説明

光源装置、およびプロジェクター

【課題】レーザー光源と蛍光体を含む発光素子とを備え、レーザー光の偏光方向の乱れを低減し、偏光の乱れに伴う問題を解決し得る光源装置を実現する。
【解決手段】本発明の光源装置100は、固体光源10と、結晶性部材46を含む回転可能な基体40と、を含む。結晶性部材46の厚さをtとし、結晶性部材46の複屈折をΔnとし、固体光源10から射出される光Lbの波長をλとすれば、結晶性部材46の厚さtは式(1)を満たす。ただし、mは任意の整数である。
(m−1/2)λ/Δn<t<(m+1/2)λ/Δn・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの分野では、従来から、光源として超高圧水銀ランプ等の放電ランプが主に用いられてきた。これに対して、近年、発光ダイオード(Light Emitting Diode,以下、LEDと略記する)、レーザー等の固体光源からの光を励起光として蛍光体を蛍光発光させ、その光を利用する光源装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の光源装置は、LED、レーザー発光器等からなる励起光源と、赤色蛍光体形成領域、緑色蛍光体形成領域および拡散層形成領域の3つの領域を有する回転可能な蛍光ホイールと、を備えている。この光源装置においては、励起光源から青色の波長帯域光を励起光として射出し、その励起光を蛍光ホイールに照射すると同時に蛍光ホイールを回転させると、励起光が赤色蛍光体形成領域に照射されている期間では赤色光が蛍光発光し、励起光が緑色蛍光体形成領域に照射されている期間では緑色光が蛍光発光し、励起光が拡散層形成領域に照射されている期間では励起光である青色光が拡散して射出される。
特許文献1によれば、紫外光よりもエネルギーの低い可視光を励起光として照射するため、励起光が照射される光学部品の経年劣化を抑制し、長期間にわたって性能を維持できる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−277516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光源装置において、蛍光体に照射されるレーザー光がたとえ紫外光よりもエネルギーの低い可視光領域のレーザー光であっても、レーザー光の強度が高ければ、蛍光体での変換損失の一部が熱に変わるため、蛍光体ホイールが発熱する。一方、蛍光ホイールを回転させつつレーザー発光器から蛍光ホイールの所定の位置に光を照射する構成とすることで、蛍光ホイールをある程度冷却することができる。なぜならば、レーザー光の照射面積に対して蛍光ホイールの面積が十分に大きいことで熱が拡散する効果と、蛍光ホイールが回転することで照射位置が連続的に変化するため、レーザー光が蛍光体の特定の場所に照射される時間が短くなる効果と、蛍光ホイールが回転することでホイール全体が冷却される効果の3つが期待できるからである。
【0006】
ここで、光源装置の出力を向上させようとすると、レーザー光の照射量をさらに増やす必要があり、その場合、さらなる冷却性能の向上が望まれる。そこで、蛍光ホイールの基体として、一般の光学ガラス(熱伝導率:約0.9〜1.1W/m・K)よりも熱伝導率に優れた水晶(熱伝導率:約5〜9W/m・K)等の結晶性材料を用いる方法が考えられる。ところが、この種の結晶性材料は結晶軸を有しているため、これを用いた蛍光ホイールを回転させると、レーザー光の偏光方向と蛍光ホイールの結晶軸方向との関係が常に変化し、レーザー光の偏光方向が乱れることになる。
【0007】
このようなレーザー光の偏光方向の乱れは、後段の光学系に悪影響を及ぼす。例えば、プロジェクターの光利用効率を向上させる目的で偏光変換素子を用いた場合、偏光変換素子に付帯する位相差板の光軸方向配置に対してレーザー光の偏光方向を最適にすることで、位相差板に入射する光量を低減することができる。しかし、結晶性材料からなる蛍光ホイールを、蛍光体の温度上昇を抑制する目的で回転させると、レーザー光の偏光方向が乱れ、偏光変換素子に付帯する位相差板に入射する光の量が増加する。その結果、位相差板の寿命が低下する。偏光変換素子の偏光分離膜や位相差板の性能が低下すると、偏光変換時の光損失が生じ、プロジェクターの光利用効率が低下する。
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、結晶性材料からなる基体を回転させた場合であっても、基体を透過した光の偏光方向の乱れが低減された光源装置を実現することを目的とする。また、上記の光源装置を用いたプロジェクターを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の光源装置は、固体光源と、前記固体光源から射出された光の光路上に設けられ、かつ、所定の回転軸を中心として回転可能であり、かつ、結晶性部材を含む基体と、を備え、前記光の波長をλ(nm)とし、前記結晶性部材の複屈折をΔnとし、前記結晶性部材の厚みをt(nm)とし、任意の整数をmとしたとき、前記結晶性部材の厚みが下記の式(1)を満たすことを特徴とする。
(m−1/2)λ/Δn<t<(m+1/2)λ/Δn・・・(1)
【0010】
固体光源から射出された光の偏光軸は固定されている。以下、固体光源から射出された光のことを射出光と呼ぶ。射出光が所定の結晶軸を有する結晶性部材を含む基体を透過した場合、基体の回転に伴って結晶軸も回転するため、射出光の偏光軸と基体に含まれる結晶性部材の結晶軸とのなす角は逐次変化する。
このとき、射出光の偏光軸と結晶性部材の結晶軸とのなす角が0°または90°であるときは偏光の乱れが生じないが、射出光の偏光軸と結晶性部材の結晶軸とのなす角が0°または90°からずれるに従って偏光の乱れが大きくなり、45°で偏光の乱れが最大になる。このように、射出光の偏光軸と結晶性部材の結晶軸とのなす角が周期的に変化すると、偏光の乱れの程度も周期的に変化する。
【0011】
具体的には、結晶性材料が一体構造の場合、1回転する間に偏光の乱れが最小(偏光の乱れがない)のときが4回、最大のときが4回現れる。さらに、結晶性部材の厚みと複屈折Δnによって決まる基体の位相差が、偏光の乱れに大きく影響する。基体の位相差が励起光波長λの半分の奇数倍のとき、偏光の乱れは最大となる。つまり、基体の位相差がλ/2、3λ/2、5λ/2、・・・、のとき、偏光の乱れは最大となる。
【0012】
これに対して、式(1)を満たすように、結晶性部材の厚みを選択すれば、偏光の乱れが最大もしくは最大に近い状態を減らすことが可能である。これにより、固体光源からの射出光の偏光方向の乱れを低減し、偏光方向の乱れに伴う諸問題を解決し得る光源装置を実現することが可能となる。
【0013】
上記に記載の光源装置において、前記結晶性部材の厚みが、さらに下記の式(2)を満たすように選択することができる。
t=mλ/Δn・・・(2)
【0014】
式(2)のように結晶性部材の厚みを選択して、基体の位相差を射出光の波長λの整数倍にすることで、偏光の乱れを最小とすることが可能である。例えば、基体の位相差がλ、2λ、3λ、・・・、のとき、固体光源からの射出光を基体に対して垂直に入射すると、偏光の乱れは生じない。固体光源からの射出光が、基体に対して垂直入射となる成分が大きい配光分布を持つ場合も、式(2)のときに偏光の乱れが最小となる。これにより、固体光源からの射出光の偏光方向の乱れを低減し、偏光方向の乱れに伴う諸問題を解決し得る光源装置を実現することができる。
【0015】
上記に記載の光源装置において、前記固体光源をレーザーとすることができる。
レーザーは偏光特性が高いため、偏光方向の乱れを低減したときの効果が大きい。これにより、偏光方向を維持することによって、高寿命、高効率な光源装置を実現することができる。
【0016】
上記に記載の光源装置において、前記結晶性部材として水晶、またはサファイアを選択することができる。
水晶は結晶性材料の中でも光学用途品の流通量が多く、安価なため、低コストで光源装置を実現することができる。また、サファイアは結晶性材料の中でも熱伝導性が高いため、より信頼性の高い光源装置を実現することができる。
【0017】
上記に記載の光源装置において、前記基体の上に蛍光材料を設けることができる。
蛍光材料は、励起光の照射によって発光するが、変換損失が原因で発熱する。そのため、蛍光材料は、誘電体材料など他の材料と比較して高い冷却性能が要求される。よって、蛍光材料の熱劣化が低減された光源装置を実現できる。
【0018】
上記に記載の光源装置において、前記固体光源と、前記基体と、さらに前記基体よりも後段に配置されており、かつ、入射した光の偏光状態を所定の偏光状態に変換して射出する偏光変換素子と、を備えることができる。
【0019】
偏光変換素子は、偏光分離素子と、位相差板とを備え、入射偏光のP偏光成分、S偏光成分の比率が、効率や、寿命に影響を与える。ここで、S偏光成分とは、偏光変換素子の偏光分離膜面に平行な方向の偏光成分であり、P偏光成分とはS偏光成分に垂直な方向の偏光成分である。位相差板は、偏光変換素子の片方の偏光成分の光路のみに設けられる。位相差板は、偏光変換効率や、寿命に制限があるため、本発明を適用して偏光方向のうち特定成分を多くすることで、光源装置の効率や寿命を改善することができる。
【0020】
本発明のプロジェクターにおいて、上記に記載の光源装置と、前記光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、前記光変調素子により変調された光を被投射面上に投射する投射光学系と、を備えることを特徴とする。
本発明の光源装置を用いることで、高効率、高寿命のプロジェクターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【図2】本プロジェクターに用いる蛍光体ホイールの例を示す概略図である。(A)は、回転軸の方向から見た平面図であり、(B)は、回転軸と直交する方向から見た側面図である。
【図3】本プロジェクターに用いる偏光変換素子の一部を示す概略図である。
【図4】本プロジェクターに用いる蛍光体ホイールの例を示す概略図である。(A)は、回転軸の方向から見た平面図であり、(B)は、回転軸と直交する方向から見た側面図である。
【図5】本プロジェクターに用いる蛍光体ホイールの例を示す概略図である。(A)は、回転軸の方向から見た平面図であり、(B)は、回転軸と直交する方向から見た側面図である。
【図6】本プロジェクターに用いる蛍光体ホイールの結晶軸とレーザー光の偏光軸のなす角度θを示す模式図である。(A)は、角度θが0°の図であり、(B)は、角度θが45°の図、(C)は、角度θが90°の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る発光素子、光源装置、およびプロジェクターについて説明する。
なお、以下の全ての図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法や比率などを適宜異ならせてある。
【0023】
[実施形態1]
図1は、本実施形態の光源装置100およびプロジェクターPJを示す概略構成図である。プロジェクターPJは、図1に示すように、光源装置100、色分離光学系200、液晶ライトバルブ(光変調素子)400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400B、ダイクロイックプリズム(色合成素子)500、投写光学系600を有している。
【0024】
プロジェクターPJは、概略すると以下のように動作する。光源装置100から射出された光は、色分離光学系200により異なる色の複数の色光に分離される。色分離光学系200により分離された複数の色光は、それぞれ対応する液晶ライトバルブ400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400Bに入射して変調される。液晶ライトバルブ400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400Bにより変調された後の複数の色光は、ダイクロイックプリズム500に入射して合成される。ダイクロイックプリズム500により合成された光は、投写光学系600によりスクリーンSCRに拡大投写され、フルカラーの投写画像が表示される。
【0025】
以下、プロジェクターPJの各構成要素について説明する。
光源装置100は、レーザー光源10(励起光用固体光源)、集光レンズ22、蛍光体ホイール30(結晶性材料を含む基体の上に蛍光材料が設けられた素子)、コリメート光学系60、レンズアレイ120、レンズアレイ130、偏光変換素子140、重畳レンズ150がこの順に配置された構成になっている。
【0026】
レーザー光源10からの射出光は、後述する蛍光体ホイール30に備えられた蛍光体層を励起させる励起光Lbとして、蛍光体ホイール30に入射する。
レーザー光源10は、発光強度のピークが例えば445nmの青色のレーザー光を射出する青色レーザー光源である。ここでは、レーザー光源10として、単一のレーザー光源を備えているが、複数備えても良い。また、後述する蛍光体層を励起させることができる波長の光であれば、445nm以外のピーク波長を有する色光を射出するレーザー光源であっても構わない。
【0027】
集光レンズ22は、凸レンズで構成されている。レーザー光源10が複数備えられている場合には、集光レンズを各レーザー光源10に対応させて一つずつ配置し、その後段に全てのレーザー光源に共通の凸レンズを一つ配置した構成としても良い。
集光レンズ22は、レーザー光源10から射出されるレーザー光の光軸上に配置され、レーザー光源10から射出された励起光Lbを集光する。
【0028】
蛍光体ホイール30は、レーザー光源10から射出される励起光Lb(青色レーザー光)の一部を透過させるとともに、残りを蛍光体が吸収して発光強度のピークが例えば約550nmの黄色の蛍光に変換する機能を有している。したがって、蛍光体ホイール30からは、励起光Lbである青色光と蛍光体から発光する黄色光とが合成された結果として白色光が射出される。また、蛍光体ホイール30は、基体40の中心にモーター50が接続され、モーター50の軸を回転軸Oとして回転可能に設けられている。
【0029】
図2は、本実施形態の蛍光体ホイール30を示す概略図である。図2(A)は、蛍光体ホイール30を回転軸Oの方向から見た平面図であり、図2(B)は、回転軸Oと直交する方向Xから見た側面図である。
蛍光体ホイール30は、図2に示すように、平面形状が円形の基体40と、基体40上において回転軸Oの周りに設けられた蛍光体層42とを有している。蛍光体ホイール30は、基体40の2つの主面のうち、蛍光体層42が形成されていない側の主面が集光レンズ22に面するように配置され、また、集光レンズ22により集光された励起光Lbの焦点位置が蛍光体層42の位置と一致するように配置されている。
例えば、円形の蛍光体ホイール30の直径は50mmであり、平面視で蛍光体ホイール30の中心から約22.5mm離れた位置に励起光Lbが入射するように蛍光体ホイール30が設けられている。
【0030】
基体40は、図2(B)に示すように、結晶軸を有する厚さtの結晶性部材46と、非結晶性部材44とによって構成される。結晶性部材46の厚さtは、基体40の厚さt0以下の厚みである。具体的には、結晶性部材46としては、励起光Lbである青色光を透過する水晶やサファイア等を用いることができる。また、非結晶性部材44としては、白板ガラス、耐熱ガラス、石英、プラスチック等を用いることができる。
本実施形態において、基体40は、結晶性部材46の一例である水晶と、非結晶性部材44の一例である耐熱ガラスによって構成される。熱伝導率に優れた水晶と、量産性に優れた耐熱ガラスと、を組み合わせることで、基体40の放熱特性とコストのバランスを両立した設計が可能になる。本明細書では理解を簡単にするために、蛍光体ホイール30が備えている結晶性部材46の結晶軸のことを、蛍光体ホイール30の結晶軸と呼ぶことがある。
【0031】
蛍光体層42は、上述したように、レーザー光源10から射出される励起光Lb(青色レーザー光)の一部を透過させるとともに、残りを吸収して黄色(発光強度のピーク:約550nm)の蛍光を発光する。蛍光体層42から射出される光は、青色の励起光Lbと黄色の蛍光とが合成されることで白色光を形成している。さらに、蛍光体層42は、光透過性を有する基材と、蛍光を発する複数の蛍光体粒子と、光透過性を有する粒子状の物質である複数のフィラー粒子と、を有している。基材の内部には、複数の蛍光体粒子および複数のフィラー粒子が含まれている。基材の形成材料としては、光透過性を有する樹脂材料を用いることができ、例えば高い耐熱性を有するシリコーン樹脂(屈折率:約1.4)を好適に用いることができる。
【0032】
蛍光体粒子は、図1に示すレーザー光源10から射出される励起光Lbを吸収し、蛍光を発する粒子状の蛍光物質である。例えば、蛍光体粒子には、波長が約445nmの青色レーザー光によって励起されて蛍光を発する物質が含まれており、レーザー光源10が射出する励起光Lbの一部を、赤色の波長帯域から緑色の波長帯域までを含む光、すなわち黄色光に変換して射出する。このような蛍光体粒子として、平均粒径が1μmから数十μm程度のものが高い発光効率を示すことが知られている。蛍光体粒子としては、公知のYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を用いることができる。例えば、平均粒径が10μmの(Y,Gd)3(Al,Ga)512:Ceで示される組成のYAG系蛍光体(屈折率:約1.8)を用いることができる。なお、蛍光体粒子の構成材料は、1種類であっても良いし、2種類以上の構成材料からなる粒子を混合したものを蛍光体粒子として用いても良い。
【0033】
フィラー粒子は、蛍光体層42に入射する励起光Lbおよび蛍光体粒子から発せられる蛍光を拡散させる機能を有している。フィラー粒子の構成材料としては、光透過性を有する粒子状物質であれば、樹脂材料や無機材料など広範な種類の材料を用いることができる。中でも、高い耐熱性を有する無機材料を好適に用いることができ、例えば平均粒径が10μmのAl23(屈折率:約1.8)を用いることができる。
【0034】
モーター50は、蛍光体ホイール30を例えば7500rpmで回転させる。この場合、蛍光体ホイール30上の励起光Lbの照射領域(ビームスポット)は、約18m/秒で移動する。すなわち、モーター50は、蛍光体ホイール30上におけるビームスポットの位置を変位させる位置変位手段として機能する。これにより、励起光Lbが蛍光体ホイール30上の同一の位置を照射し続けないため、照射位置の熱劣化を防止し、装置を長寿命化することができる。
【0035】
コリメート光学系60は、蛍光体ホイール30からの光の広がりを抑える第1レンズ62と、第1レンズ62から入射される光を略平行化する第2レンズ64とを備え、全体として蛍光体ホイール30から射出された光を平行化するものである。第1レンズ62と第2レンズ64とは凸レンズで構成されている。
【0036】
レンズアレイ120およびレンズアレイ130は、コリメート光学系60から射出された光の輝度分布を均一化するものである。レンズアレイ120は、複数の第1マイクロレンズ122を含んでおり、レンズアレイ130は複数の第2マイクロレンズ132を含んでいる。第1マイクロレンズ122は、第2マイクロレンズ132と1対1で対応している。
コリメート光学系60から射出された光は、複数の第1マイクロレンズ122に空間的に分かれて入射する。第1マイクロレンズ122は、入射した光を対応する第2マイクロレンズ132に結像させる。これにより、複数の第2マイクロレンズ132の各々に、二次光源像が形成される。なお、第1マイクロレンズ122、第2マイクロレンズ132の外形形状は、液晶ライトバルブ400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400B各々の画像形成領域の外形形状と略相似形となっている。
【0037】
偏光変換素子140は、レンズアレイ130から射出された光Lの偏光状態を一の状態に変換するものである。図3に、偏光変換素子140の一部分を示す。偏光変換素子140は、偏光変換素子140に入射した光Lに含まれる偏光方向が互いに異なる2つの光、例えばP偏光とS偏光とを分離する偏光分離素子141と、偏光方向が互いに異なる2つの光のうちの一方の光の偏光方向を他方の光の偏光方向に変換する位相差板142と、を有している。
さらに、偏光分離素子141は、レンズアレイ130の各第2マイクロレンズ132に対応して設けられた偏光分離膜143(以下、PBS膜と称する)とミラー144とを有している。第2マイクロレンズ132から偏光分離素子141に入射した光は、PBS膜143によりP偏光(PBS膜に対するP偏光)とS偏光(PBS膜に対するP偏光)とに分離される。P偏光、S偏光のうち一方の偏光(例えばS偏光)は、ミラー144で反射した後、第2マイクロレンズ132に対応して設けられた位相差板142に入射する。位相差板142に入射した一方の偏光(S偏光)は、位相差板142により偏光状態が他方の偏光(ここではP偏光)の偏光状態に変換されて、PBS膜143を透過した他方の偏光(P偏光)と同じ一の状態(ここではP偏光)で射出される。
【0038】
図1に示す重畳レンズ150は、偏光変換素子140から射出された光を液晶ライトバルブ(被照明領域)400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400Bにて重畳させるものである。光源装置100から射出された光は、空間的に分割された後、重畳されることにより輝度分布が均一化されて光線軸100ax周りの軸対称性が高められる。
【0039】
色分離光学系200は、ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220、ミラー230、ミラー240、ミラー250、リレーレンズ260、リレーレンズ270を含んでいる。
ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220は、例えばガラス表面に誘電体多層膜を積層したものである。ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220は、所定の波長帯域の色光を選択的に反射させ、それ以外の波長帯域の色光を透過させる特性を有している。ここでは、ダイクロイックミラー210は、緑色光と青色光とを反射させ、赤色光を透過させる特性を有している。ダイクロイックミラー220は、ダイクロイックミラー210を透過した緑色光と青色光のうち、緑色光を反射させ、青色光を透過させる特性を有している。
【0040】
光源装置100から射出された光Lは、ダイクロイックミラー210に入射する。光Lのうちの赤色光Rは、ダイクロイックミラー210を通ってミラー230に入射し、ミラー230で反射してフィールドレンズ300Rに入射する。赤色光Rは、フィールドレンズ300Rにより平行化された後に、赤色光変調用の液晶ライトバルブ400Rに入射する。
【0041】
光Lのうちの緑色光Gと青色光Bとは、ダイクロイックミラー210で反射して、ダイクロイックミラー220に入射する。緑色光Gは、ダイクロイックミラー220で反射してフィールドレンズ300Gに入射する。緑色光Gは、フィールドレンズ300Gにより平行化された後に、緑色光変調用の液晶ライトバルブ400Gに入射する。
【0042】
ダイクロイックミラー220を通った青色光Bは、リレーレンズ260を通りミラー240で反射した後、リレーレンズ270を通りミラー250で反射してフィールドレンズ300Bに入射する。青色光Bは、フィールドレンズ300Bにより平行化された後に、青色光変調用の液晶ライトバルブ400Bに入射する。
【0043】
液晶ライトバルブ400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400Bは、例えば透過型の液晶ライトバルブ等の光変調装置により構成されている。液晶ライトバルブ400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400Bは、画像情報を含んだ画像信号を供給するパーソナルコンピューター等の信号源(図示略)と電気的に接続されている。液晶ライトバルブ400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400Bは、供給された画像信号に基づいて、入射光を画素毎に変調して画像を形成する。
液晶ライトバルブ400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400Bは、それぞれ赤色画像、緑色画像、青色画像を形成する。液晶ライトバルブ400R、液晶ライトバルブ400G、液晶ライトバルブ400Bにより変調された光(形成された画像)は、ダイクロイックプリズム500に入射する。
【0044】
ダイクロイックプリズム500は、4つの三角柱プリズムが互いに貼り合わされた構造になっている。三角柱プリズムにおいて貼り合わされる面は、ダイクロイックプリズムの内面になる。ダイクロイックプリズム500の内面に、赤色光が反射し緑色光が透過するミラー面と、青色光が反射し緑色光が透過するミラー面とが互いに直交して形成されている。ダイクロイックプリズム500に入射した緑色光は、ミラー面を通ってそのまま射出される。ダイクロイックプリズム500に入射した赤色光、青色光は、ミラー面で選択的に反射あるいは透過して、緑色光の射出方向と同じ方向に射出される。
このようにして3つの色光(画像)が重ね合わされて合成され、合成された色光が投写光学系600によってスクリーンSCRに拡大投写される。
【0045】
光源装置100においては、レーザー光源10の位置およびレーザー光源10から射出されるレーザー光(励起光Lb)の偏光軸の方向は固定されている。ここで、図6に示したように、レーザー光の偏光軸をPで表し、蛍光体ホイール30の結晶軸(結晶性部材46の結晶軸)をKで表す。蛍光体層42にレーザー光が照射されている間、蛍光体ホイール30は回転軸Oのまわりに常時回転している。そのため、蛍光体ホイール30の回転に伴って、蛍光体層42上のレーザー光の照射スポットLSは蛍光体ホイール30の回転軸の周りを移動し、レーザー光の照射スポットLSにおける蛍光体ホイール30の結晶軸Kも回転する。そのため、レーザー光の偏光軸Pとレーザー光の照射スポットLSにおける蛍光体ホイール30の結晶軸とのなす角θは逐次変化する。
【0046】
図6(A)と図6(C)に示したように、レーザー光の偏光軸Pと結晶性部材46の結晶軸Kとのなす角度θが0°または90°であるときは偏光の乱れが生じない。しかし、レーザー光の偏光軸Pと結晶性部材46の結晶軸Kとのなす角度θが0°または90°からずれるに従って偏光の乱れが大きくなり、図6(B)に示したように、角度θが45°のとき偏光の乱れが最大になる。
このように、レーザー光の偏光軸Pと結晶性部材46の結晶軸Kとのなす角度θが周期的に変化すると、偏光の乱れの程度も周期的に変化する。具体的には、結晶性材料が一体構造の場合、1回転する間に偏光の乱れが最小(偏光の乱れがない)のときが4回、最大のときが4回現れる。
【0047】
さらに、結晶性部材46の厚みt(図2(B)参照)と結晶性部材46の複屈折Δnによって決まる結晶性部材の位相差Nが、偏光の乱れに大きく影響する。ここで、結晶性部材46の位相差Nは下記式(3)で求められる。
N=t×Δn・・・(3)
【0048】
結晶性部材46の位相差Nが励起光Lbの波長λの半分の奇数倍のとき(N=λ/2、3λ/2、5λ/2、・・・)、偏光の乱れは最大となる。つまり、結晶性部材46の厚みtが下記式(4)を満足する時、偏光の乱れは最大となる。
t=(m−1/2)λ/Δn (mは任意の整数)・・・(4)
一方、結晶性部材46の位相差Nが励起光Lbの波長λの整数倍のとき(N=λ、2λ、3λ、・・・)、偏光の乱れは最小となる。つまり、結晶性部材46の厚みtが下記式(2)を満足する時、偏光の乱れは最小となる。
t=mλ/Δn ・・・(2)
特に、式(2)を満足し、レーザー光源10から射出される励起光Lbが完全な直線偏光の平行光であり、励起光Lbが基体40に対して垂直に入射されたとき、偏光の乱れは生じない。
【0049】
次に、本発明の効果について実施例1乃至6を用いて説明する。
【0050】
(実施例1)
本実施例では、下記式(5)においてx=1として、式(5)が満足されるように、結晶性部材46の複屈折Δnと励起光Lbの波長λに応じて結晶性部材46の厚みtを設定した。
t=xλ/Δn ・・・(5)
式(5)においてx=1の場合、結晶性部材46の位相差Nが励起光Lbの波長λの整数倍であるため、偏光の乱れは最小となる。そして、レーザー光(励起光Lb)が完全な直線偏光の平行光であり、偏光変換素子140の偏光分離機能が完全であれば、位相差板142に照射されるレーザー光の光量は0、すなわち最小になる。
【0051】
これにより、蛍光体ホイール30が回転していても、レーザー光源10から射出され蛍光体ホイール30を透過した励起光Lbの偏光方向の乱れを極めて小さくし、偏光方向の乱れに伴う諸問題を解決し得る光源装置を実現することが可能となる。
【0052】
レーザー光の偏光状態は偏光度が高く、直線偏光とみなすことができるため、レーザー光源10から射出されてから偏光変換素子140に入射されるまでその偏光状態を維持することで、プロジェクターPJにおける偏光変換素子140の位相差板142に照射されるレーザー光の光量を低減することができる。
偏光変換素子140では、偏光状態が異なる2つの偏光のうち、一方の偏光(第1偏光という)のみが位相差板142を透過し、他方の偏光(第2偏光という)は位相差板142を透過しない。そこで、レーザー光が第1偏光を含まないようにすれば、レーザー光が位相差板142に照射されないようにすることができる。
しかし、蛍光体ホイール30に水晶などの結晶性部材を用いた場合、結晶性部材を透過することで偏光状態が乱れる結果、位相差板142を透過する光量が増加して、偏光変換素子140の寿命低下や、光利用効率の低下を引き起こす。
【0053】
その点、本実施例の光源装置100においては、式(5)においてx=1として、結晶性部材46の厚みが最適化された蛍光体ホイール30が用いられている。これにより、蛍光体ホイール30が回転しても、蛍光体ホイール30を透過するレーザー光(励起光Lb)の偏光状態の乱れを極めて小さくすることができる。
【0054】
具体的には、レーザー光(励起光Lb)が完全な直線偏光の平行光であり、偏光変換素子140の偏光分離機能が完全であれば、位相差板142に照射されるレーザー光の光量は0になる。その結果、偏光方向の乱れに伴う偏光変換素子140の寿命低下の問題、光利用効率の低下の問題等、諸問題を解決し得る光源装置100を実現することができる。
【0055】
また、本実施形態のプロジェクターPJによれば、上記の光源装置100を備えているため、信頼性が高く、表示品質に優れたプロジェクターを実現することができる。
【0056】
(実施例2)
本実施例では、x=1.1として式(5)が満足されるように、結晶性部材46の複屈折Δnと励起光Lbの波長λに応じて結晶性部材46の厚みtを設定した。この場合、位相差板142に照射されるレーザー光の光量は、x=1.5の場合に位相差板142に照射されるレーザー光の光量の約10%となる。なお、位相差板142に照射されるレーザー光の光量は、蛍光体ホイール30が一回転したときに位相差板142に照射されるレーザー光の光量の平均値を意味する。以下の実施例においても同様である。従って、本実施例においても、x=1.5の場合と比較して、偏光変換素子140の寿命低下を抑制する効果が高く、光利用効率の低下を抑制する効果も高い。
本実施例では、x=1.1としたが、x=0.9としてもx=1.1の場合と同様な効果が得られる。
【0057】
(実施例3)
本実施例では、x=1.2として式(5)が満足されるように、結晶性部材46の複屈折Δnと励起光Lbの波長λに応じて結晶性部材46の厚みtを設定した。この場合、位相差板142に照射されるレーザー光の光量は、x=1.5の場合に位相差板142に照射されるレーザー光の光量の約35%となる。従って、本実施例においても、x=1.5の場合と比較して、偏光変換素子140の寿命低下を抑制する効果が高く、光利用効率の低下を抑制する効果も高い。
本実施例では、x=1.2としたが、x=0.8としてもx=1.2の場合と同様な効果が得られる。
【0058】
(実施例4)
本実施例では、x=1.25として式(5)が満足されるように、結晶性部材46の複屈折Δnと励起光Lbの波長λに応じて結晶性部材46の厚みtを設定した。この場合、位相差板142に照射されるレーザー光の光量は、x=1.5の場合に位相差板142に照射されるレーザー光の光量の約50%となる。従って、本実施例においても、x=1.5の場合と比較して、偏光変換素子140の寿命低下を抑制する効果が高く、光利用効率の低下を抑制する効果も高い。
本実施例では、x=1.25としたが、x=0.75としてもx=1.25の場合と同様な効果が得られる。
【0059】
(実施例5)
本実施例では、x=1.35として式(5)が満足されるように、結晶性部材46の複屈折Δnと励起光Lbの波長λに応じて結晶性部材46の厚みtを設定した。この場合、位相差板142に照射されるレーザー光の光量は、x=1.5の場合に位相差板142に照射されるレーザー光の光量の約80%となる。従って、本実施例においても、x=1.5の場合と比較して、偏光変換素子140の寿命低下を抑制する効果が高く、光利用効率の低下を抑制する効果も高い。
本実施例では、x=1.35としたが、x=0.65としてもx=1.35の場合と同様な効果が得られる。
【0060】
(実施例6)
本実施例では、x=1.4として式(5)が満足されるように、結晶性部材46の複屈折Δnと励起光Lbの波長λに応じて結晶性部材46の厚みtを設定した。この場合、位相差板142に照射されるレーザー光の光量は、x=1.5の場合に位相差板142に照射されるレーザー光の光量の約90%となる。従って、本実施例においても、x=1.5の場合と比較して、偏光変換素子140の寿命低下を抑制する効果が高く、光利用効率の低下を抑制する効果も高い。
本実施例では、x=1.4としたが、x=0.6としてもx=1.4の場合と同様な効果が得られる。
【0061】
実施例1乃至実施例6からわかるように、結晶性部材46の厚みtが下記式(1)を満足するように、結晶性部材46の複屈折Δnと励起光Lbの波長λに応じて結晶性部材46の厚みtを設定すれば、結晶性部材46の位相差Nが励起光Lbの波長λの半分の奇数倍になり得ないため、偏光の乱れが最大となることを防止することができる。これにより、偏光変換素子140の寿命低下を抑制する効果と、光利用効率の低下を抑制する効果とを、式(4)が満足される場合よりも高くすることが可能である。
(m−1/2)λ/Δn<t<(m+1/2)λ/Δn・・・(1)
また、結晶性部材46の厚みtが下記式(2)を満足するように、結晶性部材46の複屈折Δnと励起光Lbの波長λに応じて結晶性部材46の厚みtを設定すれば、偏光の乱れを最小にすることができる。これにより、偏光変換素子140の寿命低下を抑制する効果と、光利用効率の低下を抑制する効果とを極めて高くすることができる。
t=mλ/Δn ・・・(2)
【0062】
[実施形態2]
図4は、本実施形態の蛍光体ホイール31を示す概略構成図である。図4(A)は、蛍光体ホイール31を回転軸Oの方向から見た平面図であり、図4(B)は、回転軸Oと直交する方向Xから見た側面図である。
蛍光体ホイール31は、図4に示すように、平面形状が円形の基体41と、基体41上において回転軸Oの周りに設けられた蛍光体層42とを有している。基体41は、図4に示すように、結晶軸を有する厚さtの結晶性部材の一例である水晶によって構成される。よって、結晶性部材の厚さtは、基体41の厚さt0と等しい。水晶は熱伝導率に優れているため、基体41は高い放熱特性を実現することができる。また、基体41は水晶単体という簡略な構成によって、高い機械的耐久性を実現することができる。
【0063】
結晶性部材(基体41)の厚みtが上述の式(2)を満足することで、蛍光体ホイール30が回転していても、蛍光体ホイール30を透過する励起光Lbの結晶性部材による偏光の乱れは最小となる。
【0064】
[実施形態3]
図5は、本実施形態の蛍光体ホイール32を示す概略構成図である。図5(A)は、蛍光体ホイール32を回転軸Oの方向から見た平面図であり、図5(B)は、回転軸Oと直交する方向Xから見た側面図である。
蛍光体ホイール32は、図5に示すように、平面形状が円形の基体43と、基体43上において回転軸Oの周りに設けられた蛍光体層42とを有している。基体43は、図5に示すように、扇形の結晶性部材47、扇形の結晶性部材48、扇形の結晶性部材49および円形の非結晶性部材45によって構成されている。結晶性部材47、結晶性部材48、結晶性部材49はいずれも水晶によって構成され、非結晶性部材45は耐熱ガラスによって構成される。
また、結晶性部材47の厚さをt1とし、結晶性部材48の厚さをt2とし、結晶性部材49の厚さをt3とすれば、厚さt1、厚さt2、厚さt3はいずれも、基体43の厚さt0以下である。
結晶性部材として大きな水晶を用いるとコストが非常に高くなる。そこで、本実施形態のように、結晶性部材を複数の小さな水晶で構成することで、蛍光体ホイール32を安価に製造することができる。また、結晶性部材47、結晶性部材48、結晶性部材49を非結晶性部材45の上に貼り付けることで、複数の結晶性部材を用いて蛍光体ホイール32を構成する場合、容易に製造することができる。
【0065】
厚さt1が下記式(6)を満足し、厚さt2が下記式(7)を満足し、厚さt3が下記式(8)を満足することで、蛍光体ホイール30が回転していても、蛍光体ホイール30を透過する励起光Lbの結晶性部材による偏光の乱れは最小となる。
t1=mλ/Δn (mは任意の整数)・・・(6)
t2=nλ/Δn (nは任意の整数)・・・(7)
t3=pλ/Δn (pは任意の整数)・・・(8)
【0066】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば蛍光体ホイール30として、基体40上に蛍光体層42を形成する例を示したが、基体中に蛍光体を分散させる構成としても良い。また、結晶性材料としては、水晶に限らず、サファイアなどを用いても良い。
【0067】
また、回転ホイールの形状は円形に限らず、四角形や多角形などを用いても良い。回転ホイールとして多角形を用いた場合でもレーザー照射位置が回転ホイールの内側であれば、レーザー照射スポットの軌跡は円となる。したがって、回転ホイールとして多角形を用いた場合でも、レーザー照射スポットの軌跡は円形となる。
【0068】
また、基体は複数の部品(例えば扇形の部品)を組み合わせた構成としても良い。各部品(基体)に含まれる結晶性材料に合わせて厚みを最適化すれば、同様の効果を得ることができる。
また、基体には必ずしも単一、同一の蛍光体層を形成する必要はない。例えば、一つの基体上に複数の領域を設定し、蛍光体種類、蛍光体層の厚み、蛍光体層のありなしを選択し、時分割で発光色が変化する回転ホイールを製造することもできる。基体が複数の部品(例えば扇形)で構成される場合も、各部品に蛍光体種類、蛍光体層の厚み、蛍光体層のありなしを選択し、時分割で発光色が変化する回転ホイールを製造することもできる。
【0069】
また、プロジェクターの各光学要素の具体的な構成、配置、形状、数等については、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。光源から射出される光の波長域と蛍光体材料との組み合わせについても、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10…レーザー光源(励起光用光源)、30,31,32…蛍光体ホイール(発光素子)、40,41,43…基体、42…蛍光体層、46〜49…結晶性部材、100…光源装置、140…偏光変換素子、400R,400G,400B…液晶ライトバルブ(光変調素子)、600…投射光学系、PJ…プロジェクター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体光源と、
前記固体光源から射出された光の光路上に設けられ、
かつ、所定の回転軸を中心として回転可能であり、
かつ、結晶性部材を含む基体と、を備え、
前記光の波長をλ(nm)とし、
前記結晶性部材の複屈折をΔnとし、
前記結晶性部材の厚みをt(nm)とし、
任意の整数をmとしたとき、
前記結晶性部材の厚みが下記の式(1)を満たすことを特徴とする光源装置。
(m−1/2)λ/Δn<t<(m+1/2)λ/Δn・・・(1)
【請求項2】
前記結晶性部材の厚みが、さらに下記の式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
t=mλ/Δn・・・(2)
【請求項3】
前記固体光源がレーザーであること特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記結晶性部材が水晶、またはサファイアであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記基体の上に蛍光材料が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記固体光源と、前記基体と、
さらに前記基体よりも後段に配置されており、
かつ、入射した光の偏光状態を所定の偏光状態に変換して射出する偏光変換素子と、
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調された光を被投射面上に投射する投射光学系と、
を備えたことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−173593(P2012−173593A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36803(P2011−36803)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】