説明

光拡散シート

【課題】LED光源の隠蔽性と光透過率が高く、製造適性に優れたLED照明用光拡散シートを提供する。
【解決手段】ポリエステルからなる支持体11の片面には、第1の樹脂層12a、第2の樹脂層12bがこの順で積層された光拡散部12が設けられている。第1の樹脂層12aと第2の樹脂層12bとは微粒子と水溶性及び/または水分散性のポリマーを含有する。第1の樹脂層12aは前記ポリマーに対して10〜400質量部の微粒子15を含有し、第2の樹脂層12bは前記ポリマーに対して80〜500質量部の微粒子15を含有する。光拡散部12を設けることで、LED光源の隠蔽性と光透過率を高くし、光拡散層塗布製造時の表面の傷つきを防止し、熱収縮率の大きい支持体11に対して、光拡散部12とは反対側に水系のハードコート層14を設けることで、塗布する際のひび割れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散シートに関する。詳しくはLED光源を有する各種表示装置、各種照明装置に好適な光拡散シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDを光源に用いた種々の形態のディスプレイや照明装置が提供されている。LEDの中でも白色LEDは照明用光源として注目され、近年、近紫外LEDを励起源として用いた白色LEDがその高い演色性から、次世代の照明装置や画像表示装置の光源として期待されている。LEDは低消費電力で長期信頼性に優れるが、LEDの光は指向性が強く照射光が広がりにくい特徴がある。従って、LEDを照明装置の光源として用いた場合には、一定の方向に対しては高い輝度の光を照射するが、それ以外の方向では輝度が弱くなる。このため、特定の方向から直接照明装置を見た場合には目に対する刺激が強すぎることがあり、照明場所によっては照明輝度のムラが生じるという不都合がある。そこで、LEDから発せられた光を光拡散性の部材に通して、光を様々な方向に拡散させることによって、いずれのLEDから光が発せられたかを分らないようにしている(LED光源の隠蔽性)。これにより、LEDから発せられる光の全体が均一化されるため、照明輝度にムラが生じなくなる。
【0003】
従来、照明に使用される光拡散性のある部材は、酸化チタンなどを練りこんだアクリル成型板の光拡散板が主流であり、これでLED光源の隠蔽性を高めようとすると、光透過率が低下してしまう問題があった。一方で、LCD用バックライトなどに使用されている拡散フィルムを用いると、透過率は高いが、拡散性が低いために隠蔽性が不足する問題があった。また、特許文献1には、プラスティックフィルム上に透明樹脂層とプラスティックビーズと樹脂からなる光拡散層を設けてなる光拡散シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3485613号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で知られる光拡散シートは、プラスティックビーズによる光拡散性を効果的に利用するものではあるが、特に光源にLEDを利用した照明装置に用いた場合、光透過率を向上させることはできるものの、LED光源の隠蔽性は未だ十分ではない。また、用途によっては光拡散シートの表面を他の機能部品でカバーするなどの後加工が施されることもあるため、その表面に傷がつき易く、この傷が輝度ムラなどの原因となるおそれがある。さらに、水系の透明樹脂層を連続塗布して製造する際には、透明樹脂層に傷が付き易く輝度ムラが生じるおそれがある。これに対して、透明樹脂層の塗布温度を高くすることで塗膜の硬化を促進し耐傷性を改善することはできるが、シート表面の耐傷性を高める目的でハードコート層を光拡散層の反対側に形成する場合には、ハードコート層の形成に水性塗布液を使用すると、塗布温度を高くすることによってハードコート層にひび割れが発生するおそれがある。
【0006】
ハードコート層の形成に使用される材料としては、複層フィルムの製造の容易さから、紫外線や電子線などを照射して硬化する多官能のアクリルモノマー、オリゴマーを含む素材が多く使用されている。その他に、アルコキシシランの加水分解とこの加水分解で生じるシラノールの脱水縮合とを利用する湿気熱硬化型のシリカ系ハードコート層材料が使用されることが多い。しかしこれらの材料では、十分な硬さのハードコート層を形成することはできるものの、ハードコート層を形成するための塗布液の溶剤として有機溶剤を使用し、しかも多量に使用するので、環境上好ましくない。
【0007】
これに対して、ハードコート層の形成に水性塗布液を用いた場合には、有機溶剤のように、環境に対して悪影響を及ぼすことは無いが、十分な硬さのハードコート層を形成するために170℃以上での高温乾燥処理が必要となる。例えば、水性塗布液を使用したハードコート層を支持体の一方の面に形成した後、もう一方の面に光拡散層を形成する場合には、ハードコート層形成後の支持体が熱収縮によって変形し、光拡散層を形成する際に塗布ムラが発生して光拡散層の均一性が低下する問題があった。これとは反対に、光拡散層を形成した後にハードコート層を形成する場合、光拡散層の乾燥温度が高すぎると、ハードコート塗布時の支持体の熱収縮が低下し、ハードコート層にひび割れが生じる問題があった。
【0008】
また、以上の問題に加え、近紫外LEDを励起源として用いるLEDは、前述のような利点があるものの、一方では、有害なUV光が漏れてくるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、LED光源の隠蔽性と光透過率が高い、水系ハードコートが積層されたLED照明用の光拡散シートの提供を目的とする。さらには、製造過程において表面に傷が付きにくい、すなわち耐傷性に優れ、水系ハードコートを積層する際の製造適性に優れたLED照明用の光拡散シートの提供を目的とする。加えて、本発明は、高演色性を保持しながら近紫外光を吸収する光拡散シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、ポリエステルからなる支持体の片面に、第1の樹脂層、第2の樹脂層がこの順で積層された光拡散シートであって、第1の樹脂層および第2の樹脂層は少なくとも1種以上の微粒子と水溶性及び/または水分散性のポリマーとを含有し、前記第1の樹脂層に含有される微粒子の含有量が、100質量部の前記ポリマーに対して5質量部以上400質量部以下であり、前記第2の樹脂層に含有される微粒子の含有量が、前記ポリマーに対して80質量部以上500質量部であることを特徴とする。
【0011】
前記第1の樹脂層に含有される微粒子が平均粒径0.005μm以上1μm以下の無機微粒子であることが好ましい。前記無機微粒子がシリカからなる微粒子であることが好ましい。
【0012】
前記第1の樹脂層に含有される微粒子が平均粒径0.1μm以上20μm以下の有機微粒子であることが好ましい。前記第2の樹脂層に含有される微粒子が平均粒径3μm以上20μm以下の有機微粒子であることが好ましい。前記有機微粒子がポリスチレン、ポリメチルメタクリレートのうち少なくとも1種からなることが好ましい。
【0013】
前記水溶性及び/または水分散性ポリマーがポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂のうち少なくとも1種からなることが好ましい。また、前記支持体は、170℃、10分間の加熱処理を行なったときの加熱収縮率が0.05%以上3.0%以下の範囲にあり、前記支持体のもう一方の面には、水系ハードコート層が設けられていることが好ましい。
【0014】
波長410nmの光の透過率は5%以下であることが好ましい。
【0015】
紫外線吸収剤を含む層が備えられることが好ましく、紫外線吸収剤を含む層は、溶液における最大吸収波長が400nm以下である化合物を5g/m以下含有する層であることがより好ましい。紫外線吸収剤を含む層は、前記支持体であることが好ましい。
【0016】
前記紫外線吸収剤は、下記の一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。下記の一般式(1)においては、Hetは、少なくとも1つのヘテロ原子を有する2価の5あるいは6員環の芳香族ヘテロ環残基を表し、縮環しているものを含む。R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g及びR1hは、互いに独立して、水素原子または1価の置換基Rを表す。
【0017】
【化1】

【0018】
前記一般式(1)で表される化合物を第1の前記紫外線吸収剤とするときに、第2の前記紫外線吸収剤は、320nmにおける吸光度が270nm以上400nm以下の範囲での極大吸収波長における吸光度の20%以上であり、極大吸収波長が380nm以下である化合物であることが好ましい。
【0019】
光拡散シートは、下記一般式(TS−I)〜(TS−V)で表される各化合物のうち少なくともいずれか1つを含む層を備えることが好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(TS−I)中、R91は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルもしくはアルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノトリル基、ホスフィニル基、−Si(R97)(R98)(R99)のいずれかひとつを表す。R97、R98、R99は互いに独立して、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基のいずれかひとつを表す。−X91−は−O−、−S−、−N(−R100)−を表す。ここで、R100は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルもしくはアルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノトリル基、ホスフィニル基、−Si(R97)(R98)(R99)のいずれかひとつを表す。R92、R93、R94、R95、R96は互いに独立して、それぞれ水素原子又は置換基を表す。R91とR92、R100とR96、R91とR100は互いに結合して5〜7員環を形成したものを含み、R92とR93、R93とR94が互いに結合して、5〜7員環又はスピロ環、ビシクロ環を形成したものを含む。但し、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R100のすべてが水素原子である場合を除く。R91、R92、R93、R94、R95、R96、R100の総炭素数は10以上である。
【0022】
一般式(TS−II)中、R101、R102、R103、R104は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基を表し、R101とR102、R103とR104が結合し、5〜7員環を形成したものを含む。X101は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルもしくはアルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アルケニルオキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキルもしくはアルケニルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルもしくはアルケニルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、オキシラジカル基を表す。X102は5〜7員環を形成する非金属原子群を表す。
【0023】
一般式(TS−III)中、R105、R106は水素原子、脂肪族基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基を表し、R107は脂肪族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、芳香族オキシカルボニルオキシ基、置換アミノ基、複素環基、ヒドロキシ基を表し、R105とR106、R106とR107、R105とR107が互いに結合し、5〜7員環を形成したものを含む。但し、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を形成する場合を除く。ここで、R105、R106の両方が水素原子であることはなく、R105とR106との総炭素数は7以上である。
【0024】
一般式(TS−IV)中、R111、R112は脂肪族基を表し、R111とR112が互いに結合し、5〜7員環を形成したものを含む。nは0、1、2を表す。但し、R111とR112の総炭素数は10以上である。
【0025】
一般式(TS−V)中、R121、R122は脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基を表し、R123は脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基を表し、mは0又は1を表し、R121とR122、R121とR123が互いに結合し、5〜8員環を形成したものが含まれる。但し、R121、R122、R123の総炭素数は10以上である。
【0026】
前記微粒子を非含有とする層のヘイズ値が10%以下であることが好ましい。
【0027】
上記の態様とすることで、本願の光拡散シートは、全光透過率80%を超え、かつヘイズが90%以上の特性を得ることができる。全光透過率は、90%を超えることがより好ましく、ヘイズ値は90.3%を超えることがより好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、支持体の片面に積層される2層構造の第1及び第2の樹脂層を備え、これら第1の樹脂層および第2の樹脂層が少なくとも1種以上の微粒子と水溶性及び/または水分散性ポリマーとを含有し、かつ、第1の樹脂層に含有される微粒子の含有量が、100質量部の水溶性及び/または水分散性ポリマーに対して5質量部以上400質量部以下であることから、LED光源の隠蔽性と光透過率が高く、表面に傷が付きにくい光拡散シートを得ることができる。特に、全光透過率80%を超え、かつヘイズが90%以上の光拡散シートを得ることが出来る。本発明の光拡散シートは、以上の効果に加えて、高演色性を保持しながら近紫外光を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ハードコート層を備えている光拡散シートの概略図である。
【図2】ハードコート層を備えていない光拡散シートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る光拡散シートについて、実施形態を挙げながら詳細に説明する。ただし、本実施形態は本発明に係る好適な適用例の一つであって、本発明を限定するものではない。なお、本明細書において「樹脂」とは、高分子化合物を意味しており、植物体から分泌される精油類縁物質の総称を意味するものではない。
【0031】
本発明の第1の実施態様である図1の光拡散シート10は、支持体11と、この支持体11の一方の面に設けられる2層構造の光拡散部12と、他方の面に設けられる接着層13及びハードコート層14とを備えている。光拡散シート10は、光拡散部12とハードコート層14とのいずれが光入射側となるように配されて使用されてもよい。
【0032】
〔支持体〕
支持体11の形成に用いられるポリエステルは特に制限されるものではなく、光学用途に用いることができるポリエステルとして公知のものを使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられるが、コストや機械的強度の観点からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0033】
支持体11は、2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸とは、互いに交差する2方向のそれぞれを1軸とみなして両方向に延伸することである。2方向は、互いに直交することが好ましい。長尺に製造された支持体11を用いる場合には、支持体11の幅方向及び長手方向をそれぞれ1軸とみなすとよい。2軸延伸により支持体11の2軸での分子配向が十分に制御されるので、機械強度が向上する。延伸倍率は特に制限されるものではないが、一方向に対する延伸倍率が1.5〜7倍であることが好ましく、より好ましくは2〜5倍である。特に、1軸方向あたりの延伸倍率を2〜5倍として2軸延伸させることが好ましい。ここで、支持体11の延伸倍率を1.5倍よりも大きくすることで、より充分な機械的強度を得ることができ、その一方、延伸倍率を7倍よりも小さくすることで、より均一な厚みを得ることができる。
【0034】
支持体11の厚みは、目的に応じて任意で選べるが、LED照明用途としては150μm以上であることが好ましい。より好ましくは、200μm以上である。さらには光拡散シート10の剛性が要求される使用形態においては250μm以上とすることが好ましい。なお、支持体11は、他の層12a,12b,13,14のいずれの層よりも厚い。
【0035】
支持体11の加熱収縮率は0.05%以上3.0%以下の範囲であることが好ましく、0.1%以上2.5%以下の範囲であることがより好ましく、0.4%以上2.0%以下の範囲であることがさらに好ましい。この加熱収縮率の値は、170℃、10分間での値である。支持体11の加熱収縮率を0.05%以上3.0%以下の範囲とすることで、後述するハードコート層用塗布液などにより形成される塗布膜にひび割れなどは発生せず、また、支持体11自身の変形の度合いも小さくすることが出来るので、平らで好ましい光拡散シート10を得ることが出来る。
【0036】
支持体11の加熱収縮率は、塗布膜を硬化させるときの塗布膜の温度と同じまたはこれに近い温度で求めることが好ましく、この観点から塗布液として後述のハードコート層用塗布液を用いる場合には170℃での加熱収縮率を目安とすることが好ましい。
【0037】
加熱収縮率の上記値は、以下の方法で求める値である。まず、測定に供するサンプルを支持体11からサンプリングする。このサンプルにつき予め所定方向での長さを測定する。この長さをL1とする。長さL1を測定したサンプルを、170℃に保持されている恒温装置に、張力をかけずに10分間放置する。恒温装置としては、熱風が内部に送り込まれて内部を所定温度に保持する加熱オーブン等が挙げられる。加熱処理されたサンプルを冷却してから、加熱処理前に測定した方向と同じ方向で長さを測定する。この長さをL2とする。そして、加熱収縮率(単位;%)を、100×(L1−L2)/L1の式により求める。しかし、本発明は、加熱収縮率の上記測定方法に限定されるものではなく、例えば他の測定方法により加熱収縮率を求める場合には、用いる測定方法と上記方法とで得られる値の相関関係を予め求めておき、その関係に基づいて、測定値が上記方法での上記値の範囲に対応すればよい。
【0038】
加熱収縮率は、支持体11に用いるポリエステルフィルムにおいて、フィルム面内の直交する2方向で、ともに、170℃、10分間の加熱処理をしたときの加熱収縮率が、0.05%以上3%以下の範囲であることが好ましく、0.1%以上2.5%以下の範囲であることがより好ましく、0.4%以上2.0%以下の範囲であることが特に好ましい。
【0039】
〔光拡散層を形成する樹脂層〕
光拡散部12は、支持体11側から順に第1の樹脂層12aと第2の樹脂層12bとを備えている。第1の樹脂層12aと第2の樹脂層12bとは、ともに、照射された光を拡散する光拡散層である。支持体11が下、光拡散部12が上となるように光拡散シート10を側方からみたときに、第1の樹脂層12aは下層に、第2の樹脂層12bは上層に位置している。すなわち、第1の樹脂層12aは支持体11に接しており、第2の樹脂層12bは第1の樹脂層12a上に設けられてある。第1の樹脂層12a及び第2の樹脂層12bは、微粒子と水溶性及び/または水分散性ポリマーを含有している。ここで、水溶性もしくは水分散性ポリマーとは、水系溶媒(水、又は水に70質量%以下の混和性の有機溶媒を混合したもの)に溶解もしくは分散可能なポリマーのことである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。さらに、第1の樹脂層12a及び第2の樹脂層12bは、光拡散シート取り扱い時の耐傷性、表面についたゴミや汚れを拭き取るための耐溶剤性、及びこの光拡散シートを所定の形態に打ち抜き加工する場合もあるので、支持体11との高い接着強度を確保することを目的として、架橋剤を含有させることが好ましい。積層した樹脂層は、同一の光学機能を有する層を形成する必要はなく、適宜選択することができる。
【0040】
第1及び第2樹脂層12a,12bに使用される水溶性及び/または水分散性ポリマーは、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。好適な例としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン、ポリエステル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、アミノ樹脂系、エポキシ樹脂系、スチレンブタジエン共重合体系などの水溶性あるいは水分散性ポリマーが挙げられるが、中でもアクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリウレタン樹脂系の水分散ポリマーが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また架橋剤と反応しうるポリマーを用いることが好ましい。例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などを有するポリマーを用いることができる。さらには、水分散性ポリマーには、例えば、スルホン酸基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、アミド基、エーテル基などの置換基等を含有させることが好ましい。なお、これらの水分散性ポリマーは単独で用いても良いし、混合して用いても良い。
【0041】
また、第1の樹脂層12aに用いられる樹脂と、第2の樹脂層12bに用いられる樹脂とは、同一でも異なっても良いが、光透過率を向上するためには、屈折率差が0.15以下となるようにするのが好ましい。
【0042】
第1の樹脂層12aの厚みは0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。厚みを0.1μm以上とすることで、LED光源の隠蔽性をより高めることができる一方、厚みを20μm以下とすることで、光線透過率の低下をより確実に防ぐことができる。第2の樹脂層12bの厚みは1μm以上30μm以下であることが好ましい。厚みを1μm以上とすることで、光拡散性をより高めることができる一方、厚みを30μm以下とすることで、光線透過率の低下をより確実に防ぐとともに樹脂層の均一性をより向上することができる。
【0043】
第1及び第2樹脂層12a,12bに用いる微粒子15,16は特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1樹脂層12aに用いる微粒子15としては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニアなどの無機微粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子などの有機微粒子が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよいが、特に、シリカからなる微粒子、すなわち微粒子シリカが好ましい。
【0044】
第1の樹脂層12aに用いる微粒子15の平均粒径は、無機微粒子については、0.005μm以上1μm以下が好ましく、さらには0.01μm以上0.5μm以下が好ましい。無機微粒子の平均粒径を0.005μm以上1μm以下とすることで、十分な光の透過率と、製造過程における十分な耐傷性とを得ることが出来る。有機微粒子としては0.1μm以上20μm以下であることがより好ましく、さらには0.5μm以上10μm以下が好ましい。有機微粒子の平均粒径を0.1μm以上20μm以下とすることで十分な光拡散能を発現するとともに、上層の第2の樹脂層12bをより均一に形成することができる。
【0045】
第1の樹脂層12aの上には、第2の樹脂層12bが後工程たる塗布及び硬化により形成される。第2の樹脂層12bのこのような形成過程では、先に形成した第1の樹脂層12aから微粒子が脱落する場合がある。そこで、第1の樹脂層12aに用いる有機微粒子の平均粒子径の上記上限値は、第2の樹脂層12bに用いる有機微粒子の平均粒子径の後述の上限値よりも小さくしている。また、無機微粒子は非常に硬いので、万が一脱落した場合の光拡散シート10の傷付き防止の観点から、第2の樹脂層12bではなく第1の樹脂層12aに含有させることが好ましい。
【0046】
第1の樹脂層12aに用いる微粒子15の添加量は、100質量部の水溶性及び/または水分散性ポリマー(固形分)に対して、5質量部以上400質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは10質量部以上300質量部以下とする。微粒子15の添加量をこの範囲とすることによって、LED光源の隠蔽性と光透過率との両立が可能となる。添加量を5質量部以上とすることで、LED光源の遮蔽性が十分に得られるとともに、また、耐傷性も得ることができる。一方、400質量部以下とすることで、LED光源の隠蔽性と光透過率を十分に得ることができるとともに、厚みの均一性を低下させるおそれがない。
【0047】
第1の樹脂層12aに用いられる樹脂の屈折率に対する、第1の樹脂層12aに用いる微粒子15の屈折率の比は0.7〜1.3であることが好ましい。屈折率の比を0.7〜1.3とすることで、LED光源の隠蔽性と光線透過率を向上することができる。
【0048】
第2の樹脂層12bに用いる微粒子16は光拡散作用の大きい有機微粒子を用いることが好ましい。この有機微粒子は、架橋構造を有するものが好ましく、特に、架橋構造を有するポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子が好ましい。
【0049】
第2の樹脂層12bに用いる有機微粒子の平均粒径は3μm以上20μm以下であることがより好ましく、さらには4μm以上15μm以下が好ましく、特には5μm以上10μm以下が好ましい。第2の樹脂層12bに用いる有機微粒子の平均粒径は0.5μm以上50μm以下とすることで、粒子の脱落が起こることなく、十分な光拡散能が得られる。このように、第2の樹脂層12bに用いる有機微粒子について、平均粒径の好ましい範囲の上限値は、第1の樹脂層12aに用いる有機微粒子の好ましい平均粒径の上限値よりも大きい。これは、第2の樹脂層12bでは、この微粒子により表面に凹凸を形成し、この凹凸をもった表面での光散乱効果を図る観点と、第1の樹脂層12aの場合のように表面に対してさらなる塗布が為されないので粒子の脱落防止を図る必要が無いという観点からである。また塗布工程において、送液に使用する配管やバッファタンク中で微粒子の沈降が生じることなく、安定に製造することが出来る。なお、図1では、第2の樹脂層12bに用いる微粒子16は、第1の樹脂層12aに用いる微粒子15よりも大きく記載されているが、微粒子15,16の平均粒径がほぼ0.5μmである場合には、微粒子15と微粒子16のサイズはほぼ同じとなる。
【0050】
第2の樹脂層12bに用いる有機微粒子の添加量は、100質量部の水溶性及び/または水分散性ポリマー(固形分)に対して、80質量部以上500質量部以下とすることが好ましく、100質量部以上500質量部以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは200質量部以上400質量部以下とする。微粒子の添加量を100質量部以上とすることで、光拡散剤としての機能を確実に果たすことができ、光の隠蔽性が確実に高まる。その一方、500質量部以下とすることで微粒子の分散不良のおそれがなくなる。第2の樹脂層12bに用いる有機微粒子の添加量は、第1の樹脂層12aに用いる微粒子15の添加量よりも多いことが好ましい。
【0051】
第2の樹脂層12bに用いられる樹脂の屈折率に対する、第2の樹脂層12bに用いる微粒子16の屈折率の比が0.8以上1.2以下、あるいは差Δηの絶対値|Δη|が0.35以下であることが好ましい。屈折率の比を0.8以上1.2以下、あるいは差Δηの絶対値|Δη|を0.35以下とすることで、光拡散性と光透過率を向上することができる。なお、第2の樹脂層12bは、空気との屈折率の差も考慮することで、第2の樹脂層12bと空気との界面における光拡散能をさらに向上させることができる。この観点からは、微粒子16の屈折率から空気の屈折率を減じた差が0.2以上0.8以下であるような微粒子16を用いることがより好ましい。
【0052】
第1の樹脂層12aの厚みに対する第2の樹脂層12bの厚みの比(樹脂層12bの厚み/樹脂層12aの厚み)は、1〜50であることが好ましい。厚みの比を1〜50とすることで、光拡散性と光透過率を向上することができる。また、第1の樹脂層12aに含有する微粒子15の平均粒径に対する第2の樹脂層12bに含有する微粒子16の平均粒径の比(樹脂層12bに含有する微粒子16の平均粒径/樹脂層12aに含有する微粒子15の平均粒径)は、1〜4000であることが好ましい。平均粒径の比を1〜4000とすることで、光拡散性と光透過率を向上し、樹脂層の均一性を向上することができる。
【0053】
第1及び第2の樹脂層12a,12bには、耐溶剤性や、支持体11との密着性を付与する目的で架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤は、エポキシ系、メラミン系、オキサゾリン系、カルボジイミド系などを用いることができる。第1及び第2の樹脂層12a,12bにおける架橋剤の含有量は、100質量部の水溶性及び/または水分散性ポリマー(固形分)に対して、0.5質量部以上とすることが好ましく、1質量部以上50質量部以下とすることがより好ましい。架橋剤の含有量を1質量部以上とすることで、樹脂層が傷付くおそれが無くなる。一方、架橋剤の含有量を50質量部以下とすることで、樹脂層の均一性を低下させるおそれがない。
【0054】
第1及び第2の樹脂層12a,12bを形成する塗布液には、界面活性剤を含ませても良い。界面活性剤を用いることにより、塗布液の塗布ムラを抑制して、均一な厚みの樹脂層を形成することができるようになる。界面活性剤は特に限定されないが、脂肪族、芳香族、フッ素系のいずれの界面活性剤でもよく、また、ノニオン系、アニオン系、カチオン系のいずれの界面活性剤でもよい。
【0055】
第1及び第2の樹脂層12a,12bを形成する塗布液は、以下の方法で調製することが好ましい。まず、溶媒または分散媒となる水に、界面活性剤を入れて均一な液にする。次に、界面活性剤を入れた水の中に、微粒子15または微粒子16を入れて、攪拌し、微粒子15または微粒子16が均一に分散した液にする。微粒子15として無機微粒子と有機微粒子との両方を用いる場合には、いずれの微粒子を先に入れてもよいし、同時に入れてもよい。そして、微粒子が均一に分散した液に対して、第1の樹脂層12aまたは第2の樹脂層12bのバインダ成分としての樹脂を入れて均一な液にする。以上の方法で塗布液を調製することにより、水系であっても均一な層を形成する塗布液が得られる。
【0056】
第1及び第2の樹脂層12a,12bの形成法としては特に限定しないが、リバースロールコータ、グラビアコータ、バーコータ、ダイコータ、カーテンコータ等のコーティング方法が挙げられるが、特にバーコータが好ましい。
【0057】
第1及び第2の樹脂層12a,12bは塗布液を塗布した後に、これを乾燥させることで層を形成する。乾燥方法は特に制限されるものではなく、通常使用される方法を適宜選択することができる。このとき、乾燥温度は90℃以上130℃以下が好ましい。より好ましくは100℃以上120℃以下である。乾燥温度が90℃以上の場合には、乾燥が十分に行なわれるため、接着故障を起こすおそれがない。その一方、130℃以下であることで、水系ハードコートを塗布する際にひび割れが発生するおそれがない。
【0058】
[接着層]
接着層13は、支持体11とハードコート層14との間に設けられ、ハードコート層14に対する接着性を向上させるとともに、ハードコート層14との密着力を高めている。接着層13は、バインダと硬化剤と界面活性剤とからなる塗布液を塗布して形成される。なお、接着層13を用いずに、ハードコート層14をそのまま支持体11に形成してもよい。
【0059】
接着層13に使用するバインダは、特に限定されないが、接着性の観点からポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、スチレンブタジエン共重合体の少なくともひとつであることが好ましい。また、バインダは、水溶性または水分散性をもつものが環境への負荷が少ない点で特に好ましい。
【0060】
接着層13の屈折率を調整する目的で、接着層13には金属酸化物からなる微粒子を含ませてもよい。金属酸化物としては、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ニオブなどの屈折率が高いものが好ましい。
【0061】
接着層13の厚みは、接着層13を形成する溶液の塗布量を調整することにより制御することができる。光拡散シート10の透明度を高くするとともに、ハードコート層14に対して優れた接着性を発現するためには、厚みは、0.01μm以上5μm以下の範囲で一定であることが好ましく、0.02μm以上3μm以下がより好ましい。厚みを0.01μm以上とすることで接着性を十分に確保することができる。一方、5μm以下とすることで、均一な厚みを形成することができ、さらには溶液の使用量を増加させず、また乾燥時間を長く要することが無いため、コストを抑えることができる。
【0062】
[ハードコート層]
ハードコート層14は水系であり、有機ケイ素化合物と、テトラアルコキシシランと、酸性の水溶液(以下、酸性水と称する)と、水溶性の硬化剤とを含む塗布液から形成される。この塗布液からなる塗布膜を加熱して乾燥することにより硬化させ、ハードコート層14とする。有機ケイ素化合物と、テトラアルコキシシランとを共に用いることにより、硬化による架橋密度を従来のハードコート層14原料を用いた場合よりも高くして、高硬度のハードコート層14を形成することができる。
【0063】
ハードコート層14の厚みは、塗布液の塗布量を調整することにより制御することができる。得られるハードコート層14の硬度の観点からは、厚みは、0.3μm以上12μm以下の範囲で一定であることがより好ましい。
【0064】
<有機ケイ素化合物>
ハードコート層14を形成する塗布液(以下、ハードコート層用塗布液と称する)の第1成分である有機ケイ素化合物は、有機基とアルコキシ基とを有する、2価あるいは3価のアルコキシシランであり、下記の一般式(A)で表す有機ケイ素化合物である。
Si(OR3−n ・・・(A)
(ここで、Rはアミノ基を含まない炭素数が1以上15以下の有機基であり、Rはメチル基またはエチル基、Rは炭素数が1以上3以下のアルキル基、nは0または1である。なお、アミノ基を含まない有機基とは、この有機基がアミノ基をもたない意である。)
【0065】
一般式(A)で表す化合物のうち好ましいものとして、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシエトキシ)エトキシ〕エチルウレタン、3−トリエトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシエトキシ)エトキシ〕エチルウレタン、3−トリメトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシプロポキシ)プロポキシ〕プロピルウレタン、3−トリエトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシプロポキシ)プロポキシ〕プロピルウレタンがあげられる。
【0066】
上記の化合物の中でもn=0のトリアルコキシシランが特に好ましく、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシエトキシ)エトキシ〕エチルウレタン、3−トリメトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシプロポキシ)プロポキシ〕プロピルウレタンが挙げられる。
【0067】
<テトラアルコキシシラン>
テトラアルコキシシランをハードコート層用塗布液の第2成分として用いることにより、テトラアルコキシシランと一般式(A)の有機ケイ素化合物との加水分解で生じるシラノールの脱水縮合による架橋密度を高くし、従来よりも硬いハードコート層14を形成することができる。テトラアルコキシシランは特に限定されないが、炭素数が1〜4のものがより好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが特に好ましい。炭素数を1〜4にすることで、酸性水と混ぜたときのテトラアルコキシシランの加水分解速度が遅くなることがないため、均一な水溶液にするまでの溶解に要する時間が長くなることはない。
【0068】
<酸性水>
ハードコート層用塗布液の第3成分としての酸性水は、水素イオン指数(pH)が2以上6以下の範囲のものである。このpHの値は、いわゆる「室温」とされる25℃での値である。pHを2以上6以下と、テトラアルコキシシランと一般式(A)の有機ケイ素化合物とをこの酸性水に混合して水溶液としたときに、この水溶液、すなわちアルコキシシラン水溶液で、アルコキシシランが加水分解されてシラノールが生成した後、シラノールの縮合が遅くなるため、この水溶液の粘度の上昇を抑えることができる。
【0069】
酸性水は、有機酸または無機酸を水に溶解することにより得る。酸は、特に限定されないが、酢酸、プロピオン酸、蟻酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸などの有機酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸が使用で、中でも、取り扱い性の点からは酢酸が好ましい。pHは、2以上6以下の範囲が好ましく、2.5以上5.5以下の範囲が特に好ましい。
【0070】
アルコキシシラン水溶液は、テトラアルコキシシランと一般式(A)の有機ケイ素化合物との合計量、すなわち用いたアルコキシシランの量を100重量部とするときに、酸性水の量が60重量部以上2000重量部以下の範囲となるように、調製される。この組成とすることにより、良好な加水分解性と生成したシラノールの安定性とをもつアルコキシシランの加水分解水溶液が得られる。そして、このようなアルコキシシランの加水分解水溶液を用いて得られる塗布液は水性であるにも関わらず安定性にすぐれたものとなる。酸性水の量は、テトラアルコキシシランと一般式(A)の有機ケイ素化合物との合計100重量部に対して、100重量部以上1500重量部以下の範囲がより好ましく、150重量部以上1200重量部以下の範囲が特に好ましい。アルコキシシラン100重量部に対して酸性水を60重量部以上とすることで、アルコキシシランの加水分解により生成したシラノールの脱水縮合を抑えることができるため、水溶液はゲル化しにくくなる。一方、酸性水を2000重量部以下とすることで、塗布液中のアルコキシシランの濃度を低下させることが無いため、ハードコート層14を十分な厚みに形成するための塗布量は適量である。したがって、塗布膜の厚みムラが発生することが無く、塗布膜の乾燥時間が長引くことが無い。
【0071】
なお、テトラアルコキシシランと一般式(A)の有機ケイ素化合物とのいずれとも異なるシラン化合物を塗布液に用いてもよい。この場合には、テトラアルコキシシランと一般式(A)の有機ケイ素化合物とその他のシラン化合物との合計量100重量部に対して、酸性水が60重量部以上2000重量部以下の範囲となるように、これらを混合することが好ましい。
【0072】
<硬化剤>
ハードコート層用塗布液の第4成分としての水溶性の硬化剤は、シラノールの脱水縮合を促してシロキサン結合の形成を促進させるものである。水溶性の硬化剤としては、水溶性の無機酸、有機酸、有機酸塩、無機酸塩、金属アルコキシド、金属錯体を用いることができる。
【0073】
無機酸としては、ホウ酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸が挙げられ、有機酸としては、酢酸、蟻酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸アルミ、シュウ酸アルミ、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウムが挙げられ、無機酸塩としては、塩化アルミ、硫酸アルミ、硝酸アルミ、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムが挙げられる。金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドが挙げられ、金属錯体としては、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセテート、チタンアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテートが挙げられる。これらの中でも、特にホウ酸、リン酸、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムアセチルアセトナートなど、ホウ素を含む化合物、リンを含む化合物、アルミニウムを含む化合物が、水溶性、水中での安定性の観点で好ましく、これらのうち少なくともいずれか1種類を硬化剤として用いるとよい。
【0074】
硬化剤は、塗布液中に均一に混合、溶解することが好ましく、本発明における塗布液の溶剤としての水に溶解することが好ましい。水への溶解性を高くすることで、硬化剤が塗布液中に固体として存在しなくなり、塗布乾燥後に異物として残留することがなくなる。これにより、透明度が高いハードコート層14とすることができる。
【0075】
硬化剤の量は、テトラアルコキシシランと一般式(A)で表す有機ケイ素化合物とを含む全てのアルコキシシラン100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下の範囲が好ましく、0.5重量部以上10重量部以下の範囲がさらに好ましく、1重量部以上8重量部以下の範囲が特に好ましい。
【0076】
<コロイダルシリカ>
ハードコート層用塗布液には、上記第1〜第4成分以外の成分としてコロイダルシリカを含ませてもよい。このコロイダルシリカは、二酸化ケイ素またはその水和物が水に分散したコロイドであり、コロイド粒子の平均粒子径が3nm以上50nm以下の範囲であり、4nm以上40nm以下の範囲であることがより好ましく、5nm以上35nm以下の範囲であることが最も好ましい。これにより、ハードコート層をより硬く形成することができる。コロイド粒子の平均粒子径を3nm以上とすることで、ハードコート層用塗布液の粘度が高くなることが無いため、塗布条件に対して特別な制約を行う必要はない。一方、コロイド粒子の平均粒子径が50nm以下とすることで、ハードコート層14に入射した光が散乱しても、透明性は損なわれない。
【0077】
なお、コロイダルシリカは、塗布液中に添加される時点でのpHが2以上7以下の範囲に調整されていることがより好ましい。このpHを2以上7以下の範囲とすることで、アルコキシシランの加水分解物であるシラノールの安定性を悪化させることがない。そのため、シラノールの脱水縮合反応の進行を抑えることができるため、塗布液の粘度が上昇するおそれがない。
【0078】
<水溶性もしくは水分散性のポリマー>
ハードコート層用塗布液には、上記成分以外の成分として水溶性もしくは水分散性のポリマーを含ませてもよい。これにより、脆性がより改善されたハードコート層14を形成することができる。この水溶性もしくは水分散性のポリマーは、塗布液中に添加される時点でのpHが2以上7以下の範囲に調製されていることがより好ましい。この分散液のpHを2以上7以下の範囲とすることで、シラノールの脱水縮合反応の進行を抑えることができるため、ハードコート層用塗布液の粘度が上昇するおそれがない。
【0079】
ハードコート層用塗布液に添加する水溶性もしくは水分散性のポリマーとしては、脆性がより改善されたハードコート層14を形成する目的で、スチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエンポリマー、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アクリルポリマーが好ましい。
【0080】
<帯電防止剤>
ハードコート層14に帯電防止機能を付与するために、ハードコート層用塗布液には、カチオン、アニオン、ベタインなどのイオン性の帯電防止剤を添加してもよい。イオン性の帯電防止剤に代えて、または加えて、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモンなどの金属酸化物からなる微粒子を用いてもよい。イオン性の帯電防止剤や金属酸化物の微粒子は、ハードコート層14ではなく支持体11または接着層13との少なくともいずれか一方に含ませてもよい。
【0081】
<その他の添加物>
ハードコート層14の表面特性、特に摩擦係数を制御するために、ハードコート層用塗布液には、マット剤やワックスを含ませても良い。マット剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ポリスチレン、ポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメチルメタクリレート、架橋ポリメチルメタクリレート、メラミン、ベンゾグアナミン等の有機、無機の素材を使用することができる。ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、ポリエステル系ワックス、カルナバワックス、脂肪酸、脂肪酸アマイド、金属石鹸等を使用することができる。
【0082】
また、ハードコート層用塗布液には、界面活性剤を含ませても良い。界面活性剤を用いることにより、支持体11または接着層13に対する塗布液の塗布ムラを抑制して、均一な厚みのハードコート層を形成することができるようになる。界面活性剤は特に限定されないが、脂肪族、芳香族、フッ素系のいずれの界面活性剤でもよく、また、ノニオン系、アニオン系、カチオン系のいずれの界面活性剤でもよい。
【0083】
接着層13及びハードコート層14の形成方法は特に制限されるものではなく、公知の塗布機を目的に応じて適宜選択して塗布すればよい。例えば、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータによる塗布が挙げられる。
【0084】
塗布された塗布液の加熱乾燥では、支持体11上の塗布液からなる塗布膜の温度が低くとも160℃、すなわち160℃以上の温度となるように加熱する。塗布膜は、加熱硬化時における塗布膜中のシラノールの脱水縮合に伴い収縮するが、支持体11が上述したような加熱収縮率を有しているため、ハードコート層14はひび割れすることなく形成される。
【0085】
塗布膜をより十分に硬化させるためには、塗布膜の温度を160℃以上220℃以下の範囲とすることが好ましく、170℃以上220℃以下の範囲とすることがより好ましく、180℃以上210℃以下の範囲とすることがさらに好ましい。塗布膜の温度を160℃以上とすることで、塗布膜を十分に硬化することができるため、十分な硬度のハードコート層14を形成することができる。一方、塗布膜の温度を220℃以下とすることで、支持体11を変形させることなく、塗布膜を形成することができる。
【0086】
本発明の光拡散シートは、支持体11の他方の面に耐傷性を求めない場合には、ハードコート層14と、接着層13とを備えずともよい。本発明の第2の実施態様である図2の光拡散シート20は、支持体11と、この支持体11の一方の面に設けられる2層構造の光拡散部12とを備える。図1の光拡散シート10と異なり、この光拡散シート20においては、支持体11の他方の面に、ハードコート14及び接着層13が備えられておらず、支持体11の他方の面が露出している。光拡散シート20も、光拡散シート10と同じく、光拡散部12が光入射側と光射出側とのいずれになるように配されて使用されてもよいが、光拡散の効果がより確実に得られるという点では、光拡散部12が光射出側になるように配されて使用されることが好ましい。
【0087】
光拡散シート10,20の各光拡散部12は、前述のように微粒子を含む微粒子含有層であるが、支持体11と接着層13とハードコート層14とは微粒子を含まない微粒子非含有層である。微粒子非含有層はヘイズ値が10%以下であることが好ましい。
【0088】
光拡散シート10,20は、さらに添加剤を含んでもよい。添加剤は、光拡散シート10,20を成すいずれの層に含まれていてもよいし、さらに別の層を設けて、設けた層に添加剤を含ませてもよい。また、複数の層に含ませてもよい。中でも、支持体11に含ませることが好ましい。他の層12a,12b,13,14よりも厚い支持体11に含有させることにより、添加剤濃度が低くても十分な含有効果が得られるからである。例えば添加剤として後述のように紫外線吸収剤を用いた場合には、支持体11に含ませることにより、紫外線吸収剤の濃度が低くても十分な紫外線吸収効果が得られる。
だからである。
【0089】
第1の添加剤としては、紫外線吸収剤があり、第2の添加剤としては、光や熱によって生じる酸化を防止するための酸化防止剤やHALS(ヒンダードアミン光安定剤,Hinderd Amine Light Stabilizer)がある。第1の添加剤と第2の添加剤とは互いに異なる層に含ませてもよいし、同一の層中に含ませてもよい。
【0090】
第1の添加剤として紫外線吸収剤を用いることにより、光拡散シート10,20は、波長が410nmの光の透過率が5%以下とされている。近紫外LEDには、発光スペクトルのピークを405nm程度の波長にもつものが多いが、波長が410nmの光の透過率が5%以下とした光拡散シート10,20によると、405nm程度の波長までのみならず、可視光に近い長波紫外線領域までの光をより確実にカットすることができる。これにより、波長が405nmに光強度のピークをもつような近紫外線を効果的にカットすることができる。
【0091】
光拡散シート10,20が410nm波長の光の透過率が5%以下となるように、支持体11は、好ましくは、波長が410nmの光の透過率が5%以下、かつ、波長が440nmの光の透過率が80%以上とされる。支持体11は、より好ましくは波長410nmの光の透過率が4%以下、かつ、波長440nmの光の透過率が80%以上であり、さらに好ましくは波長410nmの光の透過率が3%以下、かつ、波長440nmの光の透過率が80%以上であり、特に好ましくは波長410nmの光の透過率が2%以下、かつ波長440nmの光の透過率が80%以上である。
【0092】
さらに、支持体11は、波長410nmの光の透過率が5%以下、波長430nmの光の透過率が70%以上、かつ波長440nmの光の透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは波長410nmの光の透過率が4%以下、かつ波長430nmの光の透過率が70%以上、かつ波長440nmの光の透過率が80%以上であり、さらに好ましくは波長410nmの光の透過率が3%以下、かつ波長430nmの光の透過率が70%以上、かつ波長440nmの光の透過率が80%以上であり、特に好ましくは波長410nmの光の透過率が2%以下、かつ波長430nmの光の透過率が70%以上、かつ波長440nmの光の透過率が80%以上である。
【0093】
支持体11に代えて他の層に第1の添加剤が含まれる場合には、第1の添加剤を含む層が、上記の各光透過率を満たすことが好ましい。
【0094】
波長410nm、430nm及び440nmの光の透過率は、例えば分光光度計UV−3600(商品名、島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0095】
第1の紫外線吸収剤は、溶媒に溶かした溶液における最大吸収波長が400nm以下である化合物であり、より好ましくは350nm以上400nm以下の化合物であり、さらに好ましくは360nm以上400nm以下の化合物であり、最も好ましくは370nm以上400nm以下の化合物である。
【0096】
第1の紫外線吸収剤は、支持体11に、0.5g/m以上5g/m以下の範囲の含有量で含まれることが好ましい。この含有量は、光拡散シート10,20のフィルム面を法線方向から見た場合の面積1mあたりに含まれる質量である。第1の紫外線吸収剤のより好ましい含有量は、0.5g/m以上3g/m以下の範囲、さらに好ましい含有量は0.5g/m以上2g/m以下の範囲、特に好ましい含有量は0.5g/m以上1g/m以下の範囲である。支持体11ではなく他の層に第1の紫外線吸収剤が含まれる場合には、含まれる層における含有量が上記範囲にあればよい。複数の層が第1の紫外線吸収剤を含む場合には、第1の紫外線吸収剤を含む全ての層の和が上記含有量となればよい。
【0097】
第1の紫外線吸収剤は、光拡散シート10,20に紫外線吸収効果を発揮させることと、支持体11中に均一に分散させることとの両観点から、支持体11を構成する樹脂と第1の紫外線吸収剤との合計質量に対して0.05質量%以上30質量%以下の範囲で支持体11に含有させることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下の範囲で含有させることがさらに好ましい。支持体11に代えて他の層が第1の紫外線吸収剤を含む場合には、第1の紫外線吸収剤を含む層を構成する樹脂と第1の紫外線吸収剤との合計質量に対して上記範囲の含有量とすればよい。複数の層が第1の紫外線吸収剤を含む場合には、第1の紫外線吸収剤を含むすべての層の樹脂と第1の紫外線吸収剤との合計質量に対して上記範囲の含有量とすればよい。
【0098】
最大吸収波長を測定するための上記溶液の溶媒は、ひとつの化合物からなる純物質と、複数の化合物からなる混合物とのいずれであってもよい。純物質と混合物とに用いる化合物は無機と有機とのいずれであってもよいし、混合物は有機と無機との各化合物を混合したものであってもよい。
【0099】
溶媒に用いる有機化合物、すなわち有機溶媒としては、例えば、アミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン)、スルホン系溶媒(例えばスルホラン)、スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレア)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、シクロヘキサノン)、炭化水素系溶媒(例えばトルエン、キシレン、n−デカン)、ハロゲン系溶媒(例えばテトラクロロエタン、クロロベンゼン、クロロナフタレン)、アルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、シクロヘキサノール、フェノール)、ピリジン系溶媒(例えばピリジン、γ−ピコリン、2,6−ルチジン)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、カルボン酸系溶媒(例えば酢酸、プロピオン酸)、ニトリル系溶媒(例えばアセトニトリル)、スルホン酸系溶媒(例えばメタンスルホン酸)、アミン系溶媒(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン)が挙げられる。
【0100】
溶媒に用いる無機化合物、すなわち無機溶媒としては、例えば、硫酸、リン酸が挙げられる。
【0101】
以上の溶媒の中でも、溶解性を考慮すると、好ましくはアミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ウレイド系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒である。より好ましくはアミド系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒である。さらに好ましくはエーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒である。特に好ましくはエステル系溶媒である。エステル系溶媒の中でも酢酸エチルを溶媒とすることが最も好ましい。
【0102】
最大吸収波長を測定する上記溶液における第1の紫外線吸収剤の濃度は、分光吸収の最大吸収波長が確認できる濃度であればよく、好ましくは1×10−8mol/L以上1mol/L以下の範囲である。最大吸収波長の測定における上記溶液の温度は、特に限定しないが、好ましくは0℃以上80℃以下の範囲である。
【0103】
第1の紫外線吸収剤(=化合物A)は、下記の一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0104】
【化3】

【0105】
前記一般式(1)において、Hetは、少なくとも1つのヘテロ原子を有する2価の5あるいは6員環の芳香族ヘテロ環残基を表す。また、Hetは、縮環していても良い。
【0106】
ヘテロ原子としては、例えば、ホウ素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子を挙げることができる。中でも好ましくは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子である。より好ましくは、窒素原子、硫黄原子である。特に好ましくは、硫黄原子である。Hetがヘテロ原子を2つ以上有する場合には、互いに同じヘテロ原子であってもよいし、互いに異なるヘテロ原子であってもよい。
【0107】
2価の芳香族ヘテロ環残基に2つの水素原子を付加した芳香族ヘテロ環として例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾールなどを挙げることができる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェンである。より好ましくは、ピリジン、チオフェンである。特に好ましくは、チオフェンである。芳香族ヘテロ環の水素原子を取り除く位置はいずれでも良い。例えばヘテロ5員環化合物ピロールでの結合位置は、2,3位、2,4位、2,5位、3,4位、3,5位が挙げられる。また、ヘテロ6員環化合物ピリジンでの結合位置は、2,3位、2,4位、2,5位、2,6位、3,4位、3,5位、3,6位が挙げられる。
【0108】
芳香族ヘテロ環残基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、1価の置換基(以下、置換基Rと称する)が挙げられる。1価の置換基の例として、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル、エチル)、炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、置換又は無置換のカルバモイル基(例えば、カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル)、ニトロ基、置換または無置換のアミノ基(例えば、アミノ、ジメチルアミノ、アニリノ)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド)、イミド基(例えば、スクシンイミド、フタルイミド)、イミノ基(例えば、ベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、置換または無置換のスルファモイル基(例えば、スルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル)、炭素数6〜20のヘテロ環基(例えば、ピリジル、モルホリノ)などを挙げることができる。また、置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なってもよい。その際、置換基の例としては、上述の1価の置換基Rを挙げることができる。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。置換基として好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基がある。より好ましくは、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは、アルキル基である。
【0109】
1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g及びR1hは、互いに独立して、水素原子または1価の置換基Rである。R1a〜R1d及びR1e〜R1hのうち任意の2つの置換基は、互いに結合して環を形成しても良く、さらに縮環していても良い。R1a〜R1hとして好ましくは、水素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、より好ましくは、水素原子、炭素数10以下のアルコキシ基である。さらに好ましくは、水素原子であり、特に好ましくは、R1a〜R1hの全てが水素原子を表す場合である。
【0110】
さらに、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0111】
【化4】

【0112】
以下、前記一般式(2)で表される化合物について説明する。一般式(2)におけるR2a、R2b、R2c、R2d、R2e、R2f、R2g及びR2hはそれぞれ前記一般式(1)のR1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g及びR1hと同義である。好ましい場合も同じである。R2i及びR2jは互いに独立して、水素原子または1価の置換基を表す。1価の置換基としては上述の1価の置換基Rの例を挙げることができる。R2i及びR2jは互いに結合して環を形成しても良く、さらに縮環していても良い。R2i及びR2jとして好ましくは、水素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、より好ましくは、水素原子、炭素数10以下のアルコキシ基である。さらに好ましくは、水素原子であり、特に好ましくは、R2i及びR2jが共に水素原子を表す場合である。
【0113】
前記一般式(1)及び(2)で表される化合物は、任意の方法で合成することができる。例えば、公知の特許文献や非特許文献、例えば特開2000−264879号公報の4ページ左43行目〜右8行目の実施例、特開2003−155375の4ページ右欄5行目〜30行目の実施例、「Bioorganic & Medicinal Chemistry」,2000年,8巻,2095−2103ページ、「Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters」,2003年,13巻,4077−4080ページなどを参考にして合成できる。例えば、例示化合物(15)は3,5−ピラゾールジカルボニルジクロリドとアントラニル酸とを反応させることにより合成することができる。また、例示化合物(32)は2,5−チオフェンジカルボニルジクロリドと4,5−ジメトキアントラニル酸とを反応させることにより合成することができる。
【0114】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
【0115】
【化5】

【0116】
【化6】

【0117】
【化7】

【0118】
【化8】

【0119】
【化9】

【0120】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、構造とその置かれた環境によって互変異性体を取り得る。本明細書においては代表的な形の一つで記述しているが、本明細書の記述と異なる互変異性体も本発明で用いる化合物に含まれる。
【0121】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、同位元素(例えば、H、H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0122】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物の構造を繰り返し単位内に含むポリマーも好適に使用することができる。ポリマーは、ホモポリマーであってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。さらに他の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。なお、紫外線吸収作用をもつ構造を繰り返し単位内に含むポリマーについては、特公平1−53455号、特開昭61−189530号の各公報および欧州特許第27242号明細書に記載がある。ポリマーを得る方法についてはこれら特許文献の記述を参考にすることができる。
【0123】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる第1の紫外線吸収剤は、紫外線の波長領域の中でも長波長の光を吸収するいわゆる長波長紫外線吸収剤として好ましく使用することができる。長波長紫外線吸収剤としての最大吸収波長は、好ましくは450〜350nmの範囲であり、より好ましくは410〜350nmの範囲であり、特に好ましくは390〜350nmの範囲である。
【0124】
第1の紫外線吸収剤を含む層は、第1の紫外線吸収剤と異なる第2の紫外線吸収剤をさらに含むことがより好ましい。本実施形態では支持体11が第1の紫外線吸収剤を含むので、支持体11に第2の紫外線吸収剤を含ませてある。
【0125】
第2の紫外線吸収剤は、320nmにおける吸光度が270nm以上400nm以下の範囲での極大吸収波長における吸光度の20%以上であり、極大吸収波長が380nm以下である化合物である。第2の紫外線吸収剤の320nmにおける吸光度は、極大吸収波長における吸光度の30%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが最も好ましい。320nmにおける吸光度が極大吸収波長における吸光度の20%以上であると、20%未満である場合に比べて、310〜330nmの波長帯全域の光を、第1の紫外線吸収剤と相まってより確実に吸収することができる。第2の紫外線吸収剤の極大吸収波長は、250nm以上380nm以下の範囲にあることが好ましく、250nm以上370nm以下の範囲にあることがより好ましく、250nm以上365nm以下の範囲にあることがさらに好ましく、250nm以上350nm以下の範囲にあることが最も好ましい。
【0126】
第2の紫外線吸収剤は、極大吸収波長が320nm未満である紫外線吸収剤B−(1)、及び極大吸収波長が320nm以上380nm以内である紫外線吸収剤B−(2)に分類することができ、これらを用途に応じて適宜選択して使用することができる。
【0127】
紫外線吸収剤B−(1)は、基材そのものが紫外線を吸収しない場合など、他に短波紫外線を吸収する要素が存在しない場合に、用いることが特に好ましい。例えば樹脂からなるフィルムの場合には、他に300nm以下の短波紫外線を吸収する要素が存在しないため、短波紫外領域までの光を効果的に吸収する紫外線吸収剤B−(1)を用いることにより、新たな短波紫外領域吸収フィルタを用いずに、フィルム自身を紫外線から防ぐことが可能となる。また、紫外線吸収剤B−(1)を用いることにより、樹脂に対する第1の紫外線吸収剤の相溶性の改善と光堅牢性の改善という予想外の効果が得られる。
【0128】
紫外線吸収剤B−(2)は、光拡散シート10,20の320nm付近の光の遮蔽能力を向上させることができ、300nm以下の短波紫外領域を効果的に吸収することも可能であるが、困難な場合がある。そこで、紫外線吸収剤B−(2)は基材そのものが300nm付近までの短波紫外線を吸収する場合等、他に短波紫外線を吸収する要素が存在する場合に用いることが特に好ましい。
【0129】
第2の紫外線吸収剤としては、320nmにおける吸光度が極大吸収波長における吸光度の20%以上であり、極大吸収波長が380nm以下であるという条件を満たすものであればいずれの構造であってもよい。例えば、紫外線吸収剤の構造として知られているベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、アクリレート系、安息香酸エステル系シュウ酸ジアミド系、ホルムアミジン系、ベンゾオキサジノン系などの化合物が挙げられる。これらのうち、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系、ホルムアミジン系、ベンゾオキサジノン系の化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ホルムアミジン系、ベンゾオキサジノン系の化合物が更に好ましい。最も好ましくはベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾオキサジノン系の化合物である。これらの紫外線吸収剤は、例えばファインケミカル、2004年5月号、28〜38ページ、東レリサーチセンター調査研究部門発行「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)96〜140ページ、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)54〜64ページ、(株)技術情報協会発行「高分子の劣化・変色メカニズムとその安定化技術−ノウハウ集−」(技術情報協会、2006年)などに記載されている。
【0130】
前記ベンゾトリアゾール系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmで、下記一般式(IIa)又は(IIb)のいずれかで表される化合物が好ましい。(IIa)及び(IIb)について詳述する。
【0131】
【化10】

【0132】
<一般式(IIa)>
前記一般式(IIa)中において、R11は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。R12は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。R13は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、又は−COOR14基(ここで、R14は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基である)を表す。一般式(IIa)の詳細は、後述する。
【0133】
以下、一般式(IIa)について、さらに説明を加える。R11として好ましくは、炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基、炭素数5〜18の置換もしくは無置換シクロアルキル基、又は炭素数6〜24の置換もしくは無置換アリール基である。R11として特に好ましくは、炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基、又は炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基である。
【0134】
一般式(IIa)において、置換アルキル基、置換シクロアルキル基、置換アリール基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基を表し、これらのアルキル基とシクロアルキル基とアリール基とはいずれも任意の位置に1価の置換基を有しているものとする。
【0135】
アルキル基とシクロアルキル基とアリール基とがもつ前記1価の置換基の例としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)の直鎖又は分岐のアルキル基(例えばメチル、エチル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)の置換又は無置換のカルバモイル基(例えばカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルカルボニル基(例えばアセチル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールカルボニル基(例えばベンゾイル)、ニトロ基、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)の置換または無置換のアミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアシルアミノ基(例えばアセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)がある。
【0136】
アルキル基とシクロアルキル基とアリール基とがもつ前記1価の置換基の例としては、さらに、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)のスルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、炭素数2〜20(好ましくは2〜10)のイミド基(例えばスクシンイミド、フタルイミド)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のイミノ基(例えばベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルコキシ基(例えばメトキシ)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールオキシ基(例えばフェノキシ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアシルオキシ基(例えばアセトキシ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)の置換または無置換のスルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルチオ基(例えばメチルチオ)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールチオ基(例えばフェニルチオ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、4〜7員環(好ましくは5〜6員環)のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)を挙げることができる。
【0137】
12として好ましくは、水素原子、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基、炭素数5〜18の置換もしくは無置換シクロアルキル基、又は炭素数6〜24の置換もしくは無置換アリール基である。R12として特に好ましくは、水素原子、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基、又は炭素数6〜24の置換もしくは無置換アリール基である。
【0138】
13として好ましくは、水素原子、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルコキシ基、又は−COOR14基(ここで、R14は、水素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリール基である。)である。
【0139】
11、R12は、ベンゼン環に置換していればいずれの位置でも構わないが、ヒドロキシル基の2位および4位に置換していることが好ましい。
【0140】
<一般式(IIb)>
前記一般式(IIb)中において、Tは、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。Tは、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のアルコキシ基を表す。Lは2価の連結基または単結合を表し、mは0又は1を表す。nは1〜4の整数を表す。nが1のときTは、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、nが2のときTは2価の置換基を表し、nが3のときTは3価の置換基を表し、nが4のときTは4価の置換基を表す。一般式(IIb)の詳細は後述する。Tとして好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基である。
【0141】
Tとして好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基である。
【0142】
T1として好ましくは、水素原子、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数1〜18のアルコキシ基である。
【0143】
−L−は2価の連結基または単結合を表し、mは0又は1を表す。mが0のときは、T2がLを介さずに直接ベンゼン環と結合しているとき、即ち−L−が単なる結合を表しているときを表す。
【0144】
2価の連結基−L−について説明する。−L−は下記一般式(a)で表わされる2価の置換基である。
一般式(a)
−(Lm1−(Lm2−(Lm3−(Lm4−(Lm5
【0145】
一般式(a)中、m1〜m5は0〜2の整数を表す。L〜Lは各々独立して、−CO−、−O−、−SO−、−SO−、−NR−、置換もしくは無置換の2価のアルキル基、置換もしくは無置換の2価のアルケニル基、又は置換もしくは無置換の2価のアリール基を表す。Rは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0146】
の具体例としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アルキル基上およびアリール基上の任意の位置に1価の置換基を有していてもよい。1価の置換基としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。Rとして好ましくは、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリール基である。より好ましくは炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基である。
【0147】
すなわち2価の置換基−L−としては、−O−CO−C−CO−O−、−O−CO−C−、−NH−CO−C−CO−NH−、−NH−CO−C−、−CH−、−C−、−C−、−C−、−C10−、−C16−、−C−CO−O−、−C−C−、−NH−SO−C−等が好ましい。
【0148】
一般式(IIb)中、nは1〜4の整数を表す。nが1のときT2は、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。nが1のときT2として好ましくは、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリール基である。
【0149】
nが2のとき、Tは、2価の置換基を表す。nが2のとき、Tの具体例としては、上記の2価の置換基−L−の例が挙げられる。nが2のとき、Tとして好ましくは、−CH−、−O−CO−C−CO−O−、−NH−CO−C−CO−NH−である。
【0150】
nが3のときT2は3価の置換基を表す。3価の置換基について説明する。3価の置換基は3価のアルキル基、3価のアリール基、又は下記一般式で表される置換基である。
【0151】
【化11】

【0152】
3価の置換基のうち、好ましくは炭素数1〜8の3価のアルキル基、炭素数6〜14の3価のアリール基、又は下記一般式で表される化合物である。
【0153】
【化12】

【0154】
nが4のとき、Tは4価の置換基を表す。4価の置換基について説明する。4価の置換基は4価のアルキル基、4価のアリール基で表される置換基である。4価の置換基のうち好ましくは、炭素数1〜8の4価のアルキル基、炭素数6〜14の4価のアリールである。
【0155】
一般式(IIb)において、nが1又は2の時が特に好ましい。すなわち、一般式(IIb)の好ましい組み合わせは以下である。
【0156】
nが1のとき、Tが水素原子、又は炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基であり、Tが水素原子、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数1〜18のアルコキシ基であり、Lが−O−CO−C−、−CH−、−C−、−C10−、−C16−、−NH−CO−C−又は単なる結合であり、Tが塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリール基である組合せである。
【0157】
また、nが2のとき、Tが水素原子、又は炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基であり、Tが水素原子、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数1〜18のアルコキシ基であり、Lが−CH−又は単なる結合であり、Tが、−CH−、−O−CO−C−CO−O−、又は−NH−CO−C−CO−NH−である組合せである。
【0158】
また、nが2のとき、mが0であり、Tが水素原子、又は炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基であり、Tが水素原子、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数1〜18のアルコキシ基であり、Tが、−CH−、−O−CO−C−CO−O−、又は−NH−CO−C−CO−NH−である組合せも好ましい。
【0159】
前記一般式(IIa)又は(IIb)で表される化合物の代表例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)−5’−メチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−sec−ブチル−5’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)−カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−ドデシル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾール−2−イルフェノール]、2−[3’−t−ブチル−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)−2’−ヒドロキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコール300とのエステル交換生成物;
【化13】

(式中、R=3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシ−5’−2H−ベンゾトリアゾール−2−イルフェニル、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(α,α−ジメチルベンジル)−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル]ベンゾトリアゾール);2−[2’−ヒドロキシ−3’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−5’−(α,α−ジメチルベンジル)−フェニル]ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0160】
前記トリアジン系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmで、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。
【0161】
【化14】

【0162】
一般式(III)中、置換基Yは、互いに独立して、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のアルコキシ基である。Lfは2価の連結基または単結合を表す。uは1又は2であり、vは0又は1であり、そしてrは1〜3の整数である。uが1のとき、Yは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基である。また、uが2のとき,Yは2価の置換基を表す。
【0163】
は、互いに独立して、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のアルコキシ基を表す。Yとして好ましくは、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリール基、又は炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基である。
【0164】
Lfは2価の連結基または単なる結合を表す。uは1又は2を表す。rは1〜3の整数を表す。vは0又は1であり、vが0のときは、Lfは単なる結合を表す。
【0165】
2価の連結基−Lf−について説明する。2価の置換基Lfは、下記一般式(b)で表わされる2価の置換基である。
【0166】
一般式(b)
−(Lfmf1−(Lfmf2−(Lfmf3−(Lfmf4−(Lfmf5
【0167】
一般式(b)中、mf1〜mf5は0〜2の整数を表す。Lf〜Lfは各々独立して、−CO−、−O−、−SO−、−SO−、−NRf−、2価の置換もしくは無置換のアルキル基、2価の置換もしくは無置換のアルケニル基、又は2価の置換もしくは無置換のアリール基を表す。Rfは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0168】
Rfの具体例としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アルキル基上およびアリール基上の任意の位置に1価の置換基を有していてもよい。1価の置換基としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。Rfとして好ましくは、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリール基である。より好ましくは炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基である。
【0169】
すなわち2価の置換基−Lf−としては、−O−CO−C−CO−O−、−O−CO−C−、−NH−CO−C−CO−NH−、−NH−CO−C−、−CH−、−C−、−C−、−C−、−C10−、−C16−、−C−CO−O−、−C−C−、−NH−SO−C−等が好ましい。
【0170】
uが1のときYは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基である。uが1のときYとして好ましくは、水素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換アルキル基、又は炭素数6〜24の置換もしくは無置換アリール基である。
【0171】
uが2のときYは2価の置換基を表す。2価の置換基の例としては上記の2価の置換基−L−の例があげられる。Yとして好ましくは、置換もしくは無置換の2価のアルキル基、置換もしくは無置換の2価のアルケニル基、置換もしくは無置換の2価のアリール基、−CHCH(OH)CH−O−Y11−OCHCH(OH)CH、−CO−Y12−CO−、−CO−NH−Y13−NH−CO−、又は−(CH−CO−Y14−OCO−(CHである。ただし、tは、1、2または3である。
【0172】
11は、置換もしくは無置換のアルキレン、フェニレン、又は−フェニレン−M−フェニレン−(ここで、Mは、−O−、−S−、−SO−、−CH−または−C(CH−である。)である。
【0173】
12は、置換もしくは無置換の2価のアルキル基、置換もしくは無置換の2価のアルケニル基、又は置換もしくは無置換の2価のアリール基である。
【0174】
13は、置換もしくは無置換の2価のアルキル基、又は置換もしくは無置換の2価のアリール基である。
【0175】
14は、置換もしくは無置換の2価のアルキル基、又は置換もしくは無置換の2価のアリール基である。
【0176】
すなわちuが2のとき、Yとして好ましくは、炭素数1〜18の置換もしくは無置換の2価のアルキル基、炭素数6〜24の置換もしくは無置換の2価のアリール基、−CHCH(OH)CH−O−CH−OCHCH(OH)CH−、−CHCH(OH)CH−O−C(CH−OC16−、又は−(CH−CO−C−OCO−(CH−である。
【0177】
前記一般式(III)で表される化合物の代表例としては、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−トリデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ブチルオキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(ドデシルオキシ/トリデシルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ)フェニル−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−(3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2−{2−ヒドロキシ−4−[3−(2−エチルヘキシル−1−オキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ]フェニル}−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシ)フェニル−4,6−ジ(4−フェニル)フェニル−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。
【0178】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmである化合物が好ましく、下記一般式(IVa)又は(IVb)で表される化合物が好ましい。
【0179】
【化15】

【0180】
一般式(IVa)中、X及びXは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、又は置換もしくは無置換のアミノ基を表す。s1及びs2は、互いに独立して1〜3の整数を表す。
【0181】
一般式(IVb)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、又は置換もしくは無置換のアミノ基を表し、s1は1〜3の整数を表す。
Lgは2価の置換基または単なる結合を表し、wは0又は1を表す。
tbは1又は2を表し、tbが1のときX3は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、又は置換もしくは無置換のアミノ基を表す。tbが2のときX3は2価の置換基を表す。
【0182】
<一般式(IVa)>
及びXは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、又は置換もしくは無置換のアミノ基を表す。X及びXとして好ましくは、水素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数2〜18のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基、スルホン酸基、又は炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアミノ基である。X1及びX2として特に好ましくは水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、スルホン酸基、又は炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアミノ基である。
【0183】
<一般式(IVb)>
tbは1又は2であり、wは0又は1であり、s1は1〜3の整数である。置換基Xは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、又は置換もしくは無置換のアミノ基を表す。
【0184】
として好ましくは、水素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数2〜18のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基、スルホン酸基、又は炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアミノ基である。Xとして特に好ましくは水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、スルホン酸基、又は炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアミノ基である。
【0185】
−Lg−は2価の連結基または単なる結合を表し、wは0〜1の整数を表す。wが0の時はXがLgを介さずに直接ベンゼン環と結合しているとき、即ち−Lg−が単なる結合を表しているときを表す。
【0186】
2価の連結基−Lg−について説明する。2価の置換基Lgは、下記一般式(c)で表わされる2価の置換基である。
【0187】
一般式(c)
−(Lgmg1−(Lgmg2−(Lgmg3−(Lgmg4−(Lgmg5
【0188】
一般式(c)中、mg1〜mg5は0〜2の整数を表す。Lg〜Lgは各々独立して、−CO−、−O−、−SO−、−SO−、−NRg−、置換もしくは無置換の2価のアルキル基、置換もしくは無置換の2価のアルケニル基、又は置換もしくは無置換の2価のアリール基を表す。Rgは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0189】
Rgの具体例としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アルキル基上およびアリール基上の任意の位置に1価の置換基を有していてもよい。1価の置換基としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。Rgとして好ましくは、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリール基である。より好ましくは炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基である。
【0190】
すなわち2価の置換基−Lg−としては、−O−、−O−CO−C−CO−O−、−O−C−O−、−O−CO−C−、−NH−CO−C−CO−NH−、−NH−CO−C−、−CH−、−C−、−C−、−C−、−C10−、−C16−、−C−CO−O−、−C−C−、−NH−SO−C−等が好ましい。
【0191】
tbが1のとき、Xは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、又は置換もしくは無置換のアミノ基である。
【0192】
tbが1のとき、Xとして好ましくは、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数2〜18のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基、スルホン酸基、又は炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアミノ基である。Xとして特に好ましくは水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、スルホン酸基、又は炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアミノ基である。
【0193】
tbが2のときXは、2価の置換基を表す。
【0194】
tbが2のとき、Xの具体例としては、上記の2価の置換基−L−の例が挙げられる。tbが2のときXとして好ましくは、−CH−、−C−、−O−C−O−、−O−CO−C−CO−O−、又は−NH−CO−C−CO−NH−である。
【0195】
一般式(IVb)において、tbが1のときが特に好ましい。即ち、一般式(IVb)の好ましい組み合わせとしては、以下のとおりである。
【0196】
具体的には、tbが1のとき、Xが水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、スルホン酸基、又は炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアミノ基であり、Lgが−O−、−O−CO−C−CO−O−、−O−C−O−、−O−CO−C−、−NH−CO−C−CO−NH−、−NH−CO−C−、−CH−、−C−、−C−、−C−、−C10−、−C16−、−C−CO−O−、−C−C−、もしくは−NH−SO−C−、又は単なる結合であり、Xが水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数2〜18のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基、スルホン酸基、又は炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアミノ基である組み合わせが好ましい。
【0197】
tbが2のとき、Xが水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、スルホン酸基、又は炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアミノ基であり、Lgが−O−、−O−CO−C−CO−O−、−O−C−O−、−O−CO−C−、−NH−CO−C−CO−NH−、−NH−CO−C−、−CH−、−C−、−C−、−C−、−C10−、−C16−、−C−CO−O−、−C−C−、もしくは−NH−SO−C−、又は単なる結合であり、Xが−CH−、−C−、−O−C−O−、−O−CO−C−CO−O−、又は−NH−CO−C−CO−NH−である組み合わせが好ましい。
【0198】
前記ベンゾフェノン系化合物の代表例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−デシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ジエチルアミノ−2’−ヘキシルオキシカルボニルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、1,4−ビス(4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン等を挙げることができる。
【0199】
前記ベンゾオキサジノン系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmで、下記一般式(V)で表される化合物が好ましい。
【0200】
【化16】

【0201】
一般式(V)中、Rは置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。Rはn価の置換基または連結基を表し、nは1〜4の整数を表す。
【0202】
前記一般式(V)においてRは置換基を表し、置換基の例としては前述の置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例としてあげたものと同様のものが挙げられる。R1として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、更に好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基であり、更に好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、更に好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基であり、更に好ましくは塩素原子、フッ素原子、臭素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリールチオ基であり、更に好ましくは塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。
【0203】
として好ましくは0〜3であり、更に好ましくは0〜2であり、更に好ましくは0または1であり、最も好ましくは0、すなわちベンゼン環が置換基を有さないことである。
【0204】
はn価の置換基或いは連結基を表し、置換基の例としては前述の置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例としてあげたものと同様のものが挙げられる。また連結基とは置換基が更に1つ以上の結合手を有するものである。
【0205】
として好ましくは脂肪族基、芳香族基、およびこれらが更に結合手を有する連結基であり、更に好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびこれらが2〜4価となる連結基であり、更に好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、およびこれらが2〜3価となる連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、およびこれらが2〜3価となる連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基、およびこれらが2〜3価となる連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、およびこれらが2〜3価となる連結基であり、更に好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、2−ブチル、ベンジル、フェニル、2−ナフチル、エチレン、トリメチレン、1,2−プロピレン、テトラメチレン、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、2,6−ナフチレン、ベンゼン−1,3,5−イルであり、更に好ましくはメチル、エチル、ベンジル、フェニル、エチレン、トリメチレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ベンゼン−1,3,5−イルであり、更に好ましくはエチレン、トリメチレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ベンゼン−1,3,5−イルであり、最も好ましくは1,4−フェニレンである。
【0206】
として好ましくは1〜3であり、更に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。
【0207】
前記ベンゾオキサジノン系化合物の代表例としては、2,2’−(p−フェニレン)ジ−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンを挙げることができる。
【0208】
前記サリチル酸系化合物としては、その有効吸収波長が約290〜330nmである化合物が好ましく、その代表例としてはフェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、4−オクチルフェニルサリシレート、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−t−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシサリシレート、ヘキサデシル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシサリシレートなどを挙げることができる。
【0209】
前記アクリレート系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜350nmである化合物が好ましく、その代表例としては2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、イソオクチル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、ヘキサデシル 2−シアノ−3−(4−メチルフェニル)アクリレート、メチル 2−シアノ−3−メチル−3−(4−メトキシフェニル)シンナメート、ブチル 2−シアノ−3−メチル−3−(4−メトキシフェニル)シンナメート、メチル 2−カルボメトキシ−3−(4−メトキシフェニル)シンナメート2−シアノ−3−(4−メチルフェニル)アクリル酸塩、1,3−ビス(2’−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ)−2,2−ビス(((2’−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン、N−(2−カルボメトキシ−2−シアノビニル)−2−メチルインドリン等を挙げることができる。
【0210】
前記シュウ酸ジアミド系化合物としては、その有効吸収波長が約250〜350nmであるものが好ましく、その代表例としては4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−t−ブチルオキサニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−t−ブチルオキサニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサミド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサニリド、2−エトキシ−2’−エチル−5,4’−ジ−t−ブチルオキサニリド等を挙げることができる。
【0211】
第2の紫外線吸収剤としては、以下の化合物群(B)から選ばれる化合物であることが特に好ましい。化合物群(B)は次の化合物(II−1)〜(V−1)からなる群である。
【0212】
[1]前記一般式(IIa)で表される化合物
(II−1) 2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール
(II−2) 2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
(II−3) 2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(II−4) 2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート
(II−5) 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチル−フェノール
(II−6) 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−t−ブチルフェノール
(II−7) 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1−3,3−テトラメチルブチル)フェノール
(II−8) 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−メチルフェノール
(II−9) 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチル−フェノール
【0213】
[2]前記一般式(IIb)で表される化合物
(II−10) 2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]
【0214】
[3]前記一般式(III)で表される化合物
(III−1) 2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン
(III−2) 2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン
(III−3) 2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン
(III−4) 2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシロキシフェノール
(III−5) ビスエチルヘキシロキシフェノール メトキシフェニルトリアジン
【0215】
[4]前記一般式(IV)で表される化合物
(IV−1) ヘキシル 2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート
(IV−2) 2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン
(IV−3) 2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
(IV−4) 1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン
(IV−5) 2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン
(IV−6) 2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォニックアシッド
(IV−7) 2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン
【0216】
[5]前記一般式(V)で表される化合物
(V−1) 2,2’−(p−フェニレン)ジ−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン
【0217】
化合物(II−1)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(II−2)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(II−3)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 329(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(II−4)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(II−5)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(II−6)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin PS(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(II−7)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 928(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(II−8)は以下に示す構造であり、商品名Tinuvin P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(II−9)は以下に示す構造であり、商品名Tinuvin 234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(II−10)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 360(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
【0218】
化合物(III−1)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 460(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(III−2)は下記に示す構造であり、商品名Cyasorb UV−116(サイテック社製)として市販されている。
化合物(III−3)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 405(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(III−4)は下記に示す構造であり、商品名Tinuvin 1577(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(III−5)は下記に示す構造であり、商品名Tinosorb S(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
【0219】
化合物(IV−1)は下記に示す構造であり、商品名Uvinul A plus(BASF社製)として市販されている。
化合物(IV−2)は下記に示す構造であり、商品名Uvinul 3049(BASF社製)として市販されている。
化合物(IV−3)は下記に示す構造であり、商品名Visorb 110(共同薬品社製)として市販されている。
化合物(IV−4)は下記に示す構造であり、商品名Seesorb 151(シプロ化成社製)として市販されている。
化合物(IV−5)は以下に示す構造であり、商品名Chimassorb 81(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
化合物(IV−6)は以下に示す構造であり、商品名Uvinul MS40(BASF社製)として市販されている。
化合物(IV−7)は以下に示す構造であり、商品名Uvinul 3050(BASF社製)として市販されている。
化合物(V−1)は以下に示す構造であり、商品名サイアソーブUV−3638(サイテックインダストリーズ社製)として市販されている。
【0220】
【化17】

【0221】
【化18】

【0222】
【化19】

【0223】
【化20】

【0224】
第1の紫外線吸収剤及び第2の紫外線吸収剤は、それぞれ単独で使用していてもよいが、あらかじめあるいは組成物中で結合を形成することで、互いに連結して使用してもよい。また、それぞれ重合性基を結合させることでモノマーとし、これを重合させることで1の紫外線吸収剤及び第2の紫外線吸収剤を単位構造に含む共重合体となってもよい。1の紫外線吸収剤及び第2の紫外線吸収剤が結合していない別のモノマーを併用して共重合体となってもよい。好ましくは、それぞれ単量体として組成物になっていたものが、所望の時に重合を行って共重合体を形成する場合である。
【0225】
第2の添加剤について、説明する。第2の添加剤は、下記一般式(TS−I)〜(TS−V)のいずれかで表される。一般式(TS−I)〜(TS−V)のいずれかで表される化合物は、種々の樹脂などと共用することで樹脂の分解を防止する光安定剤として機能する。このような化合物を前記一般式(1)で表される第1の紫外線吸収剤と共に添加することにより、組成物自体の光安定性を向上するだけでなく、第1の紫外線吸収剤も安定化し、第1の紫外線吸収剤が有する長波紫外線吸収能を長期間に亘って維持することができる。
【0226】
【化21】

【0227】
一般式(TS−I)中、R91は水素原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等の環状アルキル基を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、トリシクロアルケニル基等の環状アルケニル基を含む。)、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基(シクロアルキルスルホニル基、ビシクロアルキルスルホニル基、トリシクロアルキルスルホニル基等の環状アルキルスルホニル基を含む。)、アリールスルホニル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、又は−Si(R97)(R98)(R99)を表す。ここで、R97、R98、R99は同一でも異なってもいてもよく、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基、アリールオキシ基を表す。−X91−は−O−、−S−又は−N(−R100)−を表す。ここで、R100はR91と同義である。R92、R93、R94、R95、R96は互いに同一でも異なってもよく、それぞれ、水素原子又は置換基を表す。R91とR92、R100とR96、R91とR100は互いに結合して5〜7員環を形成していてもよい。さらに、R92とR93、R93とR94が互いに結合して、5〜7員環又はスピロ環、ビシクロ環を形成してもよい。但し、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R100のすべてが水素原子であることはなく、総炭素数は10以上である。
【0228】
本明細書中における基が脂肪族部位を含む場合には、その脂肪族部位は直鎖、分岐鎖又は環状で飽和であっても不飽和であってもよく、例えばアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルを表し、これらは無置換であっても置換基を有していてもよい。また、アリール部位を含む場合には、そのアリール部位は、単環であっても縮合環であってもよく、無置換であっても置換基を有していてもよい。また、複素環部位を含む場合には、その複素環部位は環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよく、無置換であっても置換基を有していてもよく、環状のヘテロ原子で結合しても、炭素原子で結合してもよい。
【0229】
本発明における置換基とは、置換可能な基であればよく、例えば脂肪族基、アリール基、複素環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、複素環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、複素環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、複素環スルホンアミド基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、複素環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ホスフィニル基、ホスホリル基等を挙げることができる。
【0230】
前記一般式(TS−I)をさらに詳細に述べる。R91は水素原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等の環状アルキル基等の環状アルキル基を含む、例えば、メチル基、i−プロピル基、s−ブチル基、ドデシル基、メトキシエトキシ基、ベンジル基)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む、例えば、アリル基)、アリール基(例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基)ヘテロ環基(例えば2−テトラヒドフリル基、ピラニル基)、アシル基(例えばアセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基)、アルキルもしくはアルケニルオキシカルボニル基(例えばメキシカルボニル基、ヘキサデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、p−メトキシフェノキシカルボニル基)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基)、ホスフィノトリル基(例えばジメトキシホスフィノ基、ジフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(例えばジエチルホスフィニル基、ジフェニルホスフィニル基)、又は−Si(R97)(R98)(R99)を表す。ここで、R97、R98、R99は同一でも異なってもいてもよく、それぞれアルキル基(例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、ベンジル基)、アルケニル基(例えばアリル基)、アリール基(例えばフェニル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基)、アルケニルオキシ基(例えばアリルオキシ基)、又はアリールオキシ基(例えばフェノキシ基)を表す。
【0231】
−X91−は、−O−、−S−又は−N(−R100)−を表す。ここで、R100はR91と同義であり、好ましい範囲も同様である。R92、R93、R94、R95、R96は各々同一でも異なってもよく、それぞれ、水素原子又は置換基を表し、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等の環状アルキル基を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、トリシクロアルケニル基等の環状アルケニル基を含む。)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む。)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
【0232】
その中でも好ましい置換基としてはアルキル基(例えばメチル基、t−ブチル基、t−ヘキシル基、ベンジル基)、アルケニル基(アリール基)、アリール基(例えばフェニル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基)、アルキルもしくはアルケニルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、p−ヒドロキシベンゼンスルホニル基)又は−X91−R91である。
【0233】
91とR92、R100とR96、R91とR100は互いに結合して5〜7員環(例えばクロマン環、モルホリン環)を形成していてもよい。さらに、R92とR93、R93とR94が互いに結合して、5〜7員環(例えばクロマン環、インダン環)又はスピロ環、ビシクロ環を形成してもよい。但し、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R100のすべてが水素原子であることはなく、総炭素数は10以上であり、好ましくは総炭素数16以上である。
【0234】
前記一般式(TS−I)で表される化合物は、特公昭63−50691号公報の一般式(I)、特公平2−37575号公報の一般式(IIIa)(IIIb)(IIIc)、同2−50457号公報の一般式、同5−67220号公報の一般式、同5−70809の一般式(IX)、同6−19534号公報の一般式、特開昭62−227889号公報の一般式(I)、同62−244046号公報の一般式(I)(II)、特開平2−66541号公報の一般式(I)(II)、同2−139544号公報の一般式(II)(III)、同2−194062号公報の一般式(I)、同2−212836号公報の一般式(B)、(C)、(D)、同3−200758号公報の一般式(III)、同3−48845号公報の一般式(II)(III)、同3−266836号公報の一般式(B)、(C)、(D)、同3−969440号公報の一般式(I)、同4−330440号公報の一般式(I)、同5−297541号公報の一般式(I)、同6−130602号公報の一般式、国際公開WO91/11749号パンフレットの一般式(1)、(2)、(3)、独国特許出願公開第4008785A1号明細書の一般式(I)、米国特許第4931382号明細書の一般式(II)、欧州特許第203746B1号明細書の一般式(a)、欧州特許第264730B1号明細書の一般式(I)等で表される化合物を包含する。
【0235】
前記一般式(TS−I)で表される化合物としては、下記一般式(TS−IA)〜(TS−IG)で表される化合物が挙げられ、本発明においてはこれらの構造の化合物が好ましい。
【0236】
【化22】

【0237】
前記一般式(TS−IA)〜(TS−IG)において、R91〜R97は一般式(TS−I)で定義したものと同じであり、好ましい範囲も同様である。Ra1〜Ra4は水素原子又は脂肪族基を表し、X92及びX93は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、オキシ基、スルホニル基を表す。式中、同一分子中の同記号は同じであっても異なっていてもよい。
【0238】
前記一般式(TS−II)中、R101、R102、R103、R104は各々独立に、水素原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等の環状アルキル基を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、トリシクロアルケニル基等の環状アルケニル基を含む。)を表し、R101とR102、R103とR104は結合し、5〜7員環を形成してもよい。
【0239】
101は水素原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等の環状アルキル基を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、トリシクロアルケニル基等の環状アルケニル基を含む。)基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルもしくはアルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アルケニルオキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキルもしくはアルケニルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルもしくはアルケニルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基又はオキシラジカル基を表す。
【0240】
102は5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0241】
前記一般式(TS−II)をさらに詳細に述べる。式中、R101、R102、R103、R104は、水素原子、アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、アルケニル基(例えばアリル基)であるが、好ましくはアルキル基である。
【0242】
101は、水素原子、アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、アルケニル基(例えば、アリル基)、アルキルオキシ基(例えばメトキシ基、オクチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アルケニルオキシ基(例えばアリルオキシ基)、アルキルオキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、ヘキサデシルオキシカルボニル基)、アルケニルオキシカルボニル基(例えば、アリルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、p−クロロフェノキシカルボニル基)、アシル基(例えばアセチル基、ピバロイル基、メタクリロイル基)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基)、アルキルオキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、オクチルオキシカルボニルオキシ基)、アルケニルオキシカルボニルオキシ基(例えば、アリルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えばフェノキシカルボニルオキシ基)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基)、アルケニルスルホニル基(例えば、アリルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基)、アルキルスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル基、オクタンスルフィニル基)、アルケニルスルフィニル基(例えば、アリルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(例えばベンゼンスルフィニル基、p−トルエンスルフィニル基)、スルファモイル基(例えばジメチルスルファモイル基)、カルバモイル基(例えばジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基)、ヒドロキシ基又はオキシラジカル基を表す。
【0243】
102は5〜7員環(例えばピペリジン環、ピペラジン環)を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0244】
前記一般式(TS−II)においては、更に好ましくは、R103、R104、R105、R106が共に炭素数1〜3のアルキル基であり、X101がオキシラジカル、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜14のアシル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、X102がシクロヘキサン環を形成するものである。
【0245】
前記一般式(TS−II)は下記一般式(TS−IIa)で表される場合が特に好ましい。
【0246】
【化23】

【0247】
式中、X101は前記一般式(TS−II)におけるX101と同義であり、好ましい範囲も同様である。R200は1価の置換基を表す。1価の置換基としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。
【0248】
前記一般式(TS−II)で表される化合物は、特公平2−32298号公報の一般式(I)、同3−39296号公報の一般式(I)、同3−40373号公報の一般式、特開平2−49762号公報の一般式(I)、同2−208653号公報の一般式(II)、同2−217845号公報の一般式(III)、米国特許第4906555号明細書の一般式(B)、欧州特許出願公開第309400A2号明細書の一般式、同第309401A1号明細書の一般式、同第309402A1号明細書の一般式等で表される化合物を包含する。
【0249】
前記一般式(TS−III)中、R105、R106は水素原子、脂肪族基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基を表し、R107は脂肪族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、芳香族オキシカルボニルオキシ基、置換アミノ基、複素環基、ヒドロキシ基を表し、可能な場合にはR105とR106、R106とR107、R105とR107は互いに結合し、5〜7員環を形成してもよいが、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を形成する場合を除く。但し、R105、R106の両方が水素原子であることはなく、総炭素数は7以上である。
【0250】
前記一般式(TS−III)を更に詳細に述べる。式中、R105、R106は水素原子、脂肪族基(例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、オクチル基、メトキシエトキシ基)、アシル基(例えばアセチル基、ピバロイル基、メタクリロイル基)、脂肪族オキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、ヘキサデシルオキシカルボニル基)、芳香族オキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基)、脂肪族スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基)、芳香族スルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基)を表し、R107は脂肪族基(例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、オクチル基、メトキシエトキシ基)、脂肪族オキシ基(例えばメトキシ基、オクチルオキシ基)、芳香族オキシ基(例えばフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基)、脂肪族チオ基(例えばメチルチオ基、オクチルチオ基)、芳香族チオ基(例えばフェニルチオ基、p−メトキシフェニルチオ基)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基、ピバロイルオキシ基)、脂肪族オキシカルボニルオキシ基(例えばメトキシカルボニルオキシ基、オクチルオキシカルボニルオキシ基)、芳香族オキシカルボニルオキシ基(例えばフェノキシカルボニルオキシ基)、置換アミノ基(置換基としては置換可能ならばよく、例えば脂肪族基、芳香族基、アシル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基等の置換したアミノ基)、複素環基(例えばピペリジン環、チオモルホリン環)、ヒドロキシ基を表し、可能な場合にはR105とR106、R106とR107、R105とR107は互いに結合し、5〜7員環(例えばピペリジン環、ピラゾリジン環)を形成してもよい。但し、R105、R106の両方が水素原子であることはなく、総炭素数は7以上である。
【0251】
前記一般式(TS−III)で表される化合物は、特公平6−97332号公報の一般式(I)、特公平6−97334号公報の一般式(I)、特開平2−148037号公報の一般式(I)、同2−150841号公報の一般式(I)、同2−181145号公報の一般式(I)、同3−266836号公報の一般式(I)、同4−350854号公報の一般式(IV)、同5−61166号公報の一般式(I)等で表される化合物を包含する。
【0252】
前記一般式(TS−III)で表される化合物としては、下記一般式(TS−IIIA)〜(TS−IIID)で表される化合物が挙げられ、本発明においてはこれらの構造の化合物が好ましい。
【0253】
【化24】

【0254】
前記一般式(TS−IIIA)〜(TS−IIID)において、R105〜R106は前記一般式(TS−III)で定義したものと同じであり、好ましい範囲も同様である。Rb1〜Rb3はR105と同義であり、好ましい範囲も同様である。Rb4、Rb5、Rb6は脂肪族基を表す。X103は5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0255】
前記一般式(TS−IV)中、R111、R112は脂肪族基を表し、R111とR112は互いに結合し、5〜7員環を形成してもよい。nは0、1、2を表す。但しR111、R112の総炭素数は10以上である。
【0256】
前記一般式(TS−IV)を更に詳細に述べる。
前記一般式(TS−IV)中、R111、R112は脂肪族基(例えばメチル基、メトキシカルボニルエチル基、ドデシルオキシカルボニルエチル基)を表し、R111とR112は互いに結合し、5〜7員環(例えばテトラヒドロチオフェン環、チオモルホリン環)を形成してもよい。nは0、1、2を表す。但し、R111、R112の総炭素数は10以上である。
【0257】
前記一般式(TS−IV)で表される化合物は、特公平2−44052号の一般式(I)、特開平3−48242号公報の一般式(T)、同3−266836号公報の一般式(A)、同5−323545号公報の一般式(I)(II)(III)、同6−148837号公報の一般式(I)、米国特許第4933271号明細書の一般式(I)等で表される化合物を包含する。
【0258】
前記一般式(TS−V)中、R121、R122は脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基を表し、R123は脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基を表し、mは0又は1を表す。R121とR122、R121とR123は互いに結合し、5〜8員環を形成してもよい。但し、R121、R122、R123の総炭素数は10以上である。
【0259】
前記一般式(TS−V)を更に詳細に述べる。前記一般式(TS−V)中、R121、R122は脂肪族オキシ基(例えばメトキシ基、t−オクチルオキシ基)、芳香族オキシ基(例えばフェノキシ基、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ基)を表し、R123は脂肪族基(例えばメチル基、エチル基、t−オクチル基)、芳香族基(例えばフェニル基、4−t−ブチルフェニル基)、脂肪族オキシ基(例えばメトキシ基、t−オクチルオキシ基)、芳香族オキシ基(例えばフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基)を表し、mは0又は1を表す。R121とR122、R121とR123は互いに結合し、5〜8員環を形成してもよい。但し、R121、R122、R123の総炭素数は10以上である。
【0260】
前記一般式(TS−V)で表される化合物は、特開平3−25437号公報の一般式(I)、同3−142444号公報の一般式(I)、米国特許第4749645号明細書の一般式、同第4980275号明細書の一般式等で表される化合物を包含する。
【0261】
前記一般式(TS−I)〜(TS−V)のいずれかで表される化合物は、前記一般式(TS−I)、(TS−II)、又は(TS−V)のいずれかで表される化合物から選ばれたものであることが好ましく、前記一般式(TS−I)又は(TS−II)で表される化合物から選ばれたものがより好ましく、前記一般式(TS−II)で表される化合物であることがさらに好ましい。前記一般式(TS−II)で表される化合物としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格からなるものが特に好ましい。
【0262】
前記一般式(TS−I)〜(TS−V)のいずれかで表される化合物の具体的化合物例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、前記一般式(TS−I)に該当する化合物には、TI−1〜57が、前記一般式(TS−II)に該当する化合物には、TII−1〜36が、前記一般式(TS−III)に該当する化合物には、TIII−1〜13が、前記一般式(TS−IV)に該当する化合物には、TIV−1〜6が、前記一般式(TS−V)に該当する化合物には、TV−1〜8が、参照番号として付されている。
【0263】
【化25】

【0264】
【化26】

【0265】
【化27】

【0266】
【化28】

【0267】
【化29】

【0268】
【化30】

【0269】
【化31】

【0270】
【化32】

【0271】
【化33】

【0272】
【化34】

【0273】
【化35】

【0274】
【化36】

【0275】
【化37】

【0276】
【化38】

【0277】
【化39】

【0278】
【化40】

【0279】
【化41】

【0280】
【化42】

【0281】
【化43】

【0282】
【化44】

【0283】
【化45】

【0284】
前記一般式(TS−I)〜(TS−V)のいずれかで表される化合物として好ましくは、前記一般式(TS−I)、(TS−II)又は(TS−V)のいずれかで表される化合物である。より好ましくは前記一般式(TS−I)又は(TS−II)で表される化合物である。
【0285】
前記一般式(TS−I)〜(TS−V)のいずれかで表される化合物が2種以上含まれる場合には、同一の群から2種以上併用しても良いし(例えば、前記一般式(TS−II)で表される化合物を2種類使用する場合)、複数の群に亘って2種以上併用しても良い(例えば、前記一般式(TS−I)で表される化合物と前記一般式(TS−II)で表される化合物をそれぞれ1種類ずつ使用する場合)。好ましくは、複数の群に亘って2種以上併用する場合である。
【実施例】
【0286】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はここに示す形態に限定されるものではない。
【0287】
[実施例1]
実施例1では、図2に示すように、ポリエステルからなる支持体11の一方の面に本発明の2層構造の光拡散部12を形成し、光拡散シート20を作製した。
【0288】
〔支持体〕
Geを触媒として重縮合した固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載)樹脂を含水率50ppm以下になるまで乾燥した後、ヒーター温度が280〜300℃の範囲で略一定となるように調整された押出機の内部で溶融させた。次に、この溶融したPET樹脂を、静電印加されたチルロール上にダイから吐出させて、非結晶のフィルムとした後、これをフィルムの搬送方向と幅方向に延伸し、熱固定工程、緩和工程、冷却工程を経て、厚さ300μmの長尺の支持体11を得た。以下の説明においては、この支持体11の長手方向をMD方向、幅方向をTD方向と称する。
【0289】
また、170℃、10分間の加熱処理を行なったときの支持体11の加熱収縮率を、互いに直交するMD方向とTD方向とでそれぞれ測定した。加熱収縮率は、以下の方法で求めた。支持体11から、TD方向30mm、MD方向120mmの大きさでサンプリングした。このサンプルのMD方向で100mmの間隔となるように、正確に2本の基準線を入れ、無張力下で170℃の加熱オーブン中に10分間放置した。この放置の後、室温まで冷却して、2本の基準線の間隔を測定しこの値をL(単位;mm)とおき、100×(100−L)/100の式をもってMD方向での加熱収縮率とした。また、支持体11からMD方向30mm、TD方向120mmの大きさでサンプリングし、同様に測定と計算とを行い、TD方向での加熱収縮率とした。支持体11の加熱収縮率は、MD方向1.2%、TD方向1.0%であった。
【0290】
〔拡散層〕
上記の支持体11を搬送速度45m/分条件で搬送する間に、その表面を460J/m条件下でコロナ放電処理を行った。そして、この処理面に、下記組成からなる樹脂層用塗布液1をバーコート法により塗布して第1の樹脂層12aを形成した。ここで、塗布量は9.1cc/mとし、120℃で1分乾燥した。ついで、この支持体11を搬送速度45m/分条件で搬送しながら、第1の樹脂層12aが形成された面に、460J/m条件でコロナ放電処理を行った。そして、バーコート法により、下記組成からなる樹脂層用塗布液2を塗布量が20.5cc/mとなるよう塗布した後、これを120℃/1分乾燥することで第2の樹脂層12bを形成した。これにより、第1及び第2の樹脂層12a,12bを有する光拡散シート20を得た。
【0291】
〔樹脂層用塗布液1〕
・蒸留水 475質量部
・水分散性ポリマー(ポリウレタン樹脂、DMS NeoResins Inc.製、NeoRez R−600、固形分33%) 284質量部
・微粒子(日産化学工業(株)製、スノーテックスC、シリカ粒子、平均粒径0.01〜0.02μm、固形分20%) 234質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2) 5質量部
・界面活性剤(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95) 2質量部
上記の各種材料を混合して樹脂層用塗布液1とした。
【0292】
〔樹脂層用塗布液2〕
・蒸留水 442質量部
・界面活性剤(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95) 5質量部
・微粒子(積水化成品工業(株)製、SBX−6、架橋ポリスチレン粒子、平均粒径 6μm) 269質量部
・水分散性ポリマー(ポリウレタン樹脂、DMS NeoResins Inc.製、NeoRez R−600、固形分33%) 271質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2 固形分40%) 13質量部
上記の各種材料を混合して樹脂層用塗布液2とした。
【0293】
完成した光拡散シート20について、ヘイズ、全光線透過率、LED光源の隠蔽性及び樹脂層の耐傷性を測定した。
【0294】
〔ヘイズ測定〕
ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株))を用いて、完成した積層シートのヘイズ、全光線透過率を測定した。
【0295】
〔LED光源の隠蔽性〕
市販のLED光源(6ルーメン/個、計96個)ライトユニットの、各LED光源上部から15mmの距離の位置に光拡散シートを設置し、LED光源を真上90°及び斜め上45°の位置から見たときのLED光源の隠蔽性を目視評価した。
○:ほぼ均一に光が拡散し、LED光源の位置が確認できない。
△:輝度のばらつきにより、LED光源の位置がわずかに確認できるが実用上問題ないレベル。
×:LED光源が輝点として確認され、問題となるレベル。
【0296】
〔樹脂層の耐傷性〕
第1の樹脂層12a及び第2樹脂層12bを塗布した後、樹脂層表面(検査面積1m)を、150Wタングステンランプを用いて検査した。樹脂層表面のムラ、傷の有無を目視により調べ、ムラ、傷がない場合は「○」とし、ムラもしくは傷が認められた場合を「×」とした。
【0297】
[実施例2]
実施例2では、実施例1の〔樹脂層用塗布液1〕を下記〔樹脂層用塗布液3〕にした以外は、実施例1と同様に光拡散シート20を作製した。
【0298】
〔樹脂層用塗布液3〕
・蒸留水 593質量部
・水分散性ポリマー(ポリウレタン樹脂、DMS NeoResins Inc.製、NeoRez R−600、固形分33%) 284質量部
・微粒子(日産化学工業(株)製、スノーテックスZL、シリカ粒子、平均粒径0.07〜0.1μm、固形分40%) 117質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2) 5質量部
・界面活性剤(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95) 2質量部
【0299】
[実施例3]
実施例3では、実施例1の〔樹脂層用塗布液1〕を下記〔樹脂層用塗布液4〕に、〔樹脂層用塗布液2〕を下記〔樹脂層用塗布液5〕にした以外は、実施例1と同様に光拡散シート20を作製した。
【0300】
〔樹脂層用塗布液4〕
・蒸留水 675質量部
・界面活性剤(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95) 2質量部
・微粒子(積水化成品工業(株)製、SBX−6、架橋ポリスチレン粒子、平均粒径6μm) 35質量部
・水分散性ポリマー(ポリウレタン樹脂、DMS NeoResins Inc.製、NeoRez R−600、固形分33%) 271質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2 固形分40%) 5質量部
【0301】
〔樹脂層用塗布液5〕
・蒸留水 477質量部
・界面活性剤(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95) 5質量部
・微粒子(積水化成品工業(株)製、SBX−6、架橋ポリスチレン粒子、平均粒径6μm) 234質量部
・水分散性ポリマー(ポリウレタン樹脂、DMS NeoResins Inc.製、NeoRez R−600、固形分33%) 271質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2 固形分40%) 13質量部
【0302】
[実施例4]
実施例4では、実施例1で作成した光拡散シートの光拡散層13の反対面に、下記のように接着層13及びハードコート層14を設けることによって、図1に示すようなハードコート14付の光拡散シート10を作製した。
【0303】
実施例1の光拡散部12付の支持体11を搬送速度45m/分条件で搬送する間に、光拡散部12の反対面の表面を460J/m条件下でコロナ放電処理を行った。そして、この処理面に、下記組成からなる接着層用塗布液をバーコート法により塗布して接着層13を形成した。ここで、塗布量は8.4cc/mとし、110℃で1分乾燥した。ついで、この支持体11を搬送速度45m/分条件で搬送しながら、接着層13が形成された面に、460J/m条件でコロナ放電処理を行った。そして、バーコート法により、下記組成からなるハードコート層用塗布液を塗布量が15.5cc/mとなるよう塗布した後、これを180℃/2分乾燥することでハードコート層14を形成し、ハードコート層14付の光拡散シート10を得た。
【0304】
〔接着層用塗布液〕
・蒸留水 944質量部
・バインダー(三井化学ポリウレタン(株)製、タケラックWS4000、固形分33%)50質量部
・界面活性剤1(三洋化成工業(株)、サンデッドBL)10%水溶液 3質量部
・界面活性剤2(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95)10%水溶液 3質量部
上記の各種材料を混合して接着層用塗布液とした。
【0305】
〔ハードコート層用塗布液〕
・1質量%酢酸水 291質量部
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学(株)製、KBE−403) 78質量部
・テトラエトキシシラン(日産化学(株)製、KBE−04) 91質量部
・コロイダルシリカ(日産化学(株)製、スノーテックスO−33、平均粒径0.01〜0.02μm、固形分33%) 484質量部
・アルミニウム化合物(川研ファインケミカル (株)製、アルミキレートA(W)) 2.7質量部
・界面活性剤1(三洋化成工業(株)、サンデッドBL)10%水溶液 27質量部
・界面活性剤2(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95)10%水溶液 27質量部
上記の各種材料を混合してハードコート層用塗布液とした。
【0306】
完成した光拡散シート10について、実施例1と同様に、ヘイズ、全光線透過率、LED光源の隠蔽性及び樹脂層の耐傷性を測定するとともに、ハードコート層のひび割れの有無を目視で確認した。その結果、ひび割れがあるものは、製造適性が劣っていることがわかった。
【0307】
[比較例1]
比較例1では、実施例1の〔樹脂層用塗布液1〕の微粒子(日産化学工業(株)製、スノーテックスC、シリカ粒子、固形分20%)234質量部を添加せずに、代わりに蒸留水234質量部を添加した以外は、実施例1と同様に光拡散シートを作製した。
【0308】
[比較例2]
比較例2では、実施例1の〔樹脂層用塗布液1〕を塗布せずに〔樹脂層用塗布液2〕のみを塗布した以外は、実施例1と同様に光拡散シートを作製した。
【0309】
[比較例3]
比較例3では、実施例1の〔樹脂層用塗布液1〕の微粒子(日産化学工業(株)製、スノーテックスC、シリカ粒子、固形分20%)234質量部を添加せずに、代わりに蒸留水234質量部を添加した。この塗布液を実施例1の支持体の代わりに、加熱収縮率がMD方向0.8%、TD方向0.02%で、厚みが300μmである支持体11に塗布した後に、120℃/1分乾燥した以外は、実施例1と同様に光拡散シートを作製した。次いで実施例4と同様にして、光拡散部12の反対面の表面に、ハードコート層を設けてハードコート付の光拡散シートを作製した。
【0310】
実施例1〜4、及び比較例1〜3の各評価結果を、表1にまとめて示す。
【0311】
【表1】

【0312】
以上の結果から、実施例1〜4により得られる光拡散シートは、LED光源の隠蔽性、全光透過率が高く、LED照明用カバーとして良好な性能を示す。また、樹脂層の傷つきや、水系ハードコートのひび割れもなく、製造適性に優れるものである。
【0313】
これに対して、比較例1では、第1の樹脂層が微粒子を有しないため、実施例1〜4と比較して隠蔽性が低下してしまった。比較例2では、光拡散層が第2樹脂層のみの1層構造であるため、実施例1〜4と比較して全光線透過率がかなり低下してしまった。比較例3では、比較例1と同様に、第1の樹脂層が微粒子を有しないため隠蔽性が低下するとともに、支持体の加熱収縮率が小さく、ひび割れが発生してしまった。
【0314】
[実施例5]〜[実施例9]、[実施例19]、[実施例20]
Geを触媒として重縮合した固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載)樹脂を含水率50ppm以下になるまで乾燥した。その後、第1の紫外線吸収剤を乾燥したPET樹脂と混合し、二軸押し出し機に投入した。用いた第1の紫外線吸収剤は、表2に一般式の符号で示す。溶融温度280℃で溶融混練し、第1の紫外線吸収剤を含むペレットを得た。得られたペレットをさらにPET樹脂と混合し、所定の第1の紫外線吸収剤の濃度を所定の濃度に調整した。このようにして第1の紫外線吸収剤の濃度が調整されたPET樹脂を用いて、実施例1と同じ方法で厚さ300μmの支持体11を得た。その他の条件は実施例1と同様にして、光拡散シート20を得た。表2の「単位面積あたりの第1紫外線吸収剤の含有量」の「単位面積」とは、光拡散シート20を法線方向からみたときの面積1mである。
【0315】
得られた各光拡散シート20について、光をカットすることができるか否かの光カット性能と、演出性とについて以下の方法で評価した。各評価結果は表2に示す。
【0316】
<光カット性能>
一方のシート面に対してUV LED(紫外線の波長:395−410nm(ピークの波長は405nm))を照射し、拡散シート越しに発光スペクトルを測定した。測定は、オーシャンフォトニクス社製分光器 USB4100(商品名)により行った。測定したスペクトルについて、波長410nmの光が完全にカットできているものを○,カットできていないものを×と判定した。
【0317】
<演出性>
得られた各光拡散シート20について、黄色味が目立つか否かを目視で評価し、これを演出性の評価とした。黄色味が目立たないものほど演出性が良いからである。黄色味が全く目立たないものを◎、目立たないものを○、目立つものを×とした。
【0318】
【表2】

【0319】
[実施例10]〜[実施例14]
Geを触媒として重縮合した固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載)樹脂を含水率50ppm以下になるまで乾燥した。その後、第1の紫外線吸収剤と第2の紫外線吸収剤と乾燥したPET樹脂とを混合し、二軸押し出し機に投入した。用いた第1の紫外線吸収剤と第2の紫外線吸収剤とは、それぞれ表2に一般式の符号で示す。溶融温度280℃で溶融混練し、ペレットを得た。なお、表2の「第2の紫外線吸収剤または第2の添加剤の質量比」は、第1の紫外線吸収剤の質量に対する第2の紫外線吸収剤または第2の添加剤の質量比であり、第1の紫外線吸収剤の質量を1とした場合の値である。得られたペレットをさらにPET樹脂と混合することで、第1の紫外線吸収剤と第2の紫外線吸収剤との濃度を調整し、これらの紫外線吸収剤を含有したPET樹脂を得た。このPET樹脂を用いて実施例1と同じ方法で厚さ300μmの支持体11を得た。その他の条件は実施例1と同様にして、光拡散シート20を得た。
【0320】
[実施例15]〜[実施例18]
Geを触媒として重縮合した固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載)樹脂を含水率50ppm以下になるまで乾燥した。その後、第1の紫外線吸収剤と第2の添加剤と乾燥したPET樹脂とを混合し、二軸押し出し機に投入した。用いた第1の紫外線吸収剤と第2の添加剤とは、それぞれ表2に一般式の符号で示す。溶融温度280℃で溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットをさらにPET樹脂と混合することで、第1の紫外線吸収剤と第2の添加剤との濃度を調整し、これらの紫外線吸収剤を含有したPET樹脂を得た。このPET樹脂を用いて実施例1と同じ方法で厚さ300μmの支持体11を得た。その他の条件は実施例1と同様にして、光拡散シート20を得た。
【0321】
実施例10〜18で得られた各光拡散シート20についても、光カット性能と演出性とを評価した。各評価結果は表2に示す。
【符号の説明】
【0322】
10,20 光拡散シート
11 支持体
12 光拡散層
12a 第1の樹脂層
12b 第2の樹脂層
14 ハードコート層
15,16 微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルからなる支持体の片面に、第1の樹脂層、第2の樹脂層がこの順で積層された光拡散シートであって、第1の樹脂層および第2の樹脂層は少なくとも1種以上の微粒子と水溶性及び/または水分散性のポリマーとを含有し、前記第1の樹脂層に含有される微粒子の含有量が、100質量部の前記水分散性ポリマーに対して5質量部以上400質量部であり、前記第2の樹脂層に含有される微粒子の含有量が、前記ポリマーに対して80質量部以上500質量部であることを特徴とする光拡散シート。
【請求項2】
前記第1の樹脂層に含有される微粒子が平均粒径0.005μm以上1μm以下の無機微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散シート。
【請求項3】
前記無機微粒子がシリカからなる微粒子であることを特徴とする請求項2に記載の光拡散シート。
【請求項4】
前記第1の樹脂層に含有される微粒子が平均粒径0.1μm以上20μm以下の有機微粒子であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の光拡散シート。
【請求項5】
前記第2の樹脂層に含有される微粒子が平均粒径3μm以上20μm以下の有機微粒子であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項に記載の光拡散シート。
【請求項6】
前記有機微粒子がポリスチレン、ポリメチルメタクリレートのうち少なくとも1種からなることを特徴とする請求項4又は5に記載の光拡散シート。
【請求項7】
前記水溶性及び/または水分散性ポリマーがポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂のうち少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光拡散シート。
【請求項8】
前記支持体は、170℃、10分間の加熱処理を行なったときの加熱収縮率が0.05%以上3.0%以下の範囲にあり、前記支持体のもう一方の面には、水系ハードコート層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光拡散シート。
【請求項9】
波長410nmの光の透過率が5%以下であることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項に記載の光拡散シート。
【請求項10】
紫外線吸収剤を含む層が備えられたことを特徴とする請求項9に記載の光拡散シート。
【請求項11】
前記紫外線吸収剤を含む層は、溶液における最大吸収波長が400nm以下である化合物を5g/m以下含有する層であることを特徴とする請求項10に記載の光拡散シート。
【請求項12】
前記紫外線吸収剤を含む層は、前記支持体であることを特徴とする請求項10または11記載の光拡散シート。
【請求項13】
前記紫外線吸収剤は、下記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項10ないし12いずれか1項記載の光拡散シート。
【化46】

ここで、Hetは、少なくとも1つのヘテロ原子を有する2価の5あるいは6員環の芳香族ヘテロ環残基を表し、縮環しているものを含む。R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g及びR1hは、互いに独立して、水素原子または1価の置換基Rを表す。
【請求項14】
前記一般式(1)で表される化合物を第1の前記紫外線吸収剤とするときに、第2の前記紫外線吸収剤は、320nmにおける吸光度が270nm以上400nm以下の範囲での極大吸収波長における吸光度の20%以上であり、極大吸収波長が380nm以下である化合物であることを特徴とする請求項13記載の光拡散シート。
【請求項15】
下記一般式(TS−I)〜(TS−V)で表される各化合物のうち少なくともいずれか1つを含む層を備えたことを特徴とする請求項10ないし14いずれか1項記載の光拡散シート。
【化47】

[ここで、一般式(TS−I)中、R91は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルもしくはアルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノトリル基、ホスフィニル基、−Si(R97)(R98)(R99)のいずれかひとつを表す。R97、R98、R99は互いに独立して、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基のいずれかひとつを表す。−X91−は−O−、−S−、−N(−R100)−を表す。ここで、R100は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルもしくはアルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノトリル基、ホスフィニル基、−Si(R97)(R98)(R99)のいずれかひとつを表す。R92、R93、R94、R95、R96は互いに独立して、それぞれ水素原子又は置換基を表す。R91とR92、R100とR96、R91とR100は互いに結合して5〜7員環を形成したものを含み、R92とR93、R93とR94が互いに結合して、5〜7員環又はスピロ環、ビシクロ環を形成したものを含む。但し、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R100のすべてが水素原子である場合を除く。R91、R92、R93、R94、R95、R96、R100の総炭素数は10以上である。
一般式(TS−II)中、R101、R102、R103、R104は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基を表し、R101とR102、R103とR104が結合し、5〜7員環を形成したものを含む。X101は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルもしくはアルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アルケニルオキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキルもしくはアルケニルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルもしくはアルケニルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、オキシラジカル基を表す。X102は5〜7員環を形成する非金属原子群を表す。
一般式(TS−III)中、R105、R106は水素原子、脂肪族基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基を表し、R107は脂肪族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、芳香族オキシカルボニルオキシ基、置換アミノ基、複素環基、ヒドロキシ基を表し、R105とR106、R106とR107、R105とR107が互いに結合し、5〜7員環を形成したものを含む。但し、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を形成する場合を除く。ここで、R105、R106の両方が水素原子であることはなく、R105とR106との総炭素数は7以上である。
一般式(TS−IV)中、R111、R112は脂肪族基を表し、R111とR112が互いに結合し、5〜7員環を形成したものを含む。nは0、1、2を表す。但し、R111とR112の総炭素数は10以上である。
一般式(TS−V)中、R121、R122は脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基を表し、R123は脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基を表し、mは0又は1を表し、R121とR122、R121とR123が互いに結合し、5〜8員環を形成したものが含まれる。但し、R121、R122、R123の総炭素数は10以上である。]
【請求項16】
前記微粒子を非含有とする層のヘイズ値が10%以下であることを特徴とする請求項1ないし14いずれか1項記載の光拡散シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−65139(P2011−65139A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157750(P2010−157750)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】