説明

光送信装置、及び光信号の制御方法

【課題】パイロット信号を用いずに消光比を制御する。
【解決手段】A/D変換器37は、制御データを制御信号に変換し、LDD12は、ビット列である送信情報に応じた駆動電流を制御信号に基づいて生成し、LD14は駆動電流の入力を受けて光信号を送信し、MPD16は、LD14から送信された光信号を電圧信号に変換し、フィルタ30はこの電圧信号から一部の周波数帯域を抽出する。振幅検出部32は、フィルタ30により抽出された電圧信号の振幅を検出し、比較部38は、検出された振幅に基づく比較対象振幅と、基準振幅と、を比較し、出力コントローラ40は、比較結果に基づいて制御データのデータ値を所定値ずつ増加又は減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信装置、及び光信号の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーダイオード(LD)を光送信装置の送信モジュールに用いているものがある。こうした光送信装置のデータ通信には、LDにバイアス電流を供給し、その電流量を伝送データに応じて変調するベースバンド方式の通信方式が用いられることがある。
【0003】
LDは温度変化や経年劣化によって、駆動電流と光出力との関係を表したIL特性が変化してしまうため、通信品質を安定化させるためには、0/1の光信号の出力強度比を示す消光比(ER)を一定に制御する回路が必要となる。そこで従来では、下記の特許文献1に記載されているように、伝送信号に当該伝送信号よりも十分に低周波数かつ小振幅のパイロット信号を合波してLDから光信号を送信するとともに、当該送信された光信号を受光し、受光した光信号の中からパイロット信号を検出して、当該検出したパイロット信号の振幅強度に応じて消光比を制御する回路を設けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−169022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、送信信号に合波するパイロット信号の振幅を小さくすると、LDのIL特性の変化点付近では光信号の振幅変化の影響によりパイロット信号の振幅が精度良く検出できず、これに対してパイロット信号の振幅を大きくすると送信信号が乱れてしまい、消光比の制御を精度良く行えないことがあった。
【0006】
本発明は、パイロット信号を用いずに消光比を制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る光送信装置は、制御データのデータ値に応じた制御信号を生成する制御信号生成手段と、ビット列である送信データに応じた駆動電流を、前記制御信号に基づいて生成する駆動回路と、前記駆動電流に基づいて前記駆動電流に応じた光信号を送信する光送信素子と、前記光送信素子から送信された光信号を受光する受光素子と、前記受光素子により受光された光信号に基づいて得られた電圧信号から一部の周波数帯域を抽出するフィルタと、前記フィルタにより抽出された電圧信号の振幅を検出する振幅検出手段と、前記振幅検出手段により検出された振幅に基づく比較対象振幅と、基準振幅と、を比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記制御データのデータ値を、繰り返し、予め定められた値ずつ増加又は減少させる増減手段と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る光信号の制御方法は、制御データのデータ値に応じた制御信号を生成するステップと、ビット列である送信データに応じた駆動電流を、前記制御信号に基づいて生成するステップと、前記駆動電流に応じた光信号を送信するステップと、前記光信号を受光するステップと、前記受光された光信号に基づく電圧信号から一部の周波数帯域を抽出するステップと、前記抽出された電圧信号の振幅を検出するステップと、前記検出された振幅に基づく比較対象振幅と、基準振幅と、を比較するステップと、前記比較対象振幅と基準振幅との比較結果に基づいて、前記制御データのデータ値を、予め定められた値、増加又は減少させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様では、前記光送信装置は、前記制御データのデータ値を繰り返し増加させる増加手段と、前記比較対象振幅が前記基準振幅に達するまでの間、前記増加手段に前記データ値の増加を行わせ、前記比較対象振幅が前記基準振幅に達した後に、前記増減手段に前記データ値の増加又は減少を行わせる手段と、をさらに含んでいてもよい。
【0010】
また本発明の一態様では、前記増加手段は、増加量を減少させながら前記データ値を増加させてもよい。
【0011】
また本発明の一態様では、前記光送信装置は、前記光送信素子の温度を検知するための検知手段をさらに含み、前記増加手段は、前記検知手段により検知される温度に応じて、前記データ値の増加態様を変化させてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記光送信装置は、所定ビット列の検出を、前記送信データのうちで繰り返しおこなうビットパタン検出手段と、前記ビットパタン検出手段による検出結果を取得する検出結果取得手段と、前記フィルタにより抽出された電圧信号をデータに変換する変換手段と、をさらに含み、前記振幅検出手段は、検出結果取得手段により所定の検出結果が得られたときの前記データに基づいて、前記フィルタにより抽出された電圧信号の振幅を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光送信装置の構成図である。
【図2】LDに入力される駆動電流と光出力との関係を表したIL特性及びMPDの特性を示す図である。
【図3】LDに入力される信号の特性を示す図である。
【図4】カレントセンサから出力される信号の特性を示す図である。
【図5】フィルタから出力される信号の特性を示す図である。
【図6】振幅検出器において得られる信号の特性を示す図である。
【図7】出力コントローラの構成の一例を示す図である。
【図8】加算値制御データの一例を示す図である。
【図9】関係データの一例を示す図である。
【図10A】光送信装置の起動からの比較結果の推移を示す図である。
【図10B】光送信装置の起動からのフラグ値の推移を示す図である。
【図10C】光送信装置の起動からの基礎データ及び制御データの推移を示す図である。
【図10D】光送信装置の起動からの比較対象振幅の推移を示す図である。
【図10E】光送信装置の起動からの、光信号の出力レベルの極大点の包絡線の推移及び光信号の出力レベルの極小点の包絡線の推移を示す図である。
【図11】マイクロコントローラの構成の一例を示す図である。
【図12】基準振幅の推移及び比較対象振幅の推移を示す図である。
【図13】光送信装置の構成の一部を示す図である。
【図14】光送信装置の構成図である。
【図15】パタン検出部の機能を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る光送信装置10の構成図である。図1に示されるように、光送信装置10は、LDD(LDドライバ)12、LD(レーザダイオード)14、MPD(モニターフォトダイオード)16、APC回路18、及びAMC回路20を含む。ここで、AMC回路20は、フィルタ30、振幅検出器32、及びマイクロコントローラ36を含む。マイクロコントローラ36は、図示しない記憶手段に格納されるプログラムに従って動作する。マイクロコントローラ36には、A/D変換器37、比較部38、出力コントローラ40、及びD/A変換器42が含まれる。
【0016】
LDD12は、LD14に駆動電流を供給する駆動回路である。LDD12には、ビット列である送信情報(送信データ)が入力される。また、LDD12には、AMC回路20(より詳しくは、マイクロコントローラ36)により所定周期(ここでは、10000分の1秒)で制御信号が入力される。LDD12は、制御信号に基づいて、送信データに応じた駆動電流を生成する。具体的には、LDD12は、「0」をLow、「1」をHighとして変調したパルス電流を駆動電流として生成する。
【0017】
LD14は、入力電流量に応じて、光信号を送信する光送信素子である。本実施形態の場合、LD14は、LDD12からの駆動電流の入力と、APC回路18からのバイアス電流(後述)の入力と、を受けて、光信号を送信する。LD14としては、例えば、直接変調型のLDが用いられる。
【0018】
図2(A)には、LD14に入力される電流と光出力との関係を表したIL特性を、図2(B)にはMPD16の入力光強度と出力電流を示す。図2(A)においては、横軸に電流、縦軸に光出力を示し、図2(B)においては、横軸にMPD出力電流、縦軸にMPD入力光(強度)を示している。
【0019】
図2(A)に示されているように、LD14に入力される電流が閾値を超えるとLD14は発光を開始し、その後は入力される電流に比例した出力の光信号を発光する。そして、LD14から発信された光信号は、後述するMPD16により受光される。
【0020】
図2(B)には、このMPD16への入力光強度と、MPD16からの電流の出力との関係を示した。図2(B)に示されるように、MPD16の入力光強度とMPD16から出力される電流とは比例関係にある。
【0021】
また、図2(A)には、LD14の温度が異なる場合におけるLD14のIL特性を示している。図2(A)において示されたIL曲線はLD14の温度がそれぞれT1とT2の場合であり、T1<T2である。図2(A)に示されるように、LD14の温度が上昇すると、入力された電流の光信号への変換効率が劣化する。すなわち、一定の光出力及び光振幅を得ようとした場合には、LD14の温度に対応してLD14に入力される電流の及び振幅を制御する必要がある。このような変換効率の劣化は、LD14の温度変化のみならず経年劣化によっても同様に引き起こされる。以下、LD14からの光出力及び振幅を制御する構成について説明する。
【0022】
MPD16は、LD14から発せられた伝送信号を受光する受光素子である。MPD16は、受光した光信号をその強度に応じた電流に変換する。
【0023】
カレントセンサ28は、抵抗28aと誤差増幅器28bを含み構成され、抵抗間に流れる電流の電位差を検出し電圧信号として変換する。
【0024】
APC(Auto Power Control)回路18は、LD14からの平均発光量が一定となるようにバイアス電流を制御する制御回路である。APC回路18は、バイアス電流の大きさを制御することによりLD14からの発光量を制御する。
【0025】
差動増幅演算を行う誤差増幅器18aにAPC−ref(APC基準電圧)と平均化フィルタ18bの出力値が入力され、誤差増幅器18aによる差分演算結果に応じた電圧が電流源(電圧制御電流源)26に入力される。
【0026】
電流源26は、差分演算結果に応じたバイアス電流をバイアス・ティーを介してLD14に送る。LD14は、駆動電流及びバイアス電流の入力を受けて発光する。LD14から発信された光はMPD16により受光され、受光された光によって発生する電流出力はカレントセンサ28を通り、その後平均化フィルタ18bを通して、誤差増幅器18aへ入力される。LD14からの光信号の出力は、こうしたフィードバック機構により一定に制御される。
【0027】
AMC(Auto Modulation Control)回路20は、LD14から送信される光信号の振幅を一定に制御することによって光信号の消光比が一定になるよう制御するための制御回路である。本実施形態では、AMC回路20は、MPD16で受光した光信号に基づいて駆動電流を制御する。以下、図3乃至6に示した信号波形の具体例を参照しつつ、AMC回路20における信号処理の詳細を説明する。
【0028】
本実施形態に係る光送信装置10は、光通信の方式として、例えば、SONET/SDHやEthernet(登録商標)等の伝送方式を用いることとしてよい。これらの方式によれば、伝送信号を小さなまとまりに分割し、分割したまとまり(フレーム)を符号化して変調することにより、伝送信号は連続的で広帯域な一定のパタンを示す。
【0029】
図3に、LD14に入力される信号の特性を示す。図3(A)には、LD14に入力される信号の波形を示し、図3(B)には上記信号の波形の一部100を拡大した信号パタンを示す。そして、図3(C)には、上記の入力信号の周波数特性を示した。図3(C)においては縦軸に出力強度を、横軸に周波数を示している。図3に示されるように、入力信号は連続的で広帯域な一定のパタンとなっている。
【0030】
LD14は上記の入力信号に応じて光信号を発信し、発信された光信号はMPD16により受光される。MPD16には、低周波数特性を有するもの(例えば光信号の1/50倍程度の周波数特性を有するもの)を用いることとしてよい。MPD16の受光電流は、APC回路18と同様にカレントセンサ28にて電圧信号化される。
【0031】
図4(A)にはMPD16から出力される信号の波形を、図4(B)にはMPD16から出力される信号の周波数特性を示す。図4(B)における実線はMPD16からの出力波形を示し、破線はMPD16への入力信号の周波数特性を示している。図4(B)に示されるように、MPD16からの出力信号の周波数帯域は、MPD16への入力信号よりも狭帯化している。
【0032】
カレントセンサ28から出力された電圧信号は、カットオフ周波数より高周波側がノイズとなることがあるため、フィルタ30を通過することで、ノイズ除去を行い、電圧信号から一部の周波数帯域を抽出する。
【0033】
フィルタ30は、入力された電圧信号の一部の周波数帯域を抽出するフィルタであり、バンドパスフィルタにより構成してもよいし、ローパスフィルタにより構成してもよい。フィルタ30により電圧信号において信号強度が安定した部分の周波数帯域を抽出し、これを振幅制御に用いる。
【0034】
図5(A),(B)には、フィルタ30から出力される信号の波形を示す。フィルタを通過することで、一部の周波数帯域に絞られたことを示している。
【0035】
フィルタ30を通過した電圧信号は振幅検出器32に伝送される。振幅検出器32は、入力された信号の振幅を検出し、検出した振幅を一定の倍率で電圧レベルに変換し出力する回路である。
【0036】
振幅検出器32は、図6(A)に示すように、入力信号の強度をピークホールドし、図6(B)に示すようにピークホールドした信号を平滑化して一定の電圧レベルに変換する信号処理を行う。
【0037】
そして、マイクロコントローラ36が、振幅検出器32により検出された振幅に基づいて、LD14から出力される光の振幅を所望の振幅へと調整する。こうすることで、消光比が一定になるようにする。
【0038】
すなわち、A/D変換器37が、A/D変換を行い、振幅検出器32により検出された振幅をデータへと変換する。
【0039】
そして、比較部38が、上記データが示す振幅(以下、比較対象振幅)と、基準振幅と、を比較する。そして、比較部38は、比較結果を示すデータCを出力コントローラ40へと出力する。例えば、比較部38は、比較対象振幅(すなわち、フィルタ30により抽出された電圧信号の振幅)が基準振幅より大きい場合は、データCの値「1」を出力し、比較対象振幅が基準振幅より小さい場合は、データCの値「0」を出力する。
【0040】
出力コントローラ40は、上記制御信号の基礎となる制御データPを繰り返し生成し、D/A変換器42へと出力する。
【0041】
以下、出力コントローラ40について説明する。図7は、出力コントローラ40の構成の一例を示す図である。同図に示すように、出力コントローラ40は、第1制御部40a(増加手段)と、第2制御部40b(増減手段)と、切替部40cと、セレクタ40dと、制御データ生成部40eと、メモリ40fと、を含む。メモリ40fには、フラグ「F」及びパラメータ「n」が記憶される。最初は、フラグ「F」の値として「0」が格納され、パラメータ「n」の値として「n」が格納される。
【0042】
[第1制御部]
第1制御部40aは、制御データPの値を繰り返し増加させる。具体的には、第1制御部40aは、制御データPの値を繰り返し増加させるために、以下に説明する処理を繰り返し行う。
【0043】
すなわち、第1制御部40aは、メモリ40fからパラメータ「n」を読み出し、このパラメータ「n」に加算値「Δn」を加算した値「n+Δn」を、基礎データNとしてセレクタ40dに出力する。本実施形態では、第1制御部40aは、増加量を減少させながら制御データPを増加させるために、図8に示す加算値制御データに基づいて「Δn」を制御する。同図に示すように、加算値制御データは、「Δn」のデータ列として設定されており、第1制御部40aは、X回目に基礎データNを出力する場合、左からX番目の「Δn」を「n」に加算する。図8に示すように、後方になるほど「Δn」の値が小さいので、時間が経過するほど「Δn」が小さくなる。
【0044】
[第2制御部]
第2制御部40bは、制御データPの値を、一定値ずつ、繰り返し増加又は減少させる。具体的には、第2制御部40bは、制御データPの値を一定値ずつ増加又は減少させるために、比較対象振幅が基準振幅より小さい場合、メモリ40fから読み出した「n」に「1」を加算した「n+1」を基礎データNとして出力し、比較対象振幅が基準振幅より大きい場合、メモリ40fから読み出した「n」を「1」で減算した「n−1」を基礎データNとして出力する。なお、比較対象振幅と基準振幅とが同じ振幅である場合、第2制御部40bは、メモリ40fから読み出した「n」自身を基礎データNとして出力する。
【0045】
[切替部]
切替部40cは、比較対象振幅が基準振幅に達するまでの間、第1制御部40aに制御データPの増加を行わせ、比較対象振幅が基準振幅に一旦達した後は、第2制御部40bに制御データPの増加又は減少を行わせる。具体的には、切替部40cは、初めてデータCの値が「0」から「1」に切り替わった場合に、メモリ40fに記憶されるフラグ「F」の値を「0」から「1」に更新する。こうすることにより、切替部40cは、光送信装置10が起動してから比較対象振幅が基準振幅に到達するまでの間、第1制御部40aに制御データPの増加を行わせ、比較対象振幅が基準振幅に一旦到達した後は、第2制御部40bに制御データPの増加又は減少を行わせる。
【0046】
[セレクタ]
セレクタ40dは、メモリ40fにされるフラグ「F」の値が「0」である場合に、第1制御部40aから出力される基礎データNを制御データ生成部40eに出力する。一方、セレクタ40dは、メモリ40fにフラグ「F」の値が「1」である場合は、第1制御部40aから出力される基礎データNではなく、第2制御部40bから出力される基礎データNを制御データ生成部40eに出力する。
【0047】
[制御データ生成部]
制御データ生成部40eは、セレクタ40dから基礎データNが供給されるごとに、メモリ40fに記憶されるパラメータ「n」を基礎データNの値で更新する。
【0048】
また、制御データ生成部40eは、セレクタ40dから供給される基礎データNに基づいて制御データPを生成し、制御データPをD/A変換器42に出力する。本実施形態の場合、制御データ生成部40eは、メモリ40fに記憶される関係データを参照して制御データPの値を決定する。図9は、関係データの一例を示す。関係データは、基礎データNと制御データPの関係を示す。
【0049】
制御データ生成部40eは、この関係データを参照し、原則、基礎データNに比例する値を有する制御データPを生成することとなる。その後、D/A変換器42(制御信号生成手段)が、D/A変換を行い、制御データPを制御信号に変換する。すなわち、D/A変換器42は、D/A変換を行うことで制御データPに応じた制御信号を生成し、この制御信号をLDD12へと出力することとなる。
【0050】
なお、図9に示すように、制御データPには上限値が設けられている。その理由は、以下の通りである。
【0051】
すなわち、送信情報において「1」又は「0」が連続する信号や、送信情報において振幅検出器32が検出できないほど高い周波数の信号は、振幅検出器32において無信号として検出されてしまう。そして、無信号と検出された信号が比較部38に入力されると、第1制御部40a及び第2制御部40bは制御データPを常に増加させることとなってしまう。そのため、制御データPが大きくなりすぎると、LDD12には制御データPに応じた駆動電流が供給されるのであるから、LD14の性能限界を超えてLD14が破壊されたり、LD12から発信された高出力光信号を受光したMPD16が損傷したりする危険がある。こうした危険が回避されるように、制御データPには上限値が設けられている。
【0052】
図10Aは、光送信装置10の起動からのデータC(比較結果)の推移を示す図である。図10Bは、光送信装置10の起動からのフラグ「F」の推移を示す図である。図10Cは、光送信装置10の起動からの基礎データNの推移を示す図である。図10Cは、光送信装置10の起動からの制御データPの推移を示す図でもある。図10Dは、光送信装置10の起動からの比較対象振幅の推移を示す図である。図10Eは、光送信装置10の起動からの、光信号の出力レベルの極大点の包絡線E1の推移及び光信号の出力レベルの極小点の包絡線E2の推移を示す図である。横軸は、光送信装置10の起動からの時間tを示している。
【0053】
光送信装置10の起動時は光信号の出力レベルが低く比較対象振幅がほぼ「0」なので、第1制御部40aの機能により、基礎データN及び制御データPが光送信装置10の起動時から徐々に増加していく(図10C参照)。また、基礎データN及び制御データPの増加に従って比較対象振幅が増大する(図10D参照)。そして、光送信装置10の起動から時間Tが経過したところで、比較対象振幅が基準振幅Arefを超える(図10D参照)。
【0054】
そして、比較対象振幅が基準振幅Arefを一旦超えた後は、第2制御部40bの機能により、基礎データN及び制御データPが一定値ずつ増加又は減少していく(図10C参照)。そのため、光送信装置10の起動から時間T経過した後は、基礎データNの値が概ね一定値nrefに安定化する(図10C参照)。また、比較対象振幅も基準振幅Arefに安定化し(図10D参照)、その結果、光信号の振幅が安定化する。また、光信号の振幅が安定化する結果、包絡線E1及び包絡線E2が安定化する。つまり、消光比が一定になる。
【0055】
ここで、マイクロコントローラ36が図11に示すように構成されている場合を想定する。図11は、この場合におけるマイクロコントローラ36の構成を示す図である。以下、図11について説明する。なお、ここでは、図1と同じ符号で指し示されている要素については説明を省略する。
【0056】
第1フィルタ46は、例えば、ローパスフィルタであり、誤差増幅部50に供給される比較対象振幅をなだらかな時定数で応答させるために低周波数の成分を抽出する。なお、第1フィルタ46の遮断周波数は、第2フィルタ48の遮断周波数の1/10程度であってよい。
【0057】
第2フィルタ48は、例えば、ローパスフィルタであり、誤差増幅部50に供給される基準振幅をなだらかな時定数で応答させるために低周波数の成分を抽出する。第2フィルタ48により、光信号の振幅が安定化するまでに要する時間が制御される。
【0058】
誤差増幅部50は、基準振幅と比較対象振幅との差ΔAを算出し、この差ΔAを増幅した値を基礎データNとして制御データ生成部40eへと出力する。
【0059】
図12は図11に示す場合における基準振幅と比較対象振幅の光送信装置10の起動からの推移を示す図である。縦軸は振幅の大きさを示し、横軸は光送信装置10の起動からの時間tを示す。また、図12に示す曲線は、基準振幅を示している。同図に示すように、基準振幅は、第2フィルタ48の機能により、光送信装置10の起動時から徐々に増加していく。その後、基準振幅は、光送信装置10の起動から時間Tが経過したところで、一定値Arefに安定化することとなる。
【0060】
図11に示すマイクロコントローラ36の場合、基礎データNが出力される最初のタイミングt1では、比較対象振幅は基準振幅より小さいA1(ほぼ「0」)となるので、比較対象振幅A1と比較対象振幅A1より大きい基準振幅との差ΔA1に応じた基礎データNが出力される。そのため、次のタイミングt2では、比較対象振幅が基準振幅より小さくならず基準振幅より大きいA2となる。
【0061】
次のタイミングt2では、比較対象振幅A2と比較対象振幅A2より小さい基準振幅との差ΔA2に応じた基礎データNが出力される。そのため、次のタイミングt3では、比較対象振幅が基準振幅より大きくならず、基準振幅より小さいA3となる。つまり、タイミングt1のときと同様に、基準振幅より小さい比較対象振幅が得られる。
【0062】
タイミングt3では、比較対象振幅A3と比較対象振幅A3より大きい基準振幅との差Δ3に応じた基礎データNが出力される。そのため、さらに次のタイミングでは、タイミングt2のときと同様に、基準振幅より大きい比較対象振幅が得られることとなる。
【0063】
このように、図11に示すマイクロコントローラ36の場合、比較対象振幅(すなわち、光信号の振幅)は、概ね基準振幅を振幅中心として発振する。より詳しくは、比較対象振幅は、最初のタイミングt1の後のタイミングにおける比較対象振幅と基準振幅との差(例えば、ΔA2、ΔA3)が上記ΔA1に応じて定まるので、結果的に、上記ΔA1が大きいほど大きな発振幅で発振する。
【0064】
ところで、比較対象振幅の発振幅が大きい場合、光信号の振幅が安定しなくなるため、上記包絡線E1及び上記包絡線E2(図10E参照)も安定しなくなる。つまり、比較対象振幅の発振幅が大きい場合、光信号の振幅だけでなく包絡線E1及び包絡線E2も大きく発振してしまう。そのため、消光比が一定になりにくくなる。
【0065】
上述のように、上記ΔA1が大きい場合、比較対象振幅の発振幅が大きくなる。そのため、ΔA1が大きい場合、光信号の振幅が安定化せず、ΔA1が小さい場合、光信号の振幅が安定化することとなる。そのため、光信号の振幅を安定化させ、消光比を一定にするには、ΔA1を小さくする必要がある。
【0066】
そこで、ΔA1を小さくする方法として、制御データPの生成を行う時間間隔を短くすることが考えられる。すなわち、処理速度が速いマイクロコンローラを用いることが考えられる。例えば、10000/1秒ごとに処理を実行可能な一般的なマイクロコンローラを用いた場合に光信号の振幅が安定化しないことが実際のシミュレーション結果からわかっているので、1000000/1秒ごとに処理を実行可能なマイクロコントローラを用いることが考えられる。
【0067】
しかしながら、このような高性能のマイクロコントローラは比較的高価なため、光送信装置10の製造コストが増大してしまう。
【0068】
この点、本発明に係る光送信装置10では、第1制御部40aが、制御データPを徐々に増加させ、第2制御部40bが、比較対象振幅と基準振幅との比較結果に応じて制御データPを一定値(すなわち、「1」)ずつ増加又は減少させるので、高性能のマイクロコントローラを用いなくても、光信号の振幅が安定化するようになる。すなわち、高性能のマイクロコントローラを用いなくても、消光比を一定にすることができる。その結果として、光送信装置10の製造コストを抑制しつつ、光信号の振幅及び消光比を精度よく制御することができるようになる。また、パイロット信号を用いずとも、光信号の振幅及び消光比を精度よく制御できるようにもなる。
【0069】
なお、図11に示す場合においてΔA1を小さくする方法として、基準振幅がArefに到達するまでの時間を長くすることが考えられる。すなわち、基準振幅をより緩やかに大きくすることが考えられる。しかしながら、この場合、光信号の振幅及び消光比が安定するまでに要する時間が長くなってしまう。
【0070】
この点、本発明に係る光送信装置10では、第1制御部40aが、制御データPを徐々に増加させるので、光信号の振幅及び消光比が安定するまでに要する時間を比較的短くすることができる。また、光信号のオーバーシュートの発生を抑制しつつ、光信号の振幅を一定に制御することができるようにもなる。
【0071】
なお、本発明の実施形態は、上記実施形態に限らない。
【0072】
例えば、D/A変換器42はLDD12に含まれてよい。
【0073】
また、例えば、A/D変換器37から出力される比較対象振幅にばらつきが生じないようにするために、比較対象振幅を安定化させるための平均化処理を行うフィルタが、A/D変換器37と比較部38との間に設けられてもよい。
【0074】
また、例えば、上記実施形態では、第2制御部40bがパラメータ「n」(すなわち、基礎データN)を増加又は減少させる際の変化量(以下、「Δ」と記載する)は常に「1」であった。しかしながら、第2制御部40bは、比較対象振幅が基準振幅に到達した後のある程度の期間、変化量Δを徐々に減少させるようにしてもよい。例えば、第2制御部40bは、第1制御部40aが最後に用いた加算値「Δn」を変化量Δの初期値として設定した上で、変化量Δが「1」になるまでの期間、いわゆる二分法に従って変化量Δを減少させるようにしてもよい。
【0075】
また例えば、上述のようにLD14の温度に応じてIL特性が変化するので、LD14の温度に応じて光信号の振幅が安定化されるまでの時間が変化しないように、第1制御部40aがLD14の温度に応じて制御データPの増加のさせ方を変化させるようにしてもよい。以下、この態様について説明する。
【0076】
図13は、この態様について説明するための図であり、この態様での光送信装置10の構成の一部を示す図である。同図に示すように、この態様では、LD14の温度Kを検知する温度センサ44が設けられる。温度センサ44はA/D変換器を内蔵しており、LD14の温度Kを示すデータを第1制御部40aへ供給する。そして、LD12の温度に応じて制御データPの増加のさせ方を変化させるために第1制御部40aは、例えば以下に説明するように動作する。
【0077】
すなわち、第1制御部40aは、「n+Δn」を算出すると、基準温度Krefに対する温度Kの比αを算出する。そして、第1制御部40aは、「α×(n+Δn)」を基礎データNとして出力する。こうすることで、第1制御部40aは、制御データPの増加態様を、LD14の温度に応じて変化させる。
【0078】
また、光送信装置10は、図14に示すようにして構成されてもよい。この場合、図14に示すように、AMC回路20から振幅検出器32(図1参照)が省略される。そのため、変形例では、A/D変換器37は、フィルタ30により抽出された電圧信号を、直接、データに変換することとなる。
【0079】
また、AMC回路20から振幅検出器32が省略される代わりに、AMC回路20に、パタン検出部60、遅延回路70、及びスイッチ80が追加される。スイッチ80は、マイクロコントローラ36に含まれる。パタン検出部60及び遅延回路70もマイクロコントローラ36に含まれてよい。
【0080】
この場合、パタン検出部60にも、上記送信情報が入力される。パタン検出部60は、所定の検出対象ビット列(例えば、「1」が5回連続しているビット列)の検出を、上記送信情報のうちで繰り返しおこなう。そして、パタン検出部60は、検出結果を示す電圧信号を順次出力する。本実施形態の場合、パタン検出部60は、検出対象ビット列を検出できた場合、所定のON電圧を検出結果として出力し、検出対象ビット列を検出できなかった場合、「0」電圧を検出結果として出力する。
【0081】
図15は、パタン検出部60の機能を示す概念図である。図15の上から一番目の図は、検出対象ビット列の一例を示す。図15の上から二番目の図は、パタン検出部60に入力される送信情報の波形の一例を示す。図15の上から三番目の図は、パタン検出部60から出力される信号の波形の一例を示す。
【0082】
パタン検出部60から出力された検出結果は、LDD12からLD14を介してスイッチ80に到達する時間を補正するための遅延回路70を通って、スイッチ80へと入力されることとなる。
【0083】
スイッチ80(検出結果取得手段)は、上記ON電圧が入力されたときにオン状態になるスイッチ素子である。スイッチ80は、パタン検出部60から出力された検出結果を取得する。本実施形態の場合、スイッチ80は、取得した検出結果が「検出対象ビット列が検出されたこと」を示す検出結果(所定の検出結果)である場合に、オン状態になる。すなわち、スイッチ80は、検出結果を示す電圧信号が上記ON電圧である場合に、オン状態になる。
【0084】
比較部38は、A/D変換器37から出力されたデータに基づいて、フィルタ30により抽出された電圧信号の振幅を検出する。上述のように、スイッチ80は「検出対象ビット列が検出されたこと」を示す検出結果を取得したときにオン状態になる。そのため、比較部38には、スイッチ80により「検出対象ビット列が検出されたこと」を示す検出結果を取得されたときにA/D変換器37から出力された上記データが入力される。よって、結果的に、比較部38は、スイッチ80により「検出対象ビット列が検出されたこと」を示す検出結果を取得されたときの上記データに基づいて、フィルタ30により抽出された電圧信号の振幅を検出する。
【0085】
そして、比較部38は、検出した振幅に基づいて比較対象振幅を算出する。例えば、比較部38は、今回検出した振幅と、過去に検出した複数の振幅と、の平均を比較対象振幅として算出する。
【0086】
こうした上で、比較部38は、比較対象振幅を上記基準振幅と比較し、比較結果である上記データCを出力コントローラ40へと出力することとなる。図14に示す光送信装置10によれば、振幅検出器32を設けなくとも、マイクロコントローラ36がフィルタ30により抽出された電圧信号の振幅を検出することができる。そのため、振幅検出器32を設けなくとも、LD14から出力される光の振幅が所望の振幅へと調整され、消光比が一定になる。
【符号の説明】
【0087】
10 光送信装置、12 LDD、14 LD、16 MPD、18 APC回路、18a 誤差増幅器、18b 平均化フィルタ、20 AMC回路、22 キャパシタ、24 インダクタ、26 電流源、28 カレントセンサ、28a 抵抗、28b 誤差増幅器、30 フィルタ、32 振幅検出器、36 マイクロコントローラ、37 A/D変換器、38 比較部、40 出力コントローラ、40a 第1制御部、40b 第2制御部、40c 切替部、40d セレクタ、40e 制御データ生成部、40f メモリ、42 D/A変換器、44 温度センサ、46 第1フィルタ、48 第2フィルタ、50 誤差増幅部、60 パタン検出部、70 遅延回路、80 スイッチ、100 信号の波形の一部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御データのデータ値に応じた制御信号を生成する制御信号生成手段と、
ビット列である送信データに応じた駆動電流を、前記制御信号に基づいて生成する駆動回路と、
前記駆動電流に基づいて前記駆動電流に応じた光信号を送信する光送信素子と、
前記光送信素子から送信された光信号を受光する受光素子と、
前記受光素子により受光された光信号に基づいて得られた電圧信号から一部の周波数帯域を抽出するフィルタと、
前記フィルタにより抽出された電圧信号の振幅を検出する振幅検出手段と、
前記振幅検出手段により検出された振幅に基づく比較対象振幅と、基準振幅と、を比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記制御データのデータ値を、繰り返し、予め定められた値ずつ増加又は減少させる増減手段と、
を含むことを特徴とする光送信装置。
【請求項2】
前記制御データのデータ値を繰り返し増加させる増加手段と、
前記比較対象振幅が前記基準振幅に達するまでの間、前記増加手段に前記データ値の増加を行わせ、前記比較対象振幅が前記基準振幅に達した後に、前記増減手段に前記データ値の増加又は減少を行わせる手段と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光送信装置。
【請求項3】
前記増加手段は、
増加量を減少させながら前記データ値を増加させること、
を特徴とする請求項2に記載の光送信装置。
【請求項4】
前記光送信素子の温度を検知するための検知手段をさらに含み、
前記増加手段は、
前記検知手段により検知される温度に応じて、前記データ値の増加態様を変化させること、
を特徴とする請求項2に記載の光送信装置。
【請求項5】
前記光送信装置は、
所定ビット列の検出を、前記送信データのうちで繰り返しおこなうビットパタン検出手段と、
前記ビットパタン検出手段による検出結果を取得する検出結果取得手段と、
前記フィルタにより抽出された電圧信号をデータに変換する変換手段と、
をさらに含み、
前記振幅検出手段は、
検出結果取得手段により所定の検出結果が得られたときの前記データに基づいて、前記フィルタにより抽出された電圧信号の振幅を検出すること、
を特徴とする請求項1に記載の光送信装置。
【請求項6】
制御データのデータ値に応じた制御信号を生成するステップと、
ビット列である送信データに応じた駆動電流を、前記制御信号に基づいて生成するステップと、
前記駆動電流に応じた光信号を送信するステップと、
前記光信号を受光するステップと、
前記受光された光信号に基づく電圧信号から一部の周波数帯域を抽出するステップと、
前記抽出された電圧信号の振幅を検出するステップと、
前記検出された振幅に基づく比較対象振幅と、基準振幅と、を比較するステップと、
前記比較対象振幅と基準振幅との比較結果に基づいて、前記制御データのデータ値を、予め定められた値、増加又は減少させるステップと、
を含むことを特徴とする光信号の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図10D】
image rotate

【図10E】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−258653(P2011−258653A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130222(P2010−130222)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】