説明

光触媒体分散液、その製造方法およびその用途

【課題】粒子の凝集が抑制されて固液分離を起こしにくい光触媒体分散液を提供する。
【解決手段】光触媒体分散液は、酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子、リン酸(塩)および分散媒を含み、前記リン酸(塩)の含有量が、前記酸化チタン粒子に対して0.001〜0.2モル倍である。かかる光触媒体分散液の製造方法は、リン酸(塩)を溶解させた分散媒中に酸化チタン粒子を分散させ、得られた酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子とを混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子とを含有する光触媒体分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体にバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると、価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯に正孔が、伝導帯に自由電子がそれぞれ生成する。かかる正孔および自由電子は、それぞれ強い酸化力と還元力を有することから、半導体に接触した分子種に酸化還元作用を及ぼす。この酸化還元作用は光触媒作用と呼ばれており、かかる光触媒作用を示し得る半導体は、光触媒体と呼ばれている。このような光触媒体としては、酸化チタン粒子や酸化タングステン粒子などの粒子状のものが知られている。
【0003】
光触媒酸化チタン粒子や光触媒酸化タングステン粒子は、通常、分散媒中に分散させ、光触媒体分散液として光触媒体層の形成に利用されており、例えば、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子を分散媒中に分散させた光触媒体分散液が開示されている(特許文献1)。かかる光触媒体分散液を基材の表面に塗布することにより、基材表面に、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子を含み、光触媒作用を示す光触媒体層を容易に形成することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−231935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子を分散媒中に分散させた従来の光触媒体分散液は、粒子が互いに凝集して固液分離し易いという欠点があった。例えば、光触媒体分散液を輸送、保管する間に該分散液中の粒子が凝集して固液分離が生じると、分散液を基材に塗布するなどして光触媒体層を形成する際に、良好な膜を形成することができず、その結果、充分な光触媒活性を付与できない、といった問題を招くことになる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、粒子の凝集が抑制されて固液分離を起こしにくい光触媒体分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた。その結果、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子を分散媒中に分散させた分散液において、酸化チタン粒子に対して特定量のリン酸(塩)を共存させると、粒子の凝集が抑制されることを見出した。さらに、その際、リン酸(塩)は酸化チタン粒子近傍に存在させることが、粒子の凝集を抑制するうえで有効であり、そのように酸化チタン粒子近傍にリン酸(塩)が存在する分散液を得るには、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との混合に先立ち、リン酸(塩)溶液中に酸化チタン粒子を分散させておけばよいことを見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明の光触媒体分散液は、酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子、リン酸(塩)および分散媒を含み、前記リン酸(塩)の含有量が、前記酸化チタン粒子に対して0.001〜0.2モル倍であることを特徴とする。
本発明の光触媒体分散液の製造方法は、リン酸(塩)を溶解させた分散媒中に酸化チタン粒子を分散させ、得られた酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子とを混合することを特徴とする。
本発明の光触媒機能製品は、表面に光触媒体層を備える光触媒機能製品であって、前記光触媒体層が前記本発明の光触媒体分散液を用いて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粒子の凝集が抑制されて固液分離を起こしにくい光触媒体分散液を提供することができる。そして、この光触媒体分散液を用いれば、高い光触媒活性を示す光触媒体層を容易に形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(光触媒体分散液)
本発明の光触媒体分散液は、酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子、リン酸(塩)および分散媒を含むものである。つまり、本発明の光触媒体分散液は、光触媒作用を有する光触媒体である酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子が、リン酸(塩)の存在下で分散媒中に分散したものである。このとき、酸化チタン粒子近傍に存在しているリン酸(塩)は、酸化チタン粒子の表面に吸着した状態になる。この状態の酸化チタン粒子が酸化タングステン粒子と凝集しにくいため、本発明の光触媒体分散液は、粒子の凝集が抑制されたものとなるのである。なお、リン酸(塩)が酸化チタン粒子近傍に存在した光触媒体分散液は、例えば、後述する本発明の光触媒体分散液の製造方法により容易に得られる。
【0011】
本発明の光触媒体分散液を構成する酸化チタン粒子は、光触媒作用を示す粒子状の酸化チタンであれば、特に制限はされないが、例えば、メタチタン酸粒子、結晶型がアナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型などである二酸化チタン〔TiO2〕粒子等が挙げられる。なお、酸化チタン粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
メタチタン酸粒子は、例えば、硫酸チタニルの水溶液を加熱して加水分解させる方法により得ることができる。
二酸化チタン粒子は、例えば、(i)硫酸チタニルまたは塩化チタンの水溶液を加熱することなく、これに塩基を加えることにより沈殿物を得、得られた沈殿物を焼成する方法、(ii)チタンアルコキシドに水、酸の水溶液または塩基の水溶液を加えて沈殿物を得、得られた沈殿物を焼成する方法、(iii)メタチタン酸を焼成する方法、などによって得ることができる。これらの方法で得られる二酸化チタン粒子は、焼成する際の焼成温度や焼成時間を調整することにより、アナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型など、所望の結晶型にすることができる。
【0013】
また、本発明の光触媒体分散液を構成する酸化チタン粒子は、チタン化合物と塩基とを反応させ、得られた生成物にアンモニアを添加し、熟成した後、固液分離し、固形分を焼成する方法などでも得られる。この方法では、チタン化合物として、例えば、三塩化チタン〔TiCl3〕、四塩化チタン〔TiCl4〕、硫酸チタン〔Ti(SO42・mH2O、0≦m≦20〕、オキシ硫酸チタン〔TiOSO4・nH2O、0≦n≦20〕、オキシ塩化チタン〔TiOCl2〕等を用いることができる。チタン化合物と反応させる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、モノエタノールアミン、非環式アミン化合物、環式脂肪族アミン化合物等を用いることができる。
【0014】
チタン化合物と塩基との反応は、pH2以上、好ましくはpH3以上であり、pH7以下、好ましくはpH5以下である範囲で行われる。また、そのときの反応温度は、通常90℃以下、好ましくは70℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。チタン化合物と塩基との反応は、得られる酸化チタンの粉砕性を向上させるために、過酸化水素存在下で行ってもよい。熟成は、例えば、アンモニアが添加された生成物を攪拌しながら、0℃以上、好ましくは10℃以上であり、110℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは55℃以下である温度範囲に、1分以上、好ましくは10分以上であり、10時間以内、好ましくは2時間以内の範囲で保持することにより行うことができる。反応および熟成に用いられる塩基(アンモニア)の総量は、水の存在下でチタン化合物を水酸化チタンに変えるのに必要な塩基の化学量論量を超える量であればよいが、塩基の量が多いほど、可視光照射によって高い光触媒活性を示す光触媒体となるので、通常1.1モル倍以上、さらに好ましくは1.5モル倍以上である。一方、塩基の量があまり多くなっても、量に見合った効果は得られないので、その上限は、20モル倍以下、さらには10モル倍以下が適当である。
【0015】
熟成された生成物の固液分離は、加圧濾過、減圧濾過、遠心分離、デカンテーションなどで行うことができる。固液分離では、得られる固形分を洗浄する操作をあわせて行うことが好ましい。固液分離された固形分の焼成は、気流焼成炉、トンネル炉、回転炉などを用いて、通常250℃以上、好ましくは270℃以上であり、600℃以下、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下の温度範囲で行うことができる。焼成時間は、焼成温度や焼成装置の種類により異なるが、通常10分以上、好ましくは30分以上であり、30時間以内、好ましくは5時間以内である。なお、焼成して得られる酸化チタンには、必要に応じて、タングステン、ニオブ、鉄、ニッケルの酸化物や水酸化物などのような固体酸性を示す化合物や、ランタン、セリウム、カルシウムの酸化物や水酸化物などのような固体塩基性を示す化合物や、インジウム酸化物、ビスマス酸化物のような可視光線を吸収する金属化合物等を担持させてもよい。
【0016】
本発明の光触媒体分散液を構成する酸化チタン粒子としては、上記の他にも、特開2001−72419号公報、特開2001−190953号公報、特開2001−316116号公報、特開2001−322816号公報、特開2002−29749号公報、特開2002−97019号公報、WO01/10552パンフレット、特開2001−212457公報、特開2002−239395号公報)、WO03/080244パンフレット、WO02/053501パンフレット、特開2007−69093号公報、Chemistry Letters, Vol.32, No.2, P.196-197(2003)、Chemistry Letters, Vol.32, No.4, P.364-365(2003)、Chemistry Letters, Vol.32, No.8, P.772-773(2003)、Chem. Mater., 17, P.1548-1552(2005)等に記載の酸化チタン粒子を用いてもよい。また、特開2001−278625号公報、特開2001−278626号公報、特開2001−278627号公報、特開2001−302241号公報、特開2001−335321号公報、特開2001−354422号公報、特開2002−29750号公報、特開2002−47012号公報、特開2002−60221号公報、特開2002−193618号公報、特開2002−249319号公報などに記載の方法により得られる酸化チタン粒子を用いることもできる。
【0017】
前記酸化チタン粒子の粒子径は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、平均分散粒子径で、通常20〜150nm、好ましくは40〜100nmである。
前記酸化チタン粒子のBET比表面積は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、通常100〜500m2/g、好ましくは300〜400m2/gである。
【0018】
本発明の光触媒体分散液を構成する酸化タングステン粒子は、光触媒作用を示す粒子状の酸化タングステンであれば、特に制限はされないが、例えば、三酸化タングステン〔WO3〕粒子等が挙げられる。なお、酸化タングステン粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
三酸化タングステン粒子は、例えば、(i)タングステン酸塩の水溶液に酸を加えることにより、沈殿物としてタングステン酸を得、得られたタングステン酸を焼成する方法、(ii)メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムを加熱することにより熱分解する方法、などによって得ることができる。
【0020】
前記酸化タングステン粒子の粒子径は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、平均分散粒子径で、通常50〜200nm、好ましくは80〜130nmである。
前記酸化タングステン粒子のBET比表面積は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、通常5〜100m2/g、好ましくは20〜50m2/gである。
【0021】
本発明の光触媒体分散液において、前記酸化チタン粒子と前記酸化タングステン粒子との比率(酸化チタン粒子:酸化タングステン粒子)は、質量比で、通常4:1〜1:8、好ましくは2:3〜3:2である。
【0022】
本発明の光触媒体分散液を構成するリン酸(塩)としては、リン酸、もしくはそのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられるが、これらの中でも特に、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸アンモニウム塩が好ましい。なお、リン酸(塩)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の光触媒体分散液においては、前記リン酸(塩)の含有量は、前記酸化チタン粒子に対して0.001〜0.2モル倍である。好ましくは、0.01モル倍以上、0.1モル倍以下である。リン酸(塩)の含有量が0.001モル倍未満であると、分散液中の粒子の凝集を充分に抑制することができず、一方、0.2モル倍を超えて用いても、その量に見合っただけのさらなる効果は得られないので、経済的に不利となる。
【0024】
本発明の光触媒体分散液を構成する分散媒は、前記リン酸(塩)を溶解する溶媒であれば特に制限はなく、通常、水を主成分とする水性溶媒が用いられる。具体的には、分散媒は、水単独であってもよいし、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いる場合には、水の含有量が50質量%以上であることが好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの水溶性アルコール溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。なお、分散媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記分散媒の含有量は、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子の合計量に対して、通常5〜200質量倍、好ましくは10〜100質量倍である。分散媒が5質量倍未満であると、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子が沈降し易くなり、一方、200質量倍を超えると、容積効率の点で不利となるので、いずれも好ましくない。
【0026】
本発明の光触媒体分散液は、電子吸引性物質またはその前駆体をも含有することが好ましい。電子吸引性物質とは、光触媒体(すなわち、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子)の表面に担持されて電子吸引性を発揮しうる化合物であり、電子吸引性物質の前駆体とは、光触媒体の表面で電子吸引性物質に遷移しうる化合物(例えば、光照射により電子吸引性物質に還元されうる化合物)である。電子吸引性物質が光触媒体の表面に担持されて存在すると、光の照射により伝導帯に励起された電子と価電子帯に生成した正孔との再結合が抑制され、光触媒作用をより高めることができる。
【0027】
前記電子吸引性物質またはその前駆体は、Cu、Pt、Au、Pd、Ag、Fe、Nb、Ru、Ir、RhおよびCoからなる群より選ばれる1種以上の金属原子を含有してなるものであることが好ましい。より好ましくは、Cu、Pt、AuおよびPdのうちの1種以上の金属原子を含有してなるものである。例えば、前記電子吸引性物質としては、前記金属原子からなる金属、もしくは、これらの金属の酸化物や水酸化物等が挙げられ、電子吸引性物質の前駆体としては、前記金属原子からなる金属の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機酸塩、炭酸塩、りん酸塩等が挙げられる。
【0028】
電子吸引性物質の好ましい具体例としては、Cu、Pt、Au、Pd等の金属が挙げられる。また、電子吸引性物質の前駆体の好ましい具体例としては、Cuを含む前駆体として、硝酸銅〔Cu(NO3)2〕、硫酸銅〔CuSO4〕、塩化銅〔CuCl2、CuCl〕、臭化銅〔CuBr2、CuBr〕、沃化銅〔CuI〕、沃素酸銅〔CuI26〕、塩化アンモニウム銅〔Cu(NH4) 2Cl4〕、オキシ塩化銅〔Cu2Cl(OH) 3〕、酢酸銅〔CH3COOCu、(CH3COO) 2Cu〕、蟻酸銅〔(HCOO) 2Cu〕、炭酸銅〔CuCO3)、蓚酸銅〔CuC24〕、クエン酸銅〔Cu2647〕、リン酸銅〔CuPO4〕等が;Ptを含む前駆体として、塩化白金〔PtCl2、PtCl4〕、臭化白金〔PtBr2、PtBr4〕、沃化白金〔PtI2、PtI4〕、塩化白金カリウム〔K2(PtCl4)〕、ヘキサクロロ白金酸〔H2PtCl6〕、亜硫酸白金〔H3Pt(SO3) 2OH〕、酸化白金〔PtO2〕、塩化テトラアンミン白金〔Pt(NH3) 4Cl2〕、炭酸水素テトラアンミン白金〔C21446Pt〕、テトラアンミン白金リン酸水素〔Pt(NH3) 4HPO4〕、水酸化テトラアンミン白金〔Pt(NH3) 4(OH) 2〕、硝酸テトラアンミン白金〔Pt(NO3) 2(NH3) 4〕、テトラアンミン白金テトラクロロ白金〔(Pt(NH3) 4)(PtCl4)〕等が;Auを含む前駆体として、塩化金〔AuCl〕、臭化金〔AuBr〕、沃化金〔AuI〕、水酸化金〔Au(OH) 2〕、テトラクロロ金酸〔HAuCl4〕、テトラクロロ金酸カリウム〔KAuCl4〕、テトラブロモ金酸カリウム〔KAuBr4〕、酸化金〔Au23〕等が;Pdを含む前駆体として、例えば、酢酸パラジウム〔(CH3COO) 2Pd〕、塩化パラジウム〔PdCl2〕、臭化パラジウム〔PdBr2〕、沃化パラジウム〔PdI2〕、水酸化パラジウム〔Pd(OH) 2〕、硝酸パラジウム〔Pd(NO3) 2〕、酸化パラジウム〔PdO〕、硫酸パラジウム〔PdSO4〕、テトラクロロパラジウム酸カリウム〔K2(PdCl4)〕、テトラブロモパラジウム酸カリウム〔K2(PdBr4)〕、テトラアンミンパラジウム塩化物〔Pd(NH3)4Cl2〕、テトラアンミンパラジウム臭化物〔Pd(NH3)4Br2〕、テトラアンミンパラジウム硝酸塩〔Pd(NH3)4(NO3)2〕、テトラアンミンパラジウムテトラクロロパラジウム酸〔(Pd(NH3)4)(PdCl4)〕、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム〔(NH4)2PdCl4〕等が;それぞれ挙げられる。なお、電子吸引性物質またはその前駆体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、1種以上の電子吸引性物質と1種以上の前駆体とを併用してもよいことは勿論である。
【0029】
前記電子吸引性物質またはその前駆体をも含有させる場合、その含有量は、金属原子換算で、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子の合計量100質量部に対して、通常0.005〜0.6質量部、好ましくは0.01〜0.4質量部である。電子吸引性物質またはその前駆体が0.005質量部未満であると、電子吸引性物質による光触媒活性の向上効果が充分に得られないおそれがあり、一方、0.6質量部を超えると、却って光触媒作用が低下するおそれがある。
【0030】
本発明の光触媒体分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の各種添加剤を含んでいてもよい。なお、添加剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記添加剤としては、例えば、光触媒作用を向上させる目的で添加されるものが挙げられる。このような光触媒作用向上効果を目的とした添加剤としては、具体的には、非晶質シリカ、シリカゾル、水ガラス、オルガノポリシロキサンなどの珪素化合物;非晶質アルミナ、アルミナゾル、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物;ゼオライト、カオリナイトのようなアルミノ珪酸塩;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物またはアルカリ度類金属水酸化物;リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、活性炭、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、リン酸塩、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂;等が挙げられる。
さらに、前記添加剤としては、光触媒体分散液を基材表面に塗布した際に光触媒体(酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子)をより強固に基材の表面に保持させるためのバインダー等を用いることもできる(例えば、特開平8−67835号公報、特開平9−25437号公報、特開平10−183061号公報、特開平10−183062号公報、特開平10−168349号公報、特開平10−225658号公報、特開平11−1620号公報、特開平11−1661号公報、特開2004−059686号公報、特開2004−107381号公報、特開2004−256590号公報、特開2004−359902号公報、特開2005−113028号公報、特開2005−230661号公報、特開2007−161824号公報など参照)。
【0032】
本発明の光触媒体分散液は、その水素イオン濃度が、通常pH2.0〜pH7.0、好ましくはpH3.0〜pH6.0である。水素イオン濃度がpH2.0未満であると、酸性が強すぎて取扱いが面倒であり、一方、pH7.0を超えると、酸化タングステン粒子が溶解するおそれがあるので、いずれも好ましくない。光触媒体分散液の水素イオン濃度は、通常、酸を加えることにより調整すればよい。水素イオン濃度の調整に用いることのできる酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、蓚酸等が挙げられる。
【0033】
(光触媒体分散液の製造方法)
本発明の光触媒体分散液の製造方法は、リン酸(塩)を溶解させた分散媒中に酸化チタン粒子を分散させ、得られた酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子とを混合するものである。このように、酸化チタン粒子を、酸化タングステン粒子と混合する前にあらかじめリン酸(塩)を溶解させた分散媒に分散させておくことにより、酸化チタン粒子の表面はリン酸(塩)が吸着した状態となる。この状態の酸化チタン粒子は酸化タングステン粒子と凝集しにくいため、本発明の製造方法により得られた光触媒体分散液は、粒子の凝集が抑制されたものとなる。
【0034】
リン酸(塩)を溶解させた分散媒中に酸化チタン粒子を分散させて酸化チタン粒子分散液を得る際には、両者を混合した後さらに分散処理を施すことが好ましい。分散処理には、例えば、媒体撹拌式分散機を用いるなど、従来公知の方法を採用することができる。なお、酸化チタン粒子を分散させるリン酸(塩)含有分散媒を調製するに際しては、リン酸(塩)の使用量は(光触媒体分散液)の項で前述したリン酸(塩)の含有量の範囲とすればよい。
【0035】
前記酸化タングステン粒子は、そのまま前記酸化チタン粒子分散液に混合してもよいが、分散媒中に分散させて酸化タングステン粒子分散液としたのちに前記酸化チタン粒子分散液と混合することが好ましい。酸化タングステン粒子を分散媒に分散させる際には、両者を混合した後さらに分散処理を施すことが好ましい。分散処理には、例えば、媒体撹拌式分散機を用いるなど、従来公知の方法を採用することができる。
なお、酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子分散液とを混合する場合、両分散液に用いる分散媒の種類は、混合後の分散媒が(光触媒体分散液)の項で前述した分散媒の通りとなる限り、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、両分散液における分散媒の使用量も、最終的に得られる光触媒体分散液における分散媒の含有量が(光触媒体分散液)の項で前述した通りとなる範囲であれば、特に制限されない。
【0036】
酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子とを混合するに際しては、両者の使用量は、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が(光触媒体分散液)の項で前述した範囲となるようにすればよい。
【0037】
本発明の光触媒体分散液の製造方法は、電子吸引性物質またはその前駆体を添加する工程を含むことが好ましい。ここで、電子吸引性物質またはその前駆体の添加は、前記酸化チタン粒子分散液に対して行ってもよいし、前記酸化タングステン粒子分散液に対して行ってもよいし、前記酸化チタン粒子分散液と前記酸化タングステン粒子分散液もしくは酸化タングステン粒子とを混合した後の分散液に対して行ってもよいが、高い光触媒活性を得る観点からは、電子吸引性物質またはその前駆体は前記酸化タングステン粒子分散液に添加するのが好ましい。
なお、電子吸引性物質またはその前駆体を添加する場合、その添加量は、最終的に得られる光触媒体分散液における電子吸引性物質またはその前駆体の含有量が(光触媒体分散液)の項で前述した範囲となるようにすればよい。
【0038】
前記電子吸引性物質の前駆体を添加した場合には、その添加後に光照射を行うことが好ましい。照射する光としては、特に制限はなく、可視光線でもよいし、紫外線でもよい。光照射を行うことにより、光励起によって生成した電子によって前駆体が還元されて電子吸引性物質となり、光触媒体粒子(酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子)の表面に担持される。なお、前記前駆体を添加した場合に、たとえ光照射を行なわなくても、得られた光触媒体分散液により形成された光触媒体層に光が照射された時点で電子吸引性物質へ変換されることになるので、その光触媒能が損なわれることはない。
【0039】
前記光照射は、前記前駆体の添加後であれば、どの段階で行なってもよいが、好ましくは、酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子との混合前に行なうのがよい。
また、前記電子吸引性物質の前駆体を添加した場合には、より効率よく電子吸引性物質を得る目的で、光照射の前に、本発明効果を損なわない範囲で、適宜、メタノールやエタノールや蓚酸等を加えることもできる。
【0040】
なお、本発明の光触媒体分散液の製造方法においては、(光触媒体分散液)の項で前述した各種添加剤を添加することもできる。その場合、それら添加剤の添加はどの段階で行なってもよいが、例えば、酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子分散液もしくは酸化タングステン粒子との混合後に行なうことが好ましい。
【0041】
(光触媒機能製品)
本発明の光触媒機能製品は、前記本発明の光触媒体分散液を用いて形成された光触媒体層を表面に備えるものである。ここで、光触媒体層は、光触媒作用を示す光触媒体、すなわち酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子からなる。そして、本発明の光触媒体分散液が電子吸引性物質またはその前駆体を含む場合には、当該電子吸引性物質またはその前駆体は、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子の表面に担持される。なお、担持された前駆体は、例えば光が照射されることなどによって、電子吸引性物質に遷移する。
【0042】
前記光触媒体層は、例えば、本発明の光触媒体分散液を基材(製品)の表面に塗布した後、分散媒を揮発させるなど、従来公知の成膜方法によって形成することができる。光触媒体層の膜厚は、特に制限されるものではなく、通常、その用途等に応じて、数百nm〜数mmまで適宜設定すればよい。光触媒体層は、基材(製品)の内表面または外表面であれば、どの部分に形成されていてもよいが、例えば、光(可視光線)が照射される面であって、かつ悪臭物質が発生する箇所と連続または断続して空間的につながる面に形成されていることが好ましい。なお、基材(製品)の材質は、形成される光触媒体層を実用に耐えうる強度で保持できる限り、特に制限されるものではなく、例えば、プラスチック、金属、セラミックス、木材、コンクリート、紙など、あらゆる材料からなる製品を対象にすることができる。
【0043】
本発明の光触媒機能製品の具体例としては、例えば、天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床等の建築資材、自動車内装材(自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車用天井材)、冷蔵庫やエアコン等の家電製品、衣類やカーテン等の繊維製品などが挙げられる。
【0044】
本発明の光触媒機能製品は、屋外においては勿論のこと、蛍光灯やナトリウムランプのような可視光源からの光しか受けない屋内環境においても、光照射によって高い触媒作用を示す。したがって、本発明の光触媒体分散液を、例えば病院の天井材、タイル、ガラスなどに塗布して乾燥させると、屋内照明による光照射によって、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの揮発性有機物、アルデヒド類、メルカプタン類、アンモニアなどの悪臭物質、窒素酸化物の濃度を低減させ、さらには黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌等を分解、除去することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
なお、実施例および比較例における各物性の測定およびその光触媒活性の評価については、以下の方法で行った。
【0047】
<結晶型>
X線回折装置(リガク社製「RINT2000/PC」)を用いてX線回折スペクトルを測定し、そのスペクトルから結晶型を決定した。
【0048】
<BET比表面積>
比表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製「モノソーブ」)を用いて窒素吸着法により測定した。
【0049】
<平均分散粒子径>
サブミクロン粒度分布測定装置(コールター社製「N4Plus」)を用いて粒度分布を測定し、この装置に付属のソフトにより自動的に単分散モード解析して得られた結果を、平均分散粒子径(nm)とした。
【0050】
<光触媒活性の評価:アセトアルデヒドの分解>
光触媒活性は、蛍光灯の光の照射下でのアセトアルデヒドの分解反応における一次反応速度定数を測定することにより評価した。
まず、光触媒活性測定用の試料を作製した。すなわち、ガラス製シャーレ(外径70mm、内径66mm、高さ14mm、容量約48mL)に、得られた光触媒体分散液を、底面の単位面積あたりの固形分換算の滴下量が1g/m2となるように滴下し、シャーレの底面全体に均一となるように展開した。次いで、このシャーレを110℃の乾燥機内で大気中1時間保持することにより乾燥させて、ガラス製シャーレの底面に光触媒体層を形成した。この光触媒体層に、紫外線強度が2mW/cm2となるようにブラックライトからの紫外線を16時間照射して、これを光触媒活性測定用試料とした。
【0051】
次に、この光触媒活性測定用試料をシャーレごとガスバッグ(内容積3L)の中に入れて密閉し、次いで、このガスバッグ内を真空にした後、酸素と窒素との体積比が1:4である混合ガス1.8Lを封入し、さらにその中に1容量%でアセトアルデヒドを含む窒素ガス9mLを封入して、暗所で室温下1時間保持した。その後、市販の白色蛍光灯を光源とし、測定用試料近傍での照度が1000ルクス(ミノルタ社製照度計「T−10」で測定)となるようにガスバッグの外から蛍光灯の光を照射し、アセトアルデヒドの分解反応を行った。このとき、測定試料近傍の紫外光の強度は6.5μW/cm2(トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に、同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)であった。蛍光灯の光照射を開始してから1.5時間毎にガスバッグ内のガスをサンプリングし、アセトアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフ(島津製作所社製「GC−14A」)にて測定した。そして、照射時間に対するアセトアルデヒドの残存濃度から一次反応速度定数を算出し、これをアセトアルデヒド分解能として評価した。この一次反応速度定数が大きいほど、アセトアルデヒドの分解能(すなわち光触媒活性)が高いと言える。
【0052】
<光触媒活性の評価:ホルムアルデヒドの分解>
光触媒活性は、蛍光灯の光の照射下でのホルムアルデヒドの分解反応における一次反応速度定数を測定することにより評価した。
まず、光触媒活性測定用の試料を作製した。すなわち、ガラス製シャーレ(外径70mm、内径66mm、高さ14mm、容量約48mL)に、得られた光触媒体分散液を、底面の単位面積あたりの固形分換算の滴下量が1g/m2となるように滴下し、シャーレの底面全体に均一となるように展開した。次いで、このシャーレを110℃の乾燥機内で大気中1時間保持することにより乾燥させて、ガラス製シャーレの底面に光触媒体層を形成した。この光触媒体層に、紫外線強度が2mW/cm2となるようにブラックライトからの紫外線を16時間照射して、これを光触媒活性測定用試料とした。
【0053】
次に、この光触媒活性測定用試料をシャーレごとガスバッグ(内容積1L)の中に入れて密閉し、次いで、このガスバッグ内を真空にした後、酸素を0.12L封入し、さらにその中に濃度100ppmでホルムアルデヒドを含む窒素ガス0.48Lを封入して、暗所で室温下45分間保持した。その後、市販の白色蛍光灯を光源とし、測定用試料近傍での照度が6000ルクス(ミノルタ社製照度計「T−10」で測定)となるようにガスバッグの外から蛍光灯の光を照射し、ホルムアルデヒドの分解反応を行った。このとき、測定試料近傍の紫外光の強度は40μW/cm2(トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に、同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)であった。蛍光灯の光照射を開始してから15分毎にガスバッグ内のガスをサンプリングし、ホルムアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフ(アジレントテクノロジー社製「Agilent3000マイクロGC」)にて測定した。そして、照射時間に対するホルムアルデヒドの残存濃度から一次反応速度定数を算出し、これをホルムアルデヒド分解能として評価した。この一次反応速度定数が大きいほど、ホルムアルデヒドの分解能(すなわち光触媒活性)が高いと言える。
【0054】
(製造例1−酸化チタン粒子分散液の調製)
pH電極と、このpH電極に接続され、25質量%アンモニア水を供給してpHを一定に調整する機構を有するpHコントローラーとを備えた反応容器(すなわち、この反応容器では、容器内の液のpHが設定値より低くなると、アンモニア水が供給されはじめ、pHが設定値になるまで連続供給される)に、イオン交換水30kgを入れ、pHコントローラーの設定値をpH4とした。他方、オキシ硫酸チタン75kgをイオン交換水50kgに溶解させた後、得られた水溶液に冷却下で35%過酸化水素水30kgを添加して、混合溶液を調製した。この混合溶液を、上記反応容器内を42rpmで攪拌しながら、該反応容器に530mL/分で添加し、pHコントローラーにより反応容器に供給されるアンモニア水と反応させた。このとき、反応温度(反応容器の内温)は20℃〜30℃の範囲であった。混合溶液の添加終了後、引き続き、反応容器内を攪拌しながら1時間保持し、次いで、25質量%アンモニア水を供給して、スラリー状の生成物を得た。得られたスラリー状の生成物を濾過し、リンス洗浄した後、固形物(ケーキ)を得た。なお、反応容器に供給されたアンモニア水の合計量は90kgであり、オキシ硫酸チタンを水酸化チタンに変えるために必要な理論量の2倍であった。
【0055】
上記で得られた固形物(ケーキ)をステンレス製バット(30cm×40cm)12枚に2.3kgずつ分け入れ、このバット12枚を箱型乾燥機(旭科学製「スーパーテンプオーブン HP−60」、内容積:216リットル)に入れて、40m3/hrの乾燥空気流通下、115℃で5時間保持した後、引き続き250℃で5時間保持することにより乾燥を行ない、BET表面積が18.0m2/gの乾燥粉末を得た。このときの乾燥機内の最大水蒸気分圧は27.4kPaであった。得られた乾燥粉末を350℃の空気雰囲気下で2時間焼成し、その後、室温まで冷却して、粒子状光触媒体である酸化チタン粉末を合計22kg得た。
【0056】
次に、イオン交換水87.6kgにリン酸二水素アンモニウム950g(和光特級試薬)を溶解させ、さらに上記で得られた酸化チタン粉末22kgを加えて混合物を得た。この混合物を、媒体攪拌式分散機(シンマルエンタープライゼス製「ダイノーミルKDL−PILOT A型」)を用いて下記の条件で分散処理して、酸化チタン粒子分散液を得た。
分散媒体:直径0.3mmのジルコニア製ビーズ 4.2kg
処理温度:20℃
合計処理時間:約240分間
攪拌速度:周速8m/秒
流速:2L/分
処理液循環:あり
【0057】
さらに、上記で得られた酸化チタン粒子分散液に、媒体攪拌式分散機(コトブキ技研社製「ウルトラアペックスミルUAM−5」)を用いて下記条件で2回目の分散処理を施した。
分散媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ13kg
処理温度:20℃
合計処理時間:約400分間
回転数:2000rpm
流速:1L/分
処理液循環:あり
【0058】
得られた酸化チタン粒子分散液中のリン酸アンモニウム塩の含有量は、酸化チタン粒子に対して0.03モル倍である。また、上記で得られた分散液を遠心分離して粗粒分を除去したところ、平均分散粒子径は84nmであった。また、得られた分散液の固形分濃度が10質量%になるように水で調整したところ、この分散液のpHは6.9であった。なお、分散処理前の混合物中の固形分と、分散処理(上記2回目の分散処理)後の分散液中の固形分とについて、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、どちらも結晶型はアナターゼ型であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。
【0059】
(製造例2−酸化タングステン粒子分散液の調製)
パラタングステン酸アンモニウム(日本無機化学製)を空気中700℃で6時間焼成して、粒子状光触媒体である酸化タングステン粉末を得た。
次に、イオン交換水4kgに、上記で得られた酸化タングステン粉末1kgを加えて混合物を得た。この混合物を、媒体攪拌式分散機(コトブキ技研社製「ウルトラアペックスミル UAM−1 1009」)を用いて下記の条件で分散処理して、酸化タングステン粒子分散液を得た。
分散媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ1.85kg
攪拌速度:周速12.6m/秒
流速:0.25L/分
合計処理時間:約50分
【0060】
得られた酸化タングステン粒子分散液における酸化タングステン粒子の平均分散粒子径は114nmであった。また、得られた分散液の固形分濃度が10質量%になるように水で調整したところ、この分散液のpHは3.0であった。また、この分散液の一部を真空乾燥することにより得られた固形分のBET比表面積は34m2/gであった。なお、分散処理前の混合物中の固形分と、分散処理後の分散液中の固形分とについて、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、どちらも結晶型はWO3であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。
【0061】
(実施例1)
製造例1で得た酸化チタン粒子分散液と、製造例2で得た酸化タングステン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは4.8であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.095h-1であった。
【0062】
(比較例1)
製造例1で得た酸化チタン粒子分散液に代えて、市販の酸化チタン粒子分散液(石原産業社製「STS−01」、硝酸含有、平均分散粒子径:50nm)を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは1.9であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に凝集粒子が生成し、固液分離が起こった。
【0063】
(実施例2)
製造例1で得た酸化チタン粒子分散液と、製造例2で得た酸化タングステン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合した。次いで、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.03質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の5質量%となるように加えて、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であった。
この時点で、得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0064】
さらに、上記光触媒体分散液30gを100mLビーカーに移し、攪拌しながら、超高圧水銀灯(ウシオ電機製、ランプハウス:「MPL−25101」、超高圧水銀灯:「USH−250BY」、ランプ電源:「HB−25103BY」)にて光照射(紫外線照射)を2時間行うことにより、光触媒体分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、光触媒体分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは4.6であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.129h-1であった。
【0065】
(実施例3)
ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液の使用量を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.06質量部となるようにしたこと以外は、実施例2と同様に操作して、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であった。
この時点で、得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0066】
さらに、上記光触媒体分散液30gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、光触媒体分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、光触媒体分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは4.5であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.132h-1であった。
【0067】
(実施例4)
ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液の使用量を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.1質量部となるようにしたこと以外は、実施例2と同様に操作して、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であった。
この時点で、得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0068】
さらに、上記光触媒体分散液30gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、光触媒体分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、光触媒体分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは4.3であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.128h-1であった。
【0069】
(実施例5)
ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液に代えて、テトラクロロ金酸(HAuCl)の水溶液を、テトラクロロ金酸が金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.03質量部となるように加えたこと以外は、実施例2と同様に操作して、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であった。
この時点で、得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0070】
さらに、上記光触媒体分散液30gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、光触媒体分散液中のテトラクロロ金酸を金に還元して、光触媒体分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは4.1であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.109h-1であった。
【0071】
(実施例6)
製造例2で得た酸化タングステン粒子分散液に、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.03質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の6.5質量%となるように加えて、ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は3.3質量部(固形分濃度3.3質量%)であった。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0072】
次いで、上記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液22.5gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0073】
次いで、上記白金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例1で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の白金の含有量は、白金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.015質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは4.6であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.131h-1であった。
【0074】
(実施例7)
ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液の使用量を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.06質量部となるようにしたこと以外は、実施例6と同様に操作して、ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であった。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0075】
次いで、上記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液22.5gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0076】
次いで、上記白金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例1で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の白金の含有量は、白金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.03質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは4.6であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.125h-1であった。
【0077】
(実施例8)
ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液の使用量を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.12質量部となるようにしたこと以外は、実施例6と同様に操作して、ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であった。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0078】
次いで、上記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液22.5gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0079】
次いで、上記白金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例1で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の白金の含有量は、白金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.06質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは4.5であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.114h-1であった。
【0080】
(実施例9)
ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液の使用量を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.2質量部となるようにしたこと以外は、実施例6と同様に操作して、ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であった。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0081】
次いで、上記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液22.5gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0082】
次いで、上記白金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例1で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の白金の含有量は、白金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.1質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは4.3であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.120h-1であった。
【0083】
(実施例10)
製造例2で得た酸化タングステン粒子分散液に、テトラクロロ金酸(HAuCl4)の水溶液を、テトラクロロ金酸が金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.03質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の6.5質量%となるように加えて、テトラクロロ金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は3.3質量部(固形分濃度3.3質量%)であった。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0084】
次いで、上記テトラクロロ金酸含有酸化タングステン粒子分散液22.5gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、分散液中のテトラクロロ金酸を金に還元して、金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0085】
次いで、上記金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例1で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の金の含有量は、金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.015質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは4.5であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.106h-1であった。
【0086】
(実施例11)
テトラクロロ金酸(HAuCl4)水溶液の使用量を、テトラクロロ金酸が金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.12質量部となるようにしたこと以外は、実施例10と同様に操作して、テトラクロロ金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であった。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0087】
次いで、上記テトラクロロ金酸含有酸化タングステン粒子分散液22.5gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、分散液中のテトラクロロ金酸を金に還元して、金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0088】
次いで、上記金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例1で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の金の含有量は、金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.06質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは4.5であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.141h-1であった。
【0089】
(実施例12)
テトラクロロ金酸(HAuCl4)水溶液の使用量を、テトラクロロ金酸が金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.2質量部となるようにしたこと以外は、実施例10と同様に操作して、テトラクロロ金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であった。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0090】
次いで、上記テトラクロロ金酸含有酸化タングステン粒子分散液22.5gを100mLビーカーに移し、実施例2と同様に操作して光照射を行うことにより、分散液中のテトラクロロ金酸を金に還元して、金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0091】
次いで、上記金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例1で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の金の含有量は、金原子換算で酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.1質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは4.4であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.146h-1であった。
【0092】
(製造例3−酸化チタン粒子分散液の調製)
リン酸二水素アンモニウム(和光特級試薬)0.086gを水 47.1gに溶解させ、得られたリン酸二水素アンモニウム水溶液に、硫酸チタニルの加熱加水分解により得られたメタチタン酸の固形物(ケーキ)(TiOとして固形分濃度46.8質量%)12.82gを混合した。このとき、リン酸二水素アンモニウムの量は、メタチタン酸1モルに対して0.01 モルであった。得られた混合物を、媒体攪拌式粉砕機(五十嵐機械製作所製「4TSG−1/8」)を用いて下記の条件で分散処理して、酸化チタン粒子分散液を得た。
媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ 190g
処理温度:20℃
処理時間:1時間
回転数:2000rpm
【0093】
得られた酸化チタン粒子分散液中の酸化チタン粒子の平均分散粒子径は92nmであり、分散液のpHは7.8 であった。なお、分散処理前の混合物と分散処理後の分散液との一部を真空乾燥して固形分を得、各固形分のX線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、どちらも結晶型はアナターゼ型であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。
【0094】
(製造例4−酸化タングステン粒子分散液の調製)
イオン交換水4kgに、粒子状の光触媒体である酸化タングステン粉末(日本無機化学製)1kgを加えて混合して混合物を得た。この混合物を、媒体攪拌式分散機(コトブキ技研社製「ウルトラアペックスミル UAM−1 1009」)を用いて下記の条件で分散処理して、酸化タングステン粒子分散液を得た。
分散媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ1.85kg
攪拌速度:周速12.6m/秒
流速:0.25L/分
合計処理時間:約50分
【0095】
得られた酸化タングステン粒子分散液における酸化タングステン粒子の平均分散粒子径は118nmであった。また、この分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、得られた固形分のBET比表面積は40m2/gであった。なお、分散処理の前の混合物についても同様に真空乾燥して固形分を得、分散処理前の混合物の固形分と分散処理後の分散液の固形分について、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、どちらも結晶型はWO3であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0096】
(実施例13)
製造例4で得た酸化タングステン粒子分散液に、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.12質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の6.25質量%となるように加えて、ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は11.4質量部(固形分濃度11.4質量%)であった。
【0097】
次いで、上記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液480gを1Lビーカーに移し、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を3時間行うことにより、分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは2.4であった。 この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0098】
次いで、上記白金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例3で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の白金の含有量は、白金原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して0.06質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)は5質量部(固形分濃度5質量%)であり、pHは3.6であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(アセトアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.182h-1であった。
【0099】
(実施例14)
製造例4で得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.644h-1であった。
【0100】
(実施例15)
製造例4で得た酸化タングステン粒子分散液に、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.096質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の1.1質量%となるように加えて、ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)を、水により10.2質量部(固形分濃度10.2質量%)に調整した。
【0101】
次いで、上記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液30gを100mLビーカーに移し、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を30分間行うことにより、分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
【0102】
次いで、上記白金含有酸化タングステン粒子分散液に、塩化パラジウム(PdCl2)の塩酸水溶液(PdCl2粉末0.252gを、濃度1mol/Lの塩酸水溶液9.41gと水90.43gからなる水溶液に溶解)を、塩化パラジウムがパラジウム原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.024質量部となるように加え、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を30分間行うことにより、分散液中の塩化パラジウムをパラジウムに還元して、パラジウム及び白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子との合計量)は10.0質量部(固形分濃度10.0質量%)であった。この光照射後の光触媒体分散液のpHは2.2であった。
【0103】
次いで、上記パラジウム及び白金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例3で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の白金及びパラジウムの含有量は、白金及びパラジウム原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対してそれぞれ0.048質量部と0.012質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に調整した。pHは3.9であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は1.05h-1であった。
【0104】
(実施例16)
製造例4で得た酸化タングステン粒子分散液に、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.096質量部となるように加え、引き続き、実施例15の塩化パラジウム(PdCl2)の塩酸水溶液を、塩化パラジウムがパラジウム原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.024質量部となるように加えた。その後、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の1.1質量%となるように加えて、ヘキサクロロ白金酸及び塩化パラジウム含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)を、水により10.0質量部(固形分濃度10.0質量%)に調整した。
【0105】
次いで、上記ヘキサクロロ白金酸及び塩化パラジウム含有酸化タングステン粒子分散液30gを100mLビーカーに移し、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を1時間行うことにより、分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元し、塩化パラジウムがパラジウムに還元して、白金及びパラジウム含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは2.3であった。
【0106】
次いで、上記白金及びパラジウム含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例3で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の白金及びパラジウムの含有量は、白金及びパラジウム原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対してそれぞれ0.048質量部と0.012質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に調整した。pHは3.9であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.959h-1であった。
【0107】
(実施例17)
製造例4で得た酸化タングステン粒子分散液に、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.048質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の1.1質量%となるように加えて、ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)を、水により10.5質量部(固形分濃度10.5質量%)に調整した。
【0108】
次いで、上記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液30gを100mLビーカーに移し、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を30分間行うことにより、分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
【0109】
次いで、上記白金含有酸化タングステン粒子分散液に、実施例15で用いた塩化パラジウム(PdCl2)の塩酸水溶液を、塩化パラジウムがパラジウム原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.072質量部となるように加え、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を30分間行うことにより、分散液中の塩化パラジウムをパラジウムに還元して、パラジウム及び白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子との合計量)は10.0質量部(固形分濃度10.0質量%)であった。この光照射後の光触媒体分散液のpHは2.0であった。
【0110】
次いで、上記パラジウム及び白金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例3で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の白金及びパラジウムの含有量は、白金及びパラジウム原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対してそれぞれ0.024質量部と0.036質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に調整した。pHは3.8であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.976h-1であった。
【0111】
(実施例18)
製造例4で得た酸化タングステン粒子分散液に、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液を、ヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.024質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の1.1質量%となるように加えて、ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)を、水により10.7質量部(固形分濃度10.7質量%)に調整した。
【0112】
次いで、上記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液30gを100mLビーカーに移し、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を30分間行うことにより、分散液中のヘキサクロロ白金酸を白金に還元して、白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。
【0113】
次いで、上記白金含有酸化タングステン粒子分散液に、実施例15で用いた塩化パラジウム(PdCl2)の塩酸水溶液を、塩化パラジウムがパラジウム原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.096質量部となるように加え、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を30分間行うことにより、分散液中の塩化パラジウムをパラジウムに還元して、パラジウム及び白金含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは2.0であった。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は10.0質量部(固形分濃度10.0質量%)であった。
【0114】
次いで、上記パラジウム及び白金含有酸化タングステン粒子分散液と、製造例3で得た酸化チタン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の白金及びパラジウムの含有量は、白金及びパラジウム原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対してそれぞれ0.012質量部と0.048質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に調整した。pHは3.7であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.982h-1であった。
【0115】
(実施例19)
製造例3で得た酸化チタン粒子分散液に、実施例15で用いた塩化パラジウム(PdCl2)の塩酸水溶液を、塩化パラジウムがパラジウム原子換算で酸化チタン粒子の使用量100質量部に対して0.12質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の1.1質量%となるように加えて、塩化パラジウム含有酸化チタン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子の量)を、水により5質量部(固形分濃度5質量%)に調整した。
【0116】
次いで、上記塩化パラジウム含有酸化チタン粒子分散液30gを100mLビーカーに移し、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を1時間行うことにより、分散液中の塩化パラジウムをパラジウムに還元して、パラジウム含有酸化チタン粒子分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは7.3であった。
【0117】
次いで、上記パラジウム含有酸化チタン粒子分散液と、実施例13で得た白金含有酸化タングステン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中のパラジウム及び白金の含有量は、パラジウム及び白金原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して共に0.06質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に水で調整した。pHは3.8であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は1.08h-1であった。
【0118】
(実施例20)
実施例19で得たパラジウム含有酸化チタン粒子分散液と、実施例13で得た白金含有酸化タングステン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が3:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中のパラジウム及び白金の含有量は、パラジウム及び白金原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して、それぞれ0.09質量部及び0.03質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に水で調整した。pHは4.5であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は1.79h-1であった。
【0119】
(実施例21)
製造例3で得た酸化チタン粒子分散液に、実施例15で用いた塩化パラジウム(PdCl2)の塩酸水溶液を、塩化パラジウムがパラジウム原子換算で酸化チタン粒子の使用量100質量部に対して0.06質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の1.1質量%となるように加えて、塩化パラジウム含有酸化チタン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子の量)を、水で5質量部(固形分濃度5質量%)に調整した。
【0120】
次いで、上記塩化パラジウム含有酸化チタン粒子分散液30gを100mLビーカーに移し、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を1時間行うことにより、分散液中の塩化パラジウムをパラジウムに還元して、パラジウム含有酸化チタン粒子分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは7.8であった。
【0121】
次いで、上記パラジウム含有酸化チタン粒子分散液と、実施例13で得た白金含有酸化タングステン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中のパラジウム及び白金の含有量は、パラジウム及び白金原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して、パラジウムが0.03質量部、白金が0.06質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に水で調整した。pHは4.0であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.901h-1であった。
【0122】
(実施例22)
実施例19で得たパラジウム含有酸化チタン粒子分散液と、実施例13で得た白金含有酸化タングステン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が3:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中のパラジウム及び白金の含有量は、パラジウム及び白金原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して、それぞれ0.045質量部及び0.03質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に水で調整した。pHは4.8であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.978h-1であった。
【0123】
(実施例23)
製造例3で得た酸化チタン粒子分散液に、テトラクロロ金酸(HAuCl4)水溶液を、テトラクロロ金酸が金原子換算で酸化チタン粒子の使用量100質量部に対して0.06質量部となるように加え、さらに、メタノールを、その濃度が全溶媒の1.1質量%となるように加えて、テトラクロロ金酸含有酸化チタン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子の量)は5.1質量部(固形分濃度5.1質量%)であった。
次いで、上記テトラクロロ金酸含有酸化チタン粒子分散液30gを100mLビーカーに移し、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を30分間行うことにより、分散液中のテトラクロロ金酸を金に還元して、金含有酸化チタン粒子分散液を得た。
【0124】
次いで、上記金含有化チタン粒子分散液に、実施例15で用いた塩化パラジウム(PdCl2)の塩酸水溶液を、塩化パラジウムがパラジウム原子換算で酸化チタン粒子の使用量100質量部に対して0.06質量部となるように加え、攪拌しながら、高圧水銀灯(ウシオ電機製、高圧水銀灯:「UM−102」、高圧水銀ランプ点灯装置:「UM−103B−B」)にて光照射(紫外線照射)を30分間行うことにより、分散液中の塩化パラジウムをパラジウムに還元して、パラジウム及び金含有酸化チタン粒子分散液を得た。この光照射後の光触媒体分散液のpHは7.7であった。この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子の量)は5.00質量部(固形分濃度5.00質量%)であった。
【0125】
次いで、上記パラジウム及び金含有酸化チタン粒子分散液と、実施例13で得た白金含有酸化タングステン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の金、パラジウム及び白金の含有量は、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して、金とパラジウムが原子換算で0.03質量部、白金が原子換算で0.06質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に水で調整した。pHは4.2であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は1.20h-1であった。
【0126】
(実施例24)
実施例21で得たパラジウム及び金含有酸化チタン粒子分散液と、実施例13で得た白金含有酸化タングステン粒子分散液とを、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が3:1(質量比)となるように混合して(これにより、分散液中の金、パラジウム及び白金の含有量は、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計使用量100質量部に対して、金とパラジウムが原子換算で0.045質量部、白金が原子換算で0.03質量部となった)、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)を5質量部(固形分濃度5質量%)に水で調整した。pHは5.1であった。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は1.89h-1であった。
【0127】
(実施例25)
製造例3で得た酸化チタン粒子分散液と製造例4で得た酸化タングステン粒子分散液を、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合した。次に、この分散液に、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液と実施例15で用いた塩化パラジウム水溶液を、ヘキサクロロ白金酸及び塩化パラジウムが、白金及びパラジウム原子換算で、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子の合計使用量100質量部に対してそれぞれ0.048質量部と0.012質量部となるように加えて、ヘキサクロロ白金酸及び塩化パラジウム含有酸化チタン粒子及び酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液に水を加えて、光触媒体分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との合計量)が5質量部(固形分濃度5質量%)となるように水で調整して、酸化チタン粒子及び酸化タングステン粒子分散液を得た。pHは3.8であった。この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性(ホルムアルデヒドの分解)を評価したところ、一次反応速度定数は0.813h-1であった。
【0128】
(参考例1)
実施例1〜25で得た光触媒体分散液を、それぞれ、天井材に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させ、表面に光触媒体層を形成すると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0129】
(参考例2)
実施例1〜25で得た光触媒体分散液を、それぞれ、タイルに塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させ、表面に光触媒体層を形成すると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0130】
(参考例3)
実施例1〜25で得た光触媒体分散液をそれぞれガラスに塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させ、表面に光触媒体層を形成すると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0131】
(参考例4)
実施例1〜25で得た光触媒体分散液をそれぞれ壁紙に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させ、表面に光触媒体層を形成すると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0132】
(参考例5)
実施例1〜25で得た光触媒体分散液をそれぞれ床に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させ、表面に光触媒体層を形成すると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0133】
(参考例6)
実施例1〜25で得た光触媒体分散液を自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車天井材などの自動車内装材の表面に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させ、表面に光触媒体層を形成すると、車内照明による光照射により、車内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0134】
(参考例7)
実施例1〜25で得た光触媒体分散液をそれぞれエアコンの表面に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させ、表面に光触媒体層を形成すると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0135】
(参考例8)
実施例1〜25で得た光触媒体分散液をそれぞれ冷蔵庫に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させ、表面に光触媒体層を形成すると、屋内照明や冷蔵庫内の光源による光照射により、冷蔵庫におけるエチレン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子、リン酸(塩)および分散媒を含み、前記リン酸(塩)の含有量が、前記酸化チタン粒子に対して0.001〜0.2モル倍であることを特徴とする光触媒体分散液。
【請求項2】
電子吸引性物質またはその前駆体をも含む、請求項1記載の光触媒体分散液。
【請求項3】
前記電子吸引性物質またはその前駆体は、Cu、Pt、Au、Pd、Ag、Fe、Nb、Ru、Ir、RhおよびCoからなる群より選ばれる1種以上の金属原子を含有してなる、請求項2記載の光触媒体分散液。
【請求項4】
リン酸(塩)を溶解させた分散媒中に酸化チタン粒子を分散させ、得られた酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子とを混合することを特徴とする光触媒体分散液の製造方法。
【請求項5】
前記酸化タングステン粒子は、分散媒中に分散させて酸化タングステン粒子分散液としたのちに前記酸化チタン粒子分散液と混合する、請求項4記載の光触媒体分散液の製造方法。
【請求項6】
電子吸引性物質またはその前駆体を添加する工程を含む、請求項4または5記載の光触媒体分散液の製造方法。
【請求項7】
前記電子吸引性物質またはその前駆体は、前記酸化タングステン粒子分散液に添加する、請求項6記載の光触媒体分散液の製造方法。
【請求項8】
前記電子吸引性物質の前駆体を添加したのちに、光照射を行う、請求項6または7記載の光触媒体分散液の製造方法。
【請求項9】
前記光照射は、酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子との混合前に行なう、請求項8記載の光触媒体分散液の製造方法。
【請求項10】
表面に光触媒体層を備える光触媒機能製品であって、前記光触媒体層が請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒体分散液を用いて形成されていることを特徴とする光触媒機能製品。

【公開番号】特開2010−115635(P2010−115635A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24051(P2009−24051)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】