光学部品保持ホルダ及び光構造物
【課題】光学部品の大きさを維持したまま光モジュールの小型化を可能とする光学部品保持ホルダを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光学部品保持ホルダは、光学部品と同じ熱膨張係数の材料であり、前記光学部品を2本の支持部で挟持するコの字形状である。本発明の光学部品保持ホルダは光学部品と熱膨張係数が同じ材料で形成されている。このため、温度が変化しても光学部品と光学部品保持ホルダとがずれることがない。このため、本光学部品保持ホルダで光学部品を保持する場合、本光学部品保持ホルダで光学部品を直接保持できる。従って、光学部品と光学部品保持ホルダとで構成される光構造物の大きさを小さくすることができる。
【解決手段】本発明に係る光学部品保持ホルダは、光学部品と同じ熱膨張係数の材料であり、前記光学部品を2本の支持部で挟持するコの字形状である。本発明の光学部品保持ホルダは光学部品と熱膨張係数が同じ材料で形成されている。このため、温度が変化しても光学部品と光学部品保持ホルダとがずれることがない。このため、本光学部品保持ホルダで光学部品を保持する場合、本光学部品保持ホルダで光学部品を直接保持できる。従って、光学部品と光学部品保持ホルダとで構成される光構造物の大きさを小さくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール上で光学部品を保持する光学部品保持ホルダ及びこれを利用した光構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズのような光学部品を光モジュール上で固定するためには、レンズホルダなどでレンズを保持し、コの字形状の支持部材でレンズホルダごと光モジュール上に固定していた(例えば、特許文献1を参照。)。図1は従来の光学部品保持ホルダを説明する図である。
【0003】
従来の光モジュールは板状に形成されたベース部10上に直方体状のキャリア14が固定され、そのキャリア14上に光素子12が固定されている。レンズ16を保持する直方体の枠材であるレンズホルダ30にてレンズ16が保持されている。コの字形状の支持部品32はレンズホルダ30をベース部10上の所定の位置に固定するために仲介する部材として配置されている。この光モジュールでは、光素子12とレンズ16の光軸が一致するように、光素子12とレンズ16がベース部10に精度良く固定されていることを要する。レンズ16は、光素子12に対して光の高結合効率を得る為に任意方向に移動調整が可能でなければならない。また、レンズ16と光素子12が最適結合状態に位置調整された後、その位置を変動させることなく固定できなければならない。コの字形状の支持部品32をベース部10上へ固定しレンズホルダ30とコの字形状の支持部品32を固定する固定方法はレーザ溶接にて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−33760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レンズ16を保持する直方体の枠材であるレンズホルダ30にてレンズ16が保持されている構造のため、レンズ16の有効径を保持したまま光モジュールの小型化を行うことが困難であり、近年要求されている光モジュールの更なる小型化を実現することが困難という課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、光学部品の大きさを維持したまま光モジュールの小型化を可能とする光学部品保持ホルダ及び光構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学部品保持ホルダは、光学部品を直接挟持することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る光学部品保持ホルダは、2本の支持部と底部とで形成されるコの字形状の光学部品保持ホルダであって、前記底部は、2本の前記支持部が挟持する光学部品と反対側の面が平面であり、前記支持部と前記底部は、光学部品と同じ熱膨張係数をもつ材料であることを特徴とする。
【0009】
従来、図1のレンズホルダ30のような部品で光学部品と光学部品保持ホルダの温度による膨張率の違いを吸収していた。本発明の光学部品保持ホルダは光学部品と熱膨張係数が同じ材料で形成されている。このため、温度が変化しても光学部品と光学部品保持ホルダとがずれることがない。このため、本光学部品保持ホルダで光学部品を保持する場合、図1のレンズホルダ30のような部品は不要であり、本光学部品保持ホルダで光学部品を直接保持できる。従って、光学部品と光学部品保持ホルダとで構成される光構造物の大きさを小さくすることができる。また、底部の光学部品と反対側の面が平面であるため、光学部品保持ホルダを利用した光構造物は光モジュールのベース部の上で容易に平行移動させることができる。
【0010】
従って、本発明は、光学部品の大きさを維持したまま光モジュールの小型化を可能とする光学部品保持ホルダを提供することができる。
【0011】
本発明に係る光学部品保持ホルダの前記材料が光を透過することが望ましい。紫外線を透過する材料とすることで光学部品と光学部品保持ホルダとをUV硬化型の接着剤を使うことができる。UV硬化型の接着剤は、温度硬化型の接着剤のような昇温装置が不要である。また、レーザ溶接のように光学部品の寸法精度と光学部品保持ホルダの寸法精度を上げて両者の隙間を無くす必要がない。従って、光学部品保持ホルダの製造や光学部品を固定する工程でのコストを低減することができる。
【0012】
従来、支持部品32とレンズホルダ30の嵌め合い関係は、レーザ溶接する場合、位置調整のために抜き差しが自由に行える程度に緩く、レーザ溶接が良好にできる程度に隙間のない状態であることを要していた。この嵌め合い関係を良好にするためには支持部品32の寸法精度を非常に厳しくする必要があった。このため、支持部品32の加工単価が高くなるという課題があった。
【0013】
本発明に係る光学部品保持ホルダの前記材料がガラス又はプラスチックであることが望ましい。本発明に係る光学部品保持ホルダは従来の光学部品保持ホルダより小さくなっており、金属で加工すればさらに加工単価が高くなる。一方、ガラスやプラスチックは高精度に加工が可能である。このため、光学部品保持ホルダの材料にガラス又はプラスチックを用いることで製造単価を下げることができる。
【0014】
本発明に係る光学部品保持ホルダの前記底部は、前記光学部品の一部が接触する突起部を有する。光学部品保持ホルダの光モジュールのベース面への接地性が向上する。また、光学部品と突起部との接点を軸に光軸に対して前傾あるいは後傾の調整が容易になる。
【0015】
本発明に係る光構造物は、前記光学部品であるレンズと、前記レンズの端を2本の前記支持部で挟持する前記光学部品保持ホルダと、前記レンズと前記光学部品保持ホルダの前記支持部とを固定するUV硬化型の接着剤と、を備える。
【0016】
UV硬化接着剤を使用することで、レンズや光学部品保持ホルダにレーザ溶接ほどの加工精度が不要となり加工単価を低減できる。また、レンズと光学部品保持ホルダとを固定する際に温度硬化型の接着剤のような大掛かりな昇温装置が不要となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、光学部品の大きさを維持したまま光モジュールの小型化を可能とする光学部品保持ホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の光学部品保持ホルダを説明する図である。
【図2】本発明に係る光学部品保持ホルダと従来の光学部品保持ホルダとの大きさを比較する図である。
【図3】レーザ溶接と接着剤での固定とを比較する図である。
【図4】光学部品に応力を与えたとき、本発明に係る光学部品保持ホルダと従来の光学部品保持ホルダの変形を比較する図である。
【図5】本発明に係る光学部品保持ホルダの正面図である。
【図6】本発明に係る光学部品保持ホルダの斜視図である。
【図7】本発明に係る光学部品保持ホルダの斜視図である。
【図8】本発明に係る光学部品保持ホルダの斜視図である。
【図9】本発明に係る光学部品保持ホルダの斜視図である。
【図10】本発明に係る光学部品保持ホルダの断面図である。
【図11】本発明に係る光学部品保持ホルダを利用した光モジュールの例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体的に実施形態を示して本発明を詳細に説明するが、本願の発明は以下の記載に限定して解釈されない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
本実施形態の光学部品保持ホルダは、光学部品と同じ熱膨張係数の材料であり、前記光学部品を2本の支持部で挟持するコの字形状を有する。本実施形態では、光学部品がレンズ116として説明する。図2は、同一の有効径を有したレンズを光学部品保持ホルダで保持した場合のレンズを含めた外形サイズを比較した図である。本明細書では、光学部品を光学部品保持ホルダや支持部品で支持した構造を光構造物と記載する。図2(a)は、従来の光構造物であり、図2(b)は本実施形態の光構造物である。従来の光構造物はレンズホルダ30にレンズ16が保持されている。レンズ16の有効径を確保するためにはレンズホルダ30とコの字形状の支持部品32とを固定する際の、レーザ溶接工程において良好なレーザ溶接固定ができるようレンズホルダ30は一定の大きさが必要となる。
【0021】
一方、本実施形態の光構造物はレンズホルダが無く、レンズ116を直接コの字形状の光学部品保持ホルダ132で固定する構造とした。この構造で、レンズ116の有効径を変更することなく光学部品保持ホルダ132を小型化することが可能となる。例えば、従来の光構造物は、レンズ有効径がφ1.5mmでレンズ外形がφ2mmのレンズ16を保持した幅3.5mmのレンズホルダ30を幅4.5mmのコの字形状支持部品32で支持している。このとき、レンズホルダ30を調整した時のコの字形状支持部品32底面からレンズホルダ30上面までの高さが3.95mmとなる。一方、本実施形態の光構造物は、レンズ有効径φ1.5mmでレンズ外形が2mmのレンズ116を、幅3mmの光学部品保持ホルダ132で保持し、レンズ116を調整した時の光学部品保持ホルダ132底面よりレンズ16上部までの高さが2.75mmとなる。光学部品保持ホルダ132の幅は従来の支持部品32に対して約34%の小型化、調整後の全体構造の高さについては光学部品保持ホルダ132を使用すれば従来の支持部品32を使用した場合に比べ約30%の小型化が可能となる。
【0022】
また、本実施形態の光学部品保持ホルダ132は、光学部品と同じ熱膨張係数の材料で形成される。温度変化があったとしても、レンズ116と光学部品保持ホルダ132とは同じ比率で拡大収縮するため、ゆがみや破損を生ずることが無い。
【0023】
レンズ16などの光学部品は一般的にガラス材やプラスチック材を使用することが多く、金属製のコの字形状の支持部品32を使用するには温度硬化型の接着剤を使用する必要があった。温度硬化型の接着剤は硬化に時間を要することと、実装装置に昇温機能付加などの大掛かりな変更が必要となる。一方、本実施形態の光学部品保持ホルダ132は、レンズ116と同じ光が透過する材料で作成される。例えば、光学部品保持ホルダ132をレンズ116と同じガラス材にて作成する。光学部品保持ホルダ132の材料を紫外線が透過する材料とすることにより、短時間で硬化するUV硬化型の接着剤を使用することが可能となる。UV硬化型の接着剤での実装装置構造は、UV光源の付加などの比較的簡易な装置構造変更ですむ。例えば、UV硬化型の接着剤の種類は、硬化収縮率が小さく、耐熱性、耐薬品性などに強いエポキシ系を選択することにより、UV硬化型の接着剤硬化後の位置変動なく固定することができる。レンズ116がプラスチックであっても同様である。この場合は光学部品保持ホルダ132もプラスチックで作成する。
【0024】
図3は、(a)レンズホルダ30と支持部品32とをレーザ溶接する従来の光構造物と(b)レンズ116と光学部品保持ホルダ132とをUV硬化型の接着剤で固定した本実施形態の光構造物を比較した図である。従来の固定方法であるレーザ溶接(例えばYAG溶接)には、安定した溶接を行うため、各部品間の隙間を生じさせないようにレンズホルダ30や支持部品32の加工に高い精度が求められる。一方、本実施形態で採用したUV硬化型の接着剤の固定では、レンズ116と光学部品保持ホルダ132との間に接着層が必要となるため、レンズ116と光学部品保持ホルダ132にレーザ溶接ほどの加工精度は必要なく加工単価を低減できる。
【0025】
本実施形態の光学部品保持ホルダ132をガラスで作成することで大型の光学部品を保持することができる。レンズ116がプラスチックであり、光学部品保持ホルダ132もプラスチックで生成した場合も同様である。例えば、複数の端子が下方に突出したDIP型、または複数の端子が両側壁から突出したバタフライ型などに使われている光学部品に比べ、波長選択スイッチや光合分銃器などに使われている光学部品は大型である。このため、金属で作られている従来の支持部品32を大型の光学部品に対応させるために大型化した場合、小型の光学部品と同等の加工精度にて加工することは非常に困難であり加工単価が高額になる。一方、大型の光学部品を保持する光学部品保持ホルダ132はガラスで作成する。ガラス製部品の加工は非常に高精度な加工が可能なことが知られている。大型の光学部品を保持する光学部品保持ホルダ132をガラスで作成することで、その精度を小型の金具製支持部品32と同等にすることができる。
【0026】
図4は、(a)従来の光構造物、(b)本実施形態の光構造物に対して、図中矢印の方向より500N/m2の力にて同一面積を加圧した時の最大応力を応力解析にて解析した形状を説明する図である。
【0027】
図4(a)の従来光構造物での最大応力は0.562Kpaの応力が最大応力発生点Aに発生し、特に加圧点に近いレンズ16の変形が大きく最大応力発生点Aも加圧点近傍に発生する結果となった。図4(b)の本実施形態の光構造物での最大応力は0.564Kpaの応力が最大応力発生点Aに発生し、加圧点に近いレンズ116の変形が大きく、最大応力発生点も加圧点近傍に発生する結果となった。本解析結果より、ガラスの光学部品保持ホルダ132でも、金属の支持部品32でも発生する応力は同等である。すなわち、従来の金属製の支持部品をガラス製の光学部品保持ホルダとしたことによる影響は少ない。
【0028】
従来の支持部品32のレンズホルダ30を挟持する部分の形状は、レーザ溶接にて固定を行うために、安定したレーザ溶接を行うためにレーザ溶接の焦点位置変動を無くした形状、即ち直方体の形状が一般的であった。しかし、光学部品保持ホルダ132は、UV硬化型の接着剤にてレンズ116を固定するため、レンズ116を挟持する部分の形状に制約がない。図5は光学部品保持ホルダ132の正面図、図6から図8は光学部品保持ホルダ132の斜視図である。レンズ116を挟持する部分を支持部111と記載している。このように実装スペースに合わせて支持部111の形状を直方体(図6)、半円柱(図7)、三角柱(図8)のように任意に変更することが可能である。
【0029】
図9は、光学部品保持ホルダ132の斜視図である。図10は、光学部品保持ホルダ132の断面図である。光学部品保持ホルダ132は、底部112にレンズ116の一部が接触する突起部113を有する。底部112に突起部113を設け、レンズ116を突起部113に接触させ且つ加圧することで、光学部品保持ホルダ132を光モジュール等のベース面に配置する際の接地性を向上することができる。更に、図10のように、突起部113を支点としてレンズ116のα軸の調整をすることもできる。図10は、レンズ116のα軸の調整を説明する図である。なお、図9では支持部111が半円柱であるが、三角柱、直方体の形状であっても良い。
【0030】
以上に説明したように、光学部品保持ホルダ132をレンズ116の材料と同じ熱膨張率の材料とすることで、光学部品保持ホルダ132はレンズ116を直接保持でき、レンズの有効径を変更することなく光モジュールの小型化が可能となる。更に、光学部品保持ホルダ132とレンズ116とを接着剤で固定したことで、従来のレーザ溶接では不可能であった2つの支持部111の形状を任意とすることができ、構造設計での自由度が向上する。よって、光学部品保持ホルダ132は、従来形状では困難であった光モジュールの小型化を行うための光構造物の小型化に非常に優位である。更に光学部品保持ホルダ132をガラスで作成したことにより部材加工精度を確保したまま低価格化を実現することができる。
【0031】
上記説明は光学部品をレンズとして説明したが、光学部品はこの限りではない、例えば波長選択スイッチなどに使われているミラーや、光学部品を実装されたサブアッセンブリ品などであっても良い。図11は、波長選択スイッチ301を説明する図である。波長選択スイッチ301は、リトローレンズ181、ミラー184、フォーカシングレンズ185やマイクロレンズアレイ188を搭載するプレート187、グレーティング182、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)モジュール183をベース部10上に備える。波長選択スイッチ301は、リトローレンズ181、ミラー184及びプレート187を光学部品保持ホルダ132で保持している。光学部品保持ホルダ132の底部112の光学部品と反対側は平面であるため、ベース10上での位置決めの際に光構造物の平行移動が容易である。
【符号の説明】
【0032】
10:ベース部
12:光素子
14:キャリア
16:レンズ
30:レンズホルダ
32:支持部品
111:支持部
112:底部
113:突起部
116:レンズ
121:接着剤
132:光学部品保持ホルダ
181:リトローレンズ
182:グレーティング
183:MEMSモジュール
184:ミラー
185:フォーカシングレンズ
186:ファイバアレイ
187:プレート
188:マイクロレンズアレイ
301:光モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール上で光学部品を保持する光学部品保持ホルダ及びこれを利用した光構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズのような光学部品を光モジュール上で固定するためには、レンズホルダなどでレンズを保持し、コの字形状の支持部材でレンズホルダごと光モジュール上に固定していた(例えば、特許文献1を参照。)。図1は従来の光学部品保持ホルダを説明する図である。
【0003】
従来の光モジュールは板状に形成されたベース部10上に直方体状のキャリア14が固定され、そのキャリア14上に光素子12が固定されている。レンズ16を保持する直方体の枠材であるレンズホルダ30にてレンズ16が保持されている。コの字形状の支持部品32はレンズホルダ30をベース部10上の所定の位置に固定するために仲介する部材として配置されている。この光モジュールでは、光素子12とレンズ16の光軸が一致するように、光素子12とレンズ16がベース部10に精度良く固定されていることを要する。レンズ16は、光素子12に対して光の高結合効率を得る為に任意方向に移動調整が可能でなければならない。また、レンズ16と光素子12が最適結合状態に位置調整された後、その位置を変動させることなく固定できなければならない。コの字形状の支持部品32をベース部10上へ固定しレンズホルダ30とコの字形状の支持部品32を固定する固定方法はレーザ溶接にて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−33760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レンズ16を保持する直方体の枠材であるレンズホルダ30にてレンズ16が保持されている構造のため、レンズ16の有効径を保持したまま光モジュールの小型化を行うことが困難であり、近年要求されている光モジュールの更なる小型化を実現することが困難という課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、光学部品の大きさを維持したまま光モジュールの小型化を可能とする光学部品保持ホルダ及び光構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学部品保持ホルダは、光学部品を直接挟持することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る光学部品保持ホルダは、2本の支持部と底部とで形成されるコの字形状の光学部品保持ホルダであって、前記底部は、2本の前記支持部が挟持する光学部品と反対側の面が平面であり、前記支持部と前記底部は、光学部品と同じ熱膨張係数をもつ材料であることを特徴とする。
【0009】
従来、図1のレンズホルダ30のような部品で光学部品と光学部品保持ホルダの温度による膨張率の違いを吸収していた。本発明の光学部品保持ホルダは光学部品と熱膨張係数が同じ材料で形成されている。このため、温度が変化しても光学部品と光学部品保持ホルダとがずれることがない。このため、本光学部品保持ホルダで光学部品を保持する場合、図1のレンズホルダ30のような部品は不要であり、本光学部品保持ホルダで光学部品を直接保持できる。従って、光学部品と光学部品保持ホルダとで構成される光構造物の大きさを小さくすることができる。また、底部の光学部品と反対側の面が平面であるため、光学部品保持ホルダを利用した光構造物は光モジュールのベース部の上で容易に平行移動させることができる。
【0010】
従って、本発明は、光学部品の大きさを維持したまま光モジュールの小型化を可能とする光学部品保持ホルダを提供することができる。
【0011】
本発明に係る光学部品保持ホルダの前記材料が光を透過することが望ましい。紫外線を透過する材料とすることで光学部品と光学部品保持ホルダとをUV硬化型の接着剤を使うことができる。UV硬化型の接着剤は、温度硬化型の接着剤のような昇温装置が不要である。また、レーザ溶接のように光学部品の寸法精度と光学部品保持ホルダの寸法精度を上げて両者の隙間を無くす必要がない。従って、光学部品保持ホルダの製造や光学部品を固定する工程でのコストを低減することができる。
【0012】
従来、支持部品32とレンズホルダ30の嵌め合い関係は、レーザ溶接する場合、位置調整のために抜き差しが自由に行える程度に緩く、レーザ溶接が良好にできる程度に隙間のない状態であることを要していた。この嵌め合い関係を良好にするためには支持部品32の寸法精度を非常に厳しくする必要があった。このため、支持部品32の加工単価が高くなるという課題があった。
【0013】
本発明に係る光学部品保持ホルダの前記材料がガラス又はプラスチックであることが望ましい。本発明に係る光学部品保持ホルダは従来の光学部品保持ホルダより小さくなっており、金属で加工すればさらに加工単価が高くなる。一方、ガラスやプラスチックは高精度に加工が可能である。このため、光学部品保持ホルダの材料にガラス又はプラスチックを用いることで製造単価を下げることができる。
【0014】
本発明に係る光学部品保持ホルダの前記底部は、前記光学部品の一部が接触する突起部を有する。光学部品保持ホルダの光モジュールのベース面への接地性が向上する。また、光学部品と突起部との接点を軸に光軸に対して前傾あるいは後傾の調整が容易になる。
【0015】
本発明に係る光構造物は、前記光学部品であるレンズと、前記レンズの端を2本の前記支持部で挟持する前記光学部品保持ホルダと、前記レンズと前記光学部品保持ホルダの前記支持部とを固定するUV硬化型の接着剤と、を備える。
【0016】
UV硬化接着剤を使用することで、レンズや光学部品保持ホルダにレーザ溶接ほどの加工精度が不要となり加工単価を低減できる。また、レンズと光学部品保持ホルダとを固定する際に温度硬化型の接着剤のような大掛かりな昇温装置が不要となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、光学部品の大きさを維持したまま光モジュールの小型化を可能とする光学部品保持ホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の光学部品保持ホルダを説明する図である。
【図2】本発明に係る光学部品保持ホルダと従来の光学部品保持ホルダとの大きさを比較する図である。
【図3】レーザ溶接と接着剤での固定とを比較する図である。
【図4】光学部品に応力を与えたとき、本発明に係る光学部品保持ホルダと従来の光学部品保持ホルダの変形を比較する図である。
【図5】本発明に係る光学部品保持ホルダの正面図である。
【図6】本発明に係る光学部品保持ホルダの斜視図である。
【図7】本発明に係る光学部品保持ホルダの斜視図である。
【図8】本発明に係る光学部品保持ホルダの斜視図である。
【図9】本発明に係る光学部品保持ホルダの斜視図である。
【図10】本発明に係る光学部品保持ホルダの断面図である。
【図11】本発明に係る光学部品保持ホルダを利用した光モジュールの例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体的に実施形態を示して本発明を詳細に説明するが、本願の発明は以下の記載に限定して解釈されない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
本実施形態の光学部品保持ホルダは、光学部品と同じ熱膨張係数の材料であり、前記光学部品を2本の支持部で挟持するコの字形状を有する。本実施形態では、光学部品がレンズ116として説明する。図2は、同一の有効径を有したレンズを光学部品保持ホルダで保持した場合のレンズを含めた外形サイズを比較した図である。本明細書では、光学部品を光学部品保持ホルダや支持部品で支持した構造を光構造物と記載する。図2(a)は、従来の光構造物であり、図2(b)は本実施形態の光構造物である。従来の光構造物はレンズホルダ30にレンズ16が保持されている。レンズ16の有効径を確保するためにはレンズホルダ30とコの字形状の支持部品32とを固定する際の、レーザ溶接工程において良好なレーザ溶接固定ができるようレンズホルダ30は一定の大きさが必要となる。
【0021】
一方、本実施形態の光構造物はレンズホルダが無く、レンズ116を直接コの字形状の光学部品保持ホルダ132で固定する構造とした。この構造で、レンズ116の有効径を変更することなく光学部品保持ホルダ132を小型化することが可能となる。例えば、従来の光構造物は、レンズ有効径がφ1.5mmでレンズ外形がφ2mmのレンズ16を保持した幅3.5mmのレンズホルダ30を幅4.5mmのコの字形状支持部品32で支持している。このとき、レンズホルダ30を調整した時のコの字形状支持部品32底面からレンズホルダ30上面までの高さが3.95mmとなる。一方、本実施形態の光構造物は、レンズ有効径φ1.5mmでレンズ外形が2mmのレンズ116を、幅3mmの光学部品保持ホルダ132で保持し、レンズ116を調整した時の光学部品保持ホルダ132底面よりレンズ16上部までの高さが2.75mmとなる。光学部品保持ホルダ132の幅は従来の支持部品32に対して約34%の小型化、調整後の全体構造の高さについては光学部品保持ホルダ132を使用すれば従来の支持部品32を使用した場合に比べ約30%の小型化が可能となる。
【0022】
また、本実施形態の光学部品保持ホルダ132は、光学部品と同じ熱膨張係数の材料で形成される。温度変化があったとしても、レンズ116と光学部品保持ホルダ132とは同じ比率で拡大収縮するため、ゆがみや破損を生ずることが無い。
【0023】
レンズ16などの光学部品は一般的にガラス材やプラスチック材を使用することが多く、金属製のコの字形状の支持部品32を使用するには温度硬化型の接着剤を使用する必要があった。温度硬化型の接着剤は硬化に時間を要することと、実装装置に昇温機能付加などの大掛かりな変更が必要となる。一方、本実施形態の光学部品保持ホルダ132は、レンズ116と同じ光が透過する材料で作成される。例えば、光学部品保持ホルダ132をレンズ116と同じガラス材にて作成する。光学部品保持ホルダ132の材料を紫外線が透過する材料とすることにより、短時間で硬化するUV硬化型の接着剤を使用することが可能となる。UV硬化型の接着剤での実装装置構造は、UV光源の付加などの比較的簡易な装置構造変更ですむ。例えば、UV硬化型の接着剤の種類は、硬化収縮率が小さく、耐熱性、耐薬品性などに強いエポキシ系を選択することにより、UV硬化型の接着剤硬化後の位置変動なく固定することができる。レンズ116がプラスチックであっても同様である。この場合は光学部品保持ホルダ132もプラスチックで作成する。
【0024】
図3は、(a)レンズホルダ30と支持部品32とをレーザ溶接する従来の光構造物と(b)レンズ116と光学部品保持ホルダ132とをUV硬化型の接着剤で固定した本実施形態の光構造物を比較した図である。従来の固定方法であるレーザ溶接(例えばYAG溶接)には、安定した溶接を行うため、各部品間の隙間を生じさせないようにレンズホルダ30や支持部品32の加工に高い精度が求められる。一方、本実施形態で採用したUV硬化型の接着剤の固定では、レンズ116と光学部品保持ホルダ132との間に接着層が必要となるため、レンズ116と光学部品保持ホルダ132にレーザ溶接ほどの加工精度は必要なく加工単価を低減できる。
【0025】
本実施形態の光学部品保持ホルダ132をガラスで作成することで大型の光学部品を保持することができる。レンズ116がプラスチックであり、光学部品保持ホルダ132もプラスチックで生成した場合も同様である。例えば、複数の端子が下方に突出したDIP型、または複数の端子が両側壁から突出したバタフライ型などに使われている光学部品に比べ、波長選択スイッチや光合分銃器などに使われている光学部品は大型である。このため、金属で作られている従来の支持部品32を大型の光学部品に対応させるために大型化した場合、小型の光学部品と同等の加工精度にて加工することは非常に困難であり加工単価が高額になる。一方、大型の光学部品を保持する光学部品保持ホルダ132はガラスで作成する。ガラス製部品の加工は非常に高精度な加工が可能なことが知られている。大型の光学部品を保持する光学部品保持ホルダ132をガラスで作成することで、その精度を小型の金具製支持部品32と同等にすることができる。
【0026】
図4は、(a)従来の光構造物、(b)本実施形態の光構造物に対して、図中矢印の方向より500N/m2の力にて同一面積を加圧した時の最大応力を応力解析にて解析した形状を説明する図である。
【0027】
図4(a)の従来光構造物での最大応力は0.562Kpaの応力が最大応力発生点Aに発生し、特に加圧点に近いレンズ16の変形が大きく最大応力発生点Aも加圧点近傍に発生する結果となった。図4(b)の本実施形態の光構造物での最大応力は0.564Kpaの応力が最大応力発生点Aに発生し、加圧点に近いレンズ116の変形が大きく、最大応力発生点も加圧点近傍に発生する結果となった。本解析結果より、ガラスの光学部品保持ホルダ132でも、金属の支持部品32でも発生する応力は同等である。すなわち、従来の金属製の支持部品をガラス製の光学部品保持ホルダとしたことによる影響は少ない。
【0028】
従来の支持部品32のレンズホルダ30を挟持する部分の形状は、レーザ溶接にて固定を行うために、安定したレーザ溶接を行うためにレーザ溶接の焦点位置変動を無くした形状、即ち直方体の形状が一般的であった。しかし、光学部品保持ホルダ132は、UV硬化型の接着剤にてレンズ116を固定するため、レンズ116を挟持する部分の形状に制約がない。図5は光学部品保持ホルダ132の正面図、図6から図8は光学部品保持ホルダ132の斜視図である。レンズ116を挟持する部分を支持部111と記載している。このように実装スペースに合わせて支持部111の形状を直方体(図6)、半円柱(図7)、三角柱(図8)のように任意に変更することが可能である。
【0029】
図9は、光学部品保持ホルダ132の斜視図である。図10は、光学部品保持ホルダ132の断面図である。光学部品保持ホルダ132は、底部112にレンズ116の一部が接触する突起部113を有する。底部112に突起部113を設け、レンズ116を突起部113に接触させ且つ加圧することで、光学部品保持ホルダ132を光モジュール等のベース面に配置する際の接地性を向上することができる。更に、図10のように、突起部113を支点としてレンズ116のα軸の調整をすることもできる。図10は、レンズ116のα軸の調整を説明する図である。なお、図9では支持部111が半円柱であるが、三角柱、直方体の形状であっても良い。
【0030】
以上に説明したように、光学部品保持ホルダ132をレンズ116の材料と同じ熱膨張率の材料とすることで、光学部品保持ホルダ132はレンズ116を直接保持でき、レンズの有効径を変更することなく光モジュールの小型化が可能となる。更に、光学部品保持ホルダ132とレンズ116とを接着剤で固定したことで、従来のレーザ溶接では不可能であった2つの支持部111の形状を任意とすることができ、構造設計での自由度が向上する。よって、光学部品保持ホルダ132は、従来形状では困難であった光モジュールの小型化を行うための光構造物の小型化に非常に優位である。更に光学部品保持ホルダ132をガラスで作成したことにより部材加工精度を確保したまま低価格化を実現することができる。
【0031】
上記説明は光学部品をレンズとして説明したが、光学部品はこの限りではない、例えば波長選択スイッチなどに使われているミラーや、光学部品を実装されたサブアッセンブリ品などであっても良い。図11は、波長選択スイッチ301を説明する図である。波長選択スイッチ301は、リトローレンズ181、ミラー184、フォーカシングレンズ185やマイクロレンズアレイ188を搭載するプレート187、グレーティング182、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)モジュール183をベース部10上に備える。波長選択スイッチ301は、リトローレンズ181、ミラー184及びプレート187を光学部品保持ホルダ132で保持している。光学部品保持ホルダ132の底部112の光学部品と反対側は平面であるため、ベース10上での位置決めの際に光構造物の平行移動が容易である。
【符号の説明】
【0032】
10:ベース部
12:光素子
14:キャリア
16:レンズ
30:レンズホルダ
32:支持部品
111:支持部
112:底部
113:突起部
116:レンズ
121:接着剤
132:光学部品保持ホルダ
181:リトローレンズ
182:グレーティング
183:MEMSモジュール
184:ミラー
185:フォーカシングレンズ
186:ファイバアレイ
187:プレート
188:マイクロレンズアレイ
301:光モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の支持部と底部とで形成されるコの字形状の光学部品保持ホルダであって、
前記底部は、2本の前記支持部が挟持する光学部品と反対側の面が平面であり、
前記支持部と前記底部は、光学部品と同じ熱膨張係数をもつ材料であることを特徴とする光学部品保持ホルダ。
【請求項2】
前記材料が光を透過することを特徴とする請求項1に記載の光学部品保持ホルダ。
【請求項3】
前記材料がガラス又はプラスチックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学部品保持ホルダ。
【請求項4】
前記底部は、前記光学部品の一部が接触する突起部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学部品保持ホルダ。
【請求項5】
前記光学部品であるレンズと、
前記レンズの端を2本の前記支持部で挟持する請求項1から4のいずれかに記載の光学部品保持ホルダと、
前記レンズと前記光学部品保持ホルダの前記支持部とを固定するUV硬化型の接着剤と、
を備える光構造物。
【請求項1】
2本の支持部と底部とで形成されるコの字形状の光学部品保持ホルダであって、
前記底部は、2本の前記支持部が挟持する光学部品と反対側の面が平面であり、
前記支持部と前記底部は、光学部品と同じ熱膨張係数をもつ材料であることを特徴とする光学部品保持ホルダ。
【請求項2】
前記材料が光を透過することを特徴とする請求項1に記載の光学部品保持ホルダ。
【請求項3】
前記材料がガラス又はプラスチックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学部品保持ホルダ。
【請求項4】
前記底部は、前記光学部品の一部が接触する突起部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学部品保持ホルダ。
【請求項5】
前記光学部品であるレンズと、
前記レンズの端を2本の前記支持部で挟持する請求項1から4のいずれかに記載の光学部品保持ホルダと、
前記レンズと前記光学部品保持ホルダの前記支持部とを固定するUV硬化型の接着剤と、
を備える光構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−33900(P2011−33900A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181017(P2009−181017)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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