説明

光選択透過フィルター、樹脂シート及び固体撮像素子

【課題】光遮断特性の入射角依存性が充分に低減され、光選択透過性に優れるとともに、充分な薄膜化が可能な光選択透過フィルター、該光選択透過フィルターに用いられる樹脂シート、及び、該光選択透過フィルターを有する固体撮像素子を提供する。
【解決手段】樹脂シートと、その少なくとも一方の表面に形成されてなる光学多層膜とを含む光選択透過フィルターであって、該樹脂シートは、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素を含有する樹脂層を有する光選択透過フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光選択透過フィルター、樹脂シート及び固体撮像素子に関する。より詳しくは、レンズユニット等の光学用途やオプトデバイス用途に有用であり、その他、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等として用いることができる光選択透過フィルター、それに用いられる樹脂シート、及び、光選択透過フィルターを有する固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光選択透過フィルターは、特定波長の光の透過率を選択的に低減するフィルターであり、例えば、機械部品、電気・電子部品、自動車部品等に用いられる光フィルター部材、光学部材等として好適に用いられるものである。例えば、代表的な光学部材の1つである固体撮像素子(カメラモジュールとも称す)においては、光学ノイズとなる赤外線(特に波長>780nm)を遮断する赤外線カットフィルター(IRカットフィルター)が用いられている。このような光選択透過フィルターとしては、基材に金属等を蒸着させ無機多層膜とし、各波長の屈折率を制御したものが主に用いられている。
【0003】
ところで、近年、光学部材等においては、例えば、デジタルカメラモジュールが携帯電話に搭載されるなど小型化が進み、光学部材の小型化が一層求められている。それにともなって、デジタルカメラモジュール等に用いられる光選択透過フィルター(赤外線カットフィルター)の薄膜化が望まれている。光選択透過フィルターの基材としては、従来ガラス板が用いられてきたが、このような薄膜化の要望の高まりを受け、樹脂を基材とする光選択透過フィルターが検討されている。
【0004】
基材に樹脂を用いた光選択透過フィルターとしては、例えば、厚みが200μm未満であり、かつ基材が耐リフロー性機能フィルムを含んで構成された光選択透過フィルターが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、このフィルターが、充分に薄くても耐熱性に優れる旨が記載されている。
特許文献1に記載の光選択透過フィルターは、基材上に反射型のIRカット膜(誘電体多層膜)を蒸着したものであるが、このような反射型フィルターは、光の遮断性能には優れるものの、光の入射角によって反射特性が変化する入射角依存性を有しており、その低減が課題であった。入射角依存性のないフィルターとしては、例えば、光吸収剤を含有する透明材料から構成される吸収型フィルターが挙げられるが、充分な吸収特性を実現するためにはかなりの厚みが必要であった。
【0005】
また、このような特性の異なる反射型フィルターと吸収型フィルターとを併用することによって、光学フィルターをより優れた性能を有するものとする試みも行われている。
例えば、特許文献2には、ガラス基板上に、近赤外吸収剤を含む顔料インクを塗布・乾燥して得られる光吸収膜と、該光吸収膜より高屈折率の膜とを交互に多層積層した光吸収フィルターが開示されている。特許文献2の光吸収フィルターは、角度依存性を低減しつつ薄型化をも実現しようとするものである。
また、特許文献3には、ガラス基板上に光学多層膜からなる熱線反射膜及び熱線吸収膜とが形成された熱線カットフィルターが開示されている。特許文献3に開示された熱線カットフィルターは、ランプから発生する、近赤外線領域から遠赤外線領域に亙って広帯域に熱線をシャープに且つほぼ完全にカットできる広帯域の熱線カットフィルターを提供することを目的とし、短波長領域(例えば波長2μm以下)の赤外線を熱線反射膜で遮断し、長波長領域(例えば波長2μm以上)の赤外線を熱線吸収膜で遮断しようとするものである。
【0006】
ところで、ガラス基板上に多層膜を蒸着形成する場合には、透過させたい波長域(例えば、可視領域)での高い透過性、及び、遮断したい波長域(例えば、近赤外領域)での高いカット性能を実現しようと多層膜の層数を多くすると、蒸着工程における加熱・冷却によって層間に応力が生じクラックや割れが発生するおそれがある。そこで、吸収ガラスを基材に用いることにより、多層膜の層数を減らすことが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、吸収ガラスは吸収色素濃度を高めるとクラックが発生し、ガラスとして成形できないため、吸収色素濃度を低くせざるを得ない。このため、充分な吸収性能を発揮するためには、相当な厚み(例えば、2mm程度)の吸収ガラスを用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−181121号公報
【特許文献2】特開2006−106570号公報
【特許文献3】特開平8−329719号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小檜山光信著、「光学薄膜フィルターデザイン」、オプトロニクス社、2006年10月5日、p.213−219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、反射型フィルターは光の遮断性能に優れるものの、入射角依存性を有するという課題がある。一方、吸収型フィルターには入射角依存性はないが、充分な吸収性能を発揮するためには厚みを増す必要がある。また、ガラス基材を用いる場合には、薄くすると割れやすくなる等の課題があり、薄膜化には限界があった。このように、従来の技術には、遮断性能の入射角依存性を低減して特定波長の光を効果的に遮断するとともに、薄膜化の要請にも応えることができる光選択透過フィルターを得るための工夫の余地があった。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、光遮断特性の入射角依存性が充分に低減され、光選択透過性に優れるとともに、充分な薄膜化が可能な光選択透過フィルター、該光選択透過フィルターに用いられる樹脂シート、及び、該光選択透過フィルターを有する固体撮像素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、光の透過率を選択的に低減する光選択透過フィルターについて種々検討したところ、反射型フィルター(反射層)と吸収型フィルター(吸収層)とを併用することにより、入射角依存性の低減と充分な遮断性能とを達成した。また、吸収層を樹脂層とすると、吸収剤としての色素を高濃度としても均一に層中に分散でき、吸収ガラスのようにガラスを用いる場合と比較して吸収層を大幅に薄膜化することができることを見出した。更に、光選択透過フィルターを、上述した吸収層(樹脂層)を有する樹脂シートの表面に反射膜としての光学多層膜が形成された構成とすることで、基材にガラスを用いる場合と比較して、フィルター全体を大幅に薄膜化できることも見出した。そして、このような光選択透過フィルターが固体撮像素子(カメラモジュール)等の光学用途やオプトデバイス用途等に好適に適用することができることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0012】
すなわち本発明は、樹脂シートと、その少なくとも一方の表面に形成されてなる光学多層膜とを含む光選択透過フィルターであって、上記樹脂シートは、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素を含有する樹脂層を有する光選択透過フィルターである。
本発明はまた、上記光選択透過フィルターに用いられる光選択透過フィルター用樹脂シートでもある。
本発明は更に、上記光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態である。
【0013】
本発明の光選択透過フィルターを構成する樹脂シートは、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素を含有する樹脂層を有するものである。これにより、特に上記光選択透過フィルターを780nm〜10μmの赤外光を低減させる赤外線カットフィルターに適用する場合に、光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができる。また、上記のような吸収性の樹脂層を光学多層膜と併用することで、光学多層膜の層数を減らすことができ、該多層膜における応力を緩和できることから、多層膜のクラックや割れを防止することができる。このような本発明の光選択透過フィルターに用いられる光選択透過フィルター用樹脂シートもまた、本発明の1つである。
【0014】
本発明における色素とは、特定波長の光を吸収する物質を意味する。
上記色素としては、600〜800nmの波長域に吸収極大を有するものであれば特に限定されず、樹脂と混合、混練可能な色素を用いることができる。上記吸収極大は、620〜780nmの波長域に存在することが好ましい。より好ましくは、650〜750nmの波長域に存在することである。
上記色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないことが好ましい。
【0015】
上記色素としては、後述する溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料又は液状樹脂原料に対する溶解性が高いとの理由から、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、ポルフィリン系色素、ピロメテン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、スクアリリウム系色素、トリアリールメタン系色素、インジゴ系色素、銅イオン系色素が好適である。また、可視光領域での透過率が高いとの理由から、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、ポルフィリン系色素、銅イオン系色素が好ましい。更にまた、耐光性に優れるという理由から、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素が好ましい。更に、可視光領域の透過率が特に高い・可視光領域に吸収がない点で、フタロシアニン系色素が好適である。また、耐熱性に優れる点で、フタロシアニン系色素が好適である。このように、上記色素が、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、ポルフィリン系色素及び銅イオン系色素からなる群より選択される少なくとも1種である形態は、本発明における好適な実施形態の1つである。
【0016】
上記フタロシアニン系色素としては、金属フタロシアニンが挙げられる。中心金属としては、銅、亜鉛、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等が挙げられる。中でも、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛が好ましく、より好ましくは銅である。銅を用いたフタロシアニンは、どのようなバインダー樹脂に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。
上記シアニン系色素としては、I塩シアニン、ClO塩シアニン、Br塩シアニン、OAc塩シアニン、BF塩シアニン等が挙げられる。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等が挙げられる。
上記銅イオン系色素としては、アクリル酸、カルボン酸、リン酸等の酸やケトン基、エステル基等の極性基が配位及び/又は結合した銅イオンを含む化合物等が挙げられる。
【0017】
上記色素は、上記樹脂層中に均一に分散又は溶解されてなることが好ましい。この形態において、色素を含有する樹脂層の可視光領域におけるヘイズが10%以下であることが好ましい。より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下である。また、この形態において、色素を含有する樹脂層の可視光500nmにおける透過率は60%以上が好適であり、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上である。
上記形態においては更に、上記色素を含有する樹脂層を含む光選択透過フィルターについても、可視光領域におけるヘイズ及び可視光500nmにおける透過率が、夫々上述した範囲にあることが好ましい。
【0018】
上記樹脂シートにおける色素の濃度(含有量)としては、樹脂シートの総量100質量%に対して、0.0001質量%以上、15質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、0.001質量%以上、10質量%未満である。更に好ましくは、0.001質量%以上、0.5質量%未満である。
上記樹脂層における色素の濃度(含有量)としては、樹脂層の総量100質量%に対して、0.0001質量%以上、15質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、0.001質量%以上、10質量%未満である。更に好ましくは樹脂層の総量100質量%に対して、0.1質量%以上、10質量%未満であり、特に好ましくは、0.5質量%以上、10質量%未満である。
上記樹脂シートが、後述するような、上記色素を含有する樹脂層と支持フィルムとからなる場合には、上記樹脂層における色素の濃度(含有量)としては、樹脂層の総量100質量%に対して、1質量%以上、15質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、3質量%以上、15質量%未満である。
【0019】
上記樹脂層は、色素が分散された、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料のうちの少なくとも1種より形成された樹脂層であることが好ましい。このような樹脂層は、後述する溶媒キャスト法によって形成(成膜)することができるため、色素を高濃度で均一に分散できるとともに、比較的低温で樹脂層を形成することができる。また、樹脂層を形成するための樹脂形成成分(バインダー樹脂)を適切に選択することにより、透過させたい波長域(例えば、可視領域)における高透過率と、遮断したい波長域(例えば、赤外領域)における高吸収性とを両立することが可能となる。
【0020】
本明細書において、溶剤可溶性樹脂原料とは、溶剤可溶性の樹脂原料、すなわち樹脂原料であって溶剤可溶性であるものをいう。例えば、ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドン100質量部に対し、1質量部以上溶解するものが好適である。また、液状樹脂原料とは、液状の樹脂原料、すなわち樹脂原料であって液状であるものをいう。ここで、物が「液状である」とは、その物自体の粘度が、常温(25℃)において100Pa・s以下であることを意味する。上記粘度は、B型粘度計により測定することができる。
また、色素が分散された溶剤可溶性樹脂とは、少なくとも溶剤可溶性樹脂と色素とを含む組成物であって、該組成物中に色素が分散されてなるものを意味する。同様に、色素が分散された溶剤可溶性樹脂原料とは、少なくとも溶剤可溶性の樹脂原料と色素とを含む組成物であって、該組成物中に色素が分散されてなるものを意味し、色素が分散された液状樹脂原料とは、少なくとも液状の樹脂原料と色素とを含む組成物であって、該組成物中に色素が分散されてなるものを意味する。
なお、上記樹脂原料には、樹脂の前駆体や該前駆体の原料、更に、樹脂を形成するための単量体(硬化性モノマー等)が含まれるものとする。
上述したように、上記樹脂層は、色素が分散された、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料のうちの少なくとも1種より形成された樹脂層であることが好ましいが、該樹脂層自体は溶剤可溶性であっても不溶性であってもよい。
【0021】
上記溶剤可溶性樹脂としては、有機溶剤に可溶であれば特に限定されないが、例えば、ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドン100質量部に対し、1質量部以上溶解する樹脂であることが好適である。具体的には、例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等が挙げられる。好ましくは、フッ素化芳香族ポリマー、ポリイミド樹脂である。
これらの溶剤可溶性樹脂は、架橋反応(硬化反応)することが可能な反応性基(例えば、エポキシ基やオキセタン環、エチレンスルフィド基等の開環重合性基や、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基及び/又は付加硬化性基)を有するものであってもよい。
上記樹脂層を形成するための樹脂形成成分として上記溶剤可溶性樹脂を用いる場合、該樹脂形成成分がそのまま、得られた樹脂層を構成する樹脂成分となってもよく、該樹脂形成成分が架橋反応等により変化したものが、上記樹脂層を構成する樹脂成分となってもよい。
【0022】
上記フッ素化芳香族ポリマーとしては、少なくとも1以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合の群より選ばれた少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位により構成された重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子を有するポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドエーテル、ポリアミド、ポリエーテルニトリル、ポリエステル等が挙げられる。これらの中でも、少なくとも1つ以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合とを含む繰り返し単位を必須部位として有する重合体であることが好ましく、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位を含む、フッ素原子を有するポリエーテルケトンがより好ましい。中でも特に、フッ素化ポリエーテルケトン(FPEK)が好適である。
なお、一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
【0023】
【化1】

【0024】
上記一般式(1−1)中、Rは炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。Zは2価の鎖又は直接結合を表す。x及びyは0以上の整数であり、x+y=1〜8を満たし、同一又は異なって芳香族環に結合しているフッ素原子の数を表す。nは、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記一般式(1−2)中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。Rは、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。nは、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
【0025】
上記一般式(1−1)において、x+yは2〜8の範囲内が好ましく、4〜8の範囲内がより好ましい。また、エーテル構造部分(−O−R−O−)が芳香族環に結合する位置としては、Zに対してパラ位であることが好ましい。
【0026】
上記一般式(1−1)及び(1−2)において、R及びRは2価の有機鎖であるが、例えば、下記の構造式群(2)で表されるいずれか一つ、又は、その組み合わせの有機鎖であることが好ましい。
【0027】
【化2】

【0028】
上記構造式群(2)中、Y〜Yは、同一若しくは異なって、水素基又は置換基を表し、該置換基は、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアミノ基若しくはアリールチオ基を表す。
上記R及びRのより好ましい具体例としては、下記の構造式群(3)で表される有機鎖が挙げられる。
【0029】
【化3】

【0030】
上記一般式(1−1)において、Zは、2価の鎖又は直接結合していることを表す。当該2価の鎖としては、例えば、下記構造式群(4)(構造式(4−1)〜(4−13))で表される鎖であることが好ましい。
【0031】
【化4】

【0032】
上記構造式群(4)中、Xは、炭素数1〜50の2価の有機鎖であるが、例えば、上述した構造式群(3)で表される有機鎖が挙げられ、その中でもジフェニルエーテル鎖、ビスフェノールA鎖、ビスフェノールF鎖、フルオレン鎖が好ましい。
【0033】
上記一般式(1−2)中のRにおいて、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基等が好適である。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
【0034】
上記アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−、m−又はp−トリル基、2,3−又は2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、ピレニル基等が好適である。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、1,2−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記Rとしては、これらのうち、置換基を有していてもよい、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアミノ基が好ましい。ただし、Rには、二重結合又は三重結合が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0035】
上記一般式(1−2)中のRにおける置換基としては、上述のような炭素数1〜12のアルキル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;シアノ基、ニトロ基、カルボキシエステル基等が好適である。また、これら置換基の水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよい。これらの中でも、好ましくは、ハロゲン原子、水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びカルボキシエステル基である。
【0036】
上記ポリ(アミド)イミド樹脂とは、狭義のポリイミド樹脂(イミド結合を含み、アミド結合を含まない樹脂、ここでいうアミド結合とは、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合を意味する)、及び、ポリアミドイミド樹脂(アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合とイミド結合とを含む樹脂)のいずれをも包含する。
なお、ポリイミド樹脂におけるイミド結合は、通常、アミド結合とそれに隣接するカルボキシル基とを有する結合鎖(本発明では、該結合鎖をアミック酸ともいう。通常は、アミド結合が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にカルボキシル基が結合した構造である。)におけるアミド結合とカルボキシル基との脱水反応による形成される。
ポリアミック酸から脱水反応によりポリイミド樹脂を生成させる際、分子内に若干量のアミック酸は残存し得る。したがって、本発明で「ポリイミド樹脂」という場合は、イミド結合を含み、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合は含まないが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか若干量含んでいてもよい。
本発明で用いる溶剤可溶性樹脂としては、ポリイミド樹脂におけるイミド結合含有率(イミド化反応によりイミド化し得るアミド結合数とイミド結合数の合計量100モル%に対するイミド結合数の割合)が80モル%以上であるポリイミド樹脂が好ましい。
【0037】
上記ポリ(アミド)イミド樹脂は、多価カルボン酸化合物と、多価アミン化合物及び/又は多価イソシアネート化合物との反応により得られるポリ(アミド)イミド樹脂の原料(ポリ(アミド)イミド前駆体とも称す)を、イミド化反応して得ることができる。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂はまた、透明性を有することが好ましい。透明性向上のためには、芳香環が少ないほうが好ましい。中でも、芳香環を脂環又は脂肪鎖等で置き換えた構造を有することが更に好ましい。より好ましくは、全重量100%中の芳香環の重量が65%以下、更に好ましくは45%以下、特に好ましくは30%以下である。
【0038】
上記ポリ(アミド)イミド樹脂としては、イミド結合を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(5):
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、Rは炭素数2〜39の2価の有機基を表す。)で表される繰り返し単位を有する化合物が好適である。
上記一般式(5)におけるRとしては、炭素数2〜39の2価の脂肪族、脂環族、芳香族、又は、それらの組合せからなる有機基であることが好ましい。上記Rで表される有機基は窒素原子に直接結合していてもよいし、結合基として、−O−、−SO−、−CO−、−CH−、−C(CH−、−Si(CH−、−CO−、−S−等を有していてもよい。
上記一般式(5)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
【0041】
上記ポリ(アミド)イミド樹脂の好ましい具体例としては、例えば、三菱ガス化学社製のネオプリムL−3430(厚さ50μm、100μm、200μm等)等が挙げられる。なお、この製品はフィルム形状であるが、有機溶剤に可溶であるので、本発明の溶剤可溶性樹脂として好ましく使用される。
【0042】
上記溶剤可溶性樹脂原料又は上記液状樹脂原料としては、例えば、エポキシ樹脂(化合物)、アクリル樹脂(化合物)、ビニル系単量体((メタ)アクリル系化合物、スチレン系化合物等)、ポリ(アミド)イミド前駆体等が挙げられる。好ましくは、エポキシ樹脂(化合物)、アクリル樹脂(化合物)である。
上記エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)を含む硬化性組成物の硬化物である。硬化物の形態としてはエポキシ化合物をカチオン硬化触媒の存在下で光及び/又は熱硬化してなる形態、エポキシ化合物を付加的硬化剤と反応させることにより得られる硬化物の形態等が挙げられる。後者において硬化反応促進のため従来公知の硬化促進剤を併用することもできる。上記付加的硬化剤としては、例えば、酸無水物、多価フェノール化合物、多価アミン等が例示されるが、中でも酸無水物が好ましい。
【0043】
上記エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物等が好適であり、例えば、大阪ガスケミカル社製のフルオレンエポキシ(オンコートEX−1);ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL);ジャパンエポキシレジン社製の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコートYX8000);ダイセル工業社製の脂環式液状エポキシ樹脂(セロキサイド2021)等が好ましく使用できる。
なお、本明細書中、エポキシ基とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基(グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基を含む)を含むものを意味する。
【0044】
上記エポキシ樹脂はまた、その硬化前の硬化性組成物が、可撓性を有する成分(可撓性成分)を含むことが好適である。可撓性成分を含むことにより、成形時や基板、型等からはずすときに割れない、形が崩れない、剥がれやすい、柔軟性がある等の一体感のある樹脂組成物とすることができる。
上記可撓性成分としては、上記エポキシ化合物とは異なる化合物であってもよいし、上記エポキシ化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
【0045】
上記アクリル樹脂とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物((メタ)アクリロイル基含有化合物)を含む硬化性組成物の硬化物である。
上記アクリル樹脂として具体的には、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、(メタ)アクリレートモノマーの(共)重合体等が挙げられる。フィルム化を容易にできる点で、上記樹脂(オリゴマー、ポリマー)と(メタ)アクリレートモノマーからなる組成物を硬化させることが好ましい。
【0046】
上記ポリ(アミド)イミド前駆体とは、ポリ(アミド)イミド樹脂を形成するための原料、すなわちイミド化反応に供される化合物であり、例えば、ポリアミック酸等が好適である。具体的には、例えば、日立化成工業社製のHPC−7000−30等が好ましく使用される。
【0047】
上記樹脂層を形成するための樹脂形成成分(バインダー樹脂)としては、上述したように、色素が分散された、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料のうちの少なくとも1種が好ましい。また、可視光透過性の観点から、上記バインダー樹脂として、ポリ(アミド)イミド樹脂、FPEK等のフッ素化芳香族ポリマー、及び/又は、ポリ(アミド)イミド前駆体を用いることが好適である。
また上述した溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料の中でも、樹脂形成成分(バインダー樹脂)として溶剤可溶性樹脂を用いると、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料を用いた場合に比べて、耐光性に優れる。これは、溶剤可溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料よりも、分散した色素の吸収性能の劣化を引き起こしにくいためである。理由として、溶剤可溶性樹脂は、そのモノマーや前駆体から調整し、重合や反応を完結させている。更に精製を行う場合もある。こうして得られた溶剤可溶性樹脂には、色素の劣化、分解を促進させる未反応物、反応性末端、イオン性基、触媒、酸・塩基性基等がほとんどないと考えられる。一方、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料は、このような色素の劣化、分解を促進させる因子が多く残っている。そのため、同じ色素を分散させても、樹脂形成成分(バインダー樹脂)の違いにより、樹脂層の耐光性が異なる。耐光性の観点からは、少なくとも溶剤可溶性樹脂を用いることが好適である。中でも、FPEK及びポリ(アミド)イミド樹脂が、耐光性により優れる観点から好ましい。より好ましくは、ポリ(アミド)イミド樹脂であり、特に好ましくはポリイミド樹脂である。
【0048】
上記色素が上記樹脂層中に均一に分散されてなる形態において、色素が分散された樹脂層の形成方法としては特に限定されず、例えば、練込法や溶媒キャスト法等を採用することができる。中でも、溶媒キャスト法を採用することが好ましい。これにより、色素をより均一に分散できるため、光選択吸収性により優れた光吸収膜を形成することができる。また、色素を高濃度で分散可能であるため薄膜化が可能であり、撮像レンズ素子等の部材の低背化要求に応えることができる。更に、比較的低温で樹脂層を形成することができるため、比較的耐熱性の低い色素も使用することができる。このように、上記樹脂層が溶媒キャスト法によって形成されてなる形態は、本発明における好適な実施形態の1つである。
一方、練込法においては、樹脂を高温(例えば、200℃以上)で溶融して用いることになるため、耐熱性の低い色素は分解してしまい、充分な光吸収性が得られないおそれがある。また、色素の分散性も充分に高くならないおそれがある。
【0049】
上記溶媒キャスト法において使用する溶媒(有機溶剤)としては、上記樹脂層を形成するための樹脂形成成分を溶解可能であれば特に限定されず、樹脂の種類に応じて適宜選択可能であるが、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(より具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプチルエーテル等のエーテル類等が好適である。より好ましくは、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミドである。
【0050】
上記溶媒の使用量としては、上記樹脂層を形成するための樹脂形成成分(溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料)の総量100質量%に対して、150質量%以上であることが好ましく、また、1900質量%以下が好ましい。より好ましくは、200質量%以上であり、また、1400質量%以下である。
【0051】
溶媒キャスト法においては、溶媒に樹脂層を形成するための樹脂形成成分(バインダー樹脂)を溶解して得られる溶液に色素を均一に分散させた分散液を、基材上に塗布・乾燥(硬化)することにより樹脂層を製膜(成膜)することになる。樹脂形成成分として液状樹脂原料を用いる場合には、該樹脂原料に直接色素を分散させてもよく、該樹脂原料を溶媒で希釈したうえで色素を分散させてもよい。
【0052】
本発明の光選択透過フィルターを構成する樹脂シートの形態としては、(i)樹脂シートが色素を含有する樹脂層と支持体フィルムとからなり、後述する光学多層膜(反射膜)が該樹脂層及び/又は支持体フィルムの表面(片面又は両面)に形成される形態、及び、(ii)樹脂シートが色素を含有する樹脂層からなり、後述する光学多層膜(反射膜)が該樹脂層の表面(片面又は両面)に形成される形態(支持体フィルムからなり、色素が該支持体フィルムに含有される形態)を挙げることができるが、(i)の形態とすることが好ましい。
(i)の形態の場合、色素の分散困難な支持体フィルムであっても、表面に樹脂層をコートすることにより本発明の効果を付与できる。樹脂層の色素濃度や樹脂層のコート厚さを変えることにより、吸収特性の制御が可能であるため、例えば樹脂層を極薄コートすることにより支持体フィルムの膜厚をほとんど変えずに本発明の効果を付与したり、支持体フィルムの厚み調整に利用したり、樹脂層を支持体フィルムの表面傷削減等の表面改質に利用することもできる。
また、樹脂層を支持体フィルムで挟み込んだ樹脂シートとすることも好ましい。
【0053】
上記(i)の形態において、支持体フィルムとしては、透明性に優れる樹脂を用いることが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等を用いることができる。これらの中でも、光学多層膜を蒸着形成する際の耐熱性に優れる点で、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が好ましい。このように、上記支持体フィルムがフッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種により形成されるものである形態は、本発明における好適な実施形態の1つである。
【0054】
更に、色素の分散性が高いために光選択吸収性により優れた光吸収膜を形成することができるとともに、色素を高濃度で分散可能であるため薄膜化が可能である点で、上述した色素が分散された、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料のうちの少なくとも1種より形成される樹脂に該当するものがより好ましい。更に、可撓性に優れる点で、上述した溶剤可溶性樹脂に該当するものが特に好ましい。
【0055】
支持体フィルムの材質と色素を含有する樹脂層の材質の好適な組み合わせとしては、支持体フィルム:ポリイミド樹脂/樹脂層:ポリイミド樹脂、支持体フィルム:ポリイミド樹脂/樹脂層:アクリル樹脂、支持体フィルム:ポリイミド樹脂/樹脂層:フッ素化芳香族ポリマー、支持体フィルム:ポリアミド樹脂/樹脂層:アクリル樹脂、支持体フィルム:アラミド樹脂/樹脂層:アクリル樹脂、支持体フィルム:シクロオレフィン樹脂/樹脂層:アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、支持体フィルム:ポリイミド樹脂/樹脂層:ポリイミド樹脂、支持体フィルム:ポリイミド樹脂/樹脂層:アクリル樹脂が最も好ましい。
上記(i)の形態において、樹脂シートの製造方法は特に限定されないが、支持体フィルムの表面(片面又は両面)に、上述した溶剤キャスト法によって樹脂層を形成する方法が好ましい。
【0056】
上記(ii)の形態においては、色素を含有する樹脂層が支持体フィルムを兼ねることとなる。好適な形態については、上記樹脂層の説明において既に述べた通りである。
上記(ii)の形態において、樹脂シートの製造方法は特に限定されないが、任意の基材(樹脂フィルムやガラス板)の表面に、上述した溶剤キャスト法によって樹脂層を形成し、剥離することにより製造する方法が好ましい。
【0057】
本発明の光選択透過フィルターを構成する樹脂シートは、上記色素の吸収極大波長における透過率が60%以下であることが好ましい。これにより、上記吸収極大波長付近の光を効果的に遮断することができる。上記透過率としてより好ましくは、50%以下であり、更に好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下である。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
【0058】
上記樹脂シートはまた、厚みが1mm以下であることが好ましい。これにより、光選択透過フィルターを充分に薄膜化することができ、光学部材等の低背化要求に応えることができる。樹脂シートの厚みとしてより好ましくは200μm以下であり、更に好ましくは100μm以下である。
また、樹脂シートが、色素を含有する樹脂層と支持体フィルムとからなる形態においては、上記樹脂層の厚みが10μm以下、支持体フィルムの厚みが100μm以下であることが好ましい。
【0059】
本発明の光選択透過フィルターを構成する光学多層膜としては、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜等が耐熱性に優れる点で好適である。無機多層膜としては、基材やその他の機能性材料層の上に、真空蒸着法、スパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜が好ましい。上記光学多層膜はまた、透明導電膜も好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも、無機多層膜が好ましい。
【0060】
上記無機多層膜としては、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜が好適である。
〈誘電体層A〉
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。
上記材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
【0061】
〈誘電体層B〉
誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5の材料が選択される。
上記材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
【0062】
〈各層の厚み〉
上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは、通常、遮断しようとする光の波長をλ(nm)とすると0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。厚みが上記範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなるおそれがある。
【0063】
〈積層方法〉
上記誘電体層Aと誘電体層Bとを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等により、誘電体層Aと誘電体層Bとを交互に積層することにより誘電体多層膜を形成することができる。
【0064】
上記無機多層膜等の光学多層膜は、上記方法等により好適に形成することができるが、蒸着によって光選択透過フィルターが変形しカールしたり、割れが生じたりする可能性を小さくするために、以下の方法を用いることができる。具体的には、離型処理したガラス等の仮の基材に蒸着層を形成し、光選択透過フィルターの基材となる樹脂シートに、該蒸着層を転写して多層膜を形成する多層膜の転写方法が好適である。この場合、樹脂シートには、接着層を形成しておくことが好ましい。
また樹脂シートが有機材料、具体的には、樹脂組成物により形成される場合には、未硬化、半硬化状態の樹脂シート(樹脂組成物)に、上記誘電体層等を蒸着した後、樹脂シートを硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に、基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、光選択透過フィルターの変形(カール)を抑制することができる。
【0065】
このように樹脂シートへの光学多層膜(好ましくは無機多層膜)の形成には、蒸着法を用いることが好適であるが、蒸着温度は、100℃以上とすることが好適である。より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上である。このような高温で蒸着すると、無機膜(無機多層膜を構成する無機膜)が緻密で硬くなり、種々の耐性が向上し、歩留りが向上する等の利点がある。そのため、このような蒸着温度に耐える樹脂シート及び色素を用いることは、非常に意味がある。また、このような高温での蒸着には、樹脂シートを構成する樹脂層又は支持体フィルムとして、線膨張係数の低い樹脂層又は支持体フィルムを用いることが好適である。これにより、無機・有機の線膨張係数の差による無機層クラックを抑制することができる。また、線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムを用いると、高温で蒸着できるだけでなく、低温で蒸着したとしても、無機膜との線膨張係数の差が小さいため、本発明の光選択透過フィルターを含む固体撮像素子を製造する場合などに採用されるリフロー工程等の製造工程での加熱環境や過酷な使用環境においても、無機・有機の線膨張係数の差による無機層クラックが生じない。
【0066】
上記線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムとしては、線膨張係数が60ppm以下のものが好ましい。より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、最も好ましくは10ppm以下である。
上記線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムとして具体的には、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等が好適であり、上記樹脂層又は支持体フィルムが、これらからなる群より選択される少なくとも1種により形成されるものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。また、樹脂を延伸する;無機微粒子等を分散させる;ガラスクロスを用いる;架橋密度を上げる;コンポジット化する;結晶化させる;等によっても線膨張係数を低下させることができる。
【0067】
上記光学多層膜は、上記樹脂シートの少なくとも一方の表面に形成されてなるものである。上記光学多層膜は、樹脂シートの一方の表面のみに形成されていてもよいし、樹脂シートの両面に形成されていてもよいが、両面に形成されることが好ましい。これにより、本発明に係る光選択透過フィルターの反りや光学多層膜の割れを低減することができる。また、樹脂シートが上記色素を含有する樹脂層と支持体フィルムとからなる形態においては、光学多層膜は、該樹脂層の表面に形成されることが好ましい。
【0068】
上記光学多層膜の積層数は、樹脂シートの一方の表面にのみ上記光学多層膜を有する場合は、10〜80層の範囲が好ましく、より好ましくは25〜50層の範囲である。一方、樹脂シートの両面に上記光学多層膜を有する場合は、上記光学多層膜の積層数は、樹脂シート両面の積層数の合計として、10〜80層の範囲が好ましく、より好ましくは25〜50層の範囲である。
また、上記光学多層膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、2〜8μmである。光学多層膜が上記樹脂シートの両面に形成される形態においては、両面の光学多層膜の合計の厚みが上記範囲内にあることが好ましい。
【0069】
本発明に係る光選択透過フィルターの他の好ましい形態として、上述の樹脂シートとは異なる樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に光学多層膜が形成され、更に該光学多層膜の表面に、上述の樹脂シート(好ましくは色素を含有する樹脂層)が形成される形態を挙げることができる。すなわち、上記樹脂フィルムの表面に、光学多層膜、上記樹脂シート(色素を含有する樹脂層のみからなる樹脂シート、又は、色素を含有する樹脂層と支持体フィルムとからなる樹脂シート)の順に積層されてなる形態である。光学多層膜は樹脂フィルムの両面に設けられてなることが好ましい。その場合、樹脂シートは、一方の光学多層膜の表面に積層されていても、2つの光学多層膜の表面に積層されていてもよい。この場合、樹脂フィルムは、上述した支持体フィルムと同様のものを使用することができ、好適な形態についても支持体フィルムの場合と同様である。
【0070】
本発明の光選択透過フィルターは、所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の他の機能を有していてもよい。例えば、光選択透過フィルターとして好ましい形態の一つである赤外カットフィルターの場合、紫外線を遮蔽する機能等の赤外カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態を挙げることができる。
このような、本発明の光選択透過フィルターが上記他の機能を有する形態においては、樹脂シートの一方の表面に上記光学多層膜を形成し、他方の表面に上記他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。
上記機能性材料層は、例えば、上述のCVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接、上記樹脂シート上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を樹脂シート上に接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を樹脂シートに塗布、乾燥して製膜することによっても得ることができる。
【0071】
本発明の光選択透過フィルターは、厚み(樹脂シートと光学多層膜との合計の厚み)が1mm以下であることが好ましい。ここで、光選択透過フィルターの厚みとは、該光選択透過フィルターの最大厚みをいう。上記光選択透過フィルターの厚みとしてより好ましくは、薄膜化要求に対応し得る点で、200μm以下であり、更に好ましくは150μm以下であり、特に好ましくは120μm以下であり、最も好ましくは60μm以下である。また、耐リフロー性、特に260℃の温度における耐熱性に優れる点で、上記光選択透過フィルターの厚みとして好ましくは、1μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、更に好ましくは30μm以上である。光選択透過フィルターの厚みの範囲としては、1〜150μmであることが好ましく、より好ましくは10〜120μmであり、更に好ましくは30〜120μmであり、特に好ましくは30〜60μmである。
【0072】
上記光選択透過フィルターの厚みを1mm以下とすることにより、光選択透過フィルターを、小型化、軽量化することができ、種々の用途に好適に用いることができる。特に、光学部材等の光学用途において好適に用いることができる。光学用途においては、他の光学部材と同様に光選択透過フィルターも小型化、軽量化が強く求められている。本発明の光選択透過フィルターは、厚みを1mm以下とすることで、薄膜化を達成でき、特に撮像レンズ等のレンズユニットに用いた場合に、レンズユニットの低背化を実現することができる。言い換えると1mm以下の薄い光選択透過フィルターを光学部材として用いた場合に、光路を短縮することができ、該光学部材を小さくすることができる。具体的には、カメラモジュールにおいては、レンズと光選択透過フィルターとシーモスセンサーとを有することとなる。
【0073】
図19及び図20に、カメラモジュールの一例を、模式的に示した。なお、これらの図は、エレクトロニックジャーナル第81回テクニカルセミナー(Electronic Journal 第81回 Technical Seminar)資料を参照した。
図19に示すように、光選択透過フィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば、700nm以上の波長の光)をカットし、シーモスセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。カメラモジュールに光選択透過フィルターを入れると、焦点距離が伸びるため、バックフォーカスが伸張し、モジュールが大きくなる。光選択透過フィルターの厚みがtで屈折率nが1.5程度の場合、図20に示すように、バックフォーカスが約t/3伸張し、モジュールが大きくなるが、光選択透過フィルターを薄くして、焦点距離を短くし、モジュールを小さくすることができる。それにより、例えば、1/10インチの光学サイズの光路長としては、光選択透過フィルターなしの場合の120%以下とすることが好ましい。より好ましくは、110%以下であり、更に好ましくは、105%以下である。
【0074】
本発明の光選択透過フィルターは、光の透過率を選択的に低減するものである。低減させる光としては、10nm〜100μmの間のものであればよく、用いる用途により選択することができる。低減させる光の波長に応じて赤外線カットフィルター、紫外線カットフィルター、赤外・紫外線カットフィルター等とすることができるが、中でも、650nm〜10μmの赤外光と200〜350nmの紫外光とを低減し、それ以外の光を透過するものであることが好ましい。すなわち、上記光選択透過フィルターは赤外・紫外線カットフィルターであることが好ましい。これにより、光遮断特性の入射角依存性を低減するという本発明の作用効果をより充分に発揮することができる。
赤外線カットフィルターは、赤外線領域である650nm〜10μmの波長を有する光のうち、いずれかの波長(範囲)の光を選択的に低減する機能を有するフィルターであればよい。選択的に低減する波長の範囲としては、650nm〜2.5μm、650〜1000nm又は800nm〜1μmであることが好適である。これらの範囲の波長の少なくとも一つを選択的に低減するフィルターもまた、上記赤外線カットフィルターに含まれる。選択的に低減する波長の範囲としては、近赤外線領域である650nm〜1μmであることがより好ましい。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、上述と同様であることが好ましい。
【0075】
本発明の光選択透過フィルターが赤外線カットフィルターである形態においては、650〜1000nmの赤外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。その他の波長域の透過率は、75%以上であることが好ましいが、フィルターの用途に応じて特定の波長域の透過率のみが高いものであってもよい。例えば、上記赤外線カットフィルターをカメラモジュールとして用いる場合には、赤外光の透過率が5%以下であり、可視光(400〜600nm)の透過率が80%以上であることが好適である。より好ましくは85%以上である。また、可視光の中でも450〜550nmの波長域の光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好適である。なお、上記赤外線カットフィルターにおいては、その他(赤外線領域以外)の波長の透過率としては、より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは90%以上である。すなわち、上記光選択透過フィルターは、波長が400〜600nmにおける光の透過率が80%以上であり、かつ800〜1000nmにおける透過率が5%以下の赤外線カットフィルターであることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
【0076】
本発明の光選択透過フィルターが紫外線カットフィルターである形態においては、200〜350nmの紫外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。その他の波長域の透過率は、75%以上であることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターが赤外・紫外線カットフィルターである形態においては、650nm〜10μmの赤外光と200〜350nmの紫外光とを選択的に5%以下に低減するものが好ましく、その他の波長域の透過率は、75%以上であることが好ましい。
【0077】
上記光選択透過フィルターは、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素を含有する樹脂層を有する樹脂シートの少なくとも一方の表面に光学多層膜が形成されてなるものであり、この構成によって、光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができる。光遮断特性の入射角依存性は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて、入射角を変えた透過率(例えば0°、20°、25°、30°等。入射角0°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される透過率であり、入射角20°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向に対して20°傾いた方向から光が入射するようにして測定される透過率である)を測定し、そのスペクトル変化量により評価できる。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、樹脂シートの吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないことあるいはその変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
【0078】
上述したように、本発明の光選択透過フィルターは、光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができるとともに、充分な薄膜化が可能であるため、自動車や建物等のガラス等に装着される熱線カットフィルター等として有用であるのみならず、カメラモジュール(固体撮像素子ともいう)用途における光ノイズを遮断し視感度補正するためのフィルターとして有用である。中でも、本発明の光選択透過フィルターは、薄型化・軽量化が進むデジタルスチルカメラや携帯電話用カメラ等のカメラモジュールに用いられるフィルターとして有用である。該カメラモジュールは、通常、レンズユニット(撮像レンズ)部と、光選択透過フィルター、及び、CCDやCMOS等のセンサー部を備える。また、本発明の光選択透過フィルターを用いたカメラモジュールは、上述したように、通常、レンズユニット(撮像レンズ)部と、CCDやCMOS等のセンサー部との間に配置される。このように本発明の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子もまた、本発明の1つである。通常、反射型の光選択透過フィルターを用いた固体撮像素子では、入射角依存性に起因する影響(入射角による色むらの発生等)を抑制するために、多数のレンズを使用してレンズユニット部を構成するが、本発明の固体撮像素子では、上述した光選択透過フィルターを用いることによって、入射角依存性に起因する影響が充分に排除されるため、レンズユニット部を構成するレンズの枚数を少なくすることができ、薄型化・軽量化がより実現されることになる。
なお、レンズユニット部については、WO2008/081892に記載の形態が好ましく採用できる。
【発明の効果】
【0079】
本発明の光選択透過フィルターは、上述の構成よりなり、所望の波長の光を効果的に遮断することができるとともに、光遮断特性の入射角依存性が充分に低減された光選択透過フィルターである。したがって、本発明の光選択透過フィルターを用いた固体撮像素子(カメラモジュール)は、反射型の光選択透過フィルターを用いることにより課題となった入射角による色むらの発生が抑制された画像を取り込むことができる。更に、充分な薄膜化も可能であるため、薄型化・軽量化が求められる用途において特に好適に用いることができる。具体的には、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途に好適に用いることができ、特にカメラモジュール用IRカットフィルターとして特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】:製造例1で得られた樹脂シート(1)の透過率スペクトルである。
【図2】:製造例2で得られた樹脂シート(2)の透過率スペクトルである。
【図3】:製造例3で得られた樹脂シート(3)の透過率スペクトルである。
【図4】:製造例4で得られた樹脂シート(4)の透過率スペクトルである。
【図5】:製造例5で得られた樹脂シート(5)の透過率スペクトルである。
【図6】:製造例6で得られた樹脂シート(6)の透過率スペクトルである。
【図7】:製造例7で得られた樹脂シート(7)の透過率スペクトルである。
【図8】:製造例8で得られた樹脂シート(8)の透過率スペクトルである。
【図9】:製造例9で得られた樹脂シート(9)の透過率スペクトルである。
【図10】:製造例10で得られた樹脂シート(10)の透過率スペクトルである。
【図11】:製造例11で得られた樹脂シート(11)の透過率スペクトルである。
【図12】:製造例12で得られた樹脂シート(12)の透過率スペクトルである。
【図13】:製造例13で得られた樹脂シート(13)の透過率スペクトルである。
【図14】:透過率測定方法を示す概念図である。
【図15】:比較例1で得られた光選択透過フィルターの透過率スペクトルである。
【図16】:実施例1で得られた光選択透過フィルターの透過率スペクトルである。
【図17】:実施例2で得られた光選択透過フィルターの透過率スペクトルである。
【図18】:実施例3で得られた光選択透過フィルターの透過率スペクトルである。
【図19】:カメラモジュールの構成を示す断面模式図である。
【図20】:光選択透過フィルターの有無によるバックフォーカスの伸張を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0082】
<FPEKの合成>
合成例1
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器に、BPDE(4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル)16.74部、HF(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン)10.5部、炭酸カリウム4.34部、DMAc(ジメチルアセトアミド)90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応した。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族ポリマー(FPEK)を得た。上記ポリマーのガラス転移点温度(Tg)は242℃、数平均分子量(Mn)が70770、表面抵抗値は1.0×1018Ω/cm以上であった。
【0083】
なお、上記合成例における数平均分子量は、以下の方法により測定した。
<数平均分子量>
ゲル透過クロマトグラフィー(カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−N 4.6150を2本、溶離液:テトラヒドロフラン、標準サンプル:TSKポリスチレンスタンダード)により測定した。
【0084】
<色素含有樹脂組成物の調製>
調製例1
上記合成例1で得たFPEK10部にSDA3039(商品名、吸収極大波長670nm、H.W.SANDS社製)を0.3部、MIBK(メチルイソブチルケトン)を70部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(1)を得た。
【0085】
調製例2
FPEK10部に1H−Benzindolium,3−butyl−2−[5−(3−butyl−1,3−dihydro−1,1−dimethyl−2H−benzindol−2−ylidene)−1,3−pentadien−1−yl]−1,1−dimethyl−tetrafluoroborate(1−)(HBFB、シアニン系色素、吸収極大波長680nm)を0.08部、MIBKを70部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(2)を得た。
【0086】
調製例3
FPEK10部にHBFBを0.004部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(3)を得た。
【0087】
調製例4
FPEK10部にTX−EX−609K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.3部、MIBKを70部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(4)を得た。
【0088】
調製例5
FPEK10部にTX−EX−609K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.01部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(5)を得た。
【0089】
調製例6
FPEK10部にTX−EX−609K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.0065部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(6)を得た。
【0090】
調製例7
FPEK10部にTX−EX−708K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長750nm、日本触媒社製)を0.01部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(7)を得た。
【0091】
調製例8
デナコールEX−121(商品名、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、エポキシ当量187、ナガセケムテックス社製)7.5部、セロキサイド2021P(商品名、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ダイセル化学工業社製)2.5部、サンエイドSI100L(商品名、重合開始剤、三新化学工業社製)0.1部にHBFBを0.1部、MIBKを6部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(8)を得た。
【0092】
調製例9
紫光UV−6630B(商品名、UV硬化型ウレタンアクリレートリゴマー、日本合成化学社製)10部、パーへキシルD(商品名、重合開始剤、日油社製)0.1部にHBFBを0.1部、MIBKを6部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(9)を得た。
【0093】
調製例10
ポリ(アミト゛)イミド前駆体溶液(溶媒:DMAc、固形分濃度30%日立化成工業社製HPC−7000−30)50部にHBFBを0.0125部を40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(10)を得た。
【0094】
調製例11
ネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)10部にDMAc90部を加え、120℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にTX−EX−609K(商品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.3部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(11)を得た。
【0095】
調製例12
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸(アルドリッチ製、純度95%)5部と無水酢酸(和光純薬製)44部とを、フラスコに仕込み、攪拌しながら反応器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下で溶剤の還流温度まで昇温し、10分間溶剤を還流させた。攪拌しながら室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し、乾燥して目的物(1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)の結晶を得た。温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えたフラスコに、窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和光純薬製) 0.89部と、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン 7.6部を仕込んで溶解させた後、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物 1部を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し、室温下2時間撹拌した。共沸脱水剤としてキシレンを2.6部添加して180℃で3時間反応を行い、ディーンスタークで還流して共沸する生成水を分離した。190℃に昇温しながらキシレンを留去した後、冷却しポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。この溶液にTX−EX−609K(商品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.045部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(12)を得た。
【0096】
調製例13
調製例12において、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 0.89gの代わりに、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(東京化成製)1.08g及び4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(和光純薬製)0.49gを用いること以外は、同様にして、N−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。この溶液にTX−EX−609K(商品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.0068部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(13)を得た。
【0097】
<樹脂シートの作成>
製造例1
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例1で得られた色素含有樹脂組成物(1)を20μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、樹脂シート(1)52μmを得た。樹脂シート(1)の透過率スペクトルを図1に示した。
【0098】
製造例2
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例2で得られた色素含有樹脂組成物(2)を30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、樹脂シート(2)53μmを得た。樹脂シート(2)の透過率スペクトルを図2に示した。
【0099】
製造例3
調製例3で得られた色素含有樹脂組成物(3)を380μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、樹脂シート(3)60μmを得た。樹脂シート(3)の透過率スペクトルを図3に示した。
【0100】
製造例4
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例4で得られた色素含有樹脂組成物(4)を30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、樹脂シート(4)53μmを得た。樹脂シート(4)の透過率スペクトルを図4に示した。
【0101】
製造例5
調製例5で得られた色素含有樹脂組成物(5)を420μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、樹脂シート(5)65μmを得た。樹脂シート(5)の透過率スペクトルを図5に示した。
【0102】
製造例6
調製例6で得られた色素含有樹脂組成物(6)を650μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、樹脂シート(6)100μmを得た。樹脂シート(6)の透過率スペクトルを図6に示した。
【0103】
製造例7
調製例7で得られた色素含有樹脂組成物(7)を320μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、樹脂シート(7)50μmを得た。樹脂シート(7)の透過率スペクトルを図7に示した。
【0104】
製造例8
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例8で得られた色素含有樹脂組成物(8)を12μm厚で塗布し、140℃で30分間硬化、乾燥して、樹脂シート(8)57μmを得た。樹脂シート(8)の透過率スペクトルを図8に示した。
【0105】
製造例9
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例9で得られた色素含有樹脂組成物(9)を8μm厚で塗布し、窒素雰囲気下、150℃で60分間硬化、乾燥して、樹脂シート(9)54μmを得た。樹脂シート(9)の透過率スペクトルを図9に示した。
【0106】
製造例10
調製例10で得られた色素含有樹脂組成物(10)を130μm厚で塗布し、200℃で60分間乾燥して、樹脂シート(10)20μmを得た。樹脂シート(10)の透過率スペクトルを図10に示した。
【0107】
製造例11
調製例11で得られた色素含有樹脂組成物(11)を支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥後、支持体フィルムの裏面に同様にして色素含有樹脂組成物(11)を30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥させることにより、樹脂シート(11)56μmを得た。樹脂シート(11)の透過率スペクトルを図11に示した。
【0108】
製造例12
調製例12で得られた色素含有樹脂組成物(12)を支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、30μm厚で塗布し、200℃で60分間乾燥後、支持体フィルムの裏面に同様にして色素含有樹脂組成物(12)を30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥させることにより、樹脂シート(12)56μmを得た。樹脂シート(12)の透過率スペクトルを図12に示した。
【0109】
製造例13
調製例13で得られた色素含有樹脂組成物(13)を400μm厚で塗布し、200℃で60分間乾燥して、樹脂シート(13)45μmを得た。樹脂シート(13)の透過率スペクトルを図13に示した。
【0110】
なお、図1〜13において、グラフの横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(%)を示す。
【0111】
<光選択透過フィルターの作成>
実施例1〜9及び比較例1
各製造例で得られた樹脂シート(1)〜(9)を幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした樹脂シートを準備した。
該樹脂シートの両面に、蒸着基板温度150℃で赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。
各実施例で用いた樹脂シートは以下のとおりである。
実施例1:製造例2で得られた樹脂シート(2)
実施例2:製造例3で得られた樹脂シート(3)
実施例3:製造例4で得られた樹脂シート(4)
実施例4:製造例1で得られた樹脂シート(1)
実施例5:製造例5で得られた樹脂シート(5)
実施例6:製造例6で得られた樹脂シート(6)
実施例7:製造例7で得られた樹脂シート(7)
実施例8:製造例8で得られた樹脂シート(8)
実施例9:製造例9で得られた樹脂シート(9)
比較例1:色素を含有しないFPEKフィルム(50μm厚)からなる樹脂シート
得られた各光選択透過フィルターについて、透過率及び入射角依存性を以下に示す方法にて測定・評価した。
【0112】
<透過率の測定・入射角依存性の評価>
Shimadzu UV−3100(島津製作所社製)を用いて200〜1100nmにおける透過率を測定した。透過率は、図14に示すように、入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される。)と、入射光に対して25°光選択透過フィルターを傾けて設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを25°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向に対して25°傾いた方向から光が入射するようにして測定される。)の夫々について測定した。
【0113】
実施例1〜3及び比較例1で夫々得られた光選択透過フィルターの透過率スペクトルを、夫々図16〜図18及び図15に示す。
なお、各図において、0°とは、0°スペクトルを、25°とは、25°スペクトルを意味する。
また、グラフの横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(%)を示す。
【0114】
上記実施例及び比較例から以下のことがいえる。
色素を含有する樹脂層を有しない光選択透過フィルター(比較例1)では近赤外領域での透過率スペクトルの吸収端付近における透過率変化のスロープは急峻であるものの、すべての透過率領域において0°と25°のスペクトルにずれが生じ、光遮断特性の入射角依存性が大きいことがわかった。これに対して、色素を含有する樹脂層を有する光選択透過フィルター(実施例1、2、3)では、近赤外領域での透過率スペクトルのスロープは緩やかになるものの、実施例1では透過率60%以上の領域において、実施例2では透過率80%以上の領域において、実施例3では透過率70%以上の領域において、0°と25°のスペクトルに変化がなく、光遮断特性の入射角依存性は低減されることがわかった。また、図には示していないが、実施例4〜9で得られた光選択透過フィルターの透過率測定、視野角依存性評価を行った結果、実施例1〜3の場合と同様に、比較例1に対して、視野角依存性が改善されていることが確認された。光選択透過フィルターに必要とされる透過率スペクトル、入射角依存性、近赤外領域でのスロープは、使用されるカメラモジュール(構成やセンサー)、用途により異なる。実施例より、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素を含有する樹脂シートを用いると、吸収波長や吸収強度の調節により、透過率スペクトル、入射角依存性、近赤外領域でのスロープを必要に応じて調節できることが分かった。
【符号の説明】
【0115】
1:レンズ
2:光選択透過フィルター
3:センサー
4:光源
5:光選択透過フィルター
6:受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートと、その少なくとも一方の表面に形成されてなる光学多層膜とを含む光選択透過フィルターであって、
該樹脂シートは、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素を含有する樹脂層を有する
ことを特徴とする光選択透過フィルター。
【請求項2】
前記色素を含有する樹脂層は、色素が分散された、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料のうちの少なくとも1種より形成された樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載の光選択透過フィルター。
【請求項3】
前記樹脂シートは、前記色素の吸収極大波長における透過率が60%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光選択透過フィルター。
【請求項4】
前記色素は、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、ポルフィリン系色素及び銅イオン系色素からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
【請求項5】
前記樹脂シートは、前記色素を含有する樹脂層と支持体フィルムとからなり、前記光学多層膜は、該色素を含有する樹脂層の表面に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
【請求項6】
前記支持体フィルムは、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種により形成されるものであることを特徴とする請求項5に記載の光選択透過フィルター。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光選択透過フィルターに用いられることを特徴とする光選択透過フィルター用樹脂シート。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有することを特徴とする固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−185468(P2012−185468A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169127(P2011−169127)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】