説明

光源ユニット、光源装置、光走査装置、及び画像形成装置

【課題】光源を保持する光源保持部材とそれを取り付ける取付基台との接着工程で、接着剤層を硬化させる際に発生する接着剤層の硬化速度の不均一でもたらされる光源保持部材の位置ずれが生じないようにすることが可能で、且つ接着剤注入時や硬化時の接着剤層の内層部での圧力の逃場を充分に確保することが可能な光源ユニットを提供する。
【解決手段】光源ユニットは、光源(LD13で例示)と、LD13を保持する光源保持部材12と、光源保持部材12を挿入するための穴部を有し光源保持部材12を充填剤Rで取り付ける取付基台11と、を備える。光源保持部材12は、充填剤Rを注入する側に切欠部(面取部12aで例示)を有し、面取部12aと穴部とで形成される隙間に充填剤Rを注入して硬化させることで、取付基台11に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系に導いて利用するための光束を出射する光源ユニット、その光源ユニットを備えた光源装置、その光源装置を備えた光走査装置、及びその光走査装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置をはじめとする様々な機器に光源ユニットが搭載されている。光源ユニットは、例えば画像形成装置において、光走査装置内の光源装置の一部品として搭載されている。
【0003】
特許文献1には、このような光源装置の構成例が開示されている。図4は、光走査用光源装置における走査光学系の一例を示す図で、特許文献1に記載の走査光学系を示す図でもある。図4において、31は光源ユニット、32は光変調装置、33は偏向装置、34は面倒れ補正光学系、35は回転多面鏡、36はfθレンズ、SSは被走査面をそれぞれ示している。
【0004】
光源ユニット31から出射された光束は、光変調装置32において画像情報によって変調され、偏向装置33によって向きを変えられ、面倒れ補正光学系34を経由して回転多面鏡35に入射される。そして、その入射された光束は、回転多面鏡35により連続的に反射方向を変えられ、fθレンズ36で被走査面SS上に等速走査される。被走査面SSが図4の紙面に垂直方向に走査されることによって、画像情報に対応した潜像を形成することができる。このような光源装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、複合機などの画像形成装置に用いられる。また、このような光源装置は、光変調装置32を用いず、被走査面SSからの反射光を受光することで画像情報を読み取る読み取り装置として、用いることもできる。
【0005】
図5は、従来の光源ユニットの構成例を示す断面図で、図4の光源装置における光源ユニットを示す断面図である。図5において、31aは半導体レーザ(以下LDと称す)、31bはLDホルダ、31cは押さえ板、31dはリング形状の補助部材、31eは断熱部材、31fはコリメートレンズ、31gはコリメートレンズセル、31hはレンズセルホルダ、31iはコンプレッサレンズ鏡胴、31jは鏡胴ホルダ、U1は第1ユニット、U2は第2ユニットをそれぞれ示している。
【0006】
第1ユニットU1は、コリメートレンズ31fを保持するコリメートレンズセル31gがレンズセルホルダ31hの片側からねじ込まれている。レンズセルホルダ31hの他側には、断熱部材31eを介してLDホルダ31bが取り付けられている。LDホルダ31bは中央部付近に座ぐり部を有する貫通穴が開いていて、その座ぐり部に落とし込んだ補助部材31dを介してLD31aが取り付けられ、押さえ板31cで押しつけられて止められている。
【0007】
ここで、補助部材31dとLDホルダ31bの座ぐり部との取り付けは、両者の隙間が略均等になるように組み合わされた後、その隙間の部分(隙間部)に均等に充填剤を注入することでなされている。より具体的には、均等にされた隙間部に、例えば注射針のようなもので、充填剤として流動性のある接着剤を周囲の注入量が均等になるよう注入することで、補助部材31dとLDホルダ31bの座ぐり部とを固定している。流動性のある接着剤として、紫外線硬化性樹脂等の光硬化性樹脂を用いることで作業効率を上げることができる。
【0008】
また、第2ユニットU2は、コンプレッサレンズ鏡胴31iが鏡胴ホルダ31jに載せられ、図示しない保持部材で固定されている。第1ユニットU1と第2ユニットU2は、コリメートレンズセル31gの一部とレンズセルホルダ31hの一部を鏡胴ホルダ31jにはめ込むように合わせて図示しないネジ等で固定されて光源ユニット31が完成する。
【0009】
上述のように、特許文献1に記載の光源ユニットでは、LDホルダ31bで例示した取付基台へ補助部材31dで例示した光源保持部材を隙間部が均等になるように挿入させた状態で、その隙間部に接着剤を周囲の注入量が均等になるよう注入することで両者を固定している。
【0010】
隙間部に接着剤を入れた後の状態において温度変化が生じた場合の状況について、図6〜図8を参照しながら説明する。図6は、図5の光源ユニットにおける温度変化時の隙間と接着剤の関係を示す部分断面図で、図6(A)は温度上昇時の部分断面図を、図6(B)は温度下降時の部分断面図を、それぞれ示している。図6において、Rは接着剤を示している。
【0011】
まず、図6(A)を参照しながら温度が常温より上がった場合を考える。なお、図6(A)において隙間は誇張して示してある。LDホルダ31bはクロム銅等の金属製、補助部材31dはセラミック製が用いられることが多い。金属製の方がセラミック製よりも熱膨張係数が大きいので、温度上昇によって、隙間部は全体の形状が大きくなりながら隙間の幅も広がっていく。接着剤R自身も線膨張係数がかなり大きいので膨張し、しかも、接着部はともに離れることがないので、補助部材31dは周囲全体が温度上昇中常に一様な圧縮力を受ける。但し、接着剤Rは柔軟性があるため、過剰な圧力は開放されている端面方向(同図における上方向)に逃げ、実際に補助部材31dを中心方向に押す圧力はあまり大きくならない。
【0012】
次に、図6(B)を参照しながら温度が常温よりも低くなった場合を考える。図6(A)の場合とは逆に、隙間は全体の形状が小さくなりながら隙間の幅も小さくなっていく。接着剤は金属製のLDホルダ31bの収縮よりも収縮の度合いが早いが、接着部はともに離れることがないので、補助部材31dは周囲全体が温度下降中常に一様に負の圧力を受ける。実際には、接着剤の開放されている端面が下降するいわゆる引けを生じて負の圧力が軽減される。
【0013】
図7は、図5の光源ユニットの変形例における温度上昇時の隙間と接着剤の関係を示す部分断面図で、LDホルダ31bの座ぐり部の形状を変えた場合についての上記関係を示す部分断面図である。図7において、31baはLDホルダ31bの貫通穴の側面、31bbはLDホルダ31bの座ぐり部の周囲(側面)をそれぞれ示している。
【0014】
図7(A)で示す例では、LDホルダ31bの座ぐり部の周囲31bbの上側に面取り部31bcを設けてある。接着剤Rの注入は面取り部31bcに一杯にならないように控えめに注入する。こうすれば、温度上昇時の圧力によって接着材Rがはみ出したときも、面取り部31bcによって表面積が大きくなっているので、はみ出し量があまり大きくならず、従って、はみ出した接着材Rが図示しないLD押さえ板31cに接触するおそれもなくなる。また、図7(B)に示す例では、LDホルダ31bの座ぐり部の周囲31bbの底側に切込み部31bdを設けてある。切込み部31bdが或る程度の深さをもっていると、充填材を注入したとき、切込み部31bdに空気が封じ込められて充填材が奥まで入り込まなくなる。この状態で温度上昇があると、この切込み部が圧力の逃げ部の一つとなって、封じ込められた空気を圧縮しながら充填材の一部が切込み部にさらに入り込む。上面への圧力の逃げと相まって、過剰な圧縮力の解消が容易になる。
【0015】
図8は、図5の光源ユニットの他の変形例における温度上昇時の隙間と接着剤の関係を示す部分断面図で、特許文献1に記載の光源ユニットにおいて、LDホルダ31bの座ぐり部を取り除いた形状を採用した場合についての上記関係を示す部分断面図である。図8で示す例では、LDホルダ31bに相当する取付基台11には、貫通穴が設けられており、その貫通穴にLD13を保持した光源保持部材12(補助部材31dに相当)が均等な隙間をもって落とし込まれている。そして、この隙間に接着剤Rが注入されている。このような構成により、温度上昇時の圧力によって接着材Rがはみ出すときにも、LD端子14側及びその逆側の双方にはみ出すため、はみ出し量があまり大きくならず、従って、はみ出した接着材Rが図示しないLD押さえ板に接触するおそれもなくなる。
【0016】
勿論、図7(A),(B)や図8に示す例でも、図6(A),(B)について説明したように、取付後の温度変化に対して中心ずれを防ぐことはできる。このように、特許文献1に記載の光源ユニットや図8に示す光源ユニットでは、光源ユニット完成時点において取付基台とLDの中心合わせが完了しさえすれば、以後環境温度変化があったとしても両者の中心ずれを生じないようにできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−176051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、図6〜図8の構成は、接着剤充填後の温度変化の影響について考慮されているに過ぎず、紫外線を照射して接着部を硬化させる際の影響、つまり接着時の影響についてはあまり考慮されていない。
【0019】
より具体的には、図6〜図8の構成は、いずれも接着剤層の層厚(図の上下方向が接着剤層の厚みを示す)がかなり厚くなっているので、紫外線照射によって接着部の硬化を開始した場合に、紫外線が容易に到達できる接着剤層の表面部と、紫外線が到達し難い接着剤層の内部とでは接着剤の硬化速度差が発生し、硬化の状況が均一でなくなる。例えば図8の構成では矢視の方向に接着剤Rの層が移動してしまう。仮に紫外線の照射角度を変えたりしてもこの影響を除去することができない。
【0020】
さらに、図6及び図7で示すような取付基台と光源保持部材の隙間の構造は、隙間の最奥部(底部)が取付基台によって殆ど閉鎖された袋状の構造となっているため、上記隙間に接着剤を注入する際や注入して硬化させるまでに接着剤層の内層部で発生する圧力の逃場が、充分に確保されない。
【0021】
また、上述のような問題は、接着剤として紫外線硬化性樹脂をはじめとする光硬化性樹脂を用いた場合に限らず、熱硬化性樹脂を用いた場合でも、同様に硬化速度の差が外部と内部で生じ、硬化の状況が均一でなくなるため、生じ得る。
【0022】
本発明は、上述のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、光源を保持する光源保持部材とそれを取り付ける取付基台との接着工程で、接着剤層を硬化させる際に発生する接着剤層の硬化速度の不均一でもたらされる光源保持部材の位置ずれが生じないようにすることが可能で、且つ接着剤注入時や硬化時の接着剤層の内層部での圧力の逃場を充分に確保することが可能な光源ユニット、その光源ユニットを備えた光源装置、その光源装置を備えた光走査装置、及びその光走査装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、光源と、該光源を保持する光源保持部材と、該光源保持部材を挿入するための穴部を有し該光源保持部材を充填剤で取り付ける取付基台と、を備えた光源ユニットにおいて、前記光源保持部材は、前記充填剤を注入する側に切欠部を有し、該切欠部と前記穴部とで形成される隙間に前記充填剤を注入して硬化させることで、前記取付基台に取り付けられていることを特徴としたものである。
【0024】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記切欠部の表面に切込み部を設けたことを特徴としたものである。
【0025】
第3の技術手段は、光走査用の光源装置において、第1又は第2の技術手段における光源ユニットを備えたことを特徴としたものである。
【0026】
第4の技術手段は、光走査装置において、第3の技術手段における光源装置を備えたことを特徴としたものである。
【0027】
第5の技術手段は、画像形成装置において、第4の技術手段における光走査装置を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、光源ユニットの組立作業時における、光源を保持する光源保持部材とそれを取り付ける取付基台との接着工程で、接着剤層を硬化させる際に発生する接着剤層の硬化速度の不均一でもたらされる光源保持部材の位置ずれが生じないようにすることができ、且つ接着剤注入時や硬化時の接着剤層の内層部での圧力の逃場を充分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る光源ユニットの一構成例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る光源ユニットの他の構成例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る光源ユニットが搭載された画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【図4】光走査用光源装置における走査光学系の一例を示す図で、特許文献1に記載の走査光学系を示す図でもある。
【図5】従来の光源ユニットの構成例を示す断面図で、図4の光源装置における光源ユニットを示す断面図である。
【図6】図5の光源ユニットにおける温度変化時の隙間と接着剤の関係を示す部分断面図である。
【図7】図5の光源ユニットの変形例における温度上昇時の隙間と接着剤の関係を示す部分断面図である。
【図8】図5の光源ユニットの他の変形例における温度上昇時の隙間と接着剤の関係を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明に係る光源ユニットの一構成例を示す断面図である。図1(A)で例示する光源ユニットは、光源の一例としてのLD13と、LD13を保持する光源保持部材12と、取付基台11と、を備える。光源保持部材12は、LD13の端子であるLD端子14が設けられた側とは反対側でLD13を保持し、LD13と一体となる。
【0031】
取付基台11は、光源保持部材12を挿入するための穴部を有し、穴部に挿入後、光源保持部材12を充填剤(接着剤R)で取り付ける。穴部は、常温において略均等な隙間をもって光源保持部材12が挿入可能となっている。つまり、光源保持部材12は、常温において穴部に対する隙間をもって落とし込める外形を有することになる。取付基台11はクロム銅など金属で形成すればよく、光源保持部材12はセラミックで形成すればよい。
【0032】
また、取付基台11の穴部の形状と光源保持部材12の外形とは、互いが均等な隙間をもつように共に円筒形状であることが好ましいが、角柱形状であってもよい。但し、円筒形状であろうと角柱形状であろうと、穴部と光源保持部材12(及びそれに取り付けられたLD13)とは、双方の中心を一致させておく(つまり同心にしておく)必要がある。円筒形状である場合、光源保持部材12は、LD13の外形が一般的に円形であることからLD13との取付部分が円筒となるため、光源保持部材12はリング形状となる。
【0033】
そして、本発明の主たる特徴として、光源保持部材12は、接着剤Rを注入する側に切欠部を有するものとする。図1(A)の例では、この切り欠き部の一例として面取部12aを挙げている。また、接着剤Rの注入側は、LD13の端子であるLD端子14の取付側、つまり端子接続側とする。接着剤Rの注入は、主に、この面取部12aの周囲であって、面取部12aと取付基台11とで形成される隙間に行う。つまり、穴部に光源保持部材12がその隙間をもって落とし込まれて組み合わされ、面取部12aと穴部とで形成される隙間に接着剤Rを注入して硬化させることで、取付基台11と光源保持部材12とが取り付けられる。
【0034】
紫外線照射等によって硬化するタイプの接着剤を使用する場合、接着剤Rを注入した側で注入部に対して図1(A)で図示するようにやや斜目方向から紫外線を照射すればよく、接着剤Rの層が従来技術と異なり厚みを持たないので、紫外線照射によって表面層と内側層が略均一に硬化していくため、表面層と内側層での接着剤Rの硬化速度が不均一な場合に発生する光源保持部材12の所定位置からのずれが防止され、所定位置に精度よく位置決め固定される。無論、面取部12aに該当しない位置の光源保持部材12と穴部とで形成される隙間に、接着剤Rが多少、流入しても影響はあまりないが、この部分の隙間がないように形成しておいてもよい。逆に、接着剤層が厚みを持つ場合は、表面層と内側層とで硬化速度に差が発生し、光源保持部材は硬化速度の速い表面層側へ引っ張られて所定位置からずれることになり、精度が保たれない。また、自然乾燥を行う樹脂も含み、熱硬化性樹脂を採用した場合にも、同様に硬化速度が略均一になるため、所定位置に精度よく位置決め固定することができる。
【0035】
取付基台11と光源保持部材12の隙間の構造に関して、隙間の最奥部(底部)が取付基台11によって閉鎖された構造となっておらず、解放された構造となっているため、隙間に接着剤Rを充填した際や硬化した際に内層部で発生する圧力の逃場が充分に確保される。さらに、面取部12a等の切欠部は、光源保持部材12側に設けているため、設計上/製造上の変更を行うような場合でも、金型変更等の対応が容易である。逆に、切込み部を取付基台側に設けた場合、この部分がアンダーカット形状となり、金型変更を容易に行えない。
【0036】
また、接着剤Rの注入は面取部12aに一杯にならないように控目に注入することが好ましく、これにより、温度上昇時の圧力によって接着剤Rがはみ出したときも、光源保持部材12のLD端子14接続側で外周に沿って設けた面取部12aによって表面積が大きくなっているので、接着剤Rのはみ出し量があまり大きくならず、はみ出した接着剤が周辺に付着する不具合もなくなる。
【0037】
このように、本発明によれば、光源ユニットの組立作業時における、光源保持部材12と取付基台11との接着工程で、接着剤Rの層を硬化させる際に発生する接着剤層の硬化速度の不均一でもたらされる光源保持部材12の位置ずれが生じないようにすることができ、且つ接着剤注入時や硬化時の接着剤層の内層部での圧力の逃場を充分に確保できる。
【0038】
図1(B)で例示する光源ユニットは、図1(A)の光源ユニットにおいて、光源保持部材12の端子接続側の外周面に設けた面取部12aの表面に切込み部12bを設けたものである。なお、図1(B)では面取部12aの表面に設ける切込み部12bは1箇所しか示していないが、切込み部12bを面取部12aの表面に複数箇所設けてもよい。
【0039】
切込み部12bが或る程度の深さをもっていると、接着剤Rを注入したとき、切込み部12bに空気が封じ込められて接着剤Rが奥まで入り込まなくなる。この状態で温度上昇があると、この切込み部12bが圧力の逃げ部の一つとなって、封じ込められた空気を圧縮しながら接着剤Rの一部が切込み部12bにさらに入り込む。これにより、接着剤Rを注入する開放側への圧力の逃げと相まって、切込み部12bへ接着剤が吸収されることによって、過剰な圧縮力の解消が容易になる。また、これにより、接着剤Rのはみ出し量があまり大きくならず、はみ出した接着剤Rが他の部分に付着したりする不具合を防ぐことができる。また、従来技術のように切込み部を取付基台側に設けるより、光源保持部材12側の切欠部の表面に切込み部を設ける方が、設計上/製造上の変更を行うような場合でも金型変更等の対応が容易である。
【0040】
図2は、本発明に係る光源ユニットの他の構成例を示す断面図である。図2(A)に示す光源ユニットは、図1(A)の光源ユニットにおいて、面取部12aの代わりに、光源保持部材12のLD端子14接続側の外周面に段差部(段付部)12cを設けてある。これにより、図1(A)の光源ユニットと同様の効果が得られる。また、図1(A)の光源ユニットについて説明したように、接着剤Rの注入は段付部12c一杯にならないように控目に注入する。こうすれば、温度上昇時の圧力によって接着剤がはみ出したときも、段付部12cによって表面積が大きくなっているので、接着剤のはみ出し量があまり大きくならず、はみ出した接着剤が周辺に付着する不具合もなくなる。
【0041】
図2(B)に示す光源ユニットは、図1(B)の光源ユニットにおいて、面取部12aの代わりに、光源保持部材12のLD端子14接続側の外周面に段付部12cを設けてあり、この段付部12cに切込み部12dが2つ設けてある。これにより、図1(B)の光源ユニットと同様の効果が得られる。すなわち、切込み部12dが或る程度の深さをもっていると、接着剤を注入したとき、切込み部12dに空気が封じ込められて接着剤が奥まで入り込まなくなる。この状態で温度上昇があると、この切込み部12dが圧力の逃げ部の一つとなって、封じ込められた空気を圧縮しながら充填材の一部が切込み部12dにさらに入り込む。従って、図2(B)の光源ユニットでは、図2(A)の光源ユニットに比べ、接着剤を注入する開放側への圧力の逃げと相まって、過剰な圧縮力の解消が容易になる。
【0042】
図3は、本発明に係る光源ユニットが搭載された画像形成装置の一例を示す概略断面図である。図3で例示する画像形成装置100は、外部から伝達された画像データに応じて、所定のシート(記録用紙)に対して多色及び単色の画像を形成するもので、装置本体110と、自動原稿処理装置120とにより構成されている。装置本体110は、露光ユニット30、現像器52、感光体ドラム53、クリーナユニット54、帯電器55、中間転写ベルトユニット60、定着ユニット70、給紙カセット81、排紙トレイ91等を有して構成されている。
【0043】
装置本体110の上部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台92が設けられ、原稿載置台92の上側には自動原稿処理装置120が取り付けられている。自動原稿処理装置120は、原稿載置台92の上に自動で原稿を搬送する。また、自動原稿処理装置120は矢印M方向に回動自在に構成され、原稿載置台92の上を開放することにより原稿を手置きで置くことができるようになっている。
【0044】
画像形成装置100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像器52、感光体ドラム53、帯電器55、クリーナユニット54は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションが構成されている。
【0045】
帯電器55は、感光体ドラム53の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、チャージャ型の他、接触型のローラ型やブラシ型の帯電器が用いられることもある。
【0046】
露光ユニット30は、画像の書き込みを行う画像書込み装置に該当するものであり、レーザ出射部としての本発明に係る光源ユニット及び反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として、例えば図4で示した光学走査系のように構成される。
【0047】
つまり、露光ユニット30は、図4の光源ユニット31として図1及び図2で例示したような光源ユニットを備え、そこから出射されるレーザビームを画像情報によって変調する光変調装置32と、回転多面鏡(ポリゴンミラー)35と、ポリゴンミラー35によって反射されたレーザ光を感光体ドラム53に導くためのレンズ(fθレンズ36)やミラー等の光学要素が配置されている。
【0048】
このように、上述した効果をもつ光源ユニットを設けることで、光軸ずれのない光走査用の光源装置が提供でき、また、露光ユニット30のような光走査装置においてこの光源装置を備えることで、光軸ずれを防ぐことができる。また、このような光走査装置を備えることで、光軸ずれのない画像形成装置100が提供できる。
【0049】
このような構成をもつ露光ユニット30は、帯電された感光体ドラム53を入力された画像データに応じて露光することにより、その表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する。現像器52はそれぞれの感光体ドラム53上に形成された静電潜像を4色(YMCK)のトナーにより顕像化するものである。またクリーナユニット54は、現像・画像転写後における感光体ドラム53上の表面に残留したトナーを、除去・回収する。
【0050】
感光体ドラム53の上方に配置されている中間転写ベルトユニット60は、中間転写ベルト61、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、中間転写ローラ64、及び中間転写ベルトクリーニングユニット65を備えている。中間転写ローラ64は、YMCK用の各色に対応して4本設けられている。
【0051】
中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、及び中間転写ローラ64は、中間転写ベルト61を張架して回転駆動させる。また、各中間転写ローラ64は、感光体ドラム53のトナー像を、中間転写ベルト61上に転写するための転写バイアスを与える。
【0052】
中間転写ベルト61は、各感光体ドラム53に接触するように設けられている、そして、感光体ドラム53に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト61に順次的に重ねて転写することによって、中間転写ベルト61上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成する機能を有している。中間転写ベルト61は、例えば厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0053】
感光体ドラム53から中間転写ベルト61へのトナー像の転写は、中間転写ベルト61の裏側に接触している中間転写ローラ64によって行われる。中間転写ローラ64には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ64は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面が導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト61に対して均一に高電圧を印加することができる。本例では転写電極としてローラ形状を使用しているが、それ以外にブラシなども用いることが可能である。
【0054】
上述のように各感光体ドラム53上で各色相に応じて顕像化された静電像は中間転写ベルト61で積層される。このように、積層された画像情報は中間転写ベルト61の回転によって、後述の用紙と中間転写ベルト61の接触位置に配置される転写ローラ40によって用紙上に転写される。
【0055】
このとき、中間転写ベルト61と転写ローラ40は所定ニップで圧接されると共に、転写ローラ40にはトナーを用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。さらに、転写ローラ40は上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ40若しくは前記中間転写ベルト駆動ローラ62の何れか一方を硬質材料(金属等)とし、他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ、または発泡性樹脂ローラ等々)が用いられる。
【0056】
また、上述したように、感光体ドラム53に接触することにより中間転写ベルト61に付着したトナー、若しくは転写ローラ40によって用紙上に転写が行われず中間転写ベルト61上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット65によって除去・回収されるように設定されている。中間転写ベルトクリーニングユニット65には、中間転写ベルト61に接触する例えばクリーニング部材としてクリーニングブレードが備えられており、クリーニングブレードが接触する中間転写ベルト61は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ63で支持されている。
【0057】
給紙カセット81は、画像形成に使用するシート(記録用紙)を蓄積しておくためのトレイであり、装置本体110の露光ユニット30の下側に設けられている。また、手差し給紙カセット82にも画像形成に使用するシートを置くことができる。また、装置本体110の上方に設けられている排紙トレイ91は、印刷済みのシートをフェイスダウンで集積するためのトレイである。
【0058】
また、装置本体110には、給紙カセット81及び手差し給紙カセット82のシートを転写ローラ40や定着ユニット70を経由させて排紙トレイ91に送るための、略垂直形状の用紙搬送路Sが設けられている。給紙カセット81ないし手差し給紙カセット82から排紙トレイ91までの用紙搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ41a,41b、複数の搬送ローラ42a〜42d,レジストローラ43、転写ローラ40、定着ユニット70等が配されている。
【0059】
搬送ローラ42a〜42dは、シートの搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。また、ピックアップローラ41aは、給紙カセット81の端部近傍に備えられ、給紙カセット81からシートを1枚ずつピックアップして用紙搬送路Sに供給する。同様にまたピックアップローラ41bは、手差し給紙カセット82の端部近傍に備えられ、手差し給紙カセット82からシートを1枚ずつピックアップして用紙搬送路Sに供給する。
【0060】
また、レジストローラ43は、用紙搬送路Sを搬送されているシートを一旦保持するものである。そして、感光体ドラム53上のトナー像の先端とシートの先端を合わせるタイミングでシートを転写ローラ40に搬送する機能を有している。
【0061】
定着ユニット70は、ヒートローラ71及び加圧ローラ72を備えており、ヒートローラ71及び加圧ローラ72は、シートを挟んで回転するようになっている。また、ヒートローラ71は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部によって所定の定着温度となるように設定されており、加圧ローラ72とともにトナーをシートに熱圧着することにより、シートに転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、シートに対して熱定着させる機能を有している。また、ヒートローラ71を外部から加熱するための外部加熱ベルト73が設けられている。
【0062】
次に、シート搬送経路について説明する。上述のように、画像形成装置100には予めシートを収納する給紙カセット81、及び手差し給紙カセット82が設けられている。これら給紙カセット81,82からシートを給紙するために、各々ピックアップローラ41a,41bが配置され、シートを1枚ずつ用紙搬送路Sに導くようになっている。
【0063】
各給紙カセット81,82から搬送されるシートは用紙搬送路Sの搬送ローラ42aによってレジストローラ43まで搬送され、シートの先端と中間転写ベルト61上の画像情報の先端を整合するタイミングで転写ローラ40に搬送され、シート上に画像情報が書き込まれる。その後、シートは定着ユニット70を通過することによってシート上の未定着トナーが熱で溶融・固着され、その後に配された搬送ローラ42bを経て排紙トレイ91上に排出される。
【0064】
上記の搬送経路は、シートに対する片面印字要求のときのものであるが、これに対して両面印字要求の時は、上記のように片面印字が終了し定着ユニット70を通過したシートの後端が最終の搬送ローラ42bで把持されたときに、搬送ローラ42bが逆回転することによってシートを搬送ローラ42c,42dに導く。そして、その後レジストローラ43を経てシート裏面に印字が行われた後にシートが排紙トレイ91に排出される。
【符号の説明】
【0065】
11…取付基台、12…光源保持部材、12a…面取部、12b,12d…切込み部、12c…段付部、13…LD、14…LD端子、30…露光ユニット、100…画像形成装置、110…装置本体、120…自動原稿処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源を保持する光源保持部材と、該光源保持部材を挿入するための穴部を有し該光源保持部材を充填剤で取り付ける取付基台と、を備えた光源ユニットにおいて、前記光源保持部材は、前記充填剤を注入する側に切欠部を有し、該切欠部と前記穴部とで形成される隙間に前記充填剤を注入して硬化させることで、前記取付基台に取り付けられていることを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の光源ユニットにおいて、前記切欠部の表面に切込み部を設けたことを特徴とする光源ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光源ユニットを備えたことを特徴とする光走査用の光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光源装置を備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−247435(P2010−247435A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99558(P2009−99558)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】