説明

光導波路および電子機器

【課題】伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、信頼性の高い光導波路、およびかかる光導波路を備える電子機器を提供すること。
【解決手段】光導波路1は、コア層13を有する。コア層13は、少なくとも2つのクラッド部15と、2つのクラッド部15に隣接して設けられ、クラッド部15の平均屈折率より平均屈折率が高く、かつ屈折率が中心部からクラッド部15に向かって低くなっており、光を伝送するコア部14とを備え、(メタ)アクリル系ポリマーと、この(メタ)アクリル系ポリマーと屈折率が異なるモノマーとを含む層に対して活性放射線を照射して、照射領域内において、モノマーの反応を進行させることにより、未照射領域から、未反応のモノマーを照射領域に拡散させ、結果として、照射領域と未照射領域との間に屈折率差を生じさせることにより、照射領域および未照射領域のいずれか一方をコア部14とし他方をクラッド部15としてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化の波とともに、大容量の情報を高速で通信可能な広帯域回線(ブロードバンド)の普及が進んでいる。また、これらの広帯域回線に情報を伝送する装置として、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置等の伝送装置が用いられている。これらの伝送装置内には、LSIのような演算素子、メモリーのような記憶素子等が組み合わされた信号処理基板が多数設置されており、各回線の相互接続を担っている。
【0003】
各信号処理基板には、演算素子や記憶素子等が電気配線で接続された回路が構築されているが、近年、処理する情報量の増大に伴って、各基板では、極めて高いスループットで情報を伝送することが要求されている。しかしながら、情報伝送の高速化に伴い、クロストークや高周波ノイズの発生、電気信号の劣化等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、信号処理基板のスループットの向上が困難になっている。また、同様の課題は、スーパーコンピューターや大規模サーバー等でも顕在化しつつある。
【0004】
一方、光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0005】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に搬送される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンもしくはその強弱パターンに基づいて通信を行う。
【0006】
このような光導波路で信号処理基板内の電気配線を置き換えることにより、前述したような電気配線の問題が解消され、信号処理基板のさらなる高スループット化が可能になると期待されている。
【0007】
ここで、光導波路としては、従来、一定の屈折率を有するコア部と、コア部より低い一定の屈折率を有するクラッド部とを有するステップインデックス型のものが一般的であったが、近年、屈折率が連続的に変化したグレーテッドインデックス型のものが提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、ポリマー基体中に屈折率調整剤を拡散させることにより、横断面において屈折率が同心円状に分布した光導波路が提案されている。このようなグレーテッドインデックス型の光導波路によれば、ステップインデックス型のものに比べ、伝送損失の低減が図られるとされている。
【0009】
ところが、最近では光導波路に対する大容量化の要求がますます強くなり、さらなる多チャンネル化および高密度化が求められている。多チャンネル化および高密度化が進むと、チャンネル(コア部)のピッチがより狭くなり、それに伴って、クロストーク(1つのチャンネルからの漏洩光が隣り合うチャンネルに混信すること)や、パルス信号の鈍り(パルス信号が広がること)といった新たな課題に直面している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−276735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、信頼性の高い光導波路、およびかかる光導波路を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。
(1) 光を伝送するコア層を有する光導波路であって、
前記コア層は、
少なくとも2つのクラッド部と、
該2つのクラッド部に隣接して設けられ、前記クラッド部の平均屈折率より平均屈折率が高く、かつ、屈折率が中心部から前記クラッド部に向かって低くなっており、前記光を伝送するコア部とを備え、
(メタ)アクリル系ポリマーと、該(メタ)アクリル系ポリマーと屈折率が異なるモノマーとを含む層に対して活性放射線を照射して、前記活性放射線が照射された照射領域内において、前記モノマーの反応を進行させることにより、前記活性放射線が照射されない未照射領域から、未反応の前記モノマーを前記照射領域に拡散させ、結果として、前記照射領域と前記未照射領域との間に屈折率差を生じさせることにより、前記照射領域および前記未照射領域のいずれか一方を前記コア部とし、他方を前記クラッド部としてなることを特徴とする光導波路。
【0013】
(2) 前記クラッド部の屈折率は、中心部から前記コア部に向かって低くなっている上記(1)に記載の光導波路。
【0014】
(3) 前記コア層の横断面の厚さ方向に対して垂直な方向における屈折率分布において、前記コア部および前記クラッド部の屈折率が連続的に変化している上記(2)に記載の光導波路。
【0015】
(4) 前記屈折率分布は、少なくとも2つの極小値と、少なくとも1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい少なくとも2つの第2の極大値と、を有し、これらが、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値の順で並ぶ領域を有しており、この領域のうち、前記第1の極大値を含むように前記2つの極小値で挟まれる領域が前記コア部、前記各極小値から前記第2の極大値側の領域が前記クラッド部である上記(3)に記載の光導波路。
【0016】
(5) 前記屈折率分布は、前記活性放射線の照射量、照射時間、照射深度および照射間隔のうちの少なくとも1つの条件を設定することにより調整されている上記(4)に記載の光導波路。
【0017】
(6) 前記極小値と前記クラッド部の平均屈折率との差は、前記極小値と前記第1の極大値との差の3〜80%である上記(4)または(5)に記載の光導波路。
【0018】
(7) 前記極小値と前記第1の極大値との差は、0.005〜0.07である上記(4)ないし(6)のいずれかに記載の光導波路。
【0019】
(8) 前記横断面の厚さ方向に対して垂直な方向における位置を横軸にとり、前記横断面における屈折率を縦軸にとったとき、
前記屈折率分布は、前記第1の極大値近傍において上に凸の略U字状をなし、前記極小値近傍において下に凸の略U字状をなしている上記(4)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路。
【0020】
(9) 前記屈折率分布において、前記第1の極大値近傍における屈折率が、前記クラッド部の平均屈折率以上の値を有している領域の幅をa[μm]とし、前記極小値近傍における屈折率が、前記クラッド部の平均屈折率未満の値を有している領域の幅をb[μm]としたとき、bは、0.01a〜1.2aである上記(4)ないし(8)のいずれかに記載の光導波路。
【0021】
(10) 前記(メタ)アクリル系ポリマーは、主鎖と、前記活性放射線の照射により前記主鎖から離脱する脱離性基とを有する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の光導波路。
【0022】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、伝送損失およびパルス信号の鈍りが抑えられることで、大容量の光信号を入射しても信頼性の高い光通信を行うことが可能な光導波路が得られる。
【0024】
また、複数のコア部を形成して多チャンネル化した際に、クロストークを確実に抑制し得る光導波路が得られる。
また、このような光導波路を用いることにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光導波路の実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
【図2】図1に示すX−X線断面図について、横軸にコア層の厚さの中心線C1における幅方向の位置をとり、縦軸に屈折率をとったときの屈折率分布の一例を模式的に示す図である。
【図3】図1に示す光導波路のコア部の1つに光を入射したときの出射光の強度分布の一例を示す図である。
【図4】図1に示す光導波路の製造方法を説明するための図である。
【図5】図1に示す光導波路の製造方法を説明するための図である。
【図6】図1に示す光導波路の製造方法を説明するための図である。
【図7】図1に示す光導波路の製造方法を説明するための図である。
【図8】図1に示す光導波路の製造方法を説明するための図である。
【図9】照射領域と未照射領域との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層の横断面の幅方向の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【図10】他の構成の光導波路の横断面におけるコア部を中心とする一部を切り出した図、および、この横断面のコア部の幅方向の中心を通過する中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【図11】多色成形体を得るダイコーターを示す斜視図である。
【図12】ダイコーターの一部を拡大して示す縦断面図である。
【図13】図10に示す光導波路の製造方法を説明するための図である。
【図14】図10に示す光導波路の製造方法を説明するための図である。
【図15】図10に示す光導波路の製造方法を説明するための図である。
【図16】図10に示す光導波路の横断面の屈折率を横軸にとり、横断面の厚さ方向の位置を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の光導波路および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0027】
<光導波路>
まず、本発明の光導波路について説明する。
【0028】
図1は、本発明の光導波路の実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2は、図1に示すX−X線断面図について、横軸にコア層の厚さの中心線C1における幅方向の位置をとり、縦軸に屈折率をとったときの屈折率分布の一例を模式的に示す図、図3は、図1に示す光導波路のコア部の1つに光を入射したときの出射光の強度分布の一例を示す図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図1は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
【0029】
図1に示す光導波路1は、一方の端部から他方の端部に光信号を伝送する光配線として機能する。
【0030】
以下、光導波路1の各部について詳述する。
光導波路1は、図1中の下側からクラッド層11、光を伝送するコア層13およびクラッド層12をこの順で積層してなるものである。
【0031】
(コア層)
このうち、コア層13には、面方向において屈折率分布が形成されている。この屈折率分布は、相対的に屈折率の高い領域と低い領域とを有しており、これにより入射された光を屈折率の高い領域に閉じ込めて伝搬することができる。
【0032】
図2(a)は、図1のX−X線断面図であり、図2(b)は、X−X線断面図のコア層13の厚さ方向の中心を通過する中心線C1上の屈折率分布の一例を模式的に示す図である。
【0033】
コア層13は、その横断面の厚さ方向に対して垂直な方向(幅方向)において、図2(b)に示すような、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を含む屈折率分布Wを有している。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の大きい極大値(第1の極大値)と、相対的に屈折率の小さい極大値(第2の極大値)とが存在している。
【0034】
このうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間には、それぞれ相対的に屈折率の大きい極大値Wm2およびWm4が存在しており、それ以外の極大値Wm1、Wm3およびWm5は、それぞれ相対的に屈折率の小さい極大値である。
【0035】
光導波路1では、図2に示すように、極小値Ws1と極小値Ws2との間が、相対的に屈折率の大きい極大値Wm2を含んでいることからコア部14となり、同様に、極小値Ws3と極小値Ws4との間も極大値Wm4を含んでいることからコア部14となる。なお、より詳しくは、極小値Ws1と極小値Ws2との間をコア部141とし、極小値Ws3と極小値Ws4との間をコア部142とする。
【0036】
また、極小値Ws1の左側の領域、極小値Ws2と極小値Ws3との間、および極小値Ws4の右側の領域は、それぞれコア部14を両側面に隣接する領域であることから側面クラッド部15となる。なお、より詳しくは、極小値Ws1の左側の領域を側面クラッド部151とし、極小値Ws2と極小値Ws3との間を側面クラッド部152とし、極小値Ws4の右側の領域を側面クラッド部153とする。
【0037】
すなわち、屈折率分布Wは、少なくとも、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有していればよい。なお、この領域は、コア部の数に応じて繰り返し設けられ、本実施形態のようにコア部14が2つである場合、屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値が交互に並ぶ領域を有していればよい。
【0038】
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値は第1の極大値や第2の極大値より小さく、第2の極大値は第1の極大値より小さいという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
【0039】
また、光導波路1は、細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Wは、光導波路1の長手方向全体(光の伝搬(伝送)方向の任意の位置で切断した横断面)においてほぼ同じ分布が維持されている。
【0040】
以上のような屈折率分布Wに伴い、コア層13には、長尺状の2つのコア部14と、これらのコア部14の各両側面に隣接する3つの側面クラッド部15とが形成されることとなる。
【0041】
より詳しくは、図1に示す光導波路1には、並列する2つのコア部141、142と、並列する3つの側面クラッド部151、152、153とが交互に設けられている。これにより、各コア部141、142は、それぞれ、各側面クラッド部151、152、153および各クラッド層11、12で囲まれた状態となる。ここで、これら2つのコア部141、142の平均屈折率は、当然、3つの側面クラッド部151、152、153の平均屈折率より高くなっているので、各コア部141、142と各側面クラッド部151、152、153との界面付近において光の反射を生じさせることができる。なお、図1に示す各コア部14には密なドットを付し、各側面クラッド部15には疎なドットを付している。
【0042】
光導波路1では、コア部14の一方の端部に入射された光を、コア部14とクラッド部(各クラッド層11、12および各側面クラッド部15)との界面付近で反射させ、他方に伝搬させることにより、コア部14の他方の端部から取り出すことができる。
【0043】
また、図1に示すコア部14は、その横断面形状が正方形または長方形のような四角形(矩形)をなしているが、この形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、五角形、六角形等の多角形であってもよい。
【0044】
コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
【0045】
ここで、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、それぞれ、側面クラッド部15における平均屈折率WA未満である。これにより、各コア部14と各側面クラッド部15との間に、側面クラッド部15よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14からの光の漏れが抑制されるため、伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
【0046】
また、屈折率分布Wは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、ステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
【0047】
さらに、上述したような各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4を有するとともに、屈折率が連続的に変化している屈折率分布Wによれば、コア部14のより中心部に近い領域を伝送光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高め得る光導波路1が得られる。
【0048】
なお、屈折率分布Wにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Wの曲線が各部で丸みを帯びており、この曲線が微分可能なものであるという状態である。
【0049】
また、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを作り込む場合、一般的には、屈折率差を形成する原理に伴う制約上、コア部14と側面クラッド部15との平均の屈折率差を十分に大きくすることができない。この場合、コア部14の側面クラッド部15との界面付近での光反射が効率よくなされず、コア部14に光を確実に閉じ込めることができないことがある。これに対して、本実施形態のように、コア部14と側面クラッド部15との界面付近における屈折率が連続的に変化する構成とすると、これらの間の平均の屈折率差が小さくても、コア部14に光を確実に閉じ込めることができる。このため、同一層からコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法で製造される光導波路1において、本発明は特にその効果を発揮する。
【0050】
また、屈折率分布Wのうち、極大値Wm2、Wm4は、図2に示すようにコア部141、142に位置しているが、コア部141、142の中でもその幅の中心部に位置している。これにより、各コア部141、142では、伝送光がコア部141、142の幅の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に側面クラッド部151、152、153に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
【0051】
なお、例えばコア部141の幅の中心部とは、極小値Ws1と極小値Ws2の中点から両側に、コア部141の幅の30%の距離の領域とする。
【0052】
また、極大値Wm2、Wm4の位置は、できればコア部141、142の幅の中心部に位置していることが望まれるが、必ずしも中心部でなくても、コア部141、142の縁部近傍(各側面クラッド部151、152、153との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部141、142の伝送損失をある程度抑えることができる。
【0053】
なお、例えばコア部141の縁部近傍とは、側面クラッド部151、152、153のコア部141、142との界面(縁部)から内側に、コア部141の幅の5%の距離の領域とする。
【0054】
一方、屈折率分布Wのうち、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、図2(b)に示すように側面クラッド部151、152、153中に位置しているが、特に側面クラッド部151、152、153の縁部近傍(コア部141、142との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、142中の伝送光が、側面クラッド部151、152、153中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、142の伝送損失を低減することができる。
【0055】
なお、例えば側面クラッド部151、152、153の縁部近傍とは、側面クラッド部151、152、153のコア部141、142との界面(縁部)から内側に、側面クラッド部151、152、153の幅の5%の距離の領域とする。
【0056】
また、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、側面クラッド部151、152、153の幅の中央部に位置していることにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4の領域と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5の領域との離間距離は、最大限確保される。このため、コア部141、142中の伝送光が、側面クラッド部151、152、153中に漏れ出る確率をより確実に低くすることができる。
【0057】
加えて、極大値Wm1、Wm3、Wm5の領域から隣接する極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の領域に向かっては、屈折率が連続的に低下しているので、極大値Wm2、Wm4の領域近傍に光をより確実に閉じ込めることができる。
【0058】
以上のことから、光の損失を防止しつつ、光をコア部141、142中を伝送することができる。
【0059】
さらに、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、前述したコア部141、142に位置する極大値Wm2、Wm4よりも小さいので、側面クラッド部151、152、153は、コア部141、142のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が高くなっているため、わずかな光伝送性を有することとなる。その結果、側面クラッド部151、152、153は、コア部141、142から漏出した伝送光を閉じ込めることで、他のコア部への波及を防止する作用を有するものとなる。すなわち、側面クラッド部151、152、153中に、極大値Wm1、Wm3、Wm5の領域が存在することで、クロストークを抑制することができる。
【0060】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、前述したように、側面クラッド部15の平均屈折率WA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差が前記下限値を下回る場合は、側面クラッド部15における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、側面クラッド部15における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、142の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0061】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した差が、コア部141、142中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
【0062】
また、コア部141、142における屈折率分布Wは、図2(b)に示すように、横軸にコア層13の横断面の厚さ方向に対して垂直な方向(幅方向)における位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Wm2近傍および極大値Wm4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば上に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。屈折率分布Wがこのような形状をなしていると、コア部141、142における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
【0063】
また、屈折率分布Wは、図2(b)に示すように、極小値Ws1近傍、極小値Ws2近傍、極小値Ws3近傍および極小値Ws4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば下に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。
【0064】
ここで、本発明者は、光導波路1の複数のコア部141、142のうち、所望の1つの一方の端部に光を入射し、他方の端部における出射光の強度分布を取得したとき、その強度分布が、光導波路1のクロストークを抑制するにあたって極めて有用な分布になることを見出した。
【0065】
図3は、光導波路1のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
【0066】
コア部141に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、本発明の光導波路によれば、コア部141に隣り合うコア部142において極小値をとるような強度分布が得られる。このようにコア部142の位置に出射光の強度分布の極小値が一致することで、コア部142におけるクロストークは極めて小さく抑えられることとなるため、多チャンネル化および高密度化によっても混信の発生を確実に防止し得る光導波路1が得られる。
【0067】
なお、従来の光導波路では、光を入射するコア部に隣り合うコア部において出射光の強度分布が極小値をとることはなく、むしろ極大値をとっていたので、クロストークの問題が発生していた。これに対し、本実施形態の光導波路における出射光の強度分布の振る舞いは、クロストークを抑制する上で極めて有用なものである。
【0068】
本実施形態の光導波路においてこのような強度分布が得られる詳細な理由は明らかでないものの、理由の1つとしては、屈折率分布Wが極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4を有し、かつ、屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化している、という特徴的な屈折率分布Wが、従来であればコア部142において極大値を有していた出射光の強度分布を、コア部142に隣接する側面クラッド部153等にシフトさせていることが挙げられる。すなわち、このシフトにより、クロストークが確実に抑制されているのである。
【0069】
なお、出射光の強度分布が側面クラッド部15にシフトしたとしても、受光素子等はコア部14の位置に合わせて配置されているため、混信を招くおそれはほとんどなく、光通信の品質を劣化させることはない。
【0070】
また、上記のような出射光の強度分布は、本実施形態の光導波路において観測される確率は高いものの、必ず観測されるわけではなく、入射光のNA(numerical aperture)やコア部141の横断面積、コア部141、142のピッチ等によっては、明瞭な極小値が観測されなかったり、極小値の位置がコア部142から外れたりする場合もあるが、このような場合でもクロストークは十分に抑制される。
【0071】
また、図2(b)に示す屈折率分布Wにおいて、側面クラッド部15における平均屈折率をWAとしたとき、極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA以上である領域の幅をa[μm]とし、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA未満である領域の幅をb[μm]とする。このとき、bは、0.01a〜1.2a程度であるのが好ましく、0.03a〜1a程度であるのがより好ましく、0.1a〜0.8a程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の領域の実質的な幅が、上述した作用・効果を奏するのに必要かつ十分なものとなる。すなわち、bが前記下限値を下回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の領域の実質的な幅が狭過ぎるため、コア部141、142に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、bが前記上限値を上回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の領域の実質的な幅が広過ぎて、その分、コア部141、142の幅やピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
【0072】
なお、側面クラッド部15における平均屈折率WAは、例えば、極大値Wm1と極小値Ws1との中点で近似することができる。
【0073】
上述したようなコア層13(コア部14および側面クラッド部15)は、本発明では、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして構成されている。特に、コア部14は、(メタ)アクリル系ポリマーに、これと異なるモノマーが反応してなるポリマー、または、(メタ)アクリル系ポリマーと、前記モノマーが重合してなるポリマーとの混合物で構成されている。なお、コア層13の構成材料は、未反応(未重合)の前記モノマーを含んでいてもよい。以上のような材料については、後に詳述する。
【0074】
(クラッド層)
クラッド層11および12は、それぞれ、コア層13の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。
【0075】
これらクラッド層11、12の平均屈折率は、コア層13が備えるコア部141、142の平均屈折率よりも低くなっている。
【0076】
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が好適に発揮される。
【0077】
また、クラッド層11および12の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
また、コア層13の構成材料およびクラッド層11、12の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア部14とクラッド層11、12との界面付近において光を確実に反射させるため、コア部14の構成材料の屈折率が十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。
【0079】
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13の構成材料とクラッド層11、12の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
【0080】
また、クラッド層11、12は必要に応じて設ければよく、いずれか一方または双方を省略してもよい。この場合、コア層13の表面は大気(空気)に露出することとなるが、空気の屈折率は十分に低いため、この空気がクラッド層11、12の機能を代替することができる。
【0081】
(支持フィルム)
光導波路1の下面には、必要に応じて、図1に示すような支持フィルム2を積層するようにしてもよい。
【0082】
支持フィルム2は、光導波路1の下面を支持して、保護・補強する。これにより、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0083】
このような支持フィルム2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、支持フィルム2として金属箔が好ましく用いられる。
【0084】
また、支持フィルム2の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1を確実に支持するとともに、光導波路1の柔軟性を阻害し難くなる。
【0085】
なお、支持フィルム2と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
【0086】
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
【0087】
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
【0088】
(カバーフィルム)
一方、光導波路1の上面には、必要に応じて、図1に示すようなカバーフィルム3を積層するようにしてもよい。
【0089】
カバーフィルム3は、光導波路1を保護するとともに、光導波路1を上方から支持するものである。これにより、汚れや傷などから光導波路1が保護され、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0090】
このようなカバーフィルム3の構成材料としては、支持フィルム2の構成材料と同様であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、カバーフィルム3として金属箔が好ましく用いられる。また、光導波路1の途中にミラーを形成した場合には、カバーフィルム3を光が透過することになるので、カバーフィルム3の構成材料は実質的に透明であるのが好ましい。
【0091】
また、カバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、3〜50μm程度であるのが好ましく、5〜30μm程度であるのがより好ましい。カバーフィルム3の厚さを前記範囲内とすることにより、カバーフィルム3は光通信において十分な光透過率を有するとともに、光導波路1を確実に保護するために十分な剛性を有するものとなる。
【0092】
なお、カバーフィルム3と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。このうち、接着剤としては前述したようなものを用いることができる。
【0093】
また、本実施形態では、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の積層体からなる光導波路1について説明したが、これらが一体的に形成されたものでもよい。
【0094】
また、本実施形態では、コア層13が2つのコア部14を有する場合について説明したが、コア部14の数は特に限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0095】
なお、例えばコア部14が1つである場合には、光導波路1の横断面の屈折率分布Wが、2つの極小値を有し、その極小値が前述したように平均屈折率WA未満であり、かつ屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化していればよく、コア部14が3、4、5・・・と増える場合には、それに応じて、屈折率分布Wが有する極小値の数は、6、8、10・・・と増えることとなる。
【0096】
また、本実施形態では、コア層13のコア部14において、その屈折率が、中心部から側面クラッド部15に向かって連続的に低くなっている場合、および、側面クラッド部15において、その屈折率が、中心部からコア部14に向かって連続的に低くなっている場合について説明したが、屈折率の変化は、段階的であってもよい。
【0097】
さらに、本実施形態では、コア層13の側面クラッド部15において、その屈折率が、中心部からコア部14に向かって低くなっている場合について説明したが、中心部からコア部14に向かってほぼ一定である構成であってもよい。
【0098】
なお、以上のような構成のコア層13は、後述する光導波路1の製造方法における工程[2]において照射する活性放射線の照射量、照射時間、照射深度および照射間隔のうちの少なくとも1つの条件を適宜設定することにより得ることができる。
【0099】
<光導波路の製造方法>
次に、上述した光導波路1の製造方法の一例について説明する。
【0100】
図4〜8は、それぞれ図1に示す光導波路1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図4〜8中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0101】
光導波路1は、本実施形態では、クラッド層11と、コア層13と、クラッド層12をそれぞれ用意し、これらを積層することにより製造される。
【0102】
より具体的には、光導波路1の製造方法は、[1]支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951をレベルテーブルに置いて液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成したコア層13を得る。[3]次いで、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層し、光導波路1を得る。
【0103】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、コア層形成用組成物900を用意する。
【0104】
コア層形成用組成物900は、(メタ)アクリル系ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマーを含む。)とを含有するものである。このようなコア層形成用組成物900は、活性放射線の照射により、(メタ)アクリル系ポリマー915(コア層形成用組成物900)中において少なくともモノマーの反応が生じ、それに伴って屈折率分布に変化を生じさせる材料である。すなわち、コア層形成用組成物900は、(メタ)アクリル系ポリマー915とモノマーの存在比率の偏りによって屈折率分布に変化が生じ、その結果、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成することのできる材料である。
【0105】
次いで、支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成する(図4(a)参照)。そして、支持基板951をレベルテーブルに置いて、液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る(図4(b)参照)。
【0106】
支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
【0107】
液状被膜を形成するための塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0108】
得られた層910中では、(メタ)アクリル系ポリマー(マトリックス)915が実質的に一様かつランダムに存在し、添加剤920は、(メタ)アクリル系ポリマー915中に実質的に一様かつランダムに分散している。これにより、層910中には、添加剤920が実質的に一様かつランダムに分散している。
【0109】
層910の平均厚さは、形成すべきコア層13の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜300μm程度であるのが好ましく、10〜200μm程度であるのがより好ましい。
【0110】
((メタ)アクリル系ポリマー)
(メタ)アクリル系ポリマー915は、コア層13のベースポリマーとなるものである。
【0111】
(メタ)アクリル系ポリマー915は、特に、透明性が高く、光伝送性を有することから、本発明におけるポリマーとして用いられる。また、かかる(メタ)アクリル系ポリマー915には、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中でも後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが反応した後においても十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
【0112】
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、コア層形成用組成物900中や層910中において(メタ)アクリル系ポリマー915と相分離を起こさないことをいう。
【0113】
さらに、(メタ)アクリル系ポリマー915とは、アクリル酸、アクリル酸エステルのようなアクリル酸系モノマー、メタクリル酸、メタクリル酸エステルのようなメタクリル酸系モノマー、またはこれらの誘導体(例えば、アルコキシ誘導体、カプロラクトン誘導体等)を原料モノマーとして、この原料モノマーを重合してなるポリマー(樹脂およびゴムを含む。)である。
【0114】
したがって、(メタ)アクリル系ポリマー915としては、上記原料モノマーの1種を重合してなるホモポリマー、上記原料モノマーの異なる2種以上を重合してなるコポリマー、上記原料モノマーと他の原料モノマーとを重合してなるコポリマー等が挙げられる。
【0115】
かかる原料モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0116】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(o−フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(1−ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(2−ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルバゾールのような複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0117】
また、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、フルオレン型ジ(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレートのような複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0118】
また、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのような複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0119】
なお、上記原料モノマーと重合させる他の原料モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル等が挙げられ、上記原料モノマーとしてアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーを選択した場合には、これらを重合することにより、アクリルゴムが得られる。
【0120】
(メタ)アクリル系ポリマー915の重量平均分子量は、特に限定されないが、2×10〜3×10程度であることが好ましく、3×10〜2×10程度であることがより好ましい。かかる重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマー915を用いることにより、後述するモノマーとの相溶性が高くなるとともに、コア層13の強度や可撓性の向上を図ることができる。
【0121】
ここで、本発明では、コア層13の各部の屈折率は、各部における(メタ)アクリル系ポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率の相対的な大小関係とその存在比率に応じて決定される。そのため、用いるモノマーの種類および(メタ)アクリル系ポリマー915の種類を適宜選択することにより、コア層13の各部の屈折率を調整することができる。
【0122】
また、(メタ)アクリル系ポリマー915の構造を設計することによっても、コア部14と側面クラッド部15との屈折率差の調整を容易に行うことができる。例えば、(メタ)アクリル系ポリマー915を、主鎖と、後述する活性放射線930により主鎖から離脱する脱離性基とを有する化学構造に設計する。かかる化学構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー915においては、活性放射線930の照射により、離脱性基を主鎖から離脱させることにより、その屈折率が変化する。
【0123】
このような離脱性基としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、活性放射線930の作用によって十分に分子構造が切断され、主鎖から容易に離脱するが、カチオンの作用を利用すれば、さらに容易に分子構造が切断される。
【0124】
このうち、離脱により(メタ)アクリル系ポリマー915の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
【0125】
また、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、活性放射線930の作用によって十分に分子構造が切断され、主鎖から容易に離脱するが、フリーラジカルの作用を利用すれば、さらに容易に分子構造が切断される。
【0126】
離脱性基の量(数)は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー915全重量に対して10〜80重量%であるのが好ましく、20〜60重量%であるのがより好ましい。離脱性基の量が前記範囲内であると、屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)に優れた(メタ)アクリル系ポリマー915とすることができるとともに、形成されるコア層13の可撓性の向上を図ることもできる。
【0127】
かかる離脱性基を有する(メタ)アクリル系ポリマー915は、前述した原料モノマーと、この原料モノマーに離脱性基を導入したモノマーとを重合することにより、容易に得ることができる。
【0128】
さらに、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー915を用いることもできる。かかる(メタ)アクリル系ポリマー915を用いることにより、クラッド層11、12に対して密着性に優れたコア層13を形成することが可能となる。
【0129】
この(メタ)アクリル系ポリマー915を得る場合、原料モノマーには、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α−ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α−エチル−6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
(添加剤)
添加剤920は、モノマーを必須成分とし、本実施形態では、モノマーおよび重合開始剤を含んでいる。
【0131】
((モノマー))
モノマーは、後述する活性放射線の照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、それとともに、活性放射線を照射しない未照射領域から照射領域に、未反応のモノマーが拡散移動することで、層910において照射領域と未照射領域との間に屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
【0132】
モノマーの反応物としては、モノマーが(メタ)アクリル系ポリマー915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、モノマーが(メタ)アクリル系ポリマー915同士を架橋してなる架橋構造、および、モノマーが(メタ)アクリル系ポリマー915に重合して(メタ)アクリル系ポリマー915から分岐した分岐構造のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0133】
ところで、照射領域と未照射領域との間に生じる屈折率差は、(メタ)アクリル系ポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率との差に基づいて生じることから、添加剤920中に含まれるモノマーは、(メタ)アクリル系ポリマー915の屈折率との大小関係を考慮して選択される。
【0134】
具体的には、層910において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有する(メタ)アクリル系ポリマー915と、この(メタ)アクリル系ポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。一方、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有する(メタ)アクリル系ポリマー915と、この(メタ)アクリル系ポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。
【0135】
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味するものである。
【0136】
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層910において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分において屈折率分布Wの極小値が得られ、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分において屈折率分布の極大値が得られる。
【0137】
なお、モノマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマー915との高い相溶性を有し、(メタ)アクリル系ポリマー915との屈折率差が0.01以上であるものが好ましく用いられる。
【0138】
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0139】
なお、本発明において、これらのうち、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーを用いれば、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマー915との相溶性が高いため、未照射領域から照射領域へのアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーの拡散がより円滑に行われる。このため、コア層13の形成時間の短縮、ひいては光導波路1の製造時間の短縮を図ることができる。
【0140】
また、相溶性が高いことから、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマー915中により確実に均一分散されるため、得られるコア部141、142における特性のバラツキが少ないという利点もある。
【0141】
かかるアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマー915で挙げた原料モノマーと同様のものを用いることができる。
【0142】
また、環状エーテル基の開環が起こり易いため、オキセタニル基およびエポキシ基のような環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーは、速やかに反応し得る。したがって、かかるモノマーを用いることによっても、コア層13の形成時間の短縮、ひいては光導波路1の製造時間の短縮を図ることができる。
【0143】
さらに、ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層13(光導波路1)が得られる。
【0144】
このうち、環状エーテル基を有するモノマーの分子量(重量平均分子量)またはオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上400以下であるのが好ましい。
【0145】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーとしては、下記式(11)〜(20)の群から選ばれるものが好ましい。これらを使用することで波長850nm近傍での透明性に優れ、可撓性および耐熱性の高いコア層13を形成できるという利点がある。また、これらを単独でも混合して用いても差し支えない。
【0146】
【化1】

【0147】
【化2】

【0148】
【化3】

【0149】
【化4】

【0150】
【化5】

【0151】
【化6】

【0152】
【化7】

【0153】
【化8】

(式(18)においてnは0以上、3以下である。)
【0154】
【化9】

【0155】
【化10】

【0156】
以上のようなモノマーおよびオリゴマーの中でも、(メタ)アクリル系ポリマー915との屈折率差を確保する観点から式(13)、(15)、(16)、(17)、(20)で表される化合物を使用することが好ましい。
【0157】
さらには、(メタ)アクリル系ポリマー915との屈折率差が大きい点、分子量が小さく、モノマーの運動性が高い点、モノマーが容易に揮発しない点を考慮すると、式(20)、式(15)で表される化合物を使用することが特に好ましい。
【0158】
また、オキセタニル基を有する化合物としては、以下の式(32)、式(33)で表される化合物を使用することができる。式(32)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名TESOX等、式(33)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名OX−SQ等を使用することができる。
【0159】
【化11】

【0160】
【化12】

(式(33)において、nは1または2である)
【0161】
また、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、例えば、以下のようなものが挙げられる。このエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。
【0162】
エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、以下の式(34)〜(39)で表されるものを使用することができる。中でも、エポキシ環のひずみエネルギーが大きく反応性に優れるという観点から式(36)〜(39)で表される脂環式エポキシモノマーを使用することが好ましい。
【0163】
なお、式(34)で表される化合物は、エポキシノルボルネンであり、このような化合物としては、例えば、プロメラス社製 EpNBを使用することができる。式(35)で表される化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 Z−6040を使用することができる。また、式(36)で表される化合物は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東京化成製 E0327を使用することができる。
【0164】
さらに、式(37)で表される化合物は、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2021Pを使用することができる。また、式(38)で表される化合物は、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2000を使用することができる。
【0165】
さらに、式(39)で表される化合物は、1,2:8,9ジエポキシリモネンであり、この化合物としては、例えば、(ダイセル化学社製 セロキサイド3000)を使用することができる。
【0166】
【化13】

【0167】
【化14】

【0168】
【化15】

【0169】
【化16】

【0170】
【化17】

【0171】
【化18】

【0172】
また、ノルボルネン系モノマーとは、下記構造式Aで示されるノルボルネン骨格を少なくとも1つ含むモノマーを総称し、例えば、下記構造式Cで表される化合物が挙げられる。
【0173】
【化19】

【0174】
【化20】

[式中、aは、単結合または二重結合を表し、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、または官能置換基を表し、mは、0〜5の整数を表す。ただし、aが二重結合の場合、RおよびRのいずれか一方、RおよびRのいずれか一方は存在しない。]
【0175】
無置換の炭化水素基(ハイドロカルビル基)としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C〜C10)のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C〜C10のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C〜C10)のアルキニル基、炭素数4〜12(C〜C12)のシクロアルキル基、炭素数4〜12(C〜C12)のシクロアルケニル基、炭素数6〜12(C〜C12)のアリール基、炭素数7〜24(C〜C24)のアラルキル基(アリールアルキル基)等が挙げられ、その他、RおよびR、RおよびRが、それぞれ炭素数1〜10(C〜C10)のアルキリデニル基であってもよい。
【0176】
置換された炭化水素基としては、前記の炭化水素基が有する水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたもの、すなわち、ハロハイドロカルビル(halohydrocarbyl)基、パーハロハイドロカルビル(perhalohydrocarbyl)基であるか、パーハロカルビル(perhalocarbyl)基のようなハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0177】
また、官能置換基としては、例えば、−(CH−CH(CF−O−Si(Me)、−(CH−CH(CF−O−CH−O−CH、−(CH−CH(CF−O−C(O)−O−C(CH、−(CH−C(CF−OH、−(CH−C(O)−NH、−(CH−C(O)−Cl、−(CH−C(O)−O−R、−(CH)n−O−R、−(CH−O−C(O)−R、−(CH−C(O)−R、−(CH−O−C(O)−OR、−(CH−Si(R、−(CH−Si(OR、−(CH−O−Si(Rおよび−(CH−C(O)−OR等が挙げられる。
【0178】
ここで、前記各式において、それぞれ、nは、0〜10の整数を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20(C〜C20)アルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20(C〜C20)のハロゲン化もしくはパーハロゲン化アルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C〜C10)のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C〜C10)のアルキニル基、炭素数5〜12(C〜C12)のシクロアルキル基、炭素数6〜14(C〜C14)のアリール基、炭素数6〜14(C〜C14)のハロゲン化もしくはパーハロゲン化アリール基または炭素数7〜24(C〜C24)のアラルキル基を表す。
【0179】
なお、Rで示される炭化水素基は、R〜Rで示されるものと同一の炭化水素基を示す。R〜Rで示すように、Rで示される炭化水素基は、ハロゲン化またはパーハロゲン化されていてもよい。
【0180】
また、ノルボルネン系モノマーには、構造式Cで表されるモノマーに代えて、または、構造式Cで表されるモノマーとともに、構造式Aで表されるノルボルネン系部位(ノルボルネン系二重結合)を含む架橋性ノルボルネン系モノマーを用いることもできる。この架橋性ノルボルネン系モノマーは、触媒前駆体の存在下で、架橋反応を生じ得る化合物である。
【0181】
この架橋性ノルボルネン系モノマーとしては、連続多環環系(fused multicyclic ring systems)の化合物と、連結多環環系(linked multicyclic ring systems)の化合物とがある。
【0182】
連続多環環系の化合物(連続多環環系の架橋性ノルボルネン系モノマー)としては、例えば、下記構造式Dで表される化合物が挙げられる。
【0183】
【化21】

[式中、Yは、メチレン(−CH−)基を表し、mは、0〜5の整数を表わす。ただし、mが0である場合、Yは、単結合である。]
【0184】
なお、簡略化のため、ノルボルナジエン(norbornadiene)は、連続多環環系に含まれ、重合性ノルボルネン系二重結合を含むものと考えることとする。
【0185】
一方、連結多環環系の化合物(連結多環環系の架橋性ノルボルネン系モノマー)としては、下記構造式Eで表される化合物が挙げられる。
【0186】
【化22】

[式中、aは、それぞれ独立して、単結合または二重結合を表し、mは、それぞれ独立して、0〜5の整数を表し、Rは、それぞれ独立して二価の炭化水素基、二価のエーテル基または二価のシリル基を表す。また、nは、0または1である。]
【0187】
二価の炭化水素基(ハイドロカルビル基)の具体例としては、一般式:−(C2d)−で表されるアルキレン基(dは、好ましくは1〜10の整数を表す。)と、二価の芳香族基(アリール基)とが挙げられる。
【0188】
二価のアルキレン基としては、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C〜C10)のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が挙げられる。
【0189】
なお、分岐アルキレン基は、主鎖の水素原子が、直鎖状または分岐状のアルキル基で置換されたものである。
【0190】
一方、二価の芳香族基としては、二価のフェニル基、二価のナフチル基が好ましい。
また、二価のエーテル基は、−R10−O−R10−で表される基である。
ここで、R10は、それぞれ独立して、Rと同じものを表す。
【0191】
なお、このようなノルボルネン系モノマーの反応物としては、例えば、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
【0192】
なお、上記以外のモノマー、例えば、ビニルエーテル系モノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類またはシクロアルキルビニルエーテル類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0193】
また、スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0194】
さらに、光二量化モノマーとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2’−ビス−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0195】
なお、これらのモノマーと前述した(メタ)アクリル系ポリマー915との組み合わせは、特に限定されず、いかなる組み合わせであってもよい。
【0196】
さらに、モノマーとしては、上述した各種モノマー、すなわちアクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等のモノマーが、同種・非同種のものを問わず2種以上併用されていてもよい。これらの組合せの中でも、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマー、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーのうちの2種以上を併用するのが好ましい。
【0197】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、光を照射した際に、照射領域と未照射領域との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0198】
具体的には、式(20)で表わされるモノマーを「第1モノマー」とし、式(11)、式(12)、式(15)、式(18)、式(19)および式(34)〜(39)で表わされるモノマーのうちの1種または2種以上を組み合わせたものを「第2モノマー」としたとき、第1モノマーと第2モノマーとを併用するのが好ましく、その併用割合を(第2モノマーの重量)/(第1モノマーの重量)で規定するとき、0.1〜1程度であるのが好ましく、0.1〜0.6程度であるのがより好ましい。併用割合が前記範囲内であると、モノマーの反応性の速さと光導波路1の耐熱性とのバランスが向上する。
【0199】
なお、第2モノマーに相当するモノマーは、式(20)で表わされるモノマーと異なるオキセタニル基を有するモノマーや、エポキシ基を有するモノマーである。このような第2モノマーを用いることにより、第1モノマーと(メタ)アクリル系ポリマー915との反応性を向上させることができ、それによって透明性を保持しつつ、光導波路1の耐熱性を向上させることができる。
【0200】
また、モノマーは、その少なくとも一部が上述したようにオリゴマー化していてもよい。
【0201】
これらのモノマーの添加量は、(メタ)アクリル系ポリマー915の重量100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間の屈折率変調を可能にし、得られる光導波路1の可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
【0202】
((重合開始剤))
重合開始剤は、活性放射線の照射に伴ってモノマーに作用し、モノマーの反応を促すものであり、モノマーの反応性を考慮して添加される。
【0203】
用いる重合開始剤としては、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマーには専らラジカル重合開始剤が、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマーには専らカチオン重合開始剤が、ノルボルネン系モノマーには専ら助触媒と触媒前駆体とを含むものが好ましく用いられる。
【0204】
また、これらの重合開始剤は、(メタ)アクリル系ポリマー915が離脱性基を有する場合、この離脱性基に作用し、主鎖からの離脱を促す機能も発揮する。
【0205】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
【0206】
一方、カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。
【0207】
なお、モノマーとして環状エーテル基を有するモノマーを用いる場合には、以下のようなカチオン重合開始剤(光酸発生剤)が好ましく用いられる。
【0208】
例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類等の化合物が、光酸発生剤として用いられる。なお、これらの光酸発生剤は、単独または複数を組み合わせて用いられる。
【0209】
ノルボルネン系モノマーに用いられる重合開始剤に含まれる触媒前駆体(第2の物質)は、ノルボルネン系モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、活性放射線930の照射により活性化した助触媒(第1の物質)の作用により、活性化温度が変化する物質である。
【0210】
このような触媒前駆体としては、例えば、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0211】
【化23】

[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
【0212】
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(i−Pr)、Pd(OAc)(P(Cy)、Pd(OCCMe(P(Cy)、Pd(OAc)(P(Cp)、Pd(OCCF(P(Cy)、Pd(OCC(P(Cy)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
【0213】
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
【0214】
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(Cy)が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
【0215】
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
【0216】
助触媒(第1の物質)は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
【0217】
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の脱離基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0218】
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)等が挙げられる。
【0219】
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、下記構造式Fで表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
【0220】
【化24】

【0221】
重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー915の重量100重量部に対し0.01重量部以上0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
【0222】
なお、本実施形態では、添加剤920には、モノマーの他、重合開始剤を含む構成としたが、モノマーの反応性が著しく高い場合には、添加剤920への重合開始剤の添加を省略してもよい。
【0223】
また、添加剤920は、モノマーや重合開始剤に加え、増感剤等を含んでいてもよい。
このうち、増感剤は、光に対する重合開始剤の感度を増大して、重合開始剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、重合開始剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0224】
このような増感剤としては、重合開始剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen-9-ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0225】
増感剤の具体例としては、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0226】
増感剤の含有量は、コア層形成用組成物900中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
【0227】
なお、添加剤920は、これらの他に、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0228】
以上のような(メタ)アクリル系ポリマー915と添加剤920とを含有する層910は、(メタ)アクリル系ポリマー915中に一様に分散する添加剤920の作用により、所定の屈折率を有している。
【0229】
[2]次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線930を照射する(図5参照)。
【0230】
なお、以下では、モノマーとして、(メタ)アクリル系ポリマー915より低い屈折率を有するものを用い、離脱性基として、その離脱により屈折率が低下するものを備える(メタ)アクリル系ポリマー915を用いる場合を一例に説明する。
【0231】
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925が主に側面クラッド部15となる。
【0232】
したがって、ここで示す例では、マスク935には、主に、形成すべき側面クラッド部15のパターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。なお、コア部14や側面クラッド部15のパターンは、活性放射線930の照射に応じて形成される屈折率分布Wに基づいて決まるため、開口9351のパターンと側面クラッド部15のパターンとは完全に一致するものではなく、前記両パターンには多少のずれが生じる場合もある。
【0233】
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層910上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
【0234】
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
【0235】
また、図5においては、マスク935の開口(窓)9351は、活性放射線930の照射領域925のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
【0236】
用いる活性放射線930は、モノマーの反応を進行させ得るものであって、さらに、重合開始剤に対して光化学的な反応(変化)を生じさせ得るものや、(メタ)アクリル系ポリマー915に含まれる離脱性基を離脱させ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
【0237】
これらの中でも、活性放射線930は、重合開始剤や離脱性基の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、モノマーの反応を確実に進行させることができるとともに、重合開始剤を比較的容易に活性化させたり、離脱性基を比較的容易に離脱させることができる。
【0238】
このとき、活性放射線930の照射量、照射時間、照射深度および照射間隔のうちの少なくとも1つの条件を設定することにより、得られるコア層13において、目的の屈折率分布Wを得ることができる。
【0239】
この活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm程度であるのがさらに好ましい。
【0240】
活性放射線930の照射深度は、例えば、層910の厚さ方向の中央部とすることができ、また、活性放射線930は、例えば、層910に対して連続的に照射される。
【0241】
マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、照射領域925において重合開始剤が活性化される。これにより、照射領域925においてモノマーが重合する。モノマーが重合すると、照射領域925におけるモノマーの量が減少するため、それに応じて未照射領域940中のモノマーが照射領域925に拡散移動する。前述したように、(メタ)アクリル系ポリマー915とモノマーは、互いに屈折率差が生じるように適宜選択されるため、モノマーの拡散移動に伴って照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。
【0242】
図9は、照射領域925と未照射領域940との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層910の横断面の幅方向の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【0243】
本実施形態では、モノマーとして(メタ)アクリル系ポリマー915より屈折率が小さいものを用いているため、モノマーの拡散移動に伴い、未照射領域940の屈折率が高くなるとともに、照射領域925の屈折率は低くなる(図9(a)参照)。
【0244】
モノマーの拡散移動は、照射領域925においてモノマーが消費され、それに応じて形成された照射領域925と未照射領域940との間のモノマーの濃度差がきっかけとなって起こると考えられる。このため、未照射領域940全体のモノマーが一斉に照射領域925に向かうのではなく、照射領域925に近い部分から徐々に移動が始まり、これを補うように未照射領域940の中央部から外側へのモノマーの移動も生起される。その結果、図9(a)に示すように、照射領域925と未照射領域940との境界を挟んで、未照射領域940側に高屈折率部H、照射領域925側に低屈折率部Lが形成される。これら高屈折率部Hおよび低屈折率部Lは、それぞれ上述したようなモノマーの拡散移動に伴って形成されるため、必然的に滑らかな曲線で構成されることとなる。具体的には、高屈折率部Hは、例えば上に凸の略U字状となり、低屈折率部Lは、例えば下に凸の略U字状となる。
【0245】
なお、上述したようなモノマーが重合してなるポリマーの屈折率は、重合前のモノマーの屈折率とほぼ同じ(屈折率差が0〜0.001程度)であるため、照射領域925では、モノマーの重合が進むにつれ、モノマーの量およびモノマー由来の反応物の量に応じて屈折率の低下が進むこととなる。
【0246】
一方、未照射領域940では、重合開始剤が活性化されないため、モノマーは重合しない。
【0247】
また、照射領域925ではモノマーの重合が進むにつれてモノマーの拡散移動の容易性が徐々に低下する。これにより、照射領域925では、未照射領域940に近いほど自ずとモノマーの濃度が高くなり、屈折率の低下量が大きくなる。その結果、照射領域925に形成される低屈折率部Lの分布形状は、左右非対称になり易く、未照射領域940側の勾配はより急峻なものとなる。
【0248】
また、(メタ)アクリル系ポリマー915は前述したように離脱性基を有しているものを用いることができる。このような(メタ)アクリル系ポリマー915を用いる場合、離脱性基は活性放射線930の照射に伴って離脱し、(メタ)アクリル系ポリマー915の屈折率を低下させる。したがって、照射領域925に活性放射線930が照射されると、前述したモノマーの拡散移動が開始されるとともに、(メタ)アクリル系ポリマー915から離脱性基が離脱し、照射領域925の屈折率は照射前から低下することとなる(図9(b)参照)。
【0249】
この屈折率の低下は、照射領域925全体で一律に生じるため、前述した高屈折率部Hと低屈折率部Lの屈折率差は、より拡大される。その結果、図9(b)に示す屈折率分布Wが得られる。なお、図9(a)における屈折率の変化と、図9(b)における屈折率の変化は、ほぼ同時に起こり、屈折率分布Wが形成されることとなる。図9(a)では、屈折率分布を誇張して表現しているが、実際のモノマーの拡散移動に伴う高屈折率部Hと低屈折率部Lとの屈折率差は比較的小さい。図9(b)における屈折率変化によってこの屈折率差は十分に拡大し、本発明の光導波路が有する屈折率分布Wが形成される。
【0250】
なお、活性放射線930の照射量を調整することにより、形成される屈折率差を制御することができ、例えば、照射量を多くすることで、屈折率差を拡大することができる。
【0251】
次に、層910に加熱処理を施す。この加熱処理において、光を照射した照射領域925中のモノマーがさらに重合する。一方で、この加熱工程において、未照射領域940のモノマーは揮発することとなる。これにより、未照射領域940ではモノマーがさらに少なくなり、屈折率が高くなって(メタ)アクリル系ポリマー915に近い屈折率となる。
【0252】
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0253】
また、加熱時間は、照射領域925のモノマーの重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0254】
なお、この加熱処理は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
以上のような原理で、屈折率分布Wを有するコア層13が得られる(図6参照)。
【0255】
屈折率分布Wにおいては、低屈折率部Lが転化した極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4が存在しており(図2(b)参照)、これらの極小値の位置がコア部14と側面クラッド部15との界面に相当する。
【0256】
なお、屈折率分布Wは、コア層13中のモノマー由来の反応物の濃度(量)に一定の相関関係を有している。したがって、このモノマー由来の反応物の濃度を測定することにより、光導波路1が有する屈折率分布Wを間接的に特定することが可能である。
【0257】
反応物の濃度の測定は、例えば、FT−IR、TOF−SIMSの線分析、面分析等を用いて行うことができる。
【0258】
さらには、光導波路1の出射光の強度分布が、屈折率分布Wと一定の相関関係を有していることを利用しても、屈折率分布Wを間接的に特定することができる。
【0259】
もちろん、屈折率分布Wは、屈折ニアフィールド法、微分干渉法等により、直接特定することもできる。
【0260】
また、モノマーとして(メタ)アクリル系ポリマー915より高い屈折率を有するものを用いる場合には、上記と反対に、モノマーの拡散移動に伴って移動先の屈折率が高くなるため、それに応じて、照射領域925および未照射領域940を設定するようにすればよい。また、この場合、離脱により屈折率が上昇する離脱性基を有する(メタ)アクリル系ポリマー915を用いることが好ましい。
【0261】
また、活性放射線930として、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
【0262】
[3]次に、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層する。これにより、光導波路1が得られる。
【0263】
これにはまず、支持基板952上に、クラッド層11(12)を形成する(図7参照)。
【0264】
クラッド層11(12)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用組成物)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
【0265】
次に、コア層13を支持基板951から剥離し、コア層13を、クラッド層11が形成された支持基板952と、クラッド層12が形成された支持基板952とで挟持する(図8(a)参照)。
【0266】
そして、図8(a)中の矢印で示すように、クラッド層12が形成された支持基板952の上面側から加圧し、クラッド層11、12とコア層13とを圧着する。
【0267】
これにより、クラッド層11、12とコア層13とが接合、一体化される(図8(b)参照)。
【0268】
次いで、クラッド層11、12から、それぞれ支持基板952を剥離、除去する。これにより、光導波路1が得られる。
【0269】
その後、必要に応じて、光導波路1の下面に支持フィルム2を積層し、上面にカバーフィルム3を積層する。
【0270】
なお、コア層13は、支持基板951上ではなく、クラッド層11上に成膜するようにしてもよい。さらに、クラッド層12は、コア層13上に張り合わせるのではなく、コア層13上に材料を塗布して形成するようにしてもよい。
【0271】
次に、光導波路1の他の構成例について説明する。
図10は、他の構成の光導波路の横断面におけるコア部を中心とする一部を切り出した図、および、この横断面のコア部の幅方向の中心を通過する中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【0272】
以下、図10に示す光導波路1について説明するが、図1に示す光導波路1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0273】
図10に示す光導波路1は、コア層13のコア部14の屈折率が中心部から側面クラッド部15に向かって低くなっているのに加え、さらに、中心部から上下方向(クラッド層11、12)に向かって低くなっている。
【0274】
本実施形態では、光導波路1には、その横断面において、コア部14を通る厚さ方向に、屈折率分布Tが形成されている。具体的には、この屈折率分布Tは、その中心部に位置する極大値Tmと、極大値Tmの両側にそれぞれ位置する極小値Ts1、Ts2を有している。なお、極大値Tmの下側に位置する極小値をTs1とし、上側に位置する極大値をTs2とする。
【0275】
本実施形態の光導波路1では、図10に示すように、極小値Ts1と極小値Ts2との間が極大値Tmを含んでいることから、この領域がコア部14となる。
【0276】
一方、極小値Ts1の下側の領域がクラッド層11となり、極小値Ts2の上側の領域がクラッド層12となる。
【0277】
すなわち、屈折率分布Tは、少なくとも、極小値、極大値、極小値がこの順で並ぶ領域を有していればよい。
【0278】
なお、この領域は、コア層13が積層される数に応じて繰り返し設けられ、例えばコア層13を2層設けた場合、屈折率分布Tでは、極小値と極大値とが交互に並ぶこととなる。この場合、極大値については、相対的に大きい第1の極大値と、相対的に小さい第2の極大値が、交互に並んでいるのが好ましい。すなわち、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値・・・のように並んでいればよい。
【0279】
また、これらの複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値は第1の極大値や第2の極大値より小さく、第2の極大値は第1の極大値より小さいという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ズレ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
【0280】
また、光導波路1は、細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Tは、光導波路1の長手方向全体(光の伝搬(伝送)方向の任意の位置で切断した横断面)においてほぼ同じ分布が維持されている。
【0281】
ここで、極小値Ts1は、クラッド層11における平均屈折率TA未満であり、極小値Ts2は、クラッド層12における平均屈折率TA未満である。これにより、コア部14と各クラッド層11、12との間に、各クラッド層11、12よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ts1、Ts2の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14から各クラッド層11、12への光の漏れが抑制されるため、伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
【0282】
また、屈折率分布Tは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、ステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
【0283】
さらに、上述したような各極小値Ts1、Ts2を有するとともに、屈折率が連続的に変化している屈折率分布Tによれば、コア部14のより中心部に近い領域を伝送光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高め得る光導波路1が得られる。
【0284】
なお、屈折率分布Tにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Tの曲線が各部で丸みを帯びており、屈折率分布Tの接線の傾きが急激に変化する点を含んでいない状態である。
【0285】
また、屈折率分布Tのうち、極大値Tmは、図10に示すようにコア部14に位置しているが、コア部14の中でもその厚さの中心部に位置している。これにより、コア部14では、伝送光がコア部14の厚さの中心部に集まる確率が高くなり、相対的に各クラッド層11、12に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
【0286】
なお、例えばコア部14の厚さの中心部とは、極小値Ts1と極小値Ts2の中点から両側に、コア部14の厚さの30%の距離の領域とする。
【0287】
また、極大値Tmの位置は、できればコア部14の厚さの中心部に位置していることが望まれるが、必ずしも中心部でなくても、コア部14の縁部近傍(各クラッド層11、12との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部14の伝送損失をある程度抑えることができる。
【0288】
なお、例えばコア部14の縁部近傍とは、コア部14のクラッド層11、12の界面から内側に、コア部14の厚さの5%の距離の領域とする。
【0289】
一方、屈折率分布Tでは、各クラッド層11、12において、コア部14との界面近傍以外で最も高く、コア部14との界面近傍で最も低くなるよう屈折率が変化している。これにより、コア部14中の極大値Tmと、各クラッド層11、12中における屈折率の高い領域とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部14中の伝送光が、各クラッド層11、12中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部14の伝送損失を低減することができる。
【0290】
なお、例えば各クラッド層11、12におけるコア部14との界面近傍とは、この界面から内側に、各クラッド層11、12の厚さの5%の距離の領域とする。
【0291】
また、各クラッド層11、12における平均屈折率TAは、例えば、極小値Ts1、Ts2と各クラッド層11、12における最大値との中点で近似することができる。
【0292】
また、前述したように複数のコア層13を積層する場合には、相対的に大きい第1の極大値がコア部中に位置し、相対的に小さい第2の極大値はクラッド層中に位置することとなる。この場合、好ましくは、第2の極大値は、クラッド層の厚さの中央部に位置しているのが好ましい。これにより、コア部中に位置する第1の極大値と、クラッド層中に位置する第2の極大値との離間距離が、最大限確保され、しかもコア部から漏れ出た光が、他のコア部に侵入しないよう、クラッド層中に閉じ込めることができるようになる。これにより、複数のコア層13を積層した場合でも、層間におけるクロストークを確実に抑制することができる。
【0293】
なお、極小値Ts1、Ts2は、前述したように、各クラッド層11、12の平均屈折率TA未満であるが、両者の差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ts1、Ts2とクラッド層11、12の平均屈折率TAとの差は、極小値Ts1、Ts2とコア部14中の極大値Tmとの差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、各クラッド層11、12は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ts1、Ts2と各クラッド層11、12の平均屈折率TAとの差が前記下限値を下回る場合は、各クラッド層11、12における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、各クラッド層11、12における光伝送性が大き過ぎて、コア部14の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0294】
なお、極小値Ts1、Ts2とコア部14中の極大値Tmとの差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した差が、コア部14中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
【0295】
また、光導波路1における屈折率分布Tは、縦軸に光導波路1の横断面の厚さ方向の位置をとり、横軸に屈折率をとったとき、極大値Tm近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば右に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは右に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。屈折率分布Tがこのような形状をなしていると、コア部14における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
【0296】
また、屈折率分布Tは、極小値Ts1近傍および極小値Ts2近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば左に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは左に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。
以上のような図10に示す光導波路1は、次のようにして製造することができる。
【0297】
図13〜15は、それぞれ図10に示す光導波路1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図13〜15中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0298】
この光導波路1の製造方法は、[1’]支持基板951上に2種類の光導波路形成用組成物901、902(第1の組成物および第2の組成物)を層状に押出成形して層910を得る。[2’]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、光導波路1を得る。
【0299】
以下、各工程について順次説明する。
[1’]まず、光導波路形成用組成物901、902を用意する。
【0300】
光導波路形成用組成物901、902は、それぞれ、前述した(メタ)アクリル系ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマーを含む。)と、を含有するものであるが、その組成はやや異なっている。
【0301】
2種類の組成物のうち、光導波路形成用組成物901は、主にコア層13を形成するための材料であり、活性放射線の照射により、(メタ)アクリル系ポリマー915中において少なくともモノマーの活発な反応が生じ、それに伴って屈折率分布に変化を生じさせる材料である。すなわち、光導波路形成用組成物901は、(メタ)アクリル系ポリマー915とモノマーの存在比率の偏りによって屈折率分布に変化が生じ、その結果、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成することのできる材料である。
【0302】
一方、光導波路形成用組成物902は、主にクラッド層11、12を形成するための材料であり、光導波路形成用組成物901より低屈折率の材料で構成されている。
【0303】
光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との屈折率差は、それぞれに含まれる(メタ)アクリル系ポリマー915の組成、モノマーの組成、(メタ)アクリル系ポリマー915とモノマーとの存在比率等を設定することにより、適宜調整することができる。
【0304】
例えば、モノマーの屈折率が(メタ)アクリル系ポリマー915より低い場合、組成物中のモノマーの含有率は、光導波路形成用組成物901より光導波路形成用組成物902の方が高くなっている。一方、モノマーの屈折率が(メタ)アクリル系ポリマー915より高い場合、組成物中のモノマーの含有率は、光導波路形成用組成物902より光導波路形成用組成物901の方が高くなっている。換言すれば、(メタ)アクリル系ポリマー915やモノマーの各屈折率に応じて、各光導波路形成用組成物901、902中の(メタ)アクリル系ポリマー915および添加剤920の組成が適宜選択されている。
【0305】
また、光導波路形成用組成物901および光導波路形成用組成物902では、モノマーの含有率が互いにほぼ等しくなるよう、組成が設定されているのが好ましい。このように設定すれば、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、モノマーの含有率の差が小さくなるため、これをきっかけにしたモノマーの拡散移動が抑制される。モノマーの拡散移動は、前述したように屈折率差の形成において有用であるが、望ましくない方向に移動することが避けられない場合もある。後述する多色押出成形法では、層910の厚さ方向の屈折率分布を形成することが可能であるため、少なくとも厚さ方向においてはモノマーの拡散移動が抑制されていても差し支えなく、むしろ厚さ方向における意図しないモノマーの拡散移動は抑制される方が好ましい。意図しないモノマーの拡散移動を抑制することにより、最終的に目的とする形状の屈折率分布Tを有する光導波路1を確実に製造することができる。
【0306】
なお、モノマーの含有率をほぼ等しくした場合には、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、(メタ)アクリル系ポリマー915またはモノマーの条件を異ならせればよい。具体的には、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とで、用いる(メタ)アクリル系ポリマー915の組成を異ならせるほか、同じ組成であっても分子量や重合度を異ならせるようにすればよい。また、用いるモノマーの組成、すなわち屈折率を異ならせるようにしてもよい。このようにすれば、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とでモノマーの含有率をほぼ等しくし、モノマーの拡散移動を抑制しながら、両者の間に屈折率差を形成することができる。
【0307】
次いで、支持基板951上に光導波路形成用組成物901、902を多色押出成形法により層状に成形する。
【0308】
多色押出成形法では、光導波路形成用組成物901を3層で押し出すと同時に、これらの層間にそれぞれ光導波路形成用組成物902を押し出すことで、5層を積層してなる多色成形体914を一括形成する。具体的には、多色成形体914では、光導波路形成用組成物901、光導波路形成用組成物902、光導波路形成用組成物901、光導波路形成用組成物902、および光導波路形成用組成物901が、下方からこの順でそれぞれ層状に押し出されるため、組成物同士の境界においては、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とがわずかに混濁している。したがって、組成物同士の境界近傍では、光導波路形成用組成物901の一部と光導波路形成用組成物902の一部とが混合し、厚さ方向に沿って混合比率が連続的に変化している領域が形成される。その結果、多色成形体914では、図13(a)の下方から、光導波路形成用組成物901からなる第1成形層914a、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第2成形層914b、光導波路形成用組成物902からなる第3成形層914c、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第4成形層914d、光導波路形成用組成物901からなる第5成形層914e、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第6成形層914f、光導波路形成用組成物902からなる第7成形層914g、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第8成形層914h、および光導波路形成用組成物901からなる第9成形層914iが、この順で積層されたものとなる。
【0309】
そして、得られた多色成形体914中の溶媒を蒸発(脱溶媒)させ、層910を得る(図13(b)参照)。
【0310】
得られた層910は、図13(b)の下方から、第3成形層914cの中心部より下方の層から形成されるクラッド層11と、第3成形層914cの中心部より上方で第7成形層914gの中心部より下方の層から形成されるコア層13と、第7成形層914gの中心部より上方の層から形成されるクラッド層12との積層体となる。
【0311】
ところで、このような層910を得るための多色成形体914は、以下のようなダイコーター(多色押出成形装置)800を用いて製造される。
【0312】
図11は、多色成形体914を得るダイコーターを示す斜視図、図12は、ダイコーターの一部を拡大して示す縦断面図である。
【0313】
ダイコーター800は、図11に示すように、上リップ部811と、その下方に設けられた下リップ部812とを備えるダイヘッド810を有している。
【0314】
上リップ部811および下リップ部812は、それぞれ長尺のブロック体で構成され、互いに重ね合わされている。合わせ面には空洞のマニホールド820が形成されている。マニホールド820の幅はダイヘッド810の右側ほど広くなるよう連続的に拡張している。一方、マニホールド820の厚さはダイヘッド810の右側ほど小さくなるよう連続的に縮小している。そして、マニホールド820の右端では、空洞の幅が最大でかつ厚さが最小になっており、スリット821を形成している。
【0315】
このダイヘッド810は、マニホールド820の左側から供給された光導波路形成用組成物901、902をスリット821から右側に成形しつつ押し出すことができる。すなわち、スリット821の形状に応じて、多色成形体914の幅および厚さが決定される。
【0316】
ダイヘッド810の左側には、ミキシングユニット830が設けられている。ミキシングユニット830は、光導波路形成用組成物901、902をそれぞれダイヘッド810に供給するための3系統の配管を組み合わせて構成されており、光導波路形成用組成物902をダイヘッド810に供給する第1の供給管831と、光導波路形成用組成物901をダイヘッド810に供給する第2の供給管832および第3の供給管833とを有している。
【0317】
また、第1の供給管831、第2の供給管832および第3の供給管833から供給された光導波路形成用組成物901、902は、ダイヘッド810との接続を担う接続部835において合流し、ダイヘッド810のマニホールド820へと供給される。なお、第2の供給管832は、途中で上下2つに分岐し、接続部835の最上層部および最下層部にそれぞれ接続されている。一方、第3の供給管833は、接続部835の中層部に接続されている。さらに、第1の供給管831も、途中で上下2つに分岐し、接続部835の最上層部と中層部との間(上層部)、および、最下層部と中層部との間(下層部)にそれぞれ接続されている。
【0318】
すなわち、接続部835では、光導波路形成用組成物901で構成される1層の流れを、光導波路形成用組成物902で構成される上下2層の流れで挟み込むようにして合流し、さらにその外側を光導波路形成用組成物901で構成される上下2層の流れで挟み込みようにして合流している。
【0319】
なお、この際、最上層部および最下層部に接続される第2の供給管832については、その流量が、第3の供給管833より小さくなるようにする。これにより、第1成形層914aおよび第9成形層914iは、第5成形層eに比べて十分に薄くなり、最下層部および最下層部の屈折率が中層部の屈折率より高くなるのを防止することができる。
【0320】
また、ミキシングユニット830は、第1の供給管831と第2の供給管832との合流地点に設けられた、複数のピン836を有している。これらのピン836は、長尺の円柱状をなしており、その軸と、第1の供給管831および第2の供給管832の延伸方向とがほぼ直交するよう配置されている。また、図12では、これらのピン836が、接続部835の最上層部と上層部との間、上層部と中層部との間、中層部と下層部との間、および、下層部と最下層部との間などにそれぞれ設けられている。なお、ピン836の本数は特に限定されないが、好ましくは2本以上とされ、より好ましくは3〜10本程度とされる。また、ピン836は、光導波路形成用組成物901、902間に乱流を生じさせ得るものであれば、他の構造物(例えば、メッシュ、パンチングメタル等)で代替することもできる。
【0321】
ダイヘッド810の右側には、多色押出成形された多色成形体914を搬送する搬送部840が設けられている。搬送部840は、ローラー841と、ローラー841に沿って移動する搬送フィルム842とを有している。搬送フィルム842はローラー841の回転により、図11の下方から右側へと搬送されるが、その際に、ローラー841上にて多色成形体914を積層する。これにより、多色成形体914の形状を保持しつつ、右側へと搬送することができる。
【0322】
次いで、ダイコーター800の動作について説明する。
ミキシングユニット830に光導波路形成用組成物901、902が同時に供給されると、接続部835において5層の層流が形成される。接続部835において光導波路形成用組成物901、902が合流する際、合流部に設けられた複数のピン836の作用により、光導波路形成用組成物901、902の流れに乱れが生じる。この乱れは、層流間の境界を不明瞭とし、境界では光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とが混在した領域が形成される。
【0323】
このようにして形成された層流は、ダイヘッド810のマニホールド820において、幅方向に拡張されるとともに厚さ方向には圧縮される。その結果、前述したような、第1成形層914a、第2成形層914b、第3成形層914c、第4成形層914d、第5成形層914e、第6成形層914f、第7成形層914g、第8成形層914h、および第9成形層914iが、下方からこの順で積層されてなる多色成形体914が形成される。そして、このような多色成形体914を用いることにより、最終的に前述した厚さ方向の屈折率分布Tを有する光導波路1が得られる。
【0324】
なお、多色成形体914は、搬送フィルム842上に形成されるが、この搬送フィルム842をそのまま前述した支持基板951として利用することもできる。
【0325】
また、図11に示すダイコーター800は、コア層13を1層含む層910を形成可能であるが、コア層13を複数層設ける場合には、それに応じて、ミキシングユニット830の構造を変更すればよい。具体的には、コア層13の層数に応じて第1の供給管831、第2の供給管832および第3の供給管833の分岐数を増やすようにすればよい。
【0326】
なお、上記多色押出成形法およびダイコーターは、多色成形体914を製造する方法および装置の一例であり、層間での組成物の混濁を生じ得る方法および装置であれば、例えば射出成形法(装置)、塗布法(装置)、印刷法(装置)等の各種方法(装置)を用いることもできる。
【0327】
なお、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、含まれる(メタ)アクリル系ポリマー915は同じ化学構造のものでも、異なる化学構造のものでもよい。なお、同じ化学構造のものを用いることで、互いの相溶性を高くなるため、組成物同士が混合し易くなる。これにより、屈折率分布Tの連続性を高めることができる。
【0328】
[2’]次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線930を照射する(図14参照)。
【0329】
以下では、モノマーとして、(メタ)アクリル系ポリマー915より低い屈折率を有するものを用い、離脱性基として離脱により屈折率が低下する(メタ)アクリル系ポリマー915を用いる場合を一例に説明する。また、これに対応して、層910を形成するために用いた光導波路形成用組成物901、902において、(メタ)アクリル系ポリマー915の組成が、(光導波路形成用組成物901の屈折率)>(光導波路形成用組成物902の屈折率)の関係を満足するよう設定されている。これにより、層910では、厚さ方向の中央部が最も屈折率が高く、そこから層910の表面および裏面との間にそれぞれ極小値が存在し、かつ、屈折率が連続的に変化する屈折率分布が形成されている。
【0330】
マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、照射領域925のうち、コア層13における照射領域9253において重合開始剤が活性化される。これにより、照射領域9253においてモノマーが重合する。モノマーが重合すると、照射領域9253におけるモノマーの量が減少するため、それに応じて未照射領域940のうち、コア層13における未照射領域9403中のモノマーが照射領域9253に拡散移動する。前述したように、(メタ)アクリル系ポリマー915とモノマーは、互いに屈折率差が生じるように適宜選択されるため、モノマーの拡散移動に伴ってコア層13の照射領域9253と未照射領域9403との間に屈折率差が生じる。一方、クラッド層11、12における照射領域9251、9252では、重合開始剤が含まれていないので、モノマーの重合反応が抑えられる。したがって、本実施形態では、活性放射線930の照射量は、クラッド層11、12における照射領域9251、9252中のモノマーの重合反応が生じない程度とするのが好ましい。
【0331】
このとき、前述した図9に示すような原理に基づいて、コア層13の照射領域9253と未照射領域9403との間で屈折率差が生じ、屈折率分布Wが形成される。
【0332】
なお、本実施形態では、照射領域9253では、コア層13中の未照射領域9403からのモノマーの拡散移動のみならず、照射領域925のうち、クラッド層11における照射領域9251およびクラッド層12における照射領域9252からのモノマーの拡散移動も生じる。これにより、照射領域9253では、さらに屈折率の低下が生じることとなる。一方、照射領域9251および照射領域9252では、モノマーの拡散移動に伴って屈折率の上昇が生じるが、この領域ではそもそも屈折率が低くなるようモノマーの含有率等が設定されているので、屈折率の上昇が生じても光導波路1の機能を損なうことはない。
【0333】
また、クラッド層11における照射領域9251およびクラッド層12における照射領域9252では、コア層13における照射領域9253と同様、離脱性基の離脱が生じ、(メタ)アクリル系ポリマー915の屈折率が低下する。その結果、照射領域9251および照射領域9252においても、さらなる屈折率の低下が生じる。
以上のような原理で、屈折率分布Wを有する光導波路1が得られる(図9参照)。
【0334】
一方、活性放射線930を照射する前の層910には、図16(a)に示すように、その厚さ方向において、屈折率分布T’が形成されている。この屈折率分布T’は、前述したように、互いに屈折率の異なる光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とを用い、多色成形法によって層910を得たことにより形成されたものである。
【0335】
ここで、マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とでモノマーの含有率に差がある場合、未照射領域9403中のモノマーが照射領域9253に拡散移動するため、コア層13のコア部14となるべき部分の厚さ方向における屈折率分布T’においても、コア部14となるべき部分に対応する領域の屈折率が高くなる。一方、コア部14となるべき部分の上下に位置するクラッド層11、12では、屈折率が変化しないため、結果的に、得られるコア部14とその上下のクラッド層11、12との間で屈折率差が拡大することとなる。
【0336】
以上のような原理で、極大値と極小値との間で屈折率差の大きい屈折率分布Tを有する光導波路1が得られる(図16(b)参照)。
【0337】
以上により、光導波路1が得られる。
その後、必要に応じて、支持基板951から光導波路1を剥離するとともに、光導波路1の下面に支持フィルム2を積層し、上面にカバーフィルム3を積層する。
【0338】
<電子機器>
上述したような光導波路1は、光伝送効率および長期信頼性に優れたものである。このため、光導波路1を備えることにより、2点間で高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
【0339】
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
【0340】
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0341】
また、本発明の光導波路は、伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、多チャンネル化および高密度化しても混信が生じ難い。このため、高密度かつ小面積でも信頼性の高い光導波路が得られ、この光導波路を搭載することで、電子機器の信頼性向上および小型化が図られる。
【0342】
以上、本発明の光導波路および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路には、任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0343】
1 光導波路
11、12 クラッド層
13 コア層
14 コア部
141、142 コア部
15 側面クラッド部
151、152、153 側面クラッド部
2 支持フィルム
3 カバーフィルム
800 ダイコーター(多色押出成形装置)
810 ダイヘッド
811 上リップ部
812 下リップ部
820 マニホールド
821 スリット
830 ミキシングユニット
831 第1の供給管
832 第2の供給管
833 第3の供給管
835 接続部
836 ピン
840 搬送部
841 ローラー
842 搬送フィルム
900 コア層形成用組成物
901、902 光導波路形成用組成物
910 層
914 多色成形体
914a 第1成形層
914b 第2成形層
914c 第3成形層
914d 第4成形層
914e 第5成形層
914f 第6成形層
914g 第7成形層
914h 第8成形層
914i 第9成形層
915 (メタ)アクリル系ポリマー
920 添加剤
930 活性放射線
935 マスク(マスキング)
9351 開口(窓)
925 照射領域
9251、9252、9253 照射領域
940 未照射領域
9403 未照射領域
951、952 支持基板
C1、C2 中心線
W 屈折率分布
WA クラッド部における平均屈折率
T、T’ 屈折率分布
H 高屈折率部
L 低屈折率部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝送するコア層を有する光導波路であって、
前記コア層は、
少なくとも2つのクラッド部と、
該2つのクラッド部に隣接して設けられ、前記クラッド部の平均屈折率より平均屈折率が高く、かつ、屈折率が中心部から前記クラッド部に向かって低くなっており、前記光を伝送するコア部とを備え、
(メタ)アクリル系ポリマーと、該(メタ)アクリル系ポリマーと屈折率が異なるモノマーとを含む層に対して活性放射線を照射して、前記活性放射線が照射された照射領域内において、前記モノマーの反応を進行させることにより、前記活性放射線が照射されない未照射領域から、未反応の前記モノマーを前記照射領域に拡散させ、結果として、前記照射領域と前記未照射領域との間に屈折率差を生じさせることにより、前記照射領域および前記未照射領域のいずれか一方を前記コア部とし、他方を前記クラッド部としてなることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記クラッド部の屈折率は、中心部から前記コア部に向かって低くなっている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記コア層の横断面の厚さ方向に対して垂直な方向における屈折率分布において、前記コア部および前記クラッド部の屈折率が連続的に変化している請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記屈折率分布は、少なくとも2つの極小値と、少なくとも1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい少なくとも2つの第2の極大値と、を有し、これらが、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値の順で並ぶ領域を有しており、この領域のうち、前記第1の極大値を含むように前記2つの極小値で挟まれる領域が前記コア部、前記各極小値から前記第2の極大値側の領域が前記クラッド部である請求項3に記載の光導波路。
【請求項5】
前記屈折率分布は、前記活性放射線の照射量、照射時間、照射深度および照射間隔のうちの少なくとも1つの条件を設定することにより調整されている請求項4に記載の光導波路。
【請求項6】
前記極小値と前記クラッド部の平均屈折率との差は、前記極小値と前記第1の極大値との差の3〜80%である請求項4または5に記載の光導波路。
【請求項7】
前記極小値と前記第1の極大値との差は、0.005〜0.07である請求項4ないし6のいずれかに記載の光導波路。
【請求項8】
前記横断面の厚さ方向に対して垂直な方向における位置を横軸にとり、前記横断面における屈折率を縦軸にとったとき、
前記屈折率分布は、前記第1の極大値近傍において上に凸の略U字状をなし、前記極小値近傍において下に凸の略U字状をなしている請求項4ないし7のいずれかに記載の光導波路。
【請求項9】
前記屈折率分布において、前記第1の極大値近傍における屈折率が、前記クラッド部の平均屈折率以上の値を有している領域の幅をa[μm]とし、前記極小値近傍における屈折率が、前記クラッド部の平均屈折率未満の値を有している領域の幅をb[μm]としたとき、bは、0.01a〜1.2aである請求項4ないし8のいずれかに記載の光導波路。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、主鎖と、前記活性放射線の照射により前記主鎖から離脱する脱離性基とを有する請求項1ないし9のいずれかに記載の光導波路。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−123253(P2012−123253A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274762(P2010−274762)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】