説明

光源装置及びこれを用いた撮像装置

【課題】 広範囲の波長帯域で、安定的に発振可能な波長掃引光源装置を提供すること。
【解決手段】 光を増幅させる光利得媒体と、該光利得媒体より放出される光を波長に応じて分散させる分散素子と、波長選択素子と、を備え、前記光利得媒体より放出され前記分散素子により分散した波長の異なる光から所定波長の光を、前記波長選択素子により選択して出射する光の発振波長を変化可能な光源装置であって、前記光利得媒体を複数備え、該複数の光利得媒体は、利得波長帯域が互いに一部重複すると共に異なる最大利得波長を有しており、前記複数の光利得媒体で増幅された複数の波長帯域の光より、前記所定波長の光を選択して出射する光の発振波長を変化可能な光源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振波長を変化し得る光源装置及びこれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源、特にレーザ光源については、発振波長を可変とするものが通信ネットワーク分野や検査装置の分野で種々利用されてきている。
【0003】
通信ネットワーク分野では、高速な波長切替、また、検査装置の分野では高速で広範な波長掃引が、要望されている。
【0004】
検査装置における波長可変(掃引)光源の用途としては、レーザ分光器、分散測定器、膜厚測定器、波長掃引型光干渉トモグラフィー(Swept Source Optical Coherence Tomography)装置等がある。
【0005】
光干渉トモグラフィー(以下、「OCT」ともいう。)は、低コヒーレンス光干渉を用いて検体の断層像を撮像するものである。ミクロンオーダーの空間分解能が得られることや無侵襲性等の理由から医用分野における研究が近年、盛んになってきている撮像技術である。
【0006】
現在、OCTは、深さ方向の解像度を数ミクロンとし、且つ数mmの深さまで断層像を得ることができ、眼科撮影、歯科撮影等に用いられている。
【0007】
波長掃引型(SS−OCT)装置は、光源の発振波長(周波数)を時間的に掃引のするものである。これはフーリエ領域(FD)OCTの範疇に入る。同じくFDOCTの範疇に入るスペクトル領域(スペクトルドメイン:SD)OCTが干渉光を分光する分光器を必用とするのに対し、分光器を用いないことから光量のロスが少なく高SN比の像取得も期待されている。
【0008】
波長掃引光源を用いて医用画像撮像装置を構成する場合には、掃引速度が早いほど像取得時間を短縮でき、生体組織を生体より採取せずに生体中でそのまま観察する生体観察(所謂、in situ−in vivo imaging)にも好適である。
【0009】
波長可変光源の例として特許文献1に開示された光増幅媒体と、該光増幅媒体の外部に回折格子を用いた反射器と、を配して構成したものがある。
【0010】
図22に特許文献1に記載の光源装置を示す。
【0011】
図22において、2212は本光源の種となる光を発生させる機能とその光を増幅させる機能を備えた光増幅媒体である。この光増幅媒体の両端面のうち、回折格子2216側の面は反射防止膜が被覆され、その反対側の面は高反射膜が被覆されている。2214は光増幅媒体2212の反射防止膜が被覆された出射端面から発散する光波を平行光束に変換するコリメータレンズである。2218は平行光束を集光させる集光レンズであり、2220は波長選択ユニットである。波長選択ユニット2220はミラー2224と、スリット状の開口2222aを有する遮光部材2222と、を備えて構成され、スリット開口2222aを矢印方向に移動させる機構をあわせ持つ。図22に示した光源装置では、波長選択ユニット2220のミラー2224と、光増幅媒体2214の一端面と、で光共振器が構成され、スリット開口2222aにより選択された光束の波長の光が光増幅媒体2214の端面より出射される。
【0012】
波長可変光源の別の例として波長選択ユニットとして円盤状の回転体を用いた特許文献2に開示されたものがある。図23に特許文献2に記載の光源装置を示す。図23において、2301は不図示の外側端面に高反射膜を塗布した光増幅媒体からの光束を導波する光ファイバー導波路、2302はこのファイバー導波路端からの発散光束を平行にするコリメータレンズである。2316はその光束を回折・波長分散させる回折格子、2350はその回折光を集光させる集光レンズであり、2310は波長選択機能をもつ回転円盤である。回転円盤2310には放射状に複数のスリット2312が配置してある。このスリット2312は反射面で構成され、スリット以外の回転円盤基盤面は反射防止面となっている。
【0013】
この装置では、不図示の光増幅媒体より生じた発散光2330は回折格子2316によりλ1〜λnの波長毎に角度分散を生じ、集光レンズ2350を介して波長選択ユニット2310に集光する。波長選択ユニット2310が回転することで、所定波長λの光束が選択され、不図示の光増幅媒体の外側端面とスリット2312と、を光共振器として波長λでレーザ発振する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,142,569号明細書
【特許文献2】米国特許第7,519,096号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した特許文献1あるいは特許文献2に開示された装置においては、レーザ光として取出し得る光束の波長範囲は光増幅媒体(光利得媒体)の利得帯域により決定されるものであり、広範囲の波長帯域に亘るレーザ発振を必要とする用途には、十分に対応できないというのが実情である。
【0016】
本発明は、広範囲の波長帯域で、安定的に発振可能な波長掃引光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明により提供される光源装置は、光を増幅させる光利得媒体と、該光利得媒体より放出される光を波長に応じて分散させる分散素子と、波長選択素子と、を備え、前記光利得媒体より放出され前記分散素子により分散した波長の異なる光から所定波長の光を、前記波長選択素子により選択して出射する光の発振波長を変化可能な光源装置であって、
前記光利得媒体を複数備え、該複数の光利得媒体は、利得波長帯域が互いに一部重複すると共に異なる最大利得波長を有しており、前記複数の光利得媒体で増幅された複数の波長帯域の光より、前記所定波長の光を選択して出射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
光利得媒体を利得波長帯域が互いに一部重複すると共に異なる最大利得波長を有する複数で構成することにより、個々の光利得媒体の有する利得波長帯域を加え合わせた連続的な波長帯域での光発振が可能となり、広範囲の波長帯域での安定的な波長掃引が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図2】本発明の光源装置の一例についての説明図
【図3】本発明の光源装置を測定装置に用いた模式図
【図4】本発明の光源装置を測定装置に用いた模式図
【図5】本発明に適用される光利得媒体の利得波長特性を示すグラフ
【図6】本発明の光源装置における光利得媒体の切り替えタイミングの一例についての説明図
【図7】Kクロックカウンターの模式図
【図8】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図9】光利得媒体の切り替えタイミングの一例についての説明図
【図10】光利得媒体の切り替えタイミングの一例についての説明図
【図11】本発明の光源装置を測定装置に用いた模式図
【図12】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図13】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図14】本発明の光源装置の波長変化の一例を示すグラフ
【図15】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図16】本発明の光源装置の波長変化の一例を示すグラフ
【図17】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図18】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図19】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図20】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図21】本発明の光源装置を用いた撮像装置を示す模式図
【図22】従来の光源装置を示す模式図
【図23】従来の光源装置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の光源装置では、利得波長帯域が互いに一部重複すると共に異なる最大利得波長を有する複数の光利得媒体を並列配置し、複数の利波長帯域の光を順次発振させることにより、広帯域な波長挿引を可能とする。
【0021】
図1を参照して本発明の光源装置の一例について説明する。
【0022】
図1は、光利得媒体として半導体光増幅器、光利得媒体より放出される光を波長に応じて分散させる分散素子として回折格子、分散素子により分散した波長の異なる光から所定波長の光を選択する選択素子としてスリット型のミラーを配した円盤状回転体を採用した例である。
【0023】
図1(A)では、X−Y−Zの3軸方向についての、Z−X図、X−Y図を示している。図1(B)では、Z−Y図、Y―X図を示している。
【0024】
図1において、101、101´は、半導体光増幅器であり、半導体層内で自然放出光を発生させてこれを放出すると共にこれを増幅させる機能を備える。図1の装置は、光利得媒体を複数備える。
【0025】
複数の半導体光増幅器101、101´は、反射防止膜109、109´が被覆された端面がそれぞれコリメータレンズ102、102´を介して回折格子103を向いて配置されている。105は回転円盤であり、反射防止処理が施された表面に円盤の中心から放射方向に長手方法を配したスリット状の反射部材(ミラー)106を列状に複数配置して構成されている。107はモーターであり回転円盤を回転駆動する。
【0026】
半導体光増幅器101は、利得波長帯域が、例えば780nm〜850nmであり、半導体光増幅器101´のそれは810nm〜880nmであり、一部が重複するようにしてある。これは個々の光利得媒体の有する利得波長帯域を加え合わせた連続的な波長帯域での波長掃引を安定的に行うためである。
【0027】
半導体光増幅器101及び101´より放出された光はコリメータレンズ101及び101´を介してこれらの光軸が回折格子の溝の一つを含む平面内に位置するように配置されている。
【0028】
短波長側の利得帯域を担う半導体光増幅器101より放出された光は回折格子103により波長に応じて角度分散を生じた上で、コリメータレンズ104を経て回転円盤105上に集光され、楕円状の帯111となって投射される。
【0029】
一方、長波長側の利得帯域を担う半導体光増幅器101´より放出された光は、回転円盤上に楕円状の帯110となって投射される。
【0030】
これら楕円状の帯111及び110は、複数の光利得媒体より放出された別々の波長帯域の光に相当する。つまり、複数の波長帯域の光は、円盤の半径方向に並んで位置する。
【0031】
例えば、楕円状の帯111が波長λ1〜λ11までの波長帯域の光からなり、楕円状の帯110はλ9〜λ20までの帯域の光からなる。これら2つの波長帯域の光から、波長λ1〜λ20の光が選択されて順次出射される。つまり、光の発振波長を連続的に変化可能である。
【0032】
より具体的には、これらの帯域の光から反射部材106で所望の波長の光が選択され、選択された波長の光を半導体光増幅器101、101´に帰還させる。
【0033】
ここで、半導体光増幅器の反射膜108及び108´が被覆された端面と、反射部材106と、で光共振器が構成され、該光共振器内で選択された波長の光が増幅された後、回折格子103を透過する光を回折格子103の近傍に設けた不図示の光入力カップラーに導入させて出射光を取出す。
【0034】
図5に光利得媒体として2つの半導体光増幅器を採用した場合のそれぞれの利得波長帯域におけるゲイン特性を示す。501は、光利得媒体108のゲイン特性を示し、利得波長帯域は780nm〜850nmで最大利得波長は815nmである。502は、光増幅媒体108´のゲイン特性を示し、利得波長帯域は810〜880nmで最大利得波長は845nmである。この例では、810nmから850nmの範囲では利得波長帯域は重なりを持つ。
【0035】
図5に示したように複数の光利得媒体を選択することにより、所定の(図5の例では、780nm〜880nmの)連続した利得波長帯域が得られる。
【0036】
本発明の光源装置においては、複数の光利得媒体で生ずる複数の光束を回折格子等の分散素子にそれぞれ入射させ、分散素子によりそれぞれ波長分散させる。
【0037】
ここで、光利得媒体1および2の端面と、波長選択素子と、で光共振器が構成されると共に、分散素子を経て波長分散がなされた光束が、波長選択素子を一定方向に駆動することで、連続的に選択され、光共振器より連続的に出射されるように各構成部材は空間的に配置される。尚、複数の光利得媒体の一の光利得媒体より放出された一の波長帯域の光の出射と、これとは別の光利得媒体より放出された別の波長帯域の光の出射と、を順次行うことができる。
【0038】
ここで、分散素子として回折格子を採用した場合について説明する。
透過型回折格子については、以下の(1)式が成り立つ。
sinα−sinβ=Nmλ ・・・(1)
ここで、αは回折格子への入射角、βは回折格子からの出射角でいずれも回折格子の法線からのなす角度で反時計まわりを正で表す。Nは単位長さあたりの格子本数である。mは回折次数,λは,ここでは,それぞれ。N=1.2本/μm,m=+1,λ=λo±Δλとしλo=0.84μm,Δλ=0.04μmを考える。
この±Δλ=0.04μmは波長可変幅で80nmである。
【0039】
一般に高い回折効率を実現できる体積ホログラムタイプの回折効率ηは,α=βの時に,η=0.9(90%)以上となることが知られている。この時のαとβはλ=λoとすると、(1)式より、(2)式が得られる。
α=−β=30.265° ・・・(2)
【0040】
一方、ここで入射角α=30.265°を固定して、波長λs=λo−Δλ=0.80μm,λe=λo+Δλ=0.88μmとしたときの出射角βs、βeは、(1)式より
−βs=27.129° ・・・(3)
−βe=33.504° ・・・(4)
が得られる。
ここでは、説明の都合上2つの光利得媒体L1,L2を考え、それぞれの利得波長幅(帯域)を50nm、
それぞれの利得波長は、
L1は0.8μmから0.85μm
L2は0.83μmから0.88μm
であるとする。
【0041】
しかし、これらの光利得媒体L1,L2の利得波長帯域を合成すると0.80から0.88μmの範囲となり、80nmの利得波長帯域幅があることが理解される。また0.83から0.85μmの領域はL1とL2の利得波長帯域は重複している。
【0042】
光利得媒体L1とL2からの光束を、上記の回折格子に入射させる。このとき、これらの光束を該回折格子にそれぞれ同一の角度で入射させるのが好適である。そのときの出射角(回折角)は(1)式に示すように、波長λのみにより決まる。
【0043】
以上のようにすることにより、L1とL2の光束は重複する波長では同一の出射角(回折角)となる。(2)式,(3)式,(4)式を参照すると以下が得られる。
L1 波長0.8(μm) 出射角27.129°
波長0.84 出射角30.265
L2 波長0.84 出射角30.265
波長0.88 出射角33.504
ここで、重複する波長域0.83から0.85μmは同時にL1,L2とも同時に発光していてもよいし、この重複している間に発光をL1からL2に切り替えることも可能である。
【0044】
またこの発光の切り替え時間は実際上必須となる場合がある。その場合には発光立ち上がり時間を確保するために、短波長側を受け持つ光増幅媒体から光束の該回折格子α1への入射角に対し、長波長側を受け持つ光増幅媒体からの光束の該回折格子への入射角α2はα1>α2との関係にする。このことにより、短波長側から掃引する場合、長波長側を受け持つ光増幅媒体からの発振波長が時間的に遅れて発生し、発光立ち上がり時間を確保することができる。
【0045】
また、このα1>α2の条件は、長波長側から短波長側に掃引する場合にも同じように光増幅媒体の切り替えで時間的に遅れて切り替わり時の波長が発生するので、同じように発光立ち上がり時間を確保できる。
【0046】
以上のように光増幅媒体を2個の場合を説明したが、3個以上の光増幅媒体でも同様に対応可能である。
【0047】
本発明の光源装置における回折格子への光の入射には、大別すると以下の2つとなる。
【0048】
即ち、
一つは波長選択素子に掃引機構により発振波長が単純に連続して掃引されるように、格子溝を含む面内に含まれるように光入射させる場合である。もう一つは発振波長を重複させ発光の立ち上がりに必要な時間だけ遅らせて発振させ、結果として波長が連続的に掃引されるように、入射角に差を与える配置とする場合である。
【0049】
ここで、回折格子により回折した光束を波長選択素子上に集光させる集光レンズの機能を説明する。回折格子で回折した光束は波長ごとにみると平行光で,各波長は集光レンズへの入射角が異なる。
【0050】
波長選択素子上の分散幅dは、回折格子による分散角Δθg,集光レンズの焦点距離ffoを使って(5)式で表される。
d=ffo×Δθg ・・・(5)
具体的に数値で示す。
上述した(3)式、(4)式より、
波長0.8(μm) 出射角27.129°
波長0.88 出射角33.504
であり、波長0.8から0.88μmの分散角Δθgは
Δθg=6.375°
となる。
【0051】
また集光レンズの焦点距離ffoを
ffo=7.5mm
とすると、(5)式より,波長0.8から0.88μmの分散幅dは、
d=834μm
となる。
【0052】
波長選択素子ユニットは、例えば、回転可能な円盤上に配置された開口スリット列を反射ミラーとして機能させる構成とすることができる。
【0053】
この開口スリットの開口幅をたとえば10μmとして回転円盤の円周状に配置する。そして、この回転円盤を回転することにより,0.8から0.88μmを波長掃引する光源が構成できる。
【0054】
ここで、本願発明の光源装置を好適に適用し得る光干渉トモグラフィー装置(OCT装置)について言及する。
【0055】
OCT装置においては、深さ分解能δLと波長掃引幅Δλとの間には、以下の(6)式の関係がある。
【0056】
【数1】


【0057】
ここで、λは波長掃引における中心波長、nは被検物体の屈折率でヒトの眼の生体組織を例にとると約1.38である。
【0058】
波長域800nm帯、ここでは掃引中心波長λを840nmとするOCT装置を考え、観察する被検体の深さ分解能δLを3μm以上とすると、(6)式より波長掃引幅Δλは80nm以上が必要となる。
【0059】
図5を用いて説明したように複数の特定の光利得媒体を用いると波長掃引幅Δλ=80nm以上が可能となる。
【0060】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳しく説明する。
【0061】
(実施形態1)
図1を参照して本発明の光源装置の一例について説明する。
【0062】
図1は、光利得媒体として半導体光増幅器、光利得媒体より放出される光を波長に応じて分散させる分散素子として回折格子、分散素子により分散した波長の異なる光から所定波長の光を選択する選択素子としてスリット型のミラーを配した円盤状回転体を採用した例である。
【0063】
図1(A)は、図中示した座標系X−Y−Z系のZ−X面にYの負から正の方向をみた図を示している。101、101´は自然放出光を発生またはこれを増幅する半導体光増幅器であり、内部に光利得媒体としての活性層有している。この光増幅器101、101´の一端には高反射膜108、108´の被覆が施されておりレーザ発振を起こす共振器ミラーの一方として機能する。この光増幅器の他端には、反射防止膜109、109´の被覆が施されている。102、102´は反射防止が施された側の活性層から発光する発散光束を平行光束に変換するコリメータレンズである。103はこの平行光束を波長分散させる透過型回折格子であり、1200本/mmの溝本数の体積型ホログラムである。104はこの波長分散した光束を回転円盤105上に集光させる集光レンズであり、ここでは焦点距離ffoとする。回転円盤105は、反射防止が施された面に回転円盤の中心から放射方向に長手方向をとったスリット列106が一定の間隔で図のように設けられている。このスリット列106を構成する各々のスリットは反射機能を有している。回転円盤105はモーター107の回転軸と回転中心を一致するように固定されている。
【0064】
図1(B)は、3次元座標系X−Y−Z系のZ−Y面にXの負から生の方向を見た図を示している。
【0065】
光利得媒体101、101´は、例えば、800nmから850nm、830nmから880nmの利得波長帯域をそれぞれ有している。この2つの光利得媒体は、重複した利得波長域(ここでは830nmから850nm)を有している。光利得媒体101は、短波長側により伸びた利得波長をもち、これに対して光利得媒体101´は、長波長側に利得波長域を持っている。
【0066】
つぎに、光利得媒体101および101´と、回転円盤上の光束111および110の位置関係について説明する。
【0067】
まず、光束111および110の回転円盤105の回転中心から放射方向の距離について説明する。コリメータレンズ102および102´を通った光束は、回折格子103の溝を含む面内でΔΦの角度で配置されている。このため回折格子による回折は生じない。したがって、光束111および110は、集光レンズ104により回転円盤の回転中心から放射方向に以下の(7)式で表される幅dΦの間隔だけ離れて投射される。
dΦ=ΔΦ×ffo ・・・(7)
具体例として、ffo=7.5mm,ΔΦ=10°とすると、dΦ=1.3mmとなる。
【0068】
次に光束111および110の回転円盤105の回転方向と接する方向の位置関係について説明する。
【0069】
この位置は図1(A)で表しているように、光利得媒体101と光利得媒体101´の回折格子103における回折後の光束を、それぞれ実線と点線で示している。
回折格子による射出角の波長依存性は、(1)式、(2)式で示したように、入射角αを回折効率が最大となる30.265°としたとき、
波長0.80(μm) 出射角27.129°
波長0.83(μm) 出射角29.472°
波長0.84(μm) 出射角30.265°
波長0.85(μm) 出射角31.064°
波長0.88(μm) 出射角33.504°
となる。
【0070】
ちなみに波長0.84μmは、光利得媒体101、101´で利得波長域が重複した波長であるので、この位置を座標系の原点とする。集光レンズffo=7.5mmによる光利得媒体101及び101´の光束は、(5)式により,
波長0.80μm この波長の位置−410μm
波長0.83μm この波長の位置−103μm
波長0.84μm この波長の位置 0μm
波長0.85μm この波長の位置+105μm
波長0.88μm この波長の位置+423μm
となる。
【0071】
光利得媒体101、101´の利得波長域を前述したようにそれぞれ800〜850nm,830nm〜880nmとすると、
光増幅媒質101は−410μmから+105μm
光増幅媒質101´は−103μmから+423μm
と回転円盤105上の回転方向に接する方向に分散を生ずる。尚、波長0.84μmの位置を原点として、2つの光利得媒体は−103μmから+105μmは共通の利得波長域を有している。
【0072】
次に図2を参照して説明する。これは回転円盤105を拡大したもので、図2(A)は、スリット列106の拡大図である。それぞれのスリット106どおしの間隔は、前述したように波長800nm〜880nmの分散幅であるd≧834μmとしている。
【0073】
スリット106は、回転円盤105の回転中心から等距離の円周上に、このd間隔で複数配置されている。スリット106の開口幅は集光レンズの収差と回折限界などできまり、数μmから数十μm程度がよい。スリット106の長手方向の長さは数mmであってよい。
【0074】
図2(B)と図2(C)は、2種類のスリット断面を示している。図2(B)は、抜きパターンと呼ばれるもので、遮光部材212から波長選択する透過型スリット開口用にパターンを抜いて回転円盤105を構成している。214は反射部材であり213は反射面である。
【0075】
図2(C)は、残しパターンと呼ばれるものである。215で示される反射防止機能を施した基板105上に波長選択機能を有する反射型のスリットパターン213を残したものである。
【0076】
次に本発明の光源装置を測定装置に適用した測定装置の模式図である図3を参照して説明する。図3では、図1等で説明した構成部品については、同一の番号を付しており、重複した説明は行わない。316、316´はそれぞれ光利得媒体101、101´で発生した光の光取り出し用の入力カップラーである。317は入力カップラー316、316´より入力され導波した光を合波する光合波器である。合波器317で合波され光は導波路319を通って光分岐カップラー320に入る。光分岐カップラー320によって2つに分波した光は、一方は測定装置であるOCT装置322に入る。他方の光は波長を検出する波長検出ユニット321に入り、例えば、波長変化に対応する波数をカウントする。これはKクロックカウンターとも呼ばれ、原理的には図7に示されるマッハツェンダー型の干渉計の構成となっている。波長検出ユニット321の出力は、光利得媒体の駆動電源とそのスイッチをコントロールするドライバー323に入力され、波長検出ユニット321の情報に基づき、光利得媒体101および101´の駆動を制御する。
【0077】
また回転円盤の回転中心と投射光束との相対位置関係について説明する。回転円盤の回転中心はスリットの長手方向の延長線上に存在するのは上述した。ここでは光増幅媒質1および2の切り替え波長840nmの位置のスリットの長手方向と光増幅媒質1および2の回転円盤上の楕円状の分散光束の長軸方向がちょう垂直になるように,回転円盤の回転中心が配置されている。
【0078】
次に駆動動作を図1(A)、図1(B)および図3を参照しつつ説明する。まず、光利得媒体ドライバー323の光利得媒体101の電源をHIGHにし、光利得媒体101´の電源をLOWにする。これにより、光利得媒体101の活性層より放射光が発光する。この発光した光の一部は反射防止膜109側から出射され、コリメータ102により平行光になって回折格子103に入射する。入射光は、この回折格子103により回折し、波長分散した光束は集光レンズ104により回転円盤105のスリット上に111として楕円状でその長軸方向の長さは500μmほどに波長分散して集光する。回転円盤は、図1(A)もしくは図1(B)に示すように矢印の方向に回転する。回転円盤105上のスリット106の位置が、波長840nmの波長の位置を原点とすると、−410μmの位置までくると、波長選択機能を持ったスリットの反射面から波長800nmの光束を反射しはじめる。この反射した800nmの発散光は、集光レンズ104を通って回折格子103に入射する。したがって再び回折格子103より出射されるときはコリメータレンズ102に向け、出射されコリメータレンズ102を経て光利得媒体101に戻る。光利得媒体101の一方の端面108は高反射膜の被覆が施されているので、この端面108と波長選択ユニットの反射ミラーとの間で共振器が構成され、800nmの波長でレーザ発振を生ずる。発振した光束は再びコリメータレンズ102で平行化され、回折格子103に入る。このときこの回折格子103を入射した光90%以上は回折するが、数%はそのまま透過する。
【0079】
この透過光を光入力カップラー316で光導波路319に導き、OCT装置322と波長検出ユニット321に導波する。
【0080】
OCT322では、この光波をそのまま被検物の断層像検出のための光束として用いるが、波長検出ユニット321では波数をカウントしモニターする。波長に換算する波数の初期値は、別途測定もしくは計算やモニターする等により既知としておく。このようにして800nmの波長が発振すると、次に波長選択ユニットのスリットの位置が−410μmの位置から順次−103μmにくると830nmの波長まで順次変化し、さらに0μmのところに来ると840nm波長を発振する。
【0081】
この波長は波長検出ユニット321により検出する。この利得波長域が重複する波長までくると、光利得媒体ドライバー323は光利得媒体101の電源をLOWにし、今度は光利得媒体101´の電源をHIGHに切り替える。
【0082】
光増幅媒体101´の電源をHIGHになり、波長検出ユニット321のスリットの位置が+105μmになると発振波長が850nmになり、さらに+423μmの位置に来ると880nmの波長まで掃引する。
【0083】
このように、スリットの位置を−410μmから+423μmの位置に移動させるとき、その間のスリット位置−103μmから+105μmの間で光利得媒体の駆動を切り替えることにより、波長800nmから880nmまでの掃引範囲で連続して波長掃引を行う光源が実現できた。
【0084】
図6は、この切り替えのタイミングを示した説明図である。図6においては、波長λm1=830nmからλm2=850nmの間で光利得媒体101から光利得媒体101´に切り替えることにより、波長λs=800nmからλe=880nmの連続した波長掃引が可能となること示している。
【0085】
以上のように一つのスリットが−410μmから+423μmまで移動すると所定の掃引範囲での1掃引が可能となり、
スリットはd(>834μm)間隔に複数配置してあるので、次のスリットにより、順次波長掃引動作がなされる。
【0086】
本発明において光を増幅させる光利得媒体としては、例えば、半導体レーザを構成する活性層や、半導体光増幅器(SOA(Semiconductor Optical Amplifier))を構成する活性層、エルビウムやネオジウム等を含有する希土類添加(イオンドープ)光ファイバー、光ファイバー中に色素を添加して色素により増幅を行うもの等を用いることができる。
【0087】
半導体レーザや半導体光増幅器は、小型で且つ高速制御が可能であり、光源装置のコンパクト化、高速制御の観点から好ましい。
【0088】
半導体レーザや半導体光増幅器を構成する活性層は、一般的な半導体レーザを構成する化合物半導体等を用いることができ、具体的にはInGaAs系、InAsP系、GaAlSb系、GaAsP系、AlGaAs系、GaN系等の化合物半導体を挙げることができる。これらの活性層は、利得の中心波長が、例えば、840nm、1060nm、1150nm、1300nm、1550nm等の中から光源の用途等に応じて適宜、選択して採用することができる。
【0089】
希土類添加光ファイバーは、高利得で良好な雑音特性を得るためには好適である。色素添加光ファイバーは、蛍光色素材料やそのホスト材料などを適宜選択することで可変波長の選択肢が増すという利点がある。
【0090】
本発明において、光の波長に応じて分散させる分散素子は、静的素子として、回折格子(透過型,反射型)、プリズム、さらには回折格子とプリズムを合体させたもの等を採用することができる。
【0091】
波長選択素子としては、遮光性の部材に光を透過する開口部を設け、開口部より光を透過させる素子の他、各種空間変調素子を用いることができる。空間変調素子としては、単一もしくは複数の微小な開口列を有し開口部に入射した光束を反射もしくは透過させる素子(ライトバルブ)の他、進行性回折格子であるAOや電気光学素子(Electric Opitical device:EO)等を採用することができる。
【0092】
(実施形態2)
これ以降の説明でも、原則として図面が異なる場合でも、同一の構成部品については、同一の番号を付すこととし、重複した説明はなるべく行わないこととする。
【0093】
図8、図9、図10を参照して第二の実施形態について説明する。第一の実施形態では、2つの光利得媒体より発生した光束を回折格子に同一の入射角で入射させた。これにより回転円盤上に投射した楕円状に波長分散した光束の波長重複位置が、回転円盤上で一致するようにした。
【0094】
本第二の実施形態では、この回転円盤上の波長重複位置を意図的にずらした形態について説明する。
【0095】
これは第一の実施形態は、波長の切り替え時間が波長掃引時間に比べ無視できるほど短いときに実現可能であるが、波長切り替え時間が数〜数十nsecが必要な場合は、この時間分、光利得媒体の駆動切り替え時に所定波長の発振が遅れて生ずると都合がよい。
【0096】
こうした駆動は、第一の実施形態のように、2つの光利得媒体からの光束を、回折格子に同一の入射角で入射させるのではなく、異なった入射角で入射させることで実現できる。
【0097】
図8(A)は、図1(A)と同様にZ−X面のYの負側から正の側に投影した図である。ここで、101´は、第一の実施形態と同様に利得波長域が長波長側に位置する光利得媒体101´からの光束を表している。光利得媒体101とのなす角をΔθとする。
図8(B)は、図1(B)と同様にZ−Y平面のXの負側から正の側に投影して示した図である。光利得媒体101と光利得媒体101´のなす角をΔΦとしている。
【0098】
図9(A)は、Δθを縦軸に、ΔΦを横軸として、二つの光利得媒体より回折格子に入射する光束の主光線のなす角を場合分けして説明するグラフである。
図9(A)のグラフは、Δθが正で、ΔΦも正の領域をA、Δθが正で、ΔΦが負の領域はB、また、Δθが負で、ΔΦも負の領域はC、Δθが負で、ΔΦが正の領域はDとした。
図9(B)は、光利得媒体101、101´からの光束の主光線が成す角が事象A,B,C,Dの領域にあるときの回転円盤上の波長分散光束の位置関係を表した説明図である。ここで、光利得媒体101は、800nm〜850nmの利得波長帯域を有し、光利得媒体101´は、830nm〜880nmの利得波長帯域を有している。
【0099】
図10(A)は、図9(B)で示した事象AおよびBの場合、図10(B)は、事象CおよびDの場合のスリットホイールの回転角と発振波長λの関係をそれぞれ示したグラフである。
図9(B)においては、事象AおよびBでは、ともにΔθ>0であり、短波長側の光利得媒体101(800nmから850nm)からの光束が850nmになったときには、光増幅媒体101´(830nmから880nm)からの発振波長が850より小さく840nmあたりであることを示している。
【0100】
これは光利得媒体101から光利得媒体101´に切り替えるときに図10(A)に示すように光利得媒体101´に切り替える時間が確保できることを意味している。
【0101】
一方、事象CおよびDでは、Δθ<0であり、短波長側の光利得媒体101(800nmから850nm)からの光束が850nmになったときには、光増幅媒体101´(830nmから880nm)からの発振波長が850より大きく860nmあたりであることを示している。
【0102】
これは光利得媒体101から光利得媒体101´に切り替えるときに図10(B)に示すように光利得媒体101´に切り替える時間が確保できないことと、掃引波長が一部欠落することを示している。
【0103】
このことは、OCT画像において、この欠落波長幅に対応する被検物の深さ方向の周期構造が欠落することを意味しており、このΔθ<0の事象であるC,Dの領域はOCT光源として用いる場合には、不都合を生じる可能性がある。
【0104】
これまでの説明より、図1を用いて説明した第一の実施形態は、本実施形態におけるΔθ=0の場合であることが理解される。
【0105】
さらに、図8(B)において、ΔΦ>0の場合は、長波長側の光利得媒体101´からの光束の回転円盤の投射位置は、短波長側の光利得媒体101のそれに比べ、回転中心から放射方向に向けて外側に位置する。
【0106】
逆に、ΔΦ<0の場合は、側の光利得媒体101´からの光束の回転円盤上の投射位置は、短波長側の光利得媒体101のそれに比べ、回転中心から放射方向に向けて外側に位置することになる。
【0107】
尚、本発明の装置は、以下の形態の装置を包含する。
【0108】
即ち、前記複数の光利得媒体を、前記利得帯域が短波長側にあるものから順次M,M・・Mとして、前記回折格子の法線と該回折格子の溝に平行な方向とを含む平面に対する、前記複数の光利得媒体より前記回折格子に入射する入射光の主光線の各々と、がなす角度を、順次α,α・・α(ただしα>αk+1、ここでKは、正の整数である。)として、前記主光線同士がなす角度Δθ(Δθ=α−α,Δθ=α−α,・・Δθ=α−αn+1)が、Δθ(Δθ,Δθ・・Δθ)≧0を満足するように、前記波長選択素子を含んで構成される光共振器内に、前記複数の光利得媒体が配置されている装置である。
【0109】
更に、以下の形態の装置を包含する。
【0110】
即ち、前記回折格子の法線を含み、該回折格子の溝に平行な方向と垂直な平面と、前記複数の光利得媒体M,M・・Mより前記回折格子に入射する入射光の主光線の各々と、がなす角度を、順次β,β・・β(ただしβ>βk+1、ここでKは、正の整数である。)として、前記主光線同士がなす角度ΔΦ(ΔΦ=β−β,ΔΦ=β−β,・・ΔΦ=β−βn+1)が、ΔΦ(ΔΦ,ΔΦ・・ΔΦ)≧0又は、<0を満足するように、前記複数の光利得媒体M,M・・Mが配置されている装置である。
【0111】
(実施形態3)
図11は、第三の実施形態に係る装置の例である。図11の装置においては、ホイール原点位置検出機構1125と、ホイール原点検出スリット1124を設けた点が、第一の実施形態で説明した図3の装置との大きな差異である。その他の構成については、図3の装置と同様である。
【0112】
本形態の装置では、ホイール原点位置検出機構1125により、ホイール(回転円盤)の回転原点が検出される。ホイール(回転円盤)には原点検出用のスリット1124が配置されている。この回転原点1124を基準として、光利得媒体101と101´の切り替えタイミング信号をつくり、その信号にしたがって光利得媒体101と101´の電源駆動を切り替える。波長検出ユニット321からの信号を使わなくて済むので、より切り替えが安定し、簡易な波長掃引が可能となる。
【0113】
(実施形態4)
図4に本形態の装置の模式図を示す。本形態の装置は、第一の実施形態の装置である図3に示した装置における光利得媒体101及び101´の電気的ON−OFFを制御(スイッチング)による切り替え機構に代えて、光スイッチ416及び416´を採用した点が、図3の装置との主な差異である。
【0114】
図4に示した装置では、入力カップラー316、316´と合波カップラー317との間に光スイッチ416及び416´を設け、波長検出ユニット321に接続された光スイッチドライバー423で光スイッチ416及び416´を制御する。ここでは、複数の波長帯域の光を光カップラーを用いて合波する光路内に光スイッチが設けられ、光スイッチを用いて複数の波長帯域の光を切り替える。
【0115】
本形態の装置では、光利得媒体101及び101´は、切り替えなく共にON状態とし、波長検出ユニット321の信号に基づいて光スイッチドライバー423にON/OFFの指示が出され、この指示に従って光スイッチ416及び416´のON/OFFが切り替え制御される。
【0116】
光スイッチとしては、光路変換スイッチとして電気光学効果(EO)や音響光学効果(AO)を用いた導波路型のものや、バルク型光学素子(プリズム、ミラー、レンズ)を用いたもの等を採用できる。
【0117】
(実施形態5)
図12に第五の実施形態の装置例を示す。これは第二の実施形態で説明した図8で用いた記号で表現するとΔθ=0、ΔΦ≠0の場合の装置に相当する。ここで102は、コリメータレンズであるが、これまでの例とは異なり、このコリメータレンズは、光利得媒体101と101´が共用している。この配置にすると光利得媒体101と101´の出射方向を平行にすることにより、より実装しやすく、また、コリメータが一つになるので安定な光学系とすることができる。
【0118】
(実施形態6)
図13に第六の実施形態の装置例を示す。図13の装置は、図8で用いた記号で表現するとΔθ>0、ΔΦ=0の場合の装置に相当する。図13の装置は、Δθ>0、ΔΦ=0とした点を除いて、図3で説明した装置と同様の構成である。
【0119】
本実施形態の装置では、光利得媒体101および101´からの光束は回転円盤105上では回転中心から同一の距離に投射する。
【0120】
第一の実施形態の装置例では、上述したように、切り替え波長840nmの位置のスリットの長手方向と光利得媒体101および101´からの回転円盤上への楕円状の投射分散光束の長軸方向が垂直となるように、回転円盤の回転中心が配置されている。これはΔΦ≠0であるため、光利得媒体101および101´の波長切り替え時の掃引波長の連続性を実現するうえでのことである。
【0121】
しかし、回転中心の位置を調整することが困難である場合がある。本実施形態の装置例では、ΔΦ=0のため、光利得媒体101および101´からの光束は回転円盤上では回転中心から同一の距離に投射される。これよりスリットの長手方向と楕円状の投射分散光束の長軸方向の垂直性が必要なくなり、回転円盤の回転中心の位置設定の厳密さが緩和できる利点が生ずる。図14は、スリットホイールの回転角と発振波長λの関係を示したグラフであるが、Δθ>0であるため、第二の実施形態を示した図10(A)のように、光利得媒体101から光利得媒体101´に切り替える際、図10(A)と同様に切り替え時間が確保できることを示している。
【0122】
(実施形態7)
図15及び図16を用いて実施形態の装置を説明する。図15に示した装置は、図8における、Δθ=0、ΔΦ=0の場合に相当する。ここで、1518は、光利得媒体101および101´の発振光を合波もしくは分波するハーフミラーもしくは偏光ビームスプリッタである。
【0123】
このようにすることで、光入力カップラー316は一つで構成でき、図13等の装置で示した合波カップラー317を省くことができ、光利用効率を向上させることができる。
【0124】
光利得媒体101および101´からの光束は、共通の利得波長領域では、重なり会うので、波長検出ユニット321により波長を検出し、その検出結果に基づいて光利得媒体101と101´の駆動を切り替えている。また、回転円盤上の位置関係は、実施形態6の装置同様に重なっているので、回転円盤の回転中心の位置設定の厳密さを同様に緩和できる。図16は、本形態のスリットホイールの回転角と発振波長λの関係を示したグラフである。
【0125】
(実施形態8)
図17及び図18を用いて説明する。
【0126】
本形態の装置は、図15に示した装置と同様に、Δθ=0、ΔΦ=0に相当する装置である。
【0127】
しかし、図17の装置では、1718はダイクロイックミラーで構成している。光利得媒体101と101´の利得波長の重なりはこのダイクロイックミラーにより波長分離される。
【0128】
図18の装置例では、1826の光学フィルターで光利得媒体101、101´のの利得波長の重なりを分離している。
【0129】
ここでは、1718にはハーフミラーを用いる。
【0130】
図17、図18の装置例では共に、光利得媒体101と101´との波長駆動切り替えは必要ないので、より簡便な波長掃引光源が構成できる。
【0131】
(実施形態9)
ポリゴンミラーを用いた装置形態について、図18を参照して説明する。
【0132】
図18に示した装置は、移動スリットを適用した例であり、図18(A)は図18(B)をX軸の負の方から正の方に見た図、図18(C)は図18(B)をY軸の負の方から正の方に見た図である。
【0133】
光利得媒体101、からの発散光束は回折格子103の溝を含む平面内に設置され、コリメータで平行化されR1として回折格子に入射する。そこで波長の角度分散しR1’の波長の光束はポリゴンミラー1905の一面に入射する。そして、反射しR1’’となって往きと同じ回折格子103に入射し、R1と同一方向に戻り、光利得媒体101を経てこの波長で反射する。
【0134】
ポリゴンミラー1905が回転するとその回転角により選択される波長は掃引されることになる。
【0135】
一方、光利得媒体101´の光束は光利得媒体101の光束に対して、図に示すように回折格子103の溝を含む平面内で、かつ角度をなしており、実施形態1で示したのと同様に光入力カプラー316および316´において、光利得媒体101と101´の利得波長域の重なりを持ちながら発振する。
【0136】
そこで、不図示の波長検出ユニットにより、光利得媒体101および101´を駆動制御し発振波長域をつなげて波長挿引光源を構成できる。
【0137】
(実施形態10)
図20は、第一の実施形態で示したスリットホイール105の代わりに、遮光部2051とミラー2052で構成した波長選択ユニットを用いた装置の図である。遮光部2051にはスリット106が開口として構成され、これによって選択された波長は、,ミラー2052で反射し光利得媒体101、101´で光増幅され、共振器ミラー108、108´および2052の間で共振する。波長掃引はスリット106を配置した遮光部2051を図の矢印方向に駆動することでなされる。
【0138】
この光源装置の出力は、第一の実施形態で示した例と同様に回折格子103の0次透過光を用いて得られる。
【0139】
本形態では、簡易な構成の装置とすることができる。
【0140】
(実施形態11)
本実施形態は、本発明の波長挿引光源装置を備えた光干渉断層撮像装置(OCT)の例である。
【0141】
OCT装置は、一方のアーム(測定部)において得られる光軸方向に複数の界面を有する検体からの反射光と、他方のアーム(参照部)において得られる参照面からの反射光と、を干渉させ、光源の波長を挿引することにより得られる変調干渉信号をフーリエ変換して、断層情報を得る装置である。
【0142】
図21は、本発明のOCT装置の一例を示す模式図である。
【0143】
図21において2182は本発明の波長挿引光源装置を用いた光源部、2186は検体である眼を構成する眼底の網膜を示す。2190は眼底を走査するためのミラーであり、検体2186からの反射光を伝達させる光ファイバー2185と共に検体測定部を構成する。
【0144】
2188は参照ミラーであり、参照ミラーからの反射光を伝達させる光ファイバー2187と共に参照部を構成する。
【0145】
2184は検体測定部からの反射光(光束)と参照部からの反射光(光束)を合波して干渉部を構成するファイバーカップラーである。2195は干渉部からの干渉光(変調干渉信号)を検出する光検出部としての光電変換素子である。
【0146】
2196は電気的に検出した信号をデジタル化し、フーリエ変換などのデータ処理を行い、検体の断層画像を構築する画像処理部としてのコンピュータである。つまり、光検出部で検出された光に基づいて断層像が得られる。2197はその断層像を可視化するディスプレーである。
【0147】
光源部2182より出射された光束は、ファイバー2183を通り、カップラー2184で2方向に分岐する。
【0148】
分岐した一方の光束は、ファイバー2185を通り、検体である眼の網膜を照射する。そして反射光が同様にファイバー2185を再び通りファイバーカップラー2184に戻る。
【0149】
分岐した他方の光束はファイバー2187を通り参照ミラー2188を照射する。この反射光はファイバー2187を再び通りファイバーカップラー2184に戻る。
【0150】
カップラー2184で被検面からの反射光と参照面からの反射光が干渉した後、ファイバー2194を通って光電変換素子2195に入る。
【0151】
このとき光源部2182より出射される光の波長を掃引変化させると、前述のように断層構造に応じた変調干渉信号が得られる。
【0152】
この信号をデジタル化しコンピュータ1196でフーリエ変換することにより断層信号が得られる。これはポイントとしての断層信号なので、ミラー2190を走査して一次元方向の断層信号を測定し、ディスプレー2197により可視化することにより光断層像が得られる。
【0153】
本実施形態のOCT装置は、光源部2182に本発明の光源装置を用いたものであり、この光源装置は広範囲の帯域を波長掃引が可能であるため、奥行き分解能が高解像な断層画像情報を取得可能である。
【符号の説明】
【0154】
101,101´ 光利得媒体
103 分散素子
106 波長選択素子としてのスリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を増幅させる光利得媒体と、該光利得媒体より放出される光を波長に応じて分散させる分散素子と、波長選択素子と、を備え、前記光利得媒体より放出され前記分散素子により分散した波長の異なる光から所定波長の光を、前記波長選択素子により選択して出射する光の発振波長を変化可能な光源装置であって、
前記光利得媒体を複数備え、該複数の光利得媒体は、利得波長帯域が互いに一部重複すると共に異なる最大利得波長を有しており、前記複数の光利得媒体で増幅された複数の波長帯域の光より、前記所定波長の光を選択して出射することを特徴とする光の発振波長を変化可能な光源装置。
【請求項2】
前記複数の光利得媒体の一の光利得媒体より放出された一の波長帯域の光の出射と、これとは別の光利得媒体より放出された別の波長帯域の光の出射と、を順次行うことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記一の波長帯域の光を掃引して出射し、前記別の波長帯域の光を掃引して出射することを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記複数の光利得媒体の電気的なスイッチングにより前記複数の波長帯域の光を切り替えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
前記複数の波長帯域の光を光カップラーを用いて合波する光路内に光スイッチが設けられ、該光スイッチを用いて前記複数の波長帯域の光を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
前記光利得媒体は、半導体光増幅器であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光源装置。
【請求項7】
前記分散素子は、回折格子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光源装置。
【請求項8】
前記複数の光利得媒体を、前記利得帯域が短波長側にあるものから順次M,M・・Mとして、前記回折格子の法線と該回折格子の溝に平行な方向とを含む平面に対する、前記複数の光利得媒体より前記回折格子に入射する入射光の主光線の各々と、がなす角度を、順次α,α・・α(ただしα>αk+1、ここでKは、正の整数である。)として、前記主光線同士がなす角度Δθ(Δθ=α−α,Δθ=α−α,・・Δθ=α−αn+1)が、Δθ(Δθ,Δθ・・Δθ)≧0を満足するように、前記波長選択素子を含んで構成される光共振器内に、前記複数の光利得媒体が配置されていることを特徴とする請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記回折格子の法線を含み、該回折格子の溝に平行な方向と垂直な平面と、前記複数の光利得媒体M,M・・Mより前記回折格子に入射する入射光の主光線の各々と、がなす角度を、順次β,β・・β(ただしβ>βk+1、ここでKは、正の整数である。)として、前記主光線同士がなす角度ΔΦ(ΔΦ=β−β,ΔΦ=β−β,・・ΔΦ=β−βn+1)が、ΔΦ(ΔΦ,ΔΦ・・ΔΦ)≧0又は、<0を満足するように、前記複数の光利得媒体M,M・・Mが配置されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記波長選択素子は、光を反射または透過する回転体を用いてなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の光源装置。
【請求項11】
前記回転体には、スリット状の開口部が設けられ該開口部が光を反射または透過することを特徴とする請求項10に記載の光源装置。
【請求項12】
前記回転体は、ポリゴンミラーであることを特徴とする請求項11に記載の光源装置。
【請求項13】
前記回転体は、円盤状であることを特徴とする請求項10に記載の光源装置。
【請求項14】
前記複数の光利得媒体より前記回折格子を経て前記円盤状の回転体に照射される前記複数の波長帯域の光は、前記円盤の半径方向に並んで位置することを特徴とする請求項13に記載の光源装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の光源装置を用いた光源部と、
前記光源部からの光を検体に照射し、検体からの反射光を伝達させる検体測定部と、
前記光源部からの光を参照ミラーに照射し、該参照ミラーからの反射光を伝達させる参照部と、
前記検体測定部からの反射光と前記参照部からの反射光とを干渉させる干渉部と、
前記干渉部からの干渉光を検出する光検出部と、
前記光検出部で検出された光に基づいて、前記検体の断層像を得る画像処理部と、
を有することを特徴とする光干渉断層撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−25252(P2013−25252A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162158(P2011−162158)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】