説明

光結合用レンズ及び光源モジュール

【課題】光軸垂直方向の移動に伴う光軸方向のスポットずれが抑えられた光結合用レンズ及びこれを搭載した簡素で結合効率の高い光源モジュールを提供する。
【解決手段】光源1から出射された光2をSHG素子5の光導波路に結合する光結合用レンズ3,4の3次の非点収差係数IIIを、0.04<III<0.30の範囲とする。簡素化のため、光源モジュールには、光軸方向にレンズを移動させるアクチュエータを搭載せず、光軸垂直方向に移動させるアクチュエータのみを搭載する。
【効果】上記範囲の場合、アクチュエータにより光軸垂直方向にレンズを移動させても、光軸方向のスポットずれが著しく抑えられるので、光軸垂直方向のレンズ位置調整のみによって高い結合効率を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光を光導波路に結合させる光結合用レンズ及びこれを搭載した光源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を光導波路に通して出力する光源モジュールにおいては、光源からの光を光導波路の入射端に集光し、光束を光導波路に効率よく結合することが求められる。
従来、図1に示すように、レーザーダイオード1からの光2を第1レンズ3及び第2レンズ4を介して第2次高調波発生(SHG)素子5の光導波路入射端5aに集光して光導波路に光を導波させ、光導波路の他端から第2次高調波光を出力する光源モジュールがある。
しかし、パッシブアライメントでの組立てでは、組立て誤差により入射端5a上の集光スポットがずれてしまい、結合効率が低下もしくは全く結合しないことになる。これを解決するために、レンズ3、4にアクチュエータを搭載し、集光するスポットを入射端5aに入射するようにレンズ3,4の位置を調整することで、結合効率を最適にすることが行われる。
【0003】
特許文献1には、上記第1レンズ3と第2レンズ4の間に弱レンズを配置した態様に相当する構成が記載されており、この弱レンズを光軸方向に移動させる発明が記載されている。
かかる発明によれば、弱レンズの移動量に対する結合効率の変化量は小さいため、調整精度は緩和され、調整しやすくなる。
【特許文献1】特開2005−222049号公報
【非特許文献1】松居吉哉「レンズ設計法」第4章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明にあたっては、調整精度を緩和するために弱レンズを1枚増やす必要があるため、レンズ枚数が多くなり、構成も複雑化、大型化してコスト高となる。
図2は、光軸方向(図1のZ軸方向)及び光軸垂直方向(図1のX,Y軸方向)のスポットずれに対する結合効率の変化を示すグラフである。
かかるグラフからわかるように、光軸方向のずれに対する結合効率の変化は、光軸垂直方向のずれに対する結合効率の変化に対して緩やかである。
【0005】
これを踏まえると、レンズの位置を補正するアクチュエータの駆動軸は光軸垂直方向のみとし、光軸方向にレンズを移動するアクチュエータを構成しないことによって簡素化することが考えられる。
Z軸方向の調整精度は緩いため、精度よく組立てた後、組み込まれたアクチュエータによってX,Y軸方向についてのみレンズ位置を調整すれば、光導波路への結合効率の高いモジュールを構成することができる。
【0006】
しかし、いくらZ軸方向に精度よく組立てたとしても、アクチュエータにより光軸垂直方向にレンズ位置を調整すると集光スポットは、光軸垂直方向はもちろんだが光軸方向もずれてしまう。これにより結合効率が低下することになる。
そこで、光軸垂直方向にレンズを移動させるアクチュエータを有し、光軸方向にレンズを移動させるアクチュエータを有さない構成においては、光軸垂直方向のレンズの移動に伴う光軸方向のスポットずれを抑えられるレンズが求められる。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、レンズの光軸垂直方向の移動に伴う光軸方向のスポットずれが抑えられた光結合用レンズ及びこれを搭載した簡素で、光導波路への結合効率の高い光源モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、光源から出射された光を光導波路に結合させる光結合用レンズであって、前記光結合用レンズの3次の非点収差係数をIIIとするとき、
0.04<III<0.30の関係
を満たす光結合用レンズである。
ここで、3次の非点収差係数IIIは、非特許文献1に記載されるものであり、入射径、入射画角によらないレンズ固有の定数である。
【0009】
請求項2記載の発明は、光源と、光導波路と、前記光源から出射された光を前記光導波路に結合させる1又は2以上の光結合用レンズとを備え、
少なくとも1つの前記光結合用レンズの3次の非点収差係数をIIIとするとき、
0.04<III<0.30の関係
を満たす光源モジュールである。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記光導波路への結合効率を調整するために、0.04<III<0.30の関係
を満たす前記光結合用レンズを移動させるアクチュエータを備え、
前記アクチュエータによる前記レンズの移動方向が、光軸に垂直な方向に限定されてなる請求項2に記載の光源モジュールである。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記光結合レンズのうち少なくとも一つは、コリメートレンズである請求項2又は請求項3に記載の光源モジュールである。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記光結合レンズはガラスレンズである請求項2、請求項3又は請求項4に記載の光源モジュールである。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記光結合レンズの数が2である請求項2から請求項5のうちいずれか一に記載の光源モジュールである。
【0014】
請求項7記載の発明は、前記光結合レンズのうち前記光源に対峙するレンズと、前記光導波路に対峙するレンズとは同一の光学面を有するレンズである請求項2から請求項6のうちいずれか一に記載の光源モジュールである。
ここで、同一の光学面とは、レンズの曲率半径と厚さ、非球面係数が同一のもの、もしくは、有効径内でレンズ形状が等しいものを示す。このとき、レンズ面を逆向きに使用しても構わない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レンズの3次の非点収差係数IIIを特定の範囲にすることで、レンズの光軸垂直方向の移動に伴う光軸方向のスポットずれが抑えられた光結合用レンズ及びこれを搭載した簡素で光導波路への結合効率の高い光源モジュールが与えられるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の一実施の形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る光源モジュールの基本構成図である。
図1に示すように、本実施形態の光源モジュールは、従来技術と同様に、光源であるレーザーダイオード1と、光導波路が形成された第2次高調波発生(SHG)素子5と、光結合用レンズである第1レンズ3及び第2レンズ4とを備える。図1に光軸をZ軸とした直交3軸座標X−Y−Zを示した。
【0018】
図示しないが、レンズ3,4にはアクチュエータとなる駆動機構が付設される。このアクチュエータによってレンズ3,4をX,Y軸方向に移動して、光導波路への結合が高効率となるように調整する。
本実施形態においては、アクチュエータによるレンズ3,4の移動方向は、光軸Zに垂直な方向X,Yに限定されており、光軸Z方向にレンズ3,4を移動させるアクチュエータを有さない。
【0019】
第1レンズ3をX軸方向にのみ移動可能とし、第2レンズ4をY軸方向にのみ移動可能とするか、第1レンズ3及び第2レンズ4をそれぞれX,Y軸方向に移動可能にするか、又は、第1レンズ3及び第2レンズ4のうちいずれか一方を固定とし、他方をX,Y軸方向に移動可能にするなど、X軸アクチュエータ及びY軸アクチュエータの構成は任意であり、光導波路入射端5a上のスポットをX軸及びY軸方向に位置調整可能にする構成とすればよい。また、X軸アクチュエータの可動方向とY軸アクチュエータの可動方向は必ずしも直交していなくともよい。
【0020】
本実施形態において、光結合用レンズにはガラスレンズが用いられる。本実施形態において、光結合用レンズの数は2であり、レーザーダイオード1に対峙する第1レンズ3と、光導波路に対峙する第2レンズ4とは同一のコリメートレンズである。
【0021】
本実施形態に適用される光結合用レンズの3次の非点収差係数をIIIとするとき、
0.04<III<0.30の関係を有する。
この範囲とすることによって、光軸垂直方向のレンズ位置移動に伴う光軸方向のスポットずれが抑えられる。したがって、Z軸方向にレンズを移動させるアクチュエータを有さない簡素な構成においても、X,Y軸方向のレンズの位置調整に伴うZ軸方向のスポットずれが小さく抑えられ、X,Y軸方向のレンズ位置調整のみでも高い結合効率を達成できる。かかる効果を確認できる実施例を以下に開示する。
【実施例】
【0022】
表1に、6つのレンズA1〜A6及び1つのレンズBの3次の非点収差係数IIIの値を示す。表1に示すように、6つのレンズA1〜A6のIIIの値は、
0.04<III<0.30の範囲にある。1つのレンズBのIIIの値は、
0.04<III<0.30の範囲から外れている。
【0023】
【表1】

【0024】
第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用い、第1レンズ3のX軸、Y軸方向のシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を計算した。計算対象とした構成の詳細は表2に記載する。数1にレンズ面の定義式を示す。表2〜7における表(e)の公差は、光導波路(SHG)が誤差を持っている時に第1レンズ(L1)で補正したとして、結合効率100%(規格化)→90%となるときの、光導波路の公差(言い換えると、結合効率90%となるときの光導波路の偏心誤差量)値を示している。
図3に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用いたときの第1レンズ3のX軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。図4に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用いたときの第1レンズ3のY軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。
図3、図4に示すように、X軸方向のレンズBのシフト量増大に従って、像面からのビームウェストの距離は、X軸方向のビームウェスト、Y軸方向のビームウェストともに、放物線状に増大する。
これでは、アクチュエータによるX,Y軸方向のレンズ位置調整によりZ軸方向のスポットずれが大きく生じ、高い結合効率を達成できない。
【0025】
【表2】

【数1】

【0026】
第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用い、第1レンズ3のX軸、Y軸方向のシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を計算した。計算対象とした構成の詳細は表3に記載する。レンズ面の定義式は数1による。
図5に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用いたときの第1レンズ3のX軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。図6に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用いたときの第1レンズ3のY軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。
図5、図6に示すように、レンズA2によれば、特にレンズシフト0.00〜0.10〔mm〕の範囲で、著しくビームウェストの変位が抑えられている。
したがって、レンズA2によれば、X,Y軸方向のレンズの位置調整に伴うZ軸方向のスポットずれが小さく抑えられ、X,Y軸方向のレンズ位置調整によって高い結合効率を達成できる。
【0027】
【表3】

【0028】
第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用い、第1レンズ3のX軸、Y軸方向のシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を計算した。計算対象とした構成の詳細は表4に記載する。レンズ面の定義式は数1による。
図7に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用いたときの第1レンズ3のX軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。図8に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用いたときの第1レンズ3のY軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。
図7、図8に示すように、レンズA3によっても、特にレンズシフト0.00〜0.10〔mm〕の範囲で、著しくビームウェストの変位が抑えられている。
したがって、レンズA3によれば、X,Y軸方向のレンズの位置調整に伴うZ軸方向のスポットずれが小さく抑えられ、X,Y軸方向のレンズ位置調整によって高い結合効率を達成できる。
図7に示すXウェストのレンズシフトに対する変化では、その変化曲線がレンズシフト0.05〜0.10〔mm〕の範囲で、極小を迎えるように下押された曲線形状となっていることが、図3と比較した大きな特徴である。
また、図8に示すYウェストのレンズシフトに対する変化でも、その変化曲線がレンズシフト0.05〜0.10〔mm〕の範囲で、極小を迎えるように下押された曲線形状となっていることが、図4と比較した大きな特徴である。
【0029】
【表4】

【0030】
第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用い、第1レンズ3のX軸、Y軸方向のシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を計算した。計算対象とした構成の詳細は表5に記載する。レンズ面の定義式は数1による。
図9に、第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用いたときの第1レンズ3のX軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。図10に、第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用いたときの第1レンズ3のY軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。
図9、図10に示すように、レンズA2によれば、特にレンズシフト0.00〜0.10〔mm〕の範囲で、著しくビームウェストの変位が抑えられている。
したがって、レンズA5,A6によれば、X,Y軸方向のレンズの位置調整に伴うZ軸方向のスポットずれが小さく抑えられ、X,Y軸方向のレンズ位置調整によって高い結合効率を達成できる。
【0031】
【表5】

【0032】
第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用い、両レンズを相対的にX軸、Y軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を計算した。計算対象とした構成の詳細は表2による。レンズ面の定義式は数1による。
図11に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用いたときの両レンズを相対的にX軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。図12に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用いたときの両レンズを相対的にY軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。
図11、図12に示すように、X軸方向のレンズBのシフト量増大に従って、像面からのビームウェストの距離は、X軸方向のビームウェスト、Y軸方向のビームウェストともに、放物線状に増大する。
これでは、アクチュエータによるX,Y軸方向の調整によりZ軸方向のスポットずれが大きく生じ、高い結合効率を達成できない。
【0033】
第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用い、両レンズを相対的にX軸、Y軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を計算した。計算対象とした構成の詳細は表3による。レンズ面の定義式は数1による。
図13に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用いたときの両レンズを相対的にX軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。図14に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用いたときの両レンズを相対的にY軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。
図13、図14に示すように、レンズA2によれば、特にレンズシフト0.00〜0.10〔mm〕の範囲で、著しくビームウェストの変位が抑えられている。
したがって、レンズA2によれば、X,Y軸方向のレンズの位置調整に伴うZ軸方向のスポットずれが小さく抑えられ、X,Y軸方向のレンズ位置調整によって高い結合効率を達成できる。
【0034】
第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用い、両レンズを相対的にX軸、Y軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を計算した。計算対象とした構成の詳細は表4による。レンズ面の定義式は数1による。
図15に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用いたときの両レンズを相対的にX軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。図16に、第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用いたときの両レンズを相対的にY軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。
図15、図16に示すように、レンズA3によっても、特にレンズシフト0.00〜0.10〔mm〕の範囲で、著しくビームウェストの変位が抑えられている。
したがって、レンズA3によれば、X,Y軸方向のレンズの位置調整に伴うZ軸方向のスポットずれが小さく抑えられ、X,Y軸方向のレンズ位置調整によって高い結合効率を達成できる。
図15に示すXウェストのレンズシフトに対する変化では、その変化曲線がレンズシフト0.05〔mm〕付近で、極小を迎えるように下押された曲線形状となっていることが、図9と比較した大きな特徴である。
また、図16に示すYウェストのレンズシフトに対する変化でも、その変化曲線がレンズシフト0.05〔mm〕付近で、極小を迎えるように下押された曲線形状となっていることが、図10と比較した大きな特徴である。
【0035】
第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用い、両レンズを相対的にX軸、Y軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を計算した。計算対象とした構成の詳細は表5による。レンズ面の定義式は数1による。
図17に、第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用いたときの両レンズを相対的にX軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。図18に、第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用いたときの両レンズを相対的にY軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフを示す。
図17、図18に示すように、レンズA2によれば、特にレンズシフト0.00〜0.10〔mm〕の範囲で、著しくビームウェストの変位が抑えられている。
したがって、レンズA2によれば、X,Y軸方向のレンズの位置調整に伴うZ軸方向のスポットずれが小さく抑えられ、X,Y軸方向のレンズ位置調整によって高い結合効率を達成できる。
図17に示すXウェストのレンズシフトに対する変化では、その変化曲線がレンズシフト0.05〜0.10〔mm〕の範囲で、極小を迎えるように下押された曲線形状となっていることが、図11と比較した大きな特徴である。
また、図18に示すYウェストのレンズシフトに対する変化でも、その変化曲線がレンズシフト0.05〜0.10〔mm〕の範囲で、極小を迎えるように下押された曲線形状となっていることが、図12と比較した大きな特徴である。
【0036】
図19は、各レンズA1〜A6及びレンズBにつき、第1レンズ3をX軸方向に+0.05〔mm〕シフトしたことに対する像面からビームウェストまでの距離の変化量をプロットしたグラフである。
図20は、各レンズA1〜A6及びレンズBにつき、第1レンズ3及び第2レンズ4をX軸方向に±0.05〔mm〕シフトしたことに対する像面からビームウェストまでの距離の変化量をプロットしたグラフである。
但し、図19及び図20において横軸は、3次の非点収差係数IIIであり、各レンズA1〜A6及びレンズBの符号を付記した。また、レンズA1〜A4及びレンズBについては、それぞれ第1レンズ3及び第2レンズ4を同一の当該各レンズとし、レンズA5,A6については、第1レンズ3をレンズA6とし第2レンズ4をレンズA5として計算した結果である。計算対象とした構成の詳細は、レンズBについては表2、レンズA2については表3、レンズA3については表4、レンズA5,A6については表5、レンズA1については表6、レンズA4については表7による。レンズ面の定義式は数1による。
【0037】
【表6】

【0038】
【表7】

【0039】
図19、図20に示されるように、0.04<III<0.30の範囲にあるレンズA1〜A6については、かかる範囲の外にあるレンズBに比較して、ビームウェストの変位が著しく抑えられている。
したがって、光結合用レンズの3次の非点収差係数をIIIを、
0.04<III<0.30の範囲、好ましくは0.05<III<0.25の範囲とすることによって、X,Y軸方向のレンズの位置調整に伴うZ軸方向のスポットずれが小さく抑えられ、X,Y軸方向のレンズ位置調整によって高い結合効率を達成できる。
以上で実施例の開示を終わる。
【0040】
次に、第1レンズ、第2レンズ及びそれらのアクチュエータの構成例につき説明する。図21は、レンズを駆動する駆動装置DRの斜視図である。第2レンズL2と開口絞りSとは、レンズホルダDH2により保持されており、一体的に移動するようになっている。可動部材となるレンズホルダDH2は、駆動力を受ける連結部DH2aを有している。
【0041】
連結部DH2aの端部には、四角柱状のX軸駆動軸XDSと対応する形状を有し且つそれに接する角溝DH2bが設けられ、また角溝DH2bとの間にX軸駆動軸XDSを挟むようにして板ばねXSGが取り付けられている。連結部DH2aと板ばねXSGとの間で挟持された駆動部材であるX軸駆動軸XDSは、第2レンズL2の光軸に直交する方向(X軸方向)に延在しており、板ばねXSGの付勢力で適度に押圧されている。X軸駆動軸XDSの一端は自由端であり、その他端は、電気機械変換素子であるX軸圧電アクチュエータXPZに連結されている。X軸圧電アクチュエータXPZは、ベースBSに立設された側壁SWに取り付けられている。
【0042】
一方、第1レンズL1は、レンズホルダDH1により保持されており、一体的に移動するようになっている。可動部材となるレンズホルダDH1は、駆動力を受ける連結部DH1aを有している。
【0043】
連結部DH1aの端部には、四角柱状のY軸駆動軸YDSと対応する形状を有し且つそれに接する角溝DH1bが設けられ、また角溝DH1bとの間にY軸駆動軸YDSを挟むようにして板ばねYSGが取り付けられている。連結部DH1aと板ばねYSGとの間で挟持された駆動部材であるY軸駆動軸YDSは、X軸方向及び第1レンズL1の光軸に直交する方向(Y軸方向)に延在しており、板ばねYSGの付勢力で適度に押圧されている。Y軸駆動軸YDSの一端は自由端であり、その他端は、電気機械変換素子であるY軸圧電アクチュエータYPZに連結されている。Y軸圧電アクチュエータYPZは、ベースBSの上面に取り付けられている。
【0044】
圧電アクチュエータXPZ、YPZは、PZT(ジルコン・チタン酸鉛)などで形成された圧電セラミックスを積層してなる。圧電セラミックスは、その結晶格子内の正電荷の重心と負電荷の重心とが一致しておらず、それ自体分極していて、その分極方向に電圧を印加すると伸びる性質を有している。しかし、圧電セラミックスのこの方向への歪みは微小であり、この歪み量により被駆動部材を駆動することは困難であるため、図22に示すように、複数の圧電セラミックスPEを積み重ねてその間に電極Cを並列接続した構造の積層型圧電アクチュエータが実用可能なものとして提供されている。本実施の形態では、この積層型圧電アクチュエータPZを駆動源として用いている。
【0045】
次に、このレンズL1、L2の駆動方法について説明する。一般に、積層型圧電アクチュエータは、電圧印加時の変位量は小さいが、発生力は大でその応答性も鋭い。したがって、圧電アクチュエータXPZに、図23(a)に示すように立ち上がりが鋭く立ち下がりがゆっくりとした略鋸歯状波形のパルス電圧を印加すると、圧電アクチュエータXPZは、パルスの立ち上がり時に急激に伸び、立ち下がり時にそれよりもゆっくりと縮む。したがって、圧電アクチュエータXPZの伸長時には、その衝撃力でX軸駆動軸XDSが図21の手前側へ押し出されるが、レンズL2及び開口絞りSを保持したレンズホルダDH2の連結部DH2aと板ばねXSGは、その慣性により、X軸駆動軸XDSと一緒には移動せず、X軸駆動軸XDSとの間で滑りを生じてその位置に留まる(わずかに移動する場合もある)。一方、パルスの立ち下がり時には立ち上がり時に比較してX軸駆動軸XDSがゆっくりと戻るので、連結部DH2aと板ばねXSGがX軸駆動軸XDSに対して滑らずに、X軸駆動軸XDSと一体的に図21の奥側へ移動する。即ち、周波数が数百から数万ヘルツに設定されたパルスを印加することにより、レンズL2及び開口絞りSを保持したレンズホルダDH2を、X軸方向に所望の速度で連続的に移動させることができる。
【0046】
同様に、圧電アクチュエータYPZに、図23(a)に示すように立ち上がりが鋭く立ち下がりがゆっくりとした略鋸歯状波形のパルス電圧を印加すると、圧電アクチュエータYPZは、パルスの立ち上がり時に急激に伸び、立ち下がり時にそれよりもゆっくりと縮む。したがって、圧電アクチュエータYPZの伸長時には、その衝撃力でY軸駆動軸YDSが図21の上側へ押し出されるが、レンズL1を保持したレンズホルダDH1の連結部DH1aと板ばねYSGは、その慣性により、Y軸駆動軸YDSと一緒には移動せず、Y軸駆動軸YDSとの間で滑りを生じてその位置に留まる(わずかに移動する場合もある)。一方、パルスの立ち下がり時には立ち上がり時に比較してY軸駆動軸YDSがゆっくりと戻るので、連結部DH1aと板ばねYSGがY軸駆動軸YDSに対して滑らずに、Y軸駆動軸YDSと一体的に図21の下側へ移動する。即ち、周波数が数百から数万ヘルツに設定されたパルスを印加することにより、レンズL1を保持したレンズホルダDH1を、Y軸方向に所望の速度で連続的に移動させることができる。
【0047】
即ち、所定のパルス入力を印加することにより、レンズL2及び開口絞りSをX軸方向に、レンズL1をY軸方向に所望の速度で連続的に移動させることができるのである。尚、以上より明らかであるが、図23(b)に示すように電圧の立ち上がりがゆっくりで、立ち下がりが鋭いパルスを印加すれば、レンズホルダDH1,DH2を逆の方向へ移動させることができる。本実施の形態では、X軸駆動軸XDS及びY軸駆動軸YDSを四角柱状(回り止め機構)としているので、レンズホルダDH1,DH2の回り止め機能が発揮され、レンズL2,L1のチルトが抑制されるので、別個にガイド軸を設ける必要はない。
【0048】
なお、以上の実施形態に拘わらず、光導波路を形成する素子には特に限定はなく、SHG素子のほか光ファイバーなどが適用される。
本発明の効果は、光源や光導波路のモードには依存しないため、本発明は扁平のモードでも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態及び従来技術に共通の光源モジュールの基本構成図である。
【図2】光軸方向及び光軸垂直方向のスポットずれに対する結合効率の変化を示すグラフである。
【図3】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用いたときの第1レンズ3のX軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図4】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用いたときの第1レンズ3のY軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図5】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用いたときの第1レンズ3のX軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図6】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用いたときの第1レンズ3のY軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図7】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用いたときの第1レンズ3のX軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図8】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用いたときの第1レンズ3のY軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図9】第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用いたときの第1レンズ3のX軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図10】第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用いたときの第1レンズ3のY軸方向のレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図11】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用いたときの両レンズを相対的にX軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図12】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズBを用いたときの両レンズを相対的にY軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図13】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用いたときの両レンズを相対的にX軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図14】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA2を用いたときの両レンズを相対的にY軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図15】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用いたときの両レンズを相対的にX軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図16】第1レンズ3及び第2レンズ4にレンズA3を用いたときの両レンズを相対的にY軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図17】第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用いたときの両レンズを相対的にX軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図18】第1レンズ3にレンズA6を用い第2レンズ4にレンズA5を用いたときの両レンズを相対的にY軸方向にシフトしたレンズシフトに対する像面からビームウェストまでの距離の変化を表すグラフである。
【図19】各レンズA1〜A6及びレンズBにつき、第1レンズ3をX軸方向に+0.05〔mm〕シフトしたことに対する像面からビームウェストまでの距離の変化量をプロットしたグラフである。
【図20】各レンズA1〜A6及びレンズBにつき、第1レンズ3及び第2レンズ4をX軸方向に±0.05〔mm〕シフトしたことに対する像面からビームウェストまでの距離の変化量をプロットしたグラフである。
【図21】本発明の一実施形態に係るレンズを駆動する駆動装置の斜視図である。
【図22】本発明の一実施形態に係る積層型圧電アクチュエータの斜視図である。
【図23】本発明の一実施形態に係る駆動電圧パルスを示す波形図である。
【符号の説明】
【0050】
1 レーザーダイオード
2 光
3 第1レンズ
4 第2レンズ
5 第2次高調波発生素子
5a 光導波路入射端
Z 光軸
BS ベース
C 電極
DH1 レンズホルダ
DH2 レンズホルダ
DH1a 連結部
DH1b 角溝
DH2a 連結部
DH2b 角溝
DR 駆動装置
HD 支持体
HG 溝
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
PE 圧電セラミックス
PZ 圧電アクチュエータ
S 開口絞り
XDS X軸駆動軸
XPZ X軸圧電アクチュエータ
YDS Y軸駆動軸
YPZ Y軸圧電アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光を光導波路に結合させる光結合用レンズであって、前記光結合用レンズの3次の非点収差係数をIIIとするとき、
0.04<III<0.30の関係
を満たす光結合用レンズ。
【請求項2】
光源と、光導波路と、前記光源から出射された光を前記光導波路に結合させる1又は2以上の光結合用レンズとを備え、
少なくとも1つの前記光結合用レンズの3次の非点収差係数をIIIとするとき、
0.04<III<0.30の関係
を満たす光源モジュール。
【請求項3】
前記光導波路への結合効率を調整するために、
0.04<III<0.30の関係
を満たす前記光結合用レンズを移動させるアクチュエータを備え、
前記アクチュエータによる前記レンズの移動方向が、光軸に垂直な方向に限定されてなる請求項2に記載の光源モジュール。
【請求項4】
前記光結合レンズのうち少なくとも一つは、コリメートレンズである請求項2又は請求項3に記載の光源モジュール。
【請求項5】
前記光結合レンズはガラスレンズである請求項2、請求項3又は請求項4に記載の光源モジュール。
【請求項6】
前記光結合レンズの数が2である請求項2から請求項5のうちいずれか一に記載の光源モジュール。
【請求項7】
前記光結合レンズのうち前記光源に対峙するレンズと、前記光導波路に対峙するレンズとは同一の光学面を有するレンズである請求項2から請求項6のうちいずれか一に記載の光源モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−250117(P2008−250117A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93091(P2007−93091)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】