説明

光通信用光学部品

【課題】 小型化の要請に的確に応じることができ、且つ各構成要素の熱膨張係数差の影響を受け難く、しかも光ファイバの先端に対する入射及び出射態様を調整できるようにして光学特性を常に要求に合致させることが可能な光通信用光学部品を提供する。
【解決手段】 光ファイバ2を保持するファイバ保持部材3と、光ファイバ2の先端からの光路上に配置され且つファイバ保持部材3に装着されるレンズ4とを備えてなる光通信用光学部品1において、レンズ4の後端に形成した平面部4aを、その平面部4aが光ファイバ2の先端と対向する状態となるように、ファイバ保持部材3の先端に形成した平面部6aに接合固定し、且つ、レンズ4の平面部4aと光ファイバ2の先端2aとの間に空隙Sを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信用光学部品に係り、詳しくは、光ファイバを保持するファイバ保持部材に、レンズを適切な状態で固定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、光通信の分野においては、例えば、レーザーダイオード等からなる半導体発光素子と、フォトダイオード等からなる半導体受光素子と、光ファイバとを、光学的に結合してなる光モジュールが多頻度で使用されるに至っている。このような光モジュール或いはこれに準じる光モジュールにおいては、それを構築する一部品として、光ファイバを内孔に保持するファイバ保持部材と、光ファイバの先端からの光路上に配置され且つファイバ保持部に装着されるレンズとを備えてなる光通信用光学部品が広範に亘って使用されている。
【0003】
この種の光通信用光学部品の一例として、下記の特許文献1〜4によれば、光ファイバから出射されて広がった光(光信号)を平行光にし或いは平行光を光ファイバに集光させるように構成した光コリメータが公知となっている。そして、光ファイバ通信システムの普及に伴って、限られた機器設置スペースの有効活用のために光ファイバ通信機器の高密度化が検討されている現況においては、その内部に用いられる上記の光コリメータの小型化及び高性能化が要求されている。
【0004】
図5は、現況において一般に使用されている3種の光コリメータを例示している。これらの光コリメータ1Xは、スリーブ6Xの内孔の先端側に、屈折率分布型のGRINレンズ4X(同図(a)参照)、または屈折率が均一なCレンズ4Y(同図(b)参照)、もしくは軸方向両端面が凸曲面とされたドラムレンズ4Z(同図(c)参照)を嵌入し、その内孔の後方にそれらに近接させて、光ファイバ2Xを内部に保持してなるフェルール5X(もしくはレセプタクル)を嵌入したものである。この場合、各フェルール5Xの先端面5Xaは、光ファイバ2Xの先端面からの反射戻り光を防止するために斜めに研磨してなる傾斜面とされると共に、各フェルール5X及び各レンズ4X、4Y、4Zは、光コリメータ1Xとしての作動を正確且つ確実化すべく光学的に適切な位置関係となるように調心を行った上で、接着剤によりスリーブ6Xの内孔(内周面)に固定されている。
【0005】
また、上述の光通信用光学部品としては、光コリメータ以外に、例えば下記の特許文献5に開示されているように、単一モード光ファイバの先端に、多モード光ファイバを接続し、その多モード光ファイバの先端面を、レンズ効果を持たせるべく球面としたものも使用が試みられ或いは実用化されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−315610号公報
【特許文献2】特開2003−315612号公報
【特許文献3】特開2003−344697号公報
【特許文献4】特開2003−344698号公報
【特許文献5】特開平2−216109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の図5(a)、(b)、(c)に示す光コリメータ1Xのように、各スリーブ6Xの内孔にそれぞれ、各レンズ4X、4Y、4Zと、各フェルール5Xとを挿入固定する構造によれば、接着剤の光軸への回り込みを防止して、高出力のレーザ光線による接着剤の損傷を回避する必要があると共に、耐環境特性を安定させるべく、ある程度の接着代が必要であり、そのため各レンズ4X、4Y、4Zは何れも、接着代を大きく取れる円柱状とされていた。
【0008】
この場合、近年における光コリメータの小型化の要請に応じるには、図5(a)に示すGRINレンズ4Xでは、円柱直径と全長とを短くすればよいことになるが、そのような単純な手法では、コリメート光(平行光)のビーム直径を小径にしようとした場合、極めて急峻な屈折率勾配が必要となることから、コスト面及び製作面の観点から、その実現性は実質的に不可能と言わざるを得ない。また、図5(b)、(c)に示すCレンズ4Y及びドラムレンズ4Zの円柱直径と全長とを短くした場合には、コリメート光のビーム直径を小径にすべく、曲率半径の小さな曲面を円柱の端面に形成しようとしても、円柱の半径以下の曲率半径を有する曲面を当該端面に研磨により形成することは技術的に極めて困難である。以上の事項を勘案すれば、上記3種のレンズ4X、4Y、4Zの何れであっても、円柱直径によりコリメート光のビーム直径が制約され、光コリメータ1Xの小型化の要請に的確に応じることができないという問題がある。
【0009】
更に、上記の各スリーブ6Xと、各レンズ4X、4Y、4Zと、各フェルール5Xとの間には、熱膨張係数差があることから、これらの各構成要素を小型にできないことに起因して、使用時の温度変化に伴う個々の構成要素の膨張量或いは収縮量が大きく相違し、光学特性に狂いが生じるおそれがある。特に、このような熱膨張差が生じることにより各レンズ4X、4Y、4Zに応力が集中した場合には、屈折率や光分散などの光学特性の狂いに起因するトラブルが増大し、光学系としての安定性に劣るという問題が生じる。しかも、高温時や低温時等のように室温と大幅に異なる温度条件の下では、各スリーブ6Xと、各フェルール5X及び各レンズ4X、4Y、4Zとの接着部に剥離が生じて本質的な部品特性が阻害されるばかりでなく、各レンズ4X、4Y、4Zに歪が生じて透過光量が変化し、或いは偏波特性が変化し、更には安定したコリメート光が得られなくなる等の不具合を招く。その結果、この種の光通信用光学部品の使用環境が不当に限られ、特に屋外での使用が大幅に制限されると共に、光デバイスに組み込む際には高精度な光学的特性が要求されるため、使用可能な温度範囲が極めて狭小になり、使用時における制限が一層厳格になるという問題を有している。
【0010】
また、光コリメータ以外の光通信用光学部品として、上記の特許文献5に開示のものは、単一モード光ファイバの先端面に、多モード光ファイバの後端面を接合固定し、その多モード光ファイバの先端面をレンズ効果を持たせるための球面としたものであって、屈折率が同一の光ファイバ同士を接続したものであるため、両者の相互間においては光ファイバの端面同士が隙間なく密接した状態にある。このような構成であれば、仮に、上述の光コリメータに代表されるように、光ファイバの先端から出射する光の出射態様や光ファイバの先端に入射する光の入射態様が、光学特性に大きな影響を与える光通信用光学部品においては、光ファイバの先端に対する光の入射及び出射態様を一切調整できないことになる。このため、光ファイバとレンズとを組み付ける際、及び組み付けた後に光学特性を所望の特性に調整或いは微調整したいとの要請があっても、そのような要請に応じることができず、光学特性に微妙な狂いが生じる等により所望の特性を有しない光通信用光学部品をそのまま使用し或いは廃棄処分にせねばならないという致命的な問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、小型化の要請に的確に応じることができ、且つ各構成要素の熱膨張係数差の影響を受け難く、しかも光ファイバの先端に対する入射及び出射態様を調整できるようにして光学特性を常に要求に合致させることが可能な光通信用光学部品を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明は、光ファイバを保持するファイバ保持部材と、前記光ファイバの先端からの光路上に配置され且つ前記ファイバ保持部材に装着されるレンズとを備えてなる光通信用光学部品において、前記レンズの後端に形成した平面部を、該平面部が前記光ファイバの先端と対向する状態となるように、前記ファイバ保持部材の先端に形成した平面部に接合固定し、且つ、前記レンズの平面部と前記光ファイバの先端との間に空隙を設けたことに特徴づけられる。この場合、前記レンズの平面部は、光ファイバの光軸に対して垂直となるようにファイバ保持部材の平面部に接合固定されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、光ファイバを保持するファイバ保持部材の先端に形成した平面部と、レンズの後端に形成した平面部とが接合固定されているため、換言すればファイバ保持部材の先端にレンズが平面部同士を接合させた状態で付設されているため、レンズの形状や大きさがファイバ保持部材等の他の構成要素の影響を受け難くなる。したがって、レンズの設計の自由度が増大して、レンズを小型にした上で曲率半径の小さな曲面を形成できることになり、ビーム直径等の光学特性が制約を受け難くなり、好適な光学特性を得ることができる。加えて、ファイバ保持部材もレンズの大きさ等による制約を受け難くなることから小型にすることができ、レンズの小型化と相俟って、光通信用光学部品の全体的な小型化が図られる。更に、レンズとファイバ保持部材との間に熱膨張係数差があっても、両者の膨張や収縮が相互に影響を及ぼすことが抑制されると共に、特にレンズに応力が集中して屈折率や光分散などの光学特性に狂いが生じるという不具合が回避され、安定した光学特性が得られる。したがって、光通信用光学部品の使用環境が不当に限られなくなり、屋外での使用も制限され難くなると共に、光デバイスに組み込む際の高精度な光学的特性を維持しつつ、使用可能な温度範囲を大幅に拡大することが可能となる。しかも、レンズの平面部と光ファイバの先端とが対向した状態で、その両者間に空隙が形成されていることから、レンズの平面部と光ファイバの先端との距離を適宜変更して光ファイバの先端を自由に位置決めできることになり、光ファイバの先端からの光の出射態様や、光ファイバの先端への光の入射態様を最適な状態に調整することが可能となる。したがって、光ファイバとレンズとを組み付ける際、及び組み付けた後に光学特性を所望の特性に調整或いは微調整したいとの要請に的確に応じ得ることになり、常に最良の光学特性を確保することが可能となる。更に、レンズの平面部と光ファイバの先端とが、空隙の存在により離隔しているため、レンズと光ファイバとの間で発生する反射の戻り光が、レンズ側に入射するという事態を抑制することもできる。
【0014】
上記の構成を備えた光通信用光学部品は、光ファイバから出射されて広がった光をレンズを透過させて平行光にし、または平行光をレンズを透過させて光ファイバに集光させる光コリメータであることが好ましい。
【0015】
このように光通信用光学部品が光コリメータであれば、既述のように、レンズ及びファイバ保持部材の小型化に伴う光コリメータの小型化、レンズとファイバ保持部材との間の熱膨張係数差に起因する不具合の回避、レンズの平面部と光ファイバの先端との間に空隙が存在することによる光ファイバの先端に対する入射光及び出射光の最適調整などの利点がより顕著に得られることに加えて、ビーム径の小さいコリメート光(平行光)が得られるという利点をも享受することができる。
【0016】
以上の構成において、光ファイバの先端は、光軸に対して傾斜する傾斜面とされていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、光ファイバの先端面での反射光を光軸外に逃がすことができるため、ノイズが少なくなると共に、透過光量が増加し、結果として長距離伝送が可能となる。
【0018】
また、光通信用光学部品が光コリメータである場合には、前記平行光のビーム直径の最小値が200μm以下であることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、光ファイバに入射されるレンズ透過前の平行光、及び光ファイバから出射されたレンズ透過後の平行光のビーム直径が極めて小径となり、好適なビーム特性を確保しつつ光学系の小型化を図ることが可能となる。このように、平行光のビーム直径を小径(より好ましくは141μm以下、さらに好ましくは100μm以下)にできるのは、既に述べた本発明に係る光通信用光学部品の特徴的構成に由来するものである。因みに、例えば既述の図5に示すような従来の一般的な光コリメータの平行光は、ビーム直径が400μm程度であった。
【0020】
以上の構成において、ファイバ保持部材が、光ファイバを内孔に保持する第1保持部材と、該第1保持部材の外周側に嵌合された第2保持部材とを有し、レンズの後端に形成した平面部を、該平面部が前記第1保持部材の先端と対向する状態となるように、前記第2保持部材の先端に形成した平面部に接合固定してなることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、光ファイバを内孔に保持してなる第1保持部材(フェルール等)が、その外周側の第2保持部材(スリーブ等)に光軸方向に移動可能に保持され得ることになり、したがって第1保持部材を第2保持部材に対して光軸方向に移動させれば、光ファイバの先端とレンズの平面部との離隔寸法を調整できることになり、その調整作業が容易化されるのみならず、軸合せ等の組み付け作業も効率よく且つ正確に行い得ることになる。
【0022】
この構成において、第1保持部材の先端が、光軸に対して傾斜する傾斜面であり、且つ該傾斜面が、光ファイバの先端の傾斜面と同一面となるように形成されていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、第1保持部材の内孔に光ファイバを保持した状態で、第1保持部材の先端を研磨等により傾斜面とすれば、これと同時に光ファイバの先端も研磨等により傾斜面とされることになり、微小径の光ファイバの先端に所望の角度の傾斜面を容易に形成することが可能となる。
【0024】
以上の構成において、レンズの先端面が、凸曲面を有してなることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、他の構成要素による制約を受けることなく、レンズの先端に所望の曲率の凸曲面を正確に形成して、要請に応じたレンズ効果を得ることが可能となる。
【0026】
この場合、前記レンズの凸曲面は、球面であることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、レンズの先端に凸曲面を形成するに際して、その曲率の制御が容易となり、レンズの製作容易化が図られる。
【0028】
更に、前記レンズは、球レンズの一部を加工することにより製作されてなるものであることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、球レンズを作製した後に、平面部等を研磨加工等により形成すればよいことになるので、より一層曲率の制御が容易になると共に、レンズの更なる製作容易化が図られる。
【0030】
加えて、前記レンズの平面部から球面の先端頂点までの距離Lが、前記球レンズの半径R以上の長さであることが好ましい。
【0031】
このようにすれば、レンズに鋭角部が形成されることを有効に阻止できるため、レンズをファイバ保持部材に組み付ける場合等におけるレンズの取扱い時に、ピンセット等の把持部材でレンズを容易に掴み得ることになり、レンズの欠損や滑落を抑制しつつ、その取扱いの容易性を確保することが可能となる。
【0032】
また、前記レンズの平面部における少なくとも光が透過する面、及び/または前記レンズの先端面における少なくとも光が透過する面が、反射防止コートされていることが好ましい。
【0033】
このようにすれば、レンズでの反射戻り光に起因するノイズが低減され、安定した高速の光通信を行う上で極めて有利となる。
【0034】
更に、前記レンズの素材がガラスであり且つその屈折率が1.7以上であることが好ましい。
【0035】
このようにすれば、現実に製作が可能な範囲内で可及的に小さな曲率半径の曲面を有し且つビーム径の小径化を図ることが可能なレンズを得ることができる。因みに、通常の光学ガラスの屈折率は、1.5程度である。しかも、このように屈折率が1.7以上であると、球面収差の影響を低減させ、高結合効率が得られるという利点も享受できることとなる。
【0036】
以上の構成において、ファイバ保持部材の外径とレンズの外径とを実質的に同一にし、且つその両者に跨ってそれらの外周側に外套管を嵌合させるようにすることもできる。
【0037】
このようにすれば、ファイバ保持部材及びレンズの両者の外周側に外套管が嵌合されることから、ファイバ保持部材とレンズとを同心軸上に位置決めし易くなり、調心の簡素化や自動化が容易に行われ得ることになる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように本発明に係る光通信用光学部品によれば、ファイバ保持部材の先端にレンズが平面部同士を接合させた状態で付設されているため、レンズの形状や大きさがファイバ保持部材等の他の構成要素の影響を受け難くなり、レンズの設計の自由度が増大すると共に、ビーム直径等の光学特性が制約を受け難くなり、好適な光学特性を得ることができる。加えて、ファイバ保持部材もレンズの大きさ等による制約を受け難くなることから小型にすることができ、レンズの小型化と相俟って、光通信用光学部品の全体的な小型化が図られる。更に、レンズとファイバ保持部材との間に熱膨張係数差があっても、両者の膨張や収縮が相互に影響を及ぼすことが抑制されると共に、特にレンズに応力が集中して屈折率や光分散などの光学特性に狂いが生じるという不具合が回避されるため、光通信用光学部品の使用環境が不当に限られなくなり、光デバイスに組み込む際の高精度な光学的特性を維持しつつ、使用可能な温度範囲を大幅に拡大することが可能となる。しかも、レンズの平面部と光ファイバの先端とが対向した状態で、その両者間に空隙が形成されているため、レンズの平面部と光ファイバの先端との距離を適宜変更して光ファイバの先端を自由に位置決めできることになると共に、光ファイバとレンズとを組み付ける際、及び組み付けた後に光学特性を所望の特性に調整或いは微調整したいとの要請に的確に応じ得ることになり、常に最良の光学特性を確保することが可能となる。更に、レンズの平面部と光ファイバの先端とが、空隙の存在により離隔しているため、レンズと光ファイバとの間で発生する反射の戻り光が、レンズ側に入射するという事態を抑制することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光通信用光学部品としての光コリメータの概略構成を例示している。同図に示すように、光コリメータ1は、光ファイバ2を保持するファイバ保持部材3と、光ファイバ2の先端からの光路上に配置され且つファイバ保持部材3の先端に装着されたレンズ4とを備えてなる。この場合、ファイバ保持部材3は、光ファイバ2を内孔に固定保持してなる円柱状の第1保持部材(フェルール)5と、この第1保持部材5の外周側に同軸上に嵌合保持された円筒状の第2保持部材(スリーブ)6とを有し、第2保持部材6の先端面が、光軸(光ファイバ2の光軸)と直交する平面部6aとされている。また、レンズ4の後端面も、光軸と直交する平面部4aとされ、このレンズ4の平面部4aは、当該平面部4aが第1保持部材5の先端と空隙Sを介して対向する状態となるように、第2保持部材6の平面部6aに接着剤により接合固定されている。尚、第2保持部材6の平面部6aは、光軸の法線に対して±0.5度以下、好ましくは±0.1度以下の精度で形成されている。
【0041】
更に、第1保持部材5の先端面は、光軸に対して傾斜する傾斜面5aとされ、この傾斜面5aは、光ファイバ2の先端面である傾斜面2aと同一面となるように形成されている。詳述すると、光ファイバ2が第1保持部材5の内孔に固定保持された状態で、その両者2、5の先端が斜め研磨されることにより光ファイバ2の先端面が傾斜面2aとされており、これにより光ファイバ2の先端での反射戻り光が抑制されるようになっている。また、光ファイバ2の先端の傾斜面2aにおける光が透過する部分は、反射防止コートされている。そして、光ファイバ2の先端の傾斜面2aとレンズ4の平面部4aとの間には、空隙Sが形成されており、第1保持部材5が第2保持部材6に対して相対的に軸方向移動して光ファイバ2先端の位置決めを行い得る構成とされている。
【0042】
一方、レンズ4の先端、つまりレンズ4の平面部4aと反対側には、凸曲面部(球面部)4bが形成されているが、この球面部4bは、先ず元レンズとして球レンズを作製しておき且つその球レンズの一部を研磨加工等により切除して平面部4aとした後の残余部である。そして、このレンズ4の平面部4aから球面部4bの先端頂点までの距離Lは、元レンズである球レンズの半径Rよりも長くされている。また、このレンズ4の外径(光軸廻りの最大外径)は、第1保持部材5の内孔の径よりも大きく、この実施形態では、レンズ4の外径と第1保持部材5の外径とが実質的に同一とされている。更に、このレンズ4は、屈折率が1.7以上のMK−18(日本電気硝子株式会社製)、もしくは1.9以上のRH−21(日本電気硝子株式会社製)等のように屈折率が高く且つ略均一な光学ガラスからなり、光コリメータ1の小型・細径化のみならず、球面収差の影響を低減させ、高結合効率化が図られている。加えて、このレンズ4の平面部4aと球面部4bとにおける光が透過する部分には、反射防止コートが施されており、既述のように光ファイバ2の先端に反射防止コートが施されている事と相俟って、反射戻り光によるノイズが低減し、安定した高速の光通信が行えると共に、透過光量が増加し、長距離伝送の可能性が高まる。
【0043】
そして、この光コリメータ1におけるコリメート光のビーム直径の最小値は200μm以下、好ましくは141μm、より好ましくは100μm以下であって、従来構造の光コリメータにおけるコリメート光のビーム直径である400μm程度と比較すると、約1/2、好ましくは1/2.83、より好ましくは1/4程度となる。これにより、光コリメータを用いた光デバイスを構成する際に、内部部品の断面積を約1/4、好ましくは1/8、より好ましくは1/16程度と小さくできるので、例えば、光アイソレータに用いる高価なファラデー回転子を元板から約4倍、好ましくは8倍、より好ましくは16倍取ることが可能となり、経済面で有利となる。尚、この光コリメータ1におけるコリメート光のビーム直径の最小値を100μm以下とすれば、MEMS(Micro Electro Mechanical System : 微少な電気回路と機械的構造を一体化したもの)機構を用いた微少断面積を持つ内部部品に、安価なバルク型の光コリメータで対応することが可能となる。
【0044】
また、この光コリメータ1は、レンズ4がファイバ保持部材3の先端に露出した状態で付設されているため、レンズ4の大きさや球面部4bの曲率半径が、ファイバ保持部材3による制約を受け難くなり、これにより従来構造の光コリメータに比して小型化が可能となる。そのため、各構成要素の熱膨張差に起因する膨張・収縮量を小さくすることができ、これに伴う光学特性の狂いが生じ難くなるため、従来は存在し得なかった小寸法化を図りつつ耐環境性に優れた高性能な光コリメータ1を実現することが可能となる。しかも、少なくとも1つの平面部4aが形成された高屈折率の小型のレンズ4を、ファイバ保持部材3における第2保持部材6の先端の平面部6aに、角度精度良く接合固定することにより、光ファイバ2の先端から出射されて広がった光(光信号)をレンズ4を透過させて平行光にし或いは平行光をレンズ4を透過させて光ファイバ2の先端に集光させる小型の光コリメータ1、特に高速大容量の光ファイバ通信システムを構築するための光学特性に優れた小型の光コリメータ1を作製することが可能となる。
【0045】
この場合、第2保持部材6の先端の平面部6aが、光軸の法線に対して±0.5度以下の精度で形成されているので、レンズ4の平面部4aとの接着時に調整することにより、当該精度に起因するコリメート光の光軸の傾きをなくすことができるのみならず、接着剤の厚みのアンバランスは、最大8μm程度であり、信頼性が損なわれることはない。また、第2保持部材6の先端の平面部6aを、光軸の法線に対して±0.1度以下の精度で形成すれば、その平面部6aとレンズ4の平面部4aとを擦り合わせて密着するように(例えば押し付け密着のみにより)組み立てても、当該精度に起因するコリメート光の光軸の傾き角度は0.1度以下となり、光コリメータ1として良好な光学特性が得られる。
【0046】
更に、この光コリメータ1は、先端面が傾斜面5aとされ且つ光ファイバ2を保持してなる第1保持部材5が、第2保持部材6の内孔に嵌合されてなり、第2保持部材6の先端の平面部6aに接合固定されたレンズ4の平面部4aと、これに対向する第1保持部材5の先端の傾斜面5aとの間に空隙Sが設けられているので、光ファイバ2の先端面2aは第1保持部材5と共にレンズ4に対して自由に位置決めできることになり、組み付け時における調心及び固定の際に、適度に光コリメータ1の作動距離(詳細は後述する)をコントロールすることが可能となる。
【0047】
図2は、本発明の第2実施形態に係る光通信用光学部品としての光コリメータの概略構成を例示している。同図に示す第2実施形態に係る光コリメータ1が、上述の第1実施形態に係る光コリメータ1と相違している点は、レンズ4が光軸を中心軸とする円柱形状をなし、その円柱部分4cの先端に球面部4bが形成されている点である。尚、このレンズ4も、先ず元レンズとして球レンズを作製しておき且つその球レンズの一部を研磨加工等により切除して円柱部分4cを形成すると共に、その残余部を球面部4bとしたものである。その他の構成は、上述の第1実施形態と同一であるので、両者に共通の構成要素については図2に同一符号を付し、その説明を省略する。そして、この第2実施形態によっても、上述の第1実施形態と同一の作用効果を奏するので、ここでは便宜上、その説明を省略する。
【0048】
図3は、本発明の第3実施形態に係る光通信用光学部品としての光コリメータの概略構成を例示している。同図に示す第3実施形態に係る光コリメータ1が、上述の第1実施形態に係る光コリメータ1と相違している点は、ファイバ保持部材3における第2保持部材6とレンズ4とに跨って、それらの外周側に円筒状の外套管7を嵌合させた点である。そして、外套管7の内周面と第2保持部材6の外周面とは、接着剤により固定されている。この場合、第2保持部材6の外径とレンズ4の外径とは、実質的に同一であると共に、レンズ4の先端頂点は、外套管7の先端よりも光軸方向先方側に突出し、また第2保持部材6の後端は、外套管7の後端よりも光軸方向後方に突出している。このように外套管7を光コリメータ1の最外周に配設すれば、ファイバ保持部材3(第2保持部材6)とレンズ4とを外套管7により同心に位置決めしつつ接着固定することができ、光コリメータ1を製作する際の調心作業の容易化並びに自動化が図られると共に、製作コストの低廉化を図る上で有利となる。その他の構成は、上述の第1実施形態と同一であるので、両者に共通の構成要素については図3に同一符号を付し、その説明を省略すると共に、この第3実施形態によっても、ここで特に述べた事項以外については上述の第1実施形態と同一の作用効果を奏するので、ここでは便宜上、その説明を省略する。尚、既述の図2に示す第2実施形態に係る光コリメータ1の最外周に、外套管を同様にして嵌合させることも可能である。
【0049】
図4は、本発明の第4実施形態に係る光通信用光学部品としての光コリメータの概略構成を例示している。同図に示す第4実施形態に係る光コリメータ1が、上述の第1実施形態に係る光コリメータ1と相違している点は、ファイバ保持部材3における第2保持部材6を廃止して、内孔に光ファイバ2を保持してなる第1保持部材5の先端に光軸と直交する平面部5bを形成し、その平面部5bとレンズ4の後端に形成した平面部4aとを接着剤により接合固定すると共に、光ファイバ2が光軸方向に移動して自由に位置決めされ得る状態となるように、光ファイバ2の先端の傾斜面2aとレンズ4の平面部4aとの間に空隙Sを設けた点である。このようにすれば、部品点数が削減されて構成が簡素になると共に、材料費の節減が図られる。その他の構成は、上述の第1実施形態と同一であるので、両者に共通の構成要素については図4に同一符号を付し、その説明を省略すると共に、この第4実施形態によっても、ここで特に述べた事項以外については上述の第1実施形態と同一の作用効果を奏するので、ここでは便宜上、その説明を省略する。尚、この第4実施形態においては、レンズ4の形状が、図2に示す第2実施形態に係るものと同一であってもよく、また光コリメータ1の最外周に、図3に示す第3実施形態と同様にして外套管を嵌合させてもよい。
【0050】
尚、以上の実施形態では、光コリメータに本発明を適用したが、光ファイバ、ファイバ保持部材、及びレンズを有してなる光通信用光学部品でありさえすれば、その他のものにも同様に本発明を適用することが可能である。
【実施例1】
【0051】
本発明の実施例1として、図1に示す形態(第1実施形態)の光コリメータ1を作製した。この実施例1に係る光コリメータ1の第1保持部材5は、外径が0.25mm、内径が0.126mm、及び全長が3mmのガラス製であり、先端面が光軸の法線に対して8度の傾斜角度となるように研磨してなる傾斜面5aとされ、且つその傾斜面5aと一体として先端面が研磨された光ファイバ2を内孔に保持してなる。また、この光コリメータ1の第2保持部材6は、外径が1mm、内径が0.255mm、及び全長が2mmのガラス製であり、第1保持部材5の外周側に嵌合されてなる。更に、この光コリメータ1のレンズ4は、屈折率が略均一な光学ガラスRH−21(日本電気硝子株式会社製)からなる直径1mmの球レンズを元レンズとしたものであって、この球レンズの一部に研磨加工等を施すことにより、その平面部4aから球面部4bの先端頂点までの距離が0.7mmとなるように形成されてなる。そして、第2保持部材6の先端の平面部6aと、レンズ4の後端の平面部4aとは、接触した状態で接着剤により接合固定されると共に、レンズ4の平面部4a及び球面部4bと、光ファイバ2の先端の傾斜面2aとにおける少なくとも光が透過する部分には、反射戻り光を低減すべく反射防止コートが形成されている。また、光ファイバ2の先端の傾斜面2aと、レンズ4の後端の平面部4aとは、光コリメータとして正しく作動するように、光学的に適切な距離である0.16mmだけ離隔している。
【0052】
このような構成からなる本発明の実施例1に係る光コリメータ1について、挿入損失(インサーションロスとも称される)、反射減衰量(リターンロスとも称される)、及びコリメート光のビーム直径を測定した。これらの測定には、波長1550nmの光を用いると共に、挿入損失については、2個の光コリメータ1を用いて作動距離が5mmとなるように対向配置した状態で測定を行った。尚、作動距離とは、光コリメータ1を対向配置した際におけるそれぞれのレンズ4の球面部4bの先端頂点間に存する空間の距離を意味している。以上のようにして測定した結果を、下記の表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
上記の表1から把握できるように、挿入損失及び反射減衰量は、0.1mm程度のビーム直径を有する光コリメータとしては必要十分な性能を発揮しており、実用上何ら問題が無いことを確認した。尚、上記の測定では、作動距離を5mmに設定したが、この実施例1に係る光コリメータ1では、光ファイバ2の先端をレンズ4の平面部4aに対して接近及び離反させ得る構造となっていることから、作動距離を例えば1mmから6mm程度に自由に調整することができる。
【実施例2】
【0055】
本発明の実施例2として、図2に示す形態(第2実施形態)の光コリメータ1を作製した。この実施例2に係る光コリメータ1の第1保持部材5及び第2保持部材6は、各部の寸法や材質等が上述の実施例1と同一である。そして、この光コリメータ1のレンズ4は、屈折率が略均一な光学ガラスRH−21(日本電気硝子株式会社製)からなる直径2mmの球レンズを元レンズとしたものであって、この球レンズの一部に研磨加工等を施すことにより、その平面部4aから球面部4bの先端頂点までの距離が1.8mmとなるように形成されてなる。尚、第2保持部材6とレンズ4との接合状態や、適所に反射防止コートを形成した点は、上述の実施例1と同一である。また、光ファイバ2の先端の傾斜面2aと、レンズ4の平面部4aとは、光コリメータとして正しく作動するように、光学的に適切な距離である0.12mmだけ離隔している。
【0056】
このような構成からなる本発明の実施例2に係る光コリメータ1について、上記と同様の項目である挿入損失、反射減衰量、及びコリメート光のビーム直径を測定した。これらの測定には、波長1550nmの光を用いると共に、挿入損失については、2個の光コリメータ1を用いて作動距離が10mmとなるように対向配置した状態で測定を行った。その測定結果を、下記の表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
上記の表2から把握できるように、挿入損失及び反射減衰量は、0.2mm程度のビーム直径を有する光コリメータとしては必要十分な性能を発揮しており、実用上何ら問題が無いことを確認した。尚、上記の測定では、作動距離を10mmに設定したが、この実施例2に係る光コリメータ1では、光ファイバ2の先端をレンズ4の平面部4aに対して接近及び離反させ得る構造となっていることから、作動距離を例えば5mmから15mm程度に自由に調整することができる。加えて、この実施例2に係る光コリメータ1では、直径2mmの球レンズからなる元レンズの光が透過しない部分を芯取り加工することにより円柱直径が1mmとなるまでレンズ4を小型化できると共に、作動距離も上記の如く延長を実現することができる。
【実施例3】
【0059】
本発明の実施例3として、図3に示す形態(第3実施形態)の光コリメータ1を作製した。この実施例3に係る光コリメータ1の第1保持部材5及び第2保持部材6も、各部の寸法や材質等は上述の実施例1、2と同一である。そして、この光コリメータ1のレンズ4は、屈折率が略均一な光学ガラスRH−21(日本電気硝子株式会社製)からなる直径1mmの球レンズを元レンズとしたものであって、この球レンズの一部に研磨加工等を施すことにより、その平面部4aから球面部4bの先端頂点までの距離が0.7mmとなるように形成されてなる。また、この光コリメータ1の外套管7は、外径が1.4mm、内径が1mm、及び全長が3mmのガラス製である。そして、第2保持部材6の先端の平面部6aと、レンズ4の後端の平面部4aとを接触させた状態で、これらを外套管7の内孔に挿入することにより、光軸の法線方向(同軸方向)の調芯を半自動的に行った後、接着剤によって接着固定されている。尚、適所に反射防止コートを形成している点は、上述の実施例1、2と同一である。また、光ファイバ2の先端の傾斜面2aと、レンズ4の平面部4aとは、光コリメータとして正しく作動するように、光学的に適切な距離である0.16mmだけ離隔している。
【0060】
このような構成からなる本発明の実施例3に係る光コリメータ1について、既述の場合と同様の項目である挿入損失、反射減衰量、及びコリメート光のビーム直径を測定した。これらの測定には、波長1550nmの光を用いると共に、挿入損失については、2個の光コリメータ1を用いて作動距離が5mmとなるように対向配置した状態で測定を行った。その測定結果を、下記の表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
上記の表3から把握できるように、挿入損失及び反射減衰量は、0.1mm程度のビーム直径を有する光コリメータとしては必要十分な性能を発揮しており、実用上何ら問題が無いことを確認した。尚、上記の測定では、作動距離を5mmに設定したが、この実施例3に係る光コリメータ1では、光ファイバ2の先端をレンズ4の平面部4aに対して接近及び離反させ得る構造となっていることから、作動距離を例えば1mmから6mm程度に自由に調整することができる。加えて、この実施例3に係る光コリメータ1では、高精度に外径寸法が管理されたレンズ4と第2保持部材6とを、高精度に内径寸法が管理された外套管7に挿入することにより、光軸の法線方向(同軸方向)の調芯を半自動的に行えるため、調芯の手間を大幅に軽減することができる。また、外套管7によって、第2保持部材6の平面部6aとレンズ4の平面部4aとの接着部を保護して、機械的強度を向上させることもできる。
【実施例4】
【0063】
本発明の実施例4として、図1に示す形態(第1実施形態)の光コリメータ1を作製した。この実施例4に係る光コリメータ1の第1保持部材5は、外径が0.25mm、内径が0.126mm、及び全長が5mmのガラス製であり、先端面が光軸の法線に対して8度の傾斜角度となるように研磨してなる傾斜面5aとされ、且つその傾斜面5aと一体として先端面が研磨された光ファイバ2を内孔に保持してなる。また、この光コリメータ1の第2保持部材6は、外径が1mm、内径が0.255mm、及び全長が4mmのガラス製であり、第1保持部材5の外周側に嵌合されてなる。その他の構成は、上述の実施例1の場合と同様である。
【0064】
このような構成からなる本発明の実施例4に係る光コリメータ1について、既述の場合と同様の項目である挿入損失、反射減衰量、及びコリメート光のビーム直径を測定した。これらの測定には、波長1550nmの光を用いると共に、挿入損失については、2個の光コリメータ1を用いて作動距離が5mmとなるように対向配置した状態で測定を行った。その測定結果は、上述の実施例1と同一であったので、表の記載及びそれらに関する説明を省略する。
【実施例5】
【0065】
本発明の実施例5として、図1に示す形態(第1実施形態)の光コリメータ1を作製した。この実施例5に係る光コリメータ1の第1保持部材5及び第2保持部材6は、各部の寸法や材質等が上述の実施例1と同一である。そして、この光コリメータ1のレンズ4は、屈折率が略均一な光学ガラスMK−18(日本電気硝子株式会社製)からなる直径1mmの球レンズを元レンズとしたものであって、この球レンズの一部に研磨加工等を施すことにより、その平面部4aから球面部4bの先端頂点までの距離が0.7mmとなるように形成されてなる。尚、第2保持部材6とレンズ4との接合状態や、適所に反射防止コートを形成した点は、上述の実施例1と同一である。また、光ファイバ2の先端の傾斜面2aと、レンズ4の平面部4aとは、光コリメータとして正しく作動するように、光学的に適切な距離である0.25mmだけ離隔している。
【0066】
このような構成からなる本発明の実施例5に係る光コリメータ1について、上記と同様の項目である挿入損失、反射減衰量、及びコリメート光のビーム直径を測定した。これらの測定には、波長1550nmの光を用いると共に、挿入損失については、2個の光コリメータ1を用いて作動距離が5mmとなるように対向配置した状態で測定を行った。その測定結果を、下記の表4に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
上記の表4から把握できるように、挿入損失及び反射減衰量は、0.12mm程度のビーム直径を有する光コリメータとしては必要十分な性能を発揮しており、実用上何ら問題が無いことを確認した。尚、上記の測定では、作動距離を5mmに設定したが、この実施例5に係る光コリメータ1では、光ファイバ2の先端をレンズ4の平面部4aに対して接近及び離反させ得る構造となっていることから、作動距離を例えば1mmから8mm程度に自由に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光通信用光学部品の概略構成を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光通信用光学部品の概略構成を示す縦断側面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る光通信用光学部品の概略構成を示す縦断側面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る光通信用光学部品の概略構成を示す縦断側面図である。
【図5】図5(a)、(b)、(c)はそれぞれ、従来の光通信用光学部品の概略構成を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 光通信用光学部品(光コリメータ)
2 光ファイバ
2a 光ファイバの先端の傾斜面
3 ファイバ保持部材
4 レンズ
4a レンズの平面部
4b レンズの凸曲面(球面部)
5 第1保持部材(ファイバ保持部材)
5a 第1保持部材(ファイバ保持部材)の先端の傾斜面
5b 第1保持部材(ファイバ保持部材)の先端の平面部
6 第2保持部材(ファイバ保持部材)
6a 第2保持部材(ファイバ保持部材)の先端の平面部
7 外套管
S 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを保持するファイバ保持部材と、前記光ファイバの先端からの光路上に配置され且つ前記ファイバ保持部材に装着されるレンズとを備えてなる光通信用光学部品において、前記レンズの後端に形成した平面部を、該平面部が前記光ファイバの先端と対向する状態となるように、前記ファイバ保持部材の先端に形成した平面部に接合固定し、且つ、前記レンズの平面部と前記光ファイバの先端との間に空隙を設けたことを特徴とする光通信用光学部品。
【請求項2】
前記光ファイバから出射されて広がった光を前記レンズを透過させて平行光にし、または平行光を前記レンズを透過させて前記光ファイバに集光させる光コリメータであることを特徴とする請求項1に記載の光通信用光学部品。
【請求項3】
前記光ファイバの先端が、光軸に対して傾斜する傾斜面とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の光通信用光学部品。
【請求項4】
前記平行光のビーム直径の最小値が200μm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の光通信用光学部品。
【請求項5】
前記ファイバ保持部材が、前記光ファイバを内孔に保持する第1保持部材と、該第1保持部材の外周側に嵌合された第2保持部材とを有し、前記レンズの後端に形成した平面部を、該平面部が前記第1保持部材の先端と対向する状態となるように、前記第2保持部材の先端に形成した平面部に接合固定したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光通信用光学部品。
【請求項6】
前記第1保持部材の先端が、光軸に対して傾斜する傾斜面であり、且つ該傾斜面が、前記光ファイバの先端の傾斜面と同一面となるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の光通信用光学部品。
【請求項7】
前記レンズの先端面が、凸曲面を有してなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光通信用光学部品。
【請求項8】
前記レンズの凸曲面が、球面であることを特徴とする請求項7に記載の光通信用光学部品。
【請求項9】
前記レンズが、球レンズの一部を加工することにより製作されてなることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の光通信用光学部品。
【請求項10】
前記レンズの平面部から球面の先端頂点までの距離Lが、前記球レンズの半径R以上の長さであることを特徴とする請求項9に記載の光通信用光学部品。
【請求項11】
前記レンズの平面部における少なくとも光が透過する面が、反射防止コートされていることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の光通信用光学部品。
【請求項12】
前記レンズの先端面における少なくとも光が透過する面が、反射防止コートされていることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の光通信用光学部品。
【請求項13】
前記レンズの素材がガラスであり且つその屈折率が1.7以上であることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の光通信用光学部品。
【請求項14】
前記ファイバ保持部材の外径と前記レンズの外径とを実質的に同一にし、且つその両者に跨ってそれらの外周側に外套管が嵌合されてなることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の光通信用光学部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−193006(P2007−193006A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10054(P2006−10054)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】