説明

光断層画像取得装置

【課題】本発明は、歯科用などの光断層画像取得装置に関するもので、界面の後方反射光の影響を低減することによって、正確な断層画像を取得することを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、プローブ1の光入出部2は、光屈折部材であるプリズム48、または、光透過性カバー体である保護カバー38の少なくとも一方を設け、これらのプリズム48、または、保護カバー38の光通過面には傾斜面を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、医療用として活用される光断層画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用として活用される光断層画像取得装置の構成は、以下のような構成となっていた。
【0003】
すなわち、光源と、この光源から出た光を分割する分割部と、この分割された一方の光を、光屈折部材、または、光透過性カバー体を設けた光入出部から測定対象に向けて照射し、その測定対象からの反射光を、前記光入出部から測定光として取り込むブローブと、前記分割部によって分割された他方の光の経路補正を行う参照鏡と、この参照鏡からの経路補正された光と、前記プローブが取り込んだ測定光と、を干渉させて干渉光を生成する干渉部と、この干渉部で生成された干渉光を演算処理して測定対象の断層画像情報を生成する断層画像用演算部と、を備えた構成となっていた(例えば、これに類似する技術は下記特許文献1に記載されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/060973号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例における課題は、正確な光断層画像が取得できないことであった。
【0006】
すなわち、上記従来の光断層画像取得装置では、測定対象の断層画像情報を取得するために、光を測定対象に向けて照射し、その測定対象からの反射光を測定光として取り込んでいたプローブを備えていたが、このプローブを測定対象に対して照射しやすいように光軸を変えるための、プリズム等の光屈折部材や、プローブの衛生面を向上させるための、光透過性のカバー体を光入出部に備えた構成となっていた。
【0007】
このようにすると、プローブの光の照射方向を変更できるので、プローブの利便性が向上し、また、光透過性のカバー体を光入出部に設けたことで、唾液等がプローブ内に入ってくるのを防止できるので、プローブの衛生面を向上することができるが、測定対象の断層画像が正確に取得できないという現象が発生した。
【0008】
本発明者は、このような測定対象の断層画像が正確に取得できない原因を鋭意検討する中で、測定対象に対する光の経路に設けられたプリズム等の光屈折部材や、光透過性のカバー体から後方に反射する微量の光が測定光に混入することが、結論として測定対象の断層画像が正確に取得できない原因であるということを見いだした。
【0009】
そこで本発明は、正確な断層画像を取得することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために本発明は、光源と、この光源から出た光を、少なくとも一方と他方に分割する分割部と、この分割された一方の光を、光入出部から測定対象に向けて照射し、その測定対象からの反射光を、この光入出部から測定光として取り込むブローブと、前記分割部によって分割された他方の光の経路補正を行う参照鏡と、この参照鏡からの経路補正された光と、前記プローブが取り込んだ測定光と、を干渉させて干渉光を生成する干渉部と、この干渉部で生成された干渉光を演算処理して測定対象の断層画像情報を生成するとともに、表示部への出力をする断層画像用演算部と、を備え、前記プローブの光入出部は、光屈折部材、または、光透過性カバー体の少なくとも一方を設け、これらの光屈折部材、または、光透過性カバー体の光通過面には傾斜面を設け、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、光源と、この光源から出た光を、少なくとも一方と他方に分割する分割部と、この分割された一方の光を、光入出部から測定対象に向けて照射し、その測定対象からの反射光を、この光入出部から測定光として取り込むブローブと、前記分割部によって分割された他方の光の経路補正を行う参照鏡と、この参照鏡からの経路補正された光と、前記プローブが取り込んだ測定光と、を干渉させて干渉光を生成する干渉部と、この干渉部で生成された干渉光を演算処理して測定対象の断層画像情報を生成するとともに、表示部への出力をする断層画像用演算部と、を備え、前記プローブの光入出部は、光屈折部材、または、光透過性カバー体の少なくとも一方を設け、これらの光屈折部材、または、光透過性カバー体の光通過面には傾斜面を設けたものであるので、正確な光断層画像を取得することができる。
【0012】
すなわち、本発明の光断層画像取得装置では、測定対象に光を照射する際に、測定対象に対する前記プローブの光入出部に設けた前記光屈折部材、または、光透過性のカバー体の光通過面の後方反射光の生じる界面に傾斜面を設けたもので、この傾斜面によって、後方反射光の光強度を低減できるので、後方反射光の光断層画像への影響を低減することが可能となるので、正確な光断層画像を取得することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の使用例を示す斜視図
【図2】その斜視図
【図3】その表示部の正面図
【図4】その分解斜視図
【図5】その分解斜視図
【図6】その主要部の分解斜視図
【図7】その電気的なブロック図
【図8】その主要部の使用時の断面図
【図9】その表示部の正面図
【図10】その干渉光の周波数スペクトラム図
【図11】その主要部の配置図
【図12】その効果を示す図
【図13】その主要部の分解斜視図
【図14】その主要部の使用時の断面図
【図15】その表示部の正面図
【図16】その干渉光の周波数スペクトラム図
【図17】その干渉光の周波数スペクトラム図
【図18】その主要部の配置図
【図19】その効果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を添付図面を用いて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における光断層画像取得装置の使用例を示す。
【0016】
図1において、1はプローブ本体で、このプローブ本体1の前方には、光入出部2が突出した状態で装着されている。
【0017】
あとで詳細に説明するが、この図1に示すように、本実施形態における光断層画像取得装置は、口腔3内に光入出部2を差し入れ、歯4のX軸方向の光断層画像をY軸方向に連続的に取得するものである。
【0018】
さて、プローブ本体1は、図2に示すように片手で保持できるようにピストル形状をしており、後端には、ケーブル5を介して制御ボックス6が接続されている。なお、ケーブル5内には、光入出力用や電気的信号用の配線が収納されている。
【0019】
また、プローブ本体1内には、図4から図6に示すごとく、測定用の近赤外光(1310ナノメートル)を平行光とするコリメータレンズ7を有し、このコリメータレンズ7からの近赤外光は、光走査部8で一軸方向に走査され、続いて、それに直交する方向に移動後、再び一軸方向に走査される、つまり、従来のブラウン管テレビにおける画像形成のための走査状態と同じ状態で走査される。
【0020】
そして、この走査された光が、波長分離プリズム9、反射ミラー10を介して図2の歯4に図4、図5のごとく照射される。この照射は、図3に示す表示部12の画像からも理解されるように、歯11のX軸方向に走査され、そのX軸方向の走査時における断層画像は、図3上方の表示部13に表示される。
【0021】
図3において、この表示部13には、下方の表示部12では、発見されなかった虫歯14が断層画像で表示されている。たとえば、虫歯14は、歯11の表面では、わずかな黒シミにしか見えなかったものが、断層画像を撮れば表示部13のごとく、下方には大きく開口した状態であることが確認でき、この時には、直ちに虫歯治療を行うことになる。つまり、早期治療が可能になるものである。
【0022】
つづいて、次の瞬間には、Y軸方向にわずかに移動した状態で、再びX軸方向の走査が行われ、この時の画像は、再び表示部13に表示される。もちろん、このようにX軸方向の走査ごとに、直ちに表示部13にその断層画像を表示させなくても、後で歯科医の手操作により、画像を1枚ずつ送りながら確認することもできる。
【0023】
さて、このような画像をつくるために、波長分離プリズム9の前方に、図5、図6に示すごとく照明用の発光素子15が配置され、この発光素子15からの光は、反射ミラー10を介して歯11に照射される。この照射により、歯から反射され、光入出力開口部10aから反射ミラー10に入射した光は、再び反射ミラー10で反射され、続いて、波長分離プリズム9、内部反射ミラー28、内部反射ミラー29を経由して、カメラ16にて画像として検出され、それが、上述した表示部12に示す画像となる。
【0024】
つまり、画像12は、現在どの歯11の断層画像を得ようとしているかということを、表示するためのものであって、この表示部12の画像を見ながら、図4および図5に示す近赤外光の走査が行われる。
【0025】
このように、図4、図5に示すように、走査された近赤外光は、波長分離プリズム9を直進し、コリメータレンズ7を通過した後、ケーブル5を介して、(図2に示すところの)制御ボックス6にもどり、ここで画像処理され、この処理後の画像が図3の表示部13に表示されている。つまり、図3は、制御ボックス6の表示部17を示している。
【0026】
ここで、制御ボックス6における画像処理について説明する。
【0027】
図7における光源18は波長掃引光源で、この光源18から出た光は分割部19で分割され、その一部がケーブル5を介して光走査部8に供給され、上述した歯4に対する上述したX軸方向とY軸方向への走査が行われるものとなる。
【0028】
また、分割部19で分割された残りの光は、参照鏡20で反射され、それが干渉部21に供給される。干渉部21では、参照用20で反射された光と、光走査部8、ケーブル5を介して戻った光とを干渉をさせて干渉光を生成する。この干渉光は、受光部22で電気信号に変換し、さらにこの電気信号をA/D変換した後に、その結果を断層画像用演算部23に供給する。
【0029】
断層画像用演算部23では、干渉光のA/D変換結果に対してFFT演算を行い、測定対象である歯4の表面形状と、その断層画像情報を取得する。
【0030】
制御部24は、観察画像用演算部25を制御し、図3に示す表示部12に観察画像をリアルタイムに表示させる。また、断層画像用演算部23は、制御部24で制御され、図3に示す表示部13の断層画像を表示させる。
【0031】
ここで、表示部13に断層画像を表示する際に、この断層画像の表示範囲についての説明をする。
【0032】
上述した分割部19から参照鏡20を経由して干渉部21までの光学経路長Xと、分割部19からプローブの光入出部2の光学経路の先端、つまり、プローブの光入出口を折り返して、干渉部までの光学経路長Y、との差が干渉光のスペクトラムとして現れることになる。ここで、光学経路X=Yとなる位置が、表示部13に表示される断層画像の表示開始位置となる。この表示開始位置については、後述の説明に用いることとする。
【0033】
本実施形態における光走査部8は、図4、図5、図6に示すガルバノミラー26により、コリメータレンズ7からの近赤外光を一軸方向(図4、図5のX方向)に走査し、前記一軸とは直交する他軸方向(図4、図5のY方向)に走査するガルバノスキャナ26、27を有する。
【0034】
図8はプローブ本体1の光入出部2が、口腔内に挿入された場合の断面構造を示した図である。上述したように、プローブ本体1の前方には光入出部2が設けられ、その先端には、光偏向部材である反射ミラー10が設けられ、さらには光透過性のカバー体である保護カバー38が光入出部2の内部を前後に分けるようにして設けられている。
【0035】
上述したように、光プローブ本体1側から入射した光は、保護カバー38を通過し、光屈折部材である反射ミラー10によって偏向され、開口部39を通って測定対象である歯4に照射される。歯4に照射された光は、反射して再び開口部39から反射ミラー10を経由して、保護カバー38を通過し、プローブ本体1側に測定光として返っていくのである。
【0036】
このプローブの開口部39と歯4の間には、上述した断層画像の表示開始位置となる点Sが設定されており、この表示開始位置の点から歯4の表面および、断層方向の画像を取得することになる。
【0037】
次に、この断層画像についての課題について説明する。
【0038】
上述したように、測定対象の歯4に光を照射する際に、この光は、プローブ本体1より保護カバー38の界面40を透過してプローブ開口部39から照射されるが、このときに、全ての光が保護カバー38の界面40を透過しないで、いくらかの光が後方反射光41として測定光に混入してプローブ本体1側に返されてしまう。
【0039】
この後方反射光41が混入した測定光は、干渉部21において参照鏡20からの参照光と干渉して干渉光が生成されるため、干渉光に後方反射光41が混入してしまうこととなる。その結果、この干渉光から得られる光断層画像は、結果として、正確な測定対象の断層画像を表示できなくなってしまうのである。
【0040】
では、後方反射光41が断層画像にどのような影響を及ぼすかについて具体的に説明をする。
【0041】
図9に歯の光断層画像を示す。表示画面42には歯の断層画像43が表示されているが、この表示画面42の上方には、上述した保護カバー38の界面40による後方反射光41の影響として、界面線44aが表示されている。
【0042】
図8に示すように、保護カバー38は、プローブの開口部39よりも後方側の光入出部2内に配置されているので、この保護カバー38の界面40による後方反射光41は、さらに後方に配置される波長分離プリズム9やコリメータレンズ7の界面と多重反射を起し、干渉部21において参照光と干渉し、その結果図9に示すように界面線44aが発生してしまう。
【0043】
この図9における表示画面42のAラインにおける干渉光の周波数スペクトラムを図10に示す。
【0044】
測定対象の歯の光断層画像は、干渉光の周波数スペクトラムを解析することにより得ることができる。干渉光の周波数スペクトラムは、その周波数の低い領域からプローブに近い箇所の情報を得ることができる。歯の表面は、この干渉光の周波数スペクトラムの第2のピーク45に相当しており、歯の深さ方向に相当するスペクトラムは、第2のピーク45より高い周波数の領域を解析することで得ることができる。
【0045】
上述した界面線44a(図9に示す)は、図10における干渉光の周波数スペクトラムの第1のピーク46aに相当する。
【0046】
この第2のピーク46aは、プローブ開口部39と歯4との位置関係によっては、歯の深さ方向に相当する周波数成分に重畳するので、フィルター等によって容易に分離することが難しい。
【0047】
以上の説明で本実施形態における、基本的な構成及び課題が理解されたところで、以下、本実施形態における特徴点について説明をする。
【0048】
図11に、本実施形態におけるプローブ本体1内と、この前方に配置した光入出部2内の光学系の配置図を示す。
【0049】
光ファイバ5より照射された光は、コリメートレンズ7、ガルバノスキャナ26、ガルバノスキャナ27、レンズ群7a、波長分離プリズム9を経由して、光入出部2内に入り、保護カバー38を透過し、反射ミラー10で屈折して、測定対象である歯11に照射される。
【0050】
ここで、保護カバー38の界面40は、照射される光の光軸47に対して、傾斜面となるように配置されている。
【0051】
このように、後方反射光の生じる界面である保護カバー38の界面40を、光の光軸47に対して傾斜面となるように配置することにより、後方反射光が光軸47と同じ経路でプローブ本体1に返る強度が低減するために、後方反射光の影響を低減できることとなり、後方反射光の光断層画像への影響を低減することが可能となるので、正確な光断層画像を取得することができる。
【0052】
さらには、光入出部2の内面を黒色系被膜等により光の乱反射を防ぐようにコーティングすることにより、後方反射光の影響を更に低減できるものとなる。
【0053】
図12に、保護カバー38の界面40の傾斜角度と、断層画像におけるノイズの影響を測定した結果を示す。
【0054】
保護カバー38の界面40の傾斜角度については、界面40を通過する光軸中心47aを中心として前後方向に保護カバー38を回転させて、界面40を光軸47に対して傾斜面となるように構成している。
【0055】
より具体的にこの傾斜面について説明すると、光軸47に垂直な面と保護カバー38の界面40のなす角度をαとした場合に、保護カバー38を前方側に傾斜させた場合を正の角度とし、保護カバー38を後方側に傾斜させた場合を負の角度としている。
【0056】
このような状態において、傾斜角度αを0.1度刻みに、+1.0度〜−1.0度の範囲内でノイズの強度を測定した結果を図12に示す。比較値として、保護カバーなしの場合のノイズ強度としては、0dBの位置となるが、図12によると、ノイズは+0.5度〜−0.5度の範囲内で現れており、この範囲を越えて傾斜面の角度を設定した場合には、ノイズ強度は減少している傾向にある。
【0057】
以上のように、本発明の実施の形態の光断層画像取得装置では、測定対象に光を照射する際に、測定対象に対するプローブの光入出部に設けた、保護カバー38などの光透過性のカバー体から後方に反射して測定光に混入する後方反射光を、これらの光透過性カバー体の光通過面に傾斜面を設けた構成にし、この結果として、後方反射光を低減できるので、正確な光断層画像を取得することができる。
【0058】
また、光断層画像取得装置の光透過性のプローブの光入出部に、保護カバーを設けたことで、唾液等がプローブ内に入ってくるのを防止できるため、プローブの衛生面を向上することができるという効果がある。
【0059】
図13に保護カバー38の構成について示す。
【0060】
保護カバー38は、防水カバーの機能も備えており、光入出部2の前方側の空間に対して、後方側を防水する構成となっている。
【0061】
このため、患者の口腔内に挿入時には、光入出部2の前方側は、開口部39から、患者の唾液等が侵入してくるために、光入出部2の前方側は着脱可能に構成されている。取り外した光入出部2の前方側2aは、洗浄され、光入出部2の後方側2bも、防水カバー付近は洗浄可能であるので、双方を洗浄した後、次の患者に対して使用可能となるのである。
【0062】
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2の光断層画像取得装置のプローブ本体1の光入出部2が、口腔内に挿入された場合の断面構造を示した図を示す。
【0063】
プローブ本体1の前方には光入出部2が設けられ、その先端には、光屈折部材であるプリズム48が設けられ、さらには光透過性のカバー体であるプリズム保護カバー49が光入出部2の先端の開口を覆うようにして設けられている。
【0064】
光プローブ本体1側から入射した光は、光屈折部材であるプリズム48によって屈折され、光透過性のカバー体であるプリズム保護カバー49を通って測定対象である歯4に照射される。歯4に照射された光は、反射して再びプリズム保護カバー49からプリズム48を経由してプローブ本体1側に測定光として返っていくのである。
【0065】
この場合に問題となるのが、測定対象の歯4に光を照射する際に、この光がプリズム48の界面50、51、または、プリズム保護カバー49の界面52を完全に通過しないで、いくらかの光が後方反射光53、54として測定光に混入してプローブ本体1側に返されてしまうことである。
【0066】
この後方反射光53が混入した測定光は、干渉部23において参照鏡22からの参照光と干渉して干渉光が生成されるため、干渉光に後方反射光53が混入してしまうこととなる。その結果、この干渉光から得られる光断層画像は、結果として、正確な測定対象の断層画像を表示できなくなってしまうのである。
【0067】
では、後方反射光53、54が断層画像にどのような影響を及ぼすかについて具体的に説明をする。
【0068】
図15に歯の光断層画像を示す。表示画面55には歯の断層画像56が表示されているが、この表示画面55の上方には、上述したプリズム48の界面50、または、プリズム保護カバー49の界面52による後方反射光53の影響として、界面線57が表示されている。
【0069】
さらに、この表示画面55には横縞のノイズ線58が重畳して表示されている。
【0070】
この表示画面55のAラインにおける干渉光の周波数スペクトラムを図1716に示す。
【0071】
測定対象の歯の光断層画像は、干渉光の周波数スペクトラムを解析することにより得ることができる。干渉光の周波数スペクトラムは、その周波数の低い領域からプローブに近い箇所の情報を得ることができる。歯の表面は、この干渉光の周波数スペクトラムの第2のピーク59に相当しており、歯の深さ方向に相当するスペクトラムは、第2のピーク59より高い周波数の領域を解析することで得ることができる。
【0072】
上述した界面線57(図15に示す)は、干渉光の周波数スペクトラムの第1のピーク60に相当する。さらには、上述したノイズ線58(図15に示す)の周波数スペクトラムは、ある周波数の高調波成分61として現れることになる。
【0073】
これらの高調波成分61は、歯の深さ方向に相当する周波数成分に重畳するので、フィルター等によって容易に分離することが難しい。
【0074】
では、これら高調波成分61がどのようにして発生するのかについて説明する。
【0075】
まず、図14におけるプリズム48の界面50からの後方反射光53が混入した干渉光は、受光部22(図7に示す)で電気信号に変換し、さらにこの電気信号をA/D変換して、FFTで周波数演算を行っているが、この後方反射光53の信号強度が強いために、受光部22(図7に示す)内のA/D変換器の入力レンジを越えてしまい、後方反射光53の電気信号波形が飽和した矩形波となって取り込まれてしまう。
【0076】
この結果、後方反射光53が正しい周波数で演算できなくなるので、その演算結果を表示するとノイズ線57が発生してしまう。
【0077】
つまり、ノイズ線58に対応した高調波成分61が発生する原因は、プリズム48の界面50、または、プリズム保護カバー49の界面52からの後方反射光53の信号強度が大きいために発生してしまうのである。
【0078】
さらに、プリズム48の界面50、51の影響を説明するために、図17に、プローブ単体での干渉光のスペクトラムを示す。
【0079】
図17の干渉光のスペクトラムにおける第1のピーク60は、プリズム48の界面50、あるいは、プリズム保護カバー49の界面52からの後方反射光53によるものであり、複数の高調波61は、上述したように界面50、あるいは、プリズム保護カバー49の界面52からの後方反射光53の強度が強すぎることによって発生したものである。
【0080】
また、プリズム48の界面50からの後方反射光53による影響も現れており、62の山状の周波数スペクトラムは、界面51からの後方反射光54によるものである。この周波数スペクトラム62は、測定対象の周波数帯に重畳するものであり、高調波成分61と同様に、フィルター等により分離することが困難なスペクトラムとなっている。
【0081】
では、この山状の周波数スペクトラム62がどのようにして発生するのかについて説明する。
【0082】
まず、界面51からの後方反射光54が混入した干渉光は、参照光と測定光の光路差が大きいために、A/D変換器のナイキスト周波数を超え、エイリアシングが発生する。さらに、光源18の波長掃引光源の周波数変化が時間軸に対して非線形な特性を有する場合、参照光と測定光の光路差が大きくなるにつれて、干渉光の周波数スペクトル幅が広がる。
【0083】
この結果、後方反射光54が山状の周波数スペクトラム62として発生してしまうのである。
【0084】
以上の説明で本実施形態における、基本的な構成及び課題が理解されたところで、以下、本実施形態における特徴点について説明をする。
【0085】
図18に、本実施形態におけるプローブ本体1内と、この前方に配置した光入出部2内の光学系の配置図を示す。
【0086】
ガルバノミラー26より照射された光は、レンズ群7a、波長分離ミラー9を経由して、光入出部2内に入り、プリズム48で屈折して、測定対象である歯11に照射される。
【0087】
ここで、プリズム48の界面50、51は、照射される光の光軸47に対して、傾斜面となるように配置されている。
【0088】
このように、後方反射光の生じる界面であるプリズム48の界面50、51を、光の光軸47に対して傾斜面となるように配置することにより、後方反射光が光軸47と同じ経路でプローブ本体1に返る強度が低減するために、後方反射光の影響を低減できることとなり、後方反射光の光断層画像への影響を低減することが可能となるので、正確な光断層画像を取得することができる。
【0089】
同様に、光透過性カバー体であるプリズム保護カバー49についても光の光軸47に対して傾斜面となるように配置することで、後方反射光の影響を低減できることとなり、後方反射光の光断層画像への影響を低減することが可能となる。
【0090】
さらには、光入出部2の内面を黒色系被膜等により光の乱反射を防ぐようにコーティングすることにより、後方反射光の影響を更に低減できるものとなる。
【0091】
図19に、プリズム48の界面50の傾斜角度と、断層画像におけるノイズの影響を測定した結果を示す。
【0092】
まず、図18に示す、プリズム48の界面50の傾斜角度について説明する。
【0093】
界面50を通過する光軸中心47aを中心として前後方向にプリズム48を回転させて、界面50を光軸47に対して傾斜面となるように構成している。
【0094】
より具体的にこの傾斜面について説明すると、光軸47に垂直な面とプリズム界面50のなす角度をαとした場合に、プリズム48を前方側に傾斜させた場合を正の角度とし、プリズム48を後方側に傾斜させた場合を負の角度としている。
【0095】
このような状態において、傾斜角度αを0.1度刻みに、+4.0度〜−4.0度の範囲内でノイズの強度を測定した結果を図19に示す。比較値として、プリズムなしの場合のノイズ強度は0dBの位置となるが、図19によると、ノイズは+2度〜−2度の範囲内で現れており、この範囲を越えて傾斜面の角度を設定した場合には、ノイズ強度は減少している傾向にある。
【0096】
図12に示す、実施の形態1においての傾斜面の角度とノイズ強度の関係と比較すると、実施の形態2におけるプリズム48の後方反射光のノイズの大きさはより大きくなっており、その結果、プリズム48の傾斜角度をより大きくしなければ、ノイズを低減できなくなっている。この理由としては、プリズム48が、実施の形態2の保護カバー38と比較して、被測定対象に近いため、干渉光の感度が高い場所に配置されているので、ノイズ低減のために、より大きく傾斜面の傾斜角度を付ける必要が生じるのである。
【0097】
また、本発明の実施の形態においては、プリズム48の配置角度を変更することで、プリズム界面50を光軸47に対して傾斜させているが、プリズム48の配置角度を変更することで、プリズムの反射面63の光軸47に対する角度も変わるため、測定対象の光の照射位置、すなわち測定ポイントが変わってしまうのであるが、本発明の実施の形態の光断層画像取得装置は、測定ポイントを目視可能となるようにカメラ内部に配置しており、このカメラの光軸は、測定光の光軸と同軸になるように設計しているので、実際の測定ポイントと、カメラが指し示す測定ポイントがずれることはない。
【0098】
よってカメラを用いて目視で測定ポイントを確認すれば、測定対象の測定ポイントがずれることはないのである。
【0099】
プローブ単体での干渉光を測定する方法としては、例えば、図1において制御ボックス6の上面に設けたプローブ設置部64に置いた状態で、干渉光を測定することにより、プローブ単体での測定が可能となる。
【0100】
以上のように、本発明の実施の形態の光断層画像取得装置では、測定対象に光を照射する際に、測定対象に対するプローブの光入出部に設けたプリズム48等の光屈折部材や、プリズム保護カバー49などの光透過性のカバー体から後方に反射して測定光に混入する後方反射光50、51を、これらの光屈折部材、または、光透過性カバー体の光通過面に傾斜面を設けた構成にし、この結果として、後方反射光を低減できるので、正確な光断層画像を取得することができる。
【0101】
また、光断層画像取得装置にプリズムや、保護カバーを使用できることにより、プローブの光の照射方向を変更が可能となるため、歯の奥側などをプローブで測定しやすくなるので、プローブの利便性が向上し、また、光透過性の保護カバーをプローブの光入出部に設けたことで、唾液等がプローブ内に入ってくるのを防止できるため、プローブの衛生面を向上することができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように本発明は、光源と、この光源から出た光を、少なくとも一方と他方に分割する分割部と、この分割された一方の光を、光入出部から測定対象に向けて照射し、その測定対象からの反射光を、この光入出部から測定光として取り込むブローブと、前記分割部によって分割された他方の光の経路補正を行う参照鏡と、この参照鏡からの経路補正された光と、前記プローブが取り込んだ測定光と、を干渉させて干渉光を生成する干渉部と、この干渉部で生成された干渉光を演算処理して測定対象の断層画像情報を生成するとともに、表示部への出力をする断層画像用演算部と、を備え、前記プローブの光入出部は、光屈折部材、または、光透過性カバー体の少なくとも一方を設け、これらの光屈折部材、または、光透過性カバー体の光通過面には傾斜面を設けたものであるので、正確な光断層画像を取得することができる。
【0103】
すなわち、本発明の光断層画像取得装置では、測定対象に光を照射する際に、測定対象に対する前記プローブの光入出部に設けた前記光屈折部材、または、光透過性のカバー体の光通過面の後方反射光の生じる界面に傾斜面を設けたもので、この傾斜面によって、後方反射光の光強度を低減できるので、後方反射光の光断層画像への影響を低減することが可能となるので、正確な光断層画像を取得することができるのである。
【0104】
したがって、たとえば、歯科用光断層画像取得装置として、広く活用が期待されるものである。
【符号の説明】
【0105】
1 プローブ本体
2 光入出部
3 口腔
4 歯
5 ケーブル
6 制御ボックス
7 コリメータレンズ
8 光走査部
9 波長分離プリズム
10 反射ミラー
11 歯
12 表示部
13 表示部
14 虫歯
15 発光素子
16 カメラ
17 表示部
18 光源
19 分割部
20 参照鏡
21 干渉部
22 受光部
23 断層画像用演算部
24 制御部
25 観察画像用演算部
26 ガルバノスキャナ
27 ガルバノスキャナ
28 内部反射ミラー
29 内部反射ミラー
30 光入出力部マウントスクリュー
38 保護カバー
39 開口部
40 保護カバーの界面
41 後方反射光
42 表示画面
43 歯の断層画像
44a 界面線
44b ノイズ線
45 第2のピーク
46a 第1のピーク
47 光軸
48 プリズム
49 プリズム保護カバー
50、51、52 界面
53、54 後方反射光
55 表示画面
56 歯の断層画像
57 界面線
58 ノイズ線
59 第2のピーク
60 第1のピーク
61 高調波成分
62 山状の周波数スペクトラム
63 プリズムの反射面
64 プローブ設置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、この光源から出た光を、少なくとも一方と他方に分割する分割部と、この分割された一方の光を、光入出部から測定対象に向けて照射し、その測定対象からの反射光を、この光入出部から測定光として取り込むブローブと、前記分割部によって分割された他方の光の経路補正を行う参照鏡と、この参照鏡からの経路補正された光と、前記プローブが取り込んだ測定光と、を干渉させて干渉光を生成する干渉部と、この干渉部で生成された干渉光を演算処理して測定対象の断層画像情報を生成するとともに、表示部への出力をする断層画像用演算部と、を備え、
前記プローブの光入出部は、光屈折部材、または、光透過性カバー体の少なくとも一方を設け、これらの光屈折部材、または、光透過性カバー体の光通過面には傾斜面を設けた光断層画像取得装置。
【請求項2】
前記断層画像用演算部が断層画像情報を出力する表示部を備えた請求項1に記載の光断層画像取得装置。
【請求項3】
前記光屈折部材、または、光透過性カバー体の光通過面に設けた傾斜面の、前記光源からの光軸に垂直な面とのなす角度を、実質的に±0.5度とした請求項1または2に記載の光断層画像取得装置。
【請求項4】
前記光屈折部材は、プリズムとした請求項1から3のいずれか一つに記載の光断層画像取得装置。
【請求項5】
前記光透過性カバー体は、保護カバーとした請求項1から4のいずれか一つに記載の光断層画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−24551(P2012−24551A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272196(P2010−272196)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】