説明

光硬化性樹脂組成物、そのドライフィルム及び硬化物並びにそれらを用いたプリント配線板

【課題】基板を再利用することが可能となるドライフィルム及び硬化物、並びにプリント配線板の提供。
【解決手段】式(1)で示される構造を含む化合物から誘導されるカルボン酸樹脂、ポリ(メタ)アクリレート及びエポキシ樹脂のいずれか又は2種以上を組み合わせて成る光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化及び熱硬化後のソルダーレジスト硬化膜であっても、アルカリ水溶液により剥離することができ、基板を再利用することが可能となるアルカリ現像性の光硬化性樹脂組成物、そのドライフィルム及び硬化物並びにそれらを用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板等の製造時には、導体回路の保護やはんだ付けが不要な部分へはんだが付着することを防ぐ目的で、基板の表面にソルダーレジスト硬化膜が形成される。ソルダーレジスト硬化膜を形成する手法としては、スクリーン印刷によりパターン状に印刷し、紫外線や熱により硬化させてソルダーレジスト硬化膜を形成する方法や、基板表面にソルダーレジスト組成物を塗布、乾燥した後、パターン状に露光・現像・加熱硬化することで、ソルダーレジスト硬化物を形成する方法がある。
【0003】
上記のようなソルダーレジスト硬化膜の形成工程において、印刷時のハジキ、滲みなどの印刷不良や、異物の混入、ピンホールの発生、露光時の位置合わせのズレ等で不良が発生することがしばしばあるが、このようなソルダーレジスト形成工程に起因する不良により基板を破棄することになると、積層版の形成から始まり、導体回路の形成、穴あけ、穴埋め等それまでの全ての工程が無駄になり、歩留まりの低下に繋がる。
そこでソルダーレジスト硬化膜を剥離し、基板を再利用する方法が提案されている(例えば特許文献1など参照)。
【0004】
特許文献1には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムと鎖長が3〜6のグリコールエーテルと水の3種混合溶液を剥離液とすることで、紫外線照射により硬化させたソルダーレジストを剥離し、基板の再利用を可能とすることが提案されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載の剥離は、紫外線照射により硬化した硬化物のみに対して有効であり、加熱硬化させた硬化物を剥離することは不可能である。
【0005】
また、紫外線照射又は熱で硬化した後のソルダーレジスト硬化膜であっても剥離して、基板の再利用を可能とする剥離液も提案されている(例えば特許文献2など参照)。
しかしながら、上記特許文献2では、剥離液としてアルカリ金属水酸化物と非プロトン性極性溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)を用いており、環境へ与える負荷が少ないとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−115048号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−145594号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述したような従来技術に鑑みなされたものであり、紫外線硬化及び熱硬化後のソルダーレジスト硬化膜であっても、アルカリ水溶液、例えば60℃の5〜20wt%の水酸化ナトリウム水溶液にて10〜60分程度処理することにより剥離することができ、基板を再利用することが可能となる光硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルムを提供することを目的としている。
特に主成分としてポリエステル由来の硬化性成分を含有する光硬化性樹脂組成物をソルダーレジストとして用いることにより、その廃液からテレフタル酸等のポリエステルの原料をも回収することができる光硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルムを提供することを目的としている。
さらに本発明の目的は、このような光硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルムを用いることにより、ソルダーレジスト硬化膜を剥離して基板を再利用することが可能なプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明によれば、紫外線硬化及び熱硬化後の硬化膜であっても、アルカリ水溶液、例えば60℃の5〜20wt%の水酸化ナトリウム水溶液にて10〜60分程度処理することにより剥離することが可能な光硬化性樹脂組成物が提供され、その一つの態様によれば、
(A)ポリ(メタ)アクリレート(但し、下記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導されるポリ(メタ)アクリレートを除く)と、
いずれも下記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される、(B)カルボン酸樹脂、(C)ポリ(メタ)アクリレート及び(D)エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上
を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物が提供される。
【化1】

(式中、Rは(m+l)価の多価アルコール誘導体を表し、RはCH、C、C、C、置換もしくは無置換の芳香族環のいずれかを表し、Rは置換もしくは無置換の芳香族環を表し、m及びnは1以上、10未満の整数であり、lは0もしくは1以上の整数である。)
好適な態様によれば、前記カルボン酸樹脂(B)、ポリ(メタ)アクリレート(C)及びエポキシ樹脂(D)のいずれか1種又は2種以上を、組成物中の有機物に対して20wt%以上の割合で含有する。
【0009】
また、本発明の他の態様によれば、いずれも前記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される、(B)カルボン酸樹脂、(C)ポリ(メタ)アクリレート及び(D)エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上を、組成物中の有機物に対して20wt%以上の割合で含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物が提供される。
【0010】
好適な態様においては、前記一般式(1)において、Rは3価のアルコール誘導体であり、RはCであり、Rはベンゼン環であることが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、前記光硬化性樹脂組成物を、フィルム上に塗布・乾燥させて得られる光硬化性のドライフィルムや、前記光硬化性樹脂組成物又は該ドライフィルムを硬化させて得られる硬化物、特に銅上にて光硬化させて得られる硬化物や、パターン状に光硬化して得られる硬化物も提供される。
さらに本発明によれば、前記光硬化性樹脂組成物又はドライフィルムをパターン状に光硬化させた後、熱硬化して得られる硬化皮膜を有することを特徴とするプリント配線板も提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性樹脂組成物に用いられる硬化性樹脂又は化合物は、いずれも前記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導されるカルボン酸樹脂、ポリ(メタ)アクリレート又はエポキシ樹脂がポリエステル由来であるため、アルカリ水溶液で処理することにより主骨格を担うエステル結合が加水分解し、該加水分解により生じたカルボキシル基と水酸基が強力な親水性を発現するために、形成された硬化膜はアルカリ水溶液により剥離が可能となるということを本発明者らは見出した。この作用を、例えばソルダーレジスト組成物として利用することにより、従来のソルダーレジスト組成物に用いられる硬化性樹脂又は化合物がノボラック型エポキ樹脂又はノボラック型エポキシアクリレートであることより主骨格が加水分解されず、剥離性が悪い、という欠点を克服できた。従って、ソルダーレジスト硬化膜作製工程において不良が生じた場合、基板のソルダーレジストを剥離することにより、基板を再利用することが可能である。また、従来のエポキシアクリレート変性樹脂とは異なり、ハロゲンイオンを含有していない原料を使用できる。そのため、ハロゲンフリー化が可能であり、電気絶縁性、耐熱性、指触乾燥性に優れた硬化皮膜を形成できる。
従って、本発明の光硬化性樹脂組成物は、プリント配線板やフレキシブルプリント配線板のソルダーレジスト等の硬化皮膜の形成に有利に適用できる。
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物は、主成分としてポリエステル由来の硬化性成分を含有するため、剥離されたソルダーレジストの廃液からテレフタル酸等のポリエステルの原料をも回収することができ、省資源及び環境保護の面からも極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記したように、本発明の一態様の光硬化性樹脂組成物の特徴は、従来から感光性成分として用いられている(A)ポリ(メタ)アクリレート(但し、下記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導されるポリ(メタ)アクリレートを除く)の他に、いずれも下記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される、(B)カルボン酸樹脂、(C)ポリ(メタ)アクリレート及び(D)エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上を組み合わせて含有することにある。
【化2】

(式中、Rは(m+l)価の多価アルコール誘導体を表し、RはCH、C、C、C、置換もしくは無置換の芳香族環のいずれかを表し、Rは置換もしくは無置換の芳香族環を表し、m及びnは1以上、10未満の整数であり、lは0もしくは1以上の整数である。)
【0014】
本発明者らの研究によれば、このような光硬化性樹脂組成物をソルダーレジストとして用いた場合、例えば25℃の10wt%NaOHに30分浸漬させる等の一般的な処理に対しては充分な耐アルカリ性を有すると共に、60℃の5〜20wt%のNaOH水溶液にて10〜60分程度処理することにより、硬化したソルダーレジスト塗膜を剥離することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
さらに本発明者らの研究によれば、いずれも前記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される、(B)カルボン酸樹脂、(C)ポリ(メタ)アクリレート及び(D)エポキシ樹脂は、いずれか1種または2種以上の組み合わせにより組成物中の有機物に対して20wt%以上であると、上記以外の他の(A)ポリ(メタ)アクリレート(前記一般式(1)で示される構造を含まないか又は前記一般式(1)で示される構造を含まない化合物から誘導されるポリ(メタ)アクリレート)を含有しなくとも、同様の効果が得られることを見出した。但し、前記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される、(B)カルボン酸樹脂、(C)ポリ(メタ)アクリレート及び(D)エポキシ樹脂は、いずれか1種または2種以上の組み合わせにより組成物中の有機物に対して80wt%以下であるように配合することが好ましい。この割合を超えて多量に配合した場合、硬化塗膜の耐アルカリ性が低下する恐れがあるので好ましくない。尚、前記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導されるポリ(メタ)アクリレート以外の他の(A)ポリ(メタ)アクリレートを含有すると、感度等の光特性が向上する点で有利である。
以下、本発明の光硬化性樹脂組成物の各構成成分について詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明で用いる(A)ポリ(メタ)アクリレートとしては、前記一般式(1)で示される構造を含まないか又は前記一般式(1)で示される構造を含まない化合物から誘導されるポリ(メタ)アクリレートであれば全て使用でき、特定の多官能の(メタ)アクリレートに限定されるものではない。具体例としては、例えば、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエンなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0017】
本発明で用いる前記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される(B)カルボン酸樹脂は、前記一般式(1)で示される構造を含む化合物に後述するような多塩基酸又はその無水物を反応させることにより得られる。好適には、(a)ポリエステルを(b)1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールで解重合するのと同時に、又は解重合した後で、(c)多塩基酸又はその無水物を反応させることにより得られる。
上記(B)カルボン酸樹脂は感光性基を持っていてもよい。この場合、前記一般式(1)で示される構造を含む化合物に、後述するような分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と多塩基酸又はその無水物を反応させればよい。好適には、(a)ポリエステルを(b)1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールで解重合するのと同時に、又は解重合した後で、(d)分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と(c)多塩基酸又はその無水物を反応させればよい。上記(d)成分と(c)成分は、一括して反応させてもよく、あるいは逐次に反応させてもよい。逐次反応の場合、反応させる順序は、(d)成分を先に反応させ、次いで(c)成分を反応させてもよく、あるいは(c)成分を先に反応させ、次いで(d)成分を反応させてもよいが、1つ以上、好ましくは2つ以上のカルボキシル基が生成するような反応比率とする必要がある。
【0018】
本発明で用いる前記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される(C)ポリ(メタ)アクリレートは、前記一般式(1)で示される構造を含む化合物に、後述するような分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させるか、あるいは、多塩基酸又はその無水物を反応させ、その反応物に分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させることによって得られる。好適には、(a)ポリエステルを(b)1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールで解重合するのと同時に、又は解重合した後で、(d)分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させるか、あるいは、(c)多塩基酸又はその無水物を反応させ、その反応物に(d)分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させることによって得られる。
【0019】
本発明で用いる前記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される(D)エポキシ樹脂は、前記一般式(1)で示される構造を含む化合物にエピクロルヒドリンを反応させるか、あるいは、多塩基酸もしくはその無水物又はフェノール基を有するモノカルボン酸で処理した後に、エピクロルヒドリン又は分子中に複数のエポキシ基を有する化合物を反応させることによって得られる。好適には、(a)ポリエステルを、(b)1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールで解重合し、得られた解重合体にそのままエピクロルヒドリンを反応させるか、(c)多塩基酸又はその無水物又は(e)フェノール基を有するモノカルボン酸で処理した後にエピクロルヒドリン又は(f)分子中に複数のエポキシ基を有する化合物を反応させることによって得られる。
【0020】
前記ポリエステルの解重合の際に、ポリエステルと1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールの割合は、ポリエステルの繰り返し単位のモル数(α)と1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールのモル数(β)の比率が、(α)/(β)=0.5〜3が適当であり、好ましくは0.8〜2の範囲内にあることが望ましい。上記比率が0.5よりも少ないと、ポリオール成分が過剰に含まれることとなり、ポリエステルに由来する芳香環の割合が減少し、耐熱性や耐薬品性向上の効果が少なくなるので好ましくない。一方、上記比率が3よりも大きいと、解重合物がほとんどの場合結晶化しており、溶媒に不溶であるので好ましくない。
【0021】
前記ポリエステル(a)は、慣用公知のポリエステルであれば何でもよいが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、液晶ポリマーなどがある。また、PETボトル廃材等廃棄物から回収されたリサイクルPET及び再生PETを使用することもでき、これらは環境保護の観点から好ましい。回収されたPETは粉砕し洗浄され、再生PETは洗浄しペレット化されたものが市場から手に入れることができる。上記ポリエステルの形状は特に限定されないが、ペレット状及び又はフレーク状であるほうが好ましい。また、粉状に細かく粉砕する必要はないが、粉砕されたものでもかまわない。
【0022】
前記(b)1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールとしては、2官能ポリオールや3官能以上のポリオールなどを全て用いることができ、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
2官能ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、ジオキサングリコール、アダマンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、メチルオクタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパンジオール1,3、3−メチルペンタンジオール1,5、ヘキサメチレングリコール、オクチレングリコール、9−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのエチレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのプロピレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合変性化合物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、アダマンタンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール(例えば、プラクセル205、プラクセルL205AL、プラクセル205U、プラクセル208、プラクセルL208AL、プラクセル210、プラクセル210N、プラクセル212、プラクセルL212AL、プラクセル220、プラクセル220N、プラクセル220NP1、プラクセルL220AL、プラクセル230、プラクセル240、プラクセル220EB、プラクセル220EC;以上いずれもダイセル化学工業(株)製;商品名)、ヒドロキシル基末端ポリアルカンジエンジオール類(例えば1,4−ポリイソプレンジオール、1,4−及び1,2−ポリブタジエンジオール並びにそれらの水素添加物のごときエラストマー)が挙げられ、例えば、上記ヒドロキシル基末端ポリアルカンジエンジオールの市販品の例としては、エポール(登録商標;水素化ポリイソプレンジオール、分子量1,860、平均重合度26、出光興産(株)製)、PIP(ポリイソプレンジオール、分子量2,200、平均重合度34、出光興産(株)製)、ポリテール(登録商標)H(水素化ポリブタジエンジオール、分子量2,200、平均重合度39、三菱化学(株)製)、R−45HT(ポリブタンジオール、分子量2,270、平均重合度42、出光興産(株)製)等が挙げられる。
【0024】
3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、アダマンタントリオール、ポリカプロラクトントリオール(例えば、プラクセル303、プラクセル305、プラクセル308、プラクセル312、プラクセルL312AL、プラクセル320ML、プラクセルL320AL;以上いずれもダイセル化学工業(株)製;商品名)、また芳香環を有するものとしては3官能以上のフェノール化合物のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性物、複素環を有するものとしては四国化成工業(株)製セイク、などが挙げられる。特にトリメチロールプロパンを用いた場合、解重合物にしたときに濁りが無いアモルファスな半固形の流動性のある物が得られ、さらに溶剤への溶解性が高くなるので好ましい。
【0025】
前記(c)多塩基酸又はその無水物としては、慣用公知の多塩基酸もしくはその無水物を使用することができる。具体的な例としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラブロム無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラクロロ無水フタル酸等の芳香族多価カルボン酸及びそれらの無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸及びそれらの無水物、無水マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族多価カルボン酸及びそれらの無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等の3官能以上のカルボン酸等が挙げられ、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
前記(d)分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、1つのカルボキシル基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系単量体、1つの環状エーテル基と1つ以上のエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物、1つの水酸基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物などが挙げられ、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
1つのカルボキシル基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、アクリル酸、アクリル酸の2量体、メタクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸カプロラクトン付加物、及び飽和又は不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類とのハーフエステル化合物などが挙げられる。ハーフエステル化合物を製造するための水酸基を有する(メタ)アクリレート類としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ハーフエステル化合物を製造するための二塩基酸無水物としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられ、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、1分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有するイソシアネート化合物であればよく、特に限定されない。具体的な例としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネートあるいはこれらの変性体等が挙げられ、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。市販品としては、「カレンズMOI」(メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)、「カレンズAOI」(アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート)、「カレンズMOI−EG」(メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート)、「カレンズMOI一BM」(カレンズMOIのイソシアネートブロック体)、「カレンズMOI−BP」(カレンズMOIのイソシアネートブロック体)、「カレンズBEI」(1,1−ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネート)が、昭和電工(株)から市販されている。なお、これらの商品名は、いずれも登録商標である。さらには、1分子中に1つの水酸基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と、イソホロンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネートとのハーフウレタン化合物も使用することができる。
【0029】
1分子中に1つの環状エーテル基と1つ以上のエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2ーヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、6ーヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルもしくはグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート等が挙げられ、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
前記水酸基とエチレン性不飽和基を有する化合物としては、1分子中に1つの水酸基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であればよく、特に限定されない。具体的な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられ、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
前記したようなアルコールもしくはカルボン酸と反応し得る官能基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
前記(e)フェノール基を有するモノカルボン酸としては、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2−アミノ−3−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸等が挙げられ、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
前記(f)分子中に複数のエポキシ基を有する化合物としては、ADEKA社製のアデカサイザーO−130P、アデカサイザーO−180A、アデカサイザーD−32、アデカサイザーD−55等のエポキシ化植物油;三菱化学社製のjER(登録商標)828、jER834、jER1001、jER1004、ダイセル化学工業社製のEHPE3150、DIC社製のエピクロン(登録商標)840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、新日鐵化学社製のエポトート(登録商標)YD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、BASFジャパン社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、新日鐵化学社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、BASFジャパン社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、新日鐵化学社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、BASFジャパン社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN(登録商標)−201、EOCN(登録商標)−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製jER807、新日鐵化学社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、BASFジャパン社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;新日鐵化学社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER604、新日鐵化学社製のエポトートYH−434、BASFジャパン社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;BASFジャパン社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド(登録商標)2021、BASFジャパン社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、ADEKA社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL−931、BASFジャパン社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;BASFジャパン社製のアラルダイドPT810(商品名)、日産化学工業社製のTEPIC(登録商標)等の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマー(登録商標)DGT等のジグリシジルフタレート樹脂;新日鐵化学社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、DIC社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば新日鐵化学社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらの中でもエポキシ化の過程でエピクロルヒドリンを用いていないものや純度が高く残存塩素量の少ないエポキシ樹脂がハロゲンフリーの観点から好ましい。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
前記解重合を促進させるために、解重合触媒を使用することができる。解重合触媒としては、例えば、モノブチル錫ハイドロオキサイド、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫−2−エチルヘキサノエート、ジブチル錫ジラウレート、酸化第一錫、酢酸錫、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどを挙げることができる。これらの解重合触媒の使用量は、前記ポリエステルと多価アルコールとの合計量100質量部に対して、通常0.005〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部の範囲が適当である。
【0034】
本発明で用いる光重合開始剤としては、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種の光重合開始剤を好適に使用することができる。
【0035】
前記オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI−325、イルガキュアー(登録商標)OXE01、イルガキュアー OXE02、アデカ社製N−1919、NCI−831などが挙げられる。また、分子中に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【化3】

(式中、Xは、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、結合か、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを表し、pは0か1の整数である。)
【0036】
特に上記一般式中、X、Yが、それぞれ、メチル基又はエチル基であり、Zはメチル基又はフェニル基であり、pは0であり、Arは、結合か、フェニレン、ナフチレン、チオフェン又はチエニレンであることが好ましい。
【0037】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤の配合量は、組成物全体量の0.02〜10wt%とすることが好ましい。0.02wt%未満であると、銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、10wt%を超えると、塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。
【0038】
前記α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0039】
前記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、BASFジャパン社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0040】
これらα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合量は、組成物全体量の0.5〜15wt%とすることが好ましい。0.5wt%未満であると、同様に銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、15wt%を超えると、アウトガスの低減効果が得られず、さらに塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。
【0041】
その他、本発明の光硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などを挙げることができる。
【0042】
前記ベンゾイン化合物としては、具体的には、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0043】
前記アセトフェノン化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
【0044】
前記アントラキノン化合物としては、具体的には、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどが挙げられる。
【0045】
前記チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0046】
前記ケタール化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0047】
前記ベンゾフェノン化合物としては、具体的には、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0048】
前記3級アミン化合物としては、具体的には、例えばエタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、市販品では、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達(株)製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学(株)製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)などのジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬(株)製カヤキュアー(登録商標)EPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬(株)製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学(株)製EAB)などが挙げられる。
【0049】
上記の光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤のうち、チオキサントン化合物及び3級アミン化合物が好ましい。特に、チオキサントン化合物が含まれることが、深部硬化性の面から好ましい。中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン化合物を含むことが好ましい。
【0050】
このようなチオキサントン化合物の配合量としては、組成物全体量の15wt%以下であることが好ましい。チオキサントン化合物の配合量が15wt%を超えると、厚膜硬化性が低下するとともに、製品のコストアップに繋がる。より好ましくは10wt%以下である。
【0051】
また、3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜450nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物及びケトクマリン類が特に好ましい。
【0052】
前記ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。前記ジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が350〜410nmと紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色ソルダーレジスト膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが、波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0053】
このような3級アミン化合物の配合量としては、組成物全体量の0.1〜15wt%とすることが好ましい。3級アミン化合物の配合量が0.1wt%未満であると、十分な増感効果を得ることができない傾向にある。15wt%を超えると、3級アミン化合物による乾燥ソルダーレジスト塗膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。
【0054】
これらの光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
このような光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、ポリ(メタ)アクリレート100質量部に対して35質量部以下であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0055】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として働くことがある。しかしながら、これらは組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストのライン形状及び開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の加工精度を向上させることができる。
【0056】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、感度を向上するために連鎖移動剤として公知慣用のNフェニルグリシン類、フェノキシ酢酸類、チオフェノキシ酢酸類、メルカプトチアゾール等を添加することができる。連鎖移動剤の具体例を挙げると例えば、メルカプト琥珀酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メチオニン、システイン、チオサリチル酸及びその誘導体等のカルボキシル基を有する連鎖移動剤;メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトプロパンジオール、メルカプトブタンジオール、ヒドロキシベンゼンチオール及びその誘導体等の水酸基を有する連鎖移動剤;1−ブタンチオール、ブチル−3−メルカプトプロピオネート、メチル−3−メルカプトプロピオネート、2,2−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4−メチルベンゼンチオール、ドデシルメルカプタン、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、1−オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、チオグリセロール、4,4−チオビスベンゼンチオール等である。
【0057】
さらに、連鎖移動剤として働くメルカプト基を有する複素環化合物として、例えば、メルカプト−4−ブチロラクトン(別名:2−メルカプト−4−ブタノリド)、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム及び2−メルカプト−6−ヘキサノラクタム等が挙げられる。
【0058】
特に、光硬化性樹脂組成物の現像性を損なうことがない連鎖移動剤であるメルカプト基を有する複素環化合物としてメルカプトベンゾチアゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾールが好ましい。これらの連鎖移動剤は、単独又は2種以上を併用することができる。
【0059】
さらに本発明の光硬化性樹脂組成物は、感光性、現像性、耐熱性、及び電気特性を向上させる目的で、慣用公知のカルボキシル基含有感光性樹脂を加えてもよい。使用するカルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、塗膜のタックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐湿性が悪く、現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性が劣ることがある。
【0060】
このようなカルボキシル基含有感光性樹脂の配合量は、組成物全体量の50wt%以下、好ましくは10〜40wt%の範囲が適当である。
これらカルボキシル基含有感光性樹脂は、従来公知のものを全て使用することができ、1種類でも2種以上を混合しても使用することができる。
【0061】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、耐熱性を付与するために、熱硬化性成分を用いることができる。本発明に用いられる熱硬化成分としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのアミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、メラミン誘導体、ビスマレイミド、オキサジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。特に好ましいのは分子中に複数の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、「環状(チオ)エーテル基」と略す)を有する熱硬化性成分である。
【0062】
このような分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0063】
前記多官能エポキシ化合物としては、ADEKA社製のアデカサイザーO−130P、アデカサイザーO−180A、アデカサイザーD−32、アデカサイザーD−55等のエポキシ化植物油;三菱化学社製のjER(登録商標)828、jER834、jER1001、jER1004、ダイセル化学工業社製のEHPE3150、DIC社製のエピクロン(登録商標)840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、新日鐵化学社製のエポトート(登録商標)YD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、BASFジャパン社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、新日鐵化学社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、BASFジャパン社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、新日鐵化学社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、BASFジャパン社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製jER807、新日鐵化学社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、BASFジャパン社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;新日鐵化学社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER604、新日鐵化学社製のエポトートYH−434、BASFジャパン社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;BASFジャパン社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド(登録商標)2021、BASFジャパン社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、ADEKA社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL−931、BASFジャパン社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;BASFジャパン社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマー(登録商標)DGT等のジグリシジルフタレート樹脂;新日鐵化学社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、DIC社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば新日鐵化学社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にEHPE3150、PB−3600、セロキサイド2021(いずれもダイセル化学工業社製)等の過酢酸法によるエポキシド変性化合物はハロゲンイオンを不純物として含まないので好ましい。また、アデカサイザーD−32、アデカサイザーD−55、アデカサイザーO−130P、アデカサイザーO−180A(いずれもADEKA社製)等のエポキシ化植物油等のものは同様にハロゲンを含まないため好ましい。
【0064】
前記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0065】
前記分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、三菱化学社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0066】
前記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、組成物中のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.6〜2.5当量、より好ましくは、0.8〜2.0当量となる範囲が適当である。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が0.6未満である場合、ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、2.5当量を超える場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0067】
また、他の熱硬化成分として、1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物を加えることができる。このような1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物は、1分子中に複数のイソシアネート基を有する化合物、すなわちポリイソシアネート化合物、又は1分子中に複数のブロック化イソシアネート基を有する化合物、すなわちブロックイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0068】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート及び2,4−トリレンダイマーが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体が挙げられる。
【0069】
前記ブロックイソシアネート化合物に含まれるブロック化イソシアネート基は、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基である。所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。
【0070】
このようなブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられる。このイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、先に例示したような化合物が挙げられる。
【0071】
前記イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−パレロラクタム、γ−ブチロラクタム及びβ−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン及びプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0072】
前記ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュール(登録商標)BL−3175、BL−4165、BL−1100、BL−1265、デスモジュール(登録商標)TPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2078、TPLS−2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住友バイエルウレタン社製、商品名)、コロネート(登録商標)2512、コロネート2513、コロネート2520(以上、日本ポリウレタン工業社製、商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(三井武田ケミカル社製、商品名)、TPA−B80E、17B−60PX、E402−B80T(旭化成ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。なお、スミジュールBL−3175、BL−4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。
【0073】
上記の1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物の配合量は、組成物全体量の1〜50wt%、より好ましくは、2〜40wt%の割合が適当である。前記配合量が、1wt%未満の場合、十分な塗膜の強靭性が得られず、好ましくない。一方、50wt%を超えた場合、保存安定性が低下して、好ましくない。
【0074】
さらに、他の熱硬化成分としてメラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体などが挙げられる。例えばメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物などがある。さらに、アルコキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン化合物、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物及びアルコキシメチル化尿素化合物は、それぞれのメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等とすることができる。特に人体や環境に優しいホルマリン濃度が0.2%以下のメラミン誘導体が好ましい。
【0075】
これらの市販品としては、例えばサイメル(登録商標)300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266、同267、同238、同1141、同272、同202、同1156、同1158、同1123、同1170、同1174、同UFR65、同300(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラック(登録商標)Mx−750、同Mx−032、同Mx−270、同Mx−280、同Mx−290、同Mx−706、同Mx−708、同Mx−40、同Mx−31、同Ms−11、同Mw−30、同Mw−30HM、同Mw−390、同Mw−100LM、同Mw−750LM、(以上、(株)三和ケミカル製)等を挙げることができる。上記熱硬化成分は単独又は2種以上を併用することができる。
【0076】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0077】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えば分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0078】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、着色剤を配合することができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0079】
赤色着色剤:
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には以下のようなカラ−インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
モノアゾ系:Pigment Red 1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 12, 14, 15, 16, 17, 21, 22, 23, 31, 32, 112, 114, 146, 147, 151, 170, 184, 187, 188, 193, 210, 245, 253, 258, 266, 267, 268, 269。
ジスアゾ系:Pigment Red 37, 38, 41。
モノアゾレーキ系:Pigment Red 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 49:1, 49:2, 50:1, 52:1, 52:2, 53:1, 53:2, 57:1, 58:4, 63:1, 63:2, 64:1,68。
ベンズイミダゾロン系:Pigment Red 171、Pigment Red 175、Pigment Red 176、Pigment Red 185、Pigment Red 208。
ぺリレン系:Solvent Red 135、Solvent Red 179、Pigment Red 123、Pigment Red 149、Pigment Red 166、Pigment Red 178、Pigment Red 179、Pigment Red 190、Pigment Red 194、Pigment Red 224。
ジケトピロロピロール系:Pigment Red 254、Pigment Red 255、Pigment Red 264、Pigment Red 270、Pigment Red 272。
縮合アゾ系:Pigment Red 220、Pigment Red 144、Pigment Red 166、Pigment Red 214、Pigment Red 220、Pigment Red 221、Pigment Red 242。
アンスラキノン系:Pigment Red 168、Pigment Red 177、Pigment Red 216、Solvent Red 149、Solvent Red 150、Solvent Red 52、Solvent Red 207。
キナクリドン系:Pigment Red 122、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red 207、Pigment Red 209。
【0080】
青色着色剤:
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなものを挙げることができる:Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6、Pigment Blue 16、Pigment Blue 60。
染料系としては、Solvent Blue 35、Solvent Blue 63、Solvent Blue 68、Solvent Blue 70、Solvent Blue 83、Solvent Blue 87、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Blue 122、Solvent Blue 136、Solvent Blue 67、Solvent Blue 70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0081】
緑色着色剤:
緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系があり、具体的にはPigment Green 7、Pigment Green 36、Solvent Green 3、Solvent Green 5、Solvent Green 20、Solvent Green 28等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0082】
黄色着色剤:
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等があり、具体的には以下のものが挙げられる。
アントラキノン系:Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、Pigment Yellow 108、Pigment Yellow 193、Pigment Yellow 147、Pigment Yellow 199、Pigment Yellow 202。
イソインドリノン系:Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 109、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 179、Pigment Yellow 185。
縮合アゾ系:Pigment Yellow 93、Pigment Yellow 94、Pigment Yellow 95、Pigment Yellow 128、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 166、Pigment Yellow 180。
ベンズイミダゾロン系:Pigment Yellow 120、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 154、Pigment Yellow 156、Pigment Yellow 175、Pigment Yellow 181。
モノアゾ系:Pigment Yellow 1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 12, 61, 62, 62:1, 65, 73, 74, 75, 97, 100, 104, 105, 111, 116, 167, 168, 169, 182, 183。
ジスアゾ系:Pigment Yellow 12, 13, 14, 16, 17, 55, 63, 81, 83, 87, 126, 127, 152, 170, 172, 174, 176, 188, 198。
【0083】
その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えてもよい。
具体的に例示すれば、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7等がある。
【0084】
前記したような着色剤の配合割合は、特に制限はないが、組成物の固形分中5wt%以下、さらに好ましくは0.1〜3wt%で十分である。
【0085】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、その塗膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合することができる。このようなフィラーとしては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ及びタルクが好ましく用いられる。さらに、白色の外観や難燃性を得るために酸化チタンや金属酸化物、水酸化アルミなどの金属水酸化物を体質顔料フィラーとしても使用することができる。フィラーの配合量は、好ましくは組成物全体量の75wt%以下、より好ましくは0.1〜60wt%の割合である。フィラーの配合量が、組成物全体量の75wt%を超えた場合、絶縁組成物の粘度が高くなり、塗布、成形性が低下したり、硬化物が脆くなるので好ましくない。
【0086】
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物は、本発明に用いる樹脂の合成のため、組成物の調製のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチルなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0087】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、公知の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、酸化防止剤、防錆剤等のような公知の添加剤類を配合することができる。
【0088】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったものを基材上に張り合わせることにより、樹脂絶縁層を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光もしくはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3wt%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、熱硬化性成分を含有している組成物の場合、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有樹脂やカルボキシル基含有感光性樹脂のカルボキシル基と、分子中に複数の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。尚、熱硬化性成分を含有していない場合でも、熱処理することにより、露光時に未反応の状態で残った光硬化性成分のエチレン性不飽和結合が熱ラジカル重合し、塗膜特性が向上するため、目的・用途により、熱処理(熱硬化)してもよい。
【0089】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0090】
本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0091】
以下のように本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布し、揮発乾燥した後、得られた塗膜に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
【0092】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)、メタルハライドランプを搭載した露光機、(超)高圧水銀ランプを搭載した露光機、水銀ショートアークランプを搭載した露光機、もしくは(超)高圧水銀ランプなどの紫外線ランプを使用した直接描画装置を用いることができる。活性エネルギー線としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。また、その露光量は膜厚等によって異なるが、一般には5〜800mJ/cm、好ましくは5〜500mJ/cmの範囲内とすることができる。上記直接描画装置としては、例えば日本オルボテック社製、ペンタックス社製等のものを使用することができ、最大波長が350〜410nmのレーザー光を発振する装置であればいずれの装置を用いてもよい。
【0093】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0094】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、液状で直接基材に塗布する方法以外にも、予めポリエチレンテレフタレート等のフィルムにソルダーレジストを塗布・乾燥して形成したソルダーレジスト層を有するドライフィルムの形態で使用することもできる。本発明の硬化性樹脂組成物をドライフィルムとして使用する場合を以下に示す。
【0095】
ドライフィルムは、キャリアフィルムと、ソルダーレジスト層と、必要に応じて用いられる剥離可能なカバーフィルムとが、この順序に積層された構造を有するものである。ソルダーレジスト層は、アルカリ現像性の光硬化性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等でキャリアフィルム又はカバーフィルムに約10〜150μmの厚さで均一に塗布し、乾燥して形成される。キャリアフィルムにソルダーレジスト層を形成した後に、カバーフィルムをその上に積層するか、カバーフィルムにソルダーレジスト層を形成し、この積層体をキャリアフィルムに積層すればドライフィルムが得られる。
【0096】
キャリアフィルムとしては、2〜150μmの厚みのポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、ソルダーレジスト層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
【0097】
ドライフィルムを用いてプリント配線板上に保護膜(永久保護膜)を作製するには、カバーフィルムを剥がし、ソルダーレジスト層と回路形成された基材を重ね、ラミネーター等を用いて張り合わせ、回路形成された基材上にソルダーレジスト層を形成する。形成されたソルダーレジスト層に対し、前記と同様に露光、現像、加熱硬化すれば、硬化塗膜を形成することができる。キャリアフィルムは、露光前又は露光後のいずれかに剥離すればよい。
【実施例】
【0098】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0099】
(B−1)カルボン酸樹脂合成例1
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた1000ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコにPETフレーク(三菱化学(株)製:ノバベックス、IV値1.1)384部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、300℃に昇温させた塩浴に浸した。PETが溶解したところで、攪拌を開始するとともに、酸化ジブチルスズ1.6部を添加した。次いで、予め130℃で加温し溶解させたトリメチロールプロパン134部をPETが固化しないよう注意しながら少量ずつ添加した。この間、粘度が低下した段階で攪拌速度を150rpmに高めた。次に、塩浴から予め240℃へ昇温した油浴に交換し、フラスコ内温を220℃±10℃に保ち、5時間反応させた。次に、この反応物を攪拌機、空気導入管、分留管、冷却管を取り付けた1000mLの四口フラスコに518部取り、アクリル酸81部、パラトルエンスルホン酸2.4部、パラメトキシフェノール0.8部、メチルイソブチルケトン212部、トルエン112部を仕込み、攪拌して均一に溶解させた後、115℃±5℃に昇温させた油浴に浸し、所定時間反応を続けた。反応終了後、反応液の酸価を測定し、酸当量のアルカリ水溶液をフラスコ内に加えて攪拌し、中和した。次いで、食塩水(20wt%)を加え攪拌した。その後、溶液を分液漏斗に移し、反応液と同量のメチルエチルケトンを加え、水相を捨てた。油相を2回食塩水(5wt%)にて洗い、水相を捨てた。さらに、油相を少量の水道水で2回洗い、水相を捨てた。次に、反応液をビーカーに移し、ビーカー中で油相をヘキサンと攪拌し、静置後に上澄みを捨てた。最後に、エバポレーターにて濃縮を行い、PET含有アクリレート樹脂を得た。次に、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの四口丸底フラスコにPET含有アクリレート樹脂を50部、カルビトールアセテートを27部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、80℃±5℃に昇温させた油浴に浸した。次に、トリフェニルホスフィン0.8部とメトキノン0.4部を10部のカルビトールアセテートに溶解させたカルビトールアセテート溶液を徐々に滴下しつつ、テトラヒドロ無水フタル酸20部を2.5時間毎に4回に分けて添加しながら10時間反応させ、固形分65%、固形分酸価128mgKOH/g、塩素濃度20ppm以下のカルボキシル基含有アクリレートの樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をB−1と称す。
【0100】
(B−2)カルボン酸樹脂合成例2
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコに1,3−プロピレングリコール62部、トリメチロールプロパン7.8部、酸化ジブチルスズ0.77部、イソフタル酸40.6部、PETフレーク(三菱化学(株)製:ノバベックス、IV値1.1)64部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、130℃に昇温させた油浴に浸した。内容物が溶解したところで180℃まで昇温した。次いで、235℃まで昇温し、1時間反応を続けた。1時間経過したところでPETフレーク(三菱化学(株)製:ノバベックス、IV値1.1)128部とイソフタル酸81.3部を順次加え、透明液状になるまで反応を14時間続けた。
次に、フラスコ内温を200℃に保ち、攪拌を開始するとともに、トリメリット酸96部を添加し溶解させた。その後、8時間反応を続けた。次に、フラスコを110℃まで降温し、トリフェニルホスフィン1.02部、メトキノン0.51部、カルビトールアセテート287.7部を添加し、攪拌した。攪拌を続けた後、グリシジルメタクリレート51部を添加し、6時間反応させた。こうして、固形分65%、固形分酸価90mgKOH/gのカルボキシル基含有感光性化合物のワニスを得た。以下、この樹脂溶液をB−2と称す。
【0101】
(B−3)カルボン酸樹脂合成例3
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコにPETフレーク(三菱化学(株)製:ノバベックス、IV値1.1)192部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、300℃に昇温させた塩浴に浸した。PETが溶解したところで、攪拌を開始するとともに、酸化ジブチルスズ1.6部を添加した。次いで、予め130℃で加温し溶解させたトリメチロールプロパン134部をPETが固化しないよう注意しながら少量ずつ添加した。この間、粘度が低下した段階で攪拌速度を150rpmに高めた。次に、塩浴から予め240℃へ昇温した油浴に交換し、フラスコ内温を220℃±10℃に保ち、5時間反応させた後、室温まで冷却した。次に、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)を121.6部、カルビトールアセテートを240部仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、125±5℃に昇温させた油浴に浸した。攪拌を徐々に開始し、3時間反応を行い、不揮発分65%、固形分酸価103mgKOH/g、塩素濃度20ppm以下のカルボン酸樹脂を得た。この樹脂溶液をB−3と称す。
【0102】
カルボキシル基含有感光性樹脂合成例
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600部にオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N−695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070部(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360部(5.0モル)、及びハイドロキノン1.5部を仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルホスフィン4.3部を仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415部、テトラヒドロ無水フタル酸456.0部(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却後、固形分65%、固形分酸価89mgKOH/g、塩素濃度400ppmの樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をR−1と称す。
【0103】
(C)ポリエステルアクリレート合成例
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコにPETフレーク192部(三菱化学社製:ノバベックス(商品名))を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、300℃に昇温させた塩浴に浸した。PETフレークが溶解したところで、攪拌を開始するとともに、酸化ジブチルスズ0.65部を添加した。
次いで、予め130℃で加温し溶解させたトリメチロールプロパン134部をPETが固化しないよう注意しながら少量ずつ添加した。この間、粘度が低下した段階で攪拌速度を150rpmに高めた。次に、塩浴から予め240℃へ昇温した油浴に交換し、フラスコ内温を220℃±10℃に保ち5時間反応させた。反応物は常温で黄色透明、軟質粘調状であった。
得られた反応物100部にトルエン37部、メチルイソブチルケトン74部を導入し、混合した。次にアクリル酸65部、パラトルエンスルホン酸1.94部、パラメトキシフェノール0.26部を加えて110℃で100時間反応させ、室温まで冷却した。得られた反応液の酸価を測定し、酸当量のアルカリ水溶液をフラスコ内に加え攪拌し、中和した。次いで、食塩水50部を加え攪拌した。
その後、溶液を分液ロートに移して水相を捨て、油相を5wt%のNaCl溶液100部にて2回洗った。洗浄後、エバポレーターにて溶剤分を留去し、不揮発分100%の反応物を得た。得られた反応物は常温で褐色透明の軟質液状であった。この樹脂溶液をC−1と称す
【0104】
(D−1)エポキシ樹脂合成例1
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコにPETフレーク(三菱化学(株)製:ノバベックス、IV値1.1)192部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、300℃に昇温させた塩浴に浸した。PETが溶解したところで、攪拌を開始するとともに、酸化ジブチルスズ0.65部を添加した。次いで、予め130℃で加温し溶解させたトリメチロールプロパン45部をPETが固化しないよう注意しながら少量ずつ添加した。この間、粘度が低下した段階で攪拌速度を150rpmに高めた。次に、塩浴から予め240℃へ昇温した油浴に交換し、フラスコ内温を220℃±10℃に保ち5時間反応させた後、室温まで冷却した。このようにして得られた解重合体200部を攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコに仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、145℃±5℃に昇温させた油浴に浸した。攪拌を開始し約30分後、テトラヒドロ無水フタル酸83部を加え、攪拌を続けた。こうして酸価112mgKOH/gのカルボン酸樹脂を得た。次に、このカルボン酸樹脂40部を攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコに仕込み、さらにYD−825GS(新日鐵化学社製、エポキシ当量185g/eq.、塩素濃度160ppm)を60部仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、油浴を除々に昇温させ、内容物が溶解した後、油浴を110℃±5℃へ昇温させ反応を続け、エポキシ当量421g/eq.、塩素濃度93ppmのエポキシ化樹脂を得た。これをエポキシ樹脂D−1と称す。
【0105】
(D−2)エポキシ樹脂合成例2
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコにPETフレーク(三菱化学(株)製:ノバベックス、IV値1.1)192部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、300℃に昇温させた塩浴に浸した。PETが溶解したところで、攪拌を開始するとともに、酸化ジブチルスズ0.65部を添加した。次いで、予め130℃で加温し溶解させたネオペンチルグリコール104部をPETが固化しないよう注意しながら少量ずつ添加した。この間、粘度が低下した段階で攪拌速度を150rpmに高めた。次に、塩浴から予め240℃へ昇温した油浴に交換し、フラスコ内温を220℃±10℃に保ち5時間反応させた後、室温まで冷却した。このようにして得られた解重合体118部を攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコに仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、o−ヒドロキシ安息香酸110部、ジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした。湯浴を200℃まで徐々に加熱しながら約4〜6時間かけて縮合水を除き、十分に酸価が低下した時点で油浴を下げ、フラスコ内容物を取り出し、フェノール樹脂を得た。次に、このフェノール樹脂45.1部を攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルラスコに仕込み、さらにYD−825GS(新日鐵化学社製、エポキシ当量185g/eq.、塩素濃度160ppm)を66.3部仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、油浴を除々に昇温させ、内容物が溶解した後、油浴を110℃±5℃へ昇温させ反応を続け、エポキシ当量447g/eq.、塩素濃度95ppmのエポキシ化樹脂を得た。これをエポキシ樹脂D−2と称す。
【0106】
実施例1〜13及び比較例1〜2
上記各合成例の樹脂を用い、下記表1に示す種々の成分と共に表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。
【0107】
【表1】

【0108】
性能評価:
<ポリエステル由来化合物含有率>
前記実施例及び比較例の組成物において、前記一般式(1)から誘導された化合物の含有率(有機成分中)を表2に示す。
【0109】
<最適露光量>
銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してから、前記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で60分間乾燥させた。乾燥後、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いてステップタブレット(Kodak No.2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1wt%NaCO水溶液)を60秒で行った際に残存するステップタブレットのパターンが7段の時を最適露光量とした。
【0110】
<現像性>
前記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、銅ベタ基板上にスクリーン印刷法により乾燥後の膜厚が約25μmになるように塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させた。乾燥後、1wt%NaCO水溶液によって現像を行い、乾燥塗膜が除去されるまでの時間をストップウォッチにより計測した。
【0111】
<指触乾燥性>
前記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物をそれぞれパターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ、室温まで放冷した。この基板にPETフィルムを押し当て、その後、ネガフィルムを剥がしたときのフィルムの張り付き状態を評価した。判定基準は以下のとおりである。
◎:フィルムを剥がすときに、全く抵抗が無く、塗膜に跡が残らない。
○:フィルムを剥がす時に、全く抵抗が無いが、塗膜に跡が少しついている。
△:フィルムを剥がす時に、僅かに抵抗があり、塗膜に跡が少しついている。
×:フィルムを剥がす時に、抵抗があり、塗膜にはっきり跡がついている。
【0112】
<解像性>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、ライン/スペースが300/300μm、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させた。乾燥後、高圧水銀灯を搭載した露光装置を用いて露光した。露光パターンはスペース部に20/30/40/50/60/70/80/90/100μmのラインを描画させるネガを使用した。露光量は感光性樹脂組成物の最適露光量となるように活性エネルギー線を照射した。露光後、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、150℃×60分の熱硬化をすることにより硬化塗膜を得た。得られたソルダーレジスト用感光性樹脂組成物の硬化塗膜の最小残存ラインを200倍に調整した光学顕微鏡を用いて求め、これを解像性とした。
【0113】
<ハロゲン含有量>
上記各合成例で得られた樹脂溶液を用い、前記表1に示す種々の成分と共に表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物をJPCA規格に基づくフラスコ燃焼処理イオンクロマトグラフ法を用いることにより、ハロゲンイオン不純物含有量(塩素物と臭素物の合計)を定量した。ハロゲンイオン濃度が20ppm以下(定量限界)の場合には表記を「−」とする。結果を表2に示す。
【0114】
特性試験:
前記各実施例及び比較例の組成物を、パターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分乾燥し、室温まで放冷した。この基板に高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて最適露光量でソルダーレジストパターンを露光し、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、レジストパターンを得た。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分加熱して硬化した。得られたプリント基板(評価基板)に対して以下のように特性を評価した。
【0115】
<はんだ耐熱性>
ロジン系フラックスを塗布した評価基板を、予め260℃に設定したはんだ槽に浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。判定基準は以下のとおりである。
◎:10秒間浸漬を6回以上繰り返しても剥がれが認められない。
○:10秒間浸漬を3回以上繰り返しても剥がれが認められない。
△:10秒間浸漬を3回以上繰り返すと少し剥がれる。
×:10秒間浸漬を3回以内にレジスト層に膨れ、剥がれがある。
【0116】
<耐アルカリ性>
評価基板を10wt%NaOH水溶液に室温で30分間浸漬し、染み込みや塗膜の溶け出し、さらにテープビールによる剥がれを確認した。判定基準は以下のとおりである。
○:染み込み、溶け出し、剥がれなし。
△:染み込み、溶け出し、もしくは剥がれが少し確認される。
×:染み込み、溶け出し、もしくは剥がれが大きく確認される。
【0117】
<剥離性>
評価基板を60℃の10wt%NaOH水溶液に浸漬し、ソルダーレジスト層を基板から剥離可能であるか評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:15分の浸漬により剥離が可能である。
○:30分の浸漬により剥離が可能である。
△:60分の浸漬後、やや残渣が認められる。
×:剥離不可能である。
【0118】
<電極変色耐性>
銅箔基板に代えてライン/スペース=50/50μmのクシ型電極パターンを用い、上記の条件で評価基板を作製し、このクシ型電極を121℃、97%R.H.の加温加湿条件下でDC30Vのバイアス電圧を印加し、100時間後の電極周辺の塗膜の変色度合いを評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:塗膜の変色無し。
△:塗膜の変色が僅かに確認される。
×:塗膜の変色有り。
【0119】
<ドライフィルム作製>
実施例1及び比較例1のソルダーレジスト用感光性樹脂組成物をそれぞれメチルエチルケトンで適宜希釈した後、アプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が30μmになるようにPETフィルム(東レ製 FB−50:16μm)に塗布し、40〜100℃で乾燥させドライフィルムを得た。
【0120】
<基板作製>
回路形成された基板をバフ研磨した後、上記方法にて作製したドライフィルムを真空ラミネーター(名機製作所製 MVLP−500)を用いて加圧度:0.8MPa、70℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、未露光のソルダーレジスト層を有する基板(未露光の基板)を得た。得られた基板を前記評価方法と同様にして、最適露光量、現像性、解像性、はんだ耐熱性、耐アルカリ性、剥離性、電極変色耐性の各試験を行った。
評価結果を表2に示す。
【0121】
【表2】

【0122】
上記表2に示される結果から明らかなように、本発明のポリエステル由来化合物(カルボン酸樹脂、ポリ(メタ)アクリレート及びエポキシ樹脂)を含有しない光硬化性樹脂組成物を用いた比較例1及び2では、60℃の10wt%NaOH水溶液への浸漬処理によってソルダーレジスト層を基板から剥離することは不可能であった。
これに対して、実施例1〜13の本発明の光硬化性樹脂組成物は、一般的な耐アルカリ性とアルカリ水溶液による剥離性を両立しており、ソルダーレジストとして用いた場合、ソルダーレジスト形成工程に起因する不良により通常であれば廃棄されるプリント配線板から、ソルダーレジスト硬化膜のみを剥離、洗浄することにより基板を再利用することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ(メタ)アクリレート(但し、下記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導されるポリ(メタ)アクリレートを除く)と、
いずれも下記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される、(B)カルボン酸樹脂、(C)ポリ(メタ)アクリレート及び(D)エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上
を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは(m+l)価の多価アルコール誘導体を表し、RはCH、C、C、C、置換もしくは無置換の芳香族環のいずれかを表し、Rは置換もしくは無置換の芳香族環を表し、m及びnは1以上、10未満の整数であり、lは0もしくは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記カルボン酸樹脂(B)、ポリ(メタ)アクリレート(C)及びエポキシ樹脂(D)のいずれか1種又は2種以上を、組成物中の有機物に対して20wt%以上の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
いずれも下記一般式(1)で示される構造を含む化合物から誘導される、(B)カルボン酸樹脂、(C)ポリ(メタ)アクリレート及び(D)エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上を、組成物中の有機物に対して20wt%以上の割合で含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは(m+l)価の多価アルコール誘導体を表し、RはCH、C、C、C、置換もしくは無置換の芳香族環のいずれかを表し、Rは置換もしくは無置換の芳香族環を表し、m及びnは1以上、10未満の整数であり、lは0もしくは1以上の整数である。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を、フィルム上に塗布・乾燥させて得られる光硬化性のドライフィルム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物、又は前記光硬化性樹脂組成物をフィルム上に塗布・乾燥させて得られる光硬化性のドライフィルムを、パターン状に硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物、又は前記光硬化性樹脂組成物をフィルム上に塗布・乾燥させて得られる光硬化性のドライフィルムを、パターン状に光硬化させた後、熱硬化して得られる硬化皮膜を有するプリント配線板。

【公開番号】特開2012−141384(P2012−141384A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292788(P2010−292788)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(310024066)太陽インキ製造株式会社 (16)
【Fターム(参考)】