送ハンド350A, 350B等の固体で保持して、硬化装置に搬送する。裏面102の外周に固体が接触しても、裏面102の中心付近に固体が接触しなければ、塗布膜104中の液晶分子の配向は外周近傍以外では乱されない。また基板2が撓む場合は、図10に示すように、エアシャワー装置50で基板2の裏面102に空気を吹き付けながら、搬送ハンド350A, 350B等の固体で基板2を搬送してもよい。
【0035】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態においては、複屈折層4が「+Aプレート(正のAプレート)」として機能する例を示した。これに対し図11に示す第2の実施の形態に係る光学素子においては、複屈折層24において屈折率がnx=ny>nzの関係を満たし、複屈折層24が「-Cプレート(負のCプレート)」として機能する。
【0036】
次に第2の実施の形態に係る光学素子の製造方法について説明する。まず、化学式(I)〜(XI)に示した棒状構造の液晶分子、液晶分子でコレステリック液晶相を形成するためのカイラル剤、及び光重合開始剤等を含有する液晶インクを調整する。次に液晶インクを基板2上に塗布し、基板2上に塗布膜を形成する。カイラル剤により、光軸がz軸と平行になるよう、液晶分子は配向される。なお液晶インクを基板2上に塗布する前に、紫外線洗浄又はプラズマ処理等の表面処理を基板2に施し、基板2の濡れ性を高めてもよい。ただし表面処理は、液晶分子の配向性に影響を及ぼさないように制御される。
【0037】
カイラル剤は、ネマチック液晶相を形成可能な重合性液晶分子の液晶性を損なうことなく、液晶分子を螺旋状に配向させてコレステリック液晶相を形成する。カイラル剤はキラリティを有する。カイラル剤としては、少なくとも1以上の不斉炭素原子を有する分子量1500mol以下の、例えば下記化学式(XII)〜(XIV)に示す低分子化合物が使用可能である。
【化12】

【化13】

【化14】

【0038】
なお、化学式(XII)、(XIII)に含まれるY, Rはそれぞれ任意の原子である。また化学式(XII), (XIII), (XIV)に含まれるc, d, eはそれぞれ任意の整数である。
【0039】
またカイラル剤には、アミン又はスルフォキシド等のヘテロ原子が不斉源である化合物、あるいはクムレン又はビナフトール等のヘテロ原子が不斉源である化合物等も使用可能である。なおカイラル剤により液晶分子が近紫外線領域に螺旋ピッチをとると、選択反射現象により特定色の反射が生じる。したがって、特定色の反射が生じないように、カイラル剤は選択反射波長が紫外領域となるように添加される。
【0040】
基板2に液晶インクが塗布された後、液晶インクは液晶分子が液晶相を形成する温度よりも高く、液晶分子が等方相(液体相)を形成する温度よりも低い温度で乾燥され、第1の実施の形態と同様に図3に示したように基板2は非接触で硬化装置に搬送される。以後の工程は第1の実施の形態と同様である。そのため、第2の実施の形態においても、液晶分子の配向性が良好な光学素子を製造可能となる。なお第2の実施の形態においても、図7乃至図10に示した方法のいずれかによって基板2を搬送してもよいことは勿論である。
【0041】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態においては、複屈折層4が「+Aプレート(正のAプレート)」として機能する例を示した。これに対し第3の実施の形態に係る光学素子においては、複屈折層において液晶分子の長軸方向が基板表面に対して垂直となるよう、液晶分子がホメオトロピック配向している。そのため複屈折層において屈折率がnx=ny<nzの関係を満たし、複屈折層が「+Cプレート(正のCプレート)」として機能する。第3の実施の形態に係る光学素子の図面は図11と同様であるので、省略する。
【0042】
複屈折層における液晶分子の配向性が優れているか否か、複屈折層の光学特性が優れているか否かについては、複屈折層におけるリタデーションが指標となる。ここでリタデーションとは、複屈折層を通る光線の内、偏光方向を異にする二つの光線間の位相差である。ここで、常光線に対する屈折率をn0、異常光線に対する屈折率をneとすると、複屈折層の複屈折性Δnは下記(1)式で与えられる。
【0043】
Δn = n0 - ne …(1)
複屈折層の膜厚をdとすると、複屈折層のリタデーションRは下記(2)式で与えられる。
【0044】
R = Δn×d …(2)
複屈折層における液晶分子の種類、液晶分子の配向の程度、及び複屈折層の膜厚d等を適宜選択することにより、リタデーションを制御可能である。液晶分子が均一にホメオトロピック配向すると、厚み方向のリタデーションは小さくなる。厚み方向のリタデーションは好ましくは1nm以下であり、より好ましくは0.1nm以下であり、理想的には0nmである。
【0045】
次に第3の実施の形態に係る光学素子の製造方法について説明する。まず、化学式(I)〜(XI)に示した棒状構造の液晶分子、液晶分子をz軸と平行に配向させる配向助剤等を含む添加剤、及び光重合開始剤等を含有する液晶インクを調整する。次に液晶インクを基板2上に塗布し、基板2上に塗布膜を形成する。なお液晶インクを基板2上に塗布する前に、紫外線洗浄又はプラズマ処理等の表面処理を基板2に施し、基板2の濡れ性を高めてもよい。ただし表面処理は、液晶分子の配向性に影響を及ぼさないように制御される。次に、塗布膜を減圧状態で乾燥させることにより、塗布膜中の液晶分子をホメオトロピックさせたまま塗布膜が過冷却することが可能となる。その後、第1の実施の形態と同様に図3に示したように基板2は非接触で硬化装置に搬送される。以後の工程は第1の実施の形態と同様である。そのため、第3の実施の形態においても、液晶分子の配向性が良好な光学素子を製造可能となる。なお第3の実施の形態においても、図7乃至図10に示した方法のいずれかによって基板2を搬送してもよいことは勿論である。
【0046】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る光学素子は、図12に示すように、基板2上に配置されたブラックマトリクス8を備える。ブラックマトリクス8は、例えば金属クロム、タングステン、又は黒色樹脂等の遮光性又は光吸収性の材料からなる。さらに基板2上には、ブラックマトリクス8で区分けされた赤色層9、緑色層10、及び青色層11が配置されている。赤色層9、緑色層10、及び青色層11は、ストライプ状に配置されていてもよいし、モザイク状あるいはトライアングル状に配置されていてもよい。赤色層9、緑色層10、及び青色層11上には複屈折層44が配置される。複屈折層44は、第1乃至第3の実施の形態で説明した複屈折層と同様である。
【0047】
次に第4の実施の形態に係る光学素子の製造方法について説明する。
【0048】
(a) まず基板2上に金属薄膜を形成し、その後フォトリソグラフィ法等により金属薄膜を選択的に除去し、基板2上にブラックマトリクス8を形成する。あるいは基板2上に黒色樹脂で印刷し、基板2上にブラックマトリクス8を形成してもよい。その後、赤色材料を溶媒に分散させた赤色材料分散液、緑色材料を溶媒に分散させた緑色材料分散液、及び青色材料を溶媒に分散させた青色材料分散液を用意する。
【0049】
(b) 基板2上に赤色材料分散液を塗布し、赤色材料を含む塗膜を基板2上に形成する。その後、フォトリソグラフィ法等によって赤色材料を含む塗膜を選択的に除去し、基板2上に赤色層9を形成する。また基板2上に緑色材料分散液を塗布し、緑色材料を含む塗膜を基板2上に形成する。その後、フォトリソグラフィ法等によって緑色材料を含む塗膜を選択的に除去し、基板2上に緑色層10を形成する。また基板2上に青色材料分散液を塗布し、青色材料を含む塗膜を基板2上に形成する。その後、フォトリソグラフィ法等によって青色材料を含む塗膜を選択的に除去し、基板2上に青色層11を形成する。なお赤色材料分散液、緑色材料分散液、及び青色材料分散液のそれぞれを基板2上に印刷し、赤色層9、緑色層10、及び青色層11を形成してもよい。
【0050】
(c) 赤色層9、緑色層10、及び青色層11の表面に紫外線を照射し、赤色層9、緑色層10、及び青色層11の表面の濡れ性を向上させる。なおコロナ放電処理により、赤色層9、緑色層10、及び青色層11の表面の濡れ性を向上させてもよい。その後、第1乃至第3の実施の形態で示した方法と同様の方法により、液晶分子の配向を乱さないようにして複屈折層44を赤色層9、緑色層10、及び青色層11の表面に形成し、第4の実施の形態に係る光学素子を得る。
【0051】
以上示した第4の実施の形態に係る光学素子は、赤色層9、緑色層10、及び青色層11を含む着色層を備えるため、カラー液晶表示装置に組み込まれるカラーフィルタとして有用である。
【0052】
なお図13に示すように、第1乃至第3の実施の形態で示した方法と同様の方法により、基板2上に複屈折層4を形成した後、複屈折層4上にブラックマトリクス8と、赤色層9、緑色層10、及び青色層11とを形成してもよい。また図14に示すように、基板2の裏面102にブラックマトリクス8と、赤色層9、緑色層10、及び青色層11とを形成してもよい。
【0053】
(第4の実施の形態の実施例)
(a) 14.0重量部の黒顔料(大日精化工業株式会社製、TMブラック#9550)及び1.2重量部の分散剤(ビックケミー株式会社製、Disperbyk111)と、溶剤(エチレングリコールモノブチルエーテル)とを、ビーズを利用して分散機(浅田鉄工社製、ペイントシェーカー)で3時間分散させた。その後、ビーズを除去し、分散液に2.8重量部のポリマー(昭和高分子株式会社製、VR60)、3.5重量部のモノマー(サートマー株式会社製、SR399)、0.7重量部の添加剤(綜研化学株式会社製、L-20)、1.6重量部の開始剤(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1)、0.3重量部の開始剤(4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン)、0.1重量部の開始剤(2,4-ジエチルチオキサントン)、及び溶剤(エチレングリコールモノブチルエーテル)を添加し、ブラックマトリクス用のフォトレジストを調整した。なお溶剤の最終濃度は75.8重量部である。
【0054】
(b) ベンジルメタクリレート、スチレン、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを15.6:37.0:30.5:16.9のモル比で含む共重合体を調整した。次に100mol%の共重合体に対して16.9mol%の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加し、平均分子量が42500molの調製ポリマーを調製した。
【0055】
(c) 4.8重量部の赤顔料(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPP Red BP、カラーインデックスPR254)、1.2重量部の黄顔料(BASF社製、パリオトールイエローD1819、カラーインデックスPY139)、及び3.0重量部の分散剤(ゼネカ株式会社製、ソルスパース24000)と、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)とを、ビーズを利用して分散機で3時間分散させた。その後、ビーズを除去し、分散液に4.0重量部のモノマー(サートマー株式会社製、SR399)、5.0重量部の調製ポリマー、1.4重量部の開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア907)、0.6重量部の開始剤(2, 2'-ビス(o-クロロフェニル)-4, 5, 4', 5'-テトラフェニル-1, 2'-ビイミダゾール)、及び溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を添加し、赤色画素用のフォトレジストを調整した。なお溶剤の最終濃度は80.0重量部である。
【0056】
(d) 3.7重量部の緑顔料(大日精化製、セイカファストグリーン5316P、カラーインデックスPG7)、2.3重量部の黄顔料(BASF社製、パリオトールイエローD1819、カラーインデックスPY139)、及び3.0重量部の分散剤(ゼネカ株式会社製、ソルスパース24000)と、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)とを、ビーズを利用して分散機で3時間分散させた。その後、ビーズを除去し、分散液に4.0重量部のモノマー(サートマー株式会社製、SR399)、5.0重量部の調製ポリマー、1.4重量部の開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア907)、0.6重量部の開始剤(2, 2'-ビス(o-クロロフェニル)-4, 5, 4', 5'-テトラフェニル-1, 2'-ビイミダゾール)、及び溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を添加し、緑色画素用のフォトレジストを調整した。なお溶剤の最終濃度は80.0重量部である。
【0057】
(e) 4.6重量部の青顔料(BASF社製、ヘリオゲンブルーL6700F、カラーインデックスPB15:6)、1.4重量部の紫顔料(クラリアント社製、フォスタパームRL-NF、カラーインデックスPV23)、0.6重量部の顔料誘導体(ゼネカ株式会社製、ソルスパース12000)、及び2.4重量部の分散剤(ゼネカ株式会社製、ソルスパース24000)と、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)とを、ビーズを利用して分散機で3時間分散させた。その後、ビーズを除去し、分散液に4.0重量部のモノマー(サートマー株式会社製、SR399)、5.0重量部の調製ポリマー、1.4重量部の開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア907)、0.6重量部の開始剤(2, 2'-ビス(o-クロロフェニル)-4, 5, 4', 5'-テトラフェニル-1, 2'-ビイミダゾール)、及び溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を添加し、青色画素用のフォトレジストを調整した。なお溶剤の最終濃度は80.0重量部である。
【0058】
(f) ガラス基板(コーニング社製、7059ガラス)上にブラックマトリクス用のフォトレジストをスピンコート法で塗布し、90℃で3分間プリベークした。次にフォトマスクを用いて100mJ/cm2の光でフォトレジストを選択的に露光した後、現像液(濃度0.05%の水酸化カリウム水溶液)を用いて60秒間スプレー現像して未硬化のフォトレジストを除去した。その後、200℃の温度で30分間ポストベークし、厚さが1.2μmのブラックマトリクスをガラス基板上に形成した。
【0059】
(g) 次に、ブラックマトリクスが形成された基板上に、赤色画素用のフォトレジストをスピンコート法で塗布し、80℃で3分間プリベークした。次にフォトマスクを用いて300mJ/cm2の紫外線で赤色画素用のフォトレジストを選択的に露光した後、現像液(濃度0.05%の水酸化カリウム水溶液)を用いて60秒間スプレー現像して未硬化の赤色画素用のフォトレジストを除去した。その後、200℃の温度で60分間ポストベークし、厚さが2.6μmの赤色層のパターンをガラス基板上に形成した。
【0060】
(h) 次に、ブラックマトリクスが形成された基板上に、緑色画素用のフォトレジストをスピンコート法で塗布し、80℃で3分間プリベークした。次にフォトマスクを用いて300mJ/cm2の紫外線で緑色画素用のフォトレジストを選択的に露光した後、現像液(濃度0.05%の水酸化カリウム水溶液)を用いて60秒間スプレー現像して未硬化の緑色画素用のフォトレジストを除去した。その後、200℃の温度で60分間ポストベークし、厚さが2.6μmの緑色層のパターンをガラス基板上に形成した。
【0061】
(i) 次に、ブラックマトリクスが形成された基板上に、青色画素用のフォトレジストをスピンコート法で塗布し、80℃で3分間プリベークした。次にフォトマスクを用いて300mJ/cm2の紫外線で青色画素用のフォトレジストを選択的に露光した後、現像液(濃度0.05%の水酸化カリウム水溶液)を用いて60秒間スプレー現像して青色画素用の未硬化のフォトレジストを除去した。その後、200℃の温度で60分間ポストベークし、厚さが2.6μmの青色層のパターンをガラス基板上に形成した。最後に、赤色層、緑色層、及び青色層上に、第1の実施の形態の実施例と同様の方法により、複屈折層を形成し、第4の実施の形態の実施例に係る光学素子を得た。
【0062】
第1の実施の形態の実施例に係る光学素子と同様に、第4の実施の形態の実施例に係る光学素子をクロスニコルに配置された2枚の偏光板で検査したところ、複屈折層における液晶分子の配向に乱れが生じなかったことが示された。
【0063】
(第5の実施の形態)
図12に示した光学素子と比較して、図15に示す光学素子は、複屈折層44上に配置された保護層12、及び保護層12上に選択的に配置されたスペーサ13をさらに備える。保護層12は、多官能アクリレートを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー、あるいは多官能エポキシを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の透明樹脂組成物の硬化物からなる。スペーサ13は、多官能アクリレートを含有するアクリル系及びアミド系又はエステル系ポリマー等の材料の光硬化物からなる。
【0064】
次に第5の実施の形態に係る光学素子の製造方法について説明する。
【0065】
まず第4の実施の形態で説明したように、図12に示した光学素子を得る。次に複屈折層44上に透明樹脂を塗布し、透明樹脂を乾燥及び硬化させることによって複屈折層44上に保護層12を形成する。例えば透明樹脂が多官能アクリレートを含有するアクリル系ポリマーである場合、紫外線を照射することによって硬化する。
【0066】
その後、保護層12上に感光性塗料を塗布し、乾燥させる。次にフォトマスク等を利用して、感光性塗料を乾燥させた塗膜を選択的に光硬化させる。その後、未硬化の塗膜を現像液等で除去し、保護層12上にスペーサ13を形成させる。スペーサ13をその後焼成し、第5の実施の形態に係る光学素子を得る。
【0067】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態に係るIPS(In-Place-Switching)方式の液晶表示装置は、図16に示すように、直線偏光板42、直線偏光板42上に配置された透明基板41、透明基板41上に配置された駆動用電極34及び駆動用回路43を備える。また液晶装置は、例えば正のAプレートとして機能する複屈折層4、複屈折層4上に配置された着色層7、着色層7上に配置された基板2、基板2上に配置され、例えば正のCプレートとして機能する位相差フィルム30、及び位相差フィルム30上に配置された直線偏光板33を備える。なお、位相差フィルム30は複数枚配置されていてもよい。
【0068】
駆動用回路43と複屈折層4の間には、電場によって液晶分子の配向方向を変動可能な駆動液晶層28が配置されている。駆動用電極34は駆動用回路43によって電圧が加えられ、電圧が加えられた駆動用電極34は、駆動液晶層28の電場の状態を制御する。なお、直線偏光板42の透過軸と直線偏光板33の透過軸とは、互いに直交する。第6の実施の形態に係る液晶表示装置において、複屈折層4が駆動液晶層28を挟む透明基板41と基板2の間に配置されたインセル構造をとる。
【0069】
基板2、着色層7、及び複屈折層4を含む光学素子1は、第4の実施の形態に示した方法で製造可能であり、複屈折層4に含まれる液晶分子の配向は乱れていない。そのため、図16に示す液晶装置の視野角は広く、コントラストも高く、色むらも少ない。また光学素子1が液晶装置内に一体的に組み込まれているため、粘着工程等が従来よりも少なくなる。そのため、粘着層等における界面反射を減らすことが可能となり、コントラストがより向上する。
【0070】
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態に係るVA(Vertical Alignment)方式の液晶表示装置は、図17に示すように、偏光板72、偏光板72上に配置された透明基板71、駆動用電極層74、及び駆動用電極層74上に配置された配向膜81を備える。また液晶表示装置は、配向膜80、配向膜80上に配置された複屈折層4、複屈折層4上に配置された着色層7、着色層7上に配置された導電膜500、導電膜500上に配置された基板2、基板2上に配置された位相差フィルム30、及び位相差フィルム30上に配置された偏光板63を備える。
【0071】
配向膜81と配向膜80の間には、電場によって液晶分子の配向方向を変動可能な駆動液晶層58が配置されている。駆動液晶層58には、導電膜500及び駆動用電極層74を介して電場が加えられ、駆動液晶層58に含まれる液晶分子の配向方向が制御される。なお、駆動液晶層58に含まれる液晶分子の配向方向は、配向膜80, 81で制限される。
【0072】
基板2、着色層7、導電膜500及び複屈折層4を含む光学素子1は、第4の実施の形態に示した方法を適用して製造可能であり、複屈折層4に含まれる液晶分子の配向は乱れていない。そのため、図17に示す液晶装置も、図16に示した液晶装置と同様の効果を奏する。
【0073】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば実施の形態においては、正のCプレート、正のAプレート、又は負のCプレートとして機能する単一の複屈折層が基板上に配置された場合を示した。しかし基板上には、複数の複屈折層を形成してもよい。例えば基板上に正のCプレートとして機能する複屈折層と、正のAプレートとして機能する複屈折層の両方を形成してもよい。あるいは正のCプレートとして機能する複屈折層、正のAプレートとして機能する複屈折層、及び負のCプレートとして機能する複屈折層の3層を基板上に形成してもよい。また複屈折層は、負のAプレートとして機能してもよいし、ハイブリッド配向した液晶分子を備えていてもよい。
【0074】
従来、液層表示装置を製造する場合に、正のAプレートとして機能する複屈折層を備える光学素子と、負のCプレートとして機能する光学素子とを粘着財等を介して液晶セルに貼り付けていた。これに対し、光学素子が複数の複屈折層を備えることにより、粘着剤による接着の工程を省略することが可能となる。そのため、光学素子と粘着剤との界面で生じる光の反射等がなくなり、液晶表示装置のコントラストを上昇させることが可能となる。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光学素子の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る光学素子の第1の工程断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る光学素子の第2の工程断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の比較例に係る光学素子の工程断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る液晶分子の第1の模式図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る液晶分子の第2の模式図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る光学素子の第1の工程断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る光学素子の第2の工程断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る光学素子の第1の工程断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る光学素子の第2の工程断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る光学素子の断面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る光学素子の第1の断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る光学素子の第2の断面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る光学素子の第3の断面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係る光学素子の断面図である。
【図16】本発明の第6の実施の形態に係る液晶表示装置の断面図である。
【図17】本発明の第7の実施の形態に係る液晶表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1…光学素子
2…基板
3…導電膜
80, 81, 500…配向膜
4, 24, 44…複屈折層
7…着色層
8…ブラックマトリクス
9…赤色層
10…緑色層
11…青色層
12…保護層
13…スペーサ
28, 58…駆動液晶層
30…位相差フィルム
33, 42…直線偏光板
34…駆動用電極
41, 71…透明基板
43…駆動用回路
50…エアシャワー装置
63, 72…偏光板
74…駆動用電極層
90…液晶分子
102…裏面
104…塗布膜
112…側面
150A, 150B, 150C…ゴムローラ
250…搬送ローラ
350A, 350B, 350C…搬送ハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に液晶分子を含む液晶インクを塗布し、前記基板上で前記液晶分子を配向させるステップと、
前記液晶インクを塗布された前記基板の裏面に気体を吹き付けて前記基板を浮上させ、前記基板を搬送するステップと、
搬送された前記基板上の前記液晶分子を固定するステップ
とを含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項2】
基板に液晶分子を含む液晶インクを塗布し、前記基板上で前記液晶分子を配向させるステップと、
前記液晶インクを塗布された前記基板の外周のみを固体で保持して前記基板を搬送するステップと、
搬送された前記基板上の前記液晶分子を固定するステップ
とを含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記基板の裏面に気体を吹き付けるステップを更に含むことを特徴とする請求項2に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記気体が空気又は窒素であることを特徴とする請求項1又は3に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記気体の温度が前記基板の周囲の温度と同じであることを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記気体を除電するステップを更に含むことを特徴とする請求項1、3、4、5のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記固定するステップは、前記液晶分子を重合するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−69415(P2009−69415A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237094(P2007−237094)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】