説明

光通信用伝送装置

【課題】
安全な光通信において利用する揺らぎは、白色性及び安定性が高く、大きさの調整が可能で、揺らぎが重畳された光の伝送特性が良好である必要があり、これを実現するのが課題である。
【解決手段】
(1)揺らぎ生成用の光源と伝送用の光源を分離し、伝送特性を向上させる。
(2)伝送用の光源に揺らぎを重畳する際にアンプで揺らぎの大きさを調整する。
(3)揺らぎの拡大過程用の光ファイバは高分散のものを利用し、ソリトン次数を維持して伝播させる。これによりラマン効果と環境変動の影響が抑制され、白色性が高く、大きさの安定した揺らぎが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信用伝送装置に係り、特に、秘匿性の高い通信システムを構築するための伝送装置及びそれを使ったシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークにより世界中が結ばれた現在、通信における安全性(秘匿性)は通信システムに要求される重要仕様のひとつである。この重要性に基づき、量子暗号の研究が活発に進められてきた(非特許文献1を参照)。量子暗号は物理法則的に安全性を保証するもので安全性の観点からは最強のものと考えられているが、微視的世界を支配する量子力学にその理論的根拠を置いているために、現実的環境下で運用するには制限事項が多く、通常の光通信システムに導入することは難しい。そこで、その問題点を解消するものとして、安全性と利便性がバランスした、位相揺らぎを利用した安全な光通信法が考案された(非特許文献2を参照)。この方式は位相揺らぎの大きいキャリア光を利用するのが特徴で、大きい位相揺らぎのために不正受信者による盗聴があったとしても十分には情報が漏れない。正規受信者は送信者との間で予め共通鍵を共有しているものとし、これにより正規受信者はノイズの多い信号の中から正しい信号を抜き出すことができる。この方式の安全性は位相揺らぎの予測不能性により保証されるため、揺らぎの白色性が重要になる。理想的な白色揺らぎとしては量子揺らぎがあるが、量子揺らぎは微小であるために直接利用することが難しく、利用可能な大きさに拡大する必要がある。この拡大法としてはアンチスクィジングが理想的であり(非特許文献3を参照)、光ファイバのカー効果を利用すれば原理的に実現可能であり(非特許文献4を参照)、レーザーダイオード(LD)と、強度変調器、光アンプ、通常の通信用シングルモードファイバ(SMF)、非零分散シフトファイバ(NZDSF)からなる量子揺らぎの拡大法が考案された(特許文献1を参照)。この方法は、LD及び強度変調器によりパルス光を生成し、増幅の後、SMFにおける高次ソリトン伝播によりパルスを圧縮し、その後はNZDSFを用いて基本ソリトンに変換してパルス幅とピーク強度を維持して、カー効果によるアンチスクィジング過程により量子揺らぎの拡大を図ろうとしたものである。
【0003】
光ファイバの3次の非線型効果としてはカー効果に加えてラマン効果がある。ラマン効果は光学フォノン(格子振動)を放出(あるいは吸収)して波長変化する散乱過程で、短パルスの場合、波長変化前後に対応する波長の光が同時に存在するため、誘導放出の原理が働いてラマン効果が顕著になる(誘導ラマン散乱)。SMF(Single−Mode Fiber)及びNZDSF(Non−Zero Dispersion−Shifted Fiber)を用いた上記の方法では低分散のNZDSFにおいてラマン効果が顕著で、波長変化しながら基本ソリトンが生成されていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−3339号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N.Gisin,G.Ribordy,W.Tittel and H.Zbinden,Rev.Mod.Phys.74,145−195(2002)
【非特許文献2】T.Tomaru, Jpn.J.Appl.Phys.74,074401(2010)
【非特許文献3】T.Tomaru and M.Ban,Phys.Rev.A 032312(2006)
【非特許文献4】M.Shirasaki and H.A.Haus,J.Opt. Soc.Am.B 7,30−34(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したSMF及びNZDSFを用いた方法は、長いパルスから波形のきれいな短パルスを生成する観点からは優れた方法であるが、安全な通信を実現するために必要な揺らぎの形成としては以下の問題点がある。
【0007】
SMFにおける高次ソリトンはファイバ伝播に伴いパルス幅の圧縮と拡大を繰り返す。最短パルス点の位置は環境変動の影響を受けるため、NZDSFへの変換点におけるパルスの初期状態が環境変動の影響を受ける。その結果、NZDSFにおけるラマン効果による波長変化量とカー効果による揺らぎの拡大量が不安定になる。
ラマン効果はフォノンの放出(吸収)を伴う確率過程で、波長の変化量は連続スペクトルである。そのため、ラマン散乱を繰り返せばパルス間のコヒーレンスが消失する。コヒーレンスが消失すればパルス間の位相差に信号を重畳するDifferential Phase−Shift Keying (DPSK)を適用できなくなる。
コヒーレンスの消失を抑えるために短パルス化を抑え、それによりラマン効果を抑えた場合、NZDSF内の基本ソリトン生成が不十分になり、パルス光のスペクトル特性が劣化する。その結果、伝送特性が劣化する。
SMF長に応じて最適な入力光強度が決まる。そのために入力光強度を変化させることができず、揺らぎの大きさの調整が困難である。
SMF及びNZDSFを用いた上記の方法は、以上の課題が存在していた。
位相揺らぎを用いた安全な光通信では、揺らぎの白色性により安全性を保証している。また、通信システムの運用面からは、揺らぎの大きさが安定していること、揺らぎの大きさを容易に調整できること、伝送特性が良好であることが要求される。
【0008】
そこで、本願発明の目的は、以上の運用上の要求事項を満足すべく、揺らぎの白色性、揺らぎの大きさの安定性及び調整の容易さ、良好な伝送特性が実現され、安全な光通信を可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光ファイバ伝播による量子揺らぎの拡大過程では一般にパルス波形と周波数特性が劣化する。従って、揺らぎの拡大した光をそのまま伝送光として利用すれば伝送特性が劣化する。そこで、揺らぎ生成用と伝送用の光源を分離し、送信機内で揺らいだ光の位相を測定し、その測定値に基づき伝送用の光を変調する。これにより白色性が保証された大きい揺らぎ(拡大した量子揺らぎ)と良好な伝送特性を両立できる。
【0010】
伝送光に対する揺らぎの変調過程ではアンプにより利得を調整する。これにより伝送光の揺らぎの大きさが調整可能になる。
【0011】
光ファイバ伝播により揺らぎを拡大する過程では波長分散の高い光ファイバを利用し、SMFからNZDSFへの変換等を行わない。これにより、ラマン効果が抑制されるので揺らぎの白色性が保証されると共にコヒーレンスが保たれる。またカー効果の環境変動の影響が抑制されるので揺らぎの大きさが安定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、揺らぎの白色性、揺らぎの大きさの安定性及び調整の容易さ、良好な伝送特性が実現され、安全な光通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による秘匿光通信送受信系全体の概略を示したブロック図。
【図2】光ファイバのカー効果により量子揺らぎが拡大される様子を模式的に示した図。
【図3】パルス光の非線型ファイバ伝播に関するシミュレーションの一例を示す図。
【図4】パルス光生成部の構成例を示す図。
【図5】パルス光生成部の構成例を示す図。
【図6】位相測定器の構成例を示す図。
【図7】位相測定器の構成例を示す図。
【図8】位相空間上の揺らぎと測定値の関係を示す図。
【図9】位相測定器の構成例を示す図。
【図10】位相測定器の構成例を示す図。
【図11】送信機内に記憶装置を配した構成例での秘匿光通信送受信系全体の概略ブロック図。
【図12】送信機内に記憶装置を配した構成例での秘匿光通信送受信系全体の概略ブロック図。
【図13】送信機内に記憶装置を配した構成例での秘匿光通信送受信系全体の概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の基本形態を図1に示す。送信機100内に揺らぎ生成用と伝送用の2つの光源がある点と、送信機100内にも位相測定用の光検出器が設置されている点が特徴的である。
【0015】
パルス光生成部110からの出力光は光アンプ120により増幅され、光ファイバ130を伝播し、位相検出器140により位相の測定が行われる。光ファイバ伝播ではカー効果により位相揺らぎの拡大があり、位相検出器140で検出されるのはその揺らいだ位相である。位相検出器140で測定された位相はアンプ150により利得が調整され、伝送するべき信号160と加算器161により混合され、伝送用の光源171からの出力光に変調器172を用いて重畳される。揺らいだ位相及び信号160を重畳した伝送光は送信機100から出力され、伝送路200を経て、受信機300で受信される。以上が本発明の基本構成である。
【0016】
次に技術的な観点からこの構成について述べる。
量子力学には不確定性関係があり、決して取り除くことができない最小揺らぎが存在し、量子揺らぎと呼ばれる。量子揺らぎは完全な白色ノイズで理想的な揺らぎである。安全な光通信では安全性を保証するために白色性の高い揺らぎが必要であり、量子揺らぎは理想的である。しかし、量子揺らぎは微小であるために利用できる大きさに拡大する必要がある。この必要性に対しては光ファイバのカー効果を利用することができる。光電場の振動はcos成分とsin成分からなっており、量子力学的にはこのcos成分とsin成分が共役になり、両成分間で不確定性関係が成り立つ。レーザー出力光はコヒーレント状態と呼ばれる最小不確定性関係の状態で良く近似でき、両成分を両軸に取った位相空間では揺らぎを表す模式図が円形になる(図2を参照)。光ファイバにはカー効果と呼ばれる3次の非線型効果があり、屈折率が光強度に依存する。屈折率n(ω)は、微小入力に対する屈折率をn(ω)、非線形屈折率係数をn、入力光強度を|E|として、式(1)で与えられる。

右辺第2項がカー効果を表す項である。図2の位相空間では原点から離れる程光強度が大きいことを意味し、コヒーレント状態の揺らぎを表す円の内部も場所によってファイバ伝播時の屈折率が式(1)に従い異なることになる。その結果、レーザー出力時に円形であった揺らぎはファイバ伝播するにつれて三日月型に変化し(図2)、位相揺らぎが拡大する。図2においてδθが位相揺らぎの大きさを表すパラメタである。
【0017】
式(1)に示すようにカー効果は光強度が大きいほど大きいので、ファイバ伝播させる光をパルスにしてピーク強度を大きくするのが有利である。そのために光源110がパルス光生成部になっている。また、光強度をさらに大きくするために光アンプ120が配置されている。光アンプでは量子揺らぎが拡大されると共に自然放出分の揺らぎが付加されることになるが、自然放出における揺らぎも量子揺らぎなので揺らぎ全体の白色性は維持される。
【0018】
光ファイバ(130)伝播中のパルス波形はカー効果やファイバの波長分散のために複雑な挙動を示す。計算機によりシミュレートした結果の一例を図3に示す。このシミュレーションはスプリット・ステップ・フーリエ法(アグラワール「非線形ファイバ光学」吉岡書店、1997年;原著はG. P. Agrawal、 “Nonlinear Fiber Optics、 2nd ed、”(Academic、 New York、 1995))と呼ばれる方法で行ったもので、各種パラメタは光ファイバに関しては通常の通信用単一モードファイバ相当の値を利用し、群遅延分散をβ=−2.1x10−2ps/m、3次分散をβ=1.2x10−4ps/m、伝送損失を0.2dB/km、非線形係数をγ(n)=1.3x10−3(Wm)−1、ラマン効果の係数をT=5.0fsとした。パルス光の初期値は、ピーク強度0.915W、パルス幅20ps(半値全幅)のsech波形とした。波長はλ=1550nmである。図3(a)は0−5kmのパルス伝播、(b)は5−25kmのパルス伝播、(c)は25−55kmのパルス伝播、(d)は0、2.9、55kmにおけるパルス波形を表す。
光ファイバ中の非線型伝播はソリトン次数Nを用いて定性的に理解できる。ピーク強度P、パルス幅Tのとき、ソリトン次数Nは式(2)で与えられる。

N=1が基本ソリトンと呼ばれる状態で、sech(t/T)で記述される安定なパルスを形成する。ファイバ伝播に伴い伝送損失のためにPは減少するが、ソリトンは自発的にTを大きくしてN=1を維持する。また、正確にN=1を満たさなくてもN≒1であればファイバ伝播に従い自発的にN=1に近づく。
【0019】
光強度を増してNが1からずれて来ると高次ソリトンと呼ばれる状態になり、パルス幅と波形が周期的に変化するようになる。図3はその一例でN=2.7の高次ソリトンになっている。高次ソリトンはファイバ伝播によりまずパルス幅が圧縮され、その後パルス分裂等をしながら広がる。図3の場合は2.9kmの地点で最短のパルス幅になっている。この地点はパルス状態の変化率が大きく、環境変動があればパルス幅の最短地点が容易に変化し、2.9km地点の揺らぎの大きさは安定しない。しかし、光ファイバには伝送損失があるので、ファイバ伝播が進むにつれてカー効果の働きが小さくなり、パルス波形の変化がしだいにゆるやかになる。50km付近になればパルス状態の変化率が小さくなり、環境変動があったとしても各地点のパルスの状態の変化量は十分に小さいものになる。安全な光通信では揺らぎの大きさが安定していることが要求される。従って、130におけるファイバ伝播が高次ソリトンになっている場合は波形変動が十分に緩やかになるファイバ長にすることが好ましい。光ファイバの伝送損失は0.2dB/km程度である。これは50km伝播で10dBの損失を意味する。高次ソリトンの波形変動が十分に緩やかになる目安として光強度が1/10になる地点を考えるとすれば、ファイバ伝播距離としては50km程度が目安になる。
【0020】
ファイバ伝播に伴う波形変動はソリトン次数が上がるほど顕著になるので、安定な揺らぎを生成するためにはソリトン次数は1に近い程良い。そのためには式(2)に従い、パルス幅Tを小さく、群遅延分散|β|を大きくすれば良い。揺らぎの拡大にはカー効果を使っているのでピーク強度Pを下げることは好ましくない。パルス幅Tを小さくするためにはビットレートを上げることが有効である。光通信では研究開発が進むにつれてビットレートが向上するため、ソリトン次数の最適化の観点からは将来に向かって本発明の有利さが向上する。尚、パルス幅が1ps程度になればラマン効果が表れ始める。ラマン効果は不要なノイズを生成するため、これは排除されることが望ましい。そのため、パルス幅は数psよりも大きくなるようにする。群遅延分散は大きい程よく、例えば、通常の光通信用単一モード光ファイバ(SMF)が適用可能である。
【0021】
特許文献1では高次ソリトンの最短パルス到達点で低分散の光ファイバに交換し、基本ソリトン伝播に変換していた。しかし、低分散の光ファイバではカー効果に基づくスペクトル拡大効果が効果的になり、その結果誘導ラマン効果が顕著となってコヒーレンスが低下する。また、高次ソリトンから基本ソリトンへの変換点におけるパルス波形が環境変動の影響を受けやすく、揺らぎの安定性に問題が発生する。そのため、本発明では高次ソリトンから基本ソリトンへの変換を行わず、ソリトン次数を維持し、また高分散の光ファイバを利用することによりラマン効果を抑制する。
【0022】
図3のシミュレーションでも見たように非線型伝播したパルスは波形が複雑である。波形が複雑なパルスは周波数空間においてはスペクトルが広がっている。従って、このパルスを信号伝送のためのキャリア光に利用すれば良好な伝送特性が得られなくなる。そこで、非線型伝播を通して揺らいだ光を直接信号伝送用に利用するのではなく、位相を送信機内で測定し、その測定値で別に用意した信号伝送用の光源171からの出力光を変調器172において変調し、白色性の優れた揺らぎと良好な伝送特性を両立する。
【0023】
安全な光通信では正規受信者と不正受信者のビット誤り率の差を利用して安全な情報量を確保する。そのため、揺らぎの大きさの制御により正規受信者と不正受信者のビット誤り率を調整する。アンプ150は揺らぎの大きさ調整するためのものである。
【0024】
以上、技術的な観点から本発明の原理について述べた。以下では具体的な実施の形態について述べる。
【0025】
図4にパルス光生成部110の実施の形態の一例を示す。連続光発振するレーザーダイオード(LD)111からの出力光を強度変調器112によりパルス化する。モード同期レーザーのようにパルス状の光を出力する光源を111に適用した場合は変調器112を省略することができる。パルスの繰り返しレートをfとすれば、パルス光のスペクトルは周波数間隔fの串状になる。そこで強度変調器112に替わって位相変調器113を周波数fで変調し、強制的にスペクトルを周波数fの串状にする方法もある(図5)。但し、位相変調しただけでは各周波数成分間の位相関係がパルス化の最適条件になっていないので、分散補償器114が必要である。通信波長帯では各種波長分散の光ファイバがラインナップされており、分散補償器114としては光ファイバを利用するのが便利である。位相変調器を使ったこの方法の利点は、正弦波を入力するだけで位相変調器において高調波成分が生成されることであり、容易に周波数帯域を広くできる。繰り返しレートが上がるほど、この方法は有利になる。
【0026】
図2の原理で見たようにファイバ伝播において量子揺らぎは位相揺らぎとして拡大する。従って揺らぎの測定としては位相を測定することになる。位相揺らぎの受信法には参照光を利用とする方式と参照光を利用しない方法があり、前者がPhase−Shift Keying (PSK)に対応する受信法で、後者がDifferential Phase−Shift Keying (DPSK)等の差動型フォーマットの受信法に相当する。まず実装が容易な参照光を利用しない後者の方法について述べる。図6がその場合の位相測定器140の実施例を示した図である。揺らぎの拡大した入力光をa(t)と表現することにする。但し、|a(t)|が光子数を表すように規格化されているとする。本発明では光(電磁場)の数式表示を古典的とし、量子揺らぎも古典的な揺らぎに含めて表現する(半古典的な表現)。入力光a(t)は50:50のビームスプリッタ141に入力しc(t)とd(t)に分割される。141のもう一方の入力ポートはゼロ入力であるが、b(t)として入力光を表現しておく(但し、b(t)=0)。141の入出力関係は式(3)で与えられる。

c(t)とd(t)は遅延時間τを持ってビームスプリッタ142において干渉する。142における入出力関係は式(4)で与えられる。

式(3)及び(4)から式(5)を得る。

本発明では光を古典的に扱うのでb(t)=0であるが、量子力学的に扱う場合はb(t)の真空揺らぎ(量子揺らぎ)を考慮する必要がある。その場合、b(t)の期待値は<b(t)>=0であるが、<|b(t)|>≠0になる。本発明では拡大した量子揺らぎを扱うので、b(t)に関する微小な真空揺らぎは無視できる。そのため、本発明では古典的な取り扱いとした。古典的取り扱いなのでb(t)=b(t+τ)=0であり、式(5)を書き直せば式(6)になる。

入力光a(t)を式(7)で表すことにする。

入力光a(t)を繰り返しレートfのパルス列とすれば、振幅a(t)は繰り返しレートfの周期関数である。a(t)を実数に取ることにする。光検出器143及び144での量子効率をξ及びηとすれば143及び144からの出力はξe(t)e(t)及びηf(t)f(t)と書ける。ここで、e(t)はe(t)の複素共役、f(t)はf(t)の複素共役である。図6は2つの光検出器からの出力の差分を取る平衡型検出になっており、位相検出器140からの最終出力は
ξe(t)e(t)−ηf(t)f(t)で与えられる。
光検出器143及び144は特性が揃っているものとすれば、ξ=ηであり位相検出器140の最終出力は式(8)で与えられる。

遅延時間τは位相測定器140において調整される量で、大まかな設定としてパルス列の繰り返しレートfに合わせてτ≒1/fに設定する。細かい位相レベルの設定に関してωτ=(n+1/2)π(但し、nは整数)に選ぶ。
δφ(t,τ)≡φ(t+τ)−φ(t)とすれば、式(8)は式(9)になる。

但し、±の+はnが偶数の場合で、−はnが奇数の場合である。a(t)はfの周期関数なので、測定点を例えばパルスの最大点に決めておけばa(t+τ)a(t)は定数とみなせる。その結果、式(9)はδφ(t,τ)のみの関数となり、140が位相測定器になっていることがわかる。すでに言及したように図6は差動型の変調フォーマットに対する受信機になっているので、測定される位相は差動位相δφ(t,τ)である。式(9)ではδφ(t,τ)がsinの引数になっているが、δφ(t,τ)<<1であればsinδφ(t,τ)≒δφ(t,τ)の近似が成り立つので、位相測定器140の出力はδφ(t,τ)に比例した量になる。
【0027】
本明細書の記法ではδφ(t,τ)に、1ビット遅延の間に生じる古典的位相揺らぎと量子揺らぎ(量子揺らぎが増幅されている場合は、その増幅後を意味する)を含む。量子揺らぎはパルス光生成部110の出力後、ファイバ伝播(130)により位相方向に拡大される。δφ(t,τ)の古典揺らぎ分はτ=0に対して0になる量で、ビットレートfの向上と共にτ≒1/fの関係により小さく成る。一方、量子揺らぎはτ= 0においても絶対的に存在する量で、δφ(t,τ)における量子揺らぎの割合はビットレートが高い程大きくなる。従って、ビットレートが高い程、位相揺らぎの白色性は向上する。
【0028】
図6の位相測定器ではsinδφ(t,τ)≒δφ(t,τ)の近似に基づいて位相を出力したが、図6における非対称干渉計(1ビット遅延干渉計)を2台使えばより正確な位相測定が可能になる。それを示した実施例が図7である。式(9)は式(8)においてωτ = (n+1/2)πの条件を課すことにより得られた。ωτ=nπ(但し、nは整数)の場合には式(8)は式(10)になる。

但し、±の+はnが奇数の場合で、−はnが偶数の場合である。式(9)と(10)の違いはsinかcosかである。式(9)に関する測定値をI、式(10)に関する測定値をIとしてnを適切に選べばδφ(t,τ)=arctan(I/I)になる。従って、IとIを使えば正確にδφ(t,τ)が求まる。図7の実施例では一方の1ビット遅延干渉計がωτ=(n+1/2)πの条件に設定され、もう一方がωτ=nπに設定される。計算機145によりarctan(I/I)が計算される。
【0029】
式(9)と式(10)の意味を図形的に示したものが図8である。測定される光の状態は位相空間上の分布関数として表現される。分布関数の広がりの大まかな様子を示したのが図8における三日月である。実際の測定値はその分布内の一点であり、同様の測定を多数回行ったときの分布の様子が三日月に対応する。式(9)がsin、式(10)がcosで表されていることから明らかのように、ある測定値に対して式(9)の出力が位相空間上のa座標に対応し、式(10)の出力が位相空間上のa座標に対応する。位相空間上の座標が確定するのでδφ(t,τ)が求まるわけである。別の言い方をすれば、位相空間上でa軸に射影した結果が式(9)であり、a軸に射影した結果が式(10)になっている。
【0030】
図8の光の状態ではa軸に射影した場合、その測定値はほぼ振幅aに対応する。これは非対称干渉計の条件がωτ=nπであるためで、干渉の結果、干渉計からの出力が一方の出力ポートに集中し、平衡型受光器からの出力が全光強度分になるからである。一方、a軸に射影した場合、その測定値はゼロ近傍で揺らぐ。これは非対称干渉計の条件がωτ=(n+1/2)πになっているためで、干渉の結果、干渉計からの出力が2つの出力ポートに等分され、相殺されたものが平衡型受光器からの出力になるからである。
【0031】
以上、差動型の位相測定器について図6及び図7の実施例を用いて述べた。参照光を利用した位相測定も同様に可能で、それを実施例で示したものが図9及び図10である。図6と図9、図7と図10がそれぞれ対応している。参照光があるために図9及び図10ではビームスプリッタ141が無くなっている。参照光の生成法としては各種考案されているが、近年研究開発が活発な方法はフリー動作したLDを利用し、十分な数の測定値を得た後、それらを基に逆にフリー動作LDの位相を推定するものである(例えば、菊池和郎「コヒーレント光ファイバー通信の新展開」応用物理78,856−861(2009))。揺らいだ光の位相揺らぎは、推定されたフリー動作LDの位相を基準にして求められる。フリー動作LDの位相推定を行うのは図10における計算機145である。図9の場合は1台の1ビット遅延干渉計を使うだけなのでフリー動作LDの位相推定ができず、この場合は他の方法で参照光を用意する必要がある。例えば、パルス光生成部110の出力を一部分離し、カー効果が有効に働かない程度に強度を制限して揺らぎ拡大用の光と同じ光路で位相測定器140まで伝送する等の方法が考えられる。参照光を伝送するこの方法は図10の場合も適用可能である。
【0032】
以上、様々な方法により位相揺らぎの測定値が得られる。得られた測定値はアンプ150により利得が調整されて伝送光に重畳される(図1)。伝送光には実際の信号も重畳されるので加算器161において信号及び測定された揺らぎが混合される。実際の信号は真の信号とは限らず、暗号通信ではしばしば乱数であることが多い。
【0033】
伝送路200による光伝送は、信号と揺らぎが重畳されていることが特徴であり、この特徴を満たすならばあらゆる信号フォーマットが適用可能である。位相変調型としてはPSK, DPSKの他、多値化したQuaternary PSK (QPSK)及びDifferential Quaternary PSK (DQPSK)やさらに多値化した方式が考えられる。強度変調方式も可能であり、強度変調と位相変調を組み合わせた多値化(例えば、Quadrature Amplitude Modulation (QAM))や強度変調と差動型の位相変調を組み合わせた多値化も可能である。
【0034】
以上の実施例ではすべてを実時間で動作させていたが、位相測定器140の出力をバッファや記憶装置に一旦保存してから、伝送用の光に揺らぎとして重畳することも可能である。図11がその場合の実施例で、位相測定器140とアンプ150の間に記憶装置155を配置する。記憶装置155を配置しておけば、揺らぎ生成用のパルス光源110と伝送用光源171のビットレートが一致している必要はなく本発明の適用範囲を広げることができる。例えば図12に示すように、一つの揺らぎ生成部から2つの光伝送系用の揺らぎを生成することが可能になる。逆に図13に示すように、2つの揺らぎ生成部から1つの光伝送系用の揺らぎを生成することも可能である。
【0035】
次に、本件発明の上記実施形態から把握できる請求項以外の光通信用伝送装置を適用した場合の光伝送システムに係る技術思想を記載する。
(1)光送信機と伝送路と光受信機からなる光伝送システムにおいて、この光送信機は、パルス光源と、該パルス光源からの出力光を増幅する光増幅器と、該光増幅器からの出力光を伝播させる光ファイバと、該光ファイバ伝播後の光の位相を測定して電気信号に変換する位相測定手段とを含む揺らぎ生成部と、該位相測定手段から出力された電気信号の利得を調整する増幅器と、該増幅器からの出力電気信号と伝送予定の信号とを混合する加算器と、伝送用光源と、該加算器からの出力信号を該伝送用光源からの出力光に重畳する変調器とを含む信号光生成部とを含んでなり、該パルス光源からの出力光が、光増幅器により増幅され、光ファイバを伝播し、位相測定手段により位相が測定されて電気信号に変換され、該電気信号は前記増幅器により出力強度が調整され、該電気信号は伝送予定の信号に加算器において加算され、該加算された信号は変調器を用いて伝送用光源からの出力光に重畳され、光受信機は、光送信機から出力されて伝送路を介して伝送されてきた信号光を受信することを特徴とする光伝送システム。
(2)上記(1)において、該パルス光源からの出力光は、光ファイバでの伝播を通して位相揺らぎが拡大することを特徴とするとする光伝送システム。
(3)上記(1)において、該パルス光源が、レーザー光源と強度変調器により構成されることを特徴とするとする光伝送システム。
(4)上記(1)において、該パルス光源が、レーザー光源と位相変調器と分散を補償する手段により構成されることを特徴とするとする光伝送システム。
(5)上記(1)において、該位相を測定する手段は非対称干渉計と平衡型受光器を含み、該平衡型受光器は2つの光検出器を構成要素に持ち、非対称干渉計の光路長差は前記パルス光源からの出力光の隣り合うパルスが干渉するように設定され、さらに、該光路長差に相当する遅延時間をτ、パルス光源からの出力光の角振動数をω、ある整数をnとしてωτ=(n+1/2)πを満たすように該光路長差が微調整され、非対称干渉計は、2つの出力ポートを有し、該出力ポートからの2つの出力が前記平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器にそれぞれ導かれ、該2つの光検出器からの出力の差分が該平衡型受光器からの出力になることを特徴とする光伝送システム。
(6)上記(1)において、該位相を測定する手段は、第1の非対称干渉計と第1の平衡型受光器と第2の非対称干渉計と第2の平衡型受光器と計算する手段とを含み、第1及び第2の平衡型受光器はそれぞれ2つの光検出器を構成要素に持ち、第1及び第2の非対称干渉計の光路長差は、パルス光源からの出力光の隣り合うパルスが干渉するように設定され、さらに、第1及び第2の非対称干渉計の光路長差に相当する遅延時間をτ、パルス光源からの出力光の角振動数をω、ある整数をn及びnとして、第1の非対称干渉計はωτ=(n+1/2)πを満たすように該光路長差が微調整され、第2の非対称干渉計はωτ=nπを満たすように該光路長差が微調整され、第1の非対称干渉計は2つの出力ポートを有し、該出力ポートからの2つの出力が第1の平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器に導かれ、該2つの光検出器からの出力の差分が該第1の平衡型受光器からの出力となり、第2の非対称干渉計は2つの出力ポートを有し、該出力ポートからの2つの出力が前記第2の平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器に導かれ、該2つの光検出器からの出力の差分が該第2の平衡型受光器からの出力となり、計算する手段において前記第1の平衡型受光器からの出力と前記第2の平衡型受光器からの出力を利用して位相を算出することを特徴とする光伝送システム。
(7)上記(1)において、該光送信機における信号重畳フォーマットは、位相変調型、差動位相変調型、振幅変調型、位相変調と振幅変調の共存型、差動位相変調と振幅変調の共存型、のいずれかであることを特徴とする光伝送システム。
【符号の説明】
【0036】
100:送信機、
110:パルス光生成部、
111:レーザー光源、
112:強度変調器、
113:位相変調器、
114:分散補償器、
120:光アンプ、
130:光ファイバ、
140:位相測定器、
141,142:ビームスプリッタ、
143,144:光検出器、
145:計算機、
146:参照光源、
150:アンプ、
155:記憶装置、
160:信号、
161:加算器、
171:光源、
172:変調器、
200:伝送路、
300:受信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相揺らぎを生成する揺らぎ生成部と、信号及び揺らぎを伝送光に重畳する信号光生成部とを備え、
前記揺らぎ生成部には位相揺らぎ生成に利用する第1の光源を有し、
前記信号光生成部には前記伝送光用の第2の光源を有し、
前記揺らぎ生成部で生成した揺らぎと伝送予定の信号を前記第2の光源からの出力光に重畳する手段を有することを特徴とする光通信用伝送装置。
【請求項2】
前記揺らぎ生成部は光ファイバと光の位相を測定する手段を有し、前記第1の光源からの出力光を前記光ファイバに伝搬させ、前記位相を測定する手段により揺らいだ位相を測定し、その測定値を出力とし、
前記信号光生成部は、該出力の利得を調整し、利得調整された該出力と前記伝送予定の信号とを混合し、該混合信号を前記第2の光源からの出力光に重畳し、該出力光を伝送用信号光とすることを特徴とする請求項1記載の光通信用伝送装置。
【請求項3】
パルス光源と、該パルス光源からの出力光を増幅する光増幅器と、該光増幅器からの出力光を伝播させる光ファイバと、該光ファイバ伝播後の光の位相を測定して電気信号に変換する位相測定手段とを含む揺らぎ生成部と、
該位相測定手段からの出力電気信号の利得を調整する増幅器と、該増幅器からの出力電気信号と伝送予定の信号とを混合する加算器と、伝送用光源と、該伝送用光源からの出力光に前記加算器からの出力信号を重畳する変調器とを含む信号光生成部とを有することを特徴とする光通信用伝送装置。
【請求項4】
前記パルス光源からの出力光は、前記光ファイバでの伝播を通して位相揺らぎが拡大することを特徴とするとする請求項3記載の光通信用伝送装置。
【請求項5】
前記光ファイバは、伝送特性が1種類に統一されていることを特徴とするとする請求項3記載の光通信用伝送装置。
【請求項6】
前記パルス光源がレーザー光源と強度変調器により構成されることを特徴とするとする請求項3記載の光通信用伝送装置。
【請求項7】
前記パルス光源がレーザー光源と位相変調器と分散を補償する手段により構成されることを特徴とするとする請求項3記載の光通信用伝送装置。
【請求項8】
前記位相測定手段は非対称干渉計と平衡型受光器を含み、
前記平衡型受光器は2つの光検出器を構成要素に持ち、
前記非対称干渉計の光路長差は、前記パルス光源からの出力光の隣り合うパルスが干渉するように設定され、
さらに、該光路長差に相当する遅延時間をτ、前記パルス光源からの出力光の角振動数をω、ある整数をnとしてωτ=(n+1/2)πを満たすように該光路長差が微調整され、
前記非対称干渉計は2つの出力ポートを有し、該出力ポートからの2つの出力が前記平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器にそれぞれ導かれ、該2つの光検出器からの出力の差分が該平衡型受光器からの出力になることを特徴とする請求項3記載の光通信用伝送装置。
【請求項9】
前記位相を測定する手段は、第1の非対称干渉計と第1の平衡型受光器と第2の非対称干渉計と第2の平衡型受光器と計算する手段とを含み、
前記第1及び第2の平衡型受光器はそれぞれ2つの光検出器を構成要素に持ち、
前記第1及び第2の非対称干渉計の光路長差は、前記パルス光源からの出力光の隣り合うパルスが干渉するように設定され、
さらに、前記第1及び第2の非対称干渉計の光路長差に相当する遅延時間をτ、前記パルス光源からの出力光の角振動数をω、ある整数をn及びnとして、前記第1の非対称干渉計はωτ=(n+1/2)πを満たすように該光路長差が微調整され、前記第2の非対称干渉計はωτ=nπを満たすように該光路長差が微調整され、
前記第1の非対称干渉計は2つの出力ポートを有し、該出力ポートからの2つの出力が前記第1の平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器に導かれ、該2つの光検出器からの出力の差分が該第1の平衡型受光器からの出力となり、
前記第2の非対称干渉計は2つの出力ポートを有し、該出力ポートからの2つの出力が前記第2の平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器に導かれ、該2つの光検出器からの出力の差分が該第2の平衡型受光器からの出力となり、
前記計算する手段において前記第1の平衡型受光器からの出力と前記第2の平衡型受光器からの出力を利用して位相を算出することを特徴とする請求項3記載の光通信用伝送装置。
【請求項10】
前記位相を測定する手段は参照光を生成する手段とビームスプリッタと平衡型受光器とを含み、
前記平衡型受光器は2つの光検出器を構成要素に持ち、
前記光ファイバ伝播後のパルス光と前記参照光とは前記ビームスプリッタに入射し、該ビームスプリッタにおいて干渉すると共に分岐され、該ビームスプリッタで分岐された干渉後の2つの出力光は前記平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器に導かれ、該2つの光検出器からの出力の差分が該平衡型受光器からの出力になることを特徴とする請求項3記載の光通信用伝送装置。
【請求項11】
前記位相を測定する手段は、参照光を生成する手段と、第1のビームスプリッタと、第1の平衡型受光器と、第2のビームスプリッタと、第2の平衡型受光器と、計算する手段とにより構成され、
前記第1及び第2の平衡型受光器はそれぞれ2つの光検出器を構成要素に持ち、
前記参照光は2分割され、前記パルス光源からの出力光も前記光ファイバ伝播後2分割され、一方は前記2分割された参照光と前記第1のビームスプリッタにおいて干渉すると共に分岐され、該第1のビームスプリッタで分岐された干渉後の2つの出力光は前記第1の平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器に導かれ、該2つの光検出器からの出力の差分が該第1の平衡型受光器からの出力になり、
前記2分割されたパルス光源からの出力光のもう一方は、前記2分割された参照光のもう一方と前記第2のビームスプリッタにおいて干渉すると共に分岐され、該第2のビームスプリッタで分岐された干渉後の2つの出力光は前記第2の平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器に導かれ、該2つの光検出器からの出力の差分が該第2の平衡型受光器からの出力になり、前記計算する手段において前記第1の平衡型受光器からの出力と前記第2の平衡型受光器からの出力を利用して位相を算出することを特徴とする請求項3記載の光通信用伝送装置。
【請求項12】
パルス光源と、該パルス光源からの出力光を増幅する光増幅器と、該光増幅器からの出力光を伝播させる光ファイバと、該光ファイバ伝播後の光の位相を測定して電気信号に変換する位相測定手段とを含む揺らぎ生成部と、該位相測定手段からの出力電気信号の利得を調整する増幅器と、該増幅器からの出力電気信号と伝送予定の信号とを混合する加算器と、伝送用光源と、該加算器からの出力信号を該伝送用光源からの出力光に重畳する変調器とを含む信号光生成部とを具備してなる光送信手段を有し、
前記位相を測定する手段は、1ビット遅延干渉計と、光検出器2つを有する平衡型受光器とを含み、
前記パルス光源からの出力パルス光は、前記1ビット遅延干渉計の光路長差に対応する繰り返しレートになっており、該パルス光は前記光増幅器により増幅され、前記光ファイバを伝播し、前記1ビット遅延干渉計に導かれ、
該1ビット遅延干渉計の光路長差に相当する遅延時間をτ、前記パルス光の角振動数をω、ある整数をnとしてωτ=(n+1/2)πを満たすように該光路長差が調整され、該1ビット遅延干渉計からの2つの出力は前記平衡型受光器内の互いに異なる2つの光検出器に導かれて電気信号に変換され、該電気信号は差分信号となって該平衡型受光器の出力となり、該差分信号は前記増幅器により出力強度が調整され、その後、該差分信号は前記変調器を用いて前記伝送用光源からの出力光に重畳されることを特徴とする光通信用伝送装置。
【請求項13】
前記パルス光源からの出力光は、前記光ファイバでの伝播を通して位相揺らぎが拡大することを特徴とするとする請求項12記載の光通信用伝送装置。
【請求項14】
前記パルス光源が、レーザー光源と強度変調器により構成されることを特徴とするとする請求項12記載の光通信用伝送装置。
【請求項15】
前記パルス光源が、レーザー光源と位相変調器と分散を補償する手段により構成されることを特徴とするとする請求項12記載の光通信用伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−3256(P2013−3256A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132333(P2011−132333)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】