説明

光輝性の高い真珠光沢顔料の製造方法及びその製造方法により製造された真珠光沢顔料

【課題】粒子径が100〜2000μm、好ましくは200〜1500μmで十分に薄い薄片状基質へ高屈折率の金属酸化物を被覆する最適な方法を提供し、製造時間の短縮を図る。
【解決手段】粒径100〜2000μm、厚みが0.1〜1μmの薄片状基質へ、鉄化合物を平滑に被覆して成る真珠光沢顔料において、中和滴定法による方法で、特定量の二価の陰イオンを、スラリー、又は添加鉄塩溶液に添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒径が100〜2000μmの薄片状基質表面上に、鉄化合物が平滑に被覆された、極めて光輝性の高い、新規な真珠光沢顔料の製法に関するものであり、具体的には、薄片状基質表面に鉄化合物を被覆する際、該鉄化合物の原料となる鉄塩溶液へ陰イオンを添加することによって、鉄化合物被覆面が極めて平滑となる、高鮮明度かつ光輝性の高い真珠光沢顔料の製法に関する。より具体的には、着色塗料、印刷インキ、プラスチック類、化粧品、セラミックス及びガラス用釉薬等の光機能性材料として有益な真珠光沢顔料の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真珠光沢顔料は着色塗料、印刷インキ、プラスチック類、化粧品、セラミックス及びガラス用釉薬等の光機能性材料として有益であり、現在数多く上市されている。代表的な真珠光沢顔料としては、薄片状の基質に二酸化チタンを平滑に被覆し、薄膜干渉効果によって、様々な色調を呈するものがよく知られ、その他にも、酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン、酸化コバルト等を使用した着色真珠顔料も数多く上市されている。
【0003】
真珠光沢顔料は、薄片状基質、例えば天然に産出する雲母を粉砕したものや、工業的に合成された雲母、板状シリカ、板状アルミナに高屈折率の物質を平滑に被覆し、薄膜干渉効果によって、シルバーや虹彩色を発現させたものである。
【0004】
このような高屈折率を持つ物質としては、前述の酸化チタン、酸化鉄が最も代表的であり、よく使用されている。これらを被覆する方法としては、チタン、もしくは鉄含有溶液を、一定温度、pHを保ちながら、薄片状基質が分散したスラリーへ一定速度で添加し、所望の厚みの金属水酸化物層を該薄片状基質へ被覆する中和滴定法や、チタン、もしくは鉄含有溶液を薄片状基質分散スラリーへ、必要であれば尿素とともに最初に混合し、この混合スラリーを加熱撹拌して、チタン、もしくは鉄原料の加水分解によって、薄片状基質上に金属水酸化物被覆層を得る均一沈殿法が挙げられる。これら金属水酸化物を焼成することによって、金属酸化物層が平滑に被覆された真珠光沢顔料を得ることが出来る。酸化チタンを被覆しようとした場合、例えば、特公昭43−25644号や、特公昭49−49173号に示されているように、チタン原料として、硫酸チタニルや四塩化チタン水溶液を使用するのが一般的である。また鉄化合物を被覆しようとした場合は、ドイツ国特許第1,467,468号(特公昭62−29465号)や、特公昭56−39669号に示されているように、2価、3価の各種鉄塩化合物を使用するのが一般的である。
【特許文献1】特公昭43−25644号公報
【特許文献2】特公昭49−49173号公報
【特許文献3】特公昭62−29465号公報
【特許文献4】特公昭56−39669号公報
【0005】
均一沈殿法による被覆は、その性質上、最初に投入した薄片状基質の重量と、チタン原料、もしくは鉄原料の重量の相関によって、色調が決定する。この方法は一旦反応を開始すると、薄片状基質への金属水酸化物の被覆を途中でストップさせることは困難であり、その結果色調のコントロールが難しい。さらには、この方法は尿素を使用することが多く、その結果、排水として多量のアンモニア水が排出され、環境上好ましくないという問題がある。
【0006】
中和滴定法による被覆は、ゆっくりとチタン、もしくは鉄含有溶液を薄片状基質が分散したスラリーへ滴下していくので、反応がじょじょに進む。よって被覆される金属水酸化物を所定の厚みにコントロールすることがたやすく、従って色調のコントロールが容易である。
【0007】
以上の点より、中和滴定法によって金属酸化物を被覆するのが、もっとも望ましいものであるが、粒子径が100μmを超える薄片状基質には、上に挙げたような酸化チタン、酸化鉄の被覆が難しい。なぜなら、粒子径が100μm以上の薄片状基質は、小さい粒子と比較して、同体積(重量)あたりの比表面積の値が必然的に小さくなる。よって粒子径が100μm以上の薄片状基質と、粒子径が1〜30μm程度の二種類の薄片状基質に、中和滴定法による金属酸化物の被覆を行い、比較したとき、吸着しうる表面積が小さい方、つまりは大粒子の方が、被覆する金属酸化物の吸着が起こり難い。よって粒子径100μm以上の薄片状基質には、金属酸化物の平滑な被覆面が実現されにくい為、非常にゆっくりと被覆する金属塩滴下溶液を添加する必要があり、反応時間が非常に長くなってしまう。
【0008】
特開平10−316882号では、粒径100〜2000μmの天然、もしくは合成マイカへの様々な金属酸化物被覆によって、光輝感に優れ、多色性フリップフロップ効果を発現しうると紹介されている。しかしこれは、マイカが巨大かつ十分に薄いことによるエッジ散乱光の減少効果、薄膜干渉効果の増大の観点より論じられたものであり、製法面での陰イオン添加の効果についてはまったく言及されていない。
【特許文献5】特開平10−316882号公報
【0009】
特開平10−259318号では硫酸塩類を添加し、さらに必要であれば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムを被覆酸化鉄層に内包させることによる高彩度オレンジ真珠光沢顔料が紹介されている。ここでは、添加される硫酸イオンの効果は、被覆される鉄化合物二次粒子の粒子径と、その形状のコントロールであり、その結果高彩度オレンジが得られると記載されている。かつ添加する硫酸塩類の量は、鉄塩1molに対して0.005〜0.1molの範囲が好ましいとしており、本件とは明らかに目的が異なるものである。また用いる薄片状基質の好ましい粒子径の範囲も1〜150μmとの記載があり、本件とは範囲が異なるものである。
【特許文献6】特開平10−259318号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
粒子径が100〜2000μm、好ましくは200〜1500μmで十分に薄い薄片状基質へ高屈折率の金属酸化物を被覆した場合、優れた光輝性をもつ真珠光沢顔料が出来るのだが、上記理由により、製造が達成されなかった。特に鉄化合物については、粒子径が100〜2000μmの薄片状基質への被覆が非常に悪い傾向があり、実際の製造を考えた場合、製造に時間がかかりすぎるという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記の現状に鑑みて、粒径100〜2000μm、厚みが0.1〜1μmの薄片状基質へ、鉄化合物を平滑に被覆して成る真珠光沢顔料の開発を進めた結果、中和滴定法による方法で、特定量の二価の陰イオンを、スラリー、又は添加鉄塩溶液に添加した場合、迅速に素早く鉄化合物の被覆層が形成されることを見出した。これによって、光輝性の高い鉄化合物被覆真珠光沢顔料の製造に成功し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
より具体的には、本発明の真珠光沢顔料は、鉄化合物よりなる被覆層、さらに詳しく言えば赤酸化鉄、黄色水酸化鉄と、薄片状基質、さらに詳しく言えば、粒径100〜2000μm、厚みが0.1〜1μmの白雲母、金雲母、合成雲母、板状シリカ、板状アルミナよりなり、前記鉄化合物が前記薄片状基質を均一に被覆してなる。
【0013】
二価陰イオンと平滑な被覆の相関性について、二価陰イオンは、鉄化合物粒子を凝析させる効果があると考えられることから、それにより、ある程度の大きさの鉄化合物粒子が素早く形成されるものと考えられる。更に、二価陰イオン添加によって薄片状基質表面の親水性が増し、それによって、反応液中で形成された鉄化合物粒子の表面への平滑な被覆を助けることによって、100〜2000μmのような従来の真珠光沢顔料より表面積の小さいマイカでも、平滑な被覆が実現できるのであろうと発明者は考えている。一方、一価の陰イオンでは表面の親水性があまり増さないので、平滑な鉄化合物の被覆という点では効果が極めて薄く、効果が得られない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明で使用される薄片状基質は、天然に産出される白雲母、金雲母、また工業的に生産された合成雲母、板状シリカ、板状アルミナを用いるのが好ましい。優れた光輝性、発色を得る為には、これらの薄片状基質は十分に薄く、厚みが0.1〜1μmの間にあることが好ましい。また粒子径は100〜2000μmの間にあることが好ましい。
【0015】
本発明における光輝性の高い鉄化合物被覆真珠光沢顔料の製造工程の例を以下に示す。はじめに前述の薄片状基質を水に懸濁し、よく攪拌分散させる。このスラリーを必要であれば90℃以下まで加温する。好ましくは70℃〜90℃の間である。陰イオンの添加方法としては、以下の方法が挙げられる。1)薄片状基質が分散した懸濁液に、陰イオンを添加して、第二鉄塩溶液を、薄片状基質が分散した懸濁液に滴下していく方法、2)第二鉄塩水溶液と、陰イオンを含んだ水溶液を、同時的に薄片状基質が分散した懸濁液に滴下していく方法、3)第二鉄塩水溶液に陰イオンを添加した水溶液を、薄片状基質が分散した懸濁液に滴下していく方法である。このとき、鉄塩水溶液の滴下する速度、pH、温度を一定に保つことが重要である。滴下の際、スラリーのpHがこれら溶液の添加に伴い下がるので、アルカリ水溶液を添加してpHを一定に保つ。
【0016】
ここで使用される第二鉄塩の種類は、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄が挙げられる。また二価陰イオンとしては、硫酸イオン、クロム酸イオンが挙げられ、硫酸イオンを含んだ化合物として、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウムが挙げられ、クロム酸イオンを含んだ化合物としては、クロム酸、クロム酸カリウム、クロム酸ナトリウム、クロム酸カルシウムが挙げられる。
【0017】
所望の色調となるまで、鉄塩水溶液を添加していく。添加終了後、20分攪拌を続け、よく熟成させる。その後、必要であれば、アルカリ水溶液の添加でpHを5〜8とし、その後水洗によって塩を除去する。その後、ろ過、乾燥し、必要であれば、500℃〜900℃で20〜180分焼成を行う。このようにして得られた真珠光沢顔料は、光輝性が非常に高く、着色塗料、印刷インキ、プラスチック類、化粧品、セラミックス及びガラス用釉薬等の光機能性材料として有益なものであった。
【0018】
また上記粉体は、従来公知の各種表面処理、例えばシリコーン処理、シラン処理、フッ素化合物処理、金属石鹸処理、ワックス処理、脂肪酸処理、N−アシル化リジン処理、水溶性高分子化合物処理、樹脂処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等が行われていてもいなくても構わない。
【0019】
以下具体的な実施例、配合例について記載する。尚、これらの実施例により、本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
粒径100〜2000μmまでの粒子を含み、平均粒子径が500μm程度である合成雲母120gを1.2リットルの水に加えて十分に分散させ、硫酸カリウム14.3gを前記スラリーへ添加し、80℃まで昇温する。昇温した後に、塩酸1gを加えてpHを3とする。その後、塩化第二鉄50gを33gの水に溶解させた水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを3に保ちながら、0.4g/minの割合でゆっくりと添加していく。全て添加し終わったら、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.5とする。その後、水洗によって塩を除去し、吸引濾過、乾燥し、次いで700℃で1時間焼成を行った。出来上がった粉体は光輝性の非常に強い、金色のキラキラした着色真珠光沢顔料であった。ここで得られた粉体1gと、比較としてメルク社製の酸化鉄被覆パール顔料であるColorona Bronze Sparkleとを、それぞれニトロセルローズラッカー(クリヤー、武蔵塗料社製)10gと混合、良く攪拌し、十分に分散させた。これらを白色艶紙上に0.1mmの厚さで塗布し、グロスチェッカー(IG−300、堀場製作所製)で60°、20°で光沢度を評価した。結果を表1に示す。これによるとメルク社Colorona Bronze Sparkleと比較して優れた光沢度を示す粉体であった。
【実施例2】
【0021】
粒径100〜2000μmまでの粒子を含み、平均粒子径が500μm程度である合成雲母120gを1.2リットルの水に加えて十分に分散させ、80℃まで昇温する。昇温した後に、塩酸1gを加えてpHを3とする。その後、塩化第二鉄50gを33gの水に溶解させ、これに硫酸8gを添加した水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを3に保ちながら、0.4g/minの割合でゆっくりと添加していく。全て添加し終わったら、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.5とする。その後、水洗によって塩を除去し、吸引濾過、乾燥し、次いで700℃で1時間焼成を行った。出来上がった粉体は光輝性の非常に強い、金色のキラキラした着色真珠光沢顔料であった。ここで得られた粉体を実施例1と同様の手順でニトロセルローズラッカーへと分散させ、グロスチェッカー(IG−300、堀場製作所製)で60°、20°で光沢度を評価した。結果を表1に示す。これによるとメルク社Colorona Bronze Sparkleと比較して優れた光沢度を示す粉体であった。
【実施例3】
【0022】
粒径100〜2000μmまでの粒子を含み、平均粒子径が500μm程度である合成雲母120gを1.2リットルの水に加えて十分に分散させ、80℃まで昇温する。昇温した後に、塩酸1gを加えてpHを3とする。その後、塩化第二鉄85gを57gの水に溶解させ、これに硫酸11gを添加した水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを3に保ちながら、0.4g/minの割合でゆっくりと添加していく。全て添加し終わったら、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.5とする。その後、水洗によって塩を除去し、吸引濾過、乾燥し、次いで700℃で1時間焼成を行った。出来上がった粉体は光輝性の非常に強い、赤色のキラキラした着色真珠光沢顔料であった。図1にFE−SEM(S−4300、日立製作所製)、SEM(S−2100B、日立製作所製)での微構造観察の結果を示した。これによると、非常に微細な0.05μmの酸化鉄粒子が雲母表面上に均一に被覆されていた。ここで得られた粉体と、メルク社Colorona Sienna Sparkleとを、実施例1と同様の手順でニトロセルローズラッカーへと分散させ、グロスチェッカー(IG−300、堀場製作所製)で60°、20°で光沢度を評価した。結果を表1に示す。これによるとメルク社Colorona Sienna Sparkleと比較して優れた光沢度を示す粉体であった。
【実施例4】
【0023】
粒径100〜2000μmまでの粒子を含み、平均粒子径が500μm程度である合成雲母120gを1.2リットルの水に加えて十分に分散させ、80℃まで昇温する。昇温した後に、塩酸1gを加えてpHを3とする。その後、塩化第二鉄50gを33gの水に溶解させた溶液を0.4g/minの割合で添加していき、同時的に、クロム酸カリウム15gを水35gに溶解させた溶液を0.25g/minの割合で添加していく。このとき、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを3の一定に保つ。全て添加し終わったら、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.5とする。その後、水洗によって塩を除去し、吸引濾過、乾燥し、次いで700℃で1時間焼成を行った。出来上がった粉体は光輝性の非常に強い、金色のキラキラした着色真珠光沢顔料であった。ここで得られた粉体を実施例1と同様の手順でニトロセルローズラッカーへと分散させ、グロスチェッカー(IG−300、堀場製作所製)で60°、20°で光沢度を評価した。結果を表1に示す。これによるとメルク社Colorona Bronze Sparkleと比較して優れた光沢度を示す粉体であった。
【実施例5】
【0024】
粒径100〜2000μmまでの粒子を含み、平均粒子径が500μm程度である合成雲母120gを1.2リットルの水に加えて十分に分散させ、80℃まで昇温する。昇温した後に、塩酸1gを加えてpHを3とする。その後、塩化第二鉄50gを33gの水に溶解させた溶液を0.4g/minの割合で添加していき、同時的に、硫酸8gを水32gに溶解させた溶液を0.2g/minの割合で添加していく。このとき、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを3の一定に保つ。全て添加し終わったら、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.5とする。その後、水洗によって塩を除去し、吸引濾過、乾燥し、次いで700℃で1時間焼成を行った。出来上がった粉体は光輝性の非常に強い、金色のキラキラした着色真珠光沢顔料であった。ここで得られた粉体を実施例1と同様の手順でニトロセルローズラッカーへと分散させ、グロスチェッカー(IG−300、堀場製作所製)で60°、20°で光沢度を評価した。結果を表1に示す。これによるとメルク社Colorona Bronze Sparkleと比較して優れた光沢度を示す粉体であった。
【実施例6】
【0025】
実施例2記載の700℃での焼成を行わない以外は同様の手順を繰り返した。出来上がった粉体は光輝性の非常に強い、高彩度黄色着色真珠光沢顔料であった。図2にFE−SEM(S−4300、日立製作所製)での微構造観察の結果を示した。これによると、非常に微細な0.05μmの鉄化合物粒子が雲母表面上に均一に被覆されていた。ここで得られた粉体を実施例1と同様の手順でニトロセルローズラッカーへと分散させ、グロスチェッカー(IG−300、堀場製作所製)で60°、20°で光沢度を評価した。結果を表1に示す。これによるとメルク社Colorona Bronze Sparkleと比較して優れた光沢度を示す粉体であった。粉末X線回折装置(ミニフレックス、理学電機社製)を用いてこの鉄化合物の同定を試みたところ、この鉄化合物は黄色水酸化鉄であるゲーサイトを多く含むことが分かった。
【比較例1】
【0026】
硫酸を滴下鉄塩溶液に添加しない以外は実施例1記載手順を繰り返した。出来上がった粉体は鈍い光沢を放つ赤錆色で、僅かに銀色に光っていた。図3にSEM(S−2100B、日立製作所製)での表面の微構造観察の結果を示した。これによると雲母上には、非常に微細な0.05μmの酸化鉄微粒子と、その上に0.5μm大の粒子が平滑な被覆面を形成せず、疎らな状態で被覆されていた。ここで得られた粉体を実施例1と同様の手順でニトロセルローズラッカーへと分散させ、グロスチェッカー(IG−300、堀場製作所製)で60°、20°で光沢度を評価した。結果を表1に示す。これによると光沢度の低い粉体であった。
【比較例2】
【0027】
硫酸を塩酸に変える以外は実施例1記載手順を繰り返した。出来上がった粉体は鈍い光沢を放つ赤錆色で、僅かに銀色に光っていた。ここで得られた粉体を実施例1と同様の手順でニトロセルローズラッカーへと分散させ、グロスチェッカー(IG−300、堀場製作所製)で60°、20°で光沢度を評価した。結果を表1に示す。これによると光沢度の低い粉体であった。
【表1】

Colorona Sienna Sparkle、Colorona Bronze Sparkleは粒子径が10〜125μm程度の天然雲母に酸化鉄を被覆した真珠光沢顔料。(メルク社製)
【配合例1】
【0028】
本発明で得られた粉体を用いて、アイシャドーの製造を行った。
配合成分 配合量(質量%)
(1)タルク 残余
(2)セリサイト 6
(3)合成マイカ 12
(4)球状PMMA粉末 3
(5)板状硫酸バリウム 2
(6)本発明実施例1で得られた粉体 8
(7)酸化鉄 2
(8)窒化ホウ素 3
(9)スクワラン 2
(10)ジメチルポリシロキサン 2
(11)モノオレイン酸ソルビタン 1
(12)香料 適量
(13)防腐剤 適量
1〜8の各成分を混合したところへ、9〜13の各成分を混合したものを加えて加熱混合し、中皿に成型してアイシャドーを得た。
【配合例2】
【0029】
本発明で得られた粉体を用いて、口紅の製造を行った。
配合成分 配合量(質量%)
(1)ポリエチレンワックス 10
(2)セシレンワックス 3
(3)ラノリン 17
(4)ポリブテン 18
(5)オクチルメトキシシナメート 5
(6)ジメチルポリシロキサン 12
(7)エステル油 残余
(8)酸化チタン 5
(9)赤色201号 4.5
(10)赤色202号 1.1
(11)赤色223号 0.5
(12)球状ポリエチレン粉末 3.5
(13)本発明実施例2で得られた粉体 8
(14)酸化防止剤 適量
(15)香料 適量
1〜7を80℃に加熱溶解し、十分混合した。この液に8から11を加え、三本ロールにて混練した混練スラリーを80℃に加熱して12〜15を加え攪拌混合し、口紅成型容器に流し込み充填し、口紅を得た。
【配合例3】
【0030】
本発明で得られた粉体を用いて、固形パウダリーファンデーションの製造を行った。
配合成分 配合量(質量%)
(1)シリコーン処理セリサイト 15
(2)シリコーン処理合成マイカ 15
(3)シリコーン処理タルク 残余
(4)本発明実施例2で得られた粉体 15
(5)シリコーン処理球状シリカ 5
(6)窒化ホウ素 2
(7)シリコーン処理酸化チタン 10
(8)シリコーン処理微粒子酸化チタン 7
(9)シリコーン処理酸化鉄 4
(10)シリコーン処理酸化亜鉛 5
(11)スクワラン 3
(12)ジメチルポリシロキサン 4
(13)メチルフェニルポリシロキサン 3
(14)オクチルメトキシシナメート 2
(15)セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
(16)パラベン 適量
(17)酸化防止剤 適量
(18)香料 適量
1〜10の各成分を混合したところへ、11〜18の成分を混合したものを加えて攪拌混合し、さらに粉砕したものを容器に充填成型して、固形パウダリーファンデーションを得た。
【配合例4】
【0031】
本発明で得られた粉体を用いて、印刷用インキ化合物の製造を行った。
配合成分 配合量(質量%)
(1)アクリル樹脂 25
(2)ナフサ 30
(3)ブチルセロソルブ 32.5
(4)本発明実施例2で得られた粉体 12.5
上記成分を混合し、サンドミルで混錬して印刷用インキ組成物を得た。
【配合例5】
【0032】
本発明で得られた粉体を用いて、プラスチック着色組成物の製造を行った。
配合成分 配合量(質量%)
(1)ポリエチレン樹脂 97.5
(2)ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤) 0.5
(3)本発明実施例2で得られた粉体 2.0
上記成分をヘンシェルミキサーで混合し、得られた混合物を押出成形機で押出成形を行い着色ペレットを得た。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の真珠光沢顔料の表面微構造を観察した顕微鏡写真である。(実施例3)
【図2】本発明の真珠光沢顔料の表面微構造を観察した顕微鏡写真である。(実施例6)
【図3】本発明に係わる顔料の表面微構造を観察した顕微鏡写真である。(比較例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状基質の表面に、金属水酸化物又は金属酸化物を被覆してなり、該薄片状基質の粒子径が100〜2000μmであることを特徴とし、該薄片状基質1gを、ニトロセルローズラッカー10gに分散させたものを、白色艶紙上に0.1mmの厚さで塗布し、その光沢度が堀場製作所製グロスチェッカーIG−300で測定したとき、60°、20°の値が70以上となることを特徴とした、光輝性の高い真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項2】
前述の金属水酸化物又は金属酸化物の金属は、鉄であることを特徴とした、請求項1記載の真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項3】
特定の二価の陰イオンを反応系に添加することにより、粒子径100〜2000μmの薄片状基質表面に、金属水酸化物または金属酸化物を、高速かつ平滑に被覆することを可能とした請求項1記載の光輝性の高い真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項4】
前述陰イオン種は、硫酸イオン、クロム酸イオンであることを特徴とした請求項1記載の光輝性の高い真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項5】
粒径100〜2000μm程度の薄片状基質を水中によく分散させ、昇温し、これに、a)被覆する金属酸化物もしくは金属水酸化物の金属成分を含んだ金属塩溶液と、b)この添加金属塩水溶液中に含まれる金属イオン1molに対して、0.2〜0.8molとなるような量の陰イオンを、金属塩溶液と同時的、もしくは、前述の薄片状基質が分散したスラリーへ事前に混入させ、反応系全体をpH2〜5の範囲で一定に保ちながら、前記鉄塩溶液を前述の薄片状基質が分散したスラリーへ滴下し、滴下終了後、pHを5〜8とし、得られたスラリーを水洗、ろ過、乾燥することによって、薄片状基質上に非常に緻密で平滑な金属水酸化物、又は金属酸化物の被覆面を形成させることを可能とした、請求項1記載の光輝性の高い真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項6】
被覆した金属水酸化物を500〜900℃で20〜180分焼成することを特徴とした、請求項1記載の光輝性の高い真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項7】
前記真珠光沢顔料が、着色塗料、印刷インキ、プラスチック類、化粧品、セラミックス及びガラス用釉薬において使用されることを特徴とする請求項1記載の光輝性の高い真珠光沢顔料の製造方法。
【請求項8】
前記製造方法により製造されたことを特徴とする請求項1乃至請求項7記載の真珠光沢顔料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−291156(P2006−291156A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143184(P2005−143184)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(594053590)日本光研工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】