説明

光輝性塗膜の形成方法

【課題】 鱗片状光輝材を含有した水性ベースコート塗料を中塗りコート塗膜上にウエット・オン・ウエット塗装して光輝性塗膜を形成するに際し、プレヒートの低温化を図っても、ベースコート塗膜全体としてピンホール発生抑制と光輝感確保とを両立して得る。
【解決手段】 中塗りコート塗膜上に、第1水性ベースコート塗料と鱗片状光輝材を含有する第2水性ベースコート塗料とを順次用いてウエット・オン・ウエット塗装を行った後、所定温度のプレヒートを施し、その後に、中塗りコート塗膜と両水性ベースコート塗膜とを同時に乾燥硬化させて塗膜形成を行う光輝性塗膜の形成方法であって、前記プレヒートの温度を40〜60℃の温度範囲とし、第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率を第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率よりも高く設定するとともに、第2水性ベースコート塗料のチキソトロピーインデックス値を3以上に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光輝性塗膜の形成方法、特に、鱗片状光輝材を含有する水性ベースコート塗料を用いて中塗りコート塗膜上にウエット・オン・ウエット塗装を行い光輝性塗膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車等の車両の車体などに塗装を施す場合、いわゆる溶剤型塗料が多用されている。図4は、従来一般的な溶剤型塗料を用いた車体塗装工程の概略を示すフローチャートである。この図に示すように、従来では、まず電着塗装を施して焼付乾燥を行い(ステップS51及びS52)、次に、電着塗膜の上に中塗り塗装を施して焼付乾燥を行い(ステップS53及びS54)、更に、中塗り塗膜の上にベース塗装およびクリア塗装を順次施して焼付乾燥を行うようにしている(ステップS55,S56及びS57)。特に、ベース塗装後のクリア塗装は、所謂ウエット・オン・ウエット塗装で行われるのが普通である。
【0003】
このように、自動車の車体塗装では、通常、電着塗装と中塗り塗装とベース塗装(及びクリア塗装)が施され多層の塗膜が形成されるが、このうち中塗り塗装およびベース塗装については、塗装品質および塗装作業性を確保する観点から、所謂、溶剤型塗料を用いるのが従来一般的である。特に、ベース塗装では、その後にウエット・オン・ウエット塗装でクリア塗装を行うことが好ましいので、かかるウエット・オン・ウエット塗装が可能な溶剤型塗料がより好適に用いられる。
【0004】
かかる溶剤型塗料は、塗装品質が優れ、また塗装工程での作業性も良好であるが、多量の有機溶剤を含有しており、この有機溶剤が塗装工程等を通じて周囲へ排出されることになる。このため、近年では、中塗りコート塗料およびベースコート塗料について、溶剤型塗料から水性塗料への転換が積極的に図られている。特に、ベースコート塗料は、有機溶剤の含有率が高いので、優先的に水性塗料への切り換えが進められている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0005】
ところが、この水性塗料を用いて塗装を行う場合には、塗布された塗料内部の水分の蒸発を促進するために、塗装後に所謂プレヒートを行うことが必須である。
図5は、中塗りコート塗料は溶剤型塗料でベースコート塗料のみに水性塗料を適用した車体塗装工程の概略を示すフローチャートである。また、図6は、中塗りコート塗料およびベースコート塗料の両方に水性塗料を適用した車体塗装工程の概略を示すフローチャートである。
【0006】
これらのフローチャートから良く分かるように、水性塗料を用いた中塗り塗装工程(ステップS63)並びにベース塗装工程(ステップS65及びステップS76)の後には、塗膜内部の水分の蒸発を促進するために、例えば所定温度の温風を吹き付けるプレヒート工程(ステップS66,ステップS74及びステップS77)が新たに設けられる。従って、このプレヒート工程で温風を供給するために、追加的なエネルギ消費が必要となる。
【0007】
尚、図5及び図6の例では、ベース塗装の場合、ウエット・オン・ウエット塗装でクリア塗装を行うために、プレヒート工程の後にクーリング工程(ステップS67及びステップS78)が更に必要とされるので、追加的な消費エネルギもより一層増大することになる。
すなわち、プレヒート工程後に、例えば40℃程度以上の塗膜(例えばベース塗膜)上に溶剤型塗料(例えばクリアコート塗料)を用いてウエット・オン・ウエット塗装を行った場合、溶剤型塗料中の溶剤が急激に蒸発して塗料の粘度が上昇するため、流動性が低下して塗膜の平滑性が損なわれることが知られている。プレヒート工程後のクーリングは、かかる不具合の発生を防止することを基本的な目的として行われるものである
【特許文献1】特開平5−68930号公報
【特許文献2】特開2004−8856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
周知のように、近年では、環境問題への関心の高まりに応じて、塗装工程についてもより一層の省エネルギ化が求められており、水性塗料を用いた塗装においても、消費エネルギ低減の観点から、プレヒートをできるだけ低温で行えるようにし、更にはクーリング工程を削減できるようにすることが望まれている。
しかしながら、従来の水性塗料(特に、水性ベースコート塗料)では、単にプレヒート温度を低くしたのでは、塗膜内の水分の蒸発が不十分になり、後続する焼付乾燥工程で残存した水分が突沸しピンホール等の塗膜欠陥を生じさせる恐れがある。
【0009】
このようなピンホールの発生を抑制するには、水性塗料のハイソリッド化、つまり、水性塗料中の固形分の含有率を高めることが有効であることが知られている。
図1には、塗料中の固形分の含有率(重量%)がピンホールの発生密度に及ぼす影響が模式的に示されている。この図から良く分かるように、塗料固形分が増え含有率が高くなるほどピンホール密度が低下し、ピンホールの発生が抑制される。
【0010】
ところで、車体に所謂メタリック塗装を行う場合には、例えばアルミフレーク等の鱗片状(フレーク状)光輝材を含有するベースコート塗料を用いて塗装が行われるが、このメタリック塗装の光輝感は、一般に、塗料のハイソリッド化(水性塗料中の固形分の含有率の上昇)に伴って低下することが知られている。
前記図1には、塗料中の固形分の含有率(重量%)がメタリック塗膜の光輝感に及ぼす影響が併せて模式的に示されており、塗料固形分が増え含有率が高くなるほど塗膜の光輝感が低下し、塗装外観が悪影響を受けることが分かる。
【0011】
これは、塗装性を確保する観点から塗料全体としての粘度を維持し、その一方で固形分の含有率を高めるには、塗料中の樹脂成分の粘度を低くせざるを得ず、塗料のチキソトロピーインデックス値(所謂TI値)が低くなる関係上、アルミフレークの配向が乱れて光輝感が損なわれるのである。
【0012】
この発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたもので、中塗り塗膜上に水性ベースコート塗料によりウエット・オン・ウエット塗装を行う場合について、プレヒートの温度を極力低く設定した場合でも、ピンホールの発生抑制と塗装外観の確保とを両立して達成できるようにすることを、基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者は、上記の目的を達成するために研究開発を重ねる中で、ベース塗装工程が一般に2段階(2ステージ)に分けて行われることに着目し、最初に行われる第1ステージと後続する第2ステージとで適用する塗料の特性を変えることで異なる機能を持たせ、プレヒートの温度を極力低く設定した場合でも、ピンホールの発生抑制と塗装外観の確保(つまり光輝感の確保)とを両立させることを考案した。
すなわち、ベース塗装工程の第1ステージでは、比較的ハイソリッドの(固形分の含有率が比較的高い)水性ベースコート塗料を用いることでピンホールの発生を抑制し、第2ステージでは比較的ローソリッドの(固形分の含有率が比較的低い)水性ベースコート塗料を用いることで良好な光輝感の確保を図ることができることを見出した。
【0014】
図2は、本発明方法において塗料の固形分の含有率がピンホール密度および光輝感に及ぼす影響を模式的に示すグラフである。この例では、前述のように、ベース塗装工程の第1ステージ(1st)では比較的ハイソリッドの(固形分の含有率が比較的高い)水性ベースコート塗料を用い、第2ステージ(2nd)では比較的ローソリッドの(固形分の含有率が比較的低い)水性ベースコート塗料を用いている。
図2のグラフから分かるように、第1及び第2ステージの水性ベースコート塗料をこのように組み合わせて用いることにより、ピンホールの発生を効果的に抑制しつつ、光輝感の低下を大幅に抑制し、非常に良好な塗装外観を確保することができ、ピンホール密度を目標値以下とし、且つ、目標値以上の光輝感を達成することができた。
【0015】
そこで、本願請求項1の発明(第1の発明)に係る光輝性塗膜の形成方法は、中塗りコート塗膜上に、第1水性ベースコート塗料と鱗片状光輝材を含有する第2水性ベースコート塗料とを順次用いてウエット・オン・ウエット塗装を行った後、所定温度のプレヒートを施し、その後に、前記中塗りコート塗膜と両水性ベースコート塗膜とを同時に乾燥硬化させて塗膜形成を行うようにした光輝性塗膜の形成方法であって、前記プレヒートの温度が40〜60℃の温度範囲に設定されており、前記第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率が前記第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率よりも高く設定されるとともに、前記第2水性ベースコート塗料のチキソトロピーインデックス値は3以上である、ことを特徴としたものである。
【0016】
ここに、第1及び第2水性ベースコート塗料を用いたウエット・オン・ウエット塗装後のプレヒート温度の下限値を40℃としたのは、プレヒート温度がこの値を下回ると、水性塗料でなる第1及び第2のベースコート塗料の塗膜内の水分を蒸発させるプレヒート効果(つまりベースコート塗料の乾燥性)を確保して良好な塗装仕上がり性を得ることが難しいからである。一方、前記プレヒート温度の上限値を60℃としたのは、プレヒート温度がこの値を上回ると、ベース塗装後に更に上塗り塗装(例えばクリアコート塗料を用いたクリア塗装)を行う場合に、クーリングなしで良好な塗装仕上がり性を得ることが難しいからである。
また、第2水性ベースコート塗料のチキソトロピーインデックス値(TI値)の下限値を3としたのは、TI値がこの値を下回ると、第2水性ベースコート塗膜中の鱗片状光輝材の配向が乱れて光輝感が損なわれるからである。
【0017】
また、本願請求項2の発明(第2の発明)は、前記第1の発明において、各水性ベースコート塗膜の膜厚は5〜10μmの範囲であることを特徴としたものである。
【0018】
ここに、各水性ベースコート塗膜の膜厚の下限値を5μmとしたのは、前記膜厚がこの値を下回ると、下地塗装を覆い隠す塗膜としての隠蔽性が得られないからである。また、前記各水性ベースコート塗膜の膜厚の上限値を10μmとしたのは、前記膜厚がこの値を上回ると、塗膜内の水分を十分に蒸発させることが難しくなり、後続する焼付乾燥工程で残存した水分が突沸しピンホール等の塗膜欠陥を生じさせる恐れがあるからである。
【0019】
更に、本願請求項3の発明(第3の発明)は、前記第1又は第2の発明において、前記第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率は35重量%以上であることを特徴としたものである。
【0020】
ここに、第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率の下限値を35重量%としたのは、前記含有率がこの値を下回ると、第1水性ベースコート塗料のハイソリッド化が不十分となり、水分の蒸発に関してより条件が不利な下層のベースコート塗膜について、ピンホールの発生抑制効果が十分に得られなくなるからである。
【0021】
また更に、本願請求項4の発明(第4の発明)は、前記第1〜第3の発明の何れか一において、前記第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率は20重量%以上であることを特徴としたものである。
【0022】
ここに、第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率の下限値を20重量%としたのは、前記含有率がこの値を下回ると、第2水性ベースコート塗料のハイソリッド化が不十分となり、上層のベースコート塗膜について、ピンホールの発生を十分に抑制できなくなるからである。
【0023】
また更に、本願請求項5の発明(第5の発明)は、前記第1〜第4の発明の何れか一において、前記第1水性ベースコート塗料は所定色の着色塗料であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0024】
本願の第1の発明によれば、第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率を第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率よりも高く設定したことにより、水分の蒸発に関して一般に条件が不利な下層のベースコート塗膜について、水分の蒸発に関して一般に条件が有利な上層のベースコート塗膜に比し、より効果的にピンホールの発生を抑制することができ、ベースコート塗膜全体として、効率よくピンホールの発生を抑制できる。また、第2水性ベースコート塗料のチキソトロピーインデックス値(TI値)を3以上としたことにより、第2水性ベースコート塗膜中の鱗片状光輝材の配向が乱れて光輝感が損なわれることを、有効に抑制できる。
すなわち、中塗り塗膜上に水性ベースコート塗料によりウエット・オン・ウエット塗装を行う場合について、プレヒートの温度を低く設定して塗装工程での消費エネルギの低減を図る場合でも、ベースコート塗膜全体として、ピンホールの発生抑制と光輝感の確保とを両立して達成することができる。
【0025】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には前記第1の発明と同様の作用効果を奏することができる。特に、各水性ベースコート塗膜の膜厚を5〜10μmの範囲としたことにより、各水性ベースコート塗膜について、ピンホールの発生を効果的に抑制しつつ、下地塗装を覆い隠す塗膜としての隠蔽性を確保することも可能となる。
【0026】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には前記第1又は第2の発明と同様の作用効果を奏することができる。特に、前記第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率を35重量%以上としたことにより、第1水性ベースコート塗料の十分なハイソリッド化を達成し、水分の蒸発に関してより条件が不利な下層のベースコート塗膜について、十分なピンホール発生抑制効果を得ることができる。
【0027】
また更に、本願の第4の発明によれば、基本的には、前記第1〜第3の発明の何れか一と同様の作用効果を奏することができる。特に、前記第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率を20重量%以上としたことにより、第2水性ベースコート塗料を十分にハイソリッド化し、上層のベースコート塗膜について、ピンホールの発生を十分に抑制することができる。
【0028】
また更に、本願の第5の発明によれば、基本的には、前記第1〜第4の発明の何れか一と同様の作用効果を奏することができる。特に、前記第1水性ベースコート塗料は所定色の着色塗料であるので、下層のベースコート塗膜について、発色性を確保し、下地塗装の中塗り塗膜に対し確実な隠蔽性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本実施形態の光輝性塗膜の形成方法に係る所謂メタリック塗装の塗装工程について説明する。
この塗装工程では、図3のフローチャートにその概略を示すように、まず電着塗装を施して焼付乾燥を行い(ステップS1及びS2)、次に、電着塗膜の上に好ましくは水性中塗りコート塗料を用いて中塗り塗装を施し(ステップS3)、その後に、塗膜内部の水分の蒸発を促進するために例えば所定温度の温風を吹き付けるプレヒートを行う(ステップS4)。
【0030】
そして、このプレヒート工程後に、第1の水性ベースコート塗料と鱗片状光輝材(本実施形態では、所謂アルミフレーク)を含有する第2の水性ベースコート塗料とを順次用いて中塗りコート塗膜上にウエット・オン・ウエット塗装を行い(ベース塗装:ステップS5)、更に、プレヒートを行う(ステップS6)。尚、このステップS5のベース塗装については、以下に詳述する。
その後、ベースコート塗膜上にクリア塗装を施して焼付乾燥を行う(ステップS7及びS8)。これにより、中塗りコート塗膜とベースコート塗膜について、同時に焼付乾燥が行われる。
【0031】
本実施形態では、水性ベースコート塗料を中塗りコート塗膜上にウエット・オン・ウエット塗装して光輝性塗膜を形成する場合について、ベース塗装工程が一般に2段階(2ステージ)に分けて行われることに着目し、最初に行われる第1ステージと後続する第2ステージとで適用する塗料の特性を変えることで異なる機能を持たせ、前記ステップS6のプレヒートの温度を極力低く設定した場合でも、ピンホールの発生抑制と塗装外観の確保(つまり光輝感の確保)とを両立できるようにした。
【0032】
すなわち、ベース塗装工程の第1ステージでは、比較的ハイソリッドの(固形分の含有率が比較的高い)水性ベースコート塗料を用いることで、水分の蒸発に関して一般に条件が不利な下層のベースコート塗膜について、より効果的にピンホールの発生を抑制し、第2ステージでは比較的ローソリッドの(固形分の含有率が比較的低い)水性ベースコート塗料を用いることで光輝感の低下を回避する。これにより、プレヒートの温度を低く設定して塗装工程での消費エネルギの低減を図る場合でも、ベースコート塗膜全体として、ピンホールの発生抑制と光輝感の確保とを両立して達成できるようにしている。
【0033】
そして、本発明の効果を検証するために種々の試験を行った。
以下、この試験について説明する。まず、試験で用いる各種塗料の調製方法について説明する。
本実施形態に係る試験では、電着塗装を施した電着板に中塗り塗装,上塗り塗装(ベース塗装),クリア塗装を順次施す塗装が行われる。このうち、ベース塗装には、第1ステージ(下層)用の第1水性ベースコート塗料と第2ステージ(上層)用の第2水性ベースコート塗料の特性が異なる2つの水性ベースコート塗料を用いた。以下に詳述するように、これら水性ベースコート塗料としては、より具体的には、アクリルエマルションを配合した水性塗料を用いた。
【0034】
まず、この水性ベースコート塗料に用いるアクリルエマルションの製造方法について説明する。尚、かかるアクリルエマルションの製造方法は、例えば特開2001−240791号公報に開示されるように、公知である。
本試験では、水性ベースコート塗料に配合されるアクリルエマルションとして、タイプa及びタイプbの2種類のものを用意した。まず、タイプaのもの(アクリルエマルションa)について、その製造方法を説明する。
【0035】
<水性ベースコート塗料用のアクリルエマルションaの製造>
アクリルエマルションaの製造に際しては、まず、反応容器に脱イオン水126重量部を加え、これを窒素気流中で混合攪拌しながら80℃に昇温させた。続いて、以下の組成を有するモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.3重量部及び脱イオン水10重量部からなる開始剤溶液と、を2時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間にわたって同温度で熟成した。
【0036】
<アクリルエマルションaに用いるモノマー乳化物の組成>
・メタクリル酸メチル:10.22重量部
・アクリル酸エチル:73.43重量部
・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:9.28重量部
・アクリルアミド:4.00重量部
・メタクリル酸:3.07重量部
・アクアロンHS−10:0.5重量部(第一工業製薬社製)
・アデカリアソープNE−20:0.5重量部(旭電化社製)
・脱イオン水:100重量部
【0037】
続いて、これを40℃まで冷却し、400メッシュのフィルタで濾過した後、脱イオン水67.1重量部及びジメチルアミノエタノール0.32重量部を加えてpH6.5に調整し、平均粒子径250nm,不揮発分25%のアクリルエマルションaを得た。
【0038】
また、タイプbのアクリルエマルション(アクリルエマルションb)の製造方法は、次の通りである。
<水性ベースコート塗料用のアクリルエマルションbの製造>
アクリルエマルションbの製造に際しては、まず、反応容器に脱イオン水126.5重量部を加え、これを窒素気流中で混合攪拌しながら80℃に昇温させた。続いて、以下の組成を有するモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.24重量部及び脱イオン水10重量部からなる開始剤溶液と、を2時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間にわたって同温度で熟成した。
【0039】
<アクリルエマルションbに用いるモノマー乳化物の組成>
・アクリル酸メチル:30.61重量部
・アクリル酸エチル:37.97重量部
・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:7.42重量部
・アクリルアミド:4.00重量部
・アクアロンHS−10:0.5重量部(第一工業製薬社製)
・アデカリアソープNE−20:0.5重量部(旭電化社製)
・脱イオン水:80重量部
【0040】
更に、次のような組成を有するモノマー乳化剤と、過硫酸アンモニウム0.06重量部及び脱イオン水10重量部からなる開始剤溶液と、を80℃で0.5時間にわたり並行して反応溶液に滴下した。滴下終了後、2時間にわたって同温度で熟成することで、アクリルエマルションbを得た。
<モノマー乳化剤(第2段階目)の組成>
・アクリル酸エチル:15.07重量部
・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:1.86重量部
・メタクリル酸:3.07重量部
・アクアロンHS−10:0.2重量部(第一工業製薬社製)
・脱イオン水:10重量部
【0041】
そして、以上の2種類のアクリルエマルションa,bを用いて、タイプ1A〜タイプ1Cの3種類の第1水性ベースコート塗料と、タイプ2A〜タイプ2Dの4種類の第2水性ベースコート塗料とを用意した。尚、かかる水性塗料の製造方法は、例えば特開2001−240791号公報に開示されるように、公知である。
【0042】
<第1,第2水性ベースコート塗料の調製>
第1,第2水性ベースコート塗料は、アクリルエマルションa又はb,アミノ樹脂(例えば三井サイアナミド(株)製のサイメル327),光輝性顔料(例えば旭化成社製のアルミペーストMH8801),表面調整剤(例えばエアープロダクツ社製のサーフィノール440)、更に、ジメチルアミノエタノール及びイオン交換水を、それぞれ下記表1に示す所定の重量部ずつ添加し、均一に分散することで得た。
【0043】
【表1】

【0044】
第1水性ベースコート塗料は、タイプ1A〜タイプ1Cの3種類全てについてアクリルエマルションaを用いた。また、第2水性ベースコート塗料は、タイプ2Cのみアクリルエマルションaを用い、他の全てのタイプ(タイプ2A,2B及び2D)についてはアクリルエマルションbを用いた。
前記光輝性顔料は、鱗片状をなす発色材としての光輝材を含有している。尚、これに限定されることなく、光輝性顔料は、発色材として、光輝材の代わりに、光干渉材を含有しても良く、あるいは、光輝材及び光干渉材の両方を含有しても良い。
【0045】
各水性ベースコート塗料の固形分の含有率およびチキソトロピーインデックス値(TI値)を表1に併せて示す。
第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率について、タイプ1A及び1Bは共に35重量%を上回っているが、タイプ1Cは35重量%を下回っている。また、第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率について、タイプ2A,2B及び2Cは全て20重量%を上回っているが、タイプ2Dは20重量%を下回っている。更に、何れの第1水性ベースコート塗料についても、その固形分の含有率は、第2水性ベースコート塗料の含有率を上回っている。
【0046】
また、第2水性ベースコート塗料のTI値について、タイプ2A,2B及び2Dは全て3以上であるが、タイプ2Cは3を下回っている。
尚、かかるTI値の測定は、JIS K 5400 4.5.3(粘度:回転粘度計法)に規定する方法で行い、次の計算式により算出した。
・TI値=6rpmにおける見掛けの粘度/60rpmにおける見掛けの粘度
【0047】
本実施形態では、少なくともベースコート塗膜の下層部分を形成する第1水性ベースコート塗料は所定色の着色塗料とされている。つまり、下層のベースコート塗膜について、発色性を確保して下地塗装である中塗り塗膜に対し確実な隠蔽性を得ることができるようになっている。また、より好ましくは、ベースコート塗膜の上層部分を形成する第2水性ベースコート塗料についても、前記第1水性ベースコート塗料と同色の着色塗料とすることにで、中塗り塗膜に対する隠蔽性をより確かなものとすることができる。
【0048】
尚、第1及び第2水性ベースコート塗料の塗料色が無彩色の場合には、良好な発色性を確保する観点から、両塗料色の明度差ΔVが±0.2以内で、且つ、彩度差ΔCが±0.2以内であることが好ましい。
また、第1及び第2水性ベースコート塗料の塗料色が有彩色の場合には、良好な発色性を確保する観点から、両塗料色の明度差ΔVが±0.2以内、且つ、彩度差ΔCが±0.4以内で、且つ、両塗料色の色相差ΔHが±4/C以内(C:第2水性ベースコート塗料の彩度)であることが好ましい。
【0049】
次に、中塗りコート塗料について説明する。
本実施形態では、より好ましくは、中塗りコート塗料にも水性塗料が用いられている。この中塗りコート塗料の調製方法は以下の通りである。尚、かかる水性塗料の調製方法は、例えば特開2002−146282号公報に開示されるように、公知である。
【0050】
<水性中塗りコート塗料の調整>
中塗りコート塗料は、1種類のみであり、以下の各成分をそれぞれ所定の重量部ずつ添加し、均一分散することによって調製した。
・ポリエステル樹脂:30重量部
・アミノ樹脂:25重量部
・アクリル樹脂:15重量部
・ウレタン変性ポリエステル樹脂:30重量部
・二酸化チタン:60重量部
・カーボンブラック:1重量部
・アクリル系表面調整剤:0.2重量部
・イオン交換水:161.2重量部
【0051】
前記水性中塗りコート塗料の調製に用いたポリエステル樹脂,アミノ樹脂,アミド基含有アクリル樹脂,ウレタン変性ポリエステル樹脂の樹脂特性は、以下の通りであった。
・ポリエステル樹脂:酸価50,水酸基価120,数平均分子量2000のもの
・アミノ樹脂:メラミン樹脂(サイメル327:三井サイアナミッド社製)
・アクリル樹脂:酸価50,水酸基価150,数平均分子量5000のもので、アミド基含有エチレン性モノマー20質量%,酸性基含有エチレン性モノマー10質量%,水酸基含有エチレン性モノマー50質量%及び他のエチレン性モノマー50質量%の共重合体
・ウレタン変性ポリエステル樹脂:pHが約7.5であるコロイダル分散ウレタン変性ポリエステル樹脂
【0052】
また、前記第1及び第2水性ベースコート塗料を順次用いたベース塗装後に、ウエット・オン・ウエット塗装にて塗装されるクリアコート塗料としては、以下のもの(1種類のみ)を用いた。
・クリアコート塗料:マックフローO−1600クリア(日本ペイント社製)
【0053】
本実施形態に係る各試験おいて上述の各種塗料を試験塗装する塗装板は、以下のようにして作製した。
<電着板の作製>
まず、電着塗装を施す電着板を作製した。
:リン酸亜鉛処理した厚みが0.7mmで、縦100mm,横300mmのダル鋼板を用意し、これにPN120M(日本ペイント社製)を乾燥膜厚が20μmになるように電着塗装を施し、160℃で30分間にわたって焼付乾燥した。
【0054】
<中上塗り板の作製>
上記のようにして得られた電着板に、試験条件に応じて、中塗り塗装,ベース塗装,クリア塗装を行うことで中上塗り板を得た。各塗装工程での塗装条件は、次の通りとした。
・中塗り塗装:電着塗膜上に前記の水性中塗りコート塗料を乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、60℃で2分間プレヒートした。
【0055】
・ベース塗装:中塗りコート塗膜上に、ウエット・オン・ウエット塗装にて、次のようにして第1水性ベースコート塗料(第1ステージ)および第2水性ベースコート塗料(第2ステージ)を順次塗装し、60℃で2分間プレヒートした。
1)第1ステージ:タイプ1A〜1Cの第1水性ベースコート塗料を用い、後述する比較例5及び6以外のものについては、乾燥膜厚が5μm又は10μmになるように塗装した。比較例5,6については、乾燥膜厚がそれぞれ3μm,12μmになるように塗装した。
2)第2ステージ:タイプ2A〜2Dの第2水性ベースコート塗料を用い、後述する比較例1及び2以外のものについては、乾燥膜厚が5μm又は10μmになるように塗装した。比較例1,2については、乾燥膜厚がそれぞれ3μm,12μmになるように塗装した。
【0056】
・クリア塗装:ベースコート塗膜上に、ウエット・オン・ウエット塗装にて、溶剤型の前記クリアコート塗料を乾燥膜厚が35μmになるように塗装し、10分間室温にて放置した後、140℃で20分間にわたって焼付乾燥した。
すなわち、ベース塗装およびクリア塗装は共にウエット・オン・ウエット塗装であり、所謂、3Wetタイプの塗装とした。
【0057】
このようにして得られた中上塗り板について、その塗装面の光輝感,ピンホール密度を含む仕上がり性及び隠蔽性の評価を行った。各評価の仕方は、具体的には以下による。
<光輝感の評価>
光輝感の評価には、変角光度計MA68(X−Rite社製)を用いて、中上塗り板塗装面のフロップインデックス(FI)を光輝感として測定した。
そして、フロップインデックスが12以上(12〜15)であった場合を良好(○)とし、フロップインデックスが12未満(8〜12)であった場合を良好でない(×)としてランク付けを行い評価した。
【0058】
<仕上がり性の評価>
ピンホール密度を含む仕上がり性の評価には、ウェーブスキャン(Wavescan)DOI(BYK社製)を用いて、中上塗り板塗装面のWa/Wd値を仕上がり性として測定した。
そして、Wa/Wd値が15未満(10〜15)であった場合を良好(○)とし、Wa/Wd値が15以上(15〜30)であった場合を良好でない(×)としてランク付けを行い評価した。
【0059】
また、隠蔽性の評価は、JIS K 5400 7.3.2(隠ぺい力:見本比較法)に規定する方法で試験片を作成して評価試験を行い、白地と黒字上の明るさに違和感が無い場合を良好(○)とし、白地と黒字上の明るさに違和感が有る場合を良好でない(×)としてランク分けを行い評価した。尚、この塗膜の隠蔽性とは、要するに、下層が透けて見えない程度を示す指標である。
【0060】
本実施形態に係る試験では、前述のようにして調製した3種類の第1水性ベースコート塗料(タイプ1A〜1C)と4種類の第2水性ベースコート塗料(タイプ2A〜2D)とを用いてベース塗装を行い、本発明実施例1〜16と比較例1〜7の計23通りの例について、評価試験を行った。尚、この評価試験において、中塗りコート塗料(水性塗料),クリア塗料(溶剤型)及び塗装方法(3Wet)、更には、中塗り塗装後およびベース塗装後の各プレヒート条件ならびにクリア塗装後の焼付乾燥条件については、前述のように、全ての実施例および比較例にわたって共通である。試験結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表2の結果から良く分かるように、本発明実施例1〜16では、第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率が35重量%以上(35又は40重量%)で、且つ、第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率が20重量%以上(20又は25重量%)であり、しかも、固形分の含有率について第1水性ベースコート塗料の方が第2水性ベースコート塗料よりも高く設定されている。また、第2水性ベースコート塗料のTI値が3以上(3.5又は4)で、各水性ベースコート塗膜の膜厚は5〜10μmの範囲(5又は10μm)である。
このように設定された本発明実施例1〜16については、何れも、光輝感,塗装仕上がり性および隠蔽性の全てにわたって良好な結果(○)が得られている。
【0063】
一方、比較例1では、第2水性ベースコート塗膜の膜厚が3μmと(5μmよりも)薄く、隠蔽性が不十分な結果(×)となっている。
これは、第1水性ベースコート塗膜の膜厚が5μmと規定値を満たしていても、第2水性ベースコート塗膜の膜厚が薄すぎるので、ベースコート塗膜全体としての膜厚が不足し、十分な隠蔽性が得られないからであると考えられる。
【0064】
また、比較例2では、第2水性ベースコート塗膜の膜厚が12μmと(10μmよりも)厚く、塗装仕上がり性が不十分な結果(×)となっている。
これは、第2水性ベースコート塗膜の膜厚が厚すぎるので、塗膜内の水分を十分に蒸発させることが難しくなり、後続する焼付乾燥工程で残存した水分が突沸しピンホール等の塗膜欠陥を生じ易くなるからであると考えられる。
【0065】
更に、比較例3では、第2水性ベースコート塗料のTI値が1.8と(3よりも)低く、光輝感が不十分な結果(×)となっている。
これは、第2水性ベースコート塗料のTI値が低すぎるので、第2水性ベースコート塗膜中の鱗片状光輝材の配向が乱れて光輝感が損なわれるからであると考えられる。
【0066】
また更に、比較例4では、第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率が18重量%と(20重量%よりも)低く、塗装仕上がり性が不十分な結果(×)となっている。
これは、第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率が低すぎるので、当該第2水性ベースコート塗料のハイソリッド化が不十分となり、上層のベースコート塗膜について、ピンホールの発生を十分に抑制できなくなるからであると考えられる。
【0067】
また更に、比較例5では、第1水性ベースコート塗膜の膜厚が3μmと(5μmよりも)薄く、隠蔽性が不十分な結果(×)となっている。
これは、第2水性ベースコート塗膜の膜厚が5μmと規定値を満たしていても、第1水性ベースコート塗膜の膜厚が薄すぎるので、ベースコート塗膜全体としての膜厚が不足し、十分な隠蔽性が得られないからであると考えられる。
【0068】
また更に、比較例6では、第1水性ベースコート塗膜の膜厚が12μmと(10μmよりも)厚く、塗装仕上がり性が不十分な結果(×)となっている。
これは、第1水性ベースコート塗膜の膜厚が厚すぎるので、塗膜内の水分を十分に蒸発させることが難しくなり、後続する焼付乾燥工程で残存した水分が突沸しピンホール等の塗膜欠陥を生じ易くなるからであると考えられる。
【0069】
また更に、比較例7では、第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率が30重量%と(35重量%よりも)低く、塗装仕上がり性が不十分な結果(×)となっている。
これは、第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率が低すぎるので、当該第1水性ベースコート塗料のハイソリッド化が不十分となり、水分の蒸発に関してより条件が不利な下層のベースコート塗膜について、ピンホールの発生抑制効果が十分に得られなくなるからであると考えられる。
【0070】
以上、説明したように、本実施形態によれば、第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率を第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率よりも高く設定したことにより、水分の蒸発に関して一般に条件が不利な下層のベースコート塗膜について、水分の蒸発に関して一般に条件が有利な上層のベースコート塗膜に比し、より効果的にピンホールの発生を抑制することができ、ベースコート塗膜全体として、効率よくピンホールの発生を抑制できる。また、第2水性ベースコート塗料のチキソトロピーインデックス値(TI値)を3以上としたことにより、第2水性ベースコート塗膜中の鱗片状光輝材の配向が乱れて光輝感が損なわれることを有効に抑制できる。
すなわち、中塗り塗膜上に水性ベースコート塗料によりウエット・オン・ウエット塗装を行う場合について、プレヒートの温度を低く設定して塗装工程での消費エネルギの低減を図る場合でも、ベースコート塗膜全体として、ピンホールの発生抑制と光輝感の確保とを両立して達成することができるのである。
【0071】
尚、以上の実施形態は、中塗りコート塗料に水性塗料を用いたものであったが、この代わりに、中塗りコート塗料として溶剤型のものを用いてもよい。
【0072】
このように、本発明は、例示された実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明では、鱗片状光輝材を含有する水性ベースコート塗料を用いて中塗りコート塗膜上にウエット・オン・ウエット塗装を行い光輝性塗膜を形成する場合について、プレヒートの温度を低く設定して塗装工程での消費エネルギの低減を図る場合でも、ベースコート塗膜全体として、ピンホールの発生抑制と光輝感の確保とを両立して達成することができ、例えば自動車の車体にメタリック塗装を施す場合などにおいて有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】従来の水性ベースコート塗料を用いた場合における塗料固形分の含有率がピンホール密度およびメタリック塗装の光輝感に及ぼす影響を模式的に示すグラフである。
【図2】本発明に係る水性ベースコート塗料を用いた場合における塗料固形分の含有率がピンホール密度およびメタリック塗装の光輝感に及ぼす影響を模式的に示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態の光輝性塗膜の形成方法に係る塗装工程の概略を示すフローチャートである。
【図4】溶剤型塗料を用いた従来の車体塗装工程の概略を示すフローチャートである。
【図5】中塗りコート塗料は溶剤型塗料でベースコート塗料のみに水性塗料を適用し、プレヒート後にクーリングを行う車体塗装工程の概略を示すフローチャートである。
【図6】中塗りコート塗料およびベースコート塗料の両方に水性塗料を適用し、プレヒート後にクーリングを行う車体塗装工程の概略を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中塗りコート塗膜上に、第1水性ベースコート塗料と鱗片状光輝材を含有する第2水性ベースコート塗料とを順次用いてウエット・オン・ウエット塗装を行った後、所定温度のプレヒートを施し、その後に、前記中塗りコート塗膜と両水性ベースコート塗膜とを同時に乾燥硬化させて塗膜形成を行うようにした光輝性塗膜の形成方法であって、
前記プレヒートの温度が40〜60℃の温度範囲に設定されており、
前記第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率が前記第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率よりも高く設定されるとともに、
前記第2水性ベースコート塗料のチキソトロピーインデックス値は3以上である、
ことを特徴とする光輝性塗膜の形成方法。
【請求項2】
各水性ベースコート塗膜の膜厚は5〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の光輝性塗膜の形成方法。
【請求項3】
前記第1水性ベースコート塗料の固形分の含有率は35重量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光輝性塗膜の形成方法。
【請求項4】
前記第2水性ベースコート塗料の固形分の含有率は20重量%以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の光輝性塗膜の形成方法。
【請求項5】
前記第1水性ベースコート塗料は所定色の着色塗料であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一に記載の光輝性塗膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−263520(P2006−263520A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82148(P2005−82148)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】