説明

光拡散制御及び/又は表面からのグレア低減方法

【課題】ディスプレイ装置のバックプレーンにおける光拡散を最大化し、及び/又はこのような表面からのグレアを低減するための代替となる手法を提供すること。
【解決手段】ディスプレイ装置のバックプレーンを含む表面における光拡散を制御し及び/又はグレアを制御する光拡散制御/グレア抑制方法は、a)表面を準備する工程と、b)約1nm〜約10μmの範囲の平均直径を有する粒子の分散液を準備する工程と、c)分散液を表面に適用し粒子フィルムを形成する工程と、d)熱又は紫外線を用いて、表面上で分散液を乾燥させ及び/又は分散液を硬化させる工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散及び/又は表面、特に反射型バックプレーンからのグレアを制御する方法に関する。更に、本発明は、光拡散が制御されたディスプレイ及び光拡散及び/又は表面からのグレアを制御するためのナノ粒子フィルムの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型ディスプレイは、通常、周囲の光を最大限に活用するために、光拡散バックプレーン(light diffusing back plane)又はゲインリフレクタ(gain reflector)を備える。反射型ディスプレイは、周囲の光を利用して情報を表示し、したがって、バックライトによる照明が不要であるため、携帯型電子機器に好適に用いられる。しかしながら、反射型ディスプレイでは、適切な解像度で、コントラスト及び彩度に優れた画像を実現することが困難であるという問題があった。例えば、伝送モード(TN型液晶ディスプレイ等)、吸収モード(ゲスト−ホストディスプレイ(guest host display)等)、選択反射モード(コレステリック液晶モード等)、散乱モード(高分子分散型液晶等)を始めとする様々な異なるモードを採用した多くの反射型ディスプレイ技術がある。これらの全ての技術において、反射型バックプレーンの光拡散特性は、制約があり、このため、ディスプレイの視野角は狭い。更に、反射光による干渉のため、ディスプレイのバックプレーンから金属に光をあてたときのようなグレアが生じる。この問題を解決する手法の1つとして、反射型バックプレーンの表面に、突起(protuberances)又はマイクロ反射構造(microreflective structures)とも呼ばれる不規則な変化を形成する手法がある。これらの突起の高さ、寸法及び/又は位置を変更することによって、反射型バックプレーンからの光拡散を最大化するための研究が行われている。このような突起を作成するための様々な手法も提案されている。例えば、スタンピング法を用いて突起を形成することができる。但し、この手法では、何らかの理由で拡散特性を変更する必要が生じた場合、スタンプを再設計するか、全く新しいスタンプを用いる必要があった。突起を形成するための他の手法として、フォトリソグラフィー法がある。この場合も、拡散特性を変更する場合、リゾグラフィマスク及び/又はランプを再設計しなければならない。このため、突起の最適化/再設計を行うためには、時間、コスト及びロジスティックに関して多くのリソースを費やす必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の課題に鑑み、本発明の目的は、ディスプレイのバックプレーンからの光拡散を最大化し、及び/又はこのような表面からのグレアを低減するための代替となる手法を提供することである。更に、本発明の目的は、このような表面からの光拡散を最大化するとともに、容易に実行でき、コスト的にもロジスティクス的にも安価な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の課題を解決するために、本発明に係る光拡散制御/グレア抑制方法は、ディスプレイ装置のバックプレーンを含む表面における光拡散を制御し及び/又はグレアを抑制する光拡散制御/グレア抑制方法において、a)表面を準備する工程と、b)約1nm〜約10μmの範囲の平均直径を有する粒子、好ましくは、ナノ粒子の分散液を準備する工程と、c)分散液を表面に適用し、粒子フィルム、好ましくは、ナノ粒子フィルムを形成する工程とを有する。
【0005】
本発明の一実施例においては、光拡散制御/グレア抑制方法は、d)好ましくは、熱又は紫外線を用いて、表面上で分散液を乾燥させ及び/又は分散液を硬化させる工程を更に有する。
【0006】
また、この乾燥工程又は硬化工程によって作成されるフィルムを、ここでは「粒子フィルム」又は「ナノ粒子フィルム」と呼ぶ。すなわち、「粒子フィルム」又は「ナノ粒子フィルム」は、工程a〜工程c又は工程a〜工程dを含む方法によって準備されたフィルムであってもよい。
【0007】
粒子は、好ましくは、ナノ粒子であり、ナノ粒子の平均直径の範囲は、1nm〜10μm、好ましくは、5nm〜900nm、より好ましくは、10nm〜500nm最も好ましくは、10nm〜300nmである。
【0008】
一実施形態においては、粒子、好ましくはナノ粒子の分散液は、1種類又は2種類以上の粒子を含み、各種類は、異なる平均直径を有する異なる種類の粒子の平均直径によって特徴付けられ、分散液は、好ましくは、10nmの平均直径を有する第1の種類のナノ粒子と、300nmの平均直径を有する第2の種類のナノ粒子とを含む。
【0009】
一実施形態においては、粒子フィルム、好ましくは、ナノ粒子フィルムの厚さは、0.2μm〜5μm、好ましくは、0.3μm〜4μmより好ましくは、1μm〜3μmさらに好ましくは、1.5μm〜2.8μm、最も好ましくは、2μm〜3μmであり、粒子フィルム、好ましくは、ナノ粒子フィルムの厚さは、1μm未満であり、好ましくは、約300nm〜約1μmの範囲内であり、好適な実施形態では、約100nmの平均直径を有するナノ粒子が用いられる。
【0010】
一実施形態においては、粒子、好ましくは、ナノ粒子の分散液の濃度は、好ましくは、1〜50wt%、好ましくは、1〜40wt%である。
【0011】
粒子、好ましくは、ナノ粒子は、TiO、SiO、CeO、Al、MnO、Feを含むグループから選択される材料から形成される。
【0012】
粒子、好ましくは、ナノ粒子の分散液は、粒子を溶解しない分散媒及び/又は紫外線硬化性ポリマ又は熱硬化性ポリマのうちの少なくとも1つのを含む。
【0013】
分散媒を用いることにより、分散液を適用した後に、乾燥によって分散液を蒸発させ、粒子/ナノ粒子フィルムのみを残すことができる。
【0014】
この分散媒は、好ましくは、水、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、ジクロロメタン、THF、2−プロパノール、メタノール、アセトン、DMF及びDMSO並びにこれらの混合物からなるグループから選択される。
【0015】
熱/紫外線硬化性ポリマを用いれば、粒子及び硬化されていないポリマを含む分散液を表面に適用し、この後に硬化工程を行うことによって、硬化されたポリママトリクス及びこのマトリクスに埋め込まれている粒子を含む粒子フィルムを作成することができる。
【0016】
一実施例においては、分散液の適用は、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、スピンキャスティング法、ラングミュア−ブロジェット法、ゾル‐ゲル法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法からなるグループから選択される手法によって行われる。
【0017】
一実施例においては、表面は、ディスプレイ装置の反射型バックプレーンを含む反射面又はディスプレイ装置の透明バックプレーンを含む透明な表面である。
【0018】
更に、本発明に係る光拡散制御/グレア抑制方法は、好ましくは、表面上に、ナノ粒子フィルムを表面に固着させ、又は表面が粒子フィルム、好ましくは、ナノ粒子フィルムと反応することを防止して、粒子フィルムの適用を容易にする更なる層を形成する工程を更に有する。
【0019】
好ましい実施形態においては、この更なる層は、ポリイミド、SiO、LiF、MgO、Al、Siからなるグループから選択される材料から形成される。
【0020】
乾燥及び/又は硬化は、好ましくは、真空又は周辺環境の空気中で行われる。熱硬化が行われる場合、その条件は、特定の選択された熱硬化性ポリマポリマに依存する。
【0021】
表面は、ガラス、ポリマ、シリコン、鉄鋼、複合材料からなるグループから選択される材料から形成され、より好ましくは、表面は、酸化インジウムースズ、フッ素がドープされた酸化スズ、SnO、ZnO、ZnSnO、ZnSnO、CdSnO、TiN、Agを含む透明材料又は銀、金、プラチナを含む金属を含む反射材料によってコーティングされる。
【0022】
一実施例においては、工程c及び工程dを複数回繰り返して、少なくとも2つ、好ましくは複数の粒子、好ましくは、ナノ粒子の層を含む粒子フィルム、好ましくは、ナノ粒子フィルムを形成する。
【0023】
一実施例においては、工程a及び工程bは、工程aに続いて工程bの順又は工程bに続いて工程aの順で行われる。
【0024】
また、上述の課題を解決するために、本発明に係るディスプレイ装置は、上述した光拡散制御/グレア抑制方法を用いて作成された粒子フィルム、好ましくは、ナノ粒子フィルムが表面に形成されたバックプレーンを備える。
【0025】
更に、上述の課題を解決するために、本発明に係る粒子フィルム、好ましくは、ナノ粒子フィルムの使用方法は、上述したディスプレイ装置の反射型バックプレーンを含む表面に適用されて、光拡散を及び表面からのグレアを制御する。
【0026】
本願発明者らは、上述した単純なナノ粒子フィルムを反射型バックプレーンに適用することによって、光拡散特性を最大化でき、このような表面からのグレアを抑制することができることを見出した。例えば、本発明により、視野角依存性を適度に抑えつつ、60%の反射率及び約6のコントラスト比を達成できた。
【0027】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を制限するものではない。更に、以下では、添付の図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
実施例1:分散液(Dispersion)の準備
(1−プロパノール及び水内に10wt%の10nmのTiO粒子を含む透明な)ペースト1と、(1−プロパノール及び水内に5wt%の300nmのTiO粒子を含み、光を散乱させる)ペースト2とを混合することによって、1〜20wt%のTiO分散液を準備した。例えば、4.75gのペースト1と、0.25gのペースト2とを混合することにより、5wt%のTiO分散液を作成した。均一な混合を行うために、分散液を1時間攪拌し、超音波槽に2時間浸漬した。続いて、分散液を更に1時間攪拌した。
【0029】
プラチナコーティングされた基板上のTiO層の作成
プラチナ(Pt)でコーティングされた基板にドクターブレード法(doctor-bladed)を用いて分散液を塗布し、均質薄膜を作成した。次に、基板を30分間450℃のホットプレートに載置し、フィルム内の1−プロパノール及び水を蒸発させた。もちろん、基板は、Ptコーティングされた基板に制限されず、コーティング及び基板は、用途に応じて選択される。基板は、いかなる透明材料(例えば、ITO、FTO等)でコーティングしてもよく、反射性材料(例えば、Ag、Au等)でコーティングしてもよい。また、基板自体に如何なる材料(例えば、ポリマ、シリコン、鉄鋼、TFT、複合体等)を用いてもよい。
【0030】
ペースト2(図1)に応じて、層の厚さは、プロフィルメータを用いることによって1.7〜2.7μmの範囲で変更される。これは、通常8〜15μmであるD−SPDLC(dichroic sponge polymer dispersed liquid crystal cell:ダイクロイックスポンジ高分子分散型液晶セル)のセルギャップサイズ内で用いることができる十分な厚さである。層の厚さは、300nmのTiO粒子の増加に伴って増加し、層は、より厚くなる程、白く見えるようになり、表面散乱の量は、層厚に伴って増加する。
【0031】
これらのTiOナノ粒子を用いるのは、このように薄い層厚で、十分な散乱を実現できるためである。もちろん、本発明は、TiOから作成されたナノ粒子に制限されるわけではない。更に、例えば、1〜3μm程度のより大きい粒子サイズで、同様の散乱層を作成してもよいが、このような、より大きい粒子の散乱効率は低いため、膜厚をより厚くする必要がある。理想的な粒径は、100nm〜800nm、好ましくは、300nm及び800nmの範囲内であり、これは、可視光の波長に相当する。
【0032】
実施例2:TiOコーティングされたPt基板の反射率の測定
LCD評価システム「Photal、大塚電子株式会社LCD−700(Photal Otsuka Electronics LCD-700)」を用いて、TiOコーティングされたPt基板の反射率を測定した。検出器を0°(面法線)に設定し、平行な白色入射光を15°から70°に移動させた。拡散白色標準板(diffusing White standard)(ラブスフェア社(Labsphere)SRS99−020)を用いて100%の正規化を行った。
【0033】
図2に示す結果は、TiOペースト2の濃度に応じて、反射率プロファイルを変化させることができることを示している。各数値は、TiOペーストのwt%を表している。図2のPLDCは、TiO以外の手法で散乱を制御するために、通常のバックプレーン(BP)上に形成された高分子分散型液晶を表す。但し、このような高分子分散型液晶フィルムは、厚くなる傾向があり、バックプレーンとして用いるには不向きである。TiOコーティングされたPt基板の反射率は、30°以上で、通常のバックプレーンより高くなっていることがわかる。これは、TiOコーティングされた基板では、視野角依存性(視野角による突然の輝度変化)が抑制されていることを意味している。
【0034】
実施例3:TFTバックプレーン上のTiO層の作成
同じTiO分散液をドクターブレード法により、TFTバックプレーン上に塗布し、バックプレーンの拡散率を高めた。図3〜図5に示すように、TiO分散液は、高い加工温度でTFTバックプレーンと反応する。ここで、TiO濃度が低い場合、TiOに損傷を与えることなく温度を高めることができる。この実施例では、1wt%未満の濃度では、減成反応は全く起こらなかった。但し、この場合、真空下の室温で1−プロパノール及び水を蒸発させることが望ましい。図3〜図5に示すTFTバックプレーンは、バックプレーン及びTiO層の間のブロック層として機能するポリイミド配向膜を有する。ポリイミド層は、必ずしも設ける必要はないが、ポリイミド層を設けることにより、減成反応を抑制できることが、80℃の真空オーブンで乾燥された4wt%のTiO分散液によって確認された。
【0035】
図5は、真空の室温で乾燥されたTiO層が、45°視野角においても、バックプレーン単独の場合より白く留まっていることを示している。これは、改善されたバックプレーンを有するTFTディスプレイは、通常のバックプレーンと比べて、明度及びコントラスト比に対する視野角依存性が低いことを示している。更に、通常のバックプレーンにおいて観察される金属製の鏡のようなグレアが、TiO層の追加によって抑制できることもわかる。
【0036】
本発明の主な利点は、突起自体を変更する必要なく、バックプレーンの拡散特性を変更及び/又は制御することができる点である。またTiO粒子によって作成された拡散層は、十分薄く、これにより、液晶素子の駆動電圧への層の影響は、最小化される。
【0037】
実施例4:TiOバックプレーンの準備
散乱特性の異なるTiOバックプレーンを作成するために、ドクターブレード法を用いて、ポリイミドを有するTFTバックプレーン上にTiOの複数の層を形成した。
【0038】
ドクターブレード法による様々な層の形成
設けられる層の数が増加するに従い、TiO層が剥離し始める(結合が弱まる)。これは、目視では、4番目の層から観察されるが、下記表1及び図6に示す実験結果から、このような剥離は、既に3番目の層から生じていると考えられる。
【0039】
【表1】

【0040】
ドクターブレード法による異なる高さの形成
実施例1の粒子分散液を用いた場合、理想的なTiO膜は、2〜3μmの厚さであることが見出された。但し、異なる粒子分散液を用いる場合は、厚さを変更することが有益であると考えられる。理想的には、フィルムの厚さは、できるだけ薄い方がよく、1μm未満、例えば、300nmから1μmまでの範囲であることが望ましい。
【0041】
TiO散乱層の更なるバリエーションを得るために、ドクターブレード法によって異なる厚さに形成された層について検査した。層の準備は、二度試みた。第1の層は、真空乾燥器で乾燥させ(Exp.1)、第2の層は、大気中で一晩乾燥させた(Exp.2)。
【0042】
図7に示すように、これらはいずれも、予想通り、線形の特性を示した。Exp.1では、150μmの初期膜厚以上で剥離が生じ、Exp.2では、175μmの初期膜厚以上でフレークが生じた。包括的には、浸透速度の遅さから予想されるように、Exp.2の方がTiOが安定していた。最終的な膜厚(1.5μm未満)では、フィルムからの光干渉が観察された。したがって、理想的なフィルムの膜厚は、2〜3μmであると判断された。
【0043】
実施例5:様々なTiOバックプレーンの反射率
異なる方法によって準備したTiO層の反射率プロファイルを測定した。これらのうち、真空乾燥によって準備された2.2μmのTiO層が、30°の入射光において、最も高い値を示した。
【0044】
真空乾燥によって準備されたTiO
図8は、ドクターブレード法で作成されたTiOペーストを真空乾燥した場合に、TiO層の厚さに対して反射率がどのように変化するかを示している。このグラフから、TiO層の厚さが増加するにつれて、反射率ピークが低下し、広がることがわかる。検体のうち、2.2μmの厚さの層が、30°において、最も高く、最も広い反射率値を示した。2.2μmのTiO層は、テクスチャが一定であり、フレークも生じていなかった。
【0045】
風乾によって準備されたTiO
図9は、ドクターブレード法で作成されたTiOペーストを風乾した場合に、TiO層の厚さに対して反射率がどのように変化するかを示している。このグラフから、TiO層の厚さが増加するにつれて、反射率ピークが低下し、広がることがわかる。検体のうち、2.7μmの厚さの層が、30°において、最も高く、最も広い反射率値を示した。
【0046】
これらの反射率プロファイルが真空乾燥した検体との反射率プロファイルと異なっている理由は、TiO層のパッキングのためであると考えられる。風乾された検体は、より均質であり、より厚いTiO層の膜厚においてもフレークが生じていないことが目視によって観察された。
【0047】
ドクターブレード法によって準備されたTiO
図10は、ドクターブレード法によって、積層されたTiO層を真空乾燥した場合に、TiO層の厚さに対して反射率がどのように変化するかを示している。このグラフから、TiO層の厚さが増加するにつれて、反射率ピークが低下し、広がることがわかる。検体のうち、0.7μmの厚さの層が、30°において、最も高く、最も広い反射率値を示した。但し、厚さ0.7μmの層は、干渉光を生じさせるため、好適な膜厚は、2.2μmである。7.2及び9.2μmの層では、フレークが観察された。また、この点については、拡散バックプレーンからのピークが抑制されている事実を示す反射率プロファイルからも確認することができる。
【0048】
ガラス基板の反射率に対する影響
改善されたバックプレーンは、試験パネルの下に置かれるので、反射率におけるガラス基板の影響を測定した。
【0049】
図11に示すように、各バックプレーン上に2つのガラス基板を載置することにより、反射率が低下する。例えば、3.2μmのTiO層の反射率は、140%から100%に低下した。この結果は、実際のTFTデバイス(1つのガラス基板のみを有する)では、反射率値、したがって、コントラスト比は、D−SPDLCが同じ場合であっても試験パネルの値と異なることを示している。また、TFTデバイスでの散乱は、TiO−LC界面で生じるが、試験パネルでの散乱は、TiO−空気界面で生じるため、散乱プロフィルも異なると予想される。この実験は、試験パネルの試験についてのみ有効である。
【0050】
TiO層の厚さ対D−SPDLC反射率及びコントラスト比
D−SPDLC反射率及びコントラスト比に対するTiO層の厚さ影響を調べた。本発明により、特に、広い視野角及び2.2μmのTiO層でR=60%の反射率(R)値及びCR=6のコントラスト比(CR)値が実現できた。これらの結果は、本発明によって、反射型ディスプレイの性能を向上させることができることを示している。
【0051】
スポンジ高分子分散型液晶セルである3%B4 79TP−TL203セル、すなわち、異なる液晶、この具体例では、ドープされた液晶(3wt%B4(黒−4ダイ)がドープされたTL203 LC)が補充された高分子分散型液晶セル(21wt%PN393ポリマ内の79wt%TL213 LC(液晶))を真空によって準備された様々なTiO層(図12及び図13)に載置し、これらの反射率を測定した。反射率ピークは、予想通り、厚さが増加するにつれて、低下して、広がった。
【0052】
反射率の観点からは、TiO粒子の層の厚さは、約2.2μmが好適であり、この特定の設定における広いコントラスト比視野角の観点からは、この層の厚さは、約3.2μmが好適である。但し、詳細な寸法は、粒子の種類及びサイズに応じて変更してもよい。いずれの場合も、本発明に基づき、反射型バックプレーン上に粒子フィルム、特にナノ粒子フィルムを形成することにより、上述したように、反射率及びコントラスト比の値が著しく改善され、したがって、より高性能なディスプレイ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1からの300nmの平均直径を有するナノ粒子の濃度(wt%)に対するナノ粒子フィルム厚さ(μm)の関係を示す図である。
【図2】ナノ粒子の濃度(wt%)別に、TiOコーティングされたプラチナ基板の反射率対照射角度の関係を示す図である。
【図3】様々なwt%濃度で製造されたナノ粒子をTFTバックプレーンに適用した具体例を示し、上の行は、真空乾燥器で表面が乾燥されたサンプルを示し、下の行は、真空オーブンで80℃で乾燥されたサンプルを示し、左の1つは、ナノ粒子フィルムなしの基板を示す図である。
【図4】図3に示す表面を面法線に対して30°の角度で示す図である。
【図5】図3に示す表面を面法線に対して60°の角度で示す図である。
【図6】ナノ粒子フィルムの表面に適用されるナノ粒子層の数に対する、ナノ粒子フィルムの厚さの依存性を示す図である。
【図7】初期の厚さ及び乾燥条件に対する、ナノ粒子フィルムの最終的な厚さの依存性を示す図である。
【図8】入射光線角度に応じて、真空乾燥されたナノ粒子フィルムの厚さに対する反射率の依存性を示す図である(ボックス内の数は、ナノ粒子フィルムの厚さをμmで示す)。
【図9】入射光線角度に応じて、風乾されたナノ粒子フィルムの厚さに対する反射率の依存性を示す図である(ボックス内の数は、ナノ粒子フィルムの厚さをμmで示す)。
【図10】ナノ粒子フィルムの厚さに対する反射率の依存性を示す図である(ボックス内の数は、ナノ粒子フィルムの厚さをμmで示す)。
【図11】2個のガラススライドを設けた場合と設けない場合のそれぞれについて、3.2μm/2.2μmのナノ粒子フィルムを適用したバックプレーンの反射率を示す図である。
【図12】機械分野の産業標準であり、紙、織物及びプラスチック工業における視覚的基準であり、通常、95%から99%の反射率値を有し、UV−VIS−NIR(紫外−可視光線−近赤外線)スペクトルに亘ってスペクトル的にフラットである白色標準をスペクトル拡散反射率標準として、ナノ粒子フィルムの厚さに応じた反射率を示す図である。
【図13】機械分野の産業標準であり、紙、織物及びプラスチック工業における視覚的基準であり、通常、95%から99%の反射率値を有し、UV−VIS−NIR(紫外−可視光線−近赤外線)スペクトルに亘ってスペクトル的にフラットである白色標準をスペクトル拡散反射率標準として、ナノ粒子フィルムの厚さに応じたコントラスト比を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ装置のバックプレーンを含む表面における光拡散を制御し及び/又はグレアを抑制する光拡散制御/グレア抑制方法において、
a)表面を準備する工程と、
b)約1nm〜約10μmの範囲の平均直径を有する粒子の分散液を準備する工程と、
c)上記分散液を上記表面に適用し、粒子フィルムを形成する工程とを有する光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項2】
d)熱又は紫外線を用いて、上記表面上で上記分散液を乾燥させ及び/又は上記分散液を硬化させる工程を更に有する請求項1記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項3】
上記粒子は、ナノ粒子であり、該ナノ粒子の平均直径の範囲は、1nm〜10μm、好ましくは、5nm〜900nm、より好ましくは、10nm〜500nm、最も好ましくは、10nm〜300nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項4】
上記粒子又はナノ粒子の分散液は、1種類又は2種類以上の粒子を含み、各種類は、異なる平均直径を有する異なる種類の粒子の平均直径によって特徴付けられることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項5】
上記分散液は、10nmの平均直径を有する第1の種類のナノ粒子と、300nmの平均直径を有する第2の種類のナノ粒子とを含むことを特徴とする請求項4記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項6】
上記粒子フィルム又はナノ粒子フィルムの厚さは、0.2μm〜5μm、好ましくは、0.3μm〜4μmより好ましくは、1μm〜3μmさらに好ましくは、1.5μm〜2.8μm、最も好ましくは、2μm〜3μmであることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項7】
上記粒子又はナノ粒子の分散液の濃度は、好ましくは、1〜50wt%、好ましくは、1〜40wt%であることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項8】
上記粒子又はナノ粒子は、TiO、SiO、CeO、Al、MnO、Feを含むグループから選択される材料から形成されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項9】
上記粒子又はナノ粒子の分散液は、該粒子を溶解しない分散媒及び/又は紫外線硬化性ポリマ又は熱硬化性ポリマのうちの少なくとも1つのを含むことを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項10】
上記分散媒は、水、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、ジクロロメタン、THF、2−プロパノール、メタノール、アセトン、DMF及びDMSO並びにこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項9記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項11】
上記分散液の適用は、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、スピンキャスティング法、ラングミュア−ブロジェット法、ゾル−ゲル法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法からなるグループから選択される手法によって行われることを特徴とする請求項1乃至10いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項12】
上記表面は、ディスプレイ装置の反射型バックプレーンを含む反射面又はディスプレイ装置の透明バックプレーンを含む透明な表面であることを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項13】
上記表面上に、上記ナノ粒子フィルムを該表面に固着させ、又は該表面が上記粒子フィルム又はナノ粒子フィルムと反応することを防止して、上記粒子フィルムの適用を容易にする更なる層を形成する工程を更に有する請求項12記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項14】
上記更なる層は、ポリイミド、SiO、LiF、MgO、Al、Siからなるグループから選択される材料から形成されることを特徴とする請求項13記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項15】
上記乾燥及び/又は硬化は、真空又は周辺環境の空気中で行われることを特徴とする請求項1乃至14いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項16】
上記表面は、ガラス、ポリマ、シリコン、鉄鋼、複合材料からなるグループから選択される材料から形成されることを特徴とする請求項1乃至15いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項17】
上記表面は、酸化インジウムースズ(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(FTO)、SnO、ZnO、ZnSnO、ZnSnO、CdSnO、TiN、Agを含む透明材料又は銀、金、プラチナを含む金属を含む反射材料によってコーティングされることを特徴とする請求項16記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項18】
上記工程c及び工程dを複数回繰り返して、複数の粒子又はナノ粒子の層を含む粒子フィルム又はナノ粒子フィルムを形成することを特徴とする請求項2乃至17いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項19】
上記工程a及び工程bは、工程aに続いて工程bの順又は工程bに続いて工程aの順で行われることを特徴とする請求項1乃至18いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法。
【請求項20】
請求項1乃至19いずれか1項記載の光拡散制御/グレア抑制方法を用いて作成された粒子フィルム又はナノ粒子フィルムが表面に形成されたバックプレーンを備えるディスプレイ装置。
【請求項21】
請求項1乃至20いずれか1項に定義されているディスプレイ装置の反射型バックプレーンを含む表面に適用されて、光拡散を及び該表面からのグレアを制御する、請求項1乃至20いずれか1項記載の粒子フィルム、好ましくは、ナノ粒子フィルムの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−39537(P2006−39537A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−187381(P2005−187381)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(397051508)ソニー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (140)
【Fターム(参考)】