光学装置
【課題】 耐久性が高い光学装置を提供すること。
【解決手段】 光学装置2の可動層20のD2側の端部と基板10との間に吸引力F1を発生すると、可動層20はD2側の端部が基板10に近づく方向に角度θ1で傾斜する。このとき可動ミラー30は支柱14a,14bを支点として、D1側の端部が可動層20から遠ざかる方向に角度θ2で傾斜する。この結果、可動ミラー30は基板10から角度θ3(=θ1+θ2)で傾斜する。可動ミラー30だけでなく可動層20も傾斜させることによって、基板10からの傾斜角度θ3を得るために必要な可動ミラー30の傾斜角度θ2を小さくすることができる。可動ミラー30の連結部にかかる負荷を低減することができる。光学装置の耐久性を向上させることができる。
【解決手段】 光学装置2の可動層20のD2側の端部と基板10との間に吸引力F1を発生すると、可動層20はD2側の端部が基板10に近づく方向に角度θ1で傾斜する。このとき可動ミラー30は支柱14a,14bを支点として、D1側の端部が可動層20から遠ざかる方向に角度θ2で傾斜する。この結果、可動ミラー30は基板10から角度θ3(=θ1+θ2)で傾斜する。可動ミラー30だけでなく可動層20も傾斜させることによって、基板10からの傾斜角度θ3を得るために必要な可動ミラー30の傾斜角度θ2を小さくすることができる。可動ミラー30の連結部にかかる負荷を低減することができる。光学装置の耐久性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームの反射方向を変える光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている光学装置は、基板と可動層支持部と可動梁と可動層と可動ミラーと支柱を備えている。可動層は、可動梁と可動層支持部を介して基板に連なっており、基板から間隔を隔てた高さで伸びている。可動ミラーの端部は可動層の端部に連結されている。支柱は、基板の表面から可動層を貫通して可動ミラーの下面に向けて伸びている。
可動層と基板との間に静電引力が発生していない状態では、可動ミラーが可動層に重なっている。可動層と基板との間に静電引力を発生させると、可動層が基板に近づく方向に平行移動する。この結果、可動層に固定されている側の可動ミラーの端部が基板に近づくが、支柱に当接する部分では可動ミラーがそれ以上には基板に接近できないことから、可動ミラーが傾斜する。可動ミラーを傾斜させることによって、光ビームの反射方向を変えることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005-70091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高コントラストな投射像を得たいという要求がある。このために、可動ミラーを大きく傾斜させて、光ビームの反射方向を大きく変化させたいという要求がある。特許文献1の光学装置では、可動層が基板と平行に変位している。このために、可動ミラーを基板から角度θで傾斜させるには、可動ミラーを可動層から角度θで傾斜させる必要がある。この構成によると、可動ミラーを大きく傾斜させるほど、可動ミラーと可動層の連結部にかかる負荷が大きくなる。特許文献1の光学装置は耐久性に不満を残している。
【0005】
本発明では、耐久性が高い光学装置を提供する。特に、可動ミラーと可動層の連結部の負荷が小さい光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示されている技術は、光ビームの反射方向を変える光学装置に関する。この光学装置は、基板と可動層支持部と可動層と可動ミラーとアクチュエータと可動ミラー支持部を備えている。
可動層支持部は、基板の表面から上方に伸びている。
可動層は、可動層支持部に連なっており、基板から間隙を隔てた高さで基板に対向して自由端に至るまで伸びている。
可動ミラーは、その基端が可動層の自由端側に連なっており、可動層の上方を可動層支持部側に向けて伸びている。可動ミラーが伸びている先端は自由端となっている。可動ミラーの可動層と反対側の面(可動ミラーの上面)に、反射面が形成されている。
【0007】
アクチュエータは、可動層の自由端側を基板に向けて吸引する吸引力を発生する。
可動ミラー支持部は、基板の表面から可動ミラーの所定部分に向けて伸びている。可動ミラー支持部は、可動ミラーの前記所定部分がそれ以上に基板に接近することを防止する。
上記のアクチュエータに吸引力を発生させると、可動層は、可動層の自由端が基板に近づく方向に基板に対して第1傾斜角だけ傾斜する。可動ミラーは、可動ミラーの自由端側が可動層から遠ざかる方向に可動層に対して第2傾斜角だけ傾斜する。その結果、可動ミラーが基板に対して第1傾斜角に第2傾斜角を加えた角度だけ傾斜する。
【0008】
この構成によると、基板に対して可動層を傾斜させ、さらに傾斜した可動層に対して可動ミラーを傾斜させることによって、可動層と可動ミラーの間の角度変化(即ち連結部の角度変化)が小さくても、基板から見れば可動ミラーを大きく傾斜させることができる。連結部の角度変化を小さくすることによって、可動ミラーを傾斜させるときに連結部にかかる負荷を軽減することができる。光学装置の耐久性を向上させることができる。
【0009】
可動ミラーは、可動梁を介して可動層に連結していてもよい。この構成によると、アクチュエータが吸引力を発生すると、可動梁が柔軟に屈曲し、それに追従して可動ミラーが傾斜する。柔軟な可動梁を配置することで、可動ミラーを傾斜させるために必要な吸引力を小さくすることができ、駆動力(例えば駆動電圧)を小さくすることができる。また、連結部に作用する負荷を軽減することができ、耐久性を向上することができる。
【0010】
可動梁は、可動層の自由端側から上方に伸びている立ち上がり部に連なっているとともに、可動層から間隔を隔てた高さで伸びていてもよい。この場合、可動ミラーも可動層から間隔を隔てた高さで伸びている。
立ち上がり部を配置すると、可動梁に捻じり梁を使用することができる。例えば、可動層の自由端に沿った方向に伸びる捻じり梁を配置してもよい。その捻じり梁の長手方向の中心に、捻じり梁に直交する方向に伸びる可動梁を連結させてもよい。あるいは曲げ梁の先端に可動ミラーを連結させてもよい。
【0011】
可動ミラーが可動層から間隔を隔てた高さで伸びている場合、アクチュエータが吸引力を発生しないときに、可動ミラーの自由端側が自重によって可動層に近づく方向にたわむ可能性がある。可動ミラーの自由端側がたわむと、可動ミラーの反射面の角度の安定性を確保できなくなってしまう可能性がある。
【0012】
これを防ぐためには可動ミラー補助支持部を設けることが好ましい。可動ミラー補助支持部は、基板及び/又は可動層から、可動ミラーの自由端側の下面に向けて伸びている。
可動ミラー補助支持部が設けられていると、アクチュエータが吸引力を発生しないときに可動ミラーの自由端側の下面が可動ミラー補助支持部に当接して支持される。このために、可動ミラーの自由端側が想定外にたわむことを禁止することができる。アクチュエータが吸引力を発生しないときの可動ミラーの反射面の角度の安定性を向上させることができる。
【0013】
可動ミラーの自由端側を基板側に吸引する別のアクチュエータが存在していてもよい。
このアクチュエータは、可動ミラーが可動層に対して傾斜した状態から、可動ミラーが可動層に沿って伸びる状態(例えば水平状態)に戻すための吸引力を発生させる。この構成によると、可動ミラーをすばやく可動層に沿った姿勢に戻すことができる。可動ミラーの応答速度を向上させることができる。
【0014】
可動層は、可動層支持部の一方側と他方側に伸びていてもよい。この場合、可動ミラーは、可動層の一方側の自由端側に連なっていてもよい。アクチュエータは、可動層の一方側と他方側のうちの任意の側を選択し、選択した側の自由端側を基板に向けて吸引する吸引力を発生する。可動ミラー支持部は、可動層支持部よりも一方側に存在している。
【0015】
この構成によると、可動層を一方側と他方側に傾斜させることができる。可動層を一方側に傾斜させると、可動ミラー支持部が可動ミラーを可動層から傾斜させる。即ち、可動層の基板からの傾斜角度と可動ミラーの可動層からの傾斜角度を足し合わせた角度だけ、可動ミラーを基板に対して傾斜させることができる。一方において、可動層を他方側に傾斜しても可動ミラーは可動層から傾斜することができない。しかし、可動ミラーは可動層に伴って基板に対して可動層と同じ角度で傾斜する。可動ミラーを一方側と他方側に傾斜させることで可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向を大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【0016】
可動層支持部は、基板の表面の一方側と他方側にそれぞれ存在していてもよい。すなわち間隔をおいて配置してもよい。この場合は、第1可動層と第2可動層を用意する。第1可動層は、一方側の可動層支持部から他方側の可動層支持部に向けて伸びている。第2可動層は、他方側の可動層支持部から一方側の可動層支持部に向けて伸びている。即ち、第1可動層と第2可動層は、すれ違う位置関係で伸びている。可動ミラーは、一方側の端部が第2可動層の一方側の自由端側に連なっており、他方側の端部が第1可動層の他方側の自由端側に連なっている。
アクチュエータは、第1可動層と第2可動層のうちの任意の層を選択して、選択した層の自由端側を基板に向けて吸引する吸引力を発生する。可動ミラー支持部は、可動ミラーの一方側の端部の近傍と他方側の端部の近傍の少なくとも一方に存在している。
【0017】
可動ミラーの一方側から観察すると、他方側の端部は第1可動層に連なっており、自由端でなくなっているように思われる。しかし、第1可動層は柔軟であり、可動ミラーの他方側の端部が基板に対して接近、離反する動作を拘束しない。可動ミラーの他方側の端部は自由端となっているということができる。
同様に、可動ミラーの他方側から観察すると、一方側の端部は第2可動層に連なっており、自由端でなくなっているように思われる。しかし、第2可動層は柔軟であり、可動ミラーの一方側の端部が基板に対して接近、離反する動作を拘束しない。可動ミラーの一方側の端部は自由端となっているということができる。
第1可動層と第2可動層の柔軟性によって、可動ミラーの一方側の端部と他方側の端部の双方が自由端であるといえる。
【0018】
この構成の光学装置の動作について説明する。なお、可動ミラー支持部が可動ミラーの一方側の端部の近傍のみに存在する場合を一例として説明する。一方側に伸びている第2可動層の自由端側に吸引力を発生すると、第2可動層は自由端側が基板に近づく方向に傾斜する。可動ミラーは可動ミラー支持部によって、それ以上には基板に近づけないことから、第2可動層から傾斜する。即ち、第2可動層の基板からの傾斜角度と可動ミラーの第2可動層からの傾斜角度を足し合わせた角度だけ、可動ミラーを基板に対して傾斜させることができる。このとき第1可動層は、他方側に伸びる自由端側が可動ミラーの他方側に連結されているために、可動ミラーに追従して傾斜する。即ち、可動ミラーの他方側の端部(自由端)と第1可動層の自由端は、基板から遠ざかる方向に変位する。
【0019】
一方において、他方側に伸びている第1可動層の自由端側に吸引力を発生すると、第1可動層は自由端側が基板に近づく方向に傾斜する。可動ミラーの他方側の端部の近傍に可動ミラー支持部が配置されていなければ、可動ミラーを第1可動層から傾斜させることはできない。可動ミラーは第1可動層に伴って第1可動層と同じ角度だけ傾斜する。このとき第2可動層は、一方側に伸びる自由端側が可動ミラーの一方側に固定されているために、可動ミラーに追従して傾斜する。即ち、可動ミラーの一方側の端部(自由端)と第2可動層の自由端は、基板から遠ざかる方向に変位する。
第1可動層と第2可動層を利用して可動ミラーを一方側と他方側に傾斜させることで可動ミラーを大きく変位させることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
可動ミラーの他方側の端部の近傍にも可動ミラー支持部を配置しておけば、第1可動層の自由端側が基板に近づく方向に傾斜したときに、可動ミラーの他方側の端部が自由端となって可動ミラーが第1可動層から傾斜する関係を得ることができる。可動ミラーの他方側の端部が基板に近づく方向に可動ミラーを傾斜させる場合にも、可動ミラーを基板に対して大きく傾斜させることができる。
可動ミラーを一方側と他方側に大きく傾斜させることによって可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向をさらに大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【0020】
可動ミラー支持部は支柱であってもよい。支柱は可動ミラーの一方側の端部の近傍と他方側の端部の近傍の双方に存在していてもよい。アクチュエータが第1可動層の自由端側に前記吸引力を発生すると、第1可動層は自由端側が基板に近づく方向に傾斜する。このとき、他方側の支柱の上端が可動ミラーの下面に当接している。このために、可動ミラーは第1可動層から傾斜する。即ち、第1可動層の基板からの傾斜角度と可動ミラーの第1可動層からの傾斜角度を足し合わせた角度だけ、可動ミラーを基板に対して傾斜させることができる。このときには可動ミラーの一方側の端部が自由端となって傾斜する。
【0021】
アクチュエータが第2可動層の自由端側に吸引力を発生すると、第2可動層は自由端側が基板に近づく方向に傾斜する。このとき、一方側の支柱の上端が可動ミラーの下面に当接している。このために、可動ミラーは第2可動層から傾斜する。即ち、第2可動層の基板からの傾斜角度と可動ミラーの第2可動層からの傾斜角度を足し合わせた角度だけ、可動ミラーを基板に対して傾斜させることができる。このときには可動ミラーの他方側の端部が自由端となって傾斜する。
可動ミラーを一方側と他方側に傾斜させることで可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向を大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
可動ミラーの構成については特に限定されない。可動ミラーは、幅の細い可動梁を介して可動層に連結されていてもよい。また、可動梁の構成については特に限定されない。可動梁は曲げ梁であってもよいし、捻じり梁であってもよいし、曲げ梁と捻じり梁を組み合わせたものであってもよい。可動梁を柔軟に屈曲させ、それに追従して可動ミラーを傾斜させてもよい。
なお、ここでいう屈曲という用語は最も広義に解釈されるべき概念である。屈曲点が1点以上存在していればよく、屈曲点が無限に存在して全体として湾曲することも含む概念である。
可動ミラーの反射面の形成方法については特に限定されない。反射面は、例えばシリコン層の上面(即ち、基板と反対側の面)に金属膜を形成させたものであってもよい。あるいは、可動ミラー自体の上面を反射面としてもよい。
【0023】
可動層の構成については特に限定されない。可動層は、幅の細い可動梁を介して可動層支持部に連結されていてもよい。また、可動梁の構成については特に限定されない。可動梁は曲げ梁であってもよいし、捻じり梁であってもよいし、曲げ梁と捻じり梁を組み合わせたものであってもよい。可動梁を柔軟に屈曲させ、それに追従して可動層を傾斜させてもよい。
【0024】
アクチュエータの構成については特に限定されない。例えば可動層側の電極と基板側の電極との間に電位差を発生させ、静電引力を発生させてもよい。この場合、可動層の全体が導電性であり(例えば可動層が不純物拡散されたポリシリコンで形成されており)、可動層の全体が可動層側の電極となっていることが好ましい。基板側の電極の構成については特に限定されない。例えば基板が単結晶シリコンで形成されており、基板自身の上層に不純物を拡散させることによって基板側の電極を形成してもよい。あるいは、基板の上面に不純物拡散されたポリシリコン膜を形成させてもよい。基板側の電極は可動層の自由端側に対向する位置に形成されていてもよいし、可動層の全体に対向する位置に形成されていてもよい。可動層をアースに接地し、基板側の電極を帯電させることによって、可動層と帯電させた基板側の電極との間に静電引力を発生させることができる。
また、可動層の自由端側と基板にコイルを巻きつけ、電流を流すことによってローレンツ力を発生させてもよい。
【0025】
可動ミラー支持部の構成については特に限定されない。可動ミラー支持部は支柱であってもよい。あるいは梁であってもよい。この場合の梁は、基板から上方に伸びる支持部によって支持されており、可動ミラーの側面又は表面を支持するものであってもよい。
可動ミラー補助支持部の構成については特に限定されない。可動ミラー補助支持部は支柱であってもよい。
また、本明細書で提供する光学装置を1つの光学素子として、複数の光学素子を1次元又は2次元に配列してもよい。
【0026】
以下に説明する実施例の主要な特徴を整理しておく。
(特徴1)基板は単結晶シリコンで形成されている。可動層は不純物拡散されたポリシリコンで形成されている。
(特徴2)可動ミラー支持部は支柱である。支柱は、可動層に形成されたスリットを通過して可動ミラーに当接している。
【実施例】
【0027】
(第1実施例)
図面を参照して第1実施例を説明する。図1(a)は光学装置2の斜視図を示す。図1(b)は光学装置2のb−b線概略縦断面図を示す。光学装置2は、基板10と可動層支持部26a,26bと可動層20と立ち上がり部36a,36bと可動梁38,34と可動ミラー30と支柱14a,14b,14cと電極12とを備えている。図1(a)では図示の明瞭化のために、可動層20と可動ミラー30と可動梁38,34の厚みを図示していない。同様に図1(b)では可動層20と可動ミラー30の一部と可動梁38,34の厚みと立ち上がり部36a,36bの面方向の幅を図示していない。また、可動層20と可動ミラー30を透視して図示している。図1(a),(b)以降の図でも同様である。
矢印D1は光学装置2の右側(一方側)を示し、矢印D2は光学装置2の左側(他方側)を示す。矢印D3,D4は基板10に平行な面内で矢印D1,D2に直交している。矢印D3は手前側を示し、矢印D4は奥側を示している。
【0028】
可動層支持部26a,26bは、基板10のD1側の上面から上方に向けて高さL1まで伸びている。可動層支持部26a,26bは、D3−D4方向に間隔を空けて配置されている。可動層支持部26aはD3側に配置されている。可動層支持部26bはD4側に配置されている。
可動層20は、可動梁24a,24bと板状部18と貫通孔16a,16b,16cを備えている。可動梁24aはD1側の端部が可動層支持部26aの上端に固定されており、その一端からD2側に伸びている。可動梁24bはD1側の端部が可動層支持部26bの上端に固定されており、その一端からD2側に伸びている。可動梁24a,24bのD2側の端部に板状部18のD1側の端部が固定されている。板状部18は、可動梁24a,24bに固定されている端部からD2側に伸びている。可動層20は、後記する電極12を帯電させていない状態では、基板10からL1だけ離れた高さで基板10と平行に伸びている。
【0029】
板状部18には、垂直方向に貫通している貫通孔16a〜16cが形成されている。貫通孔16a,16bは、板状部18のD2側に形成されている。貫通孔16a,16bはD3−D4方向に同一直線状に形成されている。貫通孔16a,16bはD3−D4方向に間隔を空けて形成されている。板状部18のD1側に貫通孔16cが形成されている。貫通孔16cを通ってD1−D2方向に伸びる仮想線を軸として、光学装置2は線対称である。
【0030】
可動層20は不純物拡散されたポリシリコンで形成されているため、導電性を有している。可動層20はアースに接地されている。基板10の表面上において、可動層20の全体に対向する位置に電極12が形成されている。電極12は不純物拡散されたポリシリコンで形成されている。なお、電極12の構成については特に限定されない。例えば、電極12は、単結晶シリコンで形成された基板10の上層に不純物を拡散させることによって形成されてもよい。
【0031】
基板10の電極12は、図示しない電気回路に接続されている。電気回路を利用して電極12を帯電させることによって、電極12と可動層20との間に電位差を発生させることができる。電極12と可動層20との間に吸引力F1を発生させることができる。可動層20のD1側の端部は可動層支持部26a、26bによって基板10から距離L1だけ離れた位置に支持されているので、吸引力F1が発生すると、可動層20のD2側の端部近傍が基板10に接近する。吸引力F1が発生すると、可動層20は傾斜する。
後記する支柱14a〜14cは、貫通孔16a〜16cを貫通しており、可動層20が傾斜するのを妨げない。
【0032】
立ち上がり部36a,36bは、可動層20のD2側の端部の上面から上方に伸びている。立ち上がり部36a,36bは、基板10からの高さがL2にまで伸びている。立ち上がり部36a,36bは、D3−D4方向に間隔を空けて存在している。立ち上がり部36aはD3側に存在している。立ち上がり部36bはD4側に存在している。
【0033】
可動梁38,34は、基板10から距離L2の高さで基板10と平行に伸びている。可動梁38はD3−D4方向に伸びている。可動梁38のD3側の端部は、立ち上がり部36aの上端に連結している。可動梁38のD4側の端部は、立ち上がり部36bの上端に連結している。可動梁34は、D1−D2方向に伸びている。可動梁34のD2側の端部は、可動梁38の長手方向の中心部に連結している。可動梁34のD1側の端部に、可動ミラー30のD2側の端部が連結している。
可動梁38はしなやかに捩れ、可動梁34はしなやかに湾曲する。
【0034】
可動ミラー30は、板状部32と反射膜28を備えている。板状部32は、可動梁34に連結しているD2側の端部からD1側に伸びている。板状部32のD1側の端部(即ち自由端)は、可動層支持部26a,26bのD1側の端部を覆う位置まで伸びている。
立ち上がり部36a,36bと可動梁38,34を連結部と呼ぶ。可動ミラー30は、連結部によって可動層20に連結されている。板状部32の上面に反射膜28が形成されている。光ビーム40が反射膜28に入射すると、光ビーム40は方向42に反射される。
なお、図1(b)では図示の明瞭化のために、可動ミラー30の板状部32の厚みを省略して示しており、反射膜28の厚みを省略せずに示している。図1(b)以降の図でも同様である。
【0035】
基板10の上面から支柱14a〜14cが上方に伸びている。支柱14aは貫通孔16aを通過して上方に伸びている。支柱14bは貫通孔16bを通過して上方に伸びている。支柱14cは貫通孔16cを通過して上方に伸びている。支柱14a〜14cの上端は、可動ミラー30の板状部32の下面に当接している。
電極12を帯電させていない状態では、可動ミラー30が基板10から距離L2だけ離れた位置を基板10に平行に伸びている。即ち、支柱14a〜14cの上端が可動ミラー30の板状部32の下面に当接している。
【0036】
図2(a),(b)を用いて光学装置2の動作を説明する。図2(a)は電極12を帯電させたときの光学装置2の斜視図を示す。図2(b)は、図2(a)のb−b線概略縦断面図を示す。
電極12を帯電させると電極12と可動層20の間に吸引力F1が発生し、可動層20のD2側の端部(即ち自由端)が基板10に近づくように傾斜する。具体的にいうと、板状部18のD2側の端部が基板10に近づく方向に、可動層20の可動梁24a,24bが湾曲する。可動層20は、板状部18のD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。可動梁24a,24bは幅が細いために剛性が低い。柔軟な可動梁24a,24bを配置することによって、板状部18を傾斜させるために必要な駆動電圧を低減することができる。吸引力F1が発生すると、板状部18と可動層20は、基板10から角度θ1だけ傾斜する。
【0037】
なお、可動層20は、板状部18のD2側の端部が基板10に当接するまで傾斜してもよいし、当接しなくてもよい。可動層20と基板10とが当接したときに電気回路が短絡することを禁止するために、可動層20と基板10とが当接する部分の少なくともいずれか一方側に絶縁体が形成されていることが好ましい。
【0038】
可動層20のD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜すると、可動ミラー30のD2側の端部も基板10に近づく。可動ミラー30の板状部32の下面が支柱14a,14bの上端に当接しているために、それ以上には基板10に向けて接近することができない。その結果、支柱14a,14bに当接している部分を支点として、板状部32のD1側の端部(即ち自由端)が可動層20から遠ざかる方向に傾斜する。具体的にいうと、吸引力F1によって可動ミラー30のD2側の端部が基板10に接近すると、可動梁38が反時計回りに捻じれ、可動梁34のD1側の端部も反時計回り(可動層20から遠ざかる方向)に湾曲する。その結果、板状部32が反時計回りに傾斜する。可動梁38,34は幅が細いため剛性が低い。柔軟な可動梁38,34を配置することによって、可動ミラー30を傾斜させるために必要な駆動力を低減することができる。また、連結部が柔軟な可動梁38,34を備えているので、可動ミラー30の傾斜時に連結部に過大な負荷がかかることが無い。柔軟な可動梁38,34を利用しているので、耐久性が向上する。
【0039】
吸引力F1が発生すると、可動ミラー30は角度θ1で傾斜している可動層20からさらに角度θ2で傾斜する。即ち、可動ミラー30は基板10から角度θ3(=θ1+θ2)で傾斜する。光ビーム40が可動ミラー30の反射膜28に入射すると、方向44に反射される。電極12に電圧を印加することによって、光ビーム40の進行方向を方向42から方向44に変えることができる。
【0040】
なお、D1側の支柱14a,14bの配置位置及び個数については特に限定されない。例えば1本の支柱のみでも可動ミラー30を傾斜させることができるが、2本以上存在しているほうが好ましい。これによって、可動ミラー30を安定して傾斜させることができる。
【0041】
この構成によると、可動ミラー30を基板10から角度θ3で傾斜させるためには、可動ミラー30を可動層20から角度θ2(<θ3)だけ傾斜すればよい。可動層20からの可動ミラー30の傾斜角度を小さくすることができる。これによって、可動ミラー30の連結部(即ち立ち上がり部36a,36bと可動梁38,34)にかかる負荷を低減することができる。光学装置2の耐久性を向上させることができる。
【0042】
図2(a)の状態において電極12の帯電を停止すると、図1(a)の状態に戻る。このとき、可動ミラー30のD1側の端部は支柱14cの上端に当接する位置(即ち高さL2)まで下方に傾斜する。D1側に支柱14cを配置することによって、可動ミラー30のD1側の端部が高さL2よりも下方にたわんでしまうことを禁止することができる。即ち、支柱14cを配置することによって、電極12を帯電させていないときの可動ミラー30の反射膜28の水平性を向上させることができる。これによって、電極12に電圧を印加していないときの光ビームの反射方向の安定性を向上させることができる。
なお、D1側の支柱14cの配置位置及び個数については特に限定されない。例えば支柱14a,14bに対向するD1側の端部側に2本の支柱が形成されていてもよい。
【0043】
本実施例の光学装置2では、可動層20を基板10から傾斜させ、さらに可動ミラー30を可動層20から傾斜させている。即ち、可動ミラー30だけでなく可動層20をも傾斜させている。これによって、可動ミラー30を基板10から角度θ3だけ傾斜させるためには、可動ミラー30を可動層20から角度θ2(<θ3)だけ傾斜させればよい。可動ミラー30の連結部にかかる負荷を低減することができる。光学装置2の耐久性を向上させることができる。
【0044】
(第2実施例)
図3(a)は、第2実施例で提供する光学装置3の斜視図を示す。図3(b)は、図3(a)のb−b線概略縦断面図を示す。光学装置3は、可動ミラーを可動層から傾斜させるための構成が光学装置2と異なっている。このために、光学装置2と同様の構成である部分は光学装置2と同じ符号を使用し、重複説明を省略する。以下の実施例でも同様である。
【0045】
光学装置3は、可動ミラー支持部15a,15bと可動梁17a,17bを備えている。可動ミラー31は、板状部33と切欠き部23a,23bを備えている。板状部33のD2側の端部の近傍に部分19が存在している。切欠き部23aは部分19からD3側に形成されている。切欠き部23bは部分19からD4側に形成されている。可動層21においても、切欠き部23a,23bに対向する位置にそれぞれ切欠き部が形成されている。可動ミラー支持部15aは基板10から切欠き部23aに向けて上方に伸びている。可動ミラー支持部15bは基板10から切欠き部23bに向けて上方に伸びている。
可動梁17a,17bはD3−D4方向に同一直線状に伸びている。可動梁17aは可動ミラー支持部15aの上端と部分19のD3側の端部を連結している。可動梁17bは可動ミラー支持部15bの上端と部分19のD4側の端部を連結している。
【0046】
図4(a),(b)を用いて光学装置3の動作を説明する。図4(a)は可動層21と基板10の間に吸引力F1を発生させたときの光学装置3の状態を示す。図4(b)は図4(a)のb−b線概略縦断面図を示す。吸引力F1が発生すると、可動層21はD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。これに追従して可動ミラー31のD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。このとき、部分19は基板10からL2の高さで可動梁17a,17bに連結されている。このために、部分19が可動梁17a,17bに連結されている部分を支点として可動ミラー31はD1側の端部が基板10から遠ざかる方向に傾斜する。このとき、可動梁17a,17bは反時計回りに捻じれる。
光学装置3では、可動ミラー支持部15a,15bと可動梁17a,17bによって可動ミラー31を支持することによって、可動ミラー31を可動層21から傾斜させることができる。可動ミラー支持部15a,15bと可動梁17a,17bは、第1実施例の光学装置2の支柱14a,14bと同等の機能を有する。
【0047】
(第3実施例)
図5(a)は、第3実施例の光学装置4の斜視図を示す。図5(b)は図5(a)のb−b線概略断面図を示す。光学装置4は、可動ミラーを可動層に向けて吸引する吸引力を発生するアクチュエータが存在している点が光学装置2と異なっている。
光学装置4の可動層27は板状部35と可動梁24c,24dとで囲まれる位置に切欠き部25を備えている。切欠き部25は板状部35のD1側に存在している。支柱14cは基板10から切欠き部25を通過して可動ミラー30まで伸びている。電極13は支柱14cにL1の高さ(即ち可動層27の高さ)で連結されている。電極13は切欠き部25の内側で伸びている。図5(b)では分かりやすくするために、電極13に厚みを持たせて示している。電極13は図示しない電気回路を接続されており、この電気回路に印加することによって電極13を帯電させることができる。
【0048】
なお、電極13の構成については特に限定されない。電極13は不純物拡散されたポリシリコンで形成されていてもよい。電極13の位置については特に限定されない。電極13は可動ミラー30と基板10との間の高さに存在していればよい。また、電極13の支持方法についても特に限定されない。例えば基板10からL1の高さまで凸部が伸びており、その凸部の上面に電極13が形成されていてもよい。あるいは、可動層27の板状部35がD1側まで伸びており、その上面に電極13が形成されていてもよい。
【0049】
光学装置4の可動ミラー30は不純物拡散されたポリシリコンで形成されているため、導電性を有している。可動ミラー30はアースに接地されている。電極13を帯電させることによって可動ミラー30と電極13との間に電位差を生じさせ、可動ミラー30を電極13に向けて吸引する吸引力F2を発生することができる。
【0050】
図6を用いて吸引力F2を発生させるタイミングについて説明する。図6は光学装置4のb−b線概略縦断面図を示す。図6は吸引力F1を発生させて可動ミラー30のD1側の端部を可動層27から離れる方向に傾斜させている状態を示す。この状態で吸引力F1を解除した後に吸引力F2を発生させることが好ましい。吸引力F2によって、可動ミラー30のD1側の端部が可動層27に近づく方向に傾斜する。可動ミラー30は支柱14cの上端に当接する位置(即ちL1の高さ)まで戻る。即ち、電極12を帯電させていない状態(図5の状態)に戻る。
光学装置4では、吸引力F2を発生させて可動ミラー30を印加していない状態に素早く戻すことができる。可動ミラー30の傾斜方向を切り替える応答速度を高速化することができ、高コントラストな画像を得ることができる。
【0051】
(第4実施例)
図7〜図9を用いて第4実施例の光学装置5の構成を説明する。図7は光学装置5の可動ミラー30の平面図を示す。図8は光学装置5の可動層50の平面図を示す。図9は図7,8のIX−IX線概略縦断面図を示す。光学装置5は、可動層50の可動層支持部の構成と、アクチュエータの構成が光学装置2と異なっている。なお、図9では可動層50の高さ方向の厚みを省略せずに示している。また、図9では後記する可動梁支持部11bを省略している。第4実施例における図9以降の図でも同様である。
【0052】
光学装置5は、可動梁支持部11a,11bと可動梁52a,52bと可動層50と支柱14dを備えている。可動梁支持部11a,11bは基板10から可動層50の高さ(L1の高さ)まで上方に伸びている。可動梁支持部11aは可動層50のD3側に存在している。可動梁支持部11bは可動層50のD4側に存在している。可動梁52a,52bは、L1の高さでD3−D4方向に伸びている。可動梁52aは、可動層50のD3側の端部と可動梁支持部11aのD4側を連結している。可動梁52bは、可動層50のD4側の端部と可動梁支持部11bのD3側を連結している。可動梁52a,52bは幅が細く剛性が小さいため、後述する吸引力を発生させると、柔軟に捩れる。
【0053】
基板10の上面において、可動層50のD1側の端部に対向する位置に電極12aが形成されている。基板10の上面において、可動層50のD2側の端部に対向する位置に電極12bが形成されている。図示しない電気回路によって電極12a,12bのいずれかを帯電させることによって、吸引力F3と吸引力F4のいずれかを発生することができる。吸引力F3は可動層50のD2側に発生する。吸引力F4は可動層50のD1側に発生する。
可動層50のD2側にスリット16dが形成されている。支柱14dが基板10からスリット16dを通過して可動ミラー30の下面に当接するまで伸びている。
【0054】
図10,11を用いて光学装置5の動作を説明する。図10,11は図7,8のIX−IX線概略縦断面図を示す。図10は可動層50のD2側に吸引力F3が発生している状態を示す。吸引力F3が発生すると、可動層50はD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。可動層50は可動梁52a,52bを通ってD3−D4方向に伸びる傾斜中心軸54の周りに傾斜する(図8参照)。これに追従して可動ミラー30のD2側は基板10に近づく方向に変位する。可動ミラー30のD1側は支柱14dを支点として可動層50から遠ざかる方向に傾斜する。このとき可動ミラー30は基板10から角度θ4で傾斜する。
【0055】
図11は可動層50のD1側に吸引力F4が発生している状態を示す。吸引力F4が発生すると、可動層50は傾斜中心軸54の周りにD1側の端部が基板10に近づく方向に角度θ5で傾斜する。これに追従して可動ミラー30のD1側は基板10に近づく方向に傾斜する。このとき可動ミラー30は基板10から角度θ5で傾斜する。即ち、可動ミラー30は可動層50と同じ角度θ5で基板10から傾斜する。このために、θ5は図10のθ4よりも小さい。しかしながら、可動ミラー30をD1側とD2側に傾斜させることで、可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向を大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【0056】
(第5実施例)
図12(a),(b)を用いて第5実施例の光学装置6の構成を説明する。図12(a)は第5実施例の光学装置6の斜視図を示す。図12(b)は光学装置6のb−b線概略縦断面図を示す。光学装置6も第4実施例の光学装置5と同様に可動ミラーがD1側とD2側に傾斜するが、そのための構成が光学装置5と異なっている。
支柱14e〜14hは基板10から上方に伸びている。外力が作用していないとき、支柱14e〜14hは可動ミラー70の下面に当接している。支柱14e,14fは可動ミラー70のD2側に当接する位置に伸びている。支柱14g,14hは可動ミラー70のD1側に当接する位置に伸びている。
【0057】
可動層60は部分60a,60bを備えている。部分60aは可動梁64a,64bと板状部68a,68b,68cと切欠き部69a,69bを備えている。部分60aは高さL1を基板10と平行に伸びている。可動梁64a,64bはD1−D2方向に伸びている。可動梁64aはD1側の端部が基板10からの高さL1で支柱14gに固定されており、その端部からD2側に伸びている。可動梁64bはD1側の端部が高さL1で支柱14hに固定されており、その端部からD2側に伸びている。支柱14g,14hは高さL1よりも上方に伸びている。支柱14e,14fも同様である。
【0058】
可動梁64aのD2側の端部に板状部68aのD1側の端部が連結されている。板状部68aは連結されている端部からD2側に伸びている。可動梁64bのD2側の端部に板状部68bのD1側の端部が連結されている。板状部68bは連結されている端部からD2側に伸びている。板状部68cは板状部68a,68bよりもD2側に存在している。板状部68cのD1側の端部は、板状部68a,68bのD2側の端部に間隔を空けて連結されている。
【0059】
板状部68a〜68cと可動梁64a,64bで囲まれる部分に切欠き部69aが形成されている。板状部68b,68cと可動梁64bで囲まれる部分に切欠き部69bが形成されている。切欠き部69aのD2側を通過して支柱14eが上方に伸びている。切欠き部69bのD2側を通過して支柱14fが上方に伸びている。
基板10の上面において板状部68a〜68cに対向する位置に電極12cが形成されている。
【0060】
部分60bは部分60aと同じ高さである基板10からの高さL1を基板10と平行に伸びている。部分60bは支柱14e,14fに連結しており、部分60aの切欠き部69a,69bを通って伸びている。部分60bは部分60aと向かい合って伸びている。部分60bは部分60aと同様の構造であるので、詳しい説明を省略する。部分60aの自由端はD2側に存在しており、部分60bの自由端はD1側に存在している。基板10の上面において部分60bの板状部に対向する位置に電極12dが形成されている。なお、図12(b)では分かりやすくするために部分60aを部分60bより上方にずらして示している。
【0061】
図示しない電気回路によって電極12cを帯電させることによって、吸引力F5を発生することができる。図示しない電気回路によって電極12dを帯電させることによって、吸引力F6を発生することができる。吸引力F5は可動層60の部分60aと基板10の間に発生する。吸引力F6は可動層60の部分60bと基板10の間に発生する。言い換えると、吸引力F5は可動層60のD2側に発生する。吸引力F6は可動層60のD1側に発生する。
【0062】
可動ミラー70のD2側の端部は部分60aのD2側の端部(即ち自由端)に連結している。可動ミラー70のD1側の端部は部分60bのD1側の端部(即ち自由端)に連結している。可動ミラー70が可動層60に連結されている部分の構成は光学装置2と同様であるので重複説明を省略する。
【0063】
次に、図13(a),(b)、図14(a),(b)を用いて光学装置5の動作を説明する。図13(a)、図14(a)は光学装置5の斜視図を示す。図13(b)は図13(a)のb−b線概略断面図を示す。図14(b)は図14(a)のb−b線概略断面図を示す。図13(a)は可動層60のD2側(即ち部分60aの自由端)に吸引力F5が発生している状態を示す。吸引力F5が発生すると部分60aはD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。これに追従して可動ミラー70はD2側の端部が基板10に近づく方向に変位する。可動ミラー70は支柱14e,14fを支点としてD1側の端部が可動層60から遠ざかる方向に傾斜する。このとき可動ミラー70は基板10から角度θ6で傾斜する。
部分60bのD1側の自由端が可動ミラー70のD1側の自由端に連結されている。このために、部分60bは可動ミラー70に追従して自由端が基板10から遠ざかる方向に傾斜する。
【0064】
図14(a)は可動層60のD1側(即ち部分60bの自由端)に吸引力F6が発生している状態を示す。吸引力F6が発生すると部分60bはD1側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。これに追従して可動ミラー70はD1側の端部が基板10に近づく方向に変位する。可動ミラー70は支柱14g,14hを支点としてD2側の端部が可動層60から遠ざかる方向に傾斜する。このとき可動ミラー70は基板10から角度θ6で傾斜する。
部分60aのD2側の自由端が可動ミラー70のD2側の自由端に連結されている。このために、部分60aは可動ミラー70に追従して自由端が基板10から遠ざかる方向に傾斜する。
【0065】
光学装置6では、可動ミラー30をD1側とD2側に大きく傾斜させることによって、可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向を大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【0066】
(第6実施例)
図15〜図17を用いて第6実施例の光学装置7の構成を説明する。光学装置7も第4実施例の光学装置5と同様に可動ミラーがD1側とD2側に傾斜するが、そのための構成が光学装置5と異なっている。図15は光学装置7の可動ミラー90の平面図を示す。図16は光学装置7の可動層80の平面図を示す。図17は図15,16のXVII−XVII線概略縦断面図を示す。なお、図17では可動層の高さ方向の厚みを省略せずに示している。
【0067】
可動層支持部82a〜82cは基板10から高さL1(可動層80の高さ)まで上方に伸びている。可動層支持部82a〜82cはD3−D4方向の同一直線状に、それぞれ間隔を空けて存在している。可動層80は部分80a,80bを備えている。部分80aは可動梁84a,84bと板状部86aを備えている。可動梁84a,84bはD1−D2方向に伸びている。可動梁84aのD1側の端部は可動層支持部82aに連結しており、その端部からD2側に伸びている。可動梁84bのD1側の端部は可動層支持部82bに連結しており、その端部からD2側に伸びている。板状部86aは可動梁84a,84bのD2側の端部に連結している。基板10の上面において、板状部86aに対向する位置に電極12eが形成されている。可動梁84a,84bと板状部86aで囲まれる部分に切欠き部92aが存在している。支柱14iは切欠き部92aを通って上方に伸びている。板状部86aのD3−D4方向の両端に立ち上がり部が形成されており、その立ち上がり部の間に、可動ミラー90を支える可動梁94が差し渡されている。
【0068】
部分80bの基本的な構造は部分80aと同様であるので重複説明を省略する。基板10の上面において、部分80bの板状部に対向する位置に電極12fが形成されている。部分80bは、2本の可動梁のD2側の端部が可動層支持部82b,82cにそれぞれ連結しており、その端部からD1側に伸びている。光学装置7では、可動層80のD1側(即ち部分80bの自由端側)とD2側(即ち部分80aの自由端側)のいずれかに吸引力を発生することができる。これによって、可動ミラー90をD1側とD2側の両方に傾斜させることができる。
【0069】
この構成によると、図16に示すように、可動層80と同じ高さにスペース93a,93bが形成される。スペース93aは切欠き部92aのD1側に連続して形成されている。スペース93bは部分80bの切欠き部のD2側に連続して形成されている。このスペース93a,93bを利用して光学装置7を作動させるための他の部材を配置することができる。例えば、スペース93a,93bに光学装置7の制御回路を形成してもよい。あるいは、可動ミラー90からスペース93a,93bに向けて放熱フィンを配置してもよい。この放熱フィンによって光学装置7の放熱性を向上させることができる。スペース93a,93bに他の部材を配置することによって、光学装置7を小型化することができる。
【0070】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)は、第1実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第1実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図2】(a)は、第1実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第1実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図3】(a)は、第2実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第2実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図4】a)は、第2実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第2実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図5】(a)は、第3実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第3実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図6】第3実施例の光学装置の動作図を示す。
【図7】第4実施例の光学装置の平面図を示す。
【図8】第4実施例の光学装置の平面図を示す。
【図9】第4実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図10】第4実施例の光学装置の動作図を示す。
【図11】第4実施例の光学装置の動作図を示す。
【図12】(a)は、第5実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第5実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図13】(a)は、第5実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第5実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図14】(a)は、第5実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第5実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図15】第6実施例の光学装置の平面図を示す。
【図16】第6実施例の光学装置の平面図を示す。
【図17】第6実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0072】
2:光学装置
10;基板
12:電極
14a,14b,14c:支柱
16a,16b:電極
20:可動層
26a,26b:可動層支持部
28:反射膜
30:可動ミラー
D1:光学装置2の右方向
D2:光学装置2の左方向
F1:吸引力
θ1,θ2,θ3:傾斜角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームの反射方向を変える光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている光学装置は、基板と可動層支持部と可動梁と可動層と可動ミラーと支柱を備えている。可動層は、可動梁と可動層支持部を介して基板に連なっており、基板から間隔を隔てた高さで伸びている。可動ミラーの端部は可動層の端部に連結されている。支柱は、基板の表面から可動層を貫通して可動ミラーの下面に向けて伸びている。
可動層と基板との間に静電引力が発生していない状態では、可動ミラーが可動層に重なっている。可動層と基板との間に静電引力を発生させると、可動層が基板に近づく方向に平行移動する。この結果、可動層に固定されている側の可動ミラーの端部が基板に近づくが、支柱に当接する部分では可動ミラーがそれ以上には基板に接近できないことから、可動ミラーが傾斜する。可動ミラーを傾斜させることによって、光ビームの反射方向を変えることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005-70091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高コントラストな投射像を得たいという要求がある。このために、可動ミラーを大きく傾斜させて、光ビームの反射方向を大きく変化させたいという要求がある。特許文献1の光学装置では、可動層が基板と平行に変位している。このために、可動ミラーを基板から角度θで傾斜させるには、可動ミラーを可動層から角度θで傾斜させる必要がある。この構成によると、可動ミラーを大きく傾斜させるほど、可動ミラーと可動層の連結部にかかる負荷が大きくなる。特許文献1の光学装置は耐久性に不満を残している。
【0005】
本発明では、耐久性が高い光学装置を提供する。特に、可動ミラーと可動層の連結部の負荷が小さい光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示されている技術は、光ビームの反射方向を変える光学装置に関する。この光学装置は、基板と可動層支持部と可動層と可動ミラーとアクチュエータと可動ミラー支持部を備えている。
可動層支持部は、基板の表面から上方に伸びている。
可動層は、可動層支持部に連なっており、基板から間隙を隔てた高さで基板に対向して自由端に至るまで伸びている。
可動ミラーは、その基端が可動層の自由端側に連なっており、可動層の上方を可動層支持部側に向けて伸びている。可動ミラーが伸びている先端は自由端となっている。可動ミラーの可動層と反対側の面(可動ミラーの上面)に、反射面が形成されている。
【0007】
アクチュエータは、可動層の自由端側を基板に向けて吸引する吸引力を発生する。
可動ミラー支持部は、基板の表面から可動ミラーの所定部分に向けて伸びている。可動ミラー支持部は、可動ミラーの前記所定部分がそれ以上に基板に接近することを防止する。
上記のアクチュエータに吸引力を発生させると、可動層は、可動層の自由端が基板に近づく方向に基板に対して第1傾斜角だけ傾斜する。可動ミラーは、可動ミラーの自由端側が可動層から遠ざかる方向に可動層に対して第2傾斜角だけ傾斜する。その結果、可動ミラーが基板に対して第1傾斜角に第2傾斜角を加えた角度だけ傾斜する。
【0008】
この構成によると、基板に対して可動層を傾斜させ、さらに傾斜した可動層に対して可動ミラーを傾斜させることによって、可動層と可動ミラーの間の角度変化(即ち連結部の角度変化)が小さくても、基板から見れば可動ミラーを大きく傾斜させることができる。連結部の角度変化を小さくすることによって、可動ミラーを傾斜させるときに連結部にかかる負荷を軽減することができる。光学装置の耐久性を向上させることができる。
【0009】
可動ミラーは、可動梁を介して可動層に連結していてもよい。この構成によると、アクチュエータが吸引力を発生すると、可動梁が柔軟に屈曲し、それに追従して可動ミラーが傾斜する。柔軟な可動梁を配置することで、可動ミラーを傾斜させるために必要な吸引力を小さくすることができ、駆動力(例えば駆動電圧)を小さくすることができる。また、連結部に作用する負荷を軽減することができ、耐久性を向上することができる。
【0010】
可動梁は、可動層の自由端側から上方に伸びている立ち上がり部に連なっているとともに、可動層から間隔を隔てた高さで伸びていてもよい。この場合、可動ミラーも可動層から間隔を隔てた高さで伸びている。
立ち上がり部を配置すると、可動梁に捻じり梁を使用することができる。例えば、可動層の自由端に沿った方向に伸びる捻じり梁を配置してもよい。その捻じり梁の長手方向の中心に、捻じり梁に直交する方向に伸びる可動梁を連結させてもよい。あるいは曲げ梁の先端に可動ミラーを連結させてもよい。
【0011】
可動ミラーが可動層から間隔を隔てた高さで伸びている場合、アクチュエータが吸引力を発生しないときに、可動ミラーの自由端側が自重によって可動層に近づく方向にたわむ可能性がある。可動ミラーの自由端側がたわむと、可動ミラーの反射面の角度の安定性を確保できなくなってしまう可能性がある。
【0012】
これを防ぐためには可動ミラー補助支持部を設けることが好ましい。可動ミラー補助支持部は、基板及び/又は可動層から、可動ミラーの自由端側の下面に向けて伸びている。
可動ミラー補助支持部が設けられていると、アクチュエータが吸引力を発生しないときに可動ミラーの自由端側の下面が可動ミラー補助支持部に当接して支持される。このために、可動ミラーの自由端側が想定外にたわむことを禁止することができる。アクチュエータが吸引力を発生しないときの可動ミラーの反射面の角度の安定性を向上させることができる。
【0013】
可動ミラーの自由端側を基板側に吸引する別のアクチュエータが存在していてもよい。
このアクチュエータは、可動ミラーが可動層に対して傾斜した状態から、可動ミラーが可動層に沿って伸びる状態(例えば水平状態)に戻すための吸引力を発生させる。この構成によると、可動ミラーをすばやく可動層に沿った姿勢に戻すことができる。可動ミラーの応答速度を向上させることができる。
【0014】
可動層は、可動層支持部の一方側と他方側に伸びていてもよい。この場合、可動ミラーは、可動層の一方側の自由端側に連なっていてもよい。アクチュエータは、可動層の一方側と他方側のうちの任意の側を選択し、選択した側の自由端側を基板に向けて吸引する吸引力を発生する。可動ミラー支持部は、可動層支持部よりも一方側に存在している。
【0015】
この構成によると、可動層を一方側と他方側に傾斜させることができる。可動層を一方側に傾斜させると、可動ミラー支持部が可動ミラーを可動層から傾斜させる。即ち、可動層の基板からの傾斜角度と可動ミラーの可動層からの傾斜角度を足し合わせた角度だけ、可動ミラーを基板に対して傾斜させることができる。一方において、可動層を他方側に傾斜しても可動ミラーは可動層から傾斜することができない。しかし、可動ミラーは可動層に伴って基板に対して可動層と同じ角度で傾斜する。可動ミラーを一方側と他方側に傾斜させることで可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向を大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【0016】
可動層支持部は、基板の表面の一方側と他方側にそれぞれ存在していてもよい。すなわち間隔をおいて配置してもよい。この場合は、第1可動層と第2可動層を用意する。第1可動層は、一方側の可動層支持部から他方側の可動層支持部に向けて伸びている。第2可動層は、他方側の可動層支持部から一方側の可動層支持部に向けて伸びている。即ち、第1可動層と第2可動層は、すれ違う位置関係で伸びている。可動ミラーは、一方側の端部が第2可動層の一方側の自由端側に連なっており、他方側の端部が第1可動層の他方側の自由端側に連なっている。
アクチュエータは、第1可動層と第2可動層のうちの任意の層を選択して、選択した層の自由端側を基板に向けて吸引する吸引力を発生する。可動ミラー支持部は、可動ミラーの一方側の端部の近傍と他方側の端部の近傍の少なくとも一方に存在している。
【0017】
可動ミラーの一方側から観察すると、他方側の端部は第1可動層に連なっており、自由端でなくなっているように思われる。しかし、第1可動層は柔軟であり、可動ミラーの他方側の端部が基板に対して接近、離反する動作を拘束しない。可動ミラーの他方側の端部は自由端となっているということができる。
同様に、可動ミラーの他方側から観察すると、一方側の端部は第2可動層に連なっており、自由端でなくなっているように思われる。しかし、第2可動層は柔軟であり、可動ミラーの一方側の端部が基板に対して接近、離反する動作を拘束しない。可動ミラーの一方側の端部は自由端となっているということができる。
第1可動層と第2可動層の柔軟性によって、可動ミラーの一方側の端部と他方側の端部の双方が自由端であるといえる。
【0018】
この構成の光学装置の動作について説明する。なお、可動ミラー支持部が可動ミラーの一方側の端部の近傍のみに存在する場合を一例として説明する。一方側に伸びている第2可動層の自由端側に吸引力を発生すると、第2可動層は自由端側が基板に近づく方向に傾斜する。可動ミラーは可動ミラー支持部によって、それ以上には基板に近づけないことから、第2可動層から傾斜する。即ち、第2可動層の基板からの傾斜角度と可動ミラーの第2可動層からの傾斜角度を足し合わせた角度だけ、可動ミラーを基板に対して傾斜させることができる。このとき第1可動層は、他方側に伸びる自由端側が可動ミラーの他方側に連結されているために、可動ミラーに追従して傾斜する。即ち、可動ミラーの他方側の端部(自由端)と第1可動層の自由端は、基板から遠ざかる方向に変位する。
【0019】
一方において、他方側に伸びている第1可動層の自由端側に吸引力を発生すると、第1可動層は自由端側が基板に近づく方向に傾斜する。可動ミラーの他方側の端部の近傍に可動ミラー支持部が配置されていなければ、可動ミラーを第1可動層から傾斜させることはできない。可動ミラーは第1可動層に伴って第1可動層と同じ角度だけ傾斜する。このとき第2可動層は、一方側に伸びる自由端側が可動ミラーの一方側に固定されているために、可動ミラーに追従して傾斜する。即ち、可動ミラーの一方側の端部(自由端)と第2可動層の自由端は、基板から遠ざかる方向に変位する。
第1可動層と第2可動層を利用して可動ミラーを一方側と他方側に傾斜させることで可動ミラーを大きく変位させることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
可動ミラーの他方側の端部の近傍にも可動ミラー支持部を配置しておけば、第1可動層の自由端側が基板に近づく方向に傾斜したときに、可動ミラーの他方側の端部が自由端となって可動ミラーが第1可動層から傾斜する関係を得ることができる。可動ミラーの他方側の端部が基板に近づく方向に可動ミラーを傾斜させる場合にも、可動ミラーを基板に対して大きく傾斜させることができる。
可動ミラーを一方側と他方側に大きく傾斜させることによって可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向をさらに大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【0020】
可動ミラー支持部は支柱であってもよい。支柱は可動ミラーの一方側の端部の近傍と他方側の端部の近傍の双方に存在していてもよい。アクチュエータが第1可動層の自由端側に前記吸引力を発生すると、第1可動層は自由端側が基板に近づく方向に傾斜する。このとき、他方側の支柱の上端が可動ミラーの下面に当接している。このために、可動ミラーは第1可動層から傾斜する。即ち、第1可動層の基板からの傾斜角度と可動ミラーの第1可動層からの傾斜角度を足し合わせた角度だけ、可動ミラーを基板に対して傾斜させることができる。このときには可動ミラーの一方側の端部が自由端となって傾斜する。
【0021】
アクチュエータが第2可動層の自由端側に吸引力を発生すると、第2可動層は自由端側が基板に近づく方向に傾斜する。このとき、一方側の支柱の上端が可動ミラーの下面に当接している。このために、可動ミラーは第2可動層から傾斜する。即ち、第2可動層の基板からの傾斜角度と可動ミラーの第2可動層からの傾斜角度を足し合わせた角度だけ、可動ミラーを基板に対して傾斜させることができる。このときには可動ミラーの他方側の端部が自由端となって傾斜する。
可動ミラーを一方側と他方側に傾斜させることで可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向を大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
可動ミラーの構成については特に限定されない。可動ミラーは、幅の細い可動梁を介して可動層に連結されていてもよい。また、可動梁の構成については特に限定されない。可動梁は曲げ梁であってもよいし、捻じり梁であってもよいし、曲げ梁と捻じり梁を組み合わせたものであってもよい。可動梁を柔軟に屈曲させ、それに追従して可動ミラーを傾斜させてもよい。
なお、ここでいう屈曲という用語は最も広義に解釈されるべき概念である。屈曲点が1点以上存在していればよく、屈曲点が無限に存在して全体として湾曲することも含む概念である。
可動ミラーの反射面の形成方法については特に限定されない。反射面は、例えばシリコン層の上面(即ち、基板と反対側の面)に金属膜を形成させたものであってもよい。あるいは、可動ミラー自体の上面を反射面としてもよい。
【0023】
可動層の構成については特に限定されない。可動層は、幅の細い可動梁を介して可動層支持部に連結されていてもよい。また、可動梁の構成については特に限定されない。可動梁は曲げ梁であってもよいし、捻じり梁であってもよいし、曲げ梁と捻じり梁を組み合わせたものであってもよい。可動梁を柔軟に屈曲させ、それに追従して可動層を傾斜させてもよい。
【0024】
アクチュエータの構成については特に限定されない。例えば可動層側の電極と基板側の電極との間に電位差を発生させ、静電引力を発生させてもよい。この場合、可動層の全体が導電性であり(例えば可動層が不純物拡散されたポリシリコンで形成されており)、可動層の全体が可動層側の電極となっていることが好ましい。基板側の電極の構成については特に限定されない。例えば基板が単結晶シリコンで形成されており、基板自身の上層に不純物を拡散させることによって基板側の電極を形成してもよい。あるいは、基板の上面に不純物拡散されたポリシリコン膜を形成させてもよい。基板側の電極は可動層の自由端側に対向する位置に形成されていてもよいし、可動層の全体に対向する位置に形成されていてもよい。可動層をアースに接地し、基板側の電極を帯電させることによって、可動層と帯電させた基板側の電極との間に静電引力を発生させることができる。
また、可動層の自由端側と基板にコイルを巻きつけ、電流を流すことによってローレンツ力を発生させてもよい。
【0025】
可動ミラー支持部の構成については特に限定されない。可動ミラー支持部は支柱であってもよい。あるいは梁であってもよい。この場合の梁は、基板から上方に伸びる支持部によって支持されており、可動ミラーの側面又は表面を支持するものであってもよい。
可動ミラー補助支持部の構成については特に限定されない。可動ミラー補助支持部は支柱であってもよい。
また、本明細書で提供する光学装置を1つの光学素子として、複数の光学素子を1次元又は2次元に配列してもよい。
【0026】
以下に説明する実施例の主要な特徴を整理しておく。
(特徴1)基板は単結晶シリコンで形成されている。可動層は不純物拡散されたポリシリコンで形成されている。
(特徴2)可動ミラー支持部は支柱である。支柱は、可動層に形成されたスリットを通過して可動ミラーに当接している。
【実施例】
【0027】
(第1実施例)
図面を参照して第1実施例を説明する。図1(a)は光学装置2の斜視図を示す。図1(b)は光学装置2のb−b線概略縦断面図を示す。光学装置2は、基板10と可動層支持部26a,26bと可動層20と立ち上がり部36a,36bと可動梁38,34と可動ミラー30と支柱14a,14b,14cと電極12とを備えている。図1(a)では図示の明瞭化のために、可動層20と可動ミラー30と可動梁38,34の厚みを図示していない。同様に図1(b)では可動層20と可動ミラー30の一部と可動梁38,34の厚みと立ち上がり部36a,36bの面方向の幅を図示していない。また、可動層20と可動ミラー30を透視して図示している。図1(a),(b)以降の図でも同様である。
矢印D1は光学装置2の右側(一方側)を示し、矢印D2は光学装置2の左側(他方側)を示す。矢印D3,D4は基板10に平行な面内で矢印D1,D2に直交している。矢印D3は手前側を示し、矢印D4は奥側を示している。
【0028】
可動層支持部26a,26bは、基板10のD1側の上面から上方に向けて高さL1まで伸びている。可動層支持部26a,26bは、D3−D4方向に間隔を空けて配置されている。可動層支持部26aはD3側に配置されている。可動層支持部26bはD4側に配置されている。
可動層20は、可動梁24a,24bと板状部18と貫通孔16a,16b,16cを備えている。可動梁24aはD1側の端部が可動層支持部26aの上端に固定されており、その一端からD2側に伸びている。可動梁24bはD1側の端部が可動層支持部26bの上端に固定されており、その一端からD2側に伸びている。可動梁24a,24bのD2側の端部に板状部18のD1側の端部が固定されている。板状部18は、可動梁24a,24bに固定されている端部からD2側に伸びている。可動層20は、後記する電極12を帯電させていない状態では、基板10からL1だけ離れた高さで基板10と平行に伸びている。
【0029】
板状部18には、垂直方向に貫通している貫通孔16a〜16cが形成されている。貫通孔16a,16bは、板状部18のD2側に形成されている。貫通孔16a,16bはD3−D4方向に同一直線状に形成されている。貫通孔16a,16bはD3−D4方向に間隔を空けて形成されている。板状部18のD1側に貫通孔16cが形成されている。貫通孔16cを通ってD1−D2方向に伸びる仮想線を軸として、光学装置2は線対称である。
【0030】
可動層20は不純物拡散されたポリシリコンで形成されているため、導電性を有している。可動層20はアースに接地されている。基板10の表面上において、可動層20の全体に対向する位置に電極12が形成されている。電極12は不純物拡散されたポリシリコンで形成されている。なお、電極12の構成については特に限定されない。例えば、電極12は、単結晶シリコンで形成された基板10の上層に不純物を拡散させることによって形成されてもよい。
【0031】
基板10の電極12は、図示しない電気回路に接続されている。電気回路を利用して電極12を帯電させることによって、電極12と可動層20との間に電位差を発生させることができる。電極12と可動層20との間に吸引力F1を発生させることができる。可動層20のD1側の端部は可動層支持部26a、26bによって基板10から距離L1だけ離れた位置に支持されているので、吸引力F1が発生すると、可動層20のD2側の端部近傍が基板10に接近する。吸引力F1が発生すると、可動層20は傾斜する。
後記する支柱14a〜14cは、貫通孔16a〜16cを貫通しており、可動層20が傾斜するのを妨げない。
【0032】
立ち上がり部36a,36bは、可動層20のD2側の端部の上面から上方に伸びている。立ち上がり部36a,36bは、基板10からの高さがL2にまで伸びている。立ち上がり部36a,36bは、D3−D4方向に間隔を空けて存在している。立ち上がり部36aはD3側に存在している。立ち上がり部36bはD4側に存在している。
【0033】
可動梁38,34は、基板10から距離L2の高さで基板10と平行に伸びている。可動梁38はD3−D4方向に伸びている。可動梁38のD3側の端部は、立ち上がり部36aの上端に連結している。可動梁38のD4側の端部は、立ち上がり部36bの上端に連結している。可動梁34は、D1−D2方向に伸びている。可動梁34のD2側の端部は、可動梁38の長手方向の中心部に連結している。可動梁34のD1側の端部に、可動ミラー30のD2側の端部が連結している。
可動梁38はしなやかに捩れ、可動梁34はしなやかに湾曲する。
【0034】
可動ミラー30は、板状部32と反射膜28を備えている。板状部32は、可動梁34に連結しているD2側の端部からD1側に伸びている。板状部32のD1側の端部(即ち自由端)は、可動層支持部26a,26bのD1側の端部を覆う位置まで伸びている。
立ち上がり部36a,36bと可動梁38,34を連結部と呼ぶ。可動ミラー30は、連結部によって可動層20に連結されている。板状部32の上面に反射膜28が形成されている。光ビーム40が反射膜28に入射すると、光ビーム40は方向42に反射される。
なお、図1(b)では図示の明瞭化のために、可動ミラー30の板状部32の厚みを省略して示しており、反射膜28の厚みを省略せずに示している。図1(b)以降の図でも同様である。
【0035】
基板10の上面から支柱14a〜14cが上方に伸びている。支柱14aは貫通孔16aを通過して上方に伸びている。支柱14bは貫通孔16bを通過して上方に伸びている。支柱14cは貫通孔16cを通過して上方に伸びている。支柱14a〜14cの上端は、可動ミラー30の板状部32の下面に当接している。
電極12を帯電させていない状態では、可動ミラー30が基板10から距離L2だけ離れた位置を基板10に平行に伸びている。即ち、支柱14a〜14cの上端が可動ミラー30の板状部32の下面に当接している。
【0036】
図2(a),(b)を用いて光学装置2の動作を説明する。図2(a)は電極12を帯電させたときの光学装置2の斜視図を示す。図2(b)は、図2(a)のb−b線概略縦断面図を示す。
電極12を帯電させると電極12と可動層20の間に吸引力F1が発生し、可動層20のD2側の端部(即ち自由端)が基板10に近づくように傾斜する。具体的にいうと、板状部18のD2側の端部が基板10に近づく方向に、可動層20の可動梁24a,24bが湾曲する。可動層20は、板状部18のD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。可動梁24a,24bは幅が細いために剛性が低い。柔軟な可動梁24a,24bを配置することによって、板状部18を傾斜させるために必要な駆動電圧を低減することができる。吸引力F1が発生すると、板状部18と可動層20は、基板10から角度θ1だけ傾斜する。
【0037】
なお、可動層20は、板状部18のD2側の端部が基板10に当接するまで傾斜してもよいし、当接しなくてもよい。可動層20と基板10とが当接したときに電気回路が短絡することを禁止するために、可動層20と基板10とが当接する部分の少なくともいずれか一方側に絶縁体が形成されていることが好ましい。
【0038】
可動層20のD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜すると、可動ミラー30のD2側の端部も基板10に近づく。可動ミラー30の板状部32の下面が支柱14a,14bの上端に当接しているために、それ以上には基板10に向けて接近することができない。その結果、支柱14a,14bに当接している部分を支点として、板状部32のD1側の端部(即ち自由端)が可動層20から遠ざかる方向に傾斜する。具体的にいうと、吸引力F1によって可動ミラー30のD2側の端部が基板10に接近すると、可動梁38が反時計回りに捻じれ、可動梁34のD1側の端部も反時計回り(可動層20から遠ざかる方向)に湾曲する。その結果、板状部32が反時計回りに傾斜する。可動梁38,34は幅が細いため剛性が低い。柔軟な可動梁38,34を配置することによって、可動ミラー30を傾斜させるために必要な駆動力を低減することができる。また、連結部が柔軟な可動梁38,34を備えているので、可動ミラー30の傾斜時に連結部に過大な負荷がかかることが無い。柔軟な可動梁38,34を利用しているので、耐久性が向上する。
【0039】
吸引力F1が発生すると、可動ミラー30は角度θ1で傾斜している可動層20からさらに角度θ2で傾斜する。即ち、可動ミラー30は基板10から角度θ3(=θ1+θ2)で傾斜する。光ビーム40が可動ミラー30の反射膜28に入射すると、方向44に反射される。電極12に電圧を印加することによって、光ビーム40の進行方向を方向42から方向44に変えることができる。
【0040】
なお、D1側の支柱14a,14bの配置位置及び個数については特に限定されない。例えば1本の支柱のみでも可動ミラー30を傾斜させることができるが、2本以上存在しているほうが好ましい。これによって、可動ミラー30を安定して傾斜させることができる。
【0041】
この構成によると、可動ミラー30を基板10から角度θ3で傾斜させるためには、可動ミラー30を可動層20から角度θ2(<θ3)だけ傾斜すればよい。可動層20からの可動ミラー30の傾斜角度を小さくすることができる。これによって、可動ミラー30の連結部(即ち立ち上がり部36a,36bと可動梁38,34)にかかる負荷を低減することができる。光学装置2の耐久性を向上させることができる。
【0042】
図2(a)の状態において電極12の帯電を停止すると、図1(a)の状態に戻る。このとき、可動ミラー30のD1側の端部は支柱14cの上端に当接する位置(即ち高さL2)まで下方に傾斜する。D1側に支柱14cを配置することによって、可動ミラー30のD1側の端部が高さL2よりも下方にたわんでしまうことを禁止することができる。即ち、支柱14cを配置することによって、電極12を帯電させていないときの可動ミラー30の反射膜28の水平性を向上させることができる。これによって、電極12に電圧を印加していないときの光ビームの反射方向の安定性を向上させることができる。
なお、D1側の支柱14cの配置位置及び個数については特に限定されない。例えば支柱14a,14bに対向するD1側の端部側に2本の支柱が形成されていてもよい。
【0043】
本実施例の光学装置2では、可動層20を基板10から傾斜させ、さらに可動ミラー30を可動層20から傾斜させている。即ち、可動ミラー30だけでなく可動層20をも傾斜させている。これによって、可動ミラー30を基板10から角度θ3だけ傾斜させるためには、可動ミラー30を可動層20から角度θ2(<θ3)だけ傾斜させればよい。可動ミラー30の連結部にかかる負荷を低減することができる。光学装置2の耐久性を向上させることができる。
【0044】
(第2実施例)
図3(a)は、第2実施例で提供する光学装置3の斜視図を示す。図3(b)は、図3(a)のb−b線概略縦断面図を示す。光学装置3は、可動ミラーを可動層から傾斜させるための構成が光学装置2と異なっている。このために、光学装置2と同様の構成である部分は光学装置2と同じ符号を使用し、重複説明を省略する。以下の実施例でも同様である。
【0045】
光学装置3は、可動ミラー支持部15a,15bと可動梁17a,17bを備えている。可動ミラー31は、板状部33と切欠き部23a,23bを備えている。板状部33のD2側の端部の近傍に部分19が存在している。切欠き部23aは部分19からD3側に形成されている。切欠き部23bは部分19からD4側に形成されている。可動層21においても、切欠き部23a,23bに対向する位置にそれぞれ切欠き部が形成されている。可動ミラー支持部15aは基板10から切欠き部23aに向けて上方に伸びている。可動ミラー支持部15bは基板10から切欠き部23bに向けて上方に伸びている。
可動梁17a,17bはD3−D4方向に同一直線状に伸びている。可動梁17aは可動ミラー支持部15aの上端と部分19のD3側の端部を連結している。可動梁17bは可動ミラー支持部15bの上端と部分19のD4側の端部を連結している。
【0046】
図4(a),(b)を用いて光学装置3の動作を説明する。図4(a)は可動層21と基板10の間に吸引力F1を発生させたときの光学装置3の状態を示す。図4(b)は図4(a)のb−b線概略縦断面図を示す。吸引力F1が発生すると、可動層21はD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。これに追従して可動ミラー31のD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。このとき、部分19は基板10からL2の高さで可動梁17a,17bに連結されている。このために、部分19が可動梁17a,17bに連結されている部分を支点として可動ミラー31はD1側の端部が基板10から遠ざかる方向に傾斜する。このとき、可動梁17a,17bは反時計回りに捻じれる。
光学装置3では、可動ミラー支持部15a,15bと可動梁17a,17bによって可動ミラー31を支持することによって、可動ミラー31を可動層21から傾斜させることができる。可動ミラー支持部15a,15bと可動梁17a,17bは、第1実施例の光学装置2の支柱14a,14bと同等の機能を有する。
【0047】
(第3実施例)
図5(a)は、第3実施例の光学装置4の斜視図を示す。図5(b)は図5(a)のb−b線概略断面図を示す。光学装置4は、可動ミラーを可動層に向けて吸引する吸引力を発生するアクチュエータが存在している点が光学装置2と異なっている。
光学装置4の可動層27は板状部35と可動梁24c,24dとで囲まれる位置に切欠き部25を備えている。切欠き部25は板状部35のD1側に存在している。支柱14cは基板10から切欠き部25を通過して可動ミラー30まで伸びている。電極13は支柱14cにL1の高さ(即ち可動層27の高さ)で連結されている。電極13は切欠き部25の内側で伸びている。図5(b)では分かりやすくするために、電極13に厚みを持たせて示している。電極13は図示しない電気回路を接続されており、この電気回路に印加することによって電極13を帯電させることができる。
【0048】
なお、電極13の構成については特に限定されない。電極13は不純物拡散されたポリシリコンで形成されていてもよい。電極13の位置については特に限定されない。電極13は可動ミラー30と基板10との間の高さに存在していればよい。また、電極13の支持方法についても特に限定されない。例えば基板10からL1の高さまで凸部が伸びており、その凸部の上面に電極13が形成されていてもよい。あるいは、可動層27の板状部35がD1側まで伸びており、その上面に電極13が形成されていてもよい。
【0049】
光学装置4の可動ミラー30は不純物拡散されたポリシリコンで形成されているため、導電性を有している。可動ミラー30はアースに接地されている。電極13を帯電させることによって可動ミラー30と電極13との間に電位差を生じさせ、可動ミラー30を電極13に向けて吸引する吸引力F2を発生することができる。
【0050】
図6を用いて吸引力F2を発生させるタイミングについて説明する。図6は光学装置4のb−b線概略縦断面図を示す。図6は吸引力F1を発生させて可動ミラー30のD1側の端部を可動層27から離れる方向に傾斜させている状態を示す。この状態で吸引力F1を解除した後に吸引力F2を発生させることが好ましい。吸引力F2によって、可動ミラー30のD1側の端部が可動層27に近づく方向に傾斜する。可動ミラー30は支柱14cの上端に当接する位置(即ちL1の高さ)まで戻る。即ち、電極12を帯電させていない状態(図5の状態)に戻る。
光学装置4では、吸引力F2を発生させて可動ミラー30を印加していない状態に素早く戻すことができる。可動ミラー30の傾斜方向を切り替える応答速度を高速化することができ、高コントラストな画像を得ることができる。
【0051】
(第4実施例)
図7〜図9を用いて第4実施例の光学装置5の構成を説明する。図7は光学装置5の可動ミラー30の平面図を示す。図8は光学装置5の可動層50の平面図を示す。図9は図7,8のIX−IX線概略縦断面図を示す。光学装置5は、可動層50の可動層支持部の構成と、アクチュエータの構成が光学装置2と異なっている。なお、図9では可動層50の高さ方向の厚みを省略せずに示している。また、図9では後記する可動梁支持部11bを省略している。第4実施例における図9以降の図でも同様である。
【0052】
光学装置5は、可動梁支持部11a,11bと可動梁52a,52bと可動層50と支柱14dを備えている。可動梁支持部11a,11bは基板10から可動層50の高さ(L1の高さ)まで上方に伸びている。可動梁支持部11aは可動層50のD3側に存在している。可動梁支持部11bは可動層50のD4側に存在している。可動梁52a,52bは、L1の高さでD3−D4方向に伸びている。可動梁52aは、可動層50のD3側の端部と可動梁支持部11aのD4側を連結している。可動梁52bは、可動層50のD4側の端部と可動梁支持部11bのD3側を連結している。可動梁52a,52bは幅が細く剛性が小さいため、後述する吸引力を発生させると、柔軟に捩れる。
【0053】
基板10の上面において、可動層50のD1側の端部に対向する位置に電極12aが形成されている。基板10の上面において、可動層50のD2側の端部に対向する位置に電極12bが形成されている。図示しない電気回路によって電極12a,12bのいずれかを帯電させることによって、吸引力F3と吸引力F4のいずれかを発生することができる。吸引力F3は可動層50のD2側に発生する。吸引力F4は可動層50のD1側に発生する。
可動層50のD2側にスリット16dが形成されている。支柱14dが基板10からスリット16dを通過して可動ミラー30の下面に当接するまで伸びている。
【0054】
図10,11を用いて光学装置5の動作を説明する。図10,11は図7,8のIX−IX線概略縦断面図を示す。図10は可動層50のD2側に吸引力F3が発生している状態を示す。吸引力F3が発生すると、可動層50はD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。可動層50は可動梁52a,52bを通ってD3−D4方向に伸びる傾斜中心軸54の周りに傾斜する(図8参照)。これに追従して可動ミラー30のD2側は基板10に近づく方向に変位する。可動ミラー30のD1側は支柱14dを支点として可動層50から遠ざかる方向に傾斜する。このとき可動ミラー30は基板10から角度θ4で傾斜する。
【0055】
図11は可動層50のD1側に吸引力F4が発生している状態を示す。吸引力F4が発生すると、可動層50は傾斜中心軸54の周りにD1側の端部が基板10に近づく方向に角度θ5で傾斜する。これに追従して可動ミラー30のD1側は基板10に近づく方向に傾斜する。このとき可動ミラー30は基板10から角度θ5で傾斜する。即ち、可動ミラー30は可動層50と同じ角度θ5で基板10から傾斜する。このために、θ5は図10のθ4よりも小さい。しかしながら、可動ミラー30をD1側とD2側に傾斜させることで、可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向を大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【0056】
(第5実施例)
図12(a),(b)を用いて第5実施例の光学装置6の構成を説明する。図12(a)は第5実施例の光学装置6の斜視図を示す。図12(b)は光学装置6のb−b線概略縦断面図を示す。光学装置6も第4実施例の光学装置5と同様に可動ミラーがD1側とD2側に傾斜するが、そのための構成が光学装置5と異なっている。
支柱14e〜14hは基板10から上方に伸びている。外力が作用していないとき、支柱14e〜14hは可動ミラー70の下面に当接している。支柱14e,14fは可動ミラー70のD2側に当接する位置に伸びている。支柱14g,14hは可動ミラー70のD1側に当接する位置に伸びている。
【0057】
可動層60は部分60a,60bを備えている。部分60aは可動梁64a,64bと板状部68a,68b,68cと切欠き部69a,69bを備えている。部分60aは高さL1を基板10と平行に伸びている。可動梁64a,64bはD1−D2方向に伸びている。可動梁64aはD1側の端部が基板10からの高さL1で支柱14gに固定されており、その端部からD2側に伸びている。可動梁64bはD1側の端部が高さL1で支柱14hに固定されており、その端部からD2側に伸びている。支柱14g,14hは高さL1よりも上方に伸びている。支柱14e,14fも同様である。
【0058】
可動梁64aのD2側の端部に板状部68aのD1側の端部が連結されている。板状部68aは連結されている端部からD2側に伸びている。可動梁64bのD2側の端部に板状部68bのD1側の端部が連結されている。板状部68bは連結されている端部からD2側に伸びている。板状部68cは板状部68a,68bよりもD2側に存在している。板状部68cのD1側の端部は、板状部68a,68bのD2側の端部に間隔を空けて連結されている。
【0059】
板状部68a〜68cと可動梁64a,64bで囲まれる部分に切欠き部69aが形成されている。板状部68b,68cと可動梁64bで囲まれる部分に切欠き部69bが形成されている。切欠き部69aのD2側を通過して支柱14eが上方に伸びている。切欠き部69bのD2側を通過して支柱14fが上方に伸びている。
基板10の上面において板状部68a〜68cに対向する位置に電極12cが形成されている。
【0060】
部分60bは部分60aと同じ高さである基板10からの高さL1を基板10と平行に伸びている。部分60bは支柱14e,14fに連結しており、部分60aの切欠き部69a,69bを通って伸びている。部分60bは部分60aと向かい合って伸びている。部分60bは部分60aと同様の構造であるので、詳しい説明を省略する。部分60aの自由端はD2側に存在しており、部分60bの自由端はD1側に存在している。基板10の上面において部分60bの板状部に対向する位置に電極12dが形成されている。なお、図12(b)では分かりやすくするために部分60aを部分60bより上方にずらして示している。
【0061】
図示しない電気回路によって電極12cを帯電させることによって、吸引力F5を発生することができる。図示しない電気回路によって電極12dを帯電させることによって、吸引力F6を発生することができる。吸引力F5は可動層60の部分60aと基板10の間に発生する。吸引力F6は可動層60の部分60bと基板10の間に発生する。言い換えると、吸引力F5は可動層60のD2側に発生する。吸引力F6は可動層60のD1側に発生する。
【0062】
可動ミラー70のD2側の端部は部分60aのD2側の端部(即ち自由端)に連結している。可動ミラー70のD1側の端部は部分60bのD1側の端部(即ち自由端)に連結している。可動ミラー70が可動層60に連結されている部分の構成は光学装置2と同様であるので重複説明を省略する。
【0063】
次に、図13(a),(b)、図14(a),(b)を用いて光学装置5の動作を説明する。図13(a)、図14(a)は光学装置5の斜視図を示す。図13(b)は図13(a)のb−b線概略断面図を示す。図14(b)は図14(a)のb−b線概略断面図を示す。図13(a)は可動層60のD2側(即ち部分60aの自由端)に吸引力F5が発生している状態を示す。吸引力F5が発生すると部分60aはD2側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。これに追従して可動ミラー70はD2側の端部が基板10に近づく方向に変位する。可動ミラー70は支柱14e,14fを支点としてD1側の端部が可動層60から遠ざかる方向に傾斜する。このとき可動ミラー70は基板10から角度θ6で傾斜する。
部分60bのD1側の自由端が可動ミラー70のD1側の自由端に連結されている。このために、部分60bは可動ミラー70に追従して自由端が基板10から遠ざかる方向に傾斜する。
【0064】
図14(a)は可動層60のD1側(即ち部分60bの自由端)に吸引力F6が発生している状態を示す。吸引力F6が発生すると部分60bはD1側の端部が基板10に近づく方向に傾斜する。これに追従して可動ミラー70はD1側の端部が基板10に近づく方向に変位する。可動ミラー70は支柱14g,14hを支点としてD2側の端部が可動層60から遠ざかる方向に傾斜する。このとき可動ミラー70は基板10から角度θ6で傾斜する。
部分60aのD2側の自由端が可動ミラー70のD2側の自由端に連結されている。このために、部分60aは可動ミラー70に追従して自由端が基板10から遠ざかる方向に傾斜する。
【0065】
光学装置6では、可動ミラー30をD1側とD2側に大きく傾斜させることによって、可動ミラーを大きく変位させることができる。光ビームの進行方向を大きく変えることができる。大口径レンズを使用することが可能となり、明るい画像を得ることができる。
【0066】
(第6実施例)
図15〜図17を用いて第6実施例の光学装置7の構成を説明する。光学装置7も第4実施例の光学装置5と同様に可動ミラーがD1側とD2側に傾斜するが、そのための構成が光学装置5と異なっている。図15は光学装置7の可動ミラー90の平面図を示す。図16は光学装置7の可動層80の平面図を示す。図17は図15,16のXVII−XVII線概略縦断面図を示す。なお、図17では可動層の高さ方向の厚みを省略せずに示している。
【0067】
可動層支持部82a〜82cは基板10から高さL1(可動層80の高さ)まで上方に伸びている。可動層支持部82a〜82cはD3−D4方向の同一直線状に、それぞれ間隔を空けて存在している。可動層80は部分80a,80bを備えている。部分80aは可動梁84a,84bと板状部86aを備えている。可動梁84a,84bはD1−D2方向に伸びている。可動梁84aのD1側の端部は可動層支持部82aに連結しており、その端部からD2側に伸びている。可動梁84bのD1側の端部は可動層支持部82bに連結しており、その端部からD2側に伸びている。板状部86aは可動梁84a,84bのD2側の端部に連結している。基板10の上面において、板状部86aに対向する位置に電極12eが形成されている。可動梁84a,84bと板状部86aで囲まれる部分に切欠き部92aが存在している。支柱14iは切欠き部92aを通って上方に伸びている。板状部86aのD3−D4方向の両端に立ち上がり部が形成されており、その立ち上がり部の間に、可動ミラー90を支える可動梁94が差し渡されている。
【0068】
部分80bの基本的な構造は部分80aと同様であるので重複説明を省略する。基板10の上面において、部分80bの板状部に対向する位置に電極12fが形成されている。部分80bは、2本の可動梁のD2側の端部が可動層支持部82b,82cにそれぞれ連結しており、その端部からD1側に伸びている。光学装置7では、可動層80のD1側(即ち部分80bの自由端側)とD2側(即ち部分80aの自由端側)のいずれかに吸引力を発生することができる。これによって、可動ミラー90をD1側とD2側の両方に傾斜させることができる。
【0069】
この構成によると、図16に示すように、可動層80と同じ高さにスペース93a,93bが形成される。スペース93aは切欠き部92aのD1側に連続して形成されている。スペース93bは部分80bの切欠き部のD2側に連続して形成されている。このスペース93a,93bを利用して光学装置7を作動させるための他の部材を配置することができる。例えば、スペース93a,93bに光学装置7の制御回路を形成してもよい。あるいは、可動ミラー90からスペース93a,93bに向けて放熱フィンを配置してもよい。この放熱フィンによって光学装置7の放熱性を向上させることができる。スペース93a,93bに他の部材を配置することによって、光学装置7を小型化することができる。
【0070】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)は、第1実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第1実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図2】(a)は、第1実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第1実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図3】(a)は、第2実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第2実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図4】a)は、第2実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第2実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図5】(a)は、第3実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第3実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図6】第3実施例の光学装置の動作図を示す。
【図7】第4実施例の光学装置の平面図を示す。
【図8】第4実施例の光学装置の平面図を示す。
【図9】第4実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図10】第4実施例の光学装置の動作図を示す。
【図11】第4実施例の光学装置の動作図を示す。
【図12】(a)は、第5実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第5実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図13】(a)は、第5実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第5実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図14】(a)は、第5実施例の光学装置の斜視図を示す。(b)は、第5実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【図15】第6実施例の光学装置の平面図を示す。
【図16】第6実施例の光学装置の平面図を示す。
【図17】第6実施例の光学装置の縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0072】
2:光学装置
10;基板
12:電極
14a,14b,14c:支柱
16a,16b:電極
20:可動層
26a,26b:可動層支持部
28:反射膜
30:可動ミラー
D1:光学装置2の右方向
D2:光学装置2の左方向
F1:吸引力
θ1,θ2,θ3:傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームの反射方向を変える光学装置であり、
基板と可動層支持部と可動層と可動ミラーとアクチュエータと可動ミラー支持部を備えており、
前記可動層支持部は、前記基板の表面から上方に伸びており、
前記可動層は、前記可動層支持部に連なっており、前記基板から間隙を隔てた高さで前記基板に対向して自由端に至るまで伸びており、
前記可動ミラーは、その基端が前記可動層の前記自由端側に連なっており、前記可動層の上方を前記可動層支持部側に向けて自由端に至るまで伸びており、前記可動層と反対側の面に反射面が形成されており、
前記アクチュエータは、前記可動層の前記自由端側を前記基板に向けて吸引する吸引力を発生し、
前記可動ミラー支持部は、前記基板の表面から前記可動ミラーの所定部分に向けて伸びており、その所定部分がそれ以上に基板に接近することを防止するものであり、
前記アクチュエータに吸引力を発生させると、前記可動層は、前記可動層の前記自由端が前記基板に近づく方向に前記基板に対して第1傾斜角だけ傾斜し、前記可動ミラーは、前記可動ミラーの前記自由端側が前記可動層から遠ざかる方向に前記可動層に対して第2傾斜角だけ傾斜し、その結果、前記可動ミラーが前記基板に対して第1傾斜角に第2傾斜角を加えた角度だけ傾斜することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記可動ミラーは、可動梁を介して前記可動層に連結していることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記可動梁は、前記可動層の前記自由端側から上方に伸びている立ち上がり部に連なっているとともに前記可動層から間隔を隔てた高さで伸びており、
前記基板及び/又は前記可動層から前記可動ミラーの前記自由端側の下面に向けて伸びているとともに、前記アクチュエータが吸引力を発生しないときに前記可動ミラーの前記自由端側の下面に当接して前記可動ミラーを支持する可動ミラー補助支持部が存在していることを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記可動ミラーの前記自由端側を前記基板側に吸引する別のアクチュエータが存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記可動層は、前記可動層支持部の一方側と他方側に伸びており、
前記可動ミラーは、前記可動層の前記一方側の前記自由端側に連なっており、
前記アクチュエータは、前記可動層の前記一方側と前記他方側のうちの任意の側を選択して前記自由端側を前記基板に向けて吸引する前記吸引力を発生し、
前記可動ミラー支持部は、前記可動層支持部よりも前記一方側に存在していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記可動層支持部は、前記基板の表面の一方側と他方側にそれぞれ存在しており、
前記可動層は、前記一方側の可動層支持部から前記他方側の可動層支持部に向けて伸びる第1可動層と、前記他方側の可動層支持部から前記一方側の可動層支持部に向けて伸びる第2可動層を備えており、
前記可動ミラーは、前記一方側の端部が前記第2可動層の前記一方側の前記自由端側に連なっており、前記他方側の端部が前記第1可動層の前記他方側の前記自由端側に連なっており、
前記アクチュエータは、前記第1可動層と前記第2可動層のうちの任意の層を選択してその層の前記自由端側を前記基板に向けて吸引する前記吸引力を発生し、
前記可動ミラー支持部は、前記可動ミラーの前記一方側の前記端部の近傍と前記他方側の前記端部の近傍の少なくとも一方に存在していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記可動ミラー支持部は支柱であり、
前記支柱は前記可動ミラーの前記一方側の前記端部の近傍と前記他方側の前記端部の近傍の双方に存在しており、
前記アクチュエータが前記第1可動層の前記他方側の前記自由端側に前記吸引力を発生しているときは、前記他方側の前記支柱の上端が前記可動ミラーの下面に当接しており、
前記アクチュエータが前記第2可動層の前記一方側の前記自由端側に前記吸引力を発生しているときは、前記一方側の前記支柱の上端が前記可動ミラーの下面に当接していることを特徴とする請求項6に記載の光学装置。
【請求項1】
光ビームの反射方向を変える光学装置であり、
基板と可動層支持部と可動層と可動ミラーとアクチュエータと可動ミラー支持部を備えており、
前記可動層支持部は、前記基板の表面から上方に伸びており、
前記可動層は、前記可動層支持部に連なっており、前記基板から間隙を隔てた高さで前記基板に対向して自由端に至るまで伸びており、
前記可動ミラーは、その基端が前記可動層の前記自由端側に連なっており、前記可動層の上方を前記可動層支持部側に向けて自由端に至るまで伸びており、前記可動層と反対側の面に反射面が形成されており、
前記アクチュエータは、前記可動層の前記自由端側を前記基板に向けて吸引する吸引力を発生し、
前記可動ミラー支持部は、前記基板の表面から前記可動ミラーの所定部分に向けて伸びており、その所定部分がそれ以上に基板に接近することを防止するものであり、
前記アクチュエータに吸引力を発生させると、前記可動層は、前記可動層の前記自由端が前記基板に近づく方向に前記基板に対して第1傾斜角だけ傾斜し、前記可動ミラーは、前記可動ミラーの前記自由端側が前記可動層から遠ざかる方向に前記可動層に対して第2傾斜角だけ傾斜し、その結果、前記可動ミラーが前記基板に対して第1傾斜角に第2傾斜角を加えた角度だけ傾斜することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記可動ミラーは、可動梁を介して前記可動層に連結していることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記可動梁は、前記可動層の前記自由端側から上方に伸びている立ち上がり部に連なっているとともに前記可動層から間隔を隔てた高さで伸びており、
前記基板及び/又は前記可動層から前記可動ミラーの前記自由端側の下面に向けて伸びているとともに、前記アクチュエータが吸引力を発生しないときに前記可動ミラーの前記自由端側の下面に当接して前記可動ミラーを支持する可動ミラー補助支持部が存在していることを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記可動ミラーの前記自由端側を前記基板側に吸引する別のアクチュエータが存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記可動層は、前記可動層支持部の一方側と他方側に伸びており、
前記可動ミラーは、前記可動層の前記一方側の前記自由端側に連なっており、
前記アクチュエータは、前記可動層の前記一方側と前記他方側のうちの任意の側を選択して前記自由端側を前記基板に向けて吸引する前記吸引力を発生し、
前記可動ミラー支持部は、前記可動層支持部よりも前記一方側に存在していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記可動層支持部は、前記基板の表面の一方側と他方側にそれぞれ存在しており、
前記可動層は、前記一方側の可動層支持部から前記他方側の可動層支持部に向けて伸びる第1可動層と、前記他方側の可動層支持部から前記一方側の可動層支持部に向けて伸びる第2可動層を備えており、
前記可動ミラーは、前記一方側の端部が前記第2可動層の前記一方側の前記自由端側に連なっており、前記他方側の端部が前記第1可動層の前記他方側の前記自由端側に連なっており、
前記アクチュエータは、前記第1可動層と前記第2可動層のうちの任意の層を選択してその層の前記自由端側を前記基板に向けて吸引する前記吸引力を発生し、
前記可動ミラー支持部は、前記可動ミラーの前記一方側の前記端部の近傍と前記他方側の前記端部の近傍の少なくとも一方に存在していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記可動ミラー支持部は支柱であり、
前記支柱は前記可動ミラーの前記一方側の前記端部の近傍と前記他方側の前記端部の近傍の双方に存在しており、
前記アクチュエータが前記第1可動層の前記他方側の前記自由端側に前記吸引力を発生しているときは、前記他方側の前記支柱の上端が前記可動ミラーの下面に当接しており、
前記アクチュエータが前記第2可動層の前記一方側の前記自由端側に前記吸引力を発生しているときは、前記一方側の前記支柱の上端が前記可動ミラーの下面に当接していることを特徴とする請求項6に記載の光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−54628(P2010−54628A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217339(P2008−217339)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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