説明

光無線アクセスシステムおよび方法

【課題】分散型MIMO−RoF構成の光無線アクセスシステムを提供する。
【解決手段】CSと複数のBSとの間で伝送される光信号の多重(BS多重)を、複数のBSにそれぞれ異なる波長を割り当て、WDMによる光多重で行うBS多重手段を備え、CSとBSに設置される複数のアンテナとの間で伝送される電気信号の多重(アンテナ多重)を行うアンテナ多重手段を備え、CSは、BSでアンテナ多重されWDM伝送された上り信号を光受信するBS対応の光受信部で各アンテナ対応に変換された信号を、セル毎のグループに組み替えてMIMO処理部に出力する手段と、セルごとのグループとしてMIMO処理を行った各アンテナ対応の下り信号をBS毎のグループに組み替え、アンテナ多重してBS対応の波長で光送信する光送信部に出力する手段21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送路および無線伝送路を介して信号の送受信を行う光無線ハイブリッドネットワークにおいて、経済的かつ効率的に基地局を収容する光無線アクセスシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において中央局(CS: Central Station )と基地局(BS: Base Station)との間の伝送路の長距離化、高速化を実現するための技術として、低損失、広帯域な光ファイバ伝送路を介して高周波(マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波)信号を送受信するRoF(Radio-on-Fiber)技術がある。
【0003】
図1は、RoFシステムの概要を示す(非特許文献1,非特許文献2)。
図1において、CSからBSへの下り方向では、CSは変調された電波信号をさらに光変調し、光ファイバ伝送路101を介してBSへ送信する。BSは光信号を受信すると、復調した電波信号をアンテナから端末へ無線送信する。BSからCSへの上り方向では、BSは端末から電波信号を無線受信すると、電波信号を光変調して光ファイバ伝送路1を介してCSへ送信する。CSは光信号を受信、復調し、電波信号を取り出す。このようなRoF技術を用いることで、信号処理部をCSへ集中させることができるため、BSの構成を簡易化できると同時にネットワークのスケーラビリティが向上する。
【0004】
また、経済的な光アクセスネットワークとして、複数のユーザで光ファイバ伝送路を共有するポイントツーマルチポイント型の受動光ネットワーク(PON: Passive Optical Network )がある。
【0005】
図2は、PONシステムの概要を示す。
図2において、PONシステムは、1つの光加入者線終端装置(OLT: Optical Line Terminal )が複数の光ネットワーク終端装置(ONU: Optical Network Unit)と光ファイバ伝送路101および1対n(nは2以上の整数)の光カプラ102を介して1対nの通信を行うネットワークである。OLTと各ONUとの通信は時分割多重(TDM)方式により行われる。
【0006】
また、PONの実現形態の1つとしてWDM(Wavelength Division Multiplexing)−PONがある。WDM−PONシステムは、光カプラ102に代えて波長スプリッタ(WDMフィルタ)を用い、ONU毎に異なる使用波長を割り当てることでOLTと各ONUとの間の通信を実現する。また、ONUに波長を選択できる光源を備えたり、OLT側から供給される連続光を変調する変調器を備えて変調光を折り返すことでONUのカラーレス化を図ることができ、経済的な運用が可能となる(非特許文献3)。
【0007】
さらに、複数の送受信アンテナを用いた空間多重により無線通信の伝送容量を増大させるMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術がある。MIMO信号をRoF技術を用いて光ファイバ伝送路に重畳するMIMO−RoFシステムでは、IEEE 802.11nやIEEE 802.16 などで規定されるMIMO信号を低損失、広帯域な光ファイバ伝送路を介して伝送することができるため、CSとBSとの間の伝送路の長距離化、高速化が可能となる。
【0008】
また、複数の送信アンテナ間距離ないし受信アンテナ間距離を広げることで、さらに無線伝送路の伝送容量を増大できることが知られている。例えば、数100 メートル程度離れた複数のBS間で1つのMIMOセルを形成する分散型MIMOシステムがある。分散型MIMOシステムにおいて、CSとBSとの間でRoF技術を用いて光ファイバ伝送路を介して通信を行うネットワークが分散型MIMO−RoFネットワークである。
【0009】
図3は、分散型MIMO−RoFシステムの概要を示す(非特許文献4)。
図3において、CSと複数のBSは、スター・バス構成の光ファイバ伝送101および光カプラ102を介して接続される。各光ファイバ伝送路上のBSは、それぞれ光カプラ(図示せず)を介して順次接続される。ここで、1つのBSに4本のアンテナを配置し、4個のBSに分散配置された4本のアンテナによって囲まれた空間をMIMOセルと定義する。各BSのアンテナ1〜4と、MIMOセルを囲むアンテナ1〜4の関係は図3に示す通りである。なお、CS−BSの接続形態およびアンテナ数は任意である。
【0010】
CSに接続される複数のBSに対応する信号の多重(BS多重)と、BSに設置される複数のアンテナに対応する信号の多重(アンテナ多重)は、TDM(Time Division Multiplexing)で行われる。MIMOセル内の無線端末は、MIMOセルを囲むアンテナ1〜4との間で無線通信し、このMIMOセルを囲むアンテナ1〜4を収容する4個のBSを介してCSに接続され、CSでMIMO処理が行われる。このような分散型MIMO−RoFシステムは、複雑なMIMO処理をCSで集中的に行うことができるため、BSを簡易化できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Hiroyo Ogawa, “Microwave and Millimeter-Wave Fiber Optic Technologies for Subcarrier Transmission Systems, ”IEICE Transactions on Communications, Vol.E76-B, No.9, pp.1078-1090, September 1993.
【非特許文献2】Teppei Nakasyotani, Hiroyuki Toda, Toshiaki Kuri, Ken-ichi Kitayama,“Wavelength-Division-Multiplexed Millimeter-Waveband Radio-on-Fiber System Using a Supercontinuum Light Source,”IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, Vol.24, no.1, pp.404-410, January 2006.
【非特許文献3】Katsumi Iwatsuki, Jun-ichi Kani,“Applications and Technical Issues of Wavelength-Division Multiplexing Passive Optical Networks with Colorless Optical Network Units,”IEEE/OSA Transactions on Optical Communications and Networking, Vol.1, No.4, pp.C17-C24, September 2009.
【非特許文献4】Shutai Okamura, Minoru Okada, Katsutoshi Tsukamoto, Shozo Komaki,“Investigation of RoF Link Noise Influence in Ubiquitous Antenna System,”IEICE Transactions on Electronics, Vol.E80-C, No.8, pp.1527-1535, August 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の分散型MIMO−RoFシステムは、TDM−PONシステムをベースにしたものであり、収容するBS数に比例して処理速度が高速になり、経済的かつ効率的にBS数を増やすことができなかった。また、WDM−PONシステムを用いた分散型MIMO−RoFシステムについても検討されていなかった。
【0013】
本発明は、分散型MIMO−RoFシステムにおいて、経済的かつ効率的にBSを収容し、またBS数を効率的に増やすことができる光無線アクセスシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、1つのCSが複数のBSと光ファイバ伝送路を介して接続され、複数のBSに分散して設置された複数のアンテナによって囲まれる空間で1つのセルを形成し、各セル内の無線端末とMIMO技術を用いて無線通信を行い、さらに1つのCSと複数のBSとの間でRoF技術を用いて光通信を行う分散型MIMO−RoF構成の光無線アクセスシステムにおいて、CSと複数のBSとの間で伝送される光信号の多重(BS多重)を、複数のBSにそれぞれ異なる波長を割り当て、WDMによる光多重で行うBS多重手段を備え、CSとBSに設置される複数のアンテナとの間で伝送される電気信号の多重(アンテナ多重)を、BSの複数のアンテナにそれぞれ異なる符号を割り当て、CDMによる電気多重で行うアンテナ多重手段を備え、CSは、BSでアンテナ多重されWDM伝送された上り信号を光受信するBS対応の光受信部で各アンテナ対応に変換された信号を、セル毎のグループに組み替えてMIMO処理部に出力する手段と、セルごとのグループとしてMIMO処理を行った各アンテナ対応の下り信号をBS毎のグループに組み替え、アンテナ多重してBS対応の波長で光送信する光送信部に出力する手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
アンテナ多重手段は、アンテナ多重をBSの複数のアンテナにそれぞれ異なる符号を割り当て、CDMによる電気多重で行う構成でもよい。また、アンテナ多重手段は、アンテナ多重をBSの複数のアンテナにそれぞれ異なるタイムスロットを割り当て、TDMによる電気多重で行う構成でもよい。また、アンテナ多重手段は、アンテナ多重をBSの複数のアンテナにそれぞれ異なる周波数を割り当て、FDMによる電気多重で行う構成でもよい。
【0016】
BS多重手段は、1つのCSと複数のBSがFSRを有する光合分波器および当該光合分波器に接続される複数の光ファイバ伝送路を介して接続され、当該複数の光ファイバ伝送路にそれぞれ接続される複数のBSに当該FSRごとの波長を割り当て、列ごとのBSに割り当て波長の光信号を合分波する共通帯域の光フィルタを備えた構成である。
【0017】
また、複数の光ファイバ伝送路に接続される列ごとのBSに割り当てられる上り信号と下り信号の波長をずらして設定し、上り信号と下り信号で波長の再利用を行う構成としてもよい。また、複数の光ファイバ伝送路に接続される列ごとのBSに割り当てられる上り信号と下り信号の波長をFSRの整数倍離して設定する構成としてもよい。
【0018】
第2の発明は、1つのCSが複数のBSと光ファイバ伝送路を介して接続され、複数のBSに分散して設置された複数のアンテナによって囲まれる空間で1つのセルを形成し、各セル内の無線端末とMIMO技術を用いて無線通信を行い、さらに1つのCSと複数のBSとの間でRoF技術を用いて光通信を行う分散型MIMO−RoF構成の光無線アクセス方法において、CSと複数のBSとの間で伝送される光信号の多重(BS多重)を、複数のBSにそれぞれ異なる波長を割り当て、WDMによる光多重で行い、CSとBSに設置される複数のアンテナとの間で伝送される電気信号の多重(アンテナ多重)を、BSの複数のアンテナにそれぞれ異なる符号を割り当て、CDMによる電気多重で行い、CSは、BSでアンテナ多重されWDM伝送された上り信号を光受信するBS対応の光受信部で各アンテナ対応に変換された信号を、セル毎のグループに組み替えてMIMO処理部に出力し、セルごとのグループとしてMIMO処理を行った各アンテナ対応の下り信号をBS毎のグループに組み替え、アンテナ多重してBS対応の波長で光送信する光送信部に出力することを特徴とする。
【0019】
アンテナ多重手段は、アンテナ多重をBSの複数のアンテナにそれぞれ異なる符号を割り当て、CDMによる電気多重で行ってもよい。また、アンテナ多重は、BSの複数のアンテナにそれぞれ異なるタイムスロットを割り当て、TDMによる電気多重で行ってもよい。また、アンテナ多重は、BSの複数のアンテナにそれぞれ異なる周波数を割り当て、FDMによる電気多重で行ってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、CSと複数のBSとの間の伝送方式として柔軟性とスケーラビリティに富むWDMアクセス技術を採用し、同一CS上のBS多重をWDMによる光多重で行い、さらに同一BS上のアンテナ多重をCDMまたはTDMまたはFDMによる電気多重で行うことにより、分散型MIMO- RoFシステムにおけるBS数を効率的かつ経済的に増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】RoFシステムの概要を示す図である。
【図2】PONシステムの概要を示す図である。
【図3】分散型MIMO−RoFシステムの概要を示す図である。
【図4】CSに収容されるBSの配置例を示す図である。
【図5】本発明の光無線アンテナシステムの下り信号における構成例を示す図である。
【図6】本発明の光無線アンテナシステムの上り信号における構成例を示す図である。
【図7】BSの波長割り当て例1を示す図である。
【図8】BSの波長割り当て例1におけるBSの構成例を示す図である。
【図9】BSの波長割り当て例2におけるBSの構成例1を示す図である。
【図10】BSの波長割り当て例2におけるBSの構成例2を示す図である。
【図11】BSの波長割り当て例2におけるBSの構成例3を示す図である。
【図12】BSの波長割り当て例3におけるBSの構成例を示す図である。
【図13】BSの波長割り当て例4を示す図である。
【図14】本発明の光無線アンテナシステムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の光無線アクセスシステムは、光アクセス方式としてWDM−PONシステムを用いた分散型MIMO−RoFシステムであり、以下具体的な実施例について説明する。
【0023】
図4は、CSに収容されるBSの配置例を示す。ここでは、n×m(n、mは2以上の整数)のBSについて、4個のBS(j,i+1) 、BS(j,i) 、BS (j+1,i)、BS(j+1,i+1) によって囲まれるMIMOセルをセル(j,i) と定義する(1≦j≦n−1,1≦i≦m−1)。各BSには異なる波長が割り当てられ、それぞれに割り当てられた波長を利用してCSとの通信が行われる。以下、BS(j,i) に割り当てられる波長をλ(j,i) とするが、λ(j,i) は下り信号と上り信号で異なる波長である。CSと各BSとの間で送受信される信号は、波長による合分波が可能なため、ロスバジェットの観点からCSは多数のBSを収容することができる。
【0024】
図5は、本発明の光無線アンテナシステムの下り信号における構成例を示す。
ここでは、1つのBSに4本のアンテナ1〜4(図3参照)を配置し、同一BS上のアンテナ多重をCDM(Code Division Multiplexing)による電気多重、CS上のBS多重をWDMによる光多重で実現する場合を示す。
【0025】
図5において、ここに示す9個のBSは、図4に示す中心部の9個のBSに対応する。例えば、BS(j,i) には下り信号の波長λ(j,i) が割り当てられ、光フィルタでWDM信号から当該波長の下り信号を分波して受光し、さらに4本のアンテナ1〜4から送信するMIMO信号を復号化し、セル(j-1,i) ,セル(j-1,i-1) ,セル(j,i-1) ,セル(j,i) へ送信するものとする。
【0026】
CSから各セルに送信するMIMO信号のうち、ここではセル(j,i) を囲む4本のアンテナから送信するMIMO信号RF1〜RF4は、MIMO送信処理/組み替え部21を介して当該4本のアンテナを収容するBS毎のグループに組み替えられる。すなわち、MIMO信号RF1〜RF4は、セル(j,i) を囲む4本のアンテナ1〜4をそれぞれ収容するBS(j+1,i) 、BS(j+1,i+1) 、BS(j,i+1) 、BS(j,i) のグループに分けられる。
【0027】
BS毎に組み替えられたMIMO信号RF1〜RF4は、各BSに割り当てられた波長の下り信号を送信する送信部Txに入力し、それぞれエンコーダ1〜4の各符号を用いてCDMにより電気多重され、各波長の下り信号に光変調して送信される。各BS対応の送信器Txから各BSへ送信される光信号は光合分波器11で光多重され、下り信号を伝送する光ファイバ伝送路Dに送信される。
【0028】
光ファイバ伝送路Dを介して伝送された下り信号は、光合分波器13で光ファイバ伝送路a,b,cに分波される。光ファイバ伝送路a,b,cに接続されるBSは、それぞれ割り当てられた波長の下り信号を分波する光フィルタを備え、それぞれ分波された下り信号が受信部Rxに入力する。なお、光合分波器13で光ファイバ伝送路a,b,cに分波される波長と、各BSの光フィルタで分波される波長は、後述するように既存のWDM−PONシステムで用いられている関係になる。各BSの受信器Rxは、それぞれ割り当てられた波長の下り信号を受光器で光電変換し、デコーダ1〜4に入力する。デコーダ1〜4の各符号を用いて復号化されたMIMO信号RF1〜RF4は、それぞれアンテナ1〜4から無線伝送路を介して無線端末へ送信される。
【0029】
例えば、セル(j,i) に送信するMIMO信号RF1〜RF4は、セル(j,i) を囲むBS(j+1,i) のアンテナ1、BS(j+1,i+1) のアンテナ2、BS(j,i+1) のアンテナ3、BS(j,i) のアンテナ4から送信される。この場合、CSのMIMO送信処理/組み替え部21は、RF1を波長λ(j+1,i) の送信部Txのエンコーダ1に接続し、RF2を波長λ(j+1,i+1) の送信部Txのエンコーダ2に接続し、RF3を波長λ(j,i+1) の送信部Txのエンコーダ3に接続し、RF4を波長λ(j,i) の送信部Txのエンコーダ4に接続し、それぞれの送信部TxごとにCDMにより電気多重する。
【0030】
波長λ(j,i) の送信部Txは、BS(j,i) の4本のアンテナ1〜4からセル(j-1,i) ,セル(j-1,i-1) ,セル(j,i-1) ,セル(j,i) へ送信するMIMO信号をCDMで電気多重する。このCDM信号は変調器に入力され、波長λ(j,i) の光源から出力される光搬送波を光変調して送信される。この波長λ(j,i) の光信号は、光合分波器11、光ファイバ伝送路D、光合波器13を介して光ファイバ伝送路bに分波され、さらに波長λ(j,i) が割り当てられたBS(j,i) で分波して受光器に入力し、さらにエンコーダ1〜4に対応するデコーダ1〜4で復号化されたMIMO信号がアンテナ1〜4から各セルへ送信される。同様に、波長λ(j+1,i) の送信部Txから送信される光信号は、波長λ(j+1,i) が割り当てられたBS(j+1,i) で分波され、さらにデコーダ1〜4で復号化されたMIMO信号がアンテナ1〜4から各セルへ送信される。このように、MIMO信号RF1〜RF4は、セル(j,i) を囲むBS(j+1,i) 、BS(j+1,i+1) 、BS(j,i+1) 、BS(j,i) にそれぞれ分散して伝送され、各BSのアンテナ1〜4からそれぞれ送信されることになる。
【0031】
なお、図5の構成では、BSのアンテナ1〜4と、BSの受信部Rxのデコーダ1〜4と、CSの送信部Txのエンコーダ1〜4をそれぞれ対応させているために、BSのアンテナ1〜4から送信するRF1〜RF4をそれぞれ対応する送信部Txのエンコーダ1〜4に接続しているが、RF1〜RF4と符号の対応関係は任意である。
【0032】
図6は、本発明の光無線アンテナシステムの上り信号における構成例を示す。
図6において、ここに示す6個のBSは、図4に示す中心部の6個のBSに対応する。BSにアンテナ多重をCDMによる電気多重で行う送信部Tx、CSに各BSに対応する受信部Rxを備えている他は、図5に示す下り信号における構成例と同様である。
【0033】
波長λ(j,i) が割り当てられたBS(j,i) では、アンテナ1〜4を介してセル(j-1,i) ,セル(j-1,i-1) ,セル(j,i-1) ,セル(j,i) の無線端末から受信した上り信号を送信部Txに入力し、エンコーダ1〜4の各符号を用いてCDMにより電気多重し、さらに波長λ(j,i) で光変調して上り信号を生成する。各BSからCSへ送信される上り信号は、各BSの光フィルタおよび光合分波器13で光多重され、光ファイバ伝送路Uを介してCSへ伝送される。
【0034】
CSは、光ファイバ伝送路Uを介して伝送された上り信号を光合分波器12で分波し、各BSの波長に対応する受信部Rxに入力する。BS(j,i) に対応する波長λ(j,i) の上り信号を受信する受信部RxおよびBS(j+1,i) に対応する波長λ(j+1,i) の上り信号を受信する受信部Rxでは、それぞれ受光器で上り信号を光電変換し、デコーダ1〜4でCDM信号の復号化を行う。例えばセル(j,i) を囲む4本のアンテナ1〜4を収容する4個のBS(j+1,i) 、BS(j+1,i+1) 、BS(j,i+1) 、BS(j,i) から送信された上り信号は、それぞれ対応する受信部Rxのデコーダ1〜4から出力され、組み替え/MIMO受信処理部22でセル毎のグループに組み替えられ、セル(j,i) のMIMO信号RF1〜RF4として出力され、MIMO処理される。
【0035】
なお、図5および図6に示す構成は、同一BS上のアンテナ多重をCDMによる電気多重で行う例であるが、BSの複数のアンテナにそれぞれ異なるタイムスロットを割り当てるTDM(Time Division Multiplexing)またはBSの複数のアンテナにそれぞれ異なる周波数を割り当てるFDM(Frequency Division Multiplexing)による電気多重であってよい。TDMやFDMによりアンテナ多重を行う場合には、図5および図6に示すエンコーダ/デコーダおよび加算部をTDM処理部やFDM処理部に置き換え、TDM信号またはFDM信号として変調器に入力する構成により対応可能である。
【0036】
また、図5および図6に示す構成は、CSと複数のBSがスター・バス構成の光ファイバ伝送および光合分波器を介して接続されているが、CS−BSの接続形態およびアンテナ数は任意である。ただし、光合分波器(波長ルータ、スプリッタ)11,12,13として、例えば周回性FSR(Free Spectral Range) を有するAWG(Array Waveguide Grating) を用いることで波長利用効率を改善し、1つのCSに収容できるBS数をさらに増やすことができる。以下、AWGを用いる場合の各BSの波長割り当て例について、図7〜図14を参照して説明する。なお、ここに示す波長割り当て例および対応するBSの構成例は、WDM−PONシステムと同等のものである。
【0037】
(BSの波長割り当て例1)
図7は、BSの波長割り当て例1を示す。
ここでは、図5および図6に示すCSの光合分波器11,12に対応するAWG11,12と、BS側の光合分波器13に対応するAWG13は、下り信号を伝送する光ファイバ伝送路Dと上り信号を伝送する光ファイバ伝送路Uを介して接続され、さらにAWG13に光ファイバ伝送路a〜cが接続される。
【0038】
光ファイバ伝送路a〜cに接続される列1のBS1a〜BS1cに割り当てられる上り信号の波長a〜cと下り信号の波長a〜cは、1波長ずらして設定される。同様に、列2のBS2a〜BS2cに割り当てられる上り信号の波長a〜cと下り信号の波長a〜cは、列1のBSの割り当て波長からAWG13のFSR離れて設定される。列3および列4のBSについても同様である。このような波長割り当てにより、上り信号と下り信号で波長の再利用が可能となり、必要とする波長数は(BS数+1)となる。また、上り信号と下り信号の波長をx波長ずらせば、必要とする波長数は(BS数+x)となる。なお、AWG11は、各BSに対応する送信部Txから送信される各BSに割り当てた下り波長を光多重して光ファイバ伝送路Dに送信する。AWG12は、各BSから光多重され光ファイバ伝送路Uを介して伝送された上り信号を各BSに対応する受信部Rxに分波する。
【0039】
図8は、BSの波長割り当て例1におけるBSの構成例を示す。
ここでは、光ファイバ伝送路aに接続されるBS1a〜BS4aの構成例を示す。各BSの送信部Txから送信された上り信号は、光フィルタ31、光サーキュレータ33を介して光ファイバ伝送路aに光多重され、AWG13に入力する。各BSの光フィルタ31は、それぞれ割り当てられた上り信号の波長aおよび列方向の波長b,cを含む通過帯域を有し、BSから送信された上り信号とその前段のBSから送信された上り信号を光多重して次段のBSへ送信する。光ファイバ伝送路aから各BSに入力する下り信号は、光サーキュレータ33、光フィルタ32を介して分波される。各BSの光フィルタ32は、それぞれ割り当てられた下り信号の波長aおよび列方向の波長b,cを含む通過帯域を有し、BSに受信する下り信号を分波して受信部Rxに入力し、次段以降のBSが受信する下り信号を反射し、光サーキュレータ33を介して次段のBSへ出力する。
【0040】
このような光フィルタ31,32としては、送信波長および受信波長を透過し、その他の波長を反射するFBG(Fiber Bragg Grating )などを用いることができる。なお、各BSの光フィルタ31,32は、列方向のBSで共通帯域のものを用いることができる。また、各BSは光サーキュレータ33を用いず、それぞれ割り当てられた送信波長および受信波長に対応する狭帯域の光フィルタを各光ファイバ伝送路a〜cに配置する構成でもよい。
【0041】
(BSの波長割り当て例2)
図9は、BSの波長割り当て例2におけるBSの構成例1を示す。
光ファイバ伝送路a〜cに接続される列1のBS1a〜BS1cに割り当てられる上り信号の波長a〜cと下り信号の波長a〜cは、AWG13のFSR離れて設定される。同様に、列2のBS2a〜BS2cに割り当てられる上り信号の波長a〜cと下り信号の波長a〜cは、列1のBSの割り当て波長からAWG13のFSR離れて設定される。列3および列4のBSについても同様である。このような波長割り当てでは、必要とする波長数は(BS数×2)となる。
【0042】
各BSの送信部Txから送信された上り信号は、光フィルタ41を介して光ファイバ伝送路a〜cにそれぞれ光多重され、AWG13に入力する。各BSの光フィルタ41は、列ごとにそれぞれ割り当てられた上り信号の波長a〜cを含む通過帯域を有し、BSから送信された上り信号とその前段のBSから送信された上り信号を光多重して次段のBSへ送信する。光ファイバ伝送路a〜cから各BSに入力する下り信号は、光フィルタ42を介して分波される。各BSの光フィルタ32は、列ごとにそれぞれ割り当てられた下り信号の波長a〜cを含む通過帯域を有し、各BSに受信する下り信号を分波して受信部Rxに入力し、次段以降のBSが受信する下り信号を次段のBSへ通過させる。したがって、各BSの光フィルタ41,42は、列ごとのBSで共通の通過帯域のものを用いることができる。
【0043】
図10は、BSの波長割り当て例2におけるBSの構成例2を示す。
ここでは、図9に示すBSの波長割り当て例2におけるBSの構成例1と異なるBSの構成例2を示す。各BSは光パワースプリッタ43を介して光ファイバ伝送路a〜cにそれぞれ接続される。各光パワースプリッタ43は、各BSごとに分岐/挿入する光パワーが均等になるように分岐比を調整する。光フィルタ41,42は図9に示すBSの構成例1と同じ機能を有する。
【0044】
図11は、BSの波長割り当て例2におけるBSの構成例3を示す。
ここでは、図9,図10に示すBSの波長割り当て例2におけるBSの構成例1,2と異なるBSの構成例3を示す。図10に示す光パワースプリッタ43に代えて、列ごとのBSに割り当てた上り/下り波長帯域を合せた光フィルタ44を用い、さらに上り/下り波長を分波する光フィルタ45を介して送信部Txおよび受信部Rxに接続する。
【0045】
(波長割り当て例3)
図12は、BSの波長割り当て例3におけるBSの構成例を示す。
光ファイバ伝送路a〜cに接続される列1のBS1a〜BS1cに割り当てられる上り信号の波長a〜cと下り信号の波長a〜cは、それぞれ1波長おきに設定され、かつ上りと下りで重ならないように(ここでは3波長ずらして)設定される。同様に、列2のBS2a〜BS2cに割り当てられる上り信号の波長a〜cと下り信号の波長a〜cは、列1のBSの割り当て波長からAWG13のFSR離れて設定される。列3および列4のBSについても同様である。
【0046】
各BSは、上り/下り波長が重ならないために、図9〜図11に示したBSの波長割り当て例2におけるBSの構成例1〜3と同様の構成で対応することができる。ここでは、図11のBSの構成例3と同様に、各BSに割り当てた上り/下り波長帯域を合分波する光フィルタ44と、上り/下り波長を分波する光フィルタ45を用いる例を示す。ただし、図7および図8に示した波長割り当て例1と同様に、BSに割り当てた下り波長帯域と次の列のBSに割り当てた上り波長帯域が重なるために、列ごとに共通の通過帯域を有する光フィルタでは対応できない。列ごとに共通の通過帯域を有する光フィルタで対応するためには、図8に示すように光サーキュレータ33を用いた構成となる。
【0047】
(波長割り当て例4)
図13は、BSの波長割り当て例4を示す。
ここでは、CSとAWG13との間を1本の光ファイバ伝送路を介して上り信号と下り信号を伝送するためのBSの波長割り当て例4を示す。
【0048】
光ファイバ伝送路a〜cに接続される列1のBS1a〜BS1cに割り当てられる上り信号の波長a〜cと、列2のBS2a〜BS2cに割り当てられる上り信号の波長a〜cは、AWG13のFSR離れて設定される。列3および列4のBSの上り信号の波長a〜cについても同様であり、さらに列1〜列4のBS1a〜BS1cに割り当てられる下り信号の波長a〜cについても同様であり、上り信号帯域と下り信号帯域が完全に分離される。これにより、CSに接続される1本の光ファイバ伝送路と、各BSが接続される光ファイバ伝送路a〜cとの間で、AWG13の周回性を利用した波長割り当てが可能になる。
【0049】
CSでは、上り信号帯域と下り信号帯域を分離するWDMフィルタ14を介して、AWG13に接続される1本の光ファイバ伝送路と下り信号用のAWG11および上り信号用のAWG12と接続する。各BSは、図8〜図12に示した任意の構成を適用することができる。
【0050】
(光無線アクセスシステムの他の構成例)
以上示したBSにおいて、光フィルタを波長可変フィルタとし、送信部Txに多波長光源または波長可変光源を配置することにより、BSのカラーレス化が実現でき、経済的な運用が期待できる。
【0051】
また、図14に示すように、CSに多波長光源15および光サーキュレータ16を配置し、CSから各BSの送信に用いる光搬送波を伝送し、BSの光フィルタを波長可変フィルタとし、BSの送信部Txにループバック用の変調器を配置することにより、BSのカラーレス化が実現でき、経済的な運用が期待できる。各BSの基本的な構成は、図8〜図12に示した任意の構成を適用することができる。ただし、図8の光サーキュレータ33を用いる構成では、光ファイバ伝送路a〜cの終端に反射端を配置する。
【符号の説明】
【0052】
11,12,13 光合分波器/AWG
14 WDMフィルタ
15 多波長光源
16 光サーキュレータ
21 MIMO送信処理/組み替え部
22 組み替え/MIMO送信処理部
31,32 光フィルタ(FBG)
33 光サーキュレータ
41,42,44,45 光フィルタ
43 光パワースプリッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの中央局(CS)が複数の基地局(BS)と光ファイバ伝送路を介して接続され、複数のBSに分散して設置された複数のアンテナによって囲まれる空間で1つのセルを形成し、各セル内の無線端末とMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を用いて無線通信を行い、さらに1つのCSと複数のBSとの間でRoF(Radio-on-Fiber)技術を用いて光通信を行う分散型MIMO−RoF構成の光無線アクセスシステムにおいて、
前記CSと複数のBSとの間で伝送される光信号の多重(BS多重)を、前記複数のBSにそれぞれ異なる波長を割り当て、WDM(Wavelength Division Multiplexing)による光多重で行うBS多重手段を備え、
前記CSと前記BSに設置される複数のアンテナとの間で伝送される電気信号の多重(アンテナ多重)を行うアンテナ多重手段を備え、
前記CSは、前記BSでアンテナ多重されWDM伝送された上り信号を光受信する前記BS対応の光受信部で各アンテナ対応に変換された信号を、前記セル毎のグループに組み替えてMIMO処理部に出力する手段と、前記セルごとのグループとしてMIMO処理を行った各アンテナ対応の下り信号をBS毎のグループに組み替え、アンテナ多重してBS対応の波長で光送信する光送信部に出力する手段とを備えた
ことを特徴とする光無線アクセスシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の光無線アクセスシステムにおいて、
前記アンテナ多重手段は、前記アンテナ多重を、前記BSの複数のアンテナにそれぞれ異なる符号を割り当て、CDM(Code Division Multiplexing)による電気多重で行う構成である
ことを特徴とする光無線アクセスシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の光無線アクセスシステムにおいて、
前記アンテナ多重手段は、前記アンテナ多重を前記BSの複数のアンテナにそれぞれ異なるタイムスロットを割り当て、TDM(Time Division Multiplexing)による電気多重で行う構成である
ことを特徴とする光無線アクセスシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の光無線アクセスシステムにおいて、
前記アンテナ多重手段は、前記アンテナ多重を前記BSの複数のアンテナにそれぞれ異なる周波数を割り当て、FDM(Frequency Division Multiplexing )による電気多重で行う構成である
ことを特徴とする光無線アクセスシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の光無線アンテナシステムにおいて、
前記BS多重手段は、前記1つのCSと前記複数のBSがFSR(Free Spectral Range) を有する光合分波器および当該光合分波器に接続される複数の光ファイバ伝送路を介して接続され、当該複数の光ファイバ伝送路にそれぞれ接続される複数のBSに当該FSRごとの波長を割り当て、列ごとのBSに割り当て波長の光信号を合分波する共通帯域の光フィルタを備えた構成である
ことを特徴とする光無線アクセスシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の光無線アンテナシステムにおいて、
前記複数の光ファイバ伝送路に接続される列ごとのBSに割り当てられる上り信号と下り信号の波長をずらして設定し、上り信号と下り信号で波長の再利用を行う構成である
ことを特徴とする光無線アクセスシステム。
【請求項7】
請求項5に記載の光無線アンテナシステムにおいて、
前記複数の光ファイバ伝送路に接続される列ごとのBSに割り当てられる上り信号と下り信号の波長を前記FSRの整数倍離して設定する構成である
ことを特徴とする光無線アクセスシステム。
【請求項8】
1つの中央局(CS)が複数の基地局(BS)と光ファイバ伝送路を介して接続され、複数のBSに分散して設置された複数のアンテナによって囲まれる空間で1つのセルを形成し、各セル内の無線端末とMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を用いて無線通信を行い、さらに1つのCSと複数のBSとの間でRoF(Radio-on-Fiber)技術を用いて光通信を行う分散型MIMO−RoF構成の光無線アクセス方法において、
前記CSと複数のBSとの間で伝送される光信号の多重(BS多重)を、前記複数のBSにそれぞれ異なる波長を割り当て、WDM(Wavelength Division Multiplexing)による光多重で行い、
前記CSと前記BSに設置される複数のアンテナとの間で伝送される電気信号の多重(アンテナ多重)を行い、
前記CSは、前記BSでアンテナ多重されWDM伝送された上り信号を光受信する前記BS対応の光受信部で各アンテナ対応に変換された信号を、前記セル毎のグループに組み替えてMIMO処理部に出力し、前記セルごとのグループとしてMIMO処理を行った各アンテナ対応の下り信号をBS毎のグループに組み替え、アンテナ多重してBS対応の波長で光送信する光送信部に出力する
ことを特徴とする光無線アクセス方法。
【請求項9】
請求項8に記載の光無線アクセス方法において、
前記アンテナ多重は、前記BSの複数のアンテナにそれぞれ異なる符号を割り当て、CDM(Code Division Multiplexing)による電気多重で行う
ことを特徴とする光無線アクセス方法。
【請求項10】
請求項8に記載の光無線アクセス方法において、
前記アンテナ多重は、前記BSの複数のアンテナにそれぞれ異なるタイムスロットを割り当て、TDM(Time Division Multiplexing)による電気多重で行う
ことを特徴とする光無線アクセス方法。
【請求項11】
請求項8に記載の光無線アクセス方法において、
前記アンテナ多重は、前記BSの複数のアンテナにそれぞれ異なる周波数を割り当て、FDM(Frequency Division Multiplexing )による電気多重で行う
ことを特徴とする光無線アクセス方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−172133(P2011−172133A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35698(P2010−35698)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】