説明

光集積デバイスとその製造方法、及び光モジュール

【課題】 光集積デバイスに光ファイバを位置決めする際に、光ファイバの位置ずれや角度のずれを最小にする。
【解決手段】 光集積デバイスは、基板上に積層された多層ガイド層を貫通する開口と、前記開口に案内されて前記基板に形成された光入出力部と光学的に接続される光ファイバとを含み、前記開口は、最下層のガイド層と最上層のガイド層における開口幅が、前記最下層と前記最上層の間に位置する中間層の開口幅よりも狭く、前記光ファイバは、開口幅方向に沿った第1の端部で前記最下層のガイド層の開口部の側壁に当接し、前記第1の端部と反対側の第2の端部で前記最上層のガイド層の開口部の側壁と当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光集積デバイスとその製造方法、及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバやルータなど内部に複数のノードを有する情報機器において、近い将来、ノード間の伝送容量は10〜100Gbps以上、伝送帯域は1〜10Tbpsクラスが必要になると言われている。この場合、現在使用されている電気配線に代わって光配線によるインターコネクションが必要になる。
【0003】
ノード間の伝送容量が100Gbps以上、伝送帯域が10Tbpsクラスのシステムでは、機器の省電力化、高集積化が不可欠である。そのような省電力、高集積のシステムは、光電気変換素子や光変調器、合分波器を少数のチップに集約したいわゆるシリコンフォトニクス技術によって実現されることが期待されている。
【0004】
シリコンフォトニクス技術に用いられる光電気集積チップは、半導体プロセス工程によって作製される。シリコン基板上にクラッド層やシリコン細線光導波路が形成され,シリコン細線光導波路の末端に、光ファイバと光結合を行うためのグレーティングカプラが形成されている。
【0005】
ところで、ノード間で光信号を伝送する際には、長距離を伝送しても波形劣化の影響が小さいシングルモードファイバを用いることが望ましい。しかし、シングルモードファイバを用いる場合には、光電気集積チップ内に形成されたグレーティングカプラに、高い位置精度と角度精度で実装する必要がある。
【0006】
Luxtera社は、シリコンフォトニクス技術を用いた光トランシーバを製品化しており、8チャンネルのグレーティングカプラが形成されたCMOS Transceiver Dieに8チャンネルのシングルモードファイバアレイをアクティブアライメントにより実装している(たとえば、非特許文献1参照)。しかし、アクティブアライメント実装には特殊な設備が必要であり、量産時の製造コスト低減が見込めるパッシブアライメント実装技術が望まれる。
【0007】
パッシブアライメント実装技術として、光電気集積チップ上にドライフィルムレジストを用いて傾斜(テーパ)を有するガイド構造を厚く形成し、光ファイバ先端をガイド構造に沿わせることにより、光電気集積チップ上の光素子と光ファイバをアライメントする方法が提案されている(たとえば、非特許文献2参照)。ガイド構造を厚く形成するために、ドライフィルムレジストを多層に積層している。
【0008】
しかし、ドライフィルムレジストの積層プロセスにより多層のガイド構造を形成する場合、フォトリソグラフィー工程で異なる層の開口部側壁間で位置ずれ発生し、直線状のテーパが形成できない。
【0009】
例えば、図1(A)ではシリコン基板10上に光導波路102とグレーティングカプラ103が形成され、保護層104を介してラミネートされたドライフィルムレジスト105〜109に開口130が形成されている。中間層108に位置ずれが生じた場合、テーパ状の開口130に沿って光ファイバ120の先端を位置決めしようとしても、光ファイバ120の先端位置や角度が、目的とする位置、角度からずれてしまう。図1(A)で予定されるファイバ位置Pは垂線から角度θで傾斜するが、光ファイバ120を実装すると図1(B)に示すように、設計された傾斜角θよりも小さい角度で光ファイバ120が傾斜して、開口130内に保持される。
【0010】
図2では逆に、中間層107に位置ずれが生じ、光ファイバ120は設計された傾斜角度θよりも大きな角度で傾斜して開口130内に保持される。図1(B)や図2(B)のように光ファイバ120の傾斜角度が本来の位置からずれると、グレーティングカプラ103を介した光導波路102と光ファイバ120との間の光結合効率が大きく低下してしまう。
【0011】
したがって、パッシブアライメントにより光電気集積チップに光ファイバを位置決めする際に、ドライフィルムレジストの多層化プロセスによりファイバガイド構造を厚く形成しても、光ファイバの位置ずれや傾斜角度のずれを小さくできる構成が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Narashima et al.,“An Ultra Low Power CMOS Photonics Technology Platform for H/S OptoelectronicTransceivers at less than $1 per Gbps”, Proc. OFC 2010 (2010)
【非特許文献2】Christoph Kopp etal., “Dry-film Technology as a Standard Process for Passive Optical Alignment ofSilicon Photonics Devices” Proc. ECTC 2009 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
光集積デバイスに光ファイバを位置決めする際に、光ファイバの位置ずれや角度のずれを低減できる構成と手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一つの態様では、光集積デバイスは、
基板上に積層された多層ガイド層を貫通する開口と、
前記開口に案内されて、前記基板に形成された光入出力部と光学的に接続される光ファイバと
を含み、前記開口は、最下層のガイド層と最上層のガイド層における開口幅が、前記最下層と前記最上層の間に位置する中間層の開口幅よりも狭く、
前記光ファイバは、開口幅方向に沿った第1の端部で前記最下層のガイド層の開口部の側壁に当接し、前記第1の端部と反対側の第2の端部で前記最上層のガイド層の開口部の側壁と当接する。
【発明の効果】
【0015】
低コストで接続信頼性の高い光ファイバガイド構造を有する光集積デバイスが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】公知の光ファイバアライメント構造の問題点を示す図である。
【図2】公知の光ファイバアライメント構造の問題点を示す図である。
【図3】実施形態の光電気集積チップを用いた光モジュールを搭載した電子機器の概略図である。
【図4】実施形態の光電気集積チップにおける光ファイバ位置決め構造の説明図である。
【図5】実施形態の光電気集積チップにおける光ファイバ位置決め構造の説明図である。
【図6】実施形態の光電気集積チップにおける光ファイバ位置決め構造の説明図である。
【図7A】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7B】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7C】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7D】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7E】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7F】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7G】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7H】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7I】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7J】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図7K】実施形態の光電気集積チップの製造工程図である。
【図8】光ファイバを保持、保護するためのハウジングを取り付けた構成例を示す図である。
【図9】比較例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下で、図面を参照して発明の実施形態を説明する。図3は、複数の光モジュール10を搭載した電子機器1の概略図である。各光モジュール10には、光集積デバイスの一例としての光電気集積チップ20が実装されている。電子機器1は、ノード間の光インターコネクションを備えた次世代の情報機器で用いられる多層回路基板であり、光モジュール10の各々がノードを構成している。光モジュール10は、半田バンプ15によって回路基板2に実装され、ノード間は、光ファイバ4を用いて光接続されている。回路基板2のエッジには、ボード外接続用の光コネクタ3が配置され、各ノード(光モジュール10)と光コネクタ3の間が光ファイバ4によって光接続されている。
【0018】
光モジュール10は、インタポーザ基板11上に、インターコネクト制御チップ12、ロジックチップ13、メモリチップ14等の電子部品と、光電気集積チップ20とを搭載している。光電気集積チップ20は、たとえばシリコン基板上にクラッド層や光導波路が形成され、光導波路の末端に、光ファイバと光結合を行うグレーティングカプラが形成されている。光ファイバ4は、たとえばアレイ状に配列されてハウジング5内に収容されて光電気集積チップ20と接続される。
【0019】
図4は、実施形態の光電気集積チップ20の光ファイバ位置決め構造を示す断面図である。光電気集積チップ20は、シリコン基板21上に、少なくとも光導波路22とグレーティングカプラ23が形成されている。グレーティングカプラ23は、外部から、あるいは外部への光信号の入出力インタフェースとして機能する。図4では、図示はしないが、シリコン基板21上に光電変換素子や、光強度を変化させる光変調素子等もモノリシックに集積されているものとする。
【0020】
グレーティングカプラ23が形成された基板21上に、最下層25、中間層26、ボンディングフィルム27、最上層29を含む多層ガイド層31が形成されている。多層ガイド層31を貫通する開口30内に光ファイバ4が配置される。光ファイバ4の先端面は、保護層24を介して、基板21上のグレーティングカプラ23と対向している。
【0021】
開口30は、多層ガイド層31の最下層25に形成された開口部32と、中間層26に形成された開口部33と、最上層29に形成された開口部34を含む。中間層26の開口部33の開口幅は、最下層25の開口部32の開口幅と、最上層29の開口部34の開口幅よりも広い。
【0022】
ここで「開口幅」というときは、光ファイバ4が傾斜する方向での開口サイズをいうものとする。図4の例では、光ファイバ4は紙面の右方向に傾斜するので、開口幅は紙面の左右方向(水平方向)の開口サイズを指す。複数の光ファイバ4をアレイ状に配列する場合は、光ファイバ4は、開口幅と直交する方向に配列される。したがって、ファイバ配列方向は図4の紙面に対して垂直な方向となる。
【0023】
開口30内に挿入された光ファイバ4の端部は、最下層25の開口部32の一端側である開口端Aと、最上層29の開口部34の他端側である開口端Bの2箇所に当接して、緩やかな曲率をもって位置決めされる。この状態で、光ファイバ4は開口30内に充填された光学接着剤35で固定されている。
【0024】
図5は、多層ガイド層31の開口部30の開口部の説明図である。図4と同様に、紙面の左右方向(水平方向)を開口30の幅方向とする。最下層25の開口部32は、グレーティングカプラ23を露出する開口幅W1を有する。中間層26の開口部33は、W1よりも広い開口幅W2を有する。最上層29の開口部34は、W2よりも狭い開口幅W3を有する。
【0025】
開口30に挿入された光ファイバ4を図4のように傾斜させるために、図5において、中間層26の開口部33は、最下層25の開口部32の側壁32Sに対して、最下層25での光ファイバ当接側である開口端A側にオフセットして広く拡がっている。また、中間層26の開口部33は、最上層29の開口部34の側壁34Sに対して、最上層29での光ファイバ当接側である開口端B側にオフセットして広く拡がっている。換言すると、最下層25の開口部32は、中間層26の開口部33の中心に対して、光ファイバ4が傾斜する方向(図4、5の例では紙面の右側)にオフセットし、最上層29の開口部34は、中間層26の開口部33の中心に対して、光ファイバが傾斜する方向と反対側の方向(図4,5の例では紙面の左側)にオフセットする。
【0026】
開口部33と開口部32、34の間の相対的なオフセット量は、開口30の形成工程における各層の位置ずれ量よりも大きく設定されている。開口30をこのような断面形状とすることで、光ファイバ4の傾斜は、図4に示すように最下層25の開口端Aと最上層29の開口端Bの2箇所のみで規定され、あらかじめ設計された傾斜角との角度ずれを最小にすることができる。
【0027】
図6は、ツール50を用いた光ファイバ4の位置決めを説明するための図である。光ファイバ4を、6軸(x、y、z、θx、θy、θz)の調整が可能なツール50に吸着固定し、光学接着剤35を充填した開口30内に挿入する。光ファイバ4の先端が保護層24に接触する高さで、矢印のように、ツール50に光ファイバ4を傾斜させる方向に加重を加えると、光ファイバ4は多層ガイド層31の最上層29の開口端Bと、最下層25の開口端Aの2箇所に当接され、緩やかな曲率をもって位置決めされる。
【0028】
たとえば、外径が80μmの光ファイバ4を用いるとすると、中間層26の開口部33のB側側壁33SBは、最上層29のB側の側壁34Sよりも5〜50μm、さらに望ましくは15〜25μm、外側にオフセットして配置されている。また、中間層26の開口部33のA側側壁33SAは、最下層25のA側の側壁32sよりも5〜50μm、さらに望ましくは15〜25μm、外側にオフセットして配置されている。
【0029】
中間層26に開口部33を形成する工程で、仮に各層で水平方向に数μm程度の位置ずれが発生しても、中間層26の開口部側壁33Sは光ファイバ4に接触しない。したがって、位置決め時に光ファイバ4の傾斜角度のずれを低減することが可能である。また、光ファイバ4は、最下層25の開口端Aと、最上層29における反対側の開口端Bとに当接して位置決めされるため、最上層29の開口部34に位置ずれが生じたとしても、光ファイバ4の保持角度のずれ量は従来に比べて小さい。
【0030】
図7A〜図7Kは、実施形態の光電気集積チップ(光集積デバイス)20の製造工程図である。図7A〜図7Kを通して、(A)は上面図、(B)は断面図である。以下では、外径80μmの光ファイバ4を使用する例を説明するが、光ファイバ4の外径は80μmに限定されるものではない。80μmよりも大きくても小さくてもよく、光ファイバ4の外径に合わせて多層ガイド層31の厚さや開口30のサイズを適宜決めることができる。また,光ファイバ4は単独でもアレイ状に配列されたものでもどちらでもよい。以下の例では、4本の光ファイバ4が一列に並ぶファイバアレイを例にとって説明する。
【0031】
まず、図7Aに示すように、シリコン基板21上に、シリコン細線光導波路22と、これに接続して光インタフェースの役割を果たすグレーティングカプラ23を形成する。シリコン基板21上には、位置決め用のアライメントマーク75が配置されている。シリコン基板は、たとえば外形φ100mm、厚さ0.3mmのシリコン基板上に複数のチップ領域が配置されたものである。図7Aでは、図示の都合上、1チップ分の領域のみを示している。
【0032】
次に、図7Bに示すように、シリコン基板21全体を覆って、厚さ10μmの保護層24を形成する。保護層24は、例えば旭硝子製の「CYTOPTM」(登録商標)、品番CTX-807MPをスピンコートし、大気雰囲気中で80℃、60分の乾燥後、大気雰囲気中で180℃、60分のキュアを行なうことによって形成する。その後、保護膜24の不要な部分をRIE法によりパターニングして除去する。
【0033】
次に、図7Cに示すように、厚さ65μmのドライフィルムレジストを、最下層のガイド層25として保護膜24上にラミネートし、フォトリソグラフィー法によりパターニングして、最下層25の開口部32を形成する。ドライフィルムレジストは、たとえば、東京応化工業製の「TMMFTM S2000」である。このドライフィルムレジストを、ロールラミネータを用いて、ラミネートロール温度110℃、ラミネートロール速度1m/分、ラミネートロール圧力0.3MPaの条件でラミネートする。コンタクト露光装置(型名:UX3、ウシオ電機製)を用いて、露光量400mJ/cm2で露光し、オーブンで窒素雰囲気中、90℃で5分加熱処理した後に、現像液(品名:PM Thinner、東京応化工業製)を用いて現像する。最後にオーブンを用いて窒素雰囲気中、200℃、60℃でポストベーク処理を行い、開口部32を形成する。
【0034】
開口部32は、光ファイバの水平方向の位置決めが容易なように、上面からみた形状でV字型のコーナー32Vを一部に含む。この例では、開口部32は、ファイバ配列方向に沿ってV字型コーナー32Vが連なるノコリギ歯状の平面形状を有する。開口部32の幅W1は、上述したように、光ファイバ4が傾斜する方向に沿った開口サイズである。開口部32のV字型コーナー32Vは、光ファイバ4の端部を受け取る開口端A(図4、図5参照)に対応する。
【0035】
次に、図7Dに示すように、厚さ65μmのドライフィルムを3層重ねた厚さ195μmの中間層26に、開口部33を形成する。図7Cと同じドライフィルムを用い、ラミネートとパターニングを3回繰り返す。ここで、複数のドライフィルムレジストを順次硬化、積層した後に、一括してRIE処理することにより一度の処理で開口部33を形成することも考えられる。しかし、反応ガスにO2を用い、ガス圧0.2PaでRIE処理を行う場合、エッチング速度は毎分0.3μm程度である。厚さ200μmのドライフィルムレジストに開口部33を形成しようとすると、11時間以上の処理が必要になる。すなわちマシンタイムにより生ずるプロセスコストが非常に高くなる。誘導結合型プラズマドライプロセス装置(ICP-RIE)を用いると、エッチング時間は数分の1程度に短縮されるが、酸素イオン衝突によるレジストの発熱が大きく、レジストの変質を防ぐためにエッチングと冷却を繰返し行う必要がある。基板冷却工程を含めた場合、マシンタイムの十分な短縮は図れない。
【0036】
これらの理由から、積層されたドライレジストフィルムに開口を形成する場合は各層ごとに開口部を形成する。各層ごとに開口部を形成すると、層間の位置ずれが生じるが、上述したように、中間層26の開口幅W2は、光ファイバ4に位置ずれの影響が及ばないように、最下層25の開口幅W1と、最上層29の開口幅W3(図5参照)よりも広く設定される。図7Dの例では、最下層25の開口32の幅W1の方向と、これに直交する配列方向の双方で、各辺を15μmずつ大きくした長方形の開口33を形成している。開口33内に、最下層25の開口32と、保護膜24を介してグレーティングカプラ23が露出している。
【0037】
次に、図7Eに示すように、別の基板51を用意する。基板51は外形φ100mm、厚さ0.3mmのシリコン基板51である。基板51上に、図7C、図7Dで用いたのと同じ厚さ65μmのドライフィルムレジストをラミネートして、最上層29を形成する。ドライフィルムレジスト29をフォトリソグラフィー法によりパターニングして、開口部34を形成する。開口部34は、図7Cの開口部32と同様に、ファイバ配列方向に沿ってV字型コーナー34Vが連なったノコリギ歯状の平面形状を有する。ただし、V字型コーナー34Vが形成される向きが、図7Cの開口部32と逆方向である。最上層29の開口部34のV字型コーナー34Vは、最上層29で光ファイバ4を当接させる開口端B(図4参照)に対応する。
【0038】
次に、図7Fに示すように、厚さ20μmの熱ボンディングフィルム27を打ち抜きプレスを用いて所定の形状に加工した後に、テープマウンタを用いて、基板51上のドライフィルム29上に貼り付ける。その後、ダイシングソーを用いて、光電気集積チップ20の寸法20×20mmに切断、個片化する。
【0039】
次に、図7Gに示すように、先に最下層25や中間層26、開口部32、33を形成したシリコン基板21に、個別化した基板51を、熱ボンディングフィルム27を下にしてフリップチップ接合する。接合条件は、たとえば、フリップチップボンダを用いて、荷重98N、ヘッド加熱温度180℃、パルスヒート加熱180℃、10秒の条件とする。フリップチップ接合後、オーブンを用いて窒素雰囲気中150℃で2時間加熱して、熱ボンディングフィルム27を熱硬化させる。
【0040】
次に、図7Hに示すように、ICPエッチング装置(型名:E620、パナソニックファクトリーソリューション製)を用いて、エッチング速度20μm/分で15分エッチング処理を行うことにより、別の基板51のみを除去する。これにより、多層ガイド層31を貫通し、保護層24を介してグレーティングカプラ23を露出する開口30が形成される。
【0041】
次に、図7Iに示すように、ディスペンサで光学接着剤(例えば、品番:GA-700H、NTT-AT社製)35を開口30内に充填する。
【0042】
次に、図7Jに示すように、4本の光ファイバ4をツール50に吸着固定し、一括して開口30の光学接着剤30の中に挿入する。光ファイバ4の挿入角度は、最終的に光ファイバを傾斜させて保持する方向と反対側の方向に1〜10°、たとえば5°傾斜させて挿入する。この状態では、光ファイバ4は最下層25の開口端Aにも、最上層29の開口端Bにも接していない。
【0043】
次に、図7Kに示すように、光ファイバ4の先端が保護層24に接触したところで、ツール50に光ファイバ4を傾斜させる方向に荷重を加える。これにより、光ファイバ4は多層レジストの最下層25の開口部32の開口端Aと、最上層29の開口部34の開口端Bの2箇所に当接して、緩やかな曲率をもって位置決めされる。この位置で、UVスポット照明装置を用いて、照射強度30mW/cm2、10分のUV照射を行い、光学接着剤35を硬化させる。これにより、光ファイバ4の先端部がグレーティングカプラ23に対して高い精度で位置決めされる。
【0044】
図8は、ファイバガイド構造の開口30の上部に光ファイバ4を保持、保護するためのハウジング61を配置した例を示す。図8(A)は上面図、図8(B)は断面図である。ハウジング61は、その内壁に、傾斜した光ファイバ4をハウジング外に案内する傾斜面61aを有する。ハウジング61の内部は、接着剤62が充填され光ファイバ4を固定する。
【実施例】
【0045】
図7A〜図7Kの方法で作製した光電気集積チップ20の10ロットについて、光ファイバ4の位置決め角度の設計値からのずれ量を計測した。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

表1の結果から、最適角度に対する角度ずれの標準偏差は0.4度であることが分かる。
【比較例】
【0047】
比較例として、図9に示すように、最下層105から最上層109に至るまで垂直方向に対して10度のテーパ角がつくように開口130を形成した光電気集積チップを作製した。具体的には、外形φ100mm、厚さ0.3mmのシリコン基板101に、シリコン細線光導波路102、グレーティングカプラ103、アライメントマーク(不図示)などを形成する。全面にCytopTM(登録商標)(品番:CTX-807P,旭硝子社製)をスピンコートし、大気雰囲気中80℃で60分乾燥後、大気雰囲気中180℃で60分の加熱硬化処理を行い、厚さ約10μmの保護層104を形成した。次にドライフィルムレジスト(型名:TMMFTM S2000,東京応化工業製)をラミネートする。ラミネート条件は、ロールラミネータを用いて、ラミネートロール温度110℃、ラミネートロール速度1m/分、ラミネートロール圧力0.3MPaとする。コンタクト露光装置(型名:UX3,ウシオ電機製)を用いて、露光量400mj/cm2で露光、90℃で5分の加熱処理後、現像液(品名:PM Thinner,東京応化工業製)を用いて、ステンレスバット中で8分揺動させて現像する。その後、オーブンを用いてN2雰囲気中、200℃で60分の条件でポストベーク処理することにより最下層105及び開口部を形成した。ここで、最下層105の開口部壁面は、光ファイバ120を傾斜させて固定するために、垂直方向に対し10度のテーパ角を有するように形成した。次に最下層105と同じドライフィルムレジストを用いて、同じプロセスにより、中間層106〜108及び最上層109を順次形成し、それぞれに開口部を形成した。その際、中間層106〜108の開口部と最上層109の開口部の壁面は最下層105の開口部と同様に、垂直方向に対して10度のテーパ角を有し、かつ、下層から上層にむけて開口幅が次第に広くなるように形成した。すなわち、多層ガイド層110の開口130の断面形状が全体として断面V字のテーパ形状となるように、各層の開口幅を調節した。
【0048】
しかし、露光時のアライメント精度の制約のため、中間層のうちの一層107について開口部の側壁が、その下の層の側壁よりも5μm開口130の内側に突出する現象が発生した。
【0049】
この状態のまま、ツールを用いて光ファイバ120を開口130の断面形状に沿うように位置決めし、固定したところ、光ファイバ120は、最下層105の開口部壁面と、位置ずれした中間層107の開口部壁面とに当接して固定された。このため、光ファイバの傾斜角度は12.4度となった。光ファイバ120がグレーティングカプラ103との間で高効率に光結合するのに必要な光ファイバ120の傾斜角度10度に対して、1.4度のずれが発生した。また,光ファイバ120が位置ずれした中間層107の開口部壁面と当接して傾斜角度が1.4度ずれたことにより、光ファイバ120の先端の水平位置は、本来位置決めされるべき水平位置に対して、傾斜方向と反対側(図9では左側)に8.2μmずれた位置で固定された。このため、グレーティングカプラ103によるシリコン細線光導波路102と光ファイバ120との光結合効率は15%となり、実施形態の光集積チップ20と比較して、1/4の光結合効率しか得られないことが分かった。
【0050】
図9の光ファイガイド構造を有する光電気集積チップの10ロットについて、実施例と同様に光ファイバ120の位置決め角度の設計値からのずれ量を計測した。表2に示すように、角度ずれの標準偏差は0.9度であり、実施例に対して2倍以上大きいことが分かった。
【0051】
【表2】

【0052】
このように、実施形態の構成を用いることにより、光電気集積チップ20への光ファイバ4のパッシブアライメントによる位置決めにおいて、位置ずれ、角度ずれを小さくすることができる。その結果、実装プロセスコスト削減、ならびに実装プロセスコスト削減による光モジュール10、電子機器1の低コスト化が期待できる。
【0053】
本発明は上述した実施形態に限定されない。開口内で光ファイバを受け取るV字型コーナーは、平面V字形状に限定されず、U字型、アーチ型など任意の形状をとることができる。また、中間層と最上層及び最下層との側壁のオフセット量は、ファイバ径とフォトリソグラフィー工程で生じる位置ずれ量を勘案して適宜設定することができる。中間層の開口の中心に対して最下層と最上層の開口のいずれか一方だけをオフセットさせる構成としてもよい。また、光ファイバを緩やかな曲率をもって最上層の開口側壁と最下層の開口側壁で位置決めする際に中間層の開口側壁と接触しないだけの開口幅を中間層に持たせる場合は、必ずしも最下層の開口と最上層の開口をオフセットさせなくてもよい。
【0054】
以上の説明に対し、以下の付記を提示する。
(付記1)
基板上に積層された多層ガイド層を貫通する開口と、
前記開口に案内されて、前記基板に形成された光入出力部と光学的に接続される光ファイバと、
を含み、前記開口は、最下層のガイド層と最上層のガイド層における開口幅が、前記最下層と前記最上層の間に位置する中間層の開口幅よりも狭く、
前記光ファイバは、開口幅方向に沿った第1の端部で前記最下層のガイド層の開口部の側壁に当接し、前記第1の端部と反対側の第2の端部で前記最上層のガイド層の開口部の側壁と当接することを特徴とする光集積デバイス。
(付記2)
前記最下層の開口部と前記最上層の開口部は、前記中間層の開口部の中心に対して互いに反対方向にオフセットしていることを特徴とする付記1に記載の光集積デバイス。
(付記3)
前記最下層の開口部は、前記中間層の中心に対して前記第2の端部側にオフセットし、前記最上層の開口部は、前記中間層の中心に対して前記第1の端部側にオフセットしていることを特徴とする付記2に記載の光集積デバイス。
(付記4)
前記最下層のガイド層の前記開口部は、前記第1の端部で前記光ファイバを受け取る第1のファイバ受け取り部を有し、前記最上層のガイド層の前記開口部は、前記第2の端部で前記光ファイバを受け取る第2のファイバ受け取り部を有することを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載の光集積デバイス。
(付記5)
前記最下層のガイド層の前記開口部と、前記最上層のガイド層の前記開口部は、平面形状において互いに逆方向を向いた多角形を含むことを特徴とする付記4に記載の光集積デバイス。
(付記6)
前記光ファイバは、前記中間層に形成された開口部の側壁と接触しないで保持されることを特徴とする付記1〜5のいずれかに記載の光集積デバイス。
(付記7)
前記中間層での前記開口幅は、前記最下層のガイド層と前記最上層のガイド層での開口幅よりも10〜100μm広いことを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載の光集積デバイス。
(付記8)
前記光ファイバの先端面は、前記開口内で、使用波長に対して光透過性の保護膜を介して前記光入力部と対向することを特徴とする付記1〜7のいずれかに記載の光集積デバイス。
(付記9)
前記開口の上部に配置され前記光ファイバを保持するハウジングをさらに有することを特徴とする付記1〜8のいずれかに記載の光集積デバイス。
(付記10)
付記1〜9のいずれかに記載の光集積デバイスと、電子部品とを中継基板上に搭載した光モジュール。
(付記11)
付記10に記載の光モジュールが複数配置された基板と、
前記基板のエッジに配置された光コネクタと、
を含み、前記複数の光モジュール間、又は前記光モジュールと前記光コネクタの間が前記光ファイバで接続されている電子機器。
(付記12)
基板上に積層される複数のガイド層に、最下層のガイド層の開口幅と最上層のガイド層の開口幅が、前記最下層と最上層の間の中間層の開口幅よりも狭く設定された開口を形成して、前記開口内に前記基板に形成された光結合素子を露出し、
前記開口内に光ファイバを案内し、
前記光ファイバを、前記最下層の開口部の第1側壁と、前記最上層の開口部の前記第1側壁と反対側の第2側壁とに当接させて固定する
ことを特徴とする光集積デバイスの製造方法。
(付記13)
前記開口の形成は、
前記最下層のガイド層に第1の開口幅の開口部を形成し、
前記最下層のガイド層上に前記中間層を配置して、前記中間層に前記第1の開口部と連通し、前記第1の開口部の開口幅よりも広い第2の開口幅の開口部を形成し、
前記中間層上に、前記第2の開口部と連通し前記第2の開口幅よりも狭い第3の開口幅を有する前記最上層のガイド層を配置する
ことを特徴とする付記12に記載の光集積デバイスの製造方法。
(付記14)
前記最下層の開口部と、前記最上層の開口部を、前記中間層の開口部の中心に対して互いに逆方向にオフセットさせて配置することを特徴とする付記12に記載の光集積デバイスの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0055】
産業用、公共用等、任意の光伝送システムに利用可能である。一例として、サーバやハイエンドコンピュータシステムの高速伝送路に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 電子機器
4 光ファイバ
10 光モジュール
20 光電気集積チップ(光集積デバイス)
21 シリコン基板(基板)
22 光導波路
23 グレーティングカプラ(光入出力部)
24 保護層
25 多層ガイド層の最下層
26 多層ガイド層の中間層
29 多層ガイド層の最上層
30 開口
32 最下層の開口部
33 中間層の開口部
34 最上層の開口部
32S、33SA、33SB、34S 開口部側壁
32V、34V V字型コーナー(ファイバ受け取り部)
W1、W2、W3 開口幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に積層された多層ガイド層を貫通する開口と、
前記開口に案内されて、前記基板に形成された光入出力部と光学的に接続される光ファイバと、
を含み、前記開口は、最下層のガイド層と最上層のガイド層における開口幅が、前記最下層と前記最上層の間に位置する中間層の開口幅よりも狭く、
前記光ファイバは、開口幅方向に沿った第1の端部で前記最下層のガイド層の開口部の側壁に当接し、前記第1の端部と反対側の第2の端部で前記最上層のガイド層の開口部の側壁と当接することを特徴とする光集積デバイス。
【請求項2】
前記最下層の開口部と前記最上層の開口部は、前記中間層の開口部の中心に対して互いに反対方向にオフセットしていることを特徴とする請求項1に記載の光集積デバイス。
【請求項3】
前記最下層の開口部は、前記中間層の中心に対して前記第2の端部側にオフセットし、前記最上層の開口部は、前記中間層の中心に対して前記第1の端部側にオフセットしていることを特徴とする請求項2に記載の光集積デバイス。
【請求項4】
前記最下層のガイド層の前記開口部は、前記第1の端部で前記光ファイバを受け取る第1のファイバ受け取り部を有し、前記最上層のガイド層の前記開口部は、前記第2の端部で前記光ファイバを受け取る第2のファイバ受け取り部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光集積デバイス。
【請求項5】
前記最下層のガイド層の前記開口部と、前記最上層のガイド層の前記開口部は、平面形状において互いに逆方向を向いた多角形を含むことを特徴とする請求項4に記載の光集積デバイス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光集積デバイスと、電子部品とを中継基板上に搭載した光モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の光モジュールが複数配置された基板と、
前記基板のエッジに配置された光コネクタと、
を含み、前記複数の光モジュール間、又は前記光モジュールと前記光コネクタの間が前記光ファイバで接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
基板上に積層される複数のガイド層に、最下層のガイド層の開口幅と最上層のガイド層の開口幅が、前記最下層と最上層の間の中間層の開口幅よりも狭く設定された開口を形成して、前記開口内に前記基板に形成された光結合素子を露出し、
前記開口内に光ファイバを案内し、
前記光ファイバを、前記最下層の開口部の第1側壁と、前記最上層の開口部の前記第1側壁と反対側の第2側壁とに当接させて固定する
ことを特徴とする光集積デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図7K】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−80188(P2013−80188A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221363(P2011−221363)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】