説明

光学装置の光軸調整システム及び光学装置の光軸調整方法

【課題】光学装置における光軸調整を容易に行うことができるようにすることを課題とする。
【解決手段】光軸調整システム1000は、可変波長光源1から出射された通信光が通過する光学部品110の位置決めを行う光学部品位置決め手段5と、光学部品110を通過した通信光を所望の方向へ反射するミラーアレイ120に置き換えて光学部品110と対向するように配置され、通信光を透過させるターゲットマスク130を備える。また、光軸調整システム1000は、ターゲットマスク130の背面側に配置され、ターゲットマスク130に通信光が照射されることによってターゲットマスク130に浮かび上がるスポット光を撮影するカメラ3と、このカメラ3によって取得された撮影情報と、に基づいて前記光学部品位置決め手段に位置決め指令を発する制御部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置の光軸調整システム及び光学装置の光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光の経路を選択したり、切り替えたりする波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selectable Switch)や光マトリクススイッチといった光学装置が知られている。
このような光学装置は、光源から出射された通信光を光ファイバやレンズ等の光学部品に通過させる。そして、それぞれMEMS(Micro Electro Mechanical System)で駆動されたマイクロミラーを複数備えたミラーアレイによって通信光の経路が切り替えられる。ミラーアレイは、光学部品を通過した通信光の光軸の集光位置に配置される。このため、光源より入力された通信光が光学装置内で反射して折り返され、出力位置で適切な光学特性を発揮することができるように光軸を合わせる必要がある。波長選択スイッチの光軸調整方法に関連する提案は、種々行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−212678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光学装置における通信光の経路上には多くの部品が配置されており、これらを総合的に調整することによって光軸調整が行われる。従来、このような光軸調整を行う際に指標となるのは、例えば、通信光の挿入損失(IL:Insertion Loss)や波長特性、クロストーク等の光学特性である。これらは、光学部品の角度や位置を直接示すものではなく、これらに基づいて光学部品の配置を決定することが困難である。
【0005】
また、光学特性による光軸調整を行おうとする場合、反射された通信光が出力位置に適切に戻るようにした後でなければ、光学特性を把握することができない。ところが、光学部品の配置の組み合わせは無数に存在し、光学特性を把握するための大まかな光軸調整自体が非常に困難なものとなっている。特に複数の経路における光軸を調整しなければならない場合、その調整作業はさらに困難なものとなる。
【0006】
そこで、本明細書開示の発明は、光学装置における光軸調整を容易に行うことができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書開示の光学装置の光軸調整システムは、光源から出射された通信光が通過する光学部品の位置決めを行う光学部品位置決め手段と、前記光学部品を通過した通信光を所望の方向へ反射するミラーに置き換えて前記光学部品と対向するように配置され、前記通信光を透過させるとともに反射する板体と、当該板体の背面側に配置され、前記板体に前記通信光が照射されることによって当該板体に浮かび上がるスポット光を撮影する撮影手段と、当該撮影手段によって取得された撮影情報と、前記板体が反射した反射光の光学特性に関する情報とに基づいて前記光学部品位置決め手段に位置決め指令を発する制御部と、を備える。
【0008】
このような光軸調整システムは、撮影手段によって取得された撮影情報に基づいて光学部品の位置決めを行う。撮影手段によって撮影情報は、実際の光軸の位置に関する情報を含む。このため、光学部品の位置に関する指標と対応させることができ、光学部品の位置や角度を調整するための指標を容易に決定し、光軸調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本明細書開示の光学装置の光軸調整システムによれば、光学装置における光軸調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、波長選択スイッチを模式的に示した説明図である。
【図2】図2は、波長選択スイッチの概略構成図であり、図2(A)はX軸に沿って見た図、図2(B)はY軸に沿って見た図である。
【図3】図3は、ミラーアレイの説明図である。
【図4】図4は、光軸調整システムの概略構成図である。
【図5】図5は、ターゲットマスクの説明図である。
【図6】図6は、ターゲットマスクとカメラの位置関係を示す説明図であり、図6(A)はX軸に沿って見た図、図6(B)はY軸に沿って見た図である。
【図7】図7は、光軸調整方法の一例を示すフロー図である。
【図8】図8は、光ファイバアレイの角度調整の一例を示すフロー図である。
【図9】図9は、光ファイバアレイの角度調整の説明図であり、図9(A)はX軸に沿って見た図、図9(B)はY軸に沿って見た図である。
【図10】図10は、ピークサーチの説明図である。
【図11】図11は、集光レンズの焦点調整の一例を示すフロー図である。
【図12】図12は、光ファイバアレイの位置調整の一例を示すフロー図である。
【図13】図13は、光ファイバアレイの位置調整の説明図であり、図13(A)はX軸に沿って見た図、図13(B)はY軸に沿って見た図である。
【図14】図14は、撮影情報の説明図である。
【図15】図15は、ターゲットマスクの認識処理の説明図である。
【図16】図16は、スポット光の認識処理の一例を示すフロー図である。
【図17】図17は、スポット光の認識処理の説明図である。
【図18】図18は、光ファイバアレイの傾き調整の一例を示すフロー図である。
【図19】図19は、光ファイバアレイの傾き調整の説明図である。
【図20】図20は、集光レンズと補正レンズとの間隔調整の一例を示すフロー図である。
【図21】図21は、集光レンズと補正レンズとの間隔調整の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては細部が省略されている場合もある。
【実施例】
【0012】
図1は、本明細書開示の光軸調整システム1000による光軸調整対象となる波長選択スイッチ100の説明図である。波長選択スイッチ100は、光軸調整システム1000による光軸調整対象となる光学装置の一例である。図2は、波長選択スイッチ100の概略構成図である。図3は、波長選択スイッチ100に含まれるミラーアレイ120の説明図である。また、図4は、光軸調整システム1000の概略構成図である。図5は、ターゲットマスク130の説明図であり、図6は、ターゲットマスク130とカメラ3の位置関係を示す説明図である。
【0013】
まず、図1、図2を参照しつつ、波長選択スイッチ100の概略構成について説明する。なお、以下の説明では、波長選択スイッチ100のXYZ方向を図1に示すように定めることとする。図2(A)は、波長選択スイッチ100の側面図、すなわち、X軸に沿って見た図である。図2(B)は、波長選択スイッチ100の平面図、すなわち、Y軸に沿って見た図である。
【0014】
波長選択スイッチ100は、数種類の光学部品110とこれらの光学部品110を収容するフレーム116、およびミラーアレイ120を備えている。光学部品110には、光ファイバアレイ111、マイクロレンズアレイ112、回折格子113、集光レンズ114、補正レンズ115が含まれる。ただし、回折格子113は、光軸を調整する際の調整対象には含まれない。
【0015】
波長選択スイッチ100に対する通信光の入出力は、p本の光ファイバ10を整列保持するように収容した光ファイバアレイ111を通じて行われる。波長分割多重方式(WDM:Wavelength Division Multiple)通信に用いられる1本1本の光ファイバ10には、複数(n)の波長λ(n)の通信光が多重化されて通過する。光ファイバアレイ111には、マイクロレンズアレイ112が設けられ、p箇所のポートを備えた入出力ポート(p)が形成されている。マイクロレンズアレイ112に含まれる個々のマイクロレンズは、各光ファイバ10の端部に配置され、空間伝播光を結合する。
【0016】
波長選択スイッチ100は、分光素子である回折格子113を備えている。回折格子113は、光ファイバアレイ111と対向させて配置されている。回折格子113は、光ファイバ10を通過した通信光(入力光)を波長毎に分光する。波長選択スイッチ100は、回折格子113の背面側に集光レンズ114を備えている。また、波長選択スイッチ100は、集光レンズ114の背面側に図2(A)、図2(B)に示すように補正レンズ15を備えている。補正レンズ15は、図1では省略されている。
【0017】
集光レンズ114および補正レンズ115は、光軸(Z軸)方向に位置調整することで、後述するミラーアレイ120の反射面に対する焦点調整および集光位置の微調整を行う。
【0018】
波長選択スイッチ100は、さらに、集光レンズ114の背面側にミラーアレイ120を備えている。補正レンズ15は、集光レンズ114とミラーアレイ120との間に配置されている。ミラーアレイ120は、複数のマイクロミラーを備えている。本実施例では、5枚のマイクロミラーM1〜M5を備えている。回折格子113で分光された通信光は、集光レンズ114、補正レンズ115を通じてミラーアレイ120の反射面に集光される。
【0019】
なお、図2(A)、図2(B)の例では、5つのマイクロミラーM1〜M5が描かれているが、マイクロミラーの数は、5つに限定されない。すなわち、マイクロミラーの数は、装置の仕様によって異なる。マイクロミラーの数は、その仕様によって異なり、例えば、7枚であったり、他の枚数であったりする。
【0020】
図3(A)〜(C)は、ミラーアレイ120の説明図である。図3(A)は、ミラーアレイ120を正面から見た図、図3(B)は、ミラーアレイ120を側面から見た図である。複数のマイクロミラーM1〜M5は、ミラー反射面側に開口部を有するパッケージ121に封入されている。
各マイクロミラーM1〜M5のX軸回りの回転は、図2(A)に示すように角度αで表される。また、Y軸回りの回転は、図2(B)に示すように角度βで表される。
【0021】
各マイクロミラーM1〜M5は、MEMSによって図3(C)に示すようにX軸回り、及びY軸回りに独立して回転することができる。そして、各マイクロミラーM1〜M5は、MEMSによって通信光の反射角度を制御し、光ファイバアレイ111へ入出する光学経路を選択したり、切り替えたりする。
【0022】
各マイクロミラーM1〜M5は、通信波長帯域における波長チャネル数に対応する数が準備され、直列に配列されている。波長チャネルは、中心波長とその帯域幅を有しており、マイクロミラー中心が中心波長、マイクロミラーM1〜M5の並び方向が通信波長帯域に相当する。各マイクロミラーM1〜M5は、5つの周波数チャンネルCh.1〜ch.5に対応している。本実施例では、5つの周波数チャンネルCh.1〜ch.5に対応させて、5つの入出力ポートP1〜P5が設けられている。
【0023】
図2(A)、図2(B)には、光学経路の一例が示されている。具体的には、P3の入出力ポートより入力した波長λ3の通信光が回折格子113で分光され、ミラーアレイ120に含まれるマイクロミラーM3で反射された後、P1の入出力ポートに出力する光学経路の例が示されている。マイクロミラーM3は、このような光学経路が実現されるようにX軸回りの角度α、Y軸回りの角度βが調整される。
【0024】
次に、図4を参照しつつ、光軸調整システム1000の概略構成を説明する。光軸調整システム1000は、光源の一例である可変波長光源1を備えている。また、光軸調整システム1000は、光セレクタ2を備えている。この光セレクタ2を通過した通信光が光ファイバ10を通じて光学部品110に導入される。また、光軸調整システム1000は、光パワーメータ8を備えている。波長選択スイッチ100によって光学経路が切り替えられた通信光が光ファイバ10を通じて光パワーメータ8に導入される。但し、光軸調整システム1000は、ミラーアレイ120に代えて、ターゲットマスク130が配置されている。このターゲットマスク130は、光学部品110を通過した通信光を所望の方向へ反射するミラー、すなわち、ミラーアレイ120に置き換えて光学部品110と対向するように配置されている。すなわち、ターゲットマスク130は、通信光を透過させるとともに反射する板体の一例である。光パワーメータ8は、反射光の光学特性に関する情報を取得することができる。
【0025】
光軸調整システム1000は、図4に示すようにターゲットマスク130の背面側に配置されたカメラ3を備えている。カメラ3は、撮影手段の一例であり、ターゲットマスク130に通信光が照射されることによってターゲットマスク130に浮かび上がるスポット光を撮影する。カメラ3は、レンズ部3aと、同軸落斜照明である照明具4を備えている。カメラ3は、通信波長帯域である赤外線の透過光と可視光の照明光を撮像する。このため、カメラ3は、赤外線および可視光帯域に感度を有する赤外線カメラである。
【0026】
また、光軸調整システム1000は、光学部品110に含まれる各部品の位置決めを行う光学部品位置決め機構5を備えている。さらに、光軸調整システム1000は、ターゲットマスク130の位置決めを行うターゲットマスク位置決め機構6、カメラ3の位置決めを行うカメラ位置決め機構7を備えている。光学部品位置決め機構5は、光学部品110に含まれる光ファイバアレイ111、マイクロレンズアレイ112、集光レンズ114、補正レンズ115の位置決めを行う。光学部品位置決め機構5は、各部品毎にモータアクチュエータを備え、これを駆動することにより各部品の位置、角度等を変化させる。
【0027】
光軸調整システム1000は、制御部9を備えている。この制御部9は、可変波長光源1、光セレクタ2、カメラ3、光学部品位置決め機構5、ターゲットマスク位置決め機構6、カメラ位置決め機構7、光パワーメータ8に電気的に接続されている。
本実施例では、制御部9の一例として、パーソナルコンピュータ(PC:Personal computer)が用いられている。制御部9は、カメラ3によって取得された撮影情報、ターゲットマスク130が反射した反射光の光学特性に関する情報に基づいて光学部品位置決め機構5、ターゲットマスク位置決め機構6、カメラ位置決め機構7に位置決め指令を発する。
【0028】
可変波長光源1は、通信波長帯域の波長チャネルに相当する単一波長光、およびスイープ波長光を生成する。単一波長の光を波長選択スイッチ100に入力すると、ミラーアレイ120の反射面で1点に集光されたスポット光となる。光軸調整ではスポット光の位置をミラー中心に合致させる動作を行う。この作業を行う際、光軸調整システム1000に含まれる波長選択スイッチ100には、ターゲットマスク130が配置される。ターゲットマスク130は、ミラーアレイ120に置き換えて配置される。
【0029】
光セレクタ2は、可変波長光源1と波長選択スイッチ100間において、複数の光ファイバに対して入力の切り替えを行う。可変波長光源1が発した通信光を通過させる光ファイバ10を選択する。光セレクタ2を通過した通信光は、入出力ポートを形成する光ファイバアレイ111の選択された光ファイバ10に入力される。
【0030】
波長選択スイッチ100へ単一波長の通信光を入力するためには、まず、可変波長光源1でλnの通信光を生成する。そして、光セレクタ2で波長選択スイッチに接続する入出力ポートPnが選択される。これにより、単一波長の通信光を波長選択スイッチ100へ入力することができる。
【0031】
波長選択スイッチ100内のターゲットマスク130で反射された出力光は、光パワーメータ8に導入される。光パワーメータ8では、光強度が測定される。具体的には、光パワーメータ8は、波長選択スイッチ100の入力光量に対する出力光量の損失を表す挿入損失(IL:Insertion Loss)を測定する。光軸調整においては、挿入損失ILが最小となる状態、すなわち固定設置されたターゲットマスク130の反射光量が最大の状態となるように光学部品110の姿勢を調整する。挿入損失(IL)は、光学特性に含まれる。
【0032】
ターゲットマスク130は、上述のようにミラーアレイ120に置き換えて配置される。ここで、ターゲットマスク130について図5(A)〜(B)を参照しつつ詳細に説明する。図5(A)は、ターゲットマスク130を正面から見た図、図5(B)は、ターゲットマスク130を側面から見た図である。また、図5(C)は、ターゲットマスク130に含まれるターゲット枠F1、F2、F3、F4、F5に付される識別番号の例を示す説明図である。
【0033】
ターゲットマスク130は、ターゲットマスク位置決め機構6で把持され、ミラーアレイ120と等価な位置に配置される。ターゲットマスク130を用いた大まかな光軸調整終了後、本来の構成部品であるミラーアレイ120に戻し、従来の方法でさらに精密な光軸調整が行われる。
【0034】
ターゲットマスク130は、透明なガラス基板131に蒸着層132をコーティングした半透明なハーフミラーとして形成されている。ここで、半透明とは、入力された通信光、すなわち、入力光の一部をターゲットマスク130の背面側へ透過させるとともに、入力光の一部を反射させることができる状態をいう。入力光の一部がターゲットマスク130の背面側へ透過されることにより、カメラ3が、ターゲットマスク130に浮かび上がるスポット光を撮影することができるようになる。
【0035】
蒸着層132は、一般的な金属膜コーティングにより形成することができる。本明細書開示の蒸着層132は、その一例としてガラス基板131にクロムおよび酸化クロム(Cr+Cr)を薄膜形成することによって設けられている。蒸着層132は、その厚みの相違によってターゲット枠F1〜F5を形成している。ターゲット枠F1〜F5は、具体的には、図5(A)、図5(B)に示すように矩形の枠状に材料が厚く蒸着されることによって形成されている。このようなターゲット枠F1〜F5は、ミラーアレイ120に含まれるのマイクロミラーM1〜M5の配置と等価となるように設けられている。各ターゲット枠F1〜F5は、ミラーアレイと同様に通信波長帯域のチャネル数に対応する。
【0036】
なお、ターゲット枠の形状は、矩形に限定されない。例えば、四隅にL字状に厚膜部が設けられるように蒸着してもよい。また、四隅にドット状に厚膜部が設けられるように蒸着してもよい。要は、対象となるマイクロミラーMNに相当する位置が確認することができればよい。このため、全てのマイクロミラーに対応するターゲット枠を準備しなくてもよい。ターゲット枠は、特定の光波長を反射するマイクロミラーに対応する位置にのみ設けてもよいし、幾つか置きに設けてもよい。
【0037】
各ターゲット枠F1〜F5の近傍には、図5(C)に示すように、チャネル数に対応した目視可能な識別番号「1」、「2」、「3」・・・が付されている。これらの識別番号は、カメラ3で撮影するときに、どのターゲット枠FNが撮影されているのかを判断する際の目安となる。従って、識別番号に代えて、他の識別方法を採用することもできる。例えば、「A」、「B」・・・といったアルファベットを付してもよい。また、ターゲット枠毎に異なる図形を付すようにしてもよい。
【0038】
このようなターゲットマスク130に対し、図4においてL1、L2で示すような通信光が入力されると、ターゲットマスク130は通信光を反射してL4、L5で示すような出力を行う。また、これと同時に、ターゲットマスク130は図4においてL3で示すような透過光を生成する。
【0039】
次に、図6を参照しつつ、ターゲットマスク130とカメラ3との位置関係について説明する。図6(A)は、波長選択スイッチ100の側面図、すなわち、X軸に沿って見た図である。図6(B)は、波長選択スイッチ100の平面図、すなわち、Y軸に沿って見た図である。
【0040】
カメラ3は、ターゲットマスク130の背面側に配置されており、ターゲットマスク130の一部分を拡大撮像する。カメラ3は、図4に示すようにカメラ位置決め機構7に保持されており、カメラ位置決め機構7によってターゲットマスク130の撮像位置に移動される。すなわち、カメラ3は、波長選択スイッチ100の光軸上でターゲットマスク130越しの透過光を撮像する位置に移動される。
【0041】
光軸調整動作を行うとき、ターゲットマスク130の反射角度は、光学部品110の中心光軸を基準に設定することが望ましい。このため、例えば、図2(A)、図2(B)に示すように5枚のマイクロミラーM1〜M5が装備される波長選択スイッチ100の光軸調整を行う場合は、マイクロミラーM3に入力されるλ3の光軸を中心光軸とする。すなわち、入出力ポートP3に入力した波長λ3の通信光がレンズアレイ120の中心位置に相当するため、マイクロミラーM3に入力される通信光の光軸を中心光軸とする。
【0042】
なお、マイクロミラーの数が偶数個であるときは、適切な補正係数を用いることにより算出する。
【0043】
本実施例の光軸調整システム1000は、マイクロミラーM3における光軸がターゲットマスク130において適切な反射状態となるように調整を行う。具体的には、ターゲットマスク130のX回りの角度α、Y軸回りの角度βを調整する。
【0044】
図6(B)に示すように、カメラ3は、マイクロミラーM3の背面に位置するように設置される。マイクロミラーM3は、上述のように中心光軸に選定された通信光が入力されるマイクロミラーである。カメラ3は、ターゲット枠F3を透過した通信光、具体的には、ターゲット枠F3内に映し出されたスポット光を撮影する。なお、カメラ3は、画像分解能を高めるためターゲットマスク130の一部を拡大撮像する。このため、チャネルの並列方向には図6(B)に示すようにカメラ3自体を移動させて撮像を行う。
【0045】
このように、カメラ3は、本来のミラーアレイ120では直接観測することができないマイクロミラーへ映し出されるスポット光の状態を透過光として撮影することができる。この結果、光軸の位置であるスポット光の位置調整を的確に実施することが可能となる。制御部9は、カメラ3によって取得された撮影情報に基づいて光学部品位置決め手段5に位置決め指令を発する。
【0046】
次に、以上のような光軸調整システム1000による光学装置の光軸調整方法の一例につき、説明する。
【0047】
図7は、光軸調整方法の一例を示すフロー図である。まず、ステップS101で、光学部品110を通過した通信光を所望の方向へ反射するミラー、すなわちミラーアレイ120に代えて光学部品110と対向するように、通信光を透過させるターゲットマスク130を配置する。具体的には、ターゲットマスク130の設置角度を最終製品の波長選択スイッチ100で設定されるミラーアレイ120の角度αと角度βに調整する。角度の調整は、制御部9の指令に基づいてターゲットマスク位置決め機構6が動作することによって行われる。
【0048】
ステップS101に引き続き行われるステップS102では、光学部品110を初期位置に位置決めしておく。ステップS101、ステップS102の工程は、順序が逆であってもよい。
【0049】
以下、光学部品110の各種位置決めを行うことにより、光軸調整が行われる。光軸調整を行うために、可変波長光源1が出射する通信光を、光学部品110に通過させ、光学部品110を通過した通信光をターゲットマスク130に照射する。そして、制御部9は、ターゲットマスク130が反射した反射光の光学特性に関する情報、例えば光パワーメータ8の出力値を考慮して光学部品110の位置決めを行う。
また、ターゲットマスク130に照射されたスポット光をターゲットマスク130の背面側からカメラ3によって撮影する。そして、制御部9は、取得された撮影情報、具体的には撮影されたスポット光に関する情報に基づいて、光学部品110の位置決めを行う。
【0050】
ステップS101、S102に引き続き行われるステップS103では、制御部9は、中心光軸の角度を調整する。中心光軸の角度の調整は、光ファイバアレイ111の角度調整によって行われる。図8は、光ファイバアレイ111の角度調整の一例を示すフロー図である。また、図9は、光ファイバアレイ111の角度調整の説明図である。以下、図8、図9を参照して、光ファイバアレイ111の角度調整について説明する。
【0051】
制御部9は、ステップS103aにおいて、入出力ポートP3に波長λ3の通信光を入力するように光セレクタ2に指令を発する。そして、制御部9は、ステップS103bにおいて、入出力ポートP1に戻された反射光の出力光量を光パワーメータ8で測定する。
【0052】
制御部9は、ステップS103cで、図9(A)に示す光ファイバアレイ111のX軸回りの角度θxを決定する。ここで、角度θxの決定には、ピークサーチを用いる。すなわち、ピークサーチを用いて、最大光量となる角度を探索して検出し、その角度に光ファイバアレイ111を位置決めする。
【0053】
次いで、制御部9は、ステップS103dで、図9(B)に示す光ファイバアレイ111のY軸回りの角度θyを決定する。ここで、角度θyの決定には、ピークサーチを用いる。すなわち、ピークサーチを用いて、最大光量となる角度を探索して検出し、その角度に光ファイバアレイ111を位置決めする。
なお、ステップS103cとステップS103dはその順序が入れ代わってもよい。
【0054】
このように、光ファイバアレイ111の角度調整には、ピークサーチを用いる。このピークサーチは、後述するステップS104における中心光軸の焦点の調整においても利用される。ここで、このピークサーチの一例について、図10を参照しつつ説明する。
【0055】
光軸調整は、ミラーアレイ120に代えて配置されるターゲットマスク130から最適な反射光が得られるように調整される。すなわち、最小の挿入損失ILが得られる状態に光学部品110に含まれる各部品が調整される。
最小の挿入損失ILを得られる状態は、ターゲットマスク130の反射光量が最大となるように光学部品の位置を決定すれば良く、調整位置と反射光の出力光量の対応テーブルを用いたピークサーチを行うことで実現できる。
【0056】
図10は、上側に対応テーブルを示し、下側に調整位置と出力光量との関係をグラフにして示している。
光学部品位置決め機構5が備えるモータアクチュエータは、そのステップ数m毎に調整位置が変化する。図10に示すように、例えば、ステップ数mが1のとき調整位置は100、ステップ数が2のとき調整位置は110の如くである。この調整位置は、角度であったり、水平方向の位置、垂直方向の位置であったりする。
【0057】
対応テーブルは、ステップ数m毎に光パワーメータ8の出力値を読み取り出力光量を記録することによって作成される。
図10に示した例では、出力光量の最大値は20であり、最大光量となる調整位置は150である。これにより、調整位置を150に設定することで、光学部品110に含まれる部品の位置を決定することができる。
【0058】
以上のようなピークサーチを用いることにより、ステップS103における角度調整を行うことができる。
【0059】
ステップS103に引き続き行われるステップS104では、制御部9は、中心光軸の焦点を調整する。中心光軸の焦点の調整は、集光レンズ114の光軸方向(Z軸方向)の位置を調整することによって行われる。集光レンズ114の光軸方向の位置を調整することによりターゲットマスク130における焦点が変化する。そこで、最小の挿入損失ILが得られる位置に集光レンズ114を調節する。図11は、集光レンズ114の焦点調整の一例を示すフロー図である。以下、図11を参照して集光レンズ114の焦点調整について説明する。
【0060】
制御部9は、ステップS104aにおいて、入出力ポートP3に波長λ3の通信光を入力するように光セレクタ2に指令を発する。そして、制御部9は、ステップS104bにおいて、入出力ポートP1に戻された反射光の出力光量を光パワーメータ8で測定する。
【0061】
制御部9は、ステップS104cで、集光レンズ114のZ軸方向の位置を決定する。このとき、上述のピークサーチを用いる。すなわち、ピークサーチを用いて、最大光量となる位置を探索して検出し、その位置に集光レンズ114を位置決めする。
【0062】
ステップS104に引き続き行われるステップS105では、制御部9は、中心光軸の位置を調整する。中心光軸の位置の調整は、光ファイバアレイ111のX軸方向、Y軸方向のずれを調整することによって行われる。光ファイバアレイ111のずれの調整は、カメラ3によって撮影されたスポット光に関する情報に基づいて行う。図12は、光ファイバアレイ111の位置調整の一例を示すフロー図である。また、図13は、光ファイバアレイ111の位置調整の説明図である。以下、図12、図13を参照しつつ、光ファイバアレイ111の位置調整について説明する。
【0063】
制御部9は、ステップS105aにおいて、入出力ポートP3に波長λ3の通信光を入力するように光セレクタ2に指令を発する。その後、制御部9は、ステップS105bにおいて、カメラ位置決め機構7に指令を発し、カメラ3をCh.3の位置に移動させる。
【0064】
制御部9は、ステップS105c、ステップS105dにおいて、スポット光のずれ量(Pd)を算出する。スポット光のずれ量(Pd)を算出するには、まず、可変波長光源1が出射する通信光を、光学部品110に通過させ、光学部品110を通過した通信光をターゲットマスク130に照射する。カメラ3は、ターゲットマスク130に照射されたスポット光をターゲットマスク130の背面側から撮影する。制御部9は、取得された撮影情報、具体的には撮影されたスポット光に関する情報に基づいて、スポット光の輝度重心(Ps)を測定し、その輝度重心(Ps)に基づいてスポット光のずれ量(Pd)を算出する。
【0065】
制御部9は、カメラ3の撮影情報から以下のような加工を経ることによってスポット光に関する情報を得る。
【0066】
以下、カメラ3の撮影情報の加工について図14乃至図17を参照しつつ説明する。図14は、撮影情報の説明図である。図15は、ターゲットマスクの認識処理の説明図である。図16は、スポット光の認識処理の一例を示すフロー図である。図17は、スポット光の認識処理の説明図である。カメラ3の撮影情報の加工は、制御部9によって行われる。
【0067】
図14(A)は、通信光が出射されていない状態で撮影されたターゲットマスク130の撮影画像である。この状態において、制御部9は、ターゲット枠F3の中心位置Pmを把握することができる。中心光軸は、この中心位置Pmを通過するように調整される。中心位置Pmは、図15(A)に示すターゲットマスク130の撮影画像に対し、図15(B)に示すような予め準備されたテンプレート画像を用いたテンプレートマッチング処理を行うことによって算出される。具体的には、認識対象となるテンプレート画像を撮像画像である探索画像から探し出すテンプレートマッチング処理を用いている。選択されたテンプレート画像の基準Tmを中心位置Pmとする。
【0068】
図14(B)は、通信光を照射した状態で撮影したスポット光の撮影画像である。スポット光の位置は、光学部品110の姿勢変化に対応している。
スポット光のずれ量(Pd)は、Pd=Ps−Pmと表される。ずれ量(Pd)の算出は、制御部9内に格納された画像処理ソフトによって行われる。スポット光のずれ量(Pd)は、ターゲットマスク130の中心に対するスポット光のずれ量、すなわち、ミラーアレイ120の中心に対するスポット光のずれ量に相当する。
【0069】
スポット光の輝度重心座標Psの測定(ステップS105c)は、図16に示すフロー図に従って行われる。まず、ステップS1において、カメラ3の映像を制御部9内の画像メモリに格納する。この原画像をXとする(以下、画像(X)と称する)。そして、ステップS2において、画像(X)と予め作成しておいた規定レベルの画像Z(以下、画像(Z)と称する)との間で画像間差分処理を行う。この画像間差分処理の結果得られた画像は、入力濃淡画像A(以下、画像(A)という)とされる。図17(A)は、画像(A)を模式的に表している。
【0070】
ステップS3〜S5では、画像(A)の輝度分布(ヒストグラム)を算出し、最大輝度と最小輝度との差が既定値(Kr)以上であることを確認する。具体的には、ステップS3において、画像(A)の輝度レンジを正規化(最小輝度から最大輝度の範囲を0から255の範囲に変換)する。ステップS4では、ヒストグラムの幅(range=max(h)−min(h))を算出する。そして、ステップS5において、range<Krであるか否かを判断する。
【0071】
制御部9は、ステップS5において、Yesと判断したときは、処理を終了する。一方、ステップS5において、Noと判断したときはステップS6へ進む。ステップS6では、画像(A)の輝度範囲を正規化する。そして、ステップS7において、制御部9は、画像(A)を既定の輝度レベル(しきい値)で2値化する。これにより、2値化された画像B(以下、画像(B)という)が得られる。
【0072】
次に、ステップS8において、画像Bに対しノイズ除去処理を施す。具体的には、画像(B)に対し、最小画素単位の孤立点ノイズ除去を施す。
【0073】
次に、ステップS9において、画像(B)に対し、有効領域に接する画像を除去する措置を施す。図17(B)は、画像(B)における有効領域を表している。
【0074】
次に、ステップS10において、有効領域で最大面積の粒子を検出する。具体的には、ドットが連続することによって形成される塊のなかで最大面積のものを検出する。そして、ステップS11において、ステップS10において検出した最大面積の粒子に外接する図17(C)に示すような矩形領域を特定し、その面積(area)を判定する。このような矩形領域をスポット光領域とみなし、この領域内において輝度重心(Ps)を算出する。
【0075】
ステップS12では、面積(area)が既定の範囲内であるか否かを判断する。ステップS12では、area<Kaまたはarea>Kbとなる場合、すなわち、areaが既定の範囲内にない場合はYes判定となって、その後の処理を終了する。一方、areaが既定の範囲内であり、Noと判定したときは、ステップS13へ進む。
【0076】
ステップS13では、画像(A)の矩形領域内において、既定輝度(Ks)以上の画素を対象として輝度重心(Ps)を算出する。輝度重心(Ps)は、図17(D)に示すように、Ps(x)、Ps(y)で表現することができる。
【0077】
制御部9は、ステップS105dにおいて、スポット光の輝度重心(Ps)からスポット光のずれ量(Pd)を算出する。具体的には、Pd=Ps−Pmの関係より、X軸方向のずれ量Pd(x)、Y軸方向のずれ量Pd(y)を算出する。
【0078】
制御部9は、ステップS105eにおいて、X軸方向のずれ量Pd(x)が既定値Kx内に収まっているか否かの判断を行う。ここで、既定値Kxは、X軸方向のずれ量Pd(x)の許容値である。ステップS105eにおいてYesと判断したとき、すなわち、X軸方向のずれ量Pd(x)が既定値Kx内に収まっていないときはステップS105fへ進む。
制御部9は、ステップS105fにおいて、光学部品位置決め機構5に指令を発し、図9(B)に示すように光ファイバアレイ111を−Pd(x)移動させる。その後、ステップS105gへ進む。
ステップS105eにおいてNoと判断したとき、すなわち、X軸方向のずれ量Pd(x)が既定値Kx内に収まっているときは直接ステップS105gへ進む。
【0079】
制御部9は、ステップS105gにおいて、Y軸方向のずれ量Pd(y)が既定値Ky内に収まっているか否かの判断を行う。ここで、既定値Kyは、Y軸方向のずれ量Pd(y)の許容値である。ステップS105gにおいてYesと判断したとき、すなわち、Y軸方向のずれ量Pd(y)が既定値Ky内に収まっていないときはステップS105hへ進む。
制御部9は、ステップS105hにおいて、光学部品位置決め機構5に指令を発し、図9(A)に示すように光ファイバアレイ111を−Pd(y)移動させる。その後、ステップS105iへ進む。
ステップS105gにおいてNoと判断したとき、すなわち、Y軸方向のずれ量Pd(y)が既定値Ky内に収まっているときは直接ステップS105iへ進む。
【0080】
なお、ステップS105e及びステップS105fの処理は、ステップS105g及びステップS105hの処理よりも後に行ってもよい。また、ステップS105e及びステップS105fの処理は、ステップS105g及びステップS105hの処理と同時進行で行ってもよい。
【0081】
制御部9は、ステップS105iにおいて、X軸方向のずれ量Pd(x)が既定値Kx内に収まっているか否か、Y軸方向のずれ量Pd(y)が既定値Ky内に収まっているか否かの判断を行う。ステップS105iにおいてYesと判断したとき、すなわち、ずれ量Pd(x)とずれ量Pd(y)のいずれかが既定値内にないときは、ステップS105cに戻る。
一方、ステップS105iにおいてNoと判断したときは処理を終了する。すなわち、X軸方向のずれ量Pd(x)とY軸方向のずれ量Pd(y)のいずれもが既定値内に収まるまでステップS105c〜ステップS105hの処理を繰り返す。
【0082】
ステップS105に引き続き行われるステップS106では、制御部9は、光軸列の傾きを調整する。光軸列の傾きの調整は、光ファイバアレイ111のZ軸回りの角度を調整することによって行われる。図18は、光ファイバアレイ111の傾き調整の一例を示すフロー図である。図19は、光ファイバアレイ111の傾き調整の説明図である。以下、図18、図19を参照しつつ、光ファイバアレイ111の傾きを調整することによる光軸列の傾きの調整について説明する。
【0083】
光軸列の傾きの調整は、中心光軸を挟んだ2点のスポット光を利用して行う。具体的には、入出力ポートP3を通じてCh.1に照射されたλ1の通信光によるスポット光と、入出力ポートP3を通じてCh.5に照射されたλ5の通信光によるスポット光が利用される。
【0084】
このため、制御部9は、まず、ステップS106aにおいて、入出力ポートP3に波長λ1の通信光を入力するように光セレクタ2に指令を発する。その後、制御部9は、ステップS106bにおいて、カメラ位置決め機構7に指令を発し、カメラ3をCh.1の位置に移動させる。
【0085】
そして、ステップS106cにおいて、スポット光の位置(Pb1)、具体的にはスポット光の輝度重心(Pb1)を測定する。Pb1の測定方法は、上述した輝度重心(Ps)と同様である。このため、その詳細な説明は省略する。
【0086】
制御部9は、ステップS106dにおいて、入出力ポートP3に波長λ5の通信光を入力するように光セレクタ2に指令を発する。その後、制御部9は、ステップS106eにおいて、カメラ位置決め機構7に指令を発し、カメラ3をCh.5の位置に移動させる。
【0087】
そして、ステップS106fにおいて、スポット光の位置(Pb5)、具体的にはスポット光の輝度重心(Pb5)を測定する。Pb5の測定方法は、上述した輝度重心(Ps)と同様である。このため、その詳細な説明は省略する。
【0088】
制御部9は、このようにPd1、Pd5を測定した後、ステップS106gへ進む。ステップS106gにおいて、制御部9は、図19に示すようなPd1、Pd5の2点を通る直線(L)の傾き(θ)を算出する。傾き(θ)は、
θ=atan(L(y)/L(x))
によって算出される。
【0089】
そして、制御部9は、ステップS106hにおいて、傾き角度の判定を開始する。制御部9は、ステップS106iにおいて、傾き(θ)が所定値Kt内に収まっているか否かの判断を行う。ステップS106iにおいて、Yesと判断したとき、すなわち、傾き(θ)が既定値Kt内に収まっていないときはステップS106jに進む。そして、ステップS106jにおいて、制御部9は、光学部品位置決め機構5に指令を発し、図19に示すように光ファイバアレイ111を−θ移動させる。その後、ステップS106aに戻る。
一方、ステップS106iにおいてNoと判断したときは処理を終了する。すなわち、傾き(θ)が既定値Kt内に収まるまでステップS106a〜ステップS106jの処理を繰り返す。
【0090】
ステップS106に引き続き行われるステップS107では、制御部9は、光軸列の間隔を調整する。光軸列の間隔の調整は、集光レンズ114と補正レンズ115との間隔を調整することによって行われる。図20は、集光レンズ114と補正レンズ115との間隔調整の一例を示すフロー図である。図21は、集光レンズ114と補正レンズ115との間隔調整の説明図である。以下、図20、図21を参照しつつ、集光レンズ114と補正レンズ115との間隔を調整することによる光軸列の間隔の調整について説明する。
なお、補正レンズ115は、集光レンズ114と同様に、光軸方向(Z軸方向)の位置変化に対し、ミラーアレイ120の集光面における焦点を変化させる。補正レンズ115は、その焦点距離が長く、焦点変動が少ない。そして、中心光軸を挟んだ地点の間隔を調整する機能を有する。例えば、Ch.3に中心光軸を設定した場合の中心光軸とCh.1におけるスポット光との間隔や中心光軸からCh.5におけるスポット光との間隔等を調節する機能を有する。
【0091】
光軸列の間隔の調整は、中心光軸を挟んだ2点のスポット光を利用して行う。具体的には、入出力ポートP3を通じてCh.1に照射されたλ1の通信光によるスポット光と、入出力ポートP3を通じてCh.5に照射されたλ5の通信光によるスポット光が利用される。中心光軸を基準として対称となるべきスポット光を利用する趣旨である。
【0092】
このため、制御部9は、まず、ステップS107aにおいて、入出力ポートP3に波長λ1の通信光を入力するように光セレクタ2に指令を発する。その後、制御部9は、ステップS107bにおいて、カメラ位置決め機構7に指令を発し、カメラ3をCh.1の位置に移動させる。
【0093】
そして、ステップS107cにおいて、スポット光のずれ量(Pd1)、すなわち、スポット光の位置(Pb1)を測定する。スポット光の位置(Pd1)は、ステップS106cで説明したように、スポット光の輝度重心(Pb1)を測定することによって求められる。Pb1の測定方法は、上述した輝度重心(Ps)と同様である。このため、その詳細な説明は省略する。
【0094】
制御部9は、ステップS107dにおいて、入出力ポートP3に波長λ5の通信光を入力するように光セレクタ2に指令を発する。その後、制御部9は、ステップS107eにおいて、カメラ位置決め機構7に指令を発し、カメラ3をCh.5の位置に移動させる。
【0095】
そして、ステップS107fにおいて、スポット光のずれ量(Pd5)、すなわち、スポット光の位置(Pb5)を測定する。スポット光の位置(Pd5)は、ステップS106fで説明したように、スポット光の輝度重心(Pb5)を測定することによって求められる。Pb5の測定方法は、上述した輝度重心(Ps)と同様である。このため、その詳細な説明は省略する。
【0096】
制御部9は、ステップS107hにおいてPd1(x)<0かつPd5(x)>0であるか否かの判断を行う。Pd1(x)は、スポット光の位置(Pd1)の波長方向成分(X軸方向成分)である。Pd5(x)は、スポット光の位置(Pd5)の波長方向成分(X軸方向成分)である。ステップS107hにおける判断は、図21(A)に示すように、Pd1(x)とPd5(x)が中心光軸に近づいた状態となっているか否かを判断するものである。このステップS107hにおいて、Yesと判断したとき、すなわち、Pd1(x)とPd5(x)が中心光軸に近づいた状態となっていると判断したときは、ステップS107jへ進む。一方、ステップS107hにおいて、Noと判断したときは、ステップS107iへ進む。
【0097】
制御部9は、ステップS107iにおいてPd1(x)>0かつPd5(x)<0であるか否かの判断を行う。ステップS107iにおける判断は、図21(B)に示すように、Pd1(x)とPd5(x)が中心光軸から離れた状態となっているか否かを判断するものである。このステップS107iにおいて、Yesと判断したとき、すなわち、Pd1(x)とPd5(x)が中心光軸から離れた状態となっていると判断したときは、ステップS107jへ進む。一方、ステップS107hにおいて、Noと判断したときは、光軸列の間隔は適切に調整されているので処理を終了する。
【0098】
制御部9は、ステップS107jにおいて、Pd1とPd5の2点のずれ量をそれぞれ集光レンズ114と補正レンズ115との間隔の調整量(Pd(z))に換算する。
制御部9は、Pd1(x)を換算してPd1(z)を求め、Pd5(x)を換算してPd5(z)を求める。具体的には、
Pd1(z)=Pd1(x)×K1
Pd5(z)=Pd5(x)×K5
の換算を行う。ここで、K1、K5はそれぞれ換算係数である。
制御部9は、さらに、Pd1(z)、Pd5(z)からPd(z)を求める。具体的には、
Pd(z)=(Pd1(z)+Pd5(z))÷2
の演算を行う。すなわち、Pd1とPd5の2点の換算値の平均を求める。
【0099】
そして、制御部9は、ステップS107kにおいて調整量Pd(z)の判定を開始する。
【0100】
制御部9は、ステップS107lにおいて、調整量Pd(z)が既定値Kz内に収まっているか否かの判断を行う。ステップS107lにおいてYesと判断したとき、すなわち、調整量Pd(z)が既定値Kz内に収まっていないときはステップS107mへ進む。
制御部9は、ステップS107mにおいて、光学部品位置決め機構5に指令を発し、集光レンズ114と補正レンズ115との間隔を調整する。具体的には、補正レンズ115を−Pd(z)移動させる。その後、ステップS107aへ進む。
ステップS107lにおいてNoと判断したとき、すなわち、調整量Pd(z)が既定値Kz内に収まっているときは処理を終了する。すなわち、調整量Pd(z)が既定値Kz内に収まるまでステップS107a〜ステップS107lの処理を繰り返す。
【0101】
ステップS107に引き続き行われるステップS108では、制御部9は、再びステップS104と同様の中心光軸の焦点を調整する。この工程は、ステップS104の後に光学部品110の種々の調整工程を経ていることを考慮して再度、中心光軸の焦点を調整するものである。場合によって、この工程は省略することもできる。
【0102】
ステップS108に引き続き行われるステップS109では、ターゲットマスク130をミラーアレイ120に戻す。すなわち、ステップS108までの工程で光軸調整はほぼ完了したことになる。ミラーアレイ120も戻した後は、従来行われている波長応答特性を用いた最終光軸調整が行われる。また、全光学経路に対する照射試験を行う。従来であれば、ミラーアレイ120を装着した状態での光軸調整は、初期の光軸のずれ量が大きすぎ、調整作業が困難であった。本実施例では、予め光軸調整システム1000を用いた光軸調整が行われているためミラーアレイ120を装着した状態での最終的な光軸調整を容易に行うことができる。
【0103】
本実施例の光軸調整システム1000は、製品である波長選択スイッチ100が備えるミラーアレイ120をターゲットマスク130に置き換えて光軸調整を行う。このため、実際の波長選択スイッチ100の使用状態と同等の条件下で光軸調整を行うことができ、効率よく調整作業を行うことができる。
【0104】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…可変波長光源
2…光セレクタ
3…カメラ(撮影手段)
3a…レンズ部
4…照明具
5…光学部品位置決め機構
6…ターゲットマスク位置決め機構
7…カメラ位置決め機構
8…光パワーメータ
9…制御部(PC)
10…光ファイバ
100…波長選択スイッチ
110…光学部品
111…光ファイバアレイ
112…マイクロレンズアレイ
113…回折格子
114…集光レンズ
115…補正レンズ
116…フレーム
120…ミラーアレイ
M1〜M5…マイクロミラー
121…パッケージ
130…ターゲットマスク
131…ガラス基板
132…蒸着層
F1〜F5…ターゲット枠
1000…光軸調整システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された通信光が通過する光学部品の位置決めを行う光学部品位置決め手段と、
前記光学部品を通過した通信光を所望の方向へ反射するミラーに置き換えて前記光学部品と対向するように配置され、前記通信光を透過させるとともに反射する板体と、
当該板体の背面側に配置され、前記板体に前記通信光が照射されることによって当該板体に浮かび上がるスポット光を撮影する撮影手段と、
当該撮影手段によって取得された撮影情報と、前記板体が反射した反射光の光学特性に関する情報とに基づいて前記光学部品位置決め手段に位置決め指令を発する制御部と、
を備えた光学装置の光軸調整システム。
【請求項2】
光学部品を通過した通信光を所望の方向へ反射するミラーに代えて前記光学部品と対向するように、前記通信光を透過させるとともに反射する板体を配置する工程と、
光源が出射する前記通信光を、前記光学部品を通過させて前記板体に照射する工程と、
当該板体に照射されたスポット光を当該板体の背面側から撮影する工程と、
撮影されたスポット光に関する情報と、前記板体が反射した反射光の光学特性に関する情報とに基づいて、前記光学部品の位置決めをする工程と、
を含む光学装置の光軸調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−69923(P2011−69923A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219651(P2009−219651)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】