説明

光走査装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】光走査装置の製造コストの抑制、及び小型化を図る。
【解決手段】光走査装置は、光束を発する半導体レーザーと、揺動軸を有し、該揺動軸の軸回りに所定の振れ角で往復揺動しつつ前記半導体レーザーから発せられる光束を反射して略等速で偏向走査させるMEMSミラーと、前記偏向走査された光束を被走査面上に結像させる結像光学系とを備える。制御部60は、光走査装置を制御する露光制御部61と、前記結像光学系の光軸に対するMEMSミラーの振れ角の中心の回転ズレ量を記憶する記憶部62を備える。露光制御部61は、前記被走査面への書き出しタイミングを前記回転ズレ量に応じて補正して、半導体レーザーの発光タイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動軸の軸回りに揺動しつつ光源から発せられる光束を反射して偏向走査させる偏向体を備えた光走査装置、及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザープリンターや複写機等に用いられる光走査装置において、光源から発せられた光束を偏向走査させる偏向体として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを用いたものがある。MEMSミラーは、当該ミラーの法線と垂直な揺動軸を備え、当該揺動軸の軸回りに正弦的に往復揺動するよう駆動されることで、感光体ドラム(被走査面)における所定の走査範囲にレーザー光を走査させる。
【0003】
MEMSミラーの駆動方式としては、MEMSミラーを単純に正弦波振動させる正弦揺動方式と、基本正弦波にその整数倍の周波数の正弦波を重畳した振動をMEMSミラーに与える重畳駆動方式とがある。重畳駆動方式においては、例えば、MEMSミラーのミラー部が第1トーションバー(揺動軸)の軸回りに基本正弦波で揺動され、前記第1トーションバーとミラー部との結合体が第2トーションバーの軸回りに前記基本正弦波の整数倍の周波数の正弦波で揺動される。重畳駆動方式によれば、MEMSミラーに対して等角速度運動に近い振動を与えることができ、擬似的に等速走査を行わせることができる。
【0004】
MEMSミラーを偏向体に用いた画像形成装置において、走査位置のズレに起因する画像劣化を発生させないためには、MEMSミラーを高精度に光走査装置のハウジングへ組み付ける必要がある。MEMSミラーは、ポリゴンミラーのように連続回転するのではなく、前記揺動軸の軸回りに往復揺動するので、MEMSミラーの振れ角の中心とレーザー光の結像光学系の光軸とを一致させる必要がある。特許文献1〜5には、前記振れ角の中心と光軸とを一致させる調整機構に関する技術が開示されている。前記調整機構によるMEMSミラー及び結像光学系の一致調整は、光走査装置の組立製造時に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−80348号公報
【特許文献2】特開平7−281115号公報
【特許文献3】特開平2−64521号公報
【特許文献4】特開平9−179053号公報
【特許文献5】特開2007−178818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような調整は極めて高い精度が要求されることから時間と熟練を要し、光走査装置の製造コストを上昇させる要因となる。また、調整機構を光走査装置のハウジング内に装備する必要があるので、光走査装置が大型化するという問題もある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、光走査装置の製造コストの抑制、及び小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る光走査装置は、光束を発する光源と、前記光源の発光タイミングを制御する制御手段と、揺動軸を有し、該揺動軸の軸回りに所定の振れ角で往復揺動しつつ前記光源から発せられる光束を反射して略等速で偏向走査させる偏向体と、前記偏向体を駆動する駆動手段と、光軸を有し、前記偏向走査された前記光束を被走査面上に結像させる結像光学系と、前記結像光学系の光軸に対する前記偏向体の振れ角の中心の回転ズレ量を記憶する記憶手段と、を備え、前記制御手段は、一の主走査ラインについて前記被走査面に前記光束の照射を開始させるタイミングである書き出しタイミングを前記回転ズレ量に応じて補正して、前記発光タイミングを制御する。
【0009】
この構成によれば、前記結像光学系の光軸に対して前記偏向体の振れ角の中心を一致させるべく前記揺動軸を機械的に位置調整するのではなく、その回転ズレ量に応じて前記書き出しタイミングを補正することで、当該回転ズレの影響を消去する。従って、前記揺動軸の回転調整を行わせるための調整機構を省くことができる。
【0010】
上記構成において、前記偏向体は、前記光束を反射するミラー部と、前記揺動軸上に配置され、前記ミラー部を支持する第1トーションバーと、前記揺動軸上に配置され、前記ミラー部及び前記第1トーションバーの結合体を支持する第2トーションバーと、を含み、前記駆動手段は、前記ミラー部又は前記結合体を所定の基本正弦波で揺動させ、前記結合体又は前記ミラー部を、前記基本正弦波の整数倍の周波数の正弦波で揺動させる構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、前記偏向体が、所謂重畳駆動方式のMEMSミラーで構成される。従って、往復揺動する偏向体において、光束を略等速で偏向走査させる機構を簡単に構築することができる。
【0012】
この場合、さらに、前記ミラー部の法線に沿う第1軸の軸回りに前記偏向体を回転させて、当該偏向体の前記第1軸の軸回りにおける回転位置を調整させる第1回転調整機構と、前記第1軸及び前記揺動軸に直交する第2軸の軸回りに前記偏向体を回転させて、当該偏向体の前記第2軸の軸回りにおける回転位置を調整させる第2回転調整機構と、を備えることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、前記揺動軸と直交する他の2軸(第1軸及び第2軸)を、第1及び第2回転調整機構によって調整することができる。従って、前記書き出しタイミングの補正だけで、前記回転ズレ量の影響を確実に消去することができる。
【0014】
上記構成において、さらに、前記第1回転調整機構及び前記第2回転調整機構による前記回転位置の調整の際に、前記揺動軸の軸回りに前記ミラー部が揺動することを禁止する保持機構を備えることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、第1及び第2回転調整機構による回転位置調整の際に、保持機構によって前記ミラー部の揺動が禁止される。従って、前記揺動軸の回転位置調整を、前記書き出しタイミングの補正だけに依存させることができる。
【0016】
上記構成において、さらに、前記主走査ラインの走査開始側に配置され、前記光源から発せられる光束を検出する第1光センサーと、前記主走査ラインの走査終了側に配置され、前記光源から発せられる光束を検出する第2光センサーと、を備え、前記駆動手段は、前記第1光センサー及び前記第2光センサーが順次前記光束を検出するタイミングの時間間隔に依存するパラメータに基づいて、前記偏向体を駆動するものであって、前記回転ズレ量に応じて前記時間間隔を補正し、該補正された時間間隔に従って導出される補正パラメータに基づいて、前記偏向体を駆動することが望ましい。
【0017】
この構成によれば、第1光センサー及び前記第2光センサーが順次前記光束を検出するタイミングの時間間隔、つまりは前記偏向体の偏向角を、前記回転ズレ量を加味して補正することができる。
【0018】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の周面を前記被走査面として光束を照射する上記の光走査装置とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、偏向体の揺動軸の回転調整を行わせるための調整機構を省くことができる。従って、光走査装置、ひいては画像形成装置の製造コストの抑制、及び小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの概略構成を示す断面図である。
【図2】光走査装置の主走査断面の構成を示す平面図である。
【図3】(A)はMEMSミラーの構成を概略的に示す図、(B)はMEMSミラーの振れ角と光軸との関係を示す模式図である。
【図4】MEMSミラーの構成を示す図である。
【図5】MEMSミラーの揺動軸の回転ズレと、走査光による被走査面に対する書き出し位置のズレとの関係を示すグラフである。
【図6】MEMSミラーの揺動軸の回転ズレと、走査位置のズレとの関係を示すグラフである。
【図7】図5及び図6のグラフから導出される、狙い値からのズレ量を示すグラフである。
【図8】MEMSミラーの揺動軸の回転ズレ量を求めるために、光走査装置に調整治具を組み付けた状態を示す平面図である。
【図9】MEMSミラーのハウジングへの取り付け状態を示す平面図である。
【図10】図9の側面図である。
【図11】BD信号の時間間隔を示すグラフである。
【図12】BD信号の時間間隔を示すグラフである。
【図13】実施形態に係る画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る光走査装置について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光走査装置11を含む画像形成装置1の構成を概略的に示した断面図である。画像形成装置1は、光走査装置11、現像器12、帯電器13、感光体ドラム14(像担持体)、転写ローラー15、定着器16及び給紙カセット17を備える。
【0022】
感光体ドラム14は、円筒状の部材であり、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム14は、図略のモーターからの駆動力を受けて、図1における時計回りの方向に回転される。帯電器13は、感光体ドラム14の表面を略一様に帯電する。
【0023】
光走査装置11は、レーザーダイオード等の光源、偏向体、走査レンズ及び光学素子等を備え、帯電器13によって略一様に帯電された感光体ドラム14の周面(被走査面)に対して、画像データに応じたレーザー光を照射して、画像データの静電潜像を形成する。この光走査装置11については、後記で詳述する。
【0024】
現像器12は、静電潜像が形成された感光体ドラム14の周面にトナーを供給してトナー像を形成する。現像器12は、トナーを担持する現像ローラーやトナーを攪拌搬送するスクリューを含む。感光体ドラム14に形成されたトナー像は、給紙カセット17から繰り出され搬送路Pを搬送される記録紙に転写される。この現像器12には、図略のトナーコンテナからトナーが補給される。
【0025】
感光体ドラム14の下方には転写ローラー15が対向して配設され、両者によって転写ニップ部が形成されている。転写ローラー15は、導電性を有するゴム材料等で構成されると共に転写バイアスが与えられ、感光体ドラム14に形成されたトナー像を前記記録紙に転写させる。
【0026】
定着器16は、ヒーターを内蔵する定着ローラー160及び定着ローラー160と対向する位置に設けられた加圧ローラー161を備え、トナー像が形成された記録紙を加熱搬送することにより、記録紙に形成されたトナー像を定着させる。
【0027】
次に、画像形成装置1の画像形成動作について簡単に説明する。先ず、帯電器13により感光体ドラム14の表面が略均一に帯電される。帯電された感光体ドラム14の周面が、光走査装置11により露光され、記録紙に形成する画像の静電潜像が感光体ドラム14の表面に形成される。この静電潜像が、現像器12から感光体ドラム14の周面にトナーが供給されることにより、トナー像として顕在化される。一方、給紙カセット17からは記録紙が搬送路Pに繰り出される。前記トナー像は、転写ローラー15と感光体ドラム14との間のニップ部を記録紙が通過することにより、当該記録紙に転写される。この転写動作が行われた後、記録紙は定着器16に搬送され、記録紙にトナー像が固着される。
【0028】
続いて、光走査装置11の詳細構造について説明する。図2は、光走査装置11の主走査断面の構成を示す平面図である。光走査装置11は、半導体レーザー21(光源)、コリメータレンズ22、シリンドリカルレンズ23、MEMSミラー24(偏向体)、第1走査レンズ25、第2走査レンズ26、第1BD(Beam Detect)レンズ27、第2BDレンズ28、第1BDセンサー31及び第2BDセンサー32を備える。図2においてx軸がMEMSミラー24の揺動軸24Sが延びる方向、y軸がミラー平面の延びる方向、z軸がミラー平面の法線方向(光軸方向)である。
【0029】
半導体レーザー21は、所定の波長のレーザー光(入射光束L1)を発する光源である。コリメータレンズ22は、半導体レーザー21から発せられ拡散する入射光束L1を平行光に変換する。シリンドリカルレンズ23は、前記平行光の入射光束L1を主走査方向に長い線状光に変換してMEMSミラー24に結像させる。MEMSミラー24に対する入射光束L1の入射光学系を構成する半導体レーザー21、コリメータレンズ22及びシリンドリカルレンズ23は、主走査平面において、MEMSミラー24から感光体ドラム14の周面14a(被走査面)に至る反射光束(偏向光束L2)と交差しないよう、MEMSミラー24の斜め方向に配置されている。なお、前記入射光学系を、光軸を含む副走査断面内に配置する所謂センター入射光学系としても良い。
【0030】
MEMSミラー24は、図3(A)に示すように、ミラー面24Mと、副走査方向に平行な揺動軸24Sとを有する。MEMSミラー24は、図3(B)に示すように、揺動軸24Sの軸回りに所定の振れ角αの範囲内で往復揺動しつつ、前記入射光学系を経てミラー面24Mに結像された入射光束L1を偏向走査する。すなわち、MEMSミラー24の反射光束は偏向光束L2となる。
【0031】
第1走査レンズ25及び第2走査レンズ26は、像面上でほぼ等速に走査する略fθ特性を有するレンズであって、特殊トーリック面からなるレンズ面(回転非対称の屈折面)を備えたレンズである。これら走査レンズ25、26は、MEMSミラー24から感光体ドラム14の周面14aに向かう光軸上で互いに対向して配置されている。第1、第2走査レンズ25、26は、MEMSミラー24によって反射された偏向光束L2を集光し、周面14aに結像させる。
【0032】
第1BDセンサー31(第1光センサー)及び第2BDセンサー32(第2光センサー)は、偏向光束L2の有効走査領域の範囲外に設置され、一の主走査ラインについて周面14aに偏向光束L2の照射を開始させるタイミングである書き出しタイミングの同期を取るために、偏向光束L2を検出する。第1BDセンサー31は、主走査ラインの走査開始側に、第2BDセンサー32は、主走査ラインの走査終了側にそれぞれ配置されている。
【0033】
第1BDレンズ27は、MEMSミラー24と第1BDセンサー31との間の光路に配置され、偏向光束L2を第1BDセンサー31に結像させるレンズである。また、第2BDレンズ28は、MEMSミラー24と第2BDセンサー32との間の光路に配置され、偏向光束L2を第2BDセンサー32に結像させるレンズである。
【0034】
図4は、MEMSミラー24の構成を示す図である。MEMSミラー24は、重畳駆動方式のミラーであって、シリコン等の半導体基板に機械駆動部品が搭載されたMEMS基板240と、光束を反射するミラー部241(上記のミラー面24Mを含む部材)と、揺動軸24Sの軸上にミラー部241を挟むように配置され該ミラー部241を支持する一対の第1トーションバー242と、ミラー部241を取り囲んで配置され一対の第1トーションバー242を保持するフレーム部材243と、揺動軸24Sの軸上に配置されフレーム部材243(ミラー部241及び第1トーションバー242の結合体)を挟むように支持する一対の第2トーションバー244と、を含む。MEMS基板240には矩形の窓部240Wが備えられ、この窓部240Wの内周縁で第2トーションバー244が保持されている。図4で示す通り、ミラー部241は、第1トーションバー242及び第2トーションバー244の2重のトーションバーで支持されている。
【0035】
ミラー部241及びフレーム部材243には、それぞれ外部から通電可能なコイルが搭載されている。また、MEMS基板240にはマグネットが搭載されている。前記コイルには交流電流が通電され、この電流と前記マグネットの磁界とで生成されるローレンツ力によって、ミラー部241及びフレーム部材243が第1トーションバー242及び第2トーションバー244の軸回りに往復揺動する。この揺動は、印加される交流電圧の周波数に依存する。
【0036】
本実施形態では、MEMSミラー24は重畳駆動方式で駆動される。このため、例えば第1トーションバー242(ミラー部241)が基本正弦波の電圧で駆動される場合、第2トーションバー244(フレーム部材243)は、当該基本正弦波の整数倍の周波数の正弦波の電圧で駆動される。或いは、第2トーションバー244が基本正弦波の電圧で駆動され、第1トーションバー242が当該基本正弦波の整数倍の周波数の正弦波の電圧で駆動される。このように、基本正弦波とその整数倍(例えば3倍)の正弦波とが重畳された状態でミラー部241が揺動駆動されることで、ミラー部241は揺動軸24Sの軸回りに等角速度運動に近い揺動を行うことができる。従って、入射光束L1を略等速で偏向走査することができる。
【0037】
MEMSミラー24は、上記のx軸、y軸及びz軸が精密に位置合わせ調整された状態で、光走査装置11のハウジング内に組み付けられる必要がある。例えば、x軸の揺動軸24Sのズレとしては、副走査方向に対する傾き、平行軸ズレの他、回転軸ズレ(以下、「x軸回転」という)が問題視される。x軸回転が存在すると、図3(B)に示すように、MEMSミラー24(ミラー部241)の振れ角αの中心αcが、MEMSミラー24から周面14aへ至る結像光学系の光軸OAに対してΔθxだけズレることになる。このΔθxが、x軸回転による回転ズレ量となる。
【0038】
x軸回転の影響について、MEMSミラー24の偏向角特性と、走査レンズ25、26の特性を用いて説明する。重畳駆動方式のMEMSミラー24の偏向角特性は次の(1)式で表される。ここでは、基本正弦波と、その3倍の正弦波とが重畳されて、MEMSミラー24が駆動されるものとする。
【0039】
【数1】

【0040】
上記(1)式において、Aは、MEMSミラー24が静止している状態における反射光の光軸(=振れ角αの中心αc)と、第1、第2走査レンズ25、26を含む結像光学系の光軸とがなすx軸回転角(Δθx)を、Aは、基本正弦波の最大偏向角を、Aは、基本正弦波の3倍波の最大偏向角を、θはMEMSミラー24の偏向角を、ωはMEMSミラー24の角速度を、tは時間をそれぞれ示している。また、重畳駆動方式の結像光学系において走査レンズ(第1、第2走査レンズ25、26)は次の(2)式で示す特性を有している。
【0041】
【数2】

【0042】
上記(2)式において、yは像高を、fは走査レンズの焦点距離をそれぞれ示している。x軸回転が発生していると、書き出しタイミングのズレ及び走査位置のズレが発生することになる。図5は、x軸回転が存在している場合、つまり(1)式においてA≠0でない場合における、書き出しタイミングのずれに対応する書き出し位置(一の主走査ラインにおいて、偏向光束L2によって露光(書き出し)が開始される被走査面上の位置)のズレ量R1を示すグラフ、図6は、書き出し位置を基準にした走査位置ズレを示すグラフである。図6では、a〜gの7つのx軸回転角ごとに走査位置ズレを示しており、x軸回転角はそれぞれ、a=0°、b=0.0005°、c=0.01°、d=0.05°、e=0.1°、f=0.15°、g=0.2°である。また、(1)式及び(2)式におけるパラメータは、f=200mm、ω=4000πHz・rad、A=42.022°、A=−2.978°とした。なお、有効走査領域=±105mm、BDセンサーによる光束の検知位置を−120.95mmに設定した。
【0043】
図5及び図6に表示している閾値Th=42μmは、書き出し位置のズレ及び走査位置ズレの許容範囲を示す閾値である。これは、画素密度が600dpiである場合、1ドットの大きさは42μmであり、これを超過するようなズレは視覚的に目立つものとなるからである。
【0044】
図5に示すように、x軸回転が存在している場合に書き出し位置のズレが発生し、x軸回転角が大きい程、そのズレも単調に増加する。図6に示す走査位置ズレは、書き出し位置に対してどれだけのズレが主走査方向に発生しているのかを表している。当然、書き出し位置である−105mmの走査位置においては、走査位置ズレ=0μmとなる。
【0045】
図5及び図6を比較して明らかな通り、x軸回転の発生により発生する走査位置ズレは、書き出し位置のズレよりも小さい。例えば、x軸回転角=0.15°(図6の曲線f)において比較すると、図5の書き出し位置のズレ量R1は閾値Thを大きく超過しているのに対し、図6の走査位置ズレの曲線fは、その最大値が閾値Th内(1ドット内)に収まっている。また、MEMS基板240の主走査方向の大きさが30mmである場合、x軸回転角=0.15°を寸法バラツキ量に換算すると、78μmとなる。この程度の大きさの寸法バラツキは許容範囲である。以上のことから、0.15°程度のx軸回転が生じても、走査位置ズレは許容できる範囲内に止まるということができ、結論として、x軸回転は書き出し位置のズレ(書き出しタイミングのズレ)に感度があると言うことができる。
【0046】
図7は、図6に示した走査位置ズレをx軸回転角が横軸の変数となるよう置換し、書き出し位置のズレ及び走査位置ズレの双方を同一グラフ上に表した図である。図7において、R1は書き出し位置のズレ量、R2は走査位置のズレ量を示す。この書き出し位置のズレ量R1と走査位置のズレ量R2との合計が、偏向光束L2が本来的に照射されるべき被走査面上の基準位置(その座標が「狙い値」となる)に対し、当該偏向光束L2が現に照射している被走査面上の位置のズレ量R3となる。
【0047】
上記のズレ量R3を求めることによって、MEMSミラー24のx軸回転量を求めることができる。つまり、ビーム径及び光量を調整した上で偏向光束L2を実際に被走査面の所定位置(例えば走査領域の中央位置)に照射させ、前記被走査面上の狙い値に対して偏向光束L2のビームスポットの重心位置がどの程度ズレているかを計測することで、x軸回転量を計測することができる。そして、図5に示した通り、x軸回転量に対して書き出し位置のズレは線形に増加する関係にあるので、MEMSミラー24のx軸回転調整を実際に行わなくとも、書き出しタイミングをx軸回転量に応じて補正することで、x軸回転分の影響を消去することができる。
【0048】
表1に、x軸回転量に対する書き出しタイミングの補正量の一例を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
光走査装置11の製造時において、上記ズレ量R3に基づきx軸回転量を計測し、表1のテーブルに基づいて書き出しタイミングの補正値をメモリー等に記憶させておくことで、x軸回転調整のための作業を省くことができる。
【0051】
続いて、本実施形態に係る光走査装置11の組立作業の一例を工程別に説明する。
[工程1]
光走査装置11のハウジングにおける感光体ドラム14と対向する位置に、走査光の調整のための調整治具40を取り付ける。図8は、MEMSミラー24の揺動軸24Sのx軸回転量を求めるために、光走査装置11に調整治具40が組み付けられた状態を示す平面図である。調整治具40は、偏向光束L2が結像される結像面(被走査面を模擬する面)40Sを備え、該結像面40Sに配置された第1治具BDセンサー33及び第2治具BDセンサー34と、二次元エリアセンサーである第1CCDセンサー41、第2CCDセンサー42及び第3CCDセンサー43とを備える。
【0052】
第1治具BDセンサー33は書き出し開始側に、第2治具BDセンサー34は書き出し終了側における有効走査領域の範囲外に配置され、各BDセンサー33、34は偏向光束L2を検出する。これら第1、第2治具BDセンサー33、34の調整治具40内における位置は既知であり、従って、結像面40S上における各々の像高も既知である。このため、光軸(像高=0mm)と、第1治具BDセンサー33に入射する偏向光束L2とがなす角θBD1、及び、光軸と第2治具BDセンサー34に入射する偏向光束L2とがなす角θBD2は、計算により算出することができる。
【0053】
第1CCDセンサー41は像高中心(像高=0mm)に、第2CCDセンサー42は書き出し開始側の像高端部に、第3CCDセンサー43は書き出し終了側の像高端部に、それぞれの受光面が配置され、各CCDセンサー41、42、43は偏向光束L2のビームスポットを二次元的に検出する。これらCCDセンサー41、42、43は、偏向光束L2のビーム径の計測と、光量の検出のために設置されている。前記ビーム径は、前記受光面において光が検出されている領域を包絡することで求めることができる。光量は、前記ビーム径が最小となるように光学系を調整した状態において、当該ビームスポットの前記受光面上における面積に基づいて求めることができる。これは、受光面に結像された状態のビームスポットの光量分布はガウス分布となり、光量の大きさに比例してビームスポットの大きさも変化するからである。
【0054】
[工程2]
光走査装置11のハウジング(図略)に、光源である半導体レーザー21及びコリメータレンズ22を設置する。なお、この段階では、シリンドリカルレンズ23、MEMSミラー24、第1及び第2走査レンズ25、26は、ハウジングに取り付けない。
【0055】
[工程3]
半導体レーザー21のドライバー(図13のLD駆動部21D)を動作させ、半導体レーザー21を点灯させる。
【0056】
[工程4]
MEMSミラー24に対する入射光学系の光軸調整を行う。すなわち、半導体レーザー21と、コリメータレンズ22との光軸調整を行い、入射光束L1の光軸を規定位置に合わせる。これにより、スポット径が5mm程度の平行光(入射光束L1)がコリメータレンズ22から光軸に沿って出射されるようになる。
【0057】
[工程5]
MEMSミラー24を、光走査装置11のハウジングの所定位置に取り付ける。取り付け後、図8に示すy軸及びz軸回りの回転調整が行われる。上述の通り、MEMSミラー24の揺動軸24Sの延伸方向であるx軸の回転調整は、本実施形態では行われない。なお、y軸はMEMSミラー24(ミラー部241)のミラー平面の延びる方向、z軸が前記ミラー平面の法線方向である。
【0058】
本実施形態の光走査装置11は、上記y軸及びz軸回りの回転調整のため、図9及び図10に示すMEMSミラー24の支持機構を備えている。支持機構は、光走査装置11のハウジングの一部である一対の保持板51と、この保持板51から各々突設された押圧突起52(保持機構)とを含む。一対の保持板51は、MEMS基板240のy軸方向両側部を覆う位置に配置されている。押圧突起52は、y軸の延伸線上においてMEMS基板240と当接し、当該MEMS基板240を押圧している。MEMS基板240は、前記押圧によって、保持板51と対向するハウジングの壁面に押し付けられ、これによりハウジングに対して固定されている。
【0059】
上記のように支持機構で保持された状態で、MEMS基板240はy軸及び/又はz軸回りに必要に応じて回転され、その回転調整が行われる。押圧突起52は、y軸の延伸線上においてMEMS基板240を押圧しているので、図10に示す通り、MEMS基板240はy軸の軸回りに回転可能である。一方、一対の押圧突起52による拘束によって、MEMS基板240はx軸の軸回りには回転できない状態とされ、x軸回転調整は物理的に行うことができない。z軸の軸回りの回転調整は、図9に示す通り、MEMS基板240を該基板の配置平面内で回転させる調整であるので、押圧突起52によって押圧された状態であっても実行することができる。
【0060】
[工程6]
像高中心に配置された第1CCDセンサー41を用いて、MEMSミラー24のy軸回りの回転調整(ピッチ方向調整)を行う。MEMSミラー24が駆動されていない状態では、半導体レーザー21から発せられMEMSミラー24で反射された偏向光束L2は、第1CCDセンサー41の受光面に到達する。この段階では走査レンズ25、26が組み付けられていないので、コリメータレンズ22から射出された平行光が第1CCDセンサー41で受光されることになる。この平行光の前記受光面上における照射位置の座標と、予め定められたx軸方向の狙い値との差が、y軸回転量となる。
【0061】
MEMSミラー24が基準位置に対してピッチ方向に振れが無い状態で組み付けられた場合、前記線状光の照射位置の座標と前記x軸方向の狙い値とは一致するが、ピッチ方向に振れが生じている場合、両者は一致しないことになる。この場合、前記線状光の照射位置が前記狙い値に一致するように、つまり、前記線状光が前記狙い値相当する座標に位置する第1CCDセンサー41の画素から検出されるように、所定の回転機構(第2回転調整機構)によって、MEMSミラー24(MEMS基板240)をy軸の軸回りに回転させる。
【0062】
[工程7]
MEMSミラー24を揺動軸24Sの軸回りに揺動駆動すると共に、像高端部に各々配置された第2及び第3CCDセンサー42、43を用いて、MEMSミラー24のz軸回りの回転調整(ヨー方向調整)を行う。MEMSミラー24が駆動されることで、偏向光束L2を、第2及び第3CCDセンサー42、43の各受光面に到達させることが可能となる。従って、第2及び第3CCDセンサー42、43の出力に基づいて、偏向光束L2の像高両端部における前記線状光の照射位置を求めることができる。
【0063】
MEMSミラー24が基準位置に対してヨー方向に振れた状態で組み付けられた場合、例えば第2CCDセンサー42では偏向光束L2の前記線状光の照射位置がx軸方向の狙い値に対して+方向の差をもって検出され、第3CCDセンサー43では逆に狙い値に対して−方向の差をもって検出される。このような場合、前記線状光の照射位置が前記狙い値に一致するように、所定の回転機構(第1回転調整機構)によって、MEMSミラー24をz軸の軸回りに回転させる。
【0064】
[工程8]
シリンドリカルレンズ23、第1走査レンズ25及び第2走査レンズ26を、光走査装置11のハウジングの所定位置に取り付ける。これにより、MEMSミラー24から周面14aへ至る結像光学系が構築される。
【0065】
[工程9]
第1CCDセンサー41を用いて、偏向光束L2のビーム径の調整と光量調整とを行う。第1、第2走査レンズ25、26の組み付けにより、半導体レーザー21から発せられMEMSミラー24で反射された偏向光束L2を、第1CCDセンサー41の受光面に結像させることが可能となる。第1CCDセンサー41は偏向光束L2のビームスポットの画像を検出することになる。
【0066】
ビーム径の調整は、前記ビームスポットのビーム径が最小となるようにする調整である。この調整のため、第1CCDセンサー41から得られるビームスポットの画像をモニターしつつ、入射光学系のコリメータレンズ22及びシリンドリカルレンズ23の位置調整が行われる。そして、ビーム径が最小となる位置において、コリメータレンズ22及びシリンドリカルレンズ23がハウジングに固定される。
【0067】
光量調整は、前記ビームスポットが予め定められた面積となるようにする調整である。この調整のため、第1CCDセンサー41から得られるビームスポットの画像をモニターしつつ、半導体レーザー21の出力調整が行われる。ビームスポットの光量分布はガウス分布となるため、上記のビーム径の最小化調整が行われた状態下では、ビームスポットの面積は光量に比例して増加する。偏向光束L2が所定面積のビームスポットを第1CCDセンサー41の受光面に作るように、半導体レーザー21が発する光量が調整される。
【0068】
[工程10]
第1CCDセンサー41を用いて、MEMSミラー24のx軸回りの回転量(ローリング方向回転ズレ量)の測定を行う。MEMSミラー24が非駆動状態とされると、偏向光束L2は、第1CCDセンサー41の受光面に結像する。上記工程6及び7でy軸及びz軸の回転調整がすでに行われ、上記工程9において偏向光束L2のビーム径の調整と光量調整も行われているので、残る誤差要因はx軸回転のみである。第1CCDセンサー41の受光面に結像した偏向光束L2のビームスポットの重心をビーム照射位置とし、該ビーム照射位置の座標と、予め定められた狙い値との差を計測する。上述の通り、ビームスポットの光量分布はガウス分布となるため、前記重心の位置は、第1CCDセンサー41において最も高い光量を検知している画素の座標位置となる。
【0069】
x軸回転が存在していない場合、前記ビーム照射位置に相当する光量を検知した画素の座標は、前記狙い値の座標と一致する。この場合、ローリング誤差なくMEMSミラー24がハウジングに組み付けられていることになる。一方、x軸回転が存在していると、前記ビーム照射位置と前記狙い値とにズレが生じる。この狙い値からのズレは、図7に示したように、像高中心における走査位置ズレと書き出し位置ズレとの合計であって、そのズレ量R3が大きい程、x軸回転量は大きい。当該ズレ量R3が求められたなら、図7のグラフに基づいてMEMSミラー24のx軸回転量を求めることができる。そして、表1のテーブルに基づいて、ズレ量R3に応じた書き出しタイミングの補正量を導出することができる。
【0070】
[工程11]
第1、第2治具BDセンサー33、34(第1、第2光センサー)を用い、MEMSミラー24を揺動軸24Sの軸回りに揺動させ、MEMSミラー24の偏向角を調整する。MEMSミラー24は、個体ばらつきが存在するため、個々に駆動条件を調整することによって偏向角調整を行う必要がある。偏向角調整とは、MEMSミラー24の偏向角θを、上掲の式(2)に示した基本正弦波及びその3倍波の最大偏向角A、Aと、レンズ特性とを満たすように駆動条件を調整することである。また、MEMSミラー24にx軸回転が存在している場合は、そのx軸回転量を加味して駆動条件を調整せねばならない。
【0071】
まず、x軸回転が発生していない場合の調整は、前記個体ばらつきだけを消去する調整となる。上述の通り、第1、第2治具BDセンサー33、34が設置されている像高は既知である。また、式(2)のA、Aは固定値であるので、MEMSミラー24が揺動した場合において第1、第2治具BDセンサー33、34が偏向光束L2を順次検知してBD信号を出力する時間間隔tij(i、j=1、又は2)は自ずと決定される。ここで、i及びjは、治具BDセンサー33、34の「第1」及び「第2」の別を示し、またijの並びはBD信号の出力順を示している。例えば、「t12」は、第1治具BDセンサー33が偏向光束L2を検知してから第2治具BDセンサー34が偏向光束L2を検出するまでの時間間隔を示す。また「t22」は、偏向光束L2が第2治具BDセンサー34上を走査し、その後、揺動方向が反転されて再び第2治具BDセンサー34上を走査するまでの時間間隔を示す。
【0072】
この場合、次の表2に示す時間間隔tijとなるように、MEMSミラー24の駆動条件が調整される。なお、表2に示す通り、ここではx軸回転が発生していないことを想定しているので、式(1)のA=0である。
【0073】
【表2】

【0074】
一方、x軸回転が発生している場合は、つまりA≠0の場合、式(1)からも判るように、A、Aに対応する前記BD信号の時間間隔tijも異なるものとなるため、これを補正する必要がある。図11に、x軸回転に伴う時間間隔t21及びt11の変動を示す。また、図12に、x軸回転に伴う時間間隔t12及びt22の変動を示す。いずれの時間間隔tijも、x軸回転量に応じて線形に変化する。
【0075】
表3は、前記BD信号の時間間隔tijの補正値を示すテーブルである。工程10でMEMSミラー24のx軸回転量が求められたならば、次の表3を参照して、そのx軸回転量に応じて時間間隔tijが補正される。そして、補正された時間間隔tijに基づいて、MEMSミラー24の駆動条件が調整される。
【0076】
【表3】

【0077】
[工程12]
第1BDセンサー31及び第2BDセンサー32を、光走査装置11のハウジングの所定位置に固定する。
【0078】
[工程13]
上記工程11で得られた駆動パラメータでMEMSミラー24を揺動軸24Sの軸回りに揺動させ、第1、第2BDセンサー31、32が偏向光束L2を順次検知してBD信号を出力する時間間隔tij(i、j=3、4)を測定する。ここでの「3」、「4」は、それぞれ「第1BDセンサー31」、「第2BDセンサー32」を示す。既知の駆動パラメータを用いるので、測定された時間間隔tijに基づき第1BDセンサー31及び第2BDセンサー32の位置情報を取得することができる。
【0079】
なお、第1、第2BDセンサー31、32のBD信号に基づき得られた時間間隔tij(i、j=3、4)は、光走査装置11の組立後等においてMEMSミラー24の駆動条件を補正する際の基準値として用いることができる。すなわち、MEMSミラー24は、一定の駆動条件を与えても、光走査装置11の動作環境(温度、湿度、気圧等)によってパラメータA、Aが変化する。従って、光走査装置11の組立が完了し、これを画像形成装置1の装置本体内に搭載した後に、MEMSミラー24の駆動条件を再調整する必要がある。この再調整には、第1、第2BDセンサー31、32が用いられることになるが、この工程13で得られた時間間隔tij(i、j=3、4)を基準として、MEMSミラー24の駆動条件の合わせ込みが行われる。
【0080】
[工程14]
以上の工程で得られた、MEMSミラー24のx軸回転量、半導体レーザー21の光量、MEMSミラー24の駆動条件、第1、第2BDセンサー31、32の位置情報等を所定の記憶装置(例えば、後述の図13に示す記憶部62)に記憶させる。このような工程1〜14を行うことにより、x軸回転調整を行う必要がなく、また、x軸回転量を計測するための特別な工程を実行する必要もなくなる。従って、光走査装置11の組立工程を簡素化することができる。
【0081】
続いて、画像形成装置1の電気的構成について説明する。図13は、画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。画像形成装置1は、当該画像形成装置1の各部の動作を統括的に制御する制御部60(制御手段の一部)を備える。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。また、画像形成装置1は、先に説明した光走査装置11及び定着器16に加えて、画像形成部63、操作部64、画像メモリー65及びI/F(インターフェイス)66を備えている。
【0082】
画像形成部63は、記録紙に対して画像形成処理を行うもので、上述の現像器12,帯電器13、感光体ドラム14及び転写ローラー15などで構成される。操作部64は、液晶タッチパネル、テンキー、スタートキー及び設定キーなどを備え、画像形成装置1に対するユーザーの操作や各種の設定を受け付ける。
【0083】
画像メモリー65は、例えばパーソナルコンピューターなどの外部機器から与えられる印刷用画像データを一時的に記憶する。I/F66は、外部機器とのデータ通信を実現させるためのインターフェイス回路であり、例えば画像形成装置1と外部機器とを接続するネットワークの通信プロトコルに従った通信信号を作成すると共に、ネットワーク側からの通信信号を画像形成装置1が処理可能な形式のデータに変換する。パーソナルコンピューター等から送信される印刷指示信号はI/F66を介して制御部60に与えられ、また画像データは、I/F66を介して画像メモリー65に記憶される。
【0084】
光走査装置11には、LD駆動部21D(制御手段の一部)、MEMS駆動部24D(駆動手段)及び上述の第1及び第2BDセンサー31、32が備えられている。LD駆動部21Dは半導体レーザー21を駆動するドライバーであって、画像メモリー65の画像データに基づき与えられたタイミング信号に従って半導体レーザー21を点灯させることで、半導体レーザー21の発光タイミングを制御する。
【0085】
MEMS駆動部24Dは、MEMSミラー24を所謂重畳駆動方式で駆動するものであって、ミラー部241及びフレーム部材243に備えられているコイルに通電して、ミラー部241を揺動軸24Sの軸回りに往復揺動させる。例えばMEMS駆動部24Dは、図4に示すミラー部241を所定の基本正弦波で揺動させ、ミラー部241及び第1トーションバー242の結合体からなるフレーム部材243を、前記基本正弦波の3倍(整数倍)の周波数の正弦波で揺動させる。或いは逆に、フレーム部材243が基本正弦波で揺動され、ミラー部241が前記基本正弦波の3倍の周波数の正弦波で揺動されても良い。これにより、略等速で偏向走査させることができる偏向光束L2を作ることができる。この揺動駆動のためMEMS駆動部24Dは、ミラー部241及びフレーム部材243に備えられているコイルに前記正弦波の電圧を印加して、ミラー部241を揺動軸24Sの軸回りに往復揺動させる。
【0086】
制御部60は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより画像形成装置1の各部を制御し、当該画像形成装置1による画像形成動作を制御する。本実施形態では、特に制御部60は、露光制御部61と、記憶部62(記憶手段)とを備えている。
【0087】
露光制御部61は、光走査装置11の動作を制御する。この制御のために露光制御部61は、LD駆動部21Dに半導体レーザー21の発光タイミング及び光量の制御信号を与え、また、MEMS駆動部24DにMEMSミラー24の揺動駆動の制御信号を与える。これにより、半導体レーザー21から所定の書き出しタイミングで所定光量の光束が発せられ、所定の偏向角で前記光束がMEMSミラー24で反射され、上述の偏向光束L2が作られる。このような制御に際して、露光制御部61は、同期タイミングを取るために第1及び第2BDセンサー31、32の出力を参照すると共に、記憶部62を参照して、上記で詳述したx軸回転量に応じて書き出しタイミングを補正し(表1参照)、また、BD信号の時間間隔tijの補正値(表3参照)に応じてMEMSミラー24の駆動条件を調整する。
【0088】
記憶部62は、上記工程10で求められたx軸回転量(結像光学系の光軸に対するMEMSミラー24の振れ角の中心の回転ズレ量)のデータ、工程9で求められた半導体レーザー21の光量のデータ、前記書き出しタイミングのx軸回転量に応じた補正値、工程13等で求められたMEMSミラー24の駆動条件及びそのx軸回転量に応じた補正値等を記憶する。
【0089】
制御部60が上記構成を備えることで、光走査装置11の組立時においてx軸回転調整を行わずとも、実質的にx軸回転調整が行われたに等しい状態で、MEMSミラー24で感光体ドラム14の周面14aを的確に偏向走査させることができる。
【0090】
以上説明した本実施形態に係る光走査装置11によれば、MEMSミラー24の揺動軸24Sのx軸回転調整工程を省くことができるので、製造工程を簡素化することができ、これにより光走査装置11の製造コストを抑制することができる。また、光走査装置11にx軸回転の調整機構を具備させる必要がないので、光走査装置11の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 画像形成装置
11 光走査装置
14 感光体ドラム(像担持体)
14a 周面(被走査面)
21 半導体レーザー(光源)
21D LD駆動部(制御手段の一部)
22 コリメータレンズ
23 シリンドリカルレンズ
24 MEMSミラー(偏向体)
24S 揺動軸
24D MEMS駆動部(駆動手段)
241 ミラー部
242 第1トーションバー
244 第2トーションバー
25、26 第1、第2走査レンズ(結像光学系)
31 第1BDセンサー(第1光センサー)
32 第2BDセンサー(第2光センサー)
33 第1治具BDセンサー
34 第2治具BDセンサー
51 保持板
52 押圧突起(保持機構)
60 制御部
61 露光制御部(制御手段の一部)
62 記憶部(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を発する光源と、
前記光源の発光タイミングを制御する制御手段と、
揺動軸を有し、該揺動軸の軸回りに所定の振れ角で往復揺動しつつ前記光源から発せられる光束を反射して略等速で偏向走査させる偏向体と、
前記偏向体を駆動する駆動手段と、
光軸を有し、前記偏向走査された前記光束を被走査面上に結像させる結像光学系と、
前記結像光学系の光軸に対する前記偏向体の振れ角の中心の回転ズレ量を記憶する記憶手段と、を備え、
前記制御手段は、一の主走査ラインについて前記被走査面に前記光束の照射を開始させるタイミングである書き出しタイミングを前記回転ズレ量に応じて補正して、前記発光タイミングを制御する、光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置において、
前記偏向体は、
前記光束を反射するミラー部と、
前記揺動軸上に配置され、前記ミラー部を支持する第1トーションバーと、
前記揺動軸上に配置され、前記ミラー部及び前記第1トーションバーの結合体を支持する第2トーションバーと、を含み、
前記駆動手段は、
前記ミラー部又は前記結合体を所定の基本正弦波で揺動させ、
前記結合体又は前記ミラー部を、前記基本正弦波の整数倍の周波数の正弦波で揺動させる、光走査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光走査装置において、さらに、
前記ミラー部の法線に沿う第1軸の軸回りに前記偏向体を回転させて、当該偏向体の前記第1軸の軸回りにおける回転位置を調整させる第1回転調整機構と、
前記第1軸及び前記揺動軸に直交する第2軸の軸回りに前記偏向体を回転させて、当該偏向体の前記第2軸の軸回りにおける回転位置を調整させる第2回転調整機構と、を備える光走査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光走査装置において、さらに、
前記第1回転調整機構及び前記第2回転調整機構による前記回転位置の調整の際に、前記揺動軸の軸回りに前記ミラー部が揺動することを禁止する保持機構を備える、光走査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光走査装置において、さらに、
前記主走査ラインの走査開始側に配置され、前記光源から発せられる光束を検出する第1光センサーと、
前記主走査ラインの走査終了側に配置され、前記光源から発せられる光束を検出する第2光センサーと、を備え、
前記駆動手段は、
前記第1光センサー及び前記第2光センサーが順次前記光束を検出するタイミングの時間間隔に依存するパラメータに基づいて、前記偏向体を駆動するものであって、
前記回転ズレ量に応じて前記時間間隔を補正し、該補正された時間間隔に従って導出される補正パラメータに基づいて、前記偏向体を駆動する、光走査装置。
【請求項6】
静電潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体の周面を前記被走査面として光束を照射する、請求項1〜5のいずれかに記載の光走査装置と、
を備える画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−44872(P2013−44872A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181567(P2011−181567)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】