説明

光電変換素子、受光装置、受光システム及び測距装置

【課題】光電変換によって得られた光電子を所望の領域に高速に移動させ、集積させるようにして、測距装置や受光システム等を実現できるようにする。
【解決手段】光を検知して光電子に変換する第1光電変換素子10Aは、半導体基体12上に絶縁体を介して形成された電極16を有する1つのMOSダイオード18と、半導体基体12に形成された複数の埋め込みフォトダイオードBPDとを有する。MOSダイオード18の電極16は、上面から見たとき、1つの電極部位20から複数の枝分かれ部位22に分岐配列されたくし歯形状を有し、複数の埋め込みフォトダイオードBPDは、上面から見たとき、電極16における複数の枝分かれ部位22間にそれぞれ入れ子状に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量に応じた量の電荷に変換する光電変換素子と、該光電変換素子に入射される光のうち、ある一定期間の輝度情報を得るようにした受光装置と、該光電変換素子を用いて環境光による影響を抑制した受光システムと、該受光システムを用いてタイム・オブ・フライト(TOF)法の原理を応用した測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境光による影響を取り除いて、高いSN比での信号検出が可能なイメージセンサが提案されている(非特許文献1参照)。このイメージセンサは、電荷振り分け転送方式によって変調光成分を検出するものであるが、画素回路は、通常のPG(フォトゲート)方式イメージセンサを2つ、受光部であるPGを共通にして組み合わせたような構造となっている。1つの受光部を挟んで、2つの転送ゲートがあり、各転送ゲートの外側にそれぞれ信号電荷蓄積部が設けられた構成を有する。また、この非特許文献2では、感度向上のために、ポリシリコンによって形成されたPGの割合を低減した構造が提案されている。すなわち、PGの形状をくし歯状にした例が開示されている。
【0003】
また、イメージセンサの応用例として、対象物への距離を非接触に測定する測距システムとしてタイム・オブ・フライト(TOF)法を用いたものが知られている。TOF法は、対象物に対して光を放射し、光が放射されてから対象物に当たってはねかえって来るまでの期間を測定し、この期間と光速に基づいて対象物までの距離を測定する(非特許文献2参照)。
【0004】
非特許文献2では、測距システムにおけるパルス光の放射タイミングや2つの受光素子の動作タイミングが具体的に説明されている。すなわち、パルス光の放射と放射停止を同じ長さ(発光素子の駆動デューティが50%)で繰り返すと共に、パルス光の放射と放射停止に同期させて、交互に2つの方向に電荷を転送させる(非特許文献2の図1参照)。そして、2つの出力電圧の相違に基づきパルス光が対象物で反射して戻って来るまでの期間を判定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山本幸司「振り分け転送方式および部分領域高速読み出し方式による変調光成分検出可能なCMOSイメージセンサに関する研究」奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 2006年3月
【非特許文献2】宮川良平、金出武雄「CCD−Based Range−Finding Sensor」、IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL. 44, NO. 10、1997年10月、p.1648〜1652
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、TOF法により測距装置を実現するためには、受光した光電子(光電変換によって得られた電荷)を高速に移動する必要がある。
【0007】
非特許文献1に記載のイメージセンサは、感度向上のために、PGの形状をくし歯状にした例が開示されている。この場合、受光部のうち、PGの部分は蓄積電荷(光電子)を出力側へ転送する機能を有するが、PG以外の部分はそのような機能を持っていない。従って、受光部に蓄積された光電子を全て出力側に転送するには時間がかかるという問題がある。
【0008】
また、あるタイミングで環境光と変調光とが混在した光を受光し、別のタイミングで変調光を受光するには、変調光の放射と放射停止に同期させて、交互に2つの方向に電荷を転送させる必要がある。そのためには、光電変換素子において光電変換された光電子を、速い速度で、所望のゲート電極を介して各ノードへ転送させる必要がある。特に、十分な信号/ノイズ比(S/N比)を獲得するためには、大きな受光面積を有する光電変換素子が必要となる。しかし、大きな光電変換素子を使用した場合、出力させるノードまでの距離が長くなり、光電変換された光電子を速い速度で所望のノードへ転送することが難しくなる。
【0009】
さらには、光電変換素子から2つのノードに光電子を振り分ける場合に、光電変換素子から各ゲート電極までの距離が異なっていると、光電変換素子の変換効率の面内の分布の存在や、光電子の移動経路の差異などの要因により、2つのノードへの転送効率に差異が生じることとなり、S/N比を低下させる原因となる。
【0010】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、光電変換によって得られた光電子を所望の領域に高速に移動させて、集積させることができ、TOF法の原理を応用した測距装置を実現させることができるほか、様々な受光装置に適用させることができる光電変換素子を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の他の目的は、上述した効果を有する光電変換素子を使用して、ある一定期間の入射光の輝度情報を高精度に得ることができ、電子シャッタの機能をも兼ね備えた受光装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、S/N比の向上、環境光のノイズ成分による影響の低減を図ることができ、必要な光成分の検出を高精度に行うことができる受光システムを提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、S/N比の向上、環境光のノイズ成分による影響の低減を図ることができ、対象物までの距離を高精度に測定することができる測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[1] 第1の本発明に係る光電変換素子は、光を検知して光電子に変換する光電変換素子において、半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置されていることを特徴とする。
【0015】
[2] 第1の本発明において、前記MOSダイオードの前記電極下の電位を制御して、少なくとも前記埋め込みフォトダイオードでの光電変換により発生した光電子を、前記MOSダイオードへ移動させることを特徴とする。
【0016】
[3] 第1の本発明において、前記MOSダイオードのうち、前記電極における前記1つの電極部位の基部に対応した部分が、電荷集積部として構成されていることを特徴とする。
【0017】
[4] 第1の本発明において、前記MOSダイオードにおける前記電極の前記枝分かれ部位は、それぞれ矩形形状を有することを特徴とする。
【0018】
[5] 第1の本発明において、前記MOSダイオードにおける前記電極の各前記枝分かれ部位は、上面から見たとき、幅が前記1つの電極部位に向かって徐々に大きくなる形状を有することを特徴とする。
【0019】
[6] 第1の本発明において、前記MOSダイオードにおける前記電極の各前記枝分かれ部位の給電端子は、上面から見たとき、前記電荷集積部から最も離れた位置に形成されていることを特徴とする。
【0020】
[7] 第1の本発明において、前記半導体基体上に絶縁体を介して形成された第2電極を有する複数の第2MOSダイオードを有し、複数の前記第2MOSダイオードの各前記第2電極は、上面から見たとき、前記電極とは分離され、且つ、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、前記MOSダイオードと前記第2MOSダイオード間に前記埋め込みフォトダイオードが形成されていることを特徴とする。
【0021】
[8] 第2の本発明に係る受光装置は、入射光の輝度情報を得ることを特徴とする受光装置であって、前記入射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子により発生した前記光電子を集めるための電荷集積部と、前記光電子を一定期間蓄積するキャパシタと、前記光電子を排出する電荷排出部と、前記電荷集積部と前記キャパシタとの間に配置され、前記電荷集積部に集められた前記光電子を、前記キャパシタへ移動させるMOS型の第1スイッチング素子と、前記電荷集積部と前記電荷排出部との間に配置され、前記電荷集積部から前記電荷排出部への前記光電子の排出を制御するMOS型の第2スイッチング素子とを備え、前記光電変換素子は、半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、前記光電変換素子からの前記光電子を、選択的に前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を開閉制御して前記キャパシタへ転送させて、前記キャパシタに転送された前記光電子の量(電荷量)に基づいて入射光の輝度情報を得ることを特徴とする。
【0022】
[9] 第2の本発明において、前記電荷集積部は、前記光電変換素子に接続され、前記電荷排出部は、前記電荷集積部を間に挟んで、前記キャパシタと対向配置されていることを特徴とする。
【0023】
[10] 第2の本発明において、前記キャパシタは、MIMキャパシタ、MOSキャパシタ、埋込型フォトダイオード構造又はpn接合の寄生容量にて構成されていることを特徴とする。
【0024】
[11] 第2の本発明において、少なくとも前記電荷集積部、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子及び前記キャパシタは、遮光された領域に形成されていることを特徴とする。
【0025】
[12] 第3の本発明に係る受光装置は、入射光の輝度情報を得ることを特徴とする受光装置であって、前記入射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子により発生した前記光電子を集めるための電荷集積部と、前記光電子を一定期間蓄積する第1キャパシタ及び第2キャパシタと、前記光電子を排出する電荷排出部と、前記電荷集積部と前記第1キャパシタとの間に配置され、前記電荷集積部に集められた光電子を、前記第1キャパシタへ選択的に振り分けるMOS型の第1スイッチング素子と、前記電荷集積部と前記第2キャパシタとの間に配置され、前記電荷集積部に集められた光電子を、前記第2キャパシタへ選択的に振り分けるMOS型の第2スイッチング素子と、前記電荷集積部から前記電荷排出部へ前記光電子の排出を制御するMOS型の第3スイッチング素子とを備え、前記光電変換素子は、半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、前記光電変換素子からの前記光電子を、選択的に前記第1スイッチング素子〜前記第3スイッチング素子をオン/オフ制御して前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタへ転送させて、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタに転送された前記光電子の量(電荷量)に基づいて入射光の輝度情報を得ることを特徴とする。
【0026】
[13] 第3の本発明において、前記電荷集積部は、前記光電変換素子に接続され、前記電荷排出部は、前記電荷集積部を間に挟んで、前記光電変換素子と対向配置され、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタは、前記電荷集積部を間に挟んで、互いに対向配置されていることを特徴とする。
【0027】
[14] 第3の本発明において、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタは、MIMキャパシタ、MOSキャパシタ、埋込型フォトダイオード構造又はpn接合の寄生容量にて構成されていることを特徴とする。
【0028】
[15] 第3の本発明において、少なくとも前記電荷集積部、前記第1スイッチング素子〜前記第3スイッチング素子、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタは、遮光された領域に形成されていることを特徴とする。
【0029】
[16] 第4の本発明に係る受光システムは、対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置とを有する受光システムであって、前記受光装置は、前記反射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子により発生した光電子を集めるための電荷集積部と、前記光電子を一定期間蓄積する一対のキャパシタと、前記光電子を排出する電荷排出部と、前記電荷集積部と前記一対のキャパシタとの間に配置され、前記電荷集積部に集められた光電子を、前記発光装置の駆動に同期して、前記一対のキャパシタへ選択的に振り分けるMOS型の一対のスイッチング素子と、前記発光装置の駆動に同期して、前記電荷集積部から前記電荷排出部へ前記光電子の排出を制御するMOS型の第3スイッチング素子を備え、前記光電変換素子は、半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、前記制御装置は、前記発光装置から前記パルス光が放射されていない期間のうちの第1期間に、前記一対のスイッチング素子のうち、第1スイッチング素子をオンにして、前記光電変換素子からの前記光電子を、前記一対のキャパシタのうち、第1キャパシタに転送し、前記発光装置から前記パルス光が出射されている期間のうちの第2期間に、前記一対のスイッチング素子のうち、第2スイッチング素子をオンにして、前記光電変換素子からの前記光電子を、前記一対のキャパシタのうち、第2キャパシタに転送し、前記第1期間及び前記第2期間以外の期間に、前記第3スイッチング素子をオンにして、前記光電変換素子からの前記光電子を、前記電荷排出部に排出するように制御し、前記第1キャパシタに転送された光電子の量(電荷量)と前記第2キャパシタに転送された光電子の量(電荷量)に基づいて、前記反射光の輝度情報を得ることを特徴とする。
【0030】
[17] 第4の本発明において、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの電位を初期電位にするための電源とMOS構造の第1リセットスイッチ及び第2リセットスイッチとを有することを特徴とする。
【0031】
[18] 第4の本発明において、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタに蓄積された光電子の量に基づく電位に応じたレベルの電気信号にそれぞれ変換する第1アンプ及び第2アンプを有することを特徴とする。
【0032】
[19] 第4の本発明において、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子によって転送された前記光電子を一時的に保持するMOSキャパシタ又は埋込型フォトダイオード構造の寄生容量にて構成された第1電荷保持部及び第2電荷保持部と、前記第1電荷保持部及び前記第2電荷保持部にそれぞれ一時的に保持された前記光電子を前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタに転送するMOS型のスイッチング素子にて構成された第1電荷転送部及び第2電荷転送部とを有することを特徴とする。
【0033】
[20] 第5の本発明に係る受光システムは、対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置とを有する受光システムであって、前記受光装置は、前記反射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子により発生した光電子を集めるための電荷集積部と、前記光電子を一定期間蓄積する第1キャパシタ〜第4キャパシタと、前記光電子を排出する電荷排出部と、前記電荷集積部と前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタとの間に配置され、前記パルス光の放射に同期して、前記光電子を前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタに対して振り分けるMOSO型の第1スイッチング素子〜第4スイッチング素子と、前記電荷集積部と前記電荷排出部との間に配置され、前記電荷集積部から前記電荷排出部への前記光電子の供給を制御するMOS型の第5スイッチング素子とを備え、前記光電変換素子は、半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、前記制御装置は、前記発光装置による前記パルス光の放射及び前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子のオン/オフを制御し、前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子が全てオフのとき、前記第5スイッチング素子をオンにして、前記光電子を外部に排出させ、前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子に転送された前記光電子の量(電荷量)に基づいて、前記反射光の輝度情報を得ることを特徴とする。
【0034】
[21] 第5の本発明において、前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタの電位を初期電位にするための電源とMOS構造の第1リセットスイッチ〜第4リセットスイッチとを有することを特徴とする。
【0035】
[22] 第5の本発明において、前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタに蓄積された光電子の量に基づく電位に応じたレベルの電気信号にそれぞれ変換する第1アンプ〜第4アンプを有することを特徴とする。
【0036】
[23] 第5の本発明において、前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子によって転送された前記光電子を一時的に保持するMOSキャパシタ又は埋込型フォトダイオード構造の寄生容量にて構成された第1電荷保持部〜第4電荷保持部と、前記第1電荷保持部〜前記第4電荷保持部にそれぞれ一時的に保持された前記光電子を前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタに転送するMOS型のスイッチング素子にて構成された第1電荷転送部〜第4電荷転送部とを有することを特徴とする。
【0037】
[24] 第4及び第5の本発明において、前記受光装置の構成要素が、複数の画素が設けられたラインセンサアレイ又は二次元イメージセンサアレイの1画素分の構成要素を構成していることを特徴とする。
【0038】
[25] 第6の本発明に係る測距装置は、対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置と、前記受光装置の出力を用いてタイム・オブ・フライト法により前記対象物までの距離を演算する演算装置と、を有する測距装置であって、前記受光装置は、前記反射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子により発生した前記光電子を集めるための電荷集積部と、前記光電子を一定期間蓄積する第1キャパシタ〜第4キャパシタと、前記光電子を排出する電荷排出部と、前記電荷集積部と前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタとの間に配置され、前記パルス光の放射に同期して、前記光電子を前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタに対して振り分けるMOS型の第1スイッチング素子〜第4スイッチング素子と、前記電荷集積部と前記電荷排出部との間に配置され、前記電荷集積部から前記電荷排出部への前記光電子の供給を制御するMOS型の第5スイッチング素子と、を備え、前記光電変換素子は、半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、前記パルス光の放射開始時点を時点Teu、前記パルス光の放射終了時点を時点Ted、前記光電変換素子に対する前記反射光の入射終了時点を時点Trd、前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子をオンする時点を時点Tg1u、Tg2u、Tg3u、Tg4u、前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子をオフする時点を時点Tg1d、Tg2d、Tg3d、Tg4d、前記時点Tg1uから前記時点Tg1dまでの期間を期間P1、前記時点Tg2uから前記時点Tg2dまでの期間を期間P2、前記時点Tg3uから前記時点Tg3dまでの期間を期間P3、前記時点Tg4uから前記時点Tg4dまでの期間を期間P4、前記時点Tg4uから前記時点Trdまでの期間を期間Psr、前記期間P1の間に前記第1キャパシタに蓄積される前記光電子の量を電荷量Q1、前記期間P2の間に前記第2キャパシタに蓄積される前記光電子の量を電荷量Q2、前記期間P3の間に前記第3キャパシタに蓄積される前記光電子の量を電荷量Q3、前記期間P4の間に前記第4キャパシタに蓄積される前記光電子の量を電荷量Q4、前記パルス光が放射されてから前記対象物で反射して前記反射光として戻ってくるまでの期間を往復期間ΔP、前記発光装置及び前記受光装置と前記対象物との距離を距離Dとしたとき、前記制御装置は、
(1)P1=P3、
(2)P2=P4、及び
(3)Tg1u<Tg1d≦Tg2u<Tg2d≦Teu<Tg3u<Tg3d≦Tg4u≦Ted<Tg4d、又は、Teu<Tg3u<Tg3d≦Tg4u≦Ted<Tg4d<Tg1u<Tg1d≦Tg2u<Tg2d
となるように、前記発光装置による前記パルス光の放射及び前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子のオン/オフを制御し、前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子が全てオフとなっているとき、前記第5スイッチング素子をオンにして前記光電子を外部に排出させ、前記演算装置は、前記第3キャパシタに蓄積され、環境光と前記反射光に対応する前記電荷量Q3と、前記第1キャパシタに蓄積され、前記環境光に対応する前記電荷量Q1との差に基づいて、前記期間P3における前記反射光の光量情報を取得し、前記第4キャパシタに蓄積され、前記環境光と前記反射光に対応する前記電荷量Q4と、前記第2キャパシタに蓄積され、前記環境光に対応する前記電荷量Q2との差に基づいて、前記期間Psrにおける前記反射光の光量情報を取得し、前記期間P3における前記反射光の光量情報及び前記期間Psrにおける前記反射光の光量情報の比と、前記期間P3及び前記期間Psrの比とに基づいて前記往復期間ΔPを演算し、前記往復期間ΔPに基づいて前記距離Dを測定することを特徴とする。
【0039】
[26] 第6の本発明において、前記時点Tedと前記時点Tg4uが等しいとき、下記の式(1)に基づいて、前記往復期間ΔPを演算し、
ΔP={(Q4−Q2)/(Q3−Q1)}×P3 ・・・(1)
【0040】
前記時点Tedが前記時点Tg4uよりも後であるとき、下記の式(2)に基づいて、前記往復期間ΔPを演算することを特徴とする。
ΔP=[(Q4−Q2)/(Q3−Q1)]×P3−(Ted−Tg4u)
・・・(2)
【0041】
[27] 第6の本発明において、前記制御装置は、測定周期毎に前記発光装置に前記パルス光を複数回放射させ、前記演算装置は、前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタのそれぞれに前記光電子を複数回蓄積した後の前記電荷量Q1〜前記電荷量Q4を用いて前記往復期間ΔPを演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、本発明に係る光電変換素子によれば、光電変換によって得られた光電子を所望の領域に高速に移動させて、集積させることができ、TOF法の原理を応用した測距装置を実現させることができるほか、様々な受光装置に適用させることができる。
【0043】
また、本発明に係る受光装置によれば、上述した効果を有する光電変換素子を使用したので、ある一定期間の入射光の輝度情報を高精度に得ることができ、電子シャッタの機能をも兼ね備えさせることができる。
【0044】
また、本発明に係る発光システムによれば、S/N比の向上、環境光のノイズ成分による影響の低減を図ることができ、必要な光成分の検出を高精度に行うことができる。
【0045】
また、本発明に係る測距装置によれば、S/N比の向上、環境光のノイズ成分による影響の低減を図ることができ、対象物までの距離を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1光電変換素子を上面から見て示す図である。
【図2】図1におけるII−II線上の断面図である。
【図3】第1光電変換素子の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】第1光電変換素子の動作(図3における時点t1での動作)を示すポテンシャル図である。
【図5】第1光電変換素子の動作(図3における時点t2での動作)を示すポテンシャル図である。
【図6】第2光電変換素子を上面から見て示す図である。
【図7】図6におけるVII−VII線上の断面図である。
【図8】第2光電変換素子の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】第2光電変換素子の動作(図8における時点t0、t1及びt2での動作)を示すポテンシャル図である。
【図10】第1受光装置及び第2受光装置を示す構成図である。
【図11】第1受光装置の第1受光部を上面から見て示す図である。
【図12】第2受光装置の第2受光部を上面から見て示す図である。
【図13】第1受光システム及び第2受光システムを示す構成図である。
【図14】第1受光システムの第1受光部を示す回路図である。
【図15】第1受光システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図16】環境光の影響を低減する手法の基本原理を示すタイミングチャートである。
【図17】図17Aは環境光の影響を低減する手法の基本原理を示す説明図であり、図17Bは太陽光の光ショットノイズによる影響を示す説明図である。
【図18】図18Aは図17Aに示す1つのサイクルを複数回繰り返して信号光成分のS/Nを向上させる方法を示す説明図であり、図18Bはランダムな光ショットノイズによる影響を示す説明図である。
【図19】第2受光システムの第2受光部を示す回路図である。
【図20】第2受光システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図21】第1測距装置及び第2測距装置を示す構成図である。
【図22】第1測距装置における第3受光装置のセンサアレイを有する第3受光部を示す構成図である。
【図23】第3受光部の各画素の構成を示す回路図である。
【図24】測距のためのサイクルのタイミングチャートである。
【図25】各第2蓄積期間Tca2での放射光、反射光、第1スイッチング素子〜第5スイッチング素子のオン/オフタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【図26】各第2蓄積期間Tca2での放射光、反射光、第1スイッチング素子〜第5スイッチング素子のオン/オフタイミングの他の例を示すタイミングチャートである。
【図27】第2測距装置に設置される第4受光装置の第4受光部における各画素の構成を示す回路図である。
【図28】光電変換素子の変形例を示す断面図である。
【図29】第3光電変換素子を上面から見て示す図である。
【図30】図30Aは図29におけるXXXA−XXXA線上のポテンシャル図であり、図30Bは図29におけるXXXB−XXXB線上のポテンシャル図である。
【図31】図29におけるXXXI−XXXI線上のポテンシャル図である。
【図32】第3光電変換素子の動作(図3における時点t2での動作)を示すポテンシャル図である。
【図33】第4光電変換素子を上面から見て示す図である。
【図34】図33におけるXXXIV−XXXIV線上の断面図である。
【図35】第4光電変換素子の動作を示すタイミングチャートである。
【図36】図36Aは第4光電変換素子の動作(図35における時点t11での動作)を示すポテンシャル図であり、図36Bは同じく時点t12での動作を示すポテンシャル図であり、図36Cは時点t11での動作を示す他のポテンシャル図である。
【図37】第5光電変換素子を上面から見て示す図である。
【図38】図38Aは図37におけるXXXVIIIA−XXXVIIIA線上のポテンシャル図であり、図38Bは図37におけるXXXVIIIB−XXXVIIIB線上のポテンシャル図である。
【図39】図37におけるXXXIX−XXXIX線上のポテンシャル図である。
【図40】第6光電変換素子を上面から見て示す図である。
【図41】図40におけるXLI−XLI線上のポテンシャル図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明に係る光電変換素子、発光装置、受光システム及び測距装置の実施の形態例を図1〜図41を参照しながら説明する。
【0048】
[第1光電変換素子10A]
先ず、第1の実施の形態に係る光電変換素子(以下、第1光電変換素子10Aと記す)は、図1及び図2に示すように、半導体基体12(図2参照)上に絶縁体14を介して形成された電極16を有する1つのMOSダイオード18と、半導体基体12に形成された埋め込みフォトダイオードBPDとを有する。具体的には、例えば半導体基体12は、図2に示すように、p型不純物拡散領域が形成されている。そして、半導体基体12上に例えばSiO2等からなる絶縁層(絶縁体14)を介してポリシリコンや金属等の導電層による電極16が形成されることで、上述したMOSダイオード18が形成されている。また、p型不純物拡散領域に形成されたn型不純物拡散領域の表面に高濃度のp型不純物拡散領域が形成されることで、上述した埋め込みフォトダイオードBPDが構成されている。
【0049】
MOSダイオード18の電極16は、上面から見たとき、1つの電極部位20から複数の枝分かれ部位22に分岐配列されたくし歯形状を有し、埋め込みフォトダイオードBPDは、上面から見たとき、電極16における複数の枝分かれ部位22間にそれぞれ入れ子状に配置されている。MOSダイオード18における電極16の枝分かれ部位22は、それぞれ矩形形状を有する。
【0050】
また、電極16における1つの電極部位20の基部24(長さ方向中央部)には、第1光電変換素子10Aにより発生した光電子を集めるための電荷集積部26が形成されている。電荷集積部26は、1つの電極部位20の基部24から枝分かれ部位22とは反対方向に延在して形成されている。この電荷集積部26は、構成上、第1光電変換素子10Aに含めてもよいし、含めなくてもよい。
【0051】
さらに、MOSダイオード18における電極16の各枝分かれ部位22の給電端子28は、上面から見たとき、電荷集積部26から最も離れた位置に形成されている。すなわち、電荷集積部26から離れた各枝分かれ部位22の末端に形成されている。
【0052】
そして、給電端子28に電圧V1が印加されるように図示しない金属配線がなされている。電圧V1は低レベルV1L〜高レベルV1Hにわたって変化する。低レベルV1Lは、0Vや負の電圧であってもよい。
【0053】
ここで、第1光電変換素子10Aの動作について、図3のタイミングチャート、図4及び図5のポテンシャル図も参照して説明する。なお、図4及び図5のポテンシャル図は、電荷として光電子30を対象としていることから、直感的にわかるように、電位が高いほどポテンシャル位置32a及び32bが低くなるように図示されている。
【0054】
先ず、図3の時点t1(露光の初期段階)において、電圧V1を高レベルV1Hにすると、図4に示すように、電極16下のポテンシャル位置32aが、埋め込みフォトダイオードBPDのポテンシャル位置32bよりも低くなり、埋め込みフォトダイオードBPDから電極16下にかけてポテンシャル位置が低くなるポテンシャル勾配34が形成されることとなる。このことから、埋め込みフォトダイオードBPDで発生した光電子30は、ポテンシャル勾配34によって、電極16下、すなわち、複数の枝分かれ部位22下に高速に移動する。
【0055】
その後、時点t2(露光の終了段階)において、電圧V1が低レベルV1Lになると、図5に示すように、電極16下のポテンシャル位置32aが上昇することになるが、電極16の給電端子28が電荷集積部26から最も離れた位置に形成されていることから、電極16下のポテンシャル位置32aのうち、給電端子28直下の部分のポテンシャル位置32aが早く上昇し、徐々に電荷集積部26に近い方のポテンシャル位置32aが上昇することとなる。これは、電極16の正電荷がシンクされた結果、給電端子28直下の部分の電位が低下して、過渡的に電極16全体にわたり電位が低下することで、電極16下のポテンシャル位置32aが上昇するためである。このことから、電極16の枝分かれ部位22下の長さ方向においても、ポテンシャル勾配34が形成され、時間の経過に伴って、ポテンシャル勾配34が電荷集積部26に向けて平行移動し、光電子30は高速に電荷集積部26に移動することとなる。
【0056】
このように、第1光電変換素子10Aにおいては、電極16aの枝分かれ部位22間に埋め込みフォトダイオードBPDを配置し、電極16に印加される電圧Vを制御することで、隣接する電極16下と埋め込みフォトダイオードBPDに形成されるポテンシャル位置の差によるポテンシャル勾配34を形成するようにしたので、光電変換にて得られた光電子30を高速に電荷集積部26に転送集積することが可能となる。また、埋め込みフォトダイオードBPDは、完全空乏化デバイスであり、電荷残りを抑制して光電子の完全転送が可能である。また、表面にp型の高濃度領域が存在することから、暗電流の発生を抑えるのに有利である。
【0057】
しかも、電極16の給電端子28を電荷集積部26から最も離れた位置に形成するようにしたので、電極16下のポテンシャル位置32aを、給電端子28直下の部分を起点として連続的に上昇させることが可能になる。電極16下のポテンシャル位置32aの上昇によって、電界が発生し、電極16下の光電子30を高速に移動させることができる。その結果、電極16下の例えば複数の枝分かれ部位22下の光電子30を、電荷集積部26に高速に移動させることができる。
【0058】
このように、第1光電変換素子においては、光電変換にて得られた光電子30を高速に、且つ、効率よく電荷集積部26に転送集積することが可能となる。
【0059】
[第2光電変換素子10B]
次に、第2の実施の形態に係る光電変換素子(以下、第2光電変換素子10Bと記す)について図6〜図9を参照しながら説明する。
【0060】
この第2光電変換素子10Bは、図6に示すように、上述した第1光電変換素子10Aとほぼ同様の構成を有するが、半導体基体12(図7参照)上に絶縁体14を介して形成された第1電極16aを有する1つの第1MOSダイオード18aと、半導体基体12上に絶縁体14を介して形成された第2電極16bを有する複数の第2MOSダイオード18bとを有する。第1MOSダイオード18aは、上述した第1光電変換素子10AのMOSダイオード18と同じ構成を有する。具体的には、例えば半導体基体12は、図7に示すように、p型不純物拡散領域が形成されている。そして、半導体基体12上に例えばSiO2等からなる絶縁層(絶縁体14)を介してポリシリコンや金属等の導電層による第1電極16a及び第2電極16bが形成されることで、上述した第1MOSダイオード18a及び第2MOSダイオード18bが構成されている。また、上述した第1MOSダイオード18a及び第2MOSダイオード18bの間には、p型不純物拡散領域に形成されたn型不純物拡散領域の表面に高濃度のp型不純物拡散領域が形成されることで、埋め込みフォトダイオードBPDが構成されている。
【0061】
第1MOSダイオード18aの第1電極16aは、上面から見たとき、1つの電極部位20から複数の枝分かれ部位22に分岐配列されたくし歯形状を有し、第2MOSダイオード18bの各第2電極16bは、上面から見たとき、第1電極16aとは分離され、且つ、第1電極16aにおける複数の枝分かれ部位22間にそれぞれ入れ子状に配置されている。第1MOSダイオード18aにおける第1電極16aの枝分かれ部位22と、第2MOSダイオード18bの第2電極16bは、それぞれ矩形形状を有する。
【0062】
さらに、第1MOSダイオード18aにおける第1電極16aの各枝分かれ部位22の第1給電端子28a、並びに第2MOSダイオード18bにおける各第2電極16bの第2給電端子28bは、上面から見たとき、電荷集積部26から最も離れた位置に形成されている。
【0063】
そして、第1給電端子28aに第1電圧V1が印加され、第2給電端子28bに第2電圧V2がそれぞれ独立して印加されるように図示しない金属配線がなされている。
【0064】
第1電圧V1は低レベルV1L〜高レベルV1Hにわたって変化し、第2電圧V2は低レベルV2L〜高レベルV2Hにわたって変化する。レベルの大小関係は、少なくともV1H>V2Hとなっている。V1LとV2Lの関係は、共に同じか、あるいはV1L>V2Lでもよい。また、V1LとV2Lは、0Vや負の電圧であってもよい。
【0065】
ここで、第2光電変換素子10Bの動作について、図8のタイミングチャート、図9A〜図9Cのポテンシャル図も参照して説明する。
【0066】
先ず、図8の時点t0においては、第1電圧V1及び第2電圧V2が共に低レベルV1L及びV2Lであることから、図9Aに示すように、第1MOSダイオードと第2MOSダイオード間に光電子に対するポテンシャル障壁が形成されることなく、第1MOSダイオード18aと第2MOSダイオード18b間に、第2電極16b下のポテンシャル位置32bよりも低く、且つ、第1電極16a下のポテンシャル位置32aよりも高いポテンシャル位置32cが形成される。
【0067】
その後、時点t1(露光の初期段階)において、第1電圧V1が高レベルV1H、第2電圧V2が高レベルV2Hになると、図9Bに示すように、第1電極16a下のポテンシャル位置32aと第2電極16b下のポテンシャル位置32bが共に低くなり、V1H>V2Hであることから、第1電極16a下のポテンシャル位置32aは第2電極16b下のポテンシャル位置32bよりも低くなる。つまり、第2電極16b下から第1電極16a下にかけてポテンシャル位置が低くなるポテンシャル勾配34が形成されることとなる。このことから、第2電極16b下に発生した光電子30は、ポテンシャル勾配34によって、第1電極16a下、すなわち、複数の枝分かれ部位22下に移動する。
【0068】
その後、時点t2において、第2電圧V2のみが低レベルV2Lになると、図9Cに示すように、第2電極16b下のポテンシャル位置32bのみが高くなり、ポテンシャル勾配34が急峻になることから、第2電極16b下の光電子30は、第1電極16aの複数の枝分かれ部位22下に高速に移動する。
【0069】
その後、時点t3(露光の終了段階)において、第1電圧V1が低レベルV1Lになると、図5に示す場合と同様に、第1給電端子28a直下の部分のポテンシャル位置32aが早く上昇し、徐々に電荷集積部26に近い方のポテンシャル位置32aが上昇していくことになる。この第1電極16a下のポテンシャル位置32aの上昇によって、電界が発生し、第1電極16a下の光電子30を高速に移動させることができる。その結果、第1電極16a下の例えば複数の枝分かれ部位22下の光電子30を、電荷集積部26に高速に移動させることができる。
【0070】
[第1受光装置100A]
次に、第1の実施の形態に係る受光装置(以下、第1受光装置100Aと記す)について図10及び図11を参照しながら説明する。
【0071】
第1受光装置100Aは、図10に示すように、レンズ102と、第1受光部104Aとを有する。レンズ102を通過した入射光Laは、第1受光部104Aに集光される。レンズ102は、直線状又はマトリックス状に配列された複数のレンズであってもよい。
【0072】
第1受光部104Aは、図11に示すように、光電変換素子10と、光電変換素子10により発生した光電子を集めるための電荷集積部26と、光電子を一定期間蓄積するキャパシタCaと、光電子を排出する電荷排出部108と、電荷集積部26とキャパシタCaとの間に配置され、電荷集積部26に集められた光電子を、キャパシタCaへ移動させる第1スイッチング素子SW1と、電荷集積部26と電荷排出部108との間に配置され、電荷集積部26から電荷排出部108への光電子の排出を制御する第2スイッチング素子SW2とを備えている。電荷排出部108は、電荷集積部26を間に挟んでキャパシタCaと対向配置されている。この実施の形態では、特に、電荷集積部26の中心に対して線対称の位置にキャパシタCaと電荷排出部108とを配置するようにしている。キャパシタCaは、MIMキャパシタ、MOSキャパシタ、埋込型フォトダイオード構造又はpn接合の寄生容量にて構成されている。
【0073】
光電変換素子10は、上述した第1光電変換素子10Aや第2光電変換素子10Bが用いられる。図11では、光電変換素子10として第1光電変換素子10Aを用いた例を示している。この場合、電荷集積部26として、第1光電変換素子10Aの電荷集積部26や第2光電変換素子10Bの電荷集積部26を用いてもよい。
【0074】
第1スイッチング素子SW1は、電荷集積部26とキャパシタCaとの間に配置されたゲート電極と、該ゲート電極下の絶縁体と、該絶縁体下の半導体基体12にて構成されたMOS構造を有する。第2スイッチング素子SW2は、電荷集積部26と電荷排出部108との間に配置されたゲート電極と、該ゲート電極下の絶縁体と、該絶縁体下の半導体基体12にて構成されたMOS構造を有する。従って、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2は、ゲート電極に高レベル電圧が印加されることでオンとされ、ゲート電極に低レベル電圧(0Vあるいは負電圧)が印加されることでオフとされる。
【0075】
なお、少なくとも電荷集積部26、キャパシタCa、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2は、遮光された領域Zに形成されている。
【0076】
この第1受光装置100Aを使用するときは、先ず、特定の入射光Laの輝度情報を取得したい期間(有効期間と記す)に入射した光が光電変換素子10において光電子に変換され、光電子は、上述した動作に従って電荷集積部26に高速に転送されて集積される。その後、第1スイッチング素子SW1がオンされることで、電荷集積部26の光電子はキャパシタCaに転送され、キャパシタCaに転送された光電子の量(電荷量)に基づいて入射光Laの輝度情報が得られることとなる。なお、第1スイッチング素子SW1は所定期間経過後にオフとされる。
【0077】
一方、有効期間以外に入射した不要な光も光電変換素子10において光電子に変換され、光電子は、上述した動作に従って電荷集積部26に高速に転送されて集積される。その後、第2スイッチング素子SW2がオンされることで、電荷集積部26の不要な光電子は電荷排出部108に転送され、排出されることとなる。第2スイッチング素子SW2も所定期間経過後にオフとされる。
【0078】
ところで、輝度情報のS/N比を向上させる手法として、一定期間内に、有効期間を複数設定し、有効期間内に得られた光電子を集積する方法がある。特に、有効期間を短く設定することで、環境光の影響をできるだけ除去することが考えられる。例えば一定期間内に複数の周期を設定し、各周期を100μsec未満とし、さらに、各周期内にそれぞれ有効期間を設定し、各有効期間のデューティを短くすることが考えられる。
【0079】
このような手法を採用したとき、光電変換素子10にて光電変換された光電子を高速にノード(光電子を電気信号に変換する部位)に転送する必要がある。特に、高いS/N比を得るためには、受光面積の大きな光電変換素子が必要となる。しかし、受光面積の大きな光電変換素子を用いた場合、ノードまでの距離が長くなり、光電子を高速にノードまで転送することが難しくなる。例えば第1受光装置100Aに通常の光電変換素子(従来の光電変換素子)を設置して使用した場合を想定して説明すると、第1スイッチング素子SW1がオンとなっている時間が数百nsec程度の場合、光電変換素子において光電変換して得られた光電子は、第1スイッチング素子SW1に到達する前に、第1スイッチング素子SW1がオフとなってしまい、第1スイッチング素子SW1を通じてキャパシタに転送することができない。結果的に、第2スイッチング素子SW2を通じて電荷排出部に転送され、排出されることとなる。
【0080】
また、従来においては、光電変換素子からの光電子をそれぞれ別の経路を通じて2つのノードに振り分ける構造(非特許文献1参照)がある。このような場合、各ノードに至るまでの電極(ゲート電極)の位置や長さが異なってくることから、光電変換素子の変換効率の面内の分布の存在や、光電子の移動経路の差異等の要因により、各ノードへの転送効率に差異が生じ、S/N比を低下させる原因となる。
【0081】
そこで、この第1受光装置100Aにおいては、光電変換素子10として、上述した第1光電変換素子10Aや第2光電変換素子10Bを使用するようにしている。この場合、光電変換素子10内にポテンシャル勾配34が形成されることから、光電子が電界によって高速に移動させることが可能となり、有効期間に得られた光電子を第1スイッチング素子SW1を通じてキャパシタCaに転送することができる。もちろん、光電変換素子10として、第2光電変換素子10Bを使用することで、さらに光電子を高速に移動させることができる。
【0082】
従って、第1受光装置100Aは、高いS/N比を獲得する必要があるアプリケーションに適用可能となり、例えば受光面積が大きく、光電子を出力させるノードまでの距離が長い場合に好適となる。しかも、1つの電荷集積部26に集積するようにしており、電荷集積部26の中心に対して線対称の位置にキャパシタCaと電荷排出部108とを配置するようにしているため、2つ以上のノードに光電子を振り分ける場合においても、電子の移動経路が同一となることから、各ノードへの転送効率に差異を生じさせることはない。
【0083】
[第2受光装置100B]
次に、第2の実施の形態に係る受光装置(以下、第2受光装置100Bと記す)について図10及び図12を参照しながら説明する。
【0084】
この第2受光装置100Bは、上述した第1受光装置100Aと同様に、図10に示すように、レンズ102と、第2受光部104Bとを有する。
【0085】
第2受光部104Bは、上述した第1受光装置100Aの第1受光部104Aとほぼ同様の構成を有するが、図12に示すように、光電子をそれぞれ一定期間蓄積する第1キャパシタCa1及び第2キャパシタCa2を有する点で異なる。
【0086】
すなわち、電荷排出部108は、電荷集積部26を間に挟んで、光電変換素子10と対向配置され、第1キャパシタCa1及び第2キャパシタCa2は、電荷集積部26を間に挟んで、互いに対向配置されている。この実施の形態では、特に、電荷集積部26の中心に対して線対称の位置に第1キャパシタCa1と第2キャパシタCa2とを配置するようにしている。
【0087】
また、電荷集積部26と第1キャパシタCa1との間に配置され、電荷集積部26に集められた光電子を、第1キャパシタCa1へ移動させる第1スイッチング素子SW1と、電荷集積部26と第2キャパシタCa2との間に配置され、電荷集積部26に集められた光電子を、第2キャパシタCa2へ移動させる第2スイッチング素子SW2と、電荷集積部26と電荷排出部108との間に配置され、電荷集積部26から電荷排出部108への光電子の排出を制御する第3スイッチング素子SW3とを備えている。
【0088】
第1キャパシタCa1及び第2キャパシタCa2は、MIMキャパシタ、MOSキャパシタ、埋込型フォトダイオード構造又はpn接合の寄生容量にて構成されている。
【0089】
第1スイッチング素子SW1は、電荷集積部26と第1キャパシタCa1との間に配置されたゲート電極と、該ゲート電極下の絶縁体と、該絶縁体下の半導体基体12にて構成されたMOS構造を有し、第2スイッチング素子SW2は、電荷集積部26と第2キャパシタCa2との間に配置されたゲート電極と、該ゲート電極下の絶縁体と、該絶縁体下の半導体基体12にて構成されたMOS構造を有する。第3スイッチング素子SW3は、電荷集積部26と電荷排出部108との間に配置されたゲート電極と、該ゲート電極下の絶縁体と、該絶縁体下の半導体基体12にて構成されたMOS構造を有する。従って、第1スイッチング素子SW1〜第3スイッチング素子SW3は、ゲート電極に高レベル電圧が印加されることでオンとされ、ゲート電極に低レベル電圧(0Vあるいは負電圧)が印加されることでオフとされる。
【0090】
なお、少なくとも電荷集積部26、第1キャパシタCa1、第2キャパシタCa2、第1スイッチング素子SW1〜第3スイッチング素子SW3は、遮光された領域Zに形成されている。
【0091】
この第2受光装置100Bでは、第1キャパシタCa1及び第2キャパシタCa2を有することから、得られた輝度情報から環境光によるノイズを除去する際に好適である。
【0092】
すなわち、先ず、環境光の輝度情報をノイズ情報として取得したい期間(第1有効期間と記す)に入射した光が光電変換素子10において光電子に変換され、光電子は、上述した動作に従って電荷集積部26に高速に転送されて集積される。その後、第1スイッチング素子SW1がオンされることで、電荷集積部26の光電子は第1キャパシタCa1に転送され、第1キャパシタCa1に転送された光電子の量(電荷量)に基づいて環境光の輝度情報が得られることとなる。なお、第1スイッチング素子SW1は所定期間経過後にオフとされる。
【0093】
次に、特定の入射光Laの輝度情報を取得したい期間(第2有効期間と記す)に入射した光が光電変換素子10において光電子に変換され、光電子は、上述した動作に従って電荷集積部26に高速に転送されて集積される。その後、第2スイッチング素子SW2がオンされることで、電荷集積部26の光電子は第2キャパシタCa2に転送され、第2キャパシタCa2に転送された光電子の量(電荷量)に基づいて特定の入射光Laの輝度情報が得られることとなる。なお、第2スイッチング素子SW2は所定期間経過後にオフとされる。得られた特定の入射光の輝度情報には、環境光によるノイズ情報が含まれているため、第1キャパシタCa1を通じて取得した環境光の輝度情報と差分をとることによって、環境光によるノイズが除去された輝度情報を得ることができる。
【0094】
一方、第1有効期間及び第2有効期間以外に入射した光も光電変換素子10において光電子に変換され、光電子は、上述した動作に従って電荷集積部26に高速に転送されて集積される。その後、第3スイッチング素子SW3がオンされることで、電荷集積部26の光電子は電荷排出部108に転送され、排出されることとなる。
【0095】
この第2受光装置100Bにおいても、光電変換素子10として、上述した第1光電変換素子10Aや第2光電変換素子10Bを使用するようにしているため、第1有効期間に得られた光電子を第1スイッチング素子SW1を通じて高速に第1キャパシタCa1に転送することができ、第2有効期間に得られた光電子を第2スイッチング素子SW2を通じて高速に第2キャパシタCa2に転送することができる。しかも、電荷集積部26の中心に対して線対称の位置に第1キャパシタCa1と第2キャパシタCa2とを配置するようにしている。
【0096】
従って、第2受光装置100Bにおいても、上述した第1受光装置100Aと同様の効果を奏する。さらに、環境光によるノイズ成分を除去することができることから、特定の入射光Laの輝度情報を精度よく取得することができ、S/N比の向上を図ることができる。
【0097】
[第1受光システム200A]
次に、第1の実施の形態に係る受光システム(以下、第1受光システム200Aと記す)について図13〜図15を参照しながら説明する。なお、図14及び図15において、V1は、第1光電変換素子10Aの場合の電圧V1、第2光電変換素子10Bの場合の第1電圧を示し、V2は、第2光電変換素子10Bの場合の第2電圧を示す。
【0098】
第1受光システム200Aは、図13に示すように、発光装置202と、上述の第1受光装置100Aと、制御装置204と、演算装置206と、これら発光装置202、第1受光装置100A、制御装置204及び演算装置206に所定の電源電圧を供給する第1電源208A及び第2電源208Bとを有する。なお、簡単のため、図13において、第1電源208A及び第2電源208Bから各装置への電源線の表示を省略する。
【0099】
この第1受光システム200Aでは、発光装置202から出射されたパルス光Lpが被写体Wで反射し、第1受光装置100Aに入射する。なお、説明の便宜のため、発光装置202から被写体Wまでのパルス光Lpを放射光Le、被写体Wから第1受光装置100Aまでのパルス光Lpを反射光Lrと呼ぶ。
【0100】
制御装置204は、第1受光装置100Aで受光された光から被写体Wからの反射光Lrの成分を取得するように制御する。
【0101】
<発光装置202>
発光装置202は、制御装置204からの指令に基づきパルス光Lpを出力する発光部210を有する。この第1受光システム200Aにおいて、発光装置202の発光部210は、発光点(エミッタ)を直線状に設けた半導体レーザバーを積層(直列接続)して、面発光が可能とされたものである。
【0102】
発光部210は、波長が870ナノメートル[nm]の赤外光を100ワット[W]の出力で放射可能である。また、各サイクルCm(測定値を求める周期)において、複数回の露光処理(電荷蓄積処理)が行われる(図24参照)。露光処理の周期(図24の第2蓄積期間Tca2参照)が100[マイクロ秒]であるところ、発光部210は、パルス光Lpを100[ナノ秒]の出力時間(パルス幅)で出力する。換言すると、発光部210の駆動デューティは、0.1[%]である。
【0103】
なお、発光部210は、リニアアレイ状の発光点を有していてもよく、あるいは、マトリックス状に並べられた複数の発光点を有するものであってもよい。発光素子としてレーザダイオードや発光ダイオード(LED)等のその他の発光素子を用いてもよい。また、発光部210が放射するパルス光Lpは、その他の波長でもよく、例えば、700nmより長く1050nm以下としてもよい。さらに、発光部210の出力は、その他の値でもよく、例えば、20[W]より大きく10[kW]以下としてもよい。さらにまた、パルス光Lpのパルス幅は、その他の長さでもよく、例えば、10[ナノ秒]以上1[ミリ秒]以下としてもよい。加えて、発光部210の駆動デューティは、その他の値でもよく、例えば、0.01[%]以上1[%]以下としてもよい。
【0104】
<第1受光装置100A>
上述したので、ここではその重複説明を省略するが、図14を用いて、回路構成としての第1受光装置100A、特に、第1受光部104Aを説明する。
【0105】
すなわち、第1受光部104Aは、図14に示すように、上述した光電変換素子10と、電荷集積部26と、キャパシタCaと、電荷排出部108と、第1スイッチング素子SW1と、第2スイッチング素子SW2とを備え、さらに、リセットスイッチSRと、アンプAPとを有する。
【0106】
(第1スイッチング素子SW1、キャパシタCa)
第1スイッチング素子SW1は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースが電荷集積部26に接続され、ドレインがキャパシタCaに接続され、ゲートが図示しないゲート駆動回路に接続されている。従って、ゲートに対するゲート駆動回路からのゲート駆動信号(読取信号Sg)に応じて第1スイッチング素子SW1のオン・オフを選択的に制御することにより、電荷集積部26に存在する光電子がキャパシタCaに転送される。
【0107】
(第2スイッチング素子SW2、電荷排出部108)
第2スイッチング素子SW2は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースに電荷集積部26が接続され、ドレインに電荷排出部108が接続され、該電荷排出部108には、第1電源208Aからの正の電源電圧Vddが供給されている。また、ゲートには図示しないゲート駆動回路が接続されている。従って、ゲート駆動回路からゲートにゲート駆動信号(電荷排出信号Se)を供給すること(ゲートに供給される電圧を高レベルにすること)により、ゲートをオンにし、電荷集積部26に存在する光電子を、キャパシタCaに転送することなく、電荷排出部108を通じて排出することができる。
【0108】
(リセットスイッチSR)
リセットスイッチSRは、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースには第1スイッチング素子SW1とキャパシタCaとの接点a1が接続され、ドレインには第2電源208Bからのリセット電圧Vrが供給されている。また、ゲートには図示しないゲート駆動回路が接続されている。従って、ゲートに対するゲート駆動回路からのゲート駆動信号(リセット信号Sr)によってリセットスイッチSRをオンにすることにより、キャパシタCaの電位を一定のリセット電位にすることができる。すなわち、キャパシタCaをリセットすることができる。
【0109】
(アンプAP)
アンプAPは、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成された出力素子TRと、出力素子TRのソースと出力ライン212との間に接続された例えばnチャネル型MOSトランジスタによる出力スイッチSELとを有する。出力素子TRのゲートには、第1スイッチング素子SW1とキャパシタCaとの接点a1が接続され、ドレインには第1電源208Aからの正の電源電圧Vddが供給され、ソースには出力スイッチSELのドレインが接続されている。出力スイッチSELは、ゲートに図示しないゲート駆動回路が接続され、ソースに出力ライン212が接続されている。
【0110】
従って、出力スイッチSELのゲートに対するゲート駆動回路からのゲート駆動信号(出力選択信号Ss)によって出力スイッチSELをオンにすることにより、キャパシタCaに蓄積された光電子(電荷量Q)に応じた電圧が出力素子TRにて増幅されて出力電圧Voutとして取り出されることになる。
【0111】
<第1受光システム200Aの動作>
次に、第1受光システム200Aの動作について図15を参照しながら説明する。なお、図15において、V1は光電変換素子10(第1光電変換素子10A又は第2光電変換素子10B)の第1電極16aに印加される第1電圧V1、V2は同じく第2電極16bに印加される第2電圧を示す。また、発光装置202からのパルス光Lpの発光時間はWLであり、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子がオンしている期間はそれぞれWD1、WD2である。
【0112】
先ず、第1受光システム200Aの制御装置204は、一定の周期(サイクル)毎に発光装置202を駆動して、各サイクル毎に発光時間WLのパルス光Lpを放射する。発光装置202から出射されたパルス光Lp(放射光Le)が被写体Wで反射し、反射光Lrとして第1受光装置100Aに入射する。第1受光装置100Aに入射した光は光電変換素子10にて光電子に変換されて電荷集積部26に高速に転送される。
【0113】
第1スイッチング素子SW1は、電荷集積部26に転送された光電子をキャパシタCaに転送する。すなわち、キャパシタCaに転送された光電子は、入射した反射光Lrを光電変換して得られた光電子(電荷量Q)である。従って、電荷量Qによって、反射光強度の情報を取得することができる。
【0114】
なお、第1スイッチング素子SW1がオンとなっていない場合に光電変換された光電子は、不要な光電子であるため、この不要な光電子を第2スイッチング素子SW2をオンにして電荷排出部108に排出する。
【0115】
ここで、第1受光システム200Aの具体的な動作タイミングについて図15を参照しながら説明する。
【0116】
最初に、第1受光システム200Aの初期設定として、第2スイッチング素子SW2及びリセットスイッチSRを全てオンにし、第1スイッチング素子SW1及び出力スイッチSELを共にオフにする。これにより、光電変換素子10に蓄積されている不要な光電子が排出されると共に、キャパシタCaの電位がリセット電位Vrに設定される。その後、リセットスイッチSRがオフとされる。
【0117】
初期設定が終了した後、反射光強度を取得するためのサイクルが1回のみ、あるいは複数回繰り返されることになる。
【0118】
各サイクルは、図15に示すように、最初の時点t1において、制御装置204による発光装置202の駆動によって、発光装置202から1つのパルス光Lpが出射されることになる。従って、時点t1で第2スイッチング素子SW2をオフにし、該時点t1から読取期間WD1にわたり第1スイッチング素子SW1をオン(第2スイッチング素子SW2はオフのまま)にする。また、時点t1から光電変換素子10の第1電極16a及び第2電極16bに供給される第1電圧V1及び第2電圧V2をそれぞれ高レベルVH1及びVH2にする。これにより、光電変換素子10での光電変換によって得られた光電子が第1電極16a下及び第2電極16b下に蓄積されることとなるが、その一部は、電荷集積部26に向かって移動し、第1スイッチング素子SW1を通じてキャパシタCaに転送される。パルス光Lpの放射期間WLが経過した後の時点t2において第2電圧V2が低レベルV2Lとなり、これによって形成されたポテンシャル勾配34によって第2電極16b下の光電子が第1電極16a下に高速に転送され、その後の時点t3において第1電圧V1が低レベルV1Lになると、第1電極16a下の光電子が電荷集積部26に高速に転送され、第1スイッチング素子SW1を通じてキャパシタCaに転送される。
【0119】
その後の時点t4において、第1スイッチング素子SW1をオフにし、該時点t4から次のサイクルの開始時点までの期間(電荷排出期間WD2)にわたり第2スイッチング素子SW2をオン(第1スイッチング素子SW1はオフのまま)にする。これによって、電荷排出期間WD2において光電変換素子10に発生した不要な光電子は第2スイッチング素子SW2及び電荷排出部108を介して排出される。なお、電荷排出期間WD2においても、光電変換素子10の第1電極16a及び第2電極16bに供給される第1電圧V1及び第2電圧V2を、期間WD1と同様に制御することで、第1電極16a及び第2電極16bを含む光電変換素子10で発生した光電子を、光電変換素子10に電荷が残らないように、電荷排出部108を介して排出させる。
【0120】
所定回数のサイクルが終了した段階で、出力スイッチSELをオンすることによって、出力ライン212には、キャパシタCaに蓄積された光電子(電荷量Q)に応じた電圧が出力素子TRにて増幅されて出力電圧Voutとして出力されることになる。出力電圧Voutは図示しないA/D変換器にてデジタルデータに変換されて演算装置206に供給される。
【0121】
[第2受光システム200B]
次に、第2の実施の形態に係る受光システム(以下、第2受光システム200Bと記す)について図13、図16〜図20を参照しながら説明する。図19及び図20において、V1は、第1光電変換素子10Aの場合の電圧V1、第2光電変換素子10Bの場合の第1電圧を示し、V2は、第2光電変換素子10Bの場合の第2電圧を示す。
【0122】
第2受光システム200Bは、上述した第1受光システム200Aとほぼ同様の構成を有するが、図13に示すように、第2受光装置100Bを使用し、制御装置204によって、第2受光装置100Bで受光された光から環境光Lsの成分を除去して被写体Wからの反射光Lrの成分を取得するように制御することで、環境光Lsに依存しない反射光強度の情報を取得することができる点で異なる。
【0123】
<環境光Lsの影響を低減する基本原理>
ここで、環境光Lsの影響を低減する基本原理、特に、連続光を用いた場合の基本原理について、図16〜図18Bを参照しながら説明する。
【0124】
先ず、図16に示すように、最初の1フレーム期間F1において、被写体Wに連続光を照射しないときの光電子を取り込み、該光電子から未照射時の輝度値を得、次の2フレーム期間F2において、被写体Wに連続光を照射したときの光電子を取り込み、該光電子から照射時の輝度値を得、これらの輝度値の差を取得することで、環境光Ls(主に太陽光成分)の影響を低減することができる。この場合、第1フレーム期間F1と第2フレーム期間F2の組み合わせを1サイクルとした場合、1サイクルに対する連続光のデューティ比は50%となる。また、1つのフレーム期間としては、撮像装置による撮影期間である例えば1/60[秒]が用いられる。
【0125】
そして、最初の1フレーム期間F1においては、連続光を出射せずに受光し、続く第2フレーム期間F2において、該第2フレーム期間F2にわたって連続光を出射させながら受光することから、この第1フレーム期間F1から第2フレーム期間F2にわたって、環境光によるノイズ成分も取り込まれることになる。
【0126】
従って、図17Aに示すように、第2フレーム期間F2の輝度値(信号光成分+太陽光成分)から第1フレーム期間F1の輝度値(太陽光成分)を差し引くことによって、理想的には太陽光成分による影響が除去され、信号光成分のみが得られることになる。
【0127】
しかし、太陽光のような強い環境光が存在する環境では、光ショットノイズの影響があり、しかも、光ショットノイズは、ランダム性を有することから、上述した輝度値の差を演算するだけでは、環境光の影響の除去は十分ではないことがわかる。すなわち、図17Bに示すように、第1フレーム期間F1で発生した光ショットノイズ成分と、第2フレーム期間F2で発生した光ショットノイズ成分が異なる場合、その差分が信号光成分に重畳されることになる。
【0128】
また、太陽光のような強い環境光が存在する環境では、例えば図17Aに示すように、信号光成分よりも太陽光成分が大きいことから(信号光成分のS/N比が低い)、信号光成分の入力ダイナミックレンジが小さくなるという問題がある。一般的な撮像素子は、入射光量に対する信号出力の有効範囲(ダイナミックレンジ)が限られており、太陽光が入射してしまうと、信号出力が飽和してしまう等の悪影響を及ぼすことが知られている。そこで、例えば図18Aに示すように、1つのサイクル(1フレーム期間F1と2フレーム期間F2での露光と、第2フレーム期間F2の輝度値(信号光成分+太陽光成分)から第1フレーム期間F1の輝度値(太陽光成分)を差し引く動作)を複数回繰り返して信号光成分を蓄積することによって、信号光成分のS/N比を向上させることが考えられる。図18Aの例では3つのサイクル(サイクル1〜3)を示している。しかし、上述したように(図17B参照)、各フレーム期間において、ランダムな光ショットノイズが入り込み、しかも、差演算においても、一部残存することから、図18Bに示すように、信号光成分の蓄積と共に、残存するノイズ成分も蓄積することになり、差演算後のS/N比が低くなるという問題がある。
【0129】
信号光成分のS/N比を向上させるためには、連続光のパワーを高めることが考えられる。しかし、1つのフレーム期間にわたって連続光を出射させることから、発熱や消費電力が増加するという新たな問題が生じる。発熱に対しては例えば冷却機構を別途用意することで対応できるが、受光システムの製造コスト、ランニングコストが高くなり、サイズも大きくなるという問題がある。従って、連続光のパワーを上げることには限界がある。
【0130】
一方、上述した発光装置202では、発光部210から高い出力を有するパルス幅の短いパルス光Lpを出射することから、該発光装置202を用いた第2受光システム200Bでは、上述したような連続光による各種問題を解決することができる。
【0131】
[第2受光システム200Bの詳細]
<発光装置202>
発光装置202は、第1受光システム200Aの発光装置202とほぼ同様の構成を有するため、その説明を省略する。
【0132】
<第2受光装置100B>
上述したので(図12参照)、ここではその重複説明を省略するが、図19を用いて、回路構成として第2受光装置100Bを説明する。
【0133】
すなわち、第2受光装置100Bは、図19に示すように、上述した光電変換素子10、電荷集積部26、第1キャパシタCa1、第2キャパシタCa2、電荷排出部108、第1スイッチング素子SW1〜第3スイッチング素子SW3とを備え、さらに、第1リセットスイッチSR1、第2リセットスイッチSR2、第1アンプAP1及び第2アンプAP2を有する。
【0134】
(第1スイッチング素子SW1、第1キャパシタCa1)
第1スイッチング素子SW1は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースが電荷集積部26に接続され、ドレインが第1キャパシタC1に接続され、ゲートが図示しないゲート駆動回路に接続されている。従って、ゲートに対するゲート駆動回路からのゲート駆動信号(第1読取信号Sg1)に応じて第1スイッチング素子SW1のオン・オフを選択的に制御することにより、電荷集積部26に存在する光電子が第1キャパシタCa1に転送される。
【0135】
(第2スイッチング素子SW2、第2キャパシタCa2)
第2スイッチング素子SW2は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースが電荷集積部26に接続され、ドレインが第2キャパシタCa2に接続され、ゲートが図示しないゲート駆動回路に接続されている。従って、ゲートに対するゲート駆動回路からのゲート駆動信号(第2読取信号Sg2)に応じて第2スイッチング素子SW2のオン・オフを選択的に制御することにより、電荷集積部26に存在する光電子が第2キャパシタCa2に転送される。
【0136】
(第3スイッチング素子SW3、電荷排出部108)
第3スイッチング素子SW3は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースに電荷集積部26が接続され、ドレインに電荷排出部108が接続され、該電荷排出部108には、第1電源208Aからの正の電源電圧Vddが供給されている。また、ゲートには図示しないゲート駆動回路が接続されている。従って、ゲート駆動回路からゲートにゲート駆動信号(電荷排出信号Se)を供給することにより、ゲートをオンにし、電荷集積部26に存在する光電子を、第1キャパシタCa1や第2キャパシタCa2に転送することなく、電荷排出部108を通じて排出することができる。
【0137】
(第1リセットスイッチSR1、第2リセットスイッチSR2)
第1リセットスイッチSR1及び第2リセットスイッチSR2は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成されている。第1リセットスイッチSR1のソースに第1スイッチング素子SW1と第1キャパシタC1との接点a1が接続され、第2リセットスイッチSR2のソースに第2スイッチング素子SW2と第2キャパシタC2との接点a2が接続されている。各ドレインには第2電源208Bからのリセット電圧Vrが供給され、各ゲートには図示しないゲート駆動回路が接続されている。従って、各ゲートに対するゲート駆動回路からのゲート駆動信号(第1リセット信号Sr1及び第2リセット信号)によって第1リセットスイッチSR1及び第2リセットスイッチSR2を選択的に又は一斉にオンにすることにより、第1キャパシタCa1及び第2キャパシタCa2の電位をそれぞれ一定のリセット電位にすることができる。すなわち、第1キャパシタCa1及び第2リセットCa2をリセットすることができる。
【0138】
(第1アンプAP1)
第1アンプAP1は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成された第1出力素子TR1と、第1出力素子TR1のソースと第1出力ライン212aとの間に接続された例えばnチャネル型MOSトランジスタによる第1出力スイッチSEL1とを有する。第1出力素子TR1のゲートには、第1スイッチング素子SW1と第1キャパシタC1との接点a1が接続され、ドレインには第1電源208Aからの正の電源電圧Vddが供給され、ソースには第1出力スイッチSEL1のドレインが接続されている。第1出力スイッチSEL1は、ゲートに図示しないゲート駆動回路が接続され、ソースに第1出力ライン212aが接続されている。従って、第1出力スイッチSEL1のゲートに対するゲート駆動回路からのゲート駆動信号(第1出力選択信号Ss1)によって第1出力スイッチSEL1をオンにすることにより、第1キャパシタCa1に蓄積された光電子(電荷量Q1)に応じた電圧が第1出力素子TR1にて増幅されて第1出力電圧Vout1として取り出されることになる。
【0139】
(第2アンプAP2)
第2アンプAP2は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成された第2出力素子TR2と、第2出力素子TR2のソースと第2出力ライン212bとの間に接続された例えばnチャネル型MOSトランジスタによる第2出力スイッチSEL2とを有する。第2出力素子TR2のゲートには、第2スイッチング素子SW2と第2キャパシタCa2との接点a2が接続され、ドレインには第1電源208Aからの正の電源電圧Vddが供給され、ソースには第2出力スイッチSEL2のドレインが接続されている。第2出力スイッチSEL2は、ゲートに図示しないゲート駆動回路が接続され、ソースに第2出力ライン212bが接続されている。従って、第2出力スイッチSEL2のゲートに対するゲート駆動回路からのゲート駆動信号(第2出力選択信号Ss2)によって第2出力スイッチSEL2をオンにすることにより、第2キャパシタCa2に蓄積された光電子(電荷量Q2)に応じた電圧が第2出力素子TR2にて増幅されて第2出力電圧Vout2として取り出されることになる。
【0140】
<第2受光システム200Bの動作>
次に、第2受光システム200Bの動作について図20を参照しながら説明する。なお、図20において、第1スイッチング素子SW1〜第3スイッチング素子SW3がオンしている期間はそれぞれWD1〜WD3である。
【0141】
先ず、第2受光システム200Bの制御装置204は、一定の周期(サイクル)毎に、ある一定期間WSを置いて発光装置202を駆動して、各サイクル毎に発光時間WLのパルス光Lpを放射する。一定期間WSは、環境光Lsの輝度情報を読み取る期間であり、この一定期間WSに第2受光装置100Bに入射した光は光電変換素子10にて光電子に変換されて電荷集積部26に高速に転送される。
【0142】
第1スイッチング素子SW1は、電荷集積部26に転送された光電子を第1キャパシタCa1に転送する。すなわち、第1キャパシタCa1に転送された光電子は、入射した環境光Lsを光電変換して得られた光電子(電荷量Q1)である。従って、電荷量Q1によって、環境光強度の情報を取得することができる。
【0143】
一定期間WS経過後に、発光装置202から出射されたパルス光Lp(放射光Le)が被写体Wで反射し、反射光Lrとして第2受光装置100Bに入射する。第2受光装置100Bに入射した光は光電変換素子10にて光電子に変換されて電荷集積部26に高速に転送される。
【0144】
第2スイッチング素子SW2は、電荷集積部26に転送された光電子を第2キャパシタCa2に転送する。すなわち、第2キャパシタCa2に転送された光電子は、入射した環境光Lsと反射光Lr(パルス光Lpが被写体Wに反射したことによる反射光)を光電変換して得られた光電子(電荷量Q2)である。
【0145】
従って、下記式(F1)に示すように、これら電荷量Q1及びQ2の差をとることによって、環境光に依存しない反射光強度の情報を取得することができる。
反射光強度=Q2−Q1 ……(F1)
【0146】
なお、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2が共にオンとなっていない(共にオフとなっている)場合に光電変換された光電子は、不要な光電子であるため、この不要な光電子を第3スイッチング素子SW3をオンにして電荷排出部108に排出する。
【0147】
ここで、第2受光システム200Bの具体的な動作タイミングについて図20を参照しながら説明する。
【0148】
最初に、上述した第1受光システム200Aと同様に、第2受光システム200Bの初期設定として、第3スイッチング素子SW3、第1リセットスイッチSR1及び第2リセットスイッチSR2を全てオンにし、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、第1出力スイッチSEL1及び第2出力スイッチSEL2を共にオフにする。これにより、光電変換素子10に蓄積されている不要な光電子が排出されると共に、第1キャパシタCa1及び第2キャパシタCa2の各電位がリセット電位に設定される。その後、第1リセットスイッチSR1及び第2リセットスイッチSR2がオフとされる。また、同時に、光電変換素子10の第1電極16a及び第2電極16bに供給される第1電圧V1及び第2電圧V2を、図20の期間WD3に図示するタイミングと同様な動作で制御することで、第1電極16a及び第2電極16bを含む光電変換素子10で発生した光電子を、光電変換素子10に電荷が残らないように、電荷排出部108を介して排出させ光電変換素子10を初期化する。
【0149】
初期設定が終了した後、反射光強度を取得するためのサイクルが1回のみ、あるいは複数回繰り返されることになる。
【0150】
各サイクルは、図20に示すように、第1受光システム200Aの場合とは異なり、最初の時点t1から一定期間WSを置いて、制御装置204による発光装置202の駆動によって、発光装置202から1つのパルス光Lpが出射されることになる。従って、一定期間WSは、上述したように環境光Lsを取り込む期間となる。
【0151】
そして、時点t1で第3スイッチング素子SW3をオフにし、該時点t1から第1読取期間WD1にわたり第1スイッチング素子SW1をオン(第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3はオフのまま)にする。また、上述した第1受光システム200Aと同様に、時点t1から光電変換素子10の第1電極16a及び第2電極16bに供給される第1電圧V1及び第2電圧V2をそれぞれ高レベルVH1及びVH2にし、その後の時点t2において第2電圧V2を低レベルV2Lにし、その後の時点t3において第1電圧V1を低レベルV1Lにする。この一連の電圧変化によって、第2電極16b下の光電子が第1電極16a下に高速に移動し、第1電極16a下の光電子が電荷集積部26に高速に転送され、第1スイッチング素子SW1を通じて第1キャパシタCa1に転送される。
【0152】
その後の時点t4において、第1スイッチング素子SW1をオフにすると共に、発光装置202から1つのパルス光Lpを出射させる。また、時点t4から第2読取期間WD2にわたり第2スイッチング素子SW2をオン(第1スイッチング素子SW1及び第3スイッチング素子SW3はオフのまま)にする。また、時点t4から光電変換素子10の第1電極16a及び第2電極16bに供給される第1電圧V1及び第2電圧V2をそれぞれ高レベルVH1及びVH2にし、その後の時点t5において第2電圧V2を低レベルV2Lにし、その後の時点t6において第1電圧V1を低レベルV1Lにする。この一連の電圧変化によって、第2電極16b下の光電子が第1電極16a下に高速に移動し、第1電極16a下の光電子が電荷集積部26に高速に転送され、第2スイッチング素子SW2を通じて第2キャパシタCa2に転送される。
【0153】
その後の時点t7において、第2スイッチング素子SW2をオフにし、該時点t7から次のサイクルの開始時点までの期間(電荷排出期間WD3)にわたり第3スイッチング素子SW3をオン(第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子は共にオフのまま)にする。これによって、電荷排出期間WD3において光電変換素子10に発生した不要な光電子は第3スイッチング素子SW3及び電荷排出部108を介して排出される。
【0154】
所定回数のサイクルが終了した段階で、第1出力スイッチSEL1をオンすることによって、第1出力ライン212aには、第1キャパシタCa1に蓄積された光電子(電荷量Q1)に応じた電圧が第1出力素子TR1にて増幅されて第1出力電圧Vout1として出力され、その後、第2出力スイッチSEL2をオンすることによって、第2出力ライン212bには、第2キャパシタCa2に蓄積された光電子(電荷量Q2)に応じた電圧が第2出力素子TR2にて増幅されて第2出力電圧Vout2として出力されることになる。
【0155】
第1出力ライン212a及び第2出力ライン212bから出力された第1出力電圧Vout1及び第2出力電圧Vout2は、図示しないA/D変換器にてそれぞれデジタルの第1数値データD1及び第2数値データD2に変換されて演算装置206に供給される。
【0156】
演算装置206では、供給された第1数値データD1及び第2数値データD2に基づいて下記式(F2)を演算することによって、反射光強度データDrを得る。
Dr=D2−D1 ………(F2)
【0157】
上述した発光装置202は、パルス光Lpのパルス幅を1[ナノ秒]より長く、且つ、0.25[秒]未満としているため、パルス光Lpのパルス幅を1フレーム期間の1[%]以下、例えば0.1[%]以下の時間的長さに設定することが可能である。つまり、パルス幅を大幅に短く設定することができることから、1つのパルス光Lpのパワーを高くすることができ、環境光成分に対する反射光成分(信号光)のS/N比を大幅に向上させることができる。第2読取期間WD2もパルス光Lpのパルス幅に合わせて短く設定することができ、しかも、環境光Lsのみを読み取る第1読取期間WD1を上述した第2読取期間WD2と同じ時間的長さにできる等、読取時間を短くすることができるため、環境光Lsの入射光量を低減でき、環境光Lsに起因する光ショットノイズ成分を低減することができる。
【0158】
また、第1読取期間WD1と第2読取期間WD2に挟まれる時間的長さをほぼ0にすることができることから、被写体Wにパルス光Lpを照射しない期間(第1読取期間WD1)における光電子の取り込み(未放射時の輝度値の取得)と、パルス光Lpを照射した期間(第2読取期間WD2)における光電子の取り込み(放射時の輝度値の取得)を、短時間に切り換えることが可能となり、未放射時の輝度値と放射時の輝度値の取得にかかる同時性を格段に向上させることができる。
【0159】
また、上述したサイクルを複数回繰り返す場合は、第1キャパシタCa1及び第2キャパシタCa2に蓄積される光電子の量を増やすことができる。この場合においても、パルス光列のパルス周期に対するパルス光Lpのデューティ比が1[%]以下(例えば0.1[%]以下)に設定されることから、パルス光列に含まれる各パルス光Lpのパワーを連続光よりも高くすることが可能となり、各パルス幅での環境光Ls(ノイズ成分)に対する反射光Lr(信号光成分)のS/N比を大幅に向上させることができる。このように、パルス光Lpのデューティ比を小さくすることで、大きな出力を有したパルス光を用いても、発光休止時に放熱させることができるため、放熱特性を良好にできる。しかも、複数サイクルにわたって第1キャパシタCa1及び第2キャパシタCa2にそれぞれ光電子を蓄積することから、信号光成分を増やすことができ、その後の信号処理の精度を高めることが可能となる。また、各サイクルにおいて、第1読取期間WD1における光電子の取り込みと、第2読取期間WD2における光電子の取り込みを、短時間に切り換えることができるため、未放射時の輝度値と放射時の輝度値の取得にかかる同時性を格段に向上させることができる。
【0160】
[第1測距装置300A]
次に、第1の実施の形態に係る測距装置(以下、第1測距装置300Aと記す)について図21〜図26を参照しながら説明する。図23において、V1は、第1光電変換素子10Aの場合の電圧V1、第2光電変換素子10Bの場合の第1電圧を示し、V2は、第2光電変換素子10Bの場合の第2電圧を示す。
【0161】
第1測距装置300Aは、後述するイメージセンサ302の各画素304の出力に基づき測定した距離を用いた三次元画像を取得するものであり、上述した発光装置202、制御装置204、演算装置206、第1電源208A及び第2電源208Bに加えて、第3受光装置100Cとを有する。
【0162】
第1測距装置300Aでは、制御装置204からの指令に応じて発光装置202の発光部210から出射されたパルス光Lpが対象物Wで反射し、第3受光装置100Cに入射する。第3受光装置100Cには、太陽光等の環境光Lsも入射する。第3受光装置100Cは、制御装置204からの指令に基づき受光量に応じた電荷を示す信号(蓄積電荷信号Sc1、Sc2)を演算装置206に出力する。演算装置206は、パルス光Lpが発光装置202から第3受光装置100Cまで到達する期間(往復期間ΔP)[s]を算出し、この往復期間ΔPに基づいて第1測距装置300Aと対象物Wとの距離D[m]を演算する。演算装置206の演算結果は、例えば、図示しない表示装置に出力される。
【0163】
<第3受光装置100C>
第3受光装置100Cは、レンズ102と、第3受光部104Cとを有する。レンズ102を通過した反射光Lr及び環境光Lsは、第3受光部104Cに集光される。レンズ102は、直線状又はマトリックス状に配列された複数のレンズであってもよい。
【0164】
第3受光部104Cは、図22に示すように、マトリックス状に画素304が配置されたイメージセンサ302と、ゲート駆動回路306と、垂直選択回路308と、サンプルホールド回路310と、水平選択回路312と、出力バッファ314と、A/D変換器316とを有する。
【0165】
イメージセンサ302は、各画素304の受光量に応じた蓄積電荷信号Sc1、Sc2を水平選択回路312を介して出力する。第1電源208Aは、イメージセンサ302に対して正の電源電圧Vddを印加し、第2電源208Bは、イメージセンサ302に対してリセット電圧Vrを印加する。
【0166】
ゲート駆動回路306は、各種ゲート駆動信号を出力することによりイメージセンサ302の第1スイッチング素子SW1〜第5スイッチング素子SW5(図23参照)、第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4を選択的にオン/オフ制御する。
【0167】
垂直選択回路308は、マルチプレクサ(図示せず)を有し、読出しを行う画素304が属する行に対して選択的に第1出力選択信号Ss1〜第4出力選択信号Ss4を出力し、当該画素304から蓄積電荷信号Sc1、Sc2を出力させる。水平選択回路312は、別のマルチプレクサ(図示せず)を有し、読出しを行う画素304が属する列を選択する。
【0168】
図23に示すように、画素304から読み出された蓄積電荷信号Sc1、Sc2は、第1定電流回路58a、第2定電流回路58bにより、第1出力電圧Vout1及び第2出力電圧Vout2、第3出力電圧Vout3及び第4出力電圧Vout4に変換され、サンプルホールド回路310に一旦蓄積された後、水平選択回路312から出力される。そして、蓄積電荷信号Sc1、Sc2は、出力バッファ314及びA/D変換器316を介して演算装置206に送信される。この蓄積電荷信号Sc1、Sc2を受信した演算装置206は、蓄積電荷信号Sc1、Sc2から反射光Lrの光量(光量Ar)を判定して、第1測距装置300Aと対象物Wとの距離Dを演算する(詳細は後述する。)。
【0169】
<画素304>
図23には、1つの画素304の回路図が示されている。図23に示すように、画素304は、上述した光電変換素子10、電荷集積部26、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4、電荷排出部108、第1スイッチング素子SW1〜第5スイッチング素子SW5とを備え、さらに、第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4、第1アンプAP1〜第4アンプAP4を有する。図23において、回路図を見易くするために、電荷集積部26を2つの接点で示したが、実際には1つの電荷集積部26にて構成されるものである。また、第1キャパシタCa1と第3キャパシタCa3は、電荷集積部26の中心に対して線対称の位置に配置され、第2キャパシタCa2と第4キャパシタCa4も、電荷集積部26の中心に対して線対称の位置に配置されている。同様に、第1キャパシタCa1と第2キャパシタCa2も、電荷集積部26の中心に対して線対称の位置に配置され、第3キャパシタCa3と第4キャパシタCa4も、電荷集積部26の中心に対して線対称の位置に配置されている。
【0170】
(第1スイッチング素子SW1、第1キャパシタCa1)
上述した第2受光装置100Bの第1スイッチング素子SW1及び第1キャパシタCa1と同様の構成を有するため、ここではその説明を省略する。
【0171】
(第2スイッチング素子、第2キャパシタ)
上述した第2受光装置100Bの第2スイッチング素子SW2及び第2キャパシタCa2と同様の構成を有するため、ここではその説明を省略する。
【0172】
(第3スイッチング素子SW3、第3キャパシタCa3)
第3スイッチング素子SW3は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースが電荷集積部26に接続され、ドレインが第3キャパシタCa3に接続され、ゲートがゲート駆動回路306に接続されている。従って、ゲートに対するゲート駆動回路306からのゲート駆動信号(第3読取信号Sg3)に応じて第3スイッチング素子SW3のオン・オフを選択的に制御することにより、電荷集積部26に存在する光電子が第3キャパシタCa3に転送される。
【0173】
(第4スイッチング素子SW4、第4キャパシタCa4)
第4スイッチング素子SW4は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースが電荷集積部26に接続され、ドレインが第4キャパシタC1に接続され、ゲートがゲート駆動回路306に接続されている。従って、ゲートに対するゲート駆動回路306からのゲート駆動信号(第4読取信号Sg4)に応じて第4スイッチング素子SW4のオン・オフを選択的に制御することにより、電荷集積部26に存在する光電子が第4キャパシタCa4に転送される。
【0174】
(第5スイッチング素子SW5、電荷排出部108)
第5スイッチング素子SW5は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースに電荷集積部26が接続され、ドレインに電荷排出部108が接続され、該電荷排出部108には、第1電源208Aからの正の電源電圧Vddが供給されている。また、ゲートにはゲート駆動回路306からの電荷排出信号Seが供給されるようになっている。
【0175】
従って、ゲートに電荷排出信号Seを供給すること(ゲートに供給される電圧を高レベルにすること)により、ゲートをオンにし、電荷集積部26に存在する不要な光電子を、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に転送することなく、電荷排出部108を通じて排出することができる。
【0176】
すなわち、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4の全てがオフにされているとき(光電変換素子10で発生した光電子を第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に振り分けないとき)に、ゲート駆動回路306から第5スイッチング素子SW5のゲートに電荷排出信号Seを送信すること(ゲートに供給される電圧を高レベルにすること)により、第5スイッチング素子SW5をオンにし、光電変換素子10で発生した不要な光電子を、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に振り分けることなく、電荷排出部108に排出することができる。これにより、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4には、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4がオンしている期間に光電変換素子10で発生した光電子のみを振り分けることが可能となる。その結果、後述する方法により、第1測距装置300Aと対象物Wとの距離Dを測定することが可能となる。
【0177】
(第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4)
第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成されている。第1リセットスイッチSR1のソースに第1スイッチング素子SW1と第1キャパシタCa1との接点a1が接続され、第2リセットスイッチSR2のソースに第2スイッチング素子SW2と第2キャパシタCa2との接点a2が接続されている。同様に、第3リセットスイッチSR3のソースに第3スイッチング素子SW3と第3キャパシタCa3との接点a3が接続され、第4リセットスイッチSR4のソースに第4スイッチング素子SW4と第4キャパシタCa4との接点a4が接続されている。各ドレインには第2電源208Bからのリセット電圧Vrが供給され、各ゲートにはゲート駆動回路306が接続されている。
【0178】
従って、各ゲートに対するゲート駆動回路306からのゲート駆動信号(第1リセット信号Sr1〜第4リセット信号Sr4)によって第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4を選択的に又は一斉にオンにすることにより、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4の電位をそれぞれ一定のリセット電位にすることができる。すなわち、第1キャパシタCa1〜第4リセットCa4をリセットすることができる。
【0179】
(第1アンプAP1、第2アンプAP2)
上述した第2受光装置100Bの第1アンプAP1及び第2アンプAP2と同様の構成を有するため、ここではその詳細説明を省略するが、第1アンプAP1の第1出力スイッチSEL1のソースが第1出力ライン212aに接続され、ゲートには垂直選択回路308からの第1出力選択信号Ss1が供給されるようになっている。同様に、第2アンプAP2の第2出力スイッチSEL2のソースが第1出力ライン212aに接続され、ゲートには垂直選択回路308からの第2出力選択信号Ss2が供給されるようになっている。
【0180】
従って、第1出力スイッチSEL1のゲートに対する第1出力選択信号Ss1によって第1出力スイッチSEL1をオンにすることにより、第1キャパシタCa1に蓄積された光電子(電荷量Q1)に応じた電圧が第1出力素子TR1にて増幅され、第1出力ライン212aを介して第1出力電圧Vout1として取り出されることになる。同様に、第2出力スイッチSEL2のゲートに対する第2出力選択信号Ss2によって第2出力スイッチSEL2をオンにすることにより、第2キャパシタCa2に蓄積された光電子(電荷量Q2)に応じた電圧が第2出力素子TR2にて増幅され、第1出力ライン212aを介して第2出力電圧Vout2として取り出されることになる。
【0181】
(第3アンプAP3)
第3アンプAP3は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成された第3出力素子TR3と、第3出力素子TR3のソースと第2出力ライン212bとの間に接続された例えばnチャネル型MOSトランジスタによる第3出力スイッチSEL3とを有する。第3出力素子TR3のゲートには、第3スイッチング素子SW3と第3キャパシタCa3との接点a3が接続され、ドレインには第1電源208Aからの正の電源電圧Vddが供給され、ソースには第3出力スイッチSEL3のドレインが接続されている。第3出力スイッチSEL3は、ソースに第2出力ライン212bが接続され、ゲートには、垂直選択回路308からの第1出力選択信号Ss3が供給されるようになっている。
【0182】
従って、第3出力スイッチSEL3のゲートに対する第3出力選択信号Ss3によって第3出力スイッチSEL3をオンにすることにより、第3キャパシタCa3に蓄積された光電子(電荷量Q3)に応じた電圧が第3出力素子TR3にて増幅され、第2出力ライン212bを介して第3出力電圧Vout3として取り出されることになる。
【0183】
(第4アンプAP4)
第4アンプAP4は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成された第4出力素子TR4と、第4出力素子TR4のソースと第2出力ライン212bとの間に接続された例えばnチャネル型MOSトランジスタによる第4出力スイッチSEL4とを有する。第4出力素子TR4のゲートには、第4スイッチング素子SW4と第4キャパシタCa4との接点a4が接続され、ドレインには第1電源208Aからの正の電源電圧Vddが供給され、ソースには第4出力スイッチSEL4のドレインが接続されている。第4出力スイッチSEL4は、ソースに第2出力ライン212bが接続され、ゲートには、垂直選択回路308からの第4出力選択信号Ss4が供給されるようになっている。
【0184】
従って、第4出力スイッチSEL4のゲートに対する第4出力選択信号Ss4によって第4出力スイッチSEL4をオンにすることにより、第4キャパシタCa4に蓄積された光電子(電荷量Q4)に応じた電圧が第4出力素子TR4にて増幅され、第2出力ライン212bを介して第4出力電圧Vout4として取り出されることになる。
【0185】
[第1測距装置300Aと対象物Wとの距離Dの測定方法]
次に、第1測距装置300Aと対象物Wとの距離Dを測定する方法について説明する。
【0186】
(1)サイクルCm
図24に示すように、第1測距装置300Aでは、各サイクルCm(測定値を求める周期)[回/s]は、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に電荷を累積的に蓄積する第1蓄積期間Tca1と、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に累積的に蓄積された電荷を読み出す読出期間Trとからなる。さらに、第1蓄積期間Tca1は、画素304にパルス光Lpを露光し、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に電荷を蓄積する処理(電荷蓄積処理)を1回行うための第2蓄積期間Tca2を複数含む。第1測距装置300Aにおいて、第1蓄積期間Tca1及び読出期間Trは、10[ミリ秒]である。また、各第2蓄積期間Tca2は、100[マイクロ秒]である。さらに、各第2蓄積期間Tca2におけるパルス光Lpの出力時間(パルス幅)は、100[ナノ秒]である。従って、各第2蓄積期間Tca2における発光部210の駆動デューティは、0.1[%]である。
【0187】
なお、上述したように、第1測距装置300Aは、測定結果を三次元画像として出力可能であるため、各サイクルCmは、三次元画像のフレームレート[フレーム/s]としても定義可能である。
【0188】
第1測距装置300Aでは、第1蓄積期間Tca1において電荷蓄積処理を100回行い、これに伴って、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に蓄積された電荷量Q1〜Q4に基づいて往復期間ΔP及び距離Dを測定する。
【0189】
(2)測定方法の概要(1つの電荷蓄積期間Tca2を対象とした場合)
上記のように、第1測距装置300Aでは、第1蓄積期間Tca1全体で第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に蓄積された電荷量Q1〜Q4に基づいて往復期間ΔP及び距離Dを測定するが、発明の理解を容易化するため、以下では、先ずは、1つの第2蓄積期間Tca2のみで第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に蓄積された電荷量Q1〜Q4に基づいて往復期間ΔP及び距離Dを求める場合を説明する。
【0190】
図25には、第2蓄積期間Tca2における放射光Le、反射光Lr、並びに第1スイッチング素子SW1〜第5スイッチング素子SW5のオン/オフのタイミングチャートが示されている。
【0191】
詳細は後述するが、第1測距装置300Aでは、反射光Lrの強度Ir[W]が一定であれば、反射光Lrが光電変換素子10に入射した期間(反射光入射期間Pri)[s]と、反射光入射期間Priにおける反射光Lrの累積光量(反射光測定光量Amr)[J]とが比例関係にあることを利用して、距離Dを測定する。
【0192】
すなわち、第1基準期間としての期間P1において、環境光Lsのみが光電変換素子10に入射しているときの累積光量(環境光基準光量Ars)[J](第1キャパシタCa1の電荷量Q1)を求め、第2基準期間としての期間P3(=P1)において、環境光Ls及び反射光Lrが光電変換素子10に入射しているときの累積光量(合成光基準光量Ari)[J](第3キャパシタCa3の電荷量Q3)を求める。また、第1測定期間としての期間P2において、環境光Lsのみが光電変換素子10に入射しているときの累積光量(環境光測定光量Ams)[J](第2キャパシタCa2の電荷量Q2)を求め、第2測定期間としての期間P4(=P2)において、環境光Ls及び反射光Lrが光電変換素子10に入射しているときの累積光量(合成光測定光量Ami)[J](第4キャパシタCa4の電荷量Q4)を求める。期間P4では、環境光Ls及び反射光Lrの両方が入射する期間(期間Psr)[s]と、環境光Lsのみが入射する期間(期間Ps)[s]が存在する。期間Psrは、対象物Wまでの距離Dに比例する。
【0193】
ここで、合成光基準光量Ariと環境光基準光量Arsとの差(反射光基準光量Arr)[J]と合成光測定光量Amiと環境光測定光量Amsとの差(反射光測定光量Amr)[J]との比(Ari―Ars:Ami―Ams)と、期間P3(=P1)と反射光入射期間Priとの比(P3:Pri)とが等しい。これを利用して、第1測距装置300Aから出射されたパルス光Lpが対象物Wに当たって第1測距装置300Aに戻って来るまでの期間(往復期間ΔP)を求める。そして、往復期間ΔPに基づいて第1測距装置300Aと対象物Wとの距離Dを測定する。
【0194】
(3)測定方法の詳細(1つの第2蓄積期間Tca2を対象とした場合)
(a)タイミングチャートの説明
図25において、時点Teuは、放射光Leの放射開始時点を、時点Tedは、放射光Leの放射終了時点を、期間Peは、時点Teuから時点Tedまでの期間を示す。時点Truは、光電変換素子10に対する反射光Lrの入射開始時点を、時点Trdは、光電変換素子10に対する反射光Lrの入射終了時点を、期間Prは、時点Truから時点Trdまでの期間を示す。
【0195】
時点Tg1u、Tg2u、Tg3u、Tg4uは、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4をオンする時点を、ここから時点Tg1d、Tg2d、Tg3d、Tg4dは、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4をオフする時点を、期間P1は、時点Tg1uから時点Tg1dまでの期間を、期間P2は、時点Tg2uから時点Tg2dまでの期間を、期間P3は、時点Tg3uから時点Tg3dまでの期間を、期間P4は、時点Tg4uから時点Tg4dまでの期間を示す。期間Psrは、時点Tg4uから時点Trdまでの期間を、期間Psは、時点Trdから時点Tg4dまでの期間を示す。
【0196】
時点Td1u、Td2uは、第5スイッチング素子SW5をオンする時点を、時点Td1d、Td2dは、第5スイッチング素子SW5をオフする時点を、期間P5は、時点Td1uから時点Td1dまでの期間を、期間P6は、時点Td2uから時点Td2dまでの期間を示す。
【0197】
反射光Lrが光電変換素子10に入射している期間Prは、時点Teuから時点Truまで又は時点Tedから時点Trdまでの遅れ(往復期間ΔP)が発生するものの、期間Peと等しく(Pe=Pr)、例えば、10[ナノ秒]以上1[マイクロ秒]以下に設定可能であり、第1測距装置300Aでは、100[ナノ秒]である。また、制御装置204において、期間P1と期間P3及び期間P2と期間P4はそれぞれ等しく設定される(P1=P3及びP2=P4)。期間P1、P3は、例えば、10[ナノ秒]以上90[ナノ秒]以下に設定可能であり、第1測距装置300Aでは、30[ナノ秒]である。期間P2は、例えば、10[ナノ秒]以上90[ナノ秒]以下に設定可能であり、第1測距装置300Aでは、70[ナノ秒]である。また、期間P5は、例えば、0[秒]以上90[ナノ秒]以下に設定可能であり、第1測距装置300Aでは、70[ナノ秒]である。期間P6は、例えば、10[マイクロ秒]以上1[ミリ秒]以下に設定可能であり、第1測距装置300Aでは、約100[マイクロ秒]である。このため、期間P1〜P6のうち期間P6が非常に長い。
【0198】
図25からわかるように、第1測距装置300Aの第2蓄積期間Tca2では、先ず、第1スイッチング素子SW1をオンにし(期間P1)、第1スイッチング素子SW1をオフにするのと同時に第2スイッチング素子SW2をオンにする(期間P2)。第2スイッチング素子SW2をオフにするのと同時に対象物Wに対して放射光Leを出射し、第5スイッチング素子SW5をオンする(期間P5)。放射光Leの出力中(期間Pe)、光電変換素子10に対する反射光Lrの入射が開始する(時点Tru)。放射光Leの出射開始(時点Teu)から期間P5経過後に第5スイッチング素子SW5をオフにすると共に第3スイッチング素子SW3をオンにする(期間P3)。期間Peの経過後に、放射光Leの出射を終了すると共に第3スイッチング素子SW3をオフにし、第4スイッチング素子SW4をオンにする(期間P4)。第4スイッチング素子SW4をオンにしている間(期間P4)、光電変換素子10に対する反射光Lrの入射が終了する(時点Trd)。換言すると、期間P4が、第1測距装置300Aの測定レンジ(測定可能な距離の範囲)[m]を規定する。第4スイッチング素子SW4をオフにするのと同時に第5スイッチング素子SW5をオンにする(期間P6)。期間P6が経過すると第5スイッチング素子SW5をオフにし、1回の第2蓄積期間Tca2を終了する(時点Td2d)。それと同時に、次の第2蓄積期間Tca2が開始され、第1スイッチング素子SW1はオンとなる(時点Tg1u)。なお、第3受光装置100C及び発光装置202の各部位の制御は、制御装置204において行われる。また、制御装置204を半導体プロセスにて作製する場合は、温度補償等の観点から、第3受光部104Cと共に同一のシリコン基板上にCMOSプロセスで作製することが望ましい。
【0199】
(b)測定原理の説明
(i)反射光基準光量Arrの演算
第1測距装置300Aと対象物Wとがそれぞれ固定されていれば、対象物Wで反射して第1測距装置300Aに戻って来る反射光Lrは、一定の強度(単位時間当たりの光量)であると言える。また、期間P1は、環境光Lsのみが光電変換素子10に入射する期間に設定されるため、第1キャパシタCa1には、環境光Lsのみに伴う光電子が蓄積される。一方、期間P3は、環境光Lsと反射光Lrの両方が光電変換素子10に入射する期間に設定されるため、第3キャパシタCa3には、環境光Lsと反射光Lrの両方に伴う光電子が蓄積される。さらに、期間P1と期間P3は同じ長さである。
【0200】
このため、第3キャパシタCa3に蓄積されている電荷量Q3と第1キャパシタCa1に蓄積されている電荷量Q1との差は、期間P3(=期間P1)における反射光Lrの累積光量(反射光基準光量Arr)を示す。
【0201】
(ii)反射光測定光量Amr及び往復期間ΔPの演算
第1測距装置300Aと対象物Wとがそれぞれ固定されていれば、対象物Wで反射して第1測距装置300Aに戻って来る反射光Lrは、一定の強度であると言える。また、期間P2は、環境光Lsのみが光電変換素子10に入射する期間に設定されるため、第2キャパシタCa2には、環境光Lsのみに伴う光電子が蓄積される。一方、期間P4は、環境光Lsと反射光Lrが光電変換素子10に入射する期間(期間Psr)と環境光Lsのみが光電変換素子10に入射する期間(期間Ps)の両方を含む期間に設定されるため、第4キャパシタCa4には、環境光Lsと反射光Lrの両方に伴う光電子が蓄積される。さらに、期間P2と期間P4は同じ長さである。
【0202】
このため、第4キャパシタCa4に蓄積されている電荷量Q4と第2キャパシタCa2に蓄積されている電荷量Q2との差は、期間P4(=期間P2)における反射光Lrの累積光量(反射光測定光量Amr)を示す。ここで、第1測距装置300Aでは、期間P4は、放射光Leの出射を終了する時点Tedと同時に開始される。このため、期間P4では、パルス往復期間ΔPに対応する反射光Lrが光電変換素子10に入射し、第4キャパシタCa4に光電子が蓄積される。従って、第4キャパシタCa4に蓄積されている電荷量Q4は、期間P4全体における環境光Lsの累積光量(環境光測定光量Ams)と、往復期間ΔPにおける反射光Lrの累積光量(反射光測定光量Amr)との和(合成光測定光量Ami)に対応するものである。このため、電荷量Q4と電荷量Q2との差は、反射光測定光量Amrに対応する電荷量を示す。ここで、往復期間ΔPは、第1測距装置300Aと対象物Wとの距離Dに依存する。このため、反射光測定光量Amr(電荷量Q4と電荷量Q2の差に対応)と反射光基準光量Arr(電荷量Q3と電荷量Q1の差に対応)との比は、往復期間ΔPと期間P3(=期間P1)との比に等しい(Amr:Arr=Q4−Q2:Q3−Q1=ΔP:P3)。従って、下記の式(F3)により往復期間ΔPを演算することができる。
ΔP={(Q4−Q2)/(Q3−Q1)}×P3 ……(F3)
【0203】
(iii)距離Dの演算
往復期間ΔPがわかれば、第1測距装置300Aと対象物Wとの距離Dは、下記の式(F4)により演算することができる。なお、式(F4)において、cは、光速(約30万[キロメートル毎秒])を示す定数であり、また、c×ΔPを2で割っているのは、往復期間ΔPにおいて、パルス光Lpは、第1測距装置300Aと対象物Wとの間を往復し、距離Dの2倍の距離を進んでいるためである。
D=c×ΔP/2 ……(F4)
【0204】
(iv)その他
画素304の初期設定(リセット動作)としては、下記のような処理がなされる。すなわち、先ず、第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4に対して第1リセット信号Sr1〜第4リセット信号Sr4を送信すること(第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4の各ゲートに供給される電圧を高レベルにすること)に応じて第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4を一斉にオンにする。同時に、第5スイッチング素子SW5に電荷排出信号Sdeを送信すること(第5スイッチング素子SW5のゲートに供給される電圧を高レベルにすること)により、第5スイッチング素子SW5をオンにする。このとき、第5スイッチング素子SW5と、光電変換素子10の第1電極16a及び第2電極16bに供給される第1電圧V1及び第2電圧V2を、上述した図20の期間WD3に図示するタイミングと同様な動作で制御することで、第1電極16a及び第2電極16bを含む光電変換素子10で発生した光電子を、光電変換素子10に電荷が残らないように電荷排出部108を介して排出させ、光電変換素子10を初期化する(ただし、図20におけるSW3は、画素304においては、SW5に相当する)。
【0205】
さらに、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4に対してゲート駆動信号Sg1〜Sg4は送信されず(第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4の各ゲートに供給される電圧を低レベルにし)、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4をオフにしておく。この処理により、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4は、リセット電位に設定される。この後、第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4に対する第1リセット信号Sr1〜第4リセット信号Sr4の送信を停止し(第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4の各ゲートに供給される電圧を低レベルにし)た後、上述した図25に示すタイミングでの処理が行われる。
【0206】
(4)測定方法の詳細(第1蓄積期間Tca1を対象とした場合)
上記項目(2)、(3)では、1個の第2蓄積期間Tca2を対象とした場合を説明したが、第1測距装置300Aでは、100個の第2蓄積期間Tca2(すなわち、第1蓄積期間Tca1)において第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に蓄積した電荷量Q1〜Q4(ここでは、「電荷量sQ1〜sQ4」と称する。)を用いて、上記と同様に往復期間ΔPを演算する。
【0207】
電荷量sQ1は、第1番目から第100番目までの各第2蓄積期間Tca2で第1キャパシタCa1に蓄積された電荷量Q1の合計である。同様に、電荷量sQ2〜sQ4は、第1番目から第100番目までの各第2蓄積期間Tca2で第2キャパシタCa2〜第4キャパシタCa4に蓄積された電荷量Q2〜Q4の合計である。
【0208】
この場合、上述した式(F3)に準じた下記の式(F5)により往復期間ΔPを演算することができる。
ΔP={(sQ4−sQ2)/(sQ3−sQ1)}×P3 ……(F5)
【0209】
上記式(F5)にて求めた往復距離ΔPに基づいて、上述した式(F4)によって、第1測距装置300Aと対象物Wとの距離Dを求めることができる。これらの演算は、演算装置206にて求めることができる。
【0210】
このように、100個の第2蓄積期間Tca2に、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に蓄積された電荷量sQ1〜sQ4によって距離を求めるようにすれば、信号光成分を増やすことができ、その後の信号処理の精度(距離演算の精度)を高めることが可能となる。
【0211】
(5)その他
なお、第1測距装置300Aでは、複数の画素304それぞれにおいて電荷量Q1〜Q4(電荷情報)を用いて、距離Dを測定する。これにより、各画素304の距離情報を組み合わせることにより3次元画像を得ることができる。
【0212】
[第1測距装置300Aによる効果]
以上のような第1測距装置300Aでは、距離測定にあたってのダイナミックレンジを向上させることができると共に、環境光Lsの影響を軽減又は排除することが可能となる。その結果、距離測定の精度を向上することが可能となる。
【0213】
すなわち、第1測距装置300Aでは、光電変換素子10に環境光Lsのみが入射する期間P1に蓄積される電荷量Q1と、光電変換素子10に環境光Lsと反射光Lrの両方が入射する期間P3に蓄積される電荷量Q3を求める。期間P1と期間P3とは同じ長さに設定されることから、電荷量Q3と電荷量Q1の差(Q3−Q1)から、期間P3における反射光Lrに対応する電荷量(期間P3における反射光Lrの基準光量Arrに対応する)を求めることができる。
【0214】
また、光電変換素子10に環境光Lsのみが入射する期間P2に蓄積される電荷量Q2と、期間P4に蓄積される電荷量Q4を求める。期間P4には、環境光Lsと反射光Lrの両方が光電変換素子50に入射していた期間(期間Psr)と、環境光Lsのみが光電変換素子50に入射していた期間(期間Ps)が含まれる。期間P2と期間P4は同じ長さに設定されることから、電荷量Q4と電荷量Q2の差(Q4−Q2)から、期間P4のうち期間Psrに対応する電荷量(期間Psrにおける反射光Lrの光量に対応する)を求めることができる。
【0215】
ここで、反射光Lrが光電変換素子10に入射している間、反射光Lrの強度Irが一定であるとすると、電荷量Q4及び電荷量Q2の差と電荷量Q3及び電荷量Q1の差との比(Q4−Q2:Q3−Q1)は、期間Psrと期間P3との比(Psr:P3)と等しい。このため、期間Psrは、下記の式(F6)で求めることができる。
Psr={(Q4−Q2)/(Q3−Q1)}×P3 ……(F6)
【0216】
ここで、時点Tedと時点Tg4uが等しいため、期間Psrは往復期間ΔPと等しい。従って、上記式(F6)より往復期間ΔPを演算することが可能であり、その結果、往復期間ΔPと光速に基づき距離Dを求めることができる。
【0217】
このように、第1測距装置300Aでは、環境光Lsによって生じる電荷量Q2を取り除くため、環境光Lsの影響を排除又は軽減することができる。
【0218】
また、距離Dが短くなる程、反射光Lrの入射期間(すなわち、期間Psr)が短くなり、距離Dが長くなる程、期間Psrが長くなる。一般に、同じ対象物Wであれば、距離Dが短い程、反射光Lrの強度Irは大きくなり、距離Dが長い程、強度Irは小さくなる。このため、距離Dが短い場合、強度Irの大きい反射光Lrを短期間入射させ、距離Dが長い場合、強度Irの小さい反射光Lrを長期間入射させることとなる。その結果、距離Dの変化量と比較して、期間Psrに入射する反射光Lrの光量Arの変化量は小さくなる。このことは、第1測距装置300Aのダイナミックレンジの向上につながる。
【0219】
第1測距装置300Aでは、各サイクルCmにパルス光Lpを100回放射し、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4それぞれに100回光電子を蓄積した後の電荷量Q1〜Q4を用いて往復期間ΔPを演算する。一般に、環境光Ls(例えば、太陽光)の強度は常に変化している。各サイクルCmにパルス光Lpを100回放射し、これに応じた回数だけ光電子を蓄積した後の電荷量Q1〜Q4を用いて往復期間ΔPを演算することで、環境光Lsの強度を平均化することができる。その結果、環境光Lsによって生じる電荷量を取り除く精度を高め、測定精度を向上させることができる。
【0220】
第1測距装置300Aでは、パルス光Lpのパルス幅(出力期間)は、10[マイクロ秒](=100[ナノメートル]×100回)であり、各サイクルCm(20[ミリ秒])の0.05[%]としている。これに合わせて、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4をオンにする期間P1〜P4も短く設定している。このため、仮に同じ周波数のパルス光を用いている他の測距装置が周囲に存在した場合でも、他の測距装置がパルス光を出力するタイミングと第1測距装置300Aがパルス光Lpを出力するタイミングとが被る可能性が低くなる。その結果、他の測距装置との干渉(他の測距装置からのパルス光を第1測距装置300Aからのパルス光Lpと誤認識すること)の可能性を低くすることができる。
【0221】
加えて、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4をオンしている期間P1〜P4も短く設定しているため、期間P1〜P4において光電変換素子10に環境光Lsが入射する期間を短くすることができる。これにより、ノイズ成分としての環境光Lsの影響を小さくし、信号/ノイズ比(S/N)を向上することができる。特に、環境光Lsが太陽光の場合、太陽光のショットノイズを低減することができる。
【0222】
第1測距装置300Aでは、各サイクルCmに対して、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4をオンしている期間P1〜P4を非常に短く設定している。このため、前回以前のサイクルCmで放射したパルス光Lpが今回のサイクルCmで検出される現象(エイリアシング現象)が生じる可能性を減少させることができる。すなわち、第1測距装置300Aの各第2蓄積期間Tca2は100[マイクロ秒]であり、パルス光Lpの放射期間Peが短いため、パルス光Lpの放射間隔も約100[マイクロ秒]となる。光速cは、約30万[キロメートル毎秒]であるため、対象物Wの実際の位置が、第1測距装置300Aが出力した距離Dよりも15[キロメートル](=100[μs]×30[Mm/s]/2)遠い位置に存在すれば、エイリアシング現象が発生している可能性が存在する。しかし、発光部210により対象物Wに照射されるパルス光Lpの強度は、距離Dの二乗に応じて減少するため、距離Dよりも15[キロメートル]遠い位置からの反射光Lrの強度Irは、距離Dに対象物Wがある場合の強度Irと比べて非常に小さくなり、光電変換素子10ではほとんど検出できない。よって、第1測距装置300Aでは、エイリアシング現象の発生を防止することができる。
【0223】
[他のタイミングチャート]
上記の例では、図25のタイミングチャートにより、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4を制御したが、これに限られない。例えば、図25の期間P3、P4を期間P1、P2より前に位置させてもよい。また、時点Tg1dと時点Tg2uを同時にしたが、時点Tg2uを時点Tg1dよりも後にすることもできる。時点Tg2dと時点Teuの関係、時点Tg3dと時点Tg4uの関係も同様である。さらに、時点Tg4uは、時点Tedとの相関関係がわかっていれば、時点Tedと同時でなくてもよい。
【0224】
図26には、時点Tedを時点Tg4uより後にしたタイミングチャートが示されている。この場合、往復期間ΔPは下記の式(F7)により演算することができる。
ΔP=[(Q4−Q2)/(Q3−Q1)]×P3―(Ted−Tg4u)
………(F7)
【0225】
あるいは、時点Tedを時点Tg4uより前にすることもできる。この場合、往復期間ΔPは下記の式(F8)により演算することができる。
ΔP=[(Q4−Q2)/(Q3−Q1)]×P3+(Tg4u―Ted)
………(F8)
【0226】
上記の例では、環境光Lsの影響を排除又は軽減するために期間P1、P2を設けたが、例えば、暗室等の環境光Lsが存在しない場所又は反射光Lrに対して環境光Lsが小さく、環境光Lsの影響が小さい場合であれば、期間P3、P4のみから往復期間ΔPを求めることもできる。すなわち、下記の式(F9)により往復期間ΔPを演算する。
ΔP=(Q4/Q3)×P3 ………(F9)
【0227】
[第2測距装置300B]
次に、本実施の形態に係る第2の測距装置(以下、第2測距装置300Bと記す)について図21及び図27を参照しながら説明する。図27において、V1は、第1光電変換素子10Aの場合の電圧V1、第2光電変換素子10Bの場合の第1電圧を示し、V2は、第2光電変換素子10Bの場合の第2電圧を示す。
【0228】
この第2測距装置300Bは、図21に示すように、上述した第1測距装置300Aとほぼ同様の構成を有するが、第3受光装置100Cに代えて、第4受光部104D(図27参照)を有する第4受光装置100Dを使用している点で異なる。
【0229】
<第4受光装置100Dの概要>
この第4受光装置100Dは、リセットノイズを除去する際に好適な信号出力を行う。すなわち、上述した第3受光装置100Cでは、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4を一斉にリセットした後、第1スイッチング素子SW1〜第4スイッチング素子SW4をそれぞれオンすることによって、電荷集積部26に存在する光電子を第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に振り分けるようにしている。さらに、信号量を大きくするために、この動作を複数回おこなった後に、信号量を電圧変換して外部回路に読み出す。しかし、各周期のリセットにおいて(フレーム間で)、構成回路のノイズに起因して、リセット電圧は一定ではないために、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4には、フレーム間で異なるレベルのリセットノイズ成分が付加されることになる。
【0230】
そこで、第4受光装置100Dでは、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4がリセットされた直後の電位を読み出し(リセット電圧読出し)、その後に蓄積された信号電荷による電圧出力を読み出して(信号読出し)、それぞれ差分演算することにより、リセットノイズ成分をも除去できるようにしたものである。
【0231】
<第4受光装置100Dの詳細>
第4受光装置100Dの第4受光部104Dは、図27に示すように、上述した第3受光装置100Cとほぼ同様の構成を有するが、第1電荷保持部Cb1〜第4電荷保持部Cb4と、第1電荷転送部ST1〜第4電荷転送部ST4とを有する点で異なる。
【0232】
(第1電荷保持部Cb1〜第4電荷保持部Cb4/第1電荷転送部ST1〜第4電荷保持部ST4)
第1電荷保持部Cb1は、第1スイッチング素子SW1のドレインに接続された例えばMOS型構造のキャパシタにて構成され、ゲートにはゲート駆動回路306からのゲート駆動信号(第1蓄積信号Sa1(高レベル)/第1排出信号Sb1(低レベル))が供給されるようになっている。
【0233】
第1電荷転送部ST1は、例えばnチャネル型MOSトランジスタにて構成され、ソースが第1電荷保持部Cb1に接続され、ドレインが第1キャパシタCa1に接続されており、ゲートには、ゲート駆動回路306からのゲート駆動信号(第1転送信号St1)が供給されるようになっている。
【0234】
従って、第1電荷保持部Cb1のゲートに対するゲート駆動回路306からの第1蓄積信号Sa1の供給によって、該第1電荷保持部Cb1のゲート下のポテンシャル位置が低下し、第1スイッチング素子SW1を通じて転送された光電子が一時的に蓄積されることとなる。その後、第1電荷保持部Cb1のゲートに対する第1排出信号Sb1の供給と共に、第1電荷転送部ST1のゲートに対する第1転送信号St1(高レベル)の供給によって、第1電荷保持部Cb1に蓄積されていた光電子が第1キャパシタCa1に転送されることになる。第1電荷保持部Cb1のゲートと第1電荷転送部ST1のゲートとをそれぞれ独立に制御することができるため、第1電荷保持部Cb1にて電荷残りを生じさせずに第1キャパシタCa1に転送することができる。
【0235】
第2電荷保持部Cb2〜第4電荷保持部Cb4、並びに第2電荷転送部ST1〜第4電荷保持部ST4についても同様であり、第2電荷保持部Cb2〜第4電荷保持部Cb4の各ゲートにはゲート駆動回路306からのゲート駆動信号(第2蓄積信号Sa2〜第4蓄積信号Sa4(高レベル)/第2排出信号Sb2〜第4排出信号Sb4(低レベル))が供給されるようになっており、第2電荷転送部ST2〜第4電荷転送部ST4の各ゲートには、ゲート駆動回路306からのゲート駆動信号(第2転送信号St2〜第4転送信号St4)が供給されるようになっている。
【0236】
なお、第1電荷保持部Cb1〜第4電荷保持部Cb4は、埋込型フォトダイオード構造の寄生容量にて構成してもよい。
【0237】
[第2測距装置300Bの動作]
第2測距装置300Bの動作は、上述した第1測距装置300Aとほぼ同じであり、例えば図24及び図25に示すように、各サイクルCmの第1蓄積期間Tca1において、第1電荷保持部Cb1〜第4電荷保持部Cb4の各ゲートに第1蓄積信号Sa1〜第4蓄積信号Sa4が供給され、これにより、各第2蓄積期間Tca2の期間P1に第1スイッチング素子SW1を通じて転送された光電子が第1電荷保持部Cb1に蓄積され、期間P2に第2スイッチング素子SW2を通じて転送された光電子が第2電荷保持部Cb2に蓄積され、期間P3に第3スイッチング素子SW3を通じて転送された光電子が第3電荷保持部Cb3に蓄積され、期間P4に第4スイッチング素子SW4を通じて転送された光電子が第4電荷保持部Cb4に蓄積される。
【0238】
このように、信号電荷が、第1電荷保持部Cb1〜第4電荷保持部Cb4に蓄積された後、各サイクルCmの読出期間Trの初期設定手段として、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4をリセットする。具体的には、第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4に対して第1リセット信号Sr1〜第4リセット信号Sr4を送信すること(第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4の各ゲートに供給される電圧を高レベルにすること)に応じて第1リセットスイッチSR1〜第4リセットスイッチSR4を一斉にオンして、所定のリセット電圧Vrに設定する。その後、第1出力スイッチSEL1〜第4出力スイッチSEL4を順番にオンしていくことで、第1出力ライン212aに、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4のリセット電圧を、第1出力電圧Vout1〜第4出力電圧Vout4として外部回路に出力する(リセット電圧読出し)。
【0239】
そして、第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4のリセット電圧読出しの直後に信号を読み出す。具体的には、第1電荷保持部Cb1〜第4電荷保持部Cb4の各ゲートに第1排出信号Sb1〜第4排出信号Sb4が供給されると共に、第1電荷転送部ST1〜第4電荷転送部ST4の各ゲートに第1転送信号St1〜第4転送信号St4が供給されることにより、第1電荷保持部Cb1〜第4電荷保持部Cb4に蓄積されていた光電子がそれぞれ第1キャパシタCa1〜第4キャパシタCa4に転送されることとなる。そして、第1出力スイッチSEL1〜第4出力スイッチSEL4を順番にオンしていくことで、第1出力ライン212aに、第1キャパシタCa1に蓄積された光電子(電荷量Q1)に応じた電圧と、第2キャパシタCa2に蓄積された光電子(電荷量Q2)に応じた電圧とが、それぞれ第1出力素子TR1及び第2出力素子TR2にて増幅されて、第1出力電圧Vout1及び第2出力電圧Vout2として出力され、第2出力ライン212bに、第3キャパシタCa3に蓄積された光電子(電荷量Q3)に応じた電圧と、第4キャパシタCa4に蓄積された光電子(電荷量Q4)に応じた電圧とが、それぞれ第3出力素子TR3及び第4出力素子TR4にて増幅されて、第3出力電圧Vout3及び第4出力電圧Vout4として出力されることになる(信号読出し)。
【0240】
リセット電圧読出しにて読み出されたリセット電圧と、信号読出しにて読み出された信号電圧との差分を求めることによって、リセット電圧値の影響を受けない、信号を読出すことができる。なお、差分を求める手法としては、例えば相関2重サンプリング回路(CDS回路:Correllated Double Sampling回路)によって実現することができる。
【0241】
なお、本発明に係る光電変換素子、受光装置、受光システム及び測距装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。以下にいくつかの変形例を記載する。
【0242】
[光電変換素子10の変形例]
例えば、図28に示すように、p型不純物拡散領域の表面にn型不純物拡散領域が形成されている埋め込み型MOSダイオードを使用してもよい。
【0243】
[第3光電変換素子10C]
第3の実施の形態に係る光電変換素子(以下、第3光電変換素子10Cと記す)は、図29に示すように、上述した第2光電変換素子10Bとほぼ同様の構成を有するが、第1電極16a及び第2電極16bの形状、特に、上面から見た形状が異なっている。
【0244】
すなわち、第1電極16aの各枝分かれ部位22は、上面から見たとき、電極幅が1つの電極部位20に向かって徐々に広くなる形状を有し、各第2電極16bは、上面から見たとき、電極幅が第1電極16aの1つの電極部位20に向かって徐々に狭くなる形状を有する。
【0245】
第1電極16a下のポテンシャル位置32aに注目して見た場合、電極幅が狭い部分は、図30A及び図30Bに示すように、半導体基体12(シリコン基板)の表面電位の影響を受けることから、該部分のポテンシャル位置32a1は高くなり、幅が広い部分のポテンシャル位置32c2は低くなる。従って、第1電極16aの枝分かれ部位22のポテンシャル位置32aは、図31に示すように、幅が広くなるに従って低下し、1つの部位20に向かって徐々に下り傾斜することとなる。
【0246】
このため、図8の時点t3において、第1電圧V1が低レベルV1Lになると、上述したように、第1給電端子28a直下の部分のポテンシャル位置32aが早く上昇し、徐々に電荷集積部26に近い方のポテンシャル位置32aが上昇していくことになるが、このとき、図32に示すように、ポテンシャル位置32aが1つの電極部位20に向かって下り傾斜していることから、光電子30はより高速に電荷集積部26に移動することとなる。
【0247】
上述の第3光電変換素子10Cでは、第2電極16bを設けた例を示したが、その他、第1光電変換素子10Aと同様に、第2電極16bを省略した構成にして、第1MOSダイオード18a間に埋め込みフォトダイオードBPDが形成された構成にしてもよい。
【0248】
[第4光電変換素子10D]
次に、第4の実施の形態に係る光電変換素子(以下、第4光電変換素子10Dと記す)は、図33及び図34に示すように、上述した第2光電変換素子10Bとほぼ同様の構成を有するが、第1電極16aが存在せず、代わりに、埋め込みフォトダイオードBPDが形成されている点で異なる。つまり、埋め込みフォトダイオードBPDは、上面から見たとき、1つの部位20から複数の枝分かれ部位22に分岐配列されたくし歯形状を有し、第2MOSダイオード18bの各第2電極16bは、上面から見たとき、埋め込みフォトダイオードBPDにおける複数の枝分かれ部位22間にそれぞれ入れ子状に配置されている。
【0249】
また、埋め込みフォトダイオードBPDにおける1つの部位20の基部24(長さ方向中央部)には、第4光電変換素子10Dにより発生した光電子を集めるための電荷集積部26が同じく埋め込みフォトダイオードBPDによって形成されている。電荷集積部26は、1つの部位20の基部24から枝分かれ部位22とは反対方向に延在して形成されている。
【0250】
ここで、第4光電変換素子10Dの動作について、図35のタイミングチャート、図36A及び図36Bのポテンシャル図も参照して説明する。
【0251】
先ず、図35の時点t11(露光の初期段階)において、第2電圧V2を高レベルV2Hにすると、図36Aに示すように、第2電極16b下のポテンシャル位置32bが低くなり、露光により発生した光電子30は、第2電極16b下に蓄積されると共に、第2電極16bに隣接する埋め込みフォトダイオードBPDに移動する。
【0252】
その後、時点t12(露光の終了段階)において、第2電圧V2が低レベルV2Lになると、図36Bに示すように、第2電極16b下のポテンシャル位置32bが高くなり、第2電極16b下から埋め込みフォトダイオードBPDにかけてポテンシャル位置が低くなるポテンシャル勾配34が形成されることとなる。このことから、第2電極16b下に蓄積していた光電子30は、ポテンシャル勾配34によって、埋め込みフォトダイオードBPD、すなわち、複数の枝分かれ部位22下に高速に移動し、さらに、電荷集積部26に向けて移動する。なお、図35の時点t11(露光の初期段階)において、第2電圧V2を高レベルV2Hに設定するが、この高レベルV2Hは、第2電極16bに隣接する埋め込みフォトダイオードBPDのポテンシャルより高いポテンシャルが形成するような電圧に設定することが望ましいが、図36Cに示すように、第2電極16bに隣接する埋め込みフォトダイオードBPDのポテンシャルより低いポテンシャルが形成されるようにしてもよく限定されるものではない。
【0253】
[第5光電変換素子10E]
次に、第5の実施の形態に係る光電変換素子(以下、第5光電変換素子10Eと記す)は、図37に示すように、上述した第4光電変換素子10Dとほぼ同様の構成を有するが、埋め込みフォトダイオードBPDと第2電極16bの形状、特に、上面から見た形状が異なっている。
【0254】
すなわち、埋め込みフォトダイオードBPDの各枝分かれ部位22は、上面から見たとき、幅が1つの部位20に向かって徐々に大きくなる形状を有し、各第2電極16bは、上面から見たとき、電極幅が埋め込みフォトダイオードBPDの1つの部位20に向かって徐々に小さくなる形状を有する。
【0255】
埋め込みフォトダイオードBPDのポテンシャル位置32c1に注目して見た場合、幅が狭い部分は、図38A及び図38Bに示すように、半導体基体12(シリコン基板)の表面電位の影響を受けることから、該部分のポテンシャル位置32c1は高くなり、幅が広い部分のポテンシャル位置32c2は低くなる。従って、埋め込みフォトダイオードBPDの枝分かれ部位22のポテンシャル位置32cは、図39に示すように、幅が広くなるに従って低下し、1つの部位20に向かって徐々に下り傾斜することとなる。これにより、光電子30は電荷集積部26に向かって高速に移動することとなる。
【0256】
[第6光電変換素子10F]
次に、第6の実施の形態に係る光電変換素子(以下、第6光電変換素子10Fと記す)は、図40に示すように、上述した第5光電変換素子10Eとほぼ同様の構成を有するが、埋め込みフォトダイオードBPDにおける1つの部位20の幅が、両端から中央の基部24に向かって徐々に広く形成されている点で異なる。すなわち、電荷集積部26につながる基部24の幅が最も大きくなるように形成されている。
【0257】
埋め込みフォトダイオードBPDにおける1つの部位20におけるポテンシャル位置32cに注目して見た場合、図41に示すように、幅の狭い部分のポテンシャル位置32c1は高くなり、幅が広い部分のポテンシャル位置32c2は低くなる。従って、従って、埋め込みフォトダイオードBPDにおける1つの部位20のポテンシャル位置32cは、両端から基部24に向かって徐々に低下、すなわち、下り傾斜することとなる。このように、埋め込みフォトダイオードBPDにおける1つの部位20の両端から基部24(すなわち電荷集積部26)に向かって下り傾斜のポテンシャル勾配が形成されることから、光電子30は電荷集積部26に向かってより高速に移動することとなる。
【符号の説明】
【0258】
10A〜10F…第1光電変換素子〜第6光電変換素子
12…半導体基体 14…絶縁体
16…電極 16a…第1電極
16b…第2電極 18…MOSダイオード
18a…第1MOSダイオード 18b…第2MOSダイオード
20…1つの電極部位(1つの部位) 22…枝分かれ部位
24…基部 26…電荷集積部
100A〜100D…第1受光装置〜第4受光装置
104A〜104D…第1受光部〜第4受光部
108…電荷排出部 200A…第1受光システム
200B…第2受光システム 202…発光装置
204…制御装置 206…演算装置
300A…第1測距装置 300B…第2測距装置
302…イメージセンサ 304…画素
Ca…キャパシタ
Ca1〜Ca4…第1キャパシタ〜第4キャパシタ
SW1〜SW5…第1スイッチング素子〜第5スイッチング素子
Cb1〜Cb4…第1電荷保持部〜第4電荷保持部
ST1〜ST4…第1電荷転送部〜第4電荷転送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を検知して光電子に変換する光電変換素子において、
半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、
前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、
前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、
複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置されていることを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
請求項1記載の光電変換素子において、
前記MOSダイオードの前記電極下の電位を制御して、少なくとも前記埋め込みフォトダイオードでの光電変換により発生した光電子を、前記MOSダイオードへ移動させることを特徴とする光電変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光電変換素子において、
前記MOSダイオードのうち、前記電極における前記1つの電極部位の基部に対応した部分が、電荷集積部として構成されていることを特徴とする光電変換素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子において、
前記MOSダイオードにおける前記電極の前記枝分かれ部位は、それぞれ矩形形状を有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子において、
前記MOSダイオードにおける前記電極の各前記枝分かれ部位は、上面から見たとき、幅が前記1つの電極部位に向かって徐々に大きくなる形状を有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子において、
前記MOSダイオードにおける前記電極の各前記枝分かれ部位の給電端子は、上面から見たとき、前記電荷集積部から最も離れた位置に形成されていることを特徴とする光電変換素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子において、
前記半導体基体上に絶縁体を介して形成された第2電極を有する複数の第2MOSダイオードを有し、
複数の前記第2MOSダイオードの各前記第2電極は、上面から見たとき、前記電極とは分離され、且つ、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、
前記MOSダイオードと前記第2MOSダイオード間に前記埋め込みフォトダイオードが形成されていることを特徴とする光電変換素子。
【請求項8】
入射光の輝度情報を得ることを特徴とする受光装置であって、
前記入射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子により発生した前記光電子を集めるための電荷集積部と、
前記光電子を一定期間蓄積するキャパシタと、
前記光電子を排出する電荷排出部と、
前記電荷集積部と前記キャパシタとの間に配置され、前記電荷集積部に集められた前記光電子を、前記キャパシタへ移動させるMOS型の第1スイッチング素子と、
前記電荷集積部と前記電荷排出部との間に配置され、前記電荷集積部から前記電荷排出部への前記光電子の排出を制御するMOS型の第2スイッチング素子とを備え、
前記光電変換素子は、
半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、
前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、
前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、
複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、
前記光電変換素子からの前記光電子を、選択的に前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を開閉制御して前記キャパシタへ転送させて、前記キャパシタに転送された前記光電子の量(電荷量)に基づいて入射光の輝度情報を得ることを特徴とする受光装置。
【請求項9】
請求項8記載の受光装置において、
前記電荷集積部は、前記光電変換素子に接続され、
前記電荷排出部は、前記電荷集積部を間に挟んで、前記キャパシタと対向配置されていることを特徴とする受光装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載の受光装置において、
前記キャパシタは、MIMキャパシタ、MOSキャパシタ、埋込型フォトダイオード構造又はpn接合の寄生容量にて構成されていることを特徴とする受光装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の受光装置において、
少なくとも前記電荷集積部、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子及び前記キャパシタは、遮光された領域に形成されていることを特徴とする受光装置。
【請求項12】
入射光の輝度情報を得ることを特徴とする受光装置であって、
前記入射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子により発生した前記光電子を集めるための電荷集積部と、
前記光電子を一定期間蓄積する第1キャパシタ及び第2キャパシタと、
前記光電子を排出する電荷排出部と、
前記電荷集積部と前記第1キャパシタとの間に配置され、前記電荷集積部に集められた光電子を、前記第1キャパシタへ選択的に振り分けるMOS型の第1スイッチング素子と、
前記電荷集積部と前記第2キャパシタとの間に配置され、前記電荷集積部に集められた光電子を、前記第2キャパシタへ選択的に振り分けるMOS型の第2スイッチング素子と、
前記電荷集積部から前記電荷排出部へ前記光電子の排出を制御するMOS型の第3スイッチング素子とを備え、
前記光電変換素子は、
半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、
前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、
前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、
複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、
前記光電変換素子からの前記光電子を、選択的に前記第1スイッチング素子〜前記第3スイッチング素子をオン/オフ制御して前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタへ転送させて、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタに転送された前記光電子の量(電荷量)に基づいて入射光の輝度情報を得ることを特徴とする受光装置。
【請求項13】
請求項12記載の受光装置において、
前記電荷集積部は、前記光電変換素子に接続され、
前記電荷排出部は、前記電荷集積部を間に挟んで、前記光電変換素子と対向配置され、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタは、前記電荷集積部を間に挟んで、互いに対向配置されていることを特徴とする受光装置。
【請求項14】
請求項12又は13記載の受光装置において、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタは、MIMキャパシタ、MOSキャパシタ、埋込型フォトダイオード構造又はpn接合の寄生容量にて構成されていることを特徴とする受光装置。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の受光装置において、
少なくとも前記電荷集積部、前記第1スイッチング素子〜前記第3スイッチング素子、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタは、遮光された領域に形成されていることを特徴とする受光装置。
【請求項16】
対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、
前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、
前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置とを有する受光システムであって、
前記受光装置は、
前記反射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子により発生した光電子を集めるための電荷集積部と、
前記光電子を一定期間蓄積する一対のキャパシタと、
前記光電子を排出する電荷排出部と、
前記電荷集積部と前記一対のキャパシタとの間に配置され、前記電荷集積部に集められた光電子を、前記発光装置の駆動に同期して、前記一対のキャパシタへ選択的に振り分けるMOS型の一対のスイッチング素子と、
前記発光装置の駆動に同期して、前記電荷集積部から前記電荷排出部へ前記光電子の排出を制御するMOS型の第3スイッチング素子を備え、
前記光電変換素子は、
半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、
前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、
前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、
複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、
前記制御装置は、
前記発光装置から前記パルス光が放射されていない期間のうちの第1期間に、前記一対のスイッチング素子のうち、第1スイッチング素子をオンにして、前記光電変換素子からの前記光電子を、前記一対のキャパシタのうち、第1キャパシタに転送し、
前記発光装置から前記パルス光が出射されている期間のうちの第2期間に、前記一対のスイッチング素子のうち、第2スイッチング素子をオンにして、前記光電変換素子からの前記光電子を、前記一対のキャパシタのうち、第2キャパシタに転送し、
前記第1期間及び前記第2期間以外の期間に、前記第3スイッチング素子をオンにして、前記光電変換素子からの前記光電子を、前記電荷排出部に排出するように制御し、
前記第1キャパシタに転送された光電子の量(電荷量)と前記第2キャパシタに転送された光電子の量(電荷量)に基づいて、前記反射光の輝度情報を得ることを特徴とする受光システム。
【請求項17】
請求項16記載の受光システムにおいて、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの電位を初期電位にするための電源とMOS構造の第1リセットスイッチ及び第2リセットスイッチとを有することを特徴とする受光システム。
【請求項18】
請求項16又は17記載の受光システムにおいて、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタに蓄積された光電子の量に基づく電位に応じたレベルの電気信号にそれぞれ変換する第1アンプ及び第2アンプを有することを特徴とする受光システム。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の受光システムにおいて、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子によって転送された前記光電子を一時的に保持するMOSキャパシタ又は埋込型フォトダイオード構造の寄生容量にて構成された第1電荷保持部及び第2電荷保持部と、
前記第1電荷保持部及び前記第2電荷保持部にそれぞれ一時的に保持された前記光電子を前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタに転送するMOS型のスイッチング素子にて構成された第1電荷転送部及び第2電荷転送部とを有することを特徴とする受光システム。
【請求項20】
対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、
前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、
前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置とを有する受光システムであって、
前記受光装置は、
前記反射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子により発生した光電子を集めるための電荷集積部と、
前記光電子を一定期間蓄積する第1キャパシタ〜第4キャパシタと、
前記光電子を排出する電荷排出部と、
前記電荷集積部と前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタとの間に配置され、前記パルス光の放射に同期して、前記光電子を前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタに対して振り分けるMOSO型の第1スイッチング素子〜第4スイッチング素子と、
前記電荷集積部と前記電荷排出部との間に配置され、前記電荷集積部から前記電荷排出部への前記光電子の供給を制御するMOS型の第5スイッチング素子とを備え、
前記光電変換素子は、
半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、
前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、
前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、
複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、
前記制御装置は、
前記発光装置による前記パルス光の放射及び前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子のオン/オフを制御し、
前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子が全てオフのとき、前記第5スイッチング素子をオンにして、前記光電子を外部に排出させ、
前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子に転送された前記光電子の量(電荷量)に基づいて、前記反射光の輝度情報を得ることを特徴とする受光システム。
【請求項21】
請求項20記載の受光システムにおいて、
前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタの電位を初期電位にするための電源とMOS構造の第1リセットスイッチ〜第4リセットスイッチとを有することを特徴とする受光システム。
【請求項22】
請求項20又は21記載の受光システムにおいて、
前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタに蓄積された光電子の量に基づく電位に応じたレベルの電気信号にそれぞれ変換する第1アンプ〜第4アンプを有することを特徴とする受光システム。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか1項に記載の受光システムにおいて、
前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子によって転送された前記光電子を一時的に保持するMOSキャパシタ又は埋込型フォトダイオード構造の寄生容量にて構成された第1電荷保持部〜第4電荷保持部と、
前記第1電荷保持部〜前記第4電荷保持部にそれぞれ一時的に保持された前記光電子を前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタに転送するMOS型のスイッチング素子にて構成された第1電荷転送部〜第4電荷転送部とを有することを特徴とする受光システム。
【請求項24】
請求項16〜23のいずれか1項に記載の受光システムにおいて、
前記受光装置の構成要素が、複数の画素が設けられたラインセンサアレイ又は二次元イメージセンサアレイの1画素分の構成要素を構成していることを特徴とする受光システム。
【請求項25】
対象物に対してパルス光を放射する発光装置と、
前記パルス光の反射光を受光し、受光量に応じた出力を行う受光装置と、
前記発光装置及び前記受光装置を制御する制御装置と、
前記受光装置の出力を用いてタイム・オブ・フライト法により前記対象物までの距離を演算する演算装置と、を有する測距装置であって、
前記受光装置は、
前記反射光を検知して光電子に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子により発生した前記光電子を集めるための電荷集積部と、
前記光電子を一定期間蓄積する第1キャパシタ〜第4キャパシタと、
前記光電子を排出する電荷排出部と、
前記電荷集積部と前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタとの間に配置され、前記パルス光の放射に同期して、前記光電子を前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタに対して振り分けるMOS型の第1スイッチング素子〜第4スイッチング素子と、
前記電荷集積部と前記電荷排出部との間に配置され、前記電荷集積部から前記電荷排出部への前記光電子の供給を制御するMOS型の第5スイッチング素子と、を備え、
前記光電変換素子は、
半導体基体上に絶縁体を介して形成された電極を有する1つのMOSダイオードと、
前記半導体基体に形成された複数の埋め込みフォトダイオードとを有し、
前記MOSダイオードの前記電極は、上面から見たとき、1つの電極部位から複数の枝分かれ部位に分岐配列されたくし歯形状を有し、
複数の前記埋め込みフォトダイオードは、上面から見たとき、前記電極における前記複数の枝分かれ部位間にそれぞれ入れ子状に配置され、
前記パルス光の放射開始時点を時点Teu、
前記パルス光の放射終了時点を時点Ted、
前記光電変換素子に対する前記反射光の入射終了時点を時点Trd、
前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子をオンする時点を時点Tg1u、Tg2u、Tg3u、Tg4u、
前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子をオフする時点を時点Tg1d、Tg2d、Tg3d、Tg4d、
前記時点Tg1uから前記時点Tg1dまでの期間を期間P1、
前記時点Tg2uから前記時点Tg2dまでの期間を期間P2、
前記時点Tg3uから前記時点Tg3dまでの期間を期間P3、
前記時点Tg4uから前記時点Tg4dまでの期間を期間P4、
前記時点Tg4uから前記時点Trdまでの期間を期間Psr、
前記期間P1の間に前記第1キャパシタに蓄積される前記光電子の量を電荷量Q1、
前記期間P2の間に前記第2キャパシタに蓄積される前記光電子の量を電荷量Q2、
前記期間P3の間に前記第3キャパシタに蓄積される前記光電子の量を電荷量Q3、
前記期間P4の間に前記第4キャパシタに蓄積される前記光電子の量を電荷量Q4、
前記パルス光が放射されてから前記対象物で反射して前記反射光として戻ってくるまでの期間を往復期間ΔP、前記発光装置及び前記受光装置と前記対象物との距離を距離Dとしたとき、
前記制御装置は、
(1)P1=P3、
(2)P2=P4、及び
(3)Tg1u<Tg1d≦Tg2u<Tg2d≦Teu<Tg3u<Tg3d≦Tg4u≦Ted<Tg4d、又は、Teu<Tg3u<Tg3d≦Tg4u≦Ted<Tg4d<Tg1u<Tg1d≦Tg2u<Tg2d
となるように、前記発光装置による前記パルス光の放射及び前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子のオン/オフを制御し、
前記第1スイッチング素子〜前記第4スイッチング素子が全てオフとなっているとき、前記第5スイッチング素子をオンにして前記光電子を外部に排出させ、
前記演算装置は、
前記第3キャパシタに蓄積され、環境光と前記反射光に対応する前記電荷量Q3と、前記第1キャパシタに蓄積され、前記環境光に対応する前記電荷量Q1との差に基づいて、前記期間P3における前記反射光の光量情報を取得し、
前記第4キャパシタに蓄積され、前記環境光と前記反射光に対応する前記電荷量Q4と、前記第2キャパシタに蓄積され、前記環境光に対応する前記電荷量Q2との差に基づいて、前記期間Psrにおける前記反射光の光量情報を取得し、
前記期間P3における前記反射光の光量情報及び前記期間Psrにおける前記反射光の光量情報の比と、前記期間P3及び前記期間Psrの比とに基づいて前記往復期間ΔPを演算し、
前記往復期間ΔPに基づいて前記距離Dを測定することを特徴とする測距装置。
【請求項26】
請求項25記載の測距装置において、
前記時点Tedと前記時点Tg4uが等しいとき、下記の式(1)に基づいて、前記往復期間ΔPを演算し、
ΔP={(Q4−Q2)/(Q3−Q1)}×P3 ・・・(1)
前記時点Tedが前記時点Tg4uよりも後であるとき、下記の式(2)に基づいて、前記往復期間ΔPを演算することを特徴とする測距装置。
ΔP=[(Q4−Q2)/(Q3−Q1)]×P3−(Ted−Tg4u)
・・・(2)
【請求項27】
請求項25又は26記載の測距装置において、
前記制御装置は、測定周期毎に前記発光装置に前記パルス光を複数回放射させ、
前記演算装置は、前記第1キャパシタ〜前記第4キャパシタのそれぞれに前記光電子を複数回蓄積した後の前記電荷量Q1〜前記電荷量Q4を用いて前記往復期間ΔPを演算することを特徴とする測距装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2011−82358(P2011−82358A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233671(P2009−233671)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】