説明

光電センサを備えた工作機械および光電センサおよびリモートチューニング方法

【課題】リモートチューニングが可能な光電センサを有する工作機械を提供する。
【解決手段】加工対象物または工具の位置を移動させる移動手段14と、加工対象物または工具の位置を検出する光電センサ15とを備えた工作機械11において、光電センサ15は、検出対象の変化を示す物理量に応じた電気信号を出力する検出部と、ゲイン調整機能および/またはオフセット調整機能を有し設定されたゲインおよびオフセットの下で検出部から出力される電気信号を増幅して外部出力するアナログ出力回路と、外部入力信号に基づいて出力回路のゲインおよびオフセットを設定するリモート調整手段15dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物や工具の位置を検出するための光電センサを備えた工作機械、およびその光電センサ、及びリモートチューニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、加工対象物(ワーク)や工具(ツール)の位置を検出するために光電センサが用いられる。アナログ出力型の光電センサは、投光部と受光部との間に形成された光路中に侵入した検出対象物(ワーク又はツール)での遮光による前記受光部での受光量の変化から、例えば前記光路中への検出対象物の侵入量(検出対象物の位置)を検出するものであり、受光量に応じてリニアに変化する前記受光部からの電気信号を、予めゲインとオフセットが設定されたアナログ出力回路を介して増幅して出力するように構成されている。光電センサの受光量とアナログ出力との関係を図5に例示する。この光電センサのアナログ出力の最大値OPmaxおよび最小値OPminの値は、出力回路の設計仕様によって予め定められている(最小値OPminはゼロまたは負の値でも可)。直線の傾きがゲイン、変位がオフセットである。
【0003】
このような光電センサにおいては、通常、センサ本体に組み込まれたボリュームやスイッチ等を操作することで、その出力仕様に応じた適切なアナログ出力が得られるように前記アナログ出力回路におけるゲインとオフセットとを調整している[例えば特許文献1を参照]。また適切なアナログ出力が得られるように、前記投光部からの投光量を調整することも提唱されている。
【特許文献1】特開2002−171162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで前述した光電センサにおいて光学系への汚れ付着により受光量が経時的に変化する場合や、検出対象物自体が頻繁に代わって検出条件が変化するような場合には、その都度、前述したゲインとオフセットとを繰り返し調整してアナログ出力を最適化することが必要であり、非常に煩わしい。しかも光電センサが防爆環境や極限環境等に設置されていたり、その設置環境への人間(作業者)の入り込み自体が上記設置環境に悪影響を及ぼしたりするような場合には、センサ本体に組み込まれたボリュームやスイッチ等を直接操作することが極めて困難である。またその調整は、専ら、アナログ出力をモニタしながら行うことが必要である。従って光電センサに搭載されているゲイン調整機能やオフセット調整機能を有効に活用することができないと言う問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、検出対象の変化を示す受光量に応じて出力されるアナログ出力を、所要とする出力仕様に簡易に合わせることのできるリモート自動調整機能(リモートチューニング)を備えた光学式センサを備えた工作機械を提供することにある。即ち、本発明は、ゲイン調整機能および/またはオフセット調整機能を備えた光電センサを遠隔(リモート)制御することで、所要とする出力仕様のアナログ出力が得られるようにアナログ出力回路におけるゲインおよび/またはオフセットを自動調整し得る機能を有する光電センサを備えた工作機械および光電センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するべく本発明に係る光電センサを備えた工作機械等は、加工対象物または工具の位置を移動させる移動手段と、加工対象物または工具の位置を検出する光電センサとを備えた工作機械において、光電センサは、検出対象の変化を示す物理量に応じた電気信号を出力する検出部と、ゲイン調整機能および/またはオフセット調整機能を有し設定されたゲインおよびオフセットの下で検出部から出力される電気信号を増幅して外部出力するアナログ出力回路と、外部入力信号に基づいて出力回路のゲインおよびオフセットを設定するリモート調整手段とを有し、リモートチューニングが可能であることを特徴とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記構成の光電センサおよび光電センサを備えた工作機械によれば、検出対象が所定の状態にあるときにアナログ出力回路の調整を促す外部入力信号をリモート入力するだけで、ゲイン調整機能および/またはオフセット調整機能によりゲインおよび/またはオフセットが自動調整される。
【0008】
従って光電センサ本体に組み込まれたボリュームやスイッチ等を直接操作することが極めて困難な場合であっても、アナログ出力の調整遠隔(リモート)から指示するだけでゲイン調整機能やオフセット調整機能を有効に活用して、その調整を自動的に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る光電センサについて説明する。この光電センサは、基本的には図4にその概略構成を示すように、検出対象の変化を示す物理量に応じた電気信号を出力する検出部41と、この検出部41から出力される電気信号を増幅し、例えばアナログ出力電圧として外部出力するアナログ出力回路42とを備えて構成される。上記検出部41は、例えば投光部と、この投光部から投光された光を受光する受光部とを備え、その光路内に侵入した物体(ターゲット)により光の一部が遮られることによって変化する前記受光部での受光量に相当する電気信号(電流)を出力する。また前記アナログ出力回路42は、ゲイン調整機能43とオフセット調整機能44とを備え、設定されたゲインおよびオフセットの下で前記検出部41から出力される電気信号を増幅して外部出力するように構成される。
【0010】
本発明に係る光電センサは、上述した基本構成に加えて、外部からの指示を受けて作動して前記アナログ出力回路42におけるゲイン調整機能43およびオフセット調整機能44をそれぞれ制御し、前記アナログ出力回路42のゲインおよびオフセットを設定するリモート調整手段45を備えて構成される。具体的にはこのリモート調整手段45は、外部からリモート入力として与えられるトリガ信号を入力部46を介して取り込み、これを端緒として前記検出部1の出力またはアナログ出力回路42の出力を検出するモニタ機能47と、このモニタ機能47にて検出された出力値に応じて前記アナログ回路42のアナログ出力が所定の出力仕様を満たすように、前記アナログ出力回路42において前記検出部41から与えられる信号を増幅して出力する上でのゲインとオフセットとを計算し、算出したゲインおよびオフセットに従って前記ゲイン調整機能43およびオフセット調整機能44をそれぞれ制御する演算機能48とを備える。これらのモニタ機能7および演算機能48を備えたリモート調整手段45は、例えばマイクロプロセッサ(CPU)及びこれによって実行されるプログラムを用いて実現される。(以下、アナログ出力回路42とリモート調整手段45と入力部46を総称して処理部15d、24d、34dと称することがある。)
【0011】
尚、前記トリガ信号は、前記検出器41による検出対象が所定の状態にあるときに、オペレータ(監視員)によりマニュアル入力して与えられ、或いは光電センサの起動時における初期設定動作の一貫として自動的に与えられる。また光電センサが工業生産ライン等に組み込まれるような場合には、その工業生産ラインの制御を司る指令装置から自動的に与えられるものであっても良い。
【0012】
ちなみに上述した検出対象が所定の状態にあるときとは、例えば前記検出器41の検出対象領域にターゲット(検出対象物)が存在しない状態や、前記検出対象領域の予め定められた所定位置にターゲット(検出対象物)を位置付けた状態であり、従来一般的なセンサ装置においてそのアナログ出力をマニュアル調整する際に設定される状態を指す。このような状態は、例えばターゲットの位置を手動操作することで設定されたり、工業生産ラインにおいては検出対象領域にターゲットを供給しない状態等として設定される。
【0013】
そして上述した光電センサにおけるアナログ出力の調整は、例えば検出部41として投光部と受光部とを備えた光電センサを用い、その光路(検出対象領域)に侵入したターゲット(検出対象物)によって変化する前記受光部での受光量(検出部1の出力)から前記光路へのターゲットの侵入量(ターゲットの位置)を検出する光電センサの場合には次のようにして行われる。
【0014】
即ち、この種の光電センサを用いた光電センサの場合には、例えば光路中にターゲットが存在しない状態で前記受光部による受光量が最大となる状態(全入光状態)から、前記投光部から受光部に向けて照射された光がターゲットによって遮られて前記受光部での受光量が最小となる状態(遮光状態)に至るまで、前記受光部での受光量は前記光路へのターゲットの侵入量(位置)に応じてリニアに変化する。そして上記検出部41の検出出力(受光量に相当する電気信号)を前記アナログ出力回路42を介して増幅して外部出力されるアナログ出力信号は、一般的には、例えば電流出力の場合には[4〜20mA]、また電圧出力の場合には[1〜5V]として設定することが多い。
【0015】
このようなアナログ出力信号の仕様に対して、実際に前記アナログ出力回路42から出力されるアナログ出力信号が、全遮光状態から全入光状態に掛けて、例えば図5に示すような最小値OPmin〜最大値OPmaxの変化を呈するような場合には、遮光状態においてだけアナログ出力電圧がその最小値OPminとなるようにアナログ出力回路42のオフセットを調整し、その上で全入光状態においてアナログ出力電圧がその最大値OPmaxとなるようにアナログ出力回路42のゲインを調整することで、アナログ出力信号に対する調整が行われる。例えば図5中の一点鎖線で示された出力特性に設定されている場合、全遮光時にOPminよりも大きい値が出力され、全入光時にはOPmaxが出力されて、出力レンジが狭い状態にあるから、適切な設定がなされているとは言えない。一方、図5中の実線は適切に調整が行われた後の出力特性を例示したものである。全遮光時の受光量において最小値OPminが出力され、全入光時の受光量において最大値OPmaxが出力されており、出力レンジが十分に広い状態に設定されている。
【0016】
尚、従来技術では、このオフセットおよびゲインの調整は、オペレータによってアナログ出力信号の変化を監視しながら、装置本体に設けられた前記ゲイン調整機能43およびオフセット調整機能44の各調整部品(可変抵抗器)をそれぞれ直接操作することにより実施される。またアナログ出力回路42の構成によっては、オフセット調整とゲイン調整とが互いに影響し合うことがあるので、一般的にはアナログ出力信号が出力仕様として定められた出力特性に適合するまで前述したオフセットおよびゲインの調整は交互に繰り返し実施される。
【0017】
このようにしてアナログ出力信号の調整を行うに際して、本装置においては検出対象が所定の状態にあるときにトリガ信号を与えることで前述したリモート調整手段45を起動する。そして上記状態において前述したモニタ手段47にて前記検出部41の出力、または前記アナログ出力回路42の出力を検出し、その上で前記演算手段48において上記モニタ手段で47での検出値に応じて前記アナログ出力回路42に設定すべきゲインとオフセットとを算出し、アナログ出力回路42のゲイン調整機能43およびオフセット調整機能44をそれぞれリモート入力信号によって制御するものとなっている。またこのようなアナログ出力回路42のゲインおよびオフセットのリモート調整(設定)を可能とするべく、本光電センサにおいては前述したゲイン調整機能43およびオフセット調整機能44の各調整部品は、例えばデジタル信号値に応じて抵抗値が変化する、いわゆる電子ボリュームや、プログラマブル増幅器に対する制御電圧発生器等として実現される。
【0018】
このように本光電センサにおいては、検出対象が所定の状態にあるときにトリガ信号を与えることでリモート調整手段45を起動し、受光部での受光条件を変化させたときのアナログ出力回路42の出力に応じて該アナログ出力回路42に設定するゲインとオフセットとを自動調整するように構成されている。従って光電センサが防爆環境や極限環境等に設置されていたり、その設置環境への人間(作業者)の入り込み自体が上記設置環境に悪影響を及ぼしたりするような場合であっても、光電センサにトリガ信号をリモート入力するだけでゲインとオフセットの最適化調整が自動的に実行され、該光電センサから所望とするアナログ出力信号を得ることが可能となる。故に検出部41の特性が経時的に変化するような場合であっても、常に安定した出力特性のアナログ出力信号を得ることができるので、工業的利点が絶大である。
【0019】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば検出部41を構成する光電センサの投光部が、その発光量を可変調整し得る機能を備えている場合には、その発光量自体を調整することでアナログ出力回路42におけるゲインの過不足を補うようにしても良い。換言すれば発光量の調整により光電センサのゲインを調整し、アナログ出力回路42から出力されるアナログ出力信号の変化幅を適正化するようにしても良い。但し、この場合であっても、アナログ出力信号に対するオフセット量についてはアナログ出力回路42のオフセット調整機能44を用いて調整することが必要である。
【0020】
またアナログ出力信号をチューニングするに際して、光電センサの仕様形態によっては必ずしも完全遮光状態が得られない場合がある。従ってこのような場合には、受光量が最小となる状態(全遮光状態よりもやや受光量が大きい状態)でのアナログ出力値と、受光量が最大となる状態でのアナログ出力値とをそれぞれ検出し、これらのアナログ出力値がアナログ出力回路42の最小出力値OPminおよび最大出力値OPmaxとなるように該アナログ出力回路42におけるゲインとオフセットを調整するようにしても良い。このようなチューニングを施せば、アナログ出力回路42が有するダイナミックレンジを最大限に活用して分解能の高いセンシングを行うことが可能となる。
【0021】
また入力部46については、例えば装置本体からケーブルを介して引き出されたトリガスイッチとして構成し、オペレータによりマニュアル操作されるものとして構成することも可能である。また入力部46にタイマー回路を組み込み、検出対象の状態に応じて所定の周期で自動的にチューニングを指示するトリガ信号を発するように構成することも可能である。要は本発明に係る光電センサは、検出対象が所定の状態にあるときにトリガ信号をリモート的に与え、そのときの検出部の出力またはアナログ出力回路の出力をモニタすることで、アナログ出力に対するゲインとオフセットとを自動調整する機能を備えたことを特徴としており、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0022】
次に、図1を参照して本発明の工作機械の第一の実施形態について説明する。この第一の実施形態の工作機械11は、工具を用いて加工対象物に他の物体を付加することにより加工対象物を加工することを特徴とするものである。具体的には、吸着ノズル12を用いて電気回路基板13に電気部品(図示せず)を搭載することを特徴とするものである。この工作機械11は、一対の搬送用のレール14、一組の光電センサ15(投光部、受光部、処理部)、および吸着ノズル12を有し、その動作はコントローラ16(例えばプログラマブル・ロジック・コントローラ)によって制御されている。前述した光電センサ15のリモート自動調整機能を動作させるために、コントローラ16または押しボタン形スイッチ17が遠隔に配置された光電センサ15の処理部に接続されている。予め定められた位置に光電センサ15の投光部15aおよび受光部15bが設置されており、投光部15aから受光部15bへ光路15cが形成されている。加工対象物である電気回路基板13は、定められた位置までレール14によって搬送される。電気回路基板13が定められた位置に到着すると、基板13の断面積によって光路15cの一部が遮られ、受光部15bの受光量が減少する。光電センサ15の処理部15dは受光部15bの受光量の減少を検出し、コントローラ16へ信号を送信する。コントローラ16はこの信号を受けると、まず吸着ノズル12に電子部品を吸着させ、次いで吸着ノズル12を電気回路基板13上の定められた位置へと移動させ、電気回路基板13の表面に電子部品を載置させる。ところで、この工作機械11は、さまざまな幅を持つ電気回路基板13に対応するためにレール14の間隔を変更できる。光電センサ15の投光部15aおよび受光部15bはレール14に固定されており、レール14の間隔が変更されると、それにつれて投光部15aと受光部15bの間隔も変わる。光電センサ15の投光部15aと受光部15bの間隔が狭まると受光部15bの受光量が増加し、間隔が拡がると受光部15bの受光量が減少するので、受光量と出力との関係を調整する必要が生じる。そのため、コントローラ16が光電センサ15の処理部15dにトリガ信号を送信して前述のゲインおよびオフセットの自動調整機能を起動させる。あるいは、工作機械11の操作者が押しボタンスイッチ17を押すことで光電センサ15の処理部15dにトリガ信号を送信するようにしてもよい。この第一の実施形態によれば、加工対象物である電気回路基板13の幅に応じて、光電センサ15の受光量とアナログ出力信号との関係を最適に維持することができる。
【0023】
次に、図2を参照して本発明の工作機械の第二の実施形態について説明する。この第二の実施形態の工作機械21は、工具を用いて加工対象物に他の物体を付加することにより加工対象物を加工することを特徴とするものである。具体的には、成膜槽(図示せず)を用いて半導体基板22の表面に成膜することを特徴とするものである。この工作機械21は、図示しない成膜槽、この成膜槽に設けられた一対の覗き窓23(ビューポート)、加工対象物としてのシリコンウェハ22を成膜槽内で移動させる移動台(図示せず)、および一組の光電センサ24を有し、これらの動作はコントローラ25によって制御されている。前述した光電センサ24のリモート自動調整機能を動作させるために、コントローラ25または押しボタン形スイッチ26が遠隔に配置された光電センサ24の処理部に接続されている。一対のビューポート23の外側の、予め定められた位置に光電センサ24の投光部24aおよび受光部24bが設置されており、投光部24aから受光部24bへ光路24cが形成されている。加工対象物であるウェハ22は、成膜槽内の定められた位置まで移動台によって搬送される。ウェハ22が定められた位置に到着すると、ウェハ22によって光路の一部が遮られ、受光部の受光量が減少する。光電センサ24の処理部24dは受光部24aの受光量24bの減少を検出し、コントローラ25へ信号を送信する。コントローラ25はこの信号を受けると、図示しない付帯設備(真空ポンプ、ヒータ等)を稼動させてウェハ22の表面に金属薄膜を蒸着させる。ところで、この工作機械21のビューポート23には金属薄膜が蒸着し、使用のたびに徐々に透光率が減少する。それによって受光部24aの受光量が減少するので、受光量と出力との関係を調整する必要が生じる。そのため、コントローラ25が光電センサ24の処理部24dにトリガ信号を送信して前述のゲインおよびオフセットの自動調整機能を起動させる。あるいは、工作機械21の操作者が押しボタンスイッチ26を押すことで光電センサ24の処理部24dにトリガ信号を送信するようにしてもよい。この第二の実施形態によれば、ビューポート23の汚れ具合に応じて、光電センサ24の受光量とアナログ出力信号との関係を最適に維持することができる。
【0024】
次に、図3を参照して本発明の工作機械の第三の実施形態について説明する。この第三の実施形態の工作機械31は、工具を用いて加工対象物の一部を除去することにより加工対象物を加工することを特徴とするものである。具体的には、切削工具32を用いて図示しない加工対象物(金属、合成樹脂、ガラス等)を穿孔・切断することを特徴とするものである。この工作機械は、切削工具32(ドリル、フライス、カッター等)、この切削工具32を回転させるモータ(図示せず)、切削工具32の位置を移動させる位置調整機構33、および一組の光電センサ34を有し、これらの動作はコントローラ35によって制御されている。前述した光電センサ34のリモート自動調整機能を動作させるために、コントローラ35または押しボタン形スイッチ36が遠隔に配置された光電センサ34の処理部34dに接続されている。モータの回転軸に装着された自動チャック37は、コントローラ35からの指示によって複数の切削工具32の中から加工に必要なものを選択して取り替えることができる。例えば、加工対象物をドリルで穿孔した後にカッターで切断する場合、ドリルとカッターとでは工具の大きさが異なるため、加工を行う前に加工対象物の深さ方向に対するドリルおよびカッターの先端位置をコントローラ35が認識する必要がある。各切削工具32の先端の位置を確認するために、投光器34aと受光器34bとの間に光路34cが形成された一組の光電センサ34が用いられる。コントローラ35は穿孔加工に先立ち、ドリルの先端32aを光電センサ34の光路内に移動させる。このときドリルの先端32aによって光路35cの一部が遮られ、受光部34bの受光量が減少する。光電センサ34の処理部34dは受光部34bの受光量の減少を検出し、コントローラ35へ信号を送信する。コントローラ35は受光量の減少からドリルの先端32aの深さ方向の位置を算出して記憶し、次いでドリル32を加工対象物(図示せず)へ移動させ、所定の深さの穿孔作業を実行させる。その後、コントローラ35は、モータ回転軸に装着された切削工具32をドリルからカッターに付け替え、カッターの先端32aを光電センサ34の光路内34cに移動させ、カッターの先端32aの位置を算出・記憶し、加工対象物の切断作業を実行させる。ところで、この工作機械31の光電センサ34の投光部34aおよび受光部34bには切削加工によって発生した切削粉が付着し、使用のたびに徐々に投光量34aおよび受光量が減少するので、受光量と出力との関係を調整する必要が生じる。そのため、コントローラ35が光電センサ34の処理部34dにトリガ信号を送信して前述のゲインおよびオフセットの自動調整機能を起動させる。あるいは、工作機械31の操作者が押しボタンスイッチ36を押すことで光電センサ34の処理部にトリガ信号を送信するようにしてもよい。この第三の実施形態によれば、投光部34aおよび受光部34bの汚れ具合に応じて、光電センサ34の受光量とアナログ出力信号との関係を最適に維持することができる。また、上述の光電センサ34とは別に、もう一組の光電センサ(図示せず)を用いてワークへの穿孔・切断作業中の切削工具32を常時監視し、作業中の切削工具32の破損を検出することもできる。切削作業位置において切削工具32が光電センサの光路を遮るように予め光電センサを設置しておく。具体的には、光電センサの投光部・受光部が切削工具32と共に位置調整機構33によって移動される位置に設置される。切削作業中に切削工具32に破損(例えばドリルの折損)が生じると、遮られていた光路の一部または全部が開放されて光電センサの受光部の受光量が増加する。あるいは、破損箇所が不整形の場合には切削工具32の回転に伴って遮光量が変化し、光電センサの受光量が経時的に増減する。これにより、切削工具32の破損や破損状態を知ることができる。
【0025】
上述の三つの実施形態に限らず、遠隔から光電センサのリモート自動調整機能を起動することが可能な工作機械であれば、本発明の技術的範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の工作機械の第一の実施形態に係る要部概略構成図。
【図2】本発明の工作機械の第二の実施形態に係る要部概略構成図。
【図3】本発明の工作機械の第三の実施形態に係る要部概略構成図。
【図4】本発明の光電センサの実施形態に係る要部概略構成図。
【図5】本発明の光電センサにおけるチューニングの手法を説明する為の図。
【符号の説明】
【0027】
11 工作機械
12 吸着ノズル
13 電気回路基板
14 レール
15 光電センサ
15a 投光部
15b 受光部
15c 処理部
15d 処理部
16 コントローラ
17 押しボタン形スイッチ
21 工作機械
22 半導体基板(ウェハ)
23 覗き窓
24 光電センサ
24a 投光部
24b 受光部
24c 光路
24d 処理部
25 コントローラ
26 押しボタン形スイッチ
31 工作機械
32 切削工具(ドリル、カッター)
32a 先端
33 位置調整機構
34 光電センサ
34a 投光部
34b 受光部
34c 光路
34d 処理部
35 コントローラ
36 押しボタン形スイッチ
37 自動チャック
41 検出部
42 アナログ出力回路
43 ゲイン調整機能
44 オフセット調整機能
45 調整手段(CPU)
46 入力部
47 モニタ機能
48 演算機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物または工具の位置を移動させる移動手段と、加工対象物または工具の位置を検出する光電センサとを備えた工作機械において、光電センサは、検出対象の変化を示す物理量に応じた電気信号を出力する検出部と、ゲイン調整機能および/またはオフセット調整機能を有し設定されたゲインおよびオフセットの下で検出部から出力される電気信号を増幅して外部出力するアナログ出力回路と、外部入力信号に基づいて出力回路のゲインおよびオフセットを設定するリモート調整手段とを有し、リモートチューニングが可能であることを特徴とする、光電センサを備えた工作機械。
【請求項2】
請求項1において、リモート調整手段は外部入力信号をトリガとしてアナログ出力回路のゲインおよび/またはオフセットを自動的に調整することを特徴とする、光電センサを備えた工作機械。
【請求項3】
請求項1において、リモート調整手段は外部入力信号に含まれるゲインおよび/またはオフセットの値を読み取ってアナログ回路に設定することを特徴とする、光電センサを備えた工作機械。
【請求項4】
請求項1または2において、外部入力信号は操作者が操作可能なスイッチから入力されるものであることを特徴とする、光電センサを備えた工作機械。
【請求項5】
請求項1または2において、外部入力信号はプログラマブル・ロジック・コントローラから入力されるものであることを特徴とする、光電センサを備えた工作機械。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、工具を用いて加工対象物に他の物体を付加することにより加工対象物を加工することを特徴とする、光電センサを備えた工作機械。
【請求項7】
請求項6において、吸着ノズルを用いて電気回路基板に電気部品を搭載することを特徴とする、光電センサを備えた工作機械。
【請求項8】
請求項6において、成膜槽を用いて半導体基板の表面に成膜することを特徴とする、光電センサを備えた工作機械。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか一項において、工具を用いて加工対象物の一部を除去することにより加工対象物を加工することを特徴とする、光電センサを備えた工作機械。
【請求項10】
検出対象の変化を示す物理量に応じた電気信号を出力する検出部と、ゲイン調整機能および/またはオフセット調整機能を有し設定されたゲインおよびオフセットの下で検出部から出力される電気信号を増幅して外部出力するアナログ出力回路と、外部入力信号に基づいて出力回路のゲインおよびオフセットを設定するリモート調整手段とを有し、請求項1乃至9のいずれか一項に記載された工作機械に用いられることを特徴とする光電センサ。
【請求項11】
加工対象物または工具の位置を移動させる移動手段と、加工対象物または工具の位置を検出する光電センサとを備えた工作機械において、遠隔地から信号を送信して、光電センサの受光に関する電気信号のゲインおよび/またはオフセットの値を調整することを特徴とする工作機械のリモートチューニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−60665(P2009−60665A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−278656(P2008−278656)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】