光源モジュール
【課題】光源モジュールの寿命を長くし、信頼性を高めること。
【解決手段】1つ又は複数の半導体レーザ素子41と、光を入射端から入射し、出射端から出射するテーパファイバ15と、半導体レーザ素子41から出射された光を集光し、テーパファイバ15の入射端面に結合させる結合レンズ44とを備える光源モジュール40において、テーパファイバ15の入射端のコア断面積が出射端のコア断面積より大きいものであること。
【解決手段】1つ又は複数の半導体レーザ素子41と、光を入射端から入射し、出射端から出射するテーパファイバ15と、半導体レーザ素子41から出射された光を集光し、テーパファイバ15の入射端面に結合させる結合レンズ44とを備える光源モジュール40において、テーパファイバ15の入射端のコア断面積が出射端のコア断面積より大きいものであること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源と、光導波路と、光源から出射した光を光導波路の一端側に結合させる入射光学系とを備えた光源モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を光ファイバの入射端面に結合させる入射光学系とを備えた光源モジュールが光通信部品として一般的に知られている。光源モジュール内部においては、半導体レーザ素子と光ファイバの入射端面とが光学的に結合された状態をマイクロメートルオーダで安定に維持するために、光ファイバ及び入射光学系等は、ハンダ又は接着剤等の接着手段を用いて固定されている。
【0003】
このような光学モジュールは、一般的に、外気の湿気等によるレーザ劣化を防ぐために、光源モジュールの入ったパッケージを気密封止する。例えば、CANパッケージに代表される構造は、半導体レーザ素子及びレーザ端面を保護する封止構造として代表的である。このような光源モジュールにおいて、気密封止されたパッケージ内に残存する汚染物質が半導体レーザ素子の出射端面、入射光学系及び光ファイバ等の光学部品に付着して、レーザ特性を劣化させるという問題があった。特に、光密度の高い部分において汚染物質が多く付着する(集塵効果)。更に、350〜500[nm](400[nm]帯)の波長のレーザ光を出射するGaN系半導体レーザ素子等のを備えた光源モジュールにおいては、光子エネルギーが高く、物質との光化学反応が起こりやすいため、集塵効果がより顕著に現れる。
【0004】
汚染物質の1つとしては、製造工程の雰囲気中から混入される炭化水素化合物等が挙げられ、この炭化水素化合物にレーザ光で重合或いは分解された分解物が付着し、光出力の向上を妨げることが知られている。
【0005】
そこで特許文献1には、光ファイバの入射端面の汚染を抑制するために、レーザ光に活性な酸化チタン薄膜や窒素をドープした酸化チタン薄膜の光触媒で光ファイバの入射端面をコートする技術が開示されている。また、特許文献2には、ガラスブロック等の透明体を入射端面に密着させて入射端面を保護する技術が開示されている。更に、特許文献3には、パッケージの窓の外側に光ファイバの入射端面を密着させることにより、汚染物質の付着を抑制する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−179595号公報
【特許文献2】特開2004−253783号公報
【特許文献3】特開2004−252425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、半導体レーザ素子や光ファイバ等の精密光学部品は、汚染物質から守るためにパッケージを気密封止する。しかし形状が様々な光学系を気密封止するパッケージは汎用性がなく特注となるため、数千円〜数万円のコストがかかり、光源モジュールのコストアップの問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コストを抑えて汚染物質の付着を抑制し、高い信頼性を有する光源モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、1つ又は複数の光源と、光を入射端から入射し、出射端から出射する第1光導波路と、光源から出射された光を集光し、第1光導波路の入射端面に結合させる入射光学系とを備える光源モジュールにおいて、第1光導波路の入射端のコア断面積が出射端のコア断面積より大きいものであることとする。
【0009】
ここで、第1光導波路は光ファイバであってもよい。「第1光導波路の入射端のコア断面積が出射端のコア断面積より大きいもの」として、例えばテーパ状の光導波路とすることが好ましい。
【0010】
また、第1光導波路の出射端側に、導波方向にコア断面積が一定である第2光導波路が融着もしくは接触されているものであることとしてもよい。更に、第2光導波路が光ファイバであることとしてもよい。ここで、第1光導波路の出射端側に融着又は接触される第2光導波路の第1光導波路側の端面のコア径は、第1光導波路の出射端面のコア径より大きいことが好ましい。
【0011】
そして、光源が1つ又は複数の半導体レーザ素子より発せられたレーザ光を出射するものであり、該レーザ光の発振波長が350[nm]〜450[nm]であることとしてもよい。ここで、第1光導波路の入射端面に入射されるレーザ光のパワー密度は、0.08[mW/μm2]以下であることが好ましい。
【0012】
また、光源が1つのシングルモードキャビティ半導体レーザ素子、アレイ状に並べられたシングルキャビティ半導体レーザ素子、1つのマルチキャビティ半導体レーザ素子、アレイ状に並べられた複数のマルチキャビティ半導体レーザ素子、及びシングルキャビティ半導体レーザ素子とマルチキャビティ半導体レーザ素子の組み合わせのうち何れか1つであることとしてもよい。
【0013】
尚、シングルキャビティ半導体レーザ素子とは、横モードがシングルモードの半導体レーザ素子であり、マルチキャビティ半導体レーザ素子とは、横モードがマルチモードの半導体レーザ素子である。「アレイ状に並べられた」とは、例えば、個々の半導体レーザ素子のチップを個別に並べたもの、又は同一基板に発光点が2以上あるものを言う。
【0014】
また、第1光導波路の入射端に入射される光の入射端面における光の直径をDbeam、該光の前記第1光導波路の入射端側における開口数をNAbeam、第1光導波路の入射端のコアの直径又は長辺側の長さをDin、前記第1光導波路の入射端のコアの開口数をNAin、第1光導波路の出射端のコアの直径又は長辺側の長さをDout、前記第1光導波路の入射端のコアの開口数をNAoutとしたとき、
Din×NAin=Dout×NAout
であって、
Dbeam<Din 且つ NAbeam<NAin
を満足することとしてもよい。
【0015】
尚、第1光導波路の入射端、出射端のコアの断面が円筒形である場合はDin、Doutをコアの直径とし、矩形状である場合はDin、Doutをコアの長辺側の長さとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本実施の形態の光源モジュールについて、図を参考にして説明する。
【0017】
1.テーパファイバの作り方
まずテーパファイバ(第1導波路)の作製方法を説明する。
【0018】
1−1 ガスバーナーで加熱して作製する方法
最初にコア径200[μm]、クラッド径400[μm]の石英ファイバ11の所定部分を例えばガスバーナー12で石英の融点前後まで加熱する(図1(a))。次に加熱部分が軟化した直後に石英ファイバ11の一端側方向及び他端側方向(矢印X方向)に均一の力で延伸する(図1(b))。これにより、一端側端面13a及び他端側端面13bのコア径が200[μm]、クラッド径が400[μm]、例えば加熱部分14のコア径が50[μm]、クラッド径が100[μm]となる。そして光ファイバ11の所望のコア径及びクラッド径の位置において切断することにより(図1(c);例えば切断位置Y)、一端側端面13aのコア径が他端側端面14のコア径より大きいテーパファイバ15が出来上がる(図1(d))。尚、コア径及びクラッド径の数値は上述の数値に限定されるものではない。
【0019】
1−2 熱処理によって作製する方法
図2に示すように、石英ガラスチューブ24に石英ファイバ21が挿入され、アルミナ断熱ブロック22によって断熱されたSiCヒータ23上に石英ガラスチューブ24及び石英ファイバ21を設置する。そしてSiCヒータ23によって石英ファイバ21の熱処理を行う。石英ガラスチューブ24の中にはN2ガスが充填されている。熱処理は1200〜1300℃程度、30〜50時間程度行う。この熱処理により、石英ファイバ21のコアにドーパントされているGeO2が石英ファイバ21のコア径を広げる方向に拡散する。熱処理後、石英ファイバ21の所望のコア径及びクラッド径の位置において切断する。これにより、図3のようなテーパファイバ25が出来上がる。このようなテーパファイバ25は、ファイバ外形は熱処理前の石英ファイバ21と変わらないため、「1−1 ガスバーナーで加熱して作製する方法」において作製されたテーパファイバ15に比べて取り扱いが容易である。また、石英ファイバ21の外側を保護シートで覆うことも簡単にできる。
【0020】
1−3 CVD法を用いて作製する方法
図4(a)に示すように、石英基板又はSi基板31上に熱処理によってSiO2膜を形成する。またはSi基板31上にCVD法でSiO2膜32を成膜する。次にSiO2膜32上にテーパ状のレジストマスク33を形成し(図4(b))、更にCVD法でSiO2GeO2膜34を堆積させる(図4(c))。そしてリフトオフによってレジストマスク33とレジストマスク33上に堆積したSiO2GeO2膜34を除去し(図4(d))、残ったSiO2GeO2膜34の上方までSiO2膜35をCVD法で成長させる(図4(e))。これにより図5で示すようなテーパ状の光導波路36が完成する。
【0021】
1−4 テーパファイバの特徴
上記1−1〜1−3において、テーパファイバの作製方法を説明したが、後述する光源から出射されたビーム光のテーパファイバの入射端面における直径及びテーパファイバの入射端側におけるビーム光の開口数、テーパファイバの入射端及び出射端のコア径及び開口数の関係を、
Din×NAin=Dout×NAout ・・・(1)
であって、
Dbeam<Din 且つ NAbeam<NAin ・・・(2)
(但し、Dinはテーパファイバの入射端のコアの直径又は長辺側の長さ、NAinはテーパファイバの入射端のコアの開口数、Doutはテーパファイバの出射端のコアの直径又は長辺側の長さ、NAoutはテーパファイバの出射端のコアの開口数、Dbeamはテーパファイバの入射端に入射されるビーム光の入射端面における直径、NAbeamはテーパファイバの入射端側におけるビーム光の開口数)
と規定することで、入射端におけるビーム光の結合効率が上げることができる。図13にテーパファイバと各変数の関係を示す。図13(a)は図1で示したテーパファイバ15について示したものであり、図13(b)はテーパファイバ15の入射端面13aにおけるコア130のコア径Din及びコア130に入射されるビーム光(領域131の部分)の直径Dbeamを示したものである。尚、図5に示すテーパファイバ36のように、入射端及び出射端のコアの形状が矩形である場合は、Dinを入射端のコアの長辺側の長さ、Doutを出射端のコアの長辺側の長さとする。
【0022】
上記式(1)及び式(2)を満足するように項目を規定することによって、テーパファイバにおけるレーザ光の伝播ロスが減少し、光利用効率の高いテーパファイバとすることができる。更に、ビーム光の入射光量を低減することができるため、テーパファイバの入射端の汚染も減り、テーパファイバ及びテーパファイバを備える光源モジュールを寿命を長くすることができる。
【0023】
2.光源モジュール
次に「1−1 ガスバーナーで加熱して作製する方法」に基づいて作製されたテーパファイバ15を用いた光源モジュール40について図6を用いて説明する。図6に示すように光源モジュール40は、半導体レーザ素子41と、半導体レーザ素子41から射出されて窓43を通過したビーム光を集光してテーパファイバ15の入射端面に結合させる集光レンズ44(入射光学系)と、集光レンズ44によって結合されたビーム光を入射するテーパファイバ15と、テーパファイバ15の出射端側に融着又は接触された導波方向にコア断面積が一定である光ファイバ45(第2光導波路)とが順に配設されている。ここで、テーパファイバ15の出射端側に融着又は接触される光ファイバ45のテーパファイバ15側の端面のコア径は、損失を防ぐためにテーパファイバ15の出射端面のコア径以上であることが好ましい。また、半導体レーザ素子41は、CANタイプの安価なパッケージ42で気密封止され、半導体レーザ素子41を大気による汚染から保護する構造となっている。
【0024】
図7は、光源モジュール40の概略形状を示す平面図である。本実施の形態による光源モジュール40は、銅または銅合金からなるヒートブロック(放熱ブロック)74上に配列固定された一例として8個のGaN系半導体レーザ素子LD1〜8(図6における半導体レーザ素子40に相当)と、コリメータレンズアレイ72と、集光レンズ44とを備え、集光レンズ44によって集光されたビーム光をテーパファイバ15が入射可能なように構成されている。
【0025】
尚、図7は本実施の形態の光源モジュール40の基本構成を示すものであり、コリメータレンズアレイ72および集光レンズ44の形状は概略的に示してある。また図の煩雑化を避けるため、GaN系半導体レーザ素子LD1〜8のうち両端に配されている素子LD1およびLD8にのみ符号を付し、またレーザ光B1〜B8のうちB1およびB8にのみ符号を付してある。尚、GaN系半導体レーザ素子LD1〜8は、例えばAlNからなるサブマウント上に固設されたものをヒートブロック74に取り付けてもよい。
【0026】
これらのGaN系半導体レーザ素子LD1〜8から発散光状態で出射したレーザ光B1〜8は、それぞれコリメータレンズアレイ72によって平行光化される。
【0027】
平行光とされたレーザ光B1〜8は、集光レンズ44によって集光される。テーパファイバ15はフェルール46に挿入されており、テーパファイバ15の光入射端がレーザ光収束位置に一致するように、フェルール46ごと配置される。本例ではコリメータレンズアレイ72よび集光レンズ44によって集光光学系が構成され、それとテーパファイバ15とによって合波光学系が構成されている。即ち、集光レンズ44によって集光されたレーザ光B1〜8はテーパファイバ15のコアに入射してテーパファイバ15内を伝搬し、更にテーパファイバ15の出射端側に融着又は接触された光ファイバ45内を伝播して光ファイバ45の出射端面から出射する。また、GaN系半導体レーザ素子LD1〜8には、配線48を介して駆動電流が供給される。
【0028】
図8に示すように、光ファイバ45は外形125[μm]程度、コア径50[μm]程度のものを用い、光ファイバ45は内径が125[μm]より大きいジルコニア等のフェルール51に挿入され、接着剤等で固定される。フェルール51の内径と外形は精密に加工されており、1[μm]以下の高精度で加工されている。またフェルール51の外形に対して光ファイバ45の偏芯量は1[μm]以下と高精度に加工されている。このような構造は光ファイバとして一般的に使用されており、信頼性は非常に高い。
【0029】
また、光源モジュール40において、半導体レーザ素子41はCANタイプのパッケージ42によって気密封止されているが、テーパファイバ15及び光ファイバ45は気密封止されていない。光ファイバの出力端が気密封止されていないときの特性について図9及び図10を用いて説明する。一般的な実験室、室内の環境で、波長390〜410[nm]、LDパワー50〜100[mW]の推定寿命1万時間以上のGaN系の半導体レーザを、ビーム径が20×40[μm]の楕円形状となるようにビーム成形し、コア径50〜100[μm]で外形が125[μm]の光ファイバの入射端面に入射した。このときの通電時間(入射時間)と光出力の関係を図9に示す。半導体レーザ素子の駆動電流を一定にして光ファイバの入射端面に長時間入射すると、4000〜5000時間で透過率が入射直後の50〜60%となった。
【0030】
この時の光ファイバの入射端面を観測すると、図10に示すように入射端面のコアの表面に堆積物が付着していた。61は光ファイバであり、62は光ファイバ61の入射端面に付着した堆積物である。この堆積物62を金属顕微鏡で観測すると、色が変化して見え、中央から周囲に向かって楕円の縞模様が見られた。更に堆積物62をAFM(原子間力顕微鏡)又はSEM(走査型電子顕微鏡)で観測すると、ビームの中心付近が高く盛り上がるように見られた。この観測された堆積物62においては、ビーム光の光パワー密度の最も高い位置に相当する位置の厚さが最大であった。これより、堆積物62の厚さは光パワー密度に依存することが言える。また具体的には、AFMの観測による堆積物62の厚さは数百〜数千[nm]であり、堆積物62をESCA(X線光電子分光)分析によって観測すると、Si系の有機化合物であることが分かった。
【0031】
更に、従来から用いられてきた光源モジュールと本実施の形態の光源モジュール40の特性を測定した。表1は従来の光源モジュールと本実施の形態の光源モジュール40の各種測定条件と光パワー密度を示したものである。本測定で用いた半導体レーザ素子の推定寿命は2万時間以上、発振波長390[nm]〜410[nm]、出力定格200[mW]のGaN系の半導体レーザを出射開始時点で200[mW]、ACC駆動で通電させた。本実施の形態の光源モジュール40の入射端側の光パワー密度は従来の光源モジュールの約1/10程度に減少しているため、汚染物質の付着が低減され、光源モジュール40の長寿命化を実現できた。結果として、本実施の形態の光源モジュール40の寿命は従来の光源モジュールの寿命より約3倍長くなった。
【表1】
【0032】
更に、LDパワー200[mW]のレーザ光の入力ビーム径を変化させたときの、光源モジュール40の寿命を測定した。表2はそれぞれの入力ビーム径に対する光パワー密度を示している。
【表2】
【0033】
また図11は表2に示した各光パワー密度に対する光源モジュール40の寿命を示したグラフである。図12は各光パワー密度における通電時間(入射時間)に対する光出力の関係を、光ファイバの入射端面を気密封止した場合の測定データを加えて示したグラフである。ここで、光源モジュール40の寿命とは、半導体レーザ素子41の駆動電流を一定にして連続してレーザ光を出射し、テーパファイバ15の入射端面における光パワー密度が入射直後の約60%になるまでにかかった時間である。図11に示すように、光パワー密度が0.08[mW/μm2]以下の時は寿命が14000時間を超える結果となった。これより、光パワー密度が0.08[mW/μm2]以下となるようなレーザ光をテーパファイバ15に入射させることによって、光源モジュール40を長寿命化することが可能である。
【0034】
尚、半導体レーザ素子41の出射するレーザ光のビーム径が大きく、光パワー密度が低いため、光源モジュール40における入射光学系44等の他の光学系に対する汚染物質の付着による劣化は観測されなかった。
【0035】
以上、説明したように、光源モジュール40に用いる光導波路として、入射端面のコア径が出射端面のコア径より大きいテーパファイバ15を配設することによって、光パワー密度が低くなり、汚染物質の付着を低減させることができる。更にテーパファイバ15の出射端面のコア径は小さいので、高パワー密度の出射光が得られ、面積あたりの光パワーの大きい高輝度なレーザ光が得られる。更に、半導体レーザ素子41のみをパッケージによって気密封止するため、安価で高い信頼性の光源モジュールを実現できる。
【0036】
また、テーパファイバ15の出射端側に汎用品である光ファイバ45を融着又は接触することにより、コア形状の特殊なテーパファイバ15はビーム光の入射側のみに配設すればよく、自由度の高い光源モジュールの設計が可能である。
【0037】
尚、本実施の形態において記載したテーパファイバ15及び光ファイバ45のコア径及びクラッド径等は上記の数値に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ガスバーナーで加熱してテーパファイバを作製する方法を説明するための図
【図2】熱処理によってテーパファイバを作製する方法を説明するための図
【図3】熱処理によって作製されたテーパファイバの概略断面図
【図4】CVD法を用いて光導波路を作製する方法を説明するための図
【図5】CVD法を用いて作製された光導波路の斜視図
【図6】光源モジュールの概略構成図
【図7】光源モジュールの概略形状を示す平面図
【図8】光ファイバの一端側を説明するための図
【図9】気密封止されていない光ファイバの通電時間に対する光出力を示したグラフ
【図10】気密封止されていない光ファイバの入射側の断面図
【図11】各光パワー密度に対する光源モジュールの寿命を示したグラフ
【図12】各光パワー密度における通電時間に対する光出力の関係を示したグラフ
【図13】テーパファイバと各変数の関係を示した図
【符号の説明】
【0039】
15 テーパファイバ
40 光源モジュール
41 半導体レーザ素子
42 パッケージ
43 窓
44 集光レンズ
45 光ファイバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源と、光導波路と、光源から出射した光を光導波路の一端側に結合させる入射光学系とを備えた光源モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を光ファイバの入射端面に結合させる入射光学系とを備えた光源モジュールが光通信部品として一般的に知られている。光源モジュール内部においては、半導体レーザ素子と光ファイバの入射端面とが光学的に結合された状態をマイクロメートルオーダで安定に維持するために、光ファイバ及び入射光学系等は、ハンダ又は接着剤等の接着手段を用いて固定されている。
【0003】
このような光学モジュールは、一般的に、外気の湿気等によるレーザ劣化を防ぐために、光源モジュールの入ったパッケージを気密封止する。例えば、CANパッケージに代表される構造は、半導体レーザ素子及びレーザ端面を保護する封止構造として代表的である。このような光源モジュールにおいて、気密封止されたパッケージ内に残存する汚染物質が半導体レーザ素子の出射端面、入射光学系及び光ファイバ等の光学部品に付着して、レーザ特性を劣化させるという問題があった。特に、光密度の高い部分において汚染物質が多く付着する(集塵効果)。更に、350〜500[nm](400[nm]帯)の波長のレーザ光を出射するGaN系半導体レーザ素子等のを備えた光源モジュールにおいては、光子エネルギーが高く、物質との光化学反応が起こりやすいため、集塵効果がより顕著に現れる。
【0004】
汚染物質の1つとしては、製造工程の雰囲気中から混入される炭化水素化合物等が挙げられ、この炭化水素化合物にレーザ光で重合或いは分解された分解物が付着し、光出力の向上を妨げることが知られている。
【0005】
そこで特許文献1には、光ファイバの入射端面の汚染を抑制するために、レーザ光に活性な酸化チタン薄膜や窒素をドープした酸化チタン薄膜の光触媒で光ファイバの入射端面をコートする技術が開示されている。また、特許文献2には、ガラスブロック等の透明体を入射端面に密着させて入射端面を保護する技術が開示されている。更に、特許文献3には、パッケージの窓の外側に光ファイバの入射端面を密着させることにより、汚染物質の付着を抑制する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−179595号公報
【特許文献2】特開2004−253783号公報
【特許文献3】特開2004−252425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、半導体レーザ素子や光ファイバ等の精密光学部品は、汚染物質から守るためにパッケージを気密封止する。しかし形状が様々な光学系を気密封止するパッケージは汎用性がなく特注となるため、数千円〜数万円のコストがかかり、光源モジュールのコストアップの問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コストを抑えて汚染物質の付着を抑制し、高い信頼性を有する光源モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、1つ又は複数の光源と、光を入射端から入射し、出射端から出射する第1光導波路と、光源から出射された光を集光し、第1光導波路の入射端面に結合させる入射光学系とを備える光源モジュールにおいて、第1光導波路の入射端のコア断面積が出射端のコア断面積より大きいものであることとする。
【0009】
ここで、第1光導波路は光ファイバであってもよい。「第1光導波路の入射端のコア断面積が出射端のコア断面積より大きいもの」として、例えばテーパ状の光導波路とすることが好ましい。
【0010】
また、第1光導波路の出射端側に、導波方向にコア断面積が一定である第2光導波路が融着もしくは接触されているものであることとしてもよい。更に、第2光導波路が光ファイバであることとしてもよい。ここで、第1光導波路の出射端側に融着又は接触される第2光導波路の第1光導波路側の端面のコア径は、第1光導波路の出射端面のコア径より大きいことが好ましい。
【0011】
そして、光源が1つ又は複数の半導体レーザ素子より発せられたレーザ光を出射するものであり、該レーザ光の発振波長が350[nm]〜450[nm]であることとしてもよい。ここで、第1光導波路の入射端面に入射されるレーザ光のパワー密度は、0.08[mW/μm2]以下であることが好ましい。
【0012】
また、光源が1つのシングルモードキャビティ半導体レーザ素子、アレイ状に並べられたシングルキャビティ半導体レーザ素子、1つのマルチキャビティ半導体レーザ素子、アレイ状に並べられた複数のマルチキャビティ半導体レーザ素子、及びシングルキャビティ半導体レーザ素子とマルチキャビティ半導体レーザ素子の組み合わせのうち何れか1つであることとしてもよい。
【0013】
尚、シングルキャビティ半導体レーザ素子とは、横モードがシングルモードの半導体レーザ素子であり、マルチキャビティ半導体レーザ素子とは、横モードがマルチモードの半導体レーザ素子である。「アレイ状に並べられた」とは、例えば、個々の半導体レーザ素子のチップを個別に並べたもの、又は同一基板に発光点が2以上あるものを言う。
【0014】
また、第1光導波路の入射端に入射される光の入射端面における光の直径をDbeam、該光の前記第1光導波路の入射端側における開口数をNAbeam、第1光導波路の入射端のコアの直径又は長辺側の長さをDin、前記第1光導波路の入射端のコアの開口数をNAin、第1光導波路の出射端のコアの直径又は長辺側の長さをDout、前記第1光導波路の入射端のコアの開口数をNAoutとしたとき、
Din×NAin=Dout×NAout
であって、
Dbeam<Din 且つ NAbeam<NAin
を満足することとしてもよい。
【0015】
尚、第1光導波路の入射端、出射端のコアの断面が円筒形である場合はDin、Doutをコアの直径とし、矩形状である場合はDin、Doutをコアの長辺側の長さとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本実施の形態の光源モジュールについて、図を参考にして説明する。
【0017】
1.テーパファイバの作り方
まずテーパファイバ(第1導波路)の作製方法を説明する。
【0018】
1−1 ガスバーナーで加熱して作製する方法
最初にコア径200[μm]、クラッド径400[μm]の石英ファイバ11の所定部分を例えばガスバーナー12で石英の融点前後まで加熱する(図1(a))。次に加熱部分が軟化した直後に石英ファイバ11の一端側方向及び他端側方向(矢印X方向)に均一の力で延伸する(図1(b))。これにより、一端側端面13a及び他端側端面13bのコア径が200[μm]、クラッド径が400[μm]、例えば加熱部分14のコア径が50[μm]、クラッド径が100[μm]となる。そして光ファイバ11の所望のコア径及びクラッド径の位置において切断することにより(図1(c);例えば切断位置Y)、一端側端面13aのコア径が他端側端面14のコア径より大きいテーパファイバ15が出来上がる(図1(d))。尚、コア径及びクラッド径の数値は上述の数値に限定されるものではない。
【0019】
1−2 熱処理によって作製する方法
図2に示すように、石英ガラスチューブ24に石英ファイバ21が挿入され、アルミナ断熱ブロック22によって断熱されたSiCヒータ23上に石英ガラスチューブ24及び石英ファイバ21を設置する。そしてSiCヒータ23によって石英ファイバ21の熱処理を行う。石英ガラスチューブ24の中にはN2ガスが充填されている。熱処理は1200〜1300℃程度、30〜50時間程度行う。この熱処理により、石英ファイバ21のコアにドーパントされているGeO2が石英ファイバ21のコア径を広げる方向に拡散する。熱処理後、石英ファイバ21の所望のコア径及びクラッド径の位置において切断する。これにより、図3のようなテーパファイバ25が出来上がる。このようなテーパファイバ25は、ファイバ外形は熱処理前の石英ファイバ21と変わらないため、「1−1 ガスバーナーで加熱して作製する方法」において作製されたテーパファイバ15に比べて取り扱いが容易である。また、石英ファイバ21の外側を保護シートで覆うことも簡単にできる。
【0020】
1−3 CVD法を用いて作製する方法
図4(a)に示すように、石英基板又はSi基板31上に熱処理によってSiO2膜を形成する。またはSi基板31上にCVD法でSiO2膜32を成膜する。次にSiO2膜32上にテーパ状のレジストマスク33を形成し(図4(b))、更にCVD法でSiO2GeO2膜34を堆積させる(図4(c))。そしてリフトオフによってレジストマスク33とレジストマスク33上に堆積したSiO2GeO2膜34を除去し(図4(d))、残ったSiO2GeO2膜34の上方までSiO2膜35をCVD法で成長させる(図4(e))。これにより図5で示すようなテーパ状の光導波路36が完成する。
【0021】
1−4 テーパファイバの特徴
上記1−1〜1−3において、テーパファイバの作製方法を説明したが、後述する光源から出射されたビーム光のテーパファイバの入射端面における直径及びテーパファイバの入射端側におけるビーム光の開口数、テーパファイバの入射端及び出射端のコア径及び開口数の関係を、
Din×NAin=Dout×NAout ・・・(1)
であって、
Dbeam<Din 且つ NAbeam<NAin ・・・(2)
(但し、Dinはテーパファイバの入射端のコアの直径又は長辺側の長さ、NAinはテーパファイバの入射端のコアの開口数、Doutはテーパファイバの出射端のコアの直径又は長辺側の長さ、NAoutはテーパファイバの出射端のコアの開口数、Dbeamはテーパファイバの入射端に入射されるビーム光の入射端面における直径、NAbeamはテーパファイバの入射端側におけるビーム光の開口数)
と規定することで、入射端におけるビーム光の結合効率が上げることができる。図13にテーパファイバと各変数の関係を示す。図13(a)は図1で示したテーパファイバ15について示したものであり、図13(b)はテーパファイバ15の入射端面13aにおけるコア130のコア径Din及びコア130に入射されるビーム光(領域131の部分)の直径Dbeamを示したものである。尚、図5に示すテーパファイバ36のように、入射端及び出射端のコアの形状が矩形である場合は、Dinを入射端のコアの長辺側の長さ、Doutを出射端のコアの長辺側の長さとする。
【0022】
上記式(1)及び式(2)を満足するように項目を規定することによって、テーパファイバにおけるレーザ光の伝播ロスが減少し、光利用効率の高いテーパファイバとすることができる。更に、ビーム光の入射光量を低減することができるため、テーパファイバの入射端の汚染も減り、テーパファイバ及びテーパファイバを備える光源モジュールを寿命を長くすることができる。
【0023】
2.光源モジュール
次に「1−1 ガスバーナーで加熱して作製する方法」に基づいて作製されたテーパファイバ15を用いた光源モジュール40について図6を用いて説明する。図6に示すように光源モジュール40は、半導体レーザ素子41と、半導体レーザ素子41から射出されて窓43を通過したビーム光を集光してテーパファイバ15の入射端面に結合させる集光レンズ44(入射光学系)と、集光レンズ44によって結合されたビーム光を入射するテーパファイバ15と、テーパファイバ15の出射端側に融着又は接触された導波方向にコア断面積が一定である光ファイバ45(第2光導波路)とが順に配設されている。ここで、テーパファイバ15の出射端側に融着又は接触される光ファイバ45のテーパファイバ15側の端面のコア径は、損失を防ぐためにテーパファイバ15の出射端面のコア径以上であることが好ましい。また、半導体レーザ素子41は、CANタイプの安価なパッケージ42で気密封止され、半導体レーザ素子41を大気による汚染から保護する構造となっている。
【0024】
図7は、光源モジュール40の概略形状を示す平面図である。本実施の形態による光源モジュール40は、銅または銅合金からなるヒートブロック(放熱ブロック)74上に配列固定された一例として8個のGaN系半導体レーザ素子LD1〜8(図6における半導体レーザ素子40に相当)と、コリメータレンズアレイ72と、集光レンズ44とを備え、集光レンズ44によって集光されたビーム光をテーパファイバ15が入射可能なように構成されている。
【0025】
尚、図7は本実施の形態の光源モジュール40の基本構成を示すものであり、コリメータレンズアレイ72および集光レンズ44の形状は概略的に示してある。また図の煩雑化を避けるため、GaN系半導体レーザ素子LD1〜8のうち両端に配されている素子LD1およびLD8にのみ符号を付し、またレーザ光B1〜B8のうちB1およびB8にのみ符号を付してある。尚、GaN系半導体レーザ素子LD1〜8は、例えばAlNからなるサブマウント上に固設されたものをヒートブロック74に取り付けてもよい。
【0026】
これらのGaN系半導体レーザ素子LD1〜8から発散光状態で出射したレーザ光B1〜8は、それぞれコリメータレンズアレイ72によって平行光化される。
【0027】
平行光とされたレーザ光B1〜8は、集光レンズ44によって集光される。テーパファイバ15はフェルール46に挿入されており、テーパファイバ15の光入射端がレーザ光収束位置に一致するように、フェルール46ごと配置される。本例ではコリメータレンズアレイ72よび集光レンズ44によって集光光学系が構成され、それとテーパファイバ15とによって合波光学系が構成されている。即ち、集光レンズ44によって集光されたレーザ光B1〜8はテーパファイバ15のコアに入射してテーパファイバ15内を伝搬し、更にテーパファイバ15の出射端側に融着又は接触された光ファイバ45内を伝播して光ファイバ45の出射端面から出射する。また、GaN系半導体レーザ素子LD1〜8には、配線48を介して駆動電流が供給される。
【0028】
図8に示すように、光ファイバ45は外形125[μm]程度、コア径50[μm]程度のものを用い、光ファイバ45は内径が125[μm]より大きいジルコニア等のフェルール51に挿入され、接着剤等で固定される。フェルール51の内径と外形は精密に加工されており、1[μm]以下の高精度で加工されている。またフェルール51の外形に対して光ファイバ45の偏芯量は1[μm]以下と高精度に加工されている。このような構造は光ファイバとして一般的に使用されており、信頼性は非常に高い。
【0029】
また、光源モジュール40において、半導体レーザ素子41はCANタイプのパッケージ42によって気密封止されているが、テーパファイバ15及び光ファイバ45は気密封止されていない。光ファイバの出力端が気密封止されていないときの特性について図9及び図10を用いて説明する。一般的な実験室、室内の環境で、波長390〜410[nm]、LDパワー50〜100[mW]の推定寿命1万時間以上のGaN系の半導体レーザを、ビーム径が20×40[μm]の楕円形状となるようにビーム成形し、コア径50〜100[μm]で外形が125[μm]の光ファイバの入射端面に入射した。このときの通電時間(入射時間)と光出力の関係を図9に示す。半導体レーザ素子の駆動電流を一定にして光ファイバの入射端面に長時間入射すると、4000〜5000時間で透過率が入射直後の50〜60%となった。
【0030】
この時の光ファイバの入射端面を観測すると、図10に示すように入射端面のコアの表面に堆積物が付着していた。61は光ファイバであり、62は光ファイバ61の入射端面に付着した堆積物である。この堆積物62を金属顕微鏡で観測すると、色が変化して見え、中央から周囲に向かって楕円の縞模様が見られた。更に堆積物62をAFM(原子間力顕微鏡)又はSEM(走査型電子顕微鏡)で観測すると、ビームの中心付近が高く盛り上がるように見られた。この観測された堆積物62においては、ビーム光の光パワー密度の最も高い位置に相当する位置の厚さが最大であった。これより、堆積物62の厚さは光パワー密度に依存することが言える。また具体的には、AFMの観測による堆積物62の厚さは数百〜数千[nm]であり、堆積物62をESCA(X線光電子分光)分析によって観測すると、Si系の有機化合物であることが分かった。
【0031】
更に、従来から用いられてきた光源モジュールと本実施の形態の光源モジュール40の特性を測定した。表1は従来の光源モジュールと本実施の形態の光源モジュール40の各種測定条件と光パワー密度を示したものである。本測定で用いた半導体レーザ素子の推定寿命は2万時間以上、発振波長390[nm]〜410[nm]、出力定格200[mW]のGaN系の半導体レーザを出射開始時点で200[mW]、ACC駆動で通電させた。本実施の形態の光源モジュール40の入射端側の光パワー密度は従来の光源モジュールの約1/10程度に減少しているため、汚染物質の付着が低減され、光源モジュール40の長寿命化を実現できた。結果として、本実施の形態の光源モジュール40の寿命は従来の光源モジュールの寿命より約3倍長くなった。
【表1】
【0032】
更に、LDパワー200[mW]のレーザ光の入力ビーム径を変化させたときの、光源モジュール40の寿命を測定した。表2はそれぞれの入力ビーム径に対する光パワー密度を示している。
【表2】
【0033】
また図11は表2に示した各光パワー密度に対する光源モジュール40の寿命を示したグラフである。図12は各光パワー密度における通電時間(入射時間)に対する光出力の関係を、光ファイバの入射端面を気密封止した場合の測定データを加えて示したグラフである。ここで、光源モジュール40の寿命とは、半導体レーザ素子41の駆動電流を一定にして連続してレーザ光を出射し、テーパファイバ15の入射端面における光パワー密度が入射直後の約60%になるまでにかかった時間である。図11に示すように、光パワー密度が0.08[mW/μm2]以下の時は寿命が14000時間を超える結果となった。これより、光パワー密度が0.08[mW/μm2]以下となるようなレーザ光をテーパファイバ15に入射させることによって、光源モジュール40を長寿命化することが可能である。
【0034】
尚、半導体レーザ素子41の出射するレーザ光のビーム径が大きく、光パワー密度が低いため、光源モジュール40における入射光学系44等の他の光学系に対する汚染物質の付着による劣化は観測されなかった。
【0035】
以上、説明したように、光源モジュール40に用いる光導波路として、入射端面のコア径が出射端面のコア径より大きいテーパファイバ15を配設することによって、光パワー密度が低くなり、汚染物質の付着を低減させることができる。更にテーパファイバ15の出射端面のコア径は小さいので、高パワー密度の出射光が得られ、面積あたりの光パワーの大きい高輝度なレーザ光が得られる。更に、半導体レーザ素子41のみをパッケージによって気密封止するため、安価で高い信頼性の光源モジュールを実現できる。
【0036】
また、テーパファイバ15の出射端側に汎用品である光ファイバ45を融着又は接触することにより、コア形状の特殊なテーパファイバ15はビーム光の入射側のみに配設すればよく、自由度の高い光源モジュールの設計が可能である。
【0037】
尚、本実施の形態において記載したテーパファイバ15及び光ファイバ45のコア径及びクラッド径等は上記の数値に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ガスバーナーで加熱してテーパファイバを作製する方法を説明するための図
【図2】熱処理によってテーパファイバを作製する方法を説明するための図
【図3】熱処理によって作製されたテーパファイバの概略断面図
【図4】CVD法を用いて光導波路を作製する方法を説明するための図
【図5】CVD法を用いて作製された光導波路の斜視図
【図6】光源モジュールの概略構成図
【図7】光源モジュールの概略形状を示す平面図
【図8】光ファイバの一端側を説明するための図
【図9】気密封止されていない光ファイバの通電時間に対する光出力を示したグラフ
【図10】気密封止されていない光ファイバの入射側の断面図
【図11】各光パワー密度に対する光源モジュールの寿命を示したグラフ
【図12】各光パワー密度における通電時間に対する光出力の関係を示したグラフ
【図13】テーパファイバと各変数の関係を示した図
【符号の説明】
【0039】
15 テーパファイバ
40 光源モジュール
41 半導体レーザ素子
42 パッケージ
43 窓
44 集光レンズ
45 光ファイバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の光源と、
光を入射端から入射し、出射端から出射する第1光導波路と、
前記光源から出射された光を集光し、前記第1光導波路の入射端面に結合させる入射光学系とを備える光源モジュールにおいて、
前記第1光導波路の入射端のコア断面積が前記出射端のコア断面積より大きいものであることを特徴とする光源モジュール。
【請求項2】
前記第1光導波路が光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光源モジュール。
【請求項3】
前記第1光導波路の出射端側に、導波方向にコア断面積が一定である第2光導波路が融着もしくは接触されているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源モジュール。
【請求項4】
前記第2光導波路が光ファイバであることを特徴とする請求項3に記載の光源モジュール。
【請求項5】
前記光源が1つ又は複数の半導体レーザ素子より発せられたレーザ光を出射するものであり、該レーザ光の発振波長が350[nm]〜450[nm]であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の光源モジュール。
【請求項6】
前記第1光導波路の入射端面に入射されるレーザ光のパワー密度が、0.08[mW/μm2]以下であることを特徴とする請求項5に記載の光源モジュール。
【請求項7】
前記光源が1つのシングルモードキャビティ半導体レーザ素子、アレイ状に並べられたシングルキャビティ半導体レーザ素子、1つのマルチキャビティ半導体レーザ素子、アレイ状に並べられた複数のマルチキャビティ半導体レーザ素子、及びシングルキャビティ半導体レーザ素子とマルチキャビティ半導体レーザ素子の組み合わせのうち何れか1つであることを特徴とする請求項5又は6に記載の光源モジュール。
【請求項8】
前記第1光導波路の入射端に入射される光の前記入射端面における光の直径をDbeam、該光の前記第1光導波路の入射端側における開口数をNAbeam、前記第1光導波路の入射端のコアの直径又は長辺側の長さをDin、前記第1光導波路の入射端のコアの開口数をNAin、前記第1光導波路の出射端のコアの直径又は長辺側の長さをDout、前記第1光導波路の出射端のコアの開口数をNAoutとしたとき、
Din×NAin=Dout×NAout
であって、
Dbeam<Din 且つ NAbeam<NAin
を満足することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の光源モジュール。
【請求項1】
1つ又は複数の光源と、
光を入射端から入射し、出射端から出射する第1光導波路と、
前記光源から出射された光を集光し、前記第1光導波路の入射端面に結合させる入射光学系とを備える光源モジュールにおいて、
前記第1光導波路の入射端のコア断面積が前記出射端のコア断面積より大きいものであることを特徴とする光源モジュール。
【請求項2】
前記第1光導波路が光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光源モジュール。
【請求項3】
前記第1光導波路の出射端側に、導波方向にコア断面積が一定である第2光導波路が融着もしくは接触されているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源モジュール。
【請求項4】
前記第2光導波路が光ファイバであることを特徴とする請求項3に記載の光源モジュール。
【請求項5】
前記光源が1つ又は複数の半導体レーザ素子より発せられたレーザ光を出射するものであり、該レーザ光の発振波長が350[nm]〜450[nm]であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の光源モジュール。
【請求項6】
前記第1光導波路の入射端面に入射されるレーザ光のパワー密度が、0.08[mW/μm2]以下であることを特徴とする請求項5に記載の光源モジュール。
【請求項7】
前記光源が1つのシングルモードキャビティ半導体レーザ素子、アレイ状に並べられたシングルキャビティ半導体レーザ素子、1つのマルチキャビティ半導体レーザ素子、アレイ状に並べられた複数のマルチキャビティ半導体レーザ素子、及びシングルキャビティ半導体レーザ素子とマルチキャビティ半導体レーザ素子の組み合わせのうち何れか1つであることを特徴とする請求項5又は6に記載の光源モジュール。
【請求項8】
前記第1光導波路の入射端に入射される光の前記入射端面における光の直径をDbeam、該光の前記第1光導波路の入射端側における開口数をNAbeam、前記第1光導波路の入射端のコアの直径又は長辺側の長さをDin、前記第1光導波路の入射端のコアの開口数をNAin、前記第1光導波路の出射端のコアの直径又は長辺側の長さをDout、前記第1光導波路の出射端のコアの開口数をNAoutとしたとき、
Din×NAin=Dout×NAout
であって、
Dbeam<Din 且つ NAbeam<NAin
を満足することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の光源モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−309146(P2006−309146A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13815(P2006−13815)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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