説明

光電変換素子用電極、光電変換素子、及び、光電変換素子用電極の製造に用いられる銀ペースト

【課題】優れた光電変換特性及び耐久性を光電変換素子に付与することができる光電変換素子用電極、光電変換素子、及び、光電変換素子用電極の製造に用いられる銀ペーストを提供すること。
【解決手段】基板14と、基板14上に設けられ、錫を含有する導電膜15と、導電膜15上に設けられ、銀粒子を含有する集電配線16を有する配線部13とを備え、集電配線16が、導電膜15に接触し、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部52を有する、光電変換素子用電極10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子用電極、光電変換素子、及び、光電変換素子用電極の製造に用いられる銀ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子として、安価で、高い光電変換効率が得られることから色素増感太陽電池が注目されており、色素増感太陽電池に関して種々の開発が行われている。
【0003】
このような色素増感太陽電池として、下記特許文献1に記載の色素増感太陽電池が知られている。下記特許文献1には、作用極と対極とを有し、作用極が、基材上に透明導電層と、透明導電層上に形成された金属配線層と、金属配線層の表面を被覆する絶縁層とを有する色素増感太陽電池が開示されている。そして、下記特許文献1には、金属配線層が、導電粒子となる金属粉とガラス微粒子などの結合剤を配合してなるペーストを所定のパターンを形成するように塗膜し、加熱して焼成することによって得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−140909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載の色素増感太陽電池は、優れた耐久性を有するものの、光電変換特性が十分に高いとは言えなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた光電変換特性及び耐久性を光電変換素子に付与することができる光電変換素子用電極、光電変換素子及び光電変換素子用電極の製造に用いられる銀ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記特許文献1に記載の色素増感太陽電池において、特に光電変換特性が十分に高いとは言えない原因について検討した。その結果、本発明者は、特許文献1に記載の色素増感太陽電池を製造する際に以下のことが起こっており、そのことが、得られる色素増感太陽電池において、光電変換特性が十分に高いとは言えない原因ではないかと考えた。すなわち、ペーストを加熱すると、やがてガラス微粒子が融解して沈み、透明導電層に達する。その結果、金属配線層のうち透明導電層と接触する面においてガラスの占める割合が増加し、その分、銀粒子の占める割合が減少する。このため、透明導電層と金属配線層との間の接触抵抗が増加するのではないかと本発明者は考えた。そこで、本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
即ち本発明は、基板と、前記基板上に設けられ、錫を含有する導電膜と、前記導電膜上に設けられ、銀粒子を含有する集電配線を有する配線部とを備え、前記集電配線が、前記導電膜に接触し、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部を有する光電変換素子用電極である。
【0009】
この電極によれば、集電配線が、導電膜に接触する銀錫混合部を有している。ここで、銀錫混合部は、銀と錫との混合物からなる。すなわち銀錫混合部は、導電性を有し、しかも、導電膜と共通の錫を含有している。また銀錫混合部は、集電配線と共通の銀を含有している。このため、銀錫混合部は、ガラスフリット部に比べて、集電配線と導電膜との接触抵抗を低下させることができる。このため、本発明の光電変換素子用電極によれば、集電配線と導電膜との接触抵抗を低下させることができる。また、銀錫混合部は、導電膜と共通の錫を含有し、かつ、集電配線と共通の銀を含有している。このため、銀錫混合部は、導電膜に対しても銀粒子に対しても十分な密着性を確保することができる。このため、本発明の光電変換素子用電極によれば、光電変換素子用電極を電極として用いる光電変換素子に、優れた光電変換特性及び耐久性を付与することができる。
【0010】
上記光電変換素子において、前記集電配線が、前記導電膜に接触し、ガラスフリットからなるガラスフリット部と前記銀錫混合部とを結合してなる結合体を有し、前記結合体において、前記ガラスフリット部が、前記導電膜と共に形成される凹部を有し、前記凹部に前記銀錫混合部が入り込んでいることが好ましい。
【0011】
この電極によれば、集電配線が、導電膜に接触するガラスフリット部と、導電膜に接触する銀錫混合部とを結合してなる結合体を有しており、ガラスフリット部において導電膜と共に形成される凹部に銀錫混合部が入り込んでいる。このため、結合体においては、ガラスフリット部の凹部に入り込んでいる銀錫混合部の分だけ、集電配線と導電膜との接触面の面積に占めるガラスフリット部の面積の割合が減少される。ここで、銀錫混合部は、銀と錫との混合物からなるため、上述したように、ガラスフリット部に比べて、集電配線と導電膜との接触抵抗を低下させることができる。このため、本発明の光電変換素子用電極によれば、集電配線と導電膜との接触抵抗を低下させることができる。またガラスフリット部は導電膜に接触しているため、ガラスフリット部が導電膜に接触していない場合に比べて、導電膜に対する集電配線の密着性をより十分に確保することができる。従って、本発明の光電変換素子用電極によれば、導電膜に対する集電配線の密着性をより十分に確保しながら、集電配線と導電膜との間の接触抵抗を低下させることができる。このため、本発明の光電変換素子用電極によれば、光電変換素子用電極を電極として用いる光電変換素子に、優れた光電変換特性及び耐久性を付与することができる。
【0012】
前記集電配線は、前記導電膜から離れた位置に形成される空隙をさらに含むことが好ましい。
【0013】
この場合、集電配線が熱膨張又は熱収縮する場合でも、集電配線に加わる応力が空隙によって十分に緩和され、集電配線におけるクラックの発生が十分に抑制される。
【0014】
前記配線部は、前記集電配線を覆って保護する配線保護層をさらに有することが好ましい。
【0015】
この配線部を有する電極を、電解質を有する光電変換素子の電極として使用すると、配線保護層により、電解質による集電配線の腐食が十分に抑制される。
【0016】
上記光電変換素子用電極においては、前記集電配線が、前記導電膜から離れた位置に、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部をさらに有することが好ましい。
【0017】
この場合、銀錫混合部が銀粒子と銀粒子との隙間を埋めることができ、集電配線の体積抵抗をより低減することができる。
【0018】
前記銀粒子の平均粒径は0.3〜10μmであることが好ましい。
【0019】
銀粒子の平均粒径が上記範囲内にあると、上記範囲を外れる場合と比べて集電配線の体積抵抗をより十分に低下させることができる。
【0020】
また本発明は、上述した光電変換素子用電極を含む光電変換素子である。
【0021】
さらに本発明は、銀粒子と、銀と錫との混合物からなる銀錫混合粒子と、バインダ樹脂と、溶媒とを含む銀ペーストである。
【0022】
この銀ペーストを、基板上に設けた導電膜上に塗布し、焼成すると、まず銀錫混合粒子が融解し、銀錫混合粒子の少なくとも一部が沈み、導電膜に達して、導電膜に接触する銀錫混合部が形成される。こうして導電膜上に集電配線が形成される。ここで、銀錫混合部は、銀と錫との混合物からなる。すなわち銀錫混合部は、導電性を有し、しかも、導電膜と共通の錫を含有している。また銀錫混合部は、集電配線と共通の銀を含有している。このため、銀錫混合部は、ガラスフリット部に比べて、集電配線と導電膜との接触抵抗を低下させることができる。このため、本発明の銀ペーストによれば、導電膜との接触抵抗を低下させることができる集電配線を形成することが可能となる。また、銀錫混合部は、導電膜と共通の錫を含有し、かつ、集電配線と共通の銀を含有している。このため、銀錫混合部は、導電膜に対しても銀粒子に対しても十分な密着性を確保することができる。このため、本発明の銀ペーストによれば、導電膜に対しても銀粒子に対しても十分な密着性を確保できる集電配線を形成することが可能となる。
【0023】
上記銀ペーストは、前記銀錫混合粒子よりも高い温度で融解するガラスフリットをさらに含むことが好ましい。
【0024】
この銀ペーストを、基板上に設けた導電膜上に塗布し、焼成すると、まず銀錫混合粒子がガラスフリットよりも先に融解し、銀錫混合粒子の少なくとも一部が沈み、導電膜に達して、導電膜に接触する銀錫混合部が形成される。そして、銀ペーストの温度をさらに上昇させると、ガラスフリットが融解し、ガラスフリットが沈み、導電膜に達して、導電膜に接触するガラスフリット部が形成される。こうして導電膜上に集電配線が形成される。このとき、ガラスフリット部は、銀錫混合部の後に形成されるため、ガラスフリット部において導電膜とともに形成される凹部に銀錫混合部が入り込んだ結合体を形成することができる。このため、ガラスフリット部の凹部に入り込んだ銀錫混合部の分だけ、集電配線と導電膜との接触面に占めるガラスフリット部の面積の割合を減少させることができる。ここで、銀錫混合部は、銀と錫との混合物からなるため、上述したように、ガラスフリット部に比べて、集電配線と導電膜との接触抵抗を低下させることができる。このため、本発明の銀ペーストによれば、導電膜との接触抵抗を低下させることができる集電配線を形成することが可能となる。またガラスフリット部は導電膜に接触することとなるため、ガラスフリット部が導電膜に接触していない場合に比べて、導電膜に対する密着性がより十分に確保された集電配線を形成することができる。従って、本発明の銀ペーストによれば、導電膜に対する密着性をより十分に確保しながら、導電膜との間の接触抵抗を低下させることができる集電配線を形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、優れた光電変換特性及び耐久性を光電変換素子に付与することができる光電変換素子用電極、光電変換素子、及び、光電変換素子用電極の製造に用いられる銀ペーストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る光電変換素子の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の配線部を示す断面図である。
【図3】図2の結合体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
まず本発明に係る光電変換素子の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る光電変換素子の好適な実施形態を示す断面図、図2は、図1の配線部を示す断面図である。
【0029】
図1に示すように、色素増感太陽電池100は、作用極10と、作用極10に対向するように配置される対極20とを備えている。作用極10と対極20との間には電解質30が配置され、電解質30の周囲には、作用極10と対極20とを連結する封止部40が設けられている。なお、色素増感太陽電池100には、太陽光を電気に変換する素子のみならず、室内の光源(例えば蛍光灯)からの光を電気に変換する素子も含まれるものとする。
【0030】
作用極10は、導電性基板11と、導電性基板11の上に設けられる多孔質酸化物半導体層12と、導電性基板11上に多孔質酸化物半導体層12を包囲するように設けられる配線部13とを備えている。導電性基板11は、透明基板14と、透明基板14の対極20側に設けられ、錫を含有する透明導電膜15とを有する。作用極10のうちの多孔質酸化物半導体層12には光増感色素が担持されている。
【0031】
対極20は、対極基板21と、対極基板21のうち作用極10側に設けられて対極20の表面における還元反応を促進する導電性の触媒層22とを備えている。
【0032】
図2に示すように、配線部13は、透明導電膜15上に設けられる集電配線16と、集電配線16を被覆して電解質30から保護する配線保護層17とを備えている。
【0033】
集電配線16は、銀粒子51を含有する焼結体を含む。そして、集電配線16は、透明導電部15に接触し、ガラスフリットからなるガラスフリット部53と、透明導電膜15に接触し、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部52とを結合してなる結合体55を有している。
【0034】
ここで、結合体55について図3を参照しながら説明する。図3は、図2の結合体55を示す断面図である。
【0035】
図3に示すように、結合体55は、透明導電部15に接触し、ガラスフリットからなるガラスフリット部53と、透明導電膜15に接触し、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部52とを結合してなる。
【0036】
結合体55においては、ガラスフリット部53が、透明導電膜15とともに形成される凹部54を有している。そして、凹部54には銀錫混合部52が入り込んでいる。ここで、凹部54は開放されている。このため、凹部54に入り込んでいる銀錫混合部52の一部は銀粒子51に接触している。
【0037】
さらに図2に示すように、集電配線16は、透明導電膜15に接触し、銀錫混合部52と結合していないガラスフリット部53と、透明導電膜15に接触し、ガラスフリット部53と結合していない銀錫混合部52とを有している。ガラスフリット53には凹部が形成されておらず、銀錫混合部52は、ガラスフリット53から離間している。
【0038】
また図2に示すように、集電配線16と透明導電膜15との間には空隙A1が形成されている。さらに集電配線16には、透明導電膜15から離れた位置に、空隙A2と、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部62と、ガラスフリットからなるガラスフリット部63とを有している。
【0039】
この色素増感太陽電池100によれば、集電配線16が、透明導電膜15に接触するガラスフリット部53と、透明導電膜15に接触する銀錫混合部52とを結合してなる結合体55を有しており、結合体55において、ガラスフリット部53において透明導電膜15と共に形成される凹部54に銀錫混合部52が入り込んでいる。このため、結合体55においては、ガラスフリット部53の凹部54に収容される銀錫混合部52の分だけ、集電配線16と透明導電膜15との接触面に占めるガラスフリット部53の面積の割合が減少される。ここで、銀錫混合部52は、銀と錫との混合物からなる。すなわち銀錫混合部52は、導電性を有し、しかも、透明導電膜15と共通の錫を含有している。また銀錫混合部52は、集電配線16と共通の銀を含有している。このため、銀錫混合部52は、ガラスフリット部53に比べて、集電配線16と透明導電膜15との接触抵抗を低下させることができる。
【0040】
また色素増感太陽電池100の結合体55においては、銀錫混合部52は、透明導電膜15と共通の錫を含有し、かつ、集電配線16と共通の銀を含有している。このため、銀錫混合部52は、透明導電膜15に対しても銀粒子51に対しても十分な密着性を確保することができる。さらに結合体55においては、ガラスフリット部53が、透明導電膜15に接触している。このため、ガラスフリット部53が透明導電膜15に接触していない場合に比べて、透明導電膜15に対する集電配線16の密着性をより十分に確保することができる。
【0041】
以上より、色素増感太陽電池100によれば、透明導電膜15に対する集電配線16の密着性を十分に確保しながら、集電配線16と透明導電膜15との間の接触抵抗を低下させることができる。その結果、優れた光電変換特性及び耐久性を有することが可能となる。
【0042】
また色素増感太陽電池100では、集電配線16が透明導電膜15から離れた位置に空隙A2を有している。このため、集電配線16が熱膨張又は熱収縮する場合でも、集電配線16に加わる応力が空隙A2によって十分に緩和され、クラックの発生が十分に抑制される。
【0043】
さらに色素増感太陽電池100では、集電配線16が、透明導電膜15から離れた位置に、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部62を有している。このため、銀錫混合部62が銀粒子51と銀粒子51との隙間を埋めることができ、集電配線16の体積抵抗をより低減することができる。
【0044】
さらに色素増感太陽電池100では、配線部13が、集電配線16を覆って保護する配線保護層17をさらに有する。このため、配線保護層17により、電解質30による集電配線16の腐食が十分に抑制される。
【0045】
次に、作用極10、光増感色素、対極20、電解質30および封止部40について詳細に説明する。
【0046】
(作用極)
透明基板14を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板14の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50μm〜10000μmの範囲にすればよい。
【0047】
透明導電膜15を構成する材料は、錫を含有する透明な材料であればよく、錫を含有する透明な材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−doped−Tin−Oxide:FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電膜15は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜15が単層で構成される場合、透明導電膜15は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。また透明導電膜15として、複数の層で構成される積層体を用いると、各層の特性を反映させることが可能となることから好ましい。透明導電膜15の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
【0048】
多孔質酸化物半導体層12は、多孔質酸化物半導体で構成され、多孔質酸化物半導体は、例えば酸化物半導体粒子で構成される。これら酸化物半導体粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。多孔質酸化物半導体層12の厚さは、例えば0.5〜50μmとすればよい。
【0049】
上記酸化物半導体粒子としては、例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)及び酸化アルミニウム(Al)などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0050】
集電配線16は、銀粒子51を含有している。銀粒子51の平均粒径は0.3〜10μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましい。銀粒子51の平均粒径が0.3〜10μmの範囲内にあると、その範囲を外れる場合と比べて体積抵抗をより十分に低下させることができる。
【0051】
配線保護層17は、集電配線16を電解質30から保護するものであり、例えば樹脂材料、無機材料で構成される。
【0052】
上記樹脂材料としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などが挙げられる。
【0053】
上記無機材料としては、例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料が挙げられる。
【0054】
(光増感色素)
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
【0055】
(対極)
対極基板21としては、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン等の耐食性の金属材料や、上述した透明基板14の上にITO、FTO等の導電性酸化物を積層してなるものなどを用いることができる。
【0056】
触媒層22は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
【0057】
対極20の厚さは例えば0.005mm〜0.5mmの範囲内であればよい。
【0058】
(電解質)
電解質30は通常、電解液で構成され、この電解液は例えばI/Iなどの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI/Iのほか、臭素/臭化物イオンなどの対が挙げられる。色素増感太陽電池100は、酸化還元対としてI/Iのような揮発性溶質及び、高温下で揮発しやすいアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルのような有機溶媒を含む電解液を電解質として用いた場合に特に有効である。この場合、色素増感太陽電池100の周囲の環境温度の変化によりセル空間の内圧の変化が特に大きくなり、封止部40と対極20との界面、および封止部40と作用極10との界面から電解質30が漏洩しやすくなるからである。また電解質30は、有機溶媒に変えて、イオン液体を用いて良い。また、イオン液体と有機溶媒との混合物からなる電解質でもよい。この場合も、色素増感太陽電池100の周囲の環境温度の変化によりセル空間の内圧の変化が大きくなるためである。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイドが好適に用いられる。上記電解質には添加剤を加えてもよい。添加剤としては、LiI、4−t−ブチルピリジン、N−メチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。さらに電解質30としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
【0059】
(封止部)
封止部40は、例えば樹脂材料で構成される。このような樹脂材料としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などが挙げられる。
【0060】
次に、色素増感太陽電池100の製造方法について説明する。
【0061】
[準備工程]
まず作用極10及び対極20を準備する。
【0062】
(作用極)
作用極10は以下のようにして得ることができる。
【0063】
はじめに透明基板14の上に透明導電膜15を形成して積層体を形成する。透明導電膜15の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD:Spray Pyrolysis Deposition)及びCVD法などが用いられる。
【0064】
次に、上記のようにして得られた透明導電膜15上に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷する。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストは、酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、バーコート法などを用いることができる。
【0065】
次に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを焼成して透明導電膜15上に多孔質酸化物半導体層12を形成する。焼成温度は酸化物半導体粒子により異なるが、通常は350〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子により異なるが、通常は1〜5時間である。
【0066】
次に、導電性基板11の透明導電膜15上に集電配線16を形成する。このとき、集電配線16は、多孔質酸化物半導体層12を囲むように形成する。
【0067】
集電配線16は、例えば、銀粒子と、銀と錫との混合物からなる銀錫混合粒子と、銀錫混合粒子よりも高い温度で融解するガラスフリットと、バインダ樹脂と、溶媒とを含む銀ペーストを、スクリーン印刷法などを用いて透明導電膜15上に塗膜し、加熱して焼成することによって得ることができる。ここで、銀錫混合粒子は、例えば銀粒子と錫粒子を混合し焼成することで製造することができる。
【0068】
この銀ペーストを、透明基板14上に設けた透明導電膜15上に塗布し、焼成すると、まず銀錫混合粒子がガラスフリットよりも先に融解し、銀錫混合粒子の少なくとも一部が沈み、透明導電膜15に達して、透明導電膜15に接触する銀錫混合部52が形成される。そして、銀ペーストの温度をさらに上昇させると、ガラスフリットが融解し、ガラスフリットが沈み、透明導電膜15に達して、透明導電膜15に接触するガラスフリット部53が形成される。このとき、ガラスフリットが沈んで銀錫混合部52の一部を覆えば、凹部54を有するガラスフリット部53が形成されると同時に、凹部54に銀錫混合部52が入り込んだ構造となり、結合体55が形成される。またガラスフリットが沈んで銀錫混合部52を覆わなければ、ガラスフリット部53が形成される。
【0069】
このとき、銀錫混合部52を得るためには、銀錫混合粒子と透明導電膜15とがともに融解しない温度で銀ペーストを加熱するようにする。これは、銀錫混合粒子と透明導電膜15とがともに融解する温度で銀ペーストを加熱すると、銀錫混合部52に銀と錫との合金が形成されてしまうためである。
【0070】
銀ペースト中の銀錫混合粒子の含有率は、0.3〜3.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.5質量%であることがより好ましい。銀錫混合粒子の含有率が上記範囲内にあると、上記範囲を外れた場合に比べて、低い接触抵抗と低い体積抵抗を両立することができる。
【0071】
銀錫混合粒子に対するガラスフリットの質量比は、好ましくは0.1〜1.2であり、より好ましくは0.2〜1.0である。銀錫混合粒子に対するガラスフリットの質量比が上記範囲内にあると、上記範囲を外れる場合に比べて、透明導電膜15との密着性が向上するという利点が得られる。
【0072】
上記バインダ樹脂としては、例えばジヒドロターピネオールなどが挙げられる。また溶媒としては、例えばエチルセルロースが挙げられる。
【0073】
また集電配線16と透明導電膜15との間に空隙A1を形成するためには、銀ペースト中の溶媒の量や、ガラスフリットの量を調整すればよい。
【0074】
さらに、集電配線16において透明導電膜15から離れた位置に空隙A2を形成するためには、ガラスフリットとして銀粒子よりも低い融点を有するものを用いる。この場合、銀粒子51よりも先にガラスフリットが融解するため、ガラスフリットが重力の作用により透明導電膜15に向かうことが可能となる。その結果、集電配線16に空隙A2が形成される。なお、空隙A2は、溶媒が蒸発したり、バインダ樹脂が分解されたりすることによっても形成される。
【0075】
次に、集電配線16を配線保護層17で被覆する。このとき、配線保護層17は集電配線16を完全に覆うとともに導電性基板11に接触する。
【0076】
こうして、導電性基板11上に、集電配線16及び配線保護層17が順次形成され、配線部13が形成される。
【0077】
以上のようにして作用極10が得られる。
【0078】
[色素担持工程]
次に、作用極10の多孔質酸化物半導体層12に光増感色素を担持させる。このためには、作用極10を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その色素を多孔質酸化物半導体層12に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を多孔質酸化物半導体層12に吸着させればよい。但し、光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化物半導体層12に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を多孔質酸化物半導体層12に吸着させることによっても、光増感色素を多孔質酸化物半導体層12に担持させることが可能である。
【0079】
(対極)
一方、対極20は、以下のようにして得ることができる。
【0080】
即ちまず対極基板21を準備する。そして、対極基板21の上に触媒層22を形成する。触媒層22の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。
【0081】
[封止部固定工程]
次に、作用極10のうち透明導電膜15の表面上の部位であって多孔質酸化物半導体層12を包囲する環状部位に封止部形成材料を固定する。例えば、封止部形成材料は、封止部40を例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料で構成する場合には、その無機絶縁材料を含むペーストを環状部位に塗布し焼成することによって得ることができる。なお、封止部形成材料は、作用極10の表面上の部位のうち、多孔質酸化物半導体層12を包囲する環状部位のみならず、対極20の表面上の環状部位に固定してもよい。
【0082】
[電解質層配置工程]
次に、作用極10上であって封止部形成材料の内側に電解質30を配置する。電解質30は、作用極10上であって封止部形成材料の内側に注入したり、印刷したりすることによって得ることができる。
【0083】
ここで、電解質30が液状である場合は、電解質30を、封止部形成材料を超えて封止部形成材料の外側に溢れるまで注入することができる。この場合、封止部形成材料の内側に電解質30を十分に注入することが可能となる。また封止部形成材料と封止部形成材料とを接着して、封止部40を形成するに際し、作用極10と対極20と封止部40とによって囲まれるセル空間から空気を十分に排除することができ、光電変換効率を十分に向上させることができる。
【0084】
[重合せ工程]
次に、作用極10と対極20とを対向させて、作用極10に固定した封止部形成材料と、対極20とを重ね合わせる。
【0085】
[封止部形成工程]
次に、上記封止部形成材料を加圧しながら加熱溶融させる。こうして作用極10と対極20との間に封止部40が形成される。このとき、作用極10と対極20との貼合せは、例えば作用極10と対極20とを減圧空間内に配置し、減圧空間を減圧することで行うことができる。
【0086】
その際の減圧空間の圧力は通常、50Pa以上1013hPa未満の範囲であり、50〜800Paとすることが好ましく、300〜800Paとすることがより好ましい。
【0087】
また上記封止部形成材料の加圧は通常、1〜50MPaで行い、好ましくは2〜30MPa、より好ましくは3〜20MPaで行う。
【0088】
封止部形成材料を構成する樹脂として、例えば熱可塑性樹脂を用いる場合は、封止部形成材料を溶融させるときの温度は、封止部形成材料の融点以上とする。
【0089】
但し、封止部形成材料を溶融させるときの温度は、(封止部形成材料に含まれる樹脂の融点+200℃)以下であることが好ましい。上記温度が(封止部形成材料に含まれる樹脂の融点+200℃)を超えると、封止部形成材料に含まれる樹脂が熱によって分解するおそれがある。
【0090】
こうして、色素増感太陽電池100が得られ、色素増感太陽電池100の製造が完了する。
【0091】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、集電配線16が、透明導電膜15に接触するガラスフリット部53を有しているが、集電配線16は、必ずしもガラスフリット部53を有していなくてもよい。この場合、集電配線16を形成するには、集電配線を形成するための銀ペーストにガラスフリットを配合しないようにすればよい。集電配線16が、透明導電膜15から離れた位置に銀錫混合部62を有しているが、集電配線16は、透明導電膜15から離れた位置に銀錫混合部62を有していなくてもよい。なお、集電配線16が透明導電膜15から離れた位置に銀錫混合部62を有しないようにするには、例えば銀錫混合部52を透明導電膜15上にあらかじめ印刷し、集電配線用の銀ペーストに銀錫混合粒子を入れないようにすればよい。または、銀錫混合粒子を含む銀ペーストを透明導電膜15上に塗布した後、銀ペーストを500℃で24時間保持して焼成すればよい。
【0092】
さらに上記実施形態では、集電配線16が、透明導電膜15から離れた位置にガラスフリット部63を有しているが、集電配線16は、透明導電膜15から離れた位置にガラスフリット部63を有していなくてもよい。なお、集電配線16が透明導電膜15から離れた位置にガラスフリット部63を有しないようにするには、例えばガラスフリットの融点をバインダの融点以下にすればよい。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0094】
(実施例1)
はじめに、ガラス基板上にFTO膜を形成してなる20cm×20cm×4mmのFTO基板を準備した。続いて、FTO基板のFTO膜の上に、ドクターブレード法によって酸化チタンペースト(Solaronix社製、Ti nanoxide T/sp)を、その厚さが17μmとなるように24箇所に塗布した後、FTO基板を熱風循環タイプのオーブンに入れて500℃で3時間焼成し、FTO基板上に多孔質酸化物半導体層を形成した。
【0095】
次に、0.8μmの平均粒径を有する銀粒子と、0.8μmの平均粒径を有する銀錫混合粒子と、エチルセルロースと、ガラスフリットと、ジヒドロテルピネオールとをそれぞれ70質量%、2質量%、3質量%、1質量%、24質量%配合してなる銀ペーストを用意した。このとき、銀錫混合粒子は、銀粒子と錫粒子とを混合し焼成することで作製した。そして、銀ペーストを、多孔質酸化物半導体層を包囲するように塗布した後、500℃、1時間で銀ペーストを焼成し、幅0.4mm、厚さ0.02mmで且つ20mm×5.5mmの24個の四角開口を有する格子状の集電配線を形成した。
【0096】
次に、低融点ガラスフリット(セントラル硝子社製B20、融点:475℃)を含むペーストを集電配線の上に塗布し、ペーストを500℃で3時間加熱して焼成することにより焼成体を形成した。こうして、FTO基板上に配線部を形成し、作用極を得た。
【0097】
一方、19cm×17cm×0.04mmのチタンからなる対極基板を準備した。そして、対極基板上に、スパッタリング法により、厚さ6nmの白金触媒層を形成した。こうして対極を得た。
【0098】
次に、エチレン−メタクリル酸共重合体であるニュクレル(三井・デュポンポリケミカル社製、融点:98℃)からなる19.5cm×17.5cm×100μmのシートの中央に18.5cm×16.5cm×100μmの開口を形成した四角環状の樹脂シートを準備した。そして、この樹脂シートを、作用極の多孔質酸化物半導体層を包囲する配線部の上に配置した。この樹脂シートを180℃で5分間加熱し溶融させることによって配線部に接着し、FTO基板上における配線部上に封止部形成材料を固定した。
【0099】
次に、封止部形成材料を固定した作用極を、光増感色素であるN719色素を0.2mM溶かした脱水エタノール液中に一昼夜浸漬して多孔質酸化物半導体層に光増感色素を担持させた。
【0100】
一方、ニュクレルからなる19.0cm×17.0cm×100μmのシートの中央に18.5cm×16.5cm×100μmの開口を形成した四角環状の樹脂シートを準備した。そして、この樹脂シートを、対極の環状部位に配置した。この樹脂シートを180℃で5分間加熱し溶融させることによって環状部位に接着し、対極上における環状部位に封止部形成材料を固定した。
【0101】
次いで、作用極を、FTO基板の多孔質酸化物半導体層側の表面が水平になるように配置し、封止部形成材料の内側に、メトキシプロピオニトリルからなる揮発性溶媒を主溶媒とし、ヘキシルメチルイミダゾリウムヨージドを0.1M、ヨウ素を0.2M、4−tert−ブチルピリジンを0.5M含む揮発系電解質を注入した。
【0102】
次に、封止部形成材料を固定した対極を作用極に対向させ、大気圧下で、作用極上の封止部形成材料と対極上の封止部形成材料とを重ね合わせた。そして、800Paの減圧下で、プレス機を用いて、封止部形成材料同士を、対極を介して5MPaで加圧しながら148℃で加熱して溶融させ、封止部を得た。こうして色素増感太陽電池を得た。
【0103】
得られた色素増感太陽電池について、SEMによって、集電配線の断面を観察したところ、集電配線には、FTO膜に接触するガラスフリット部と、FTO膜に接触する接触部分とを結合してなる結合体が確認された。ここで、接触部分について、元素マッピング装置(ZEISS社製、ULTRA 55)を用いて元素マッピング分析を行ったところ、接触部分が、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部であることが確認され、銀錫混合部には銀と錫との合金の存在は確認されなかった。そして、結合体には、ガラスフリット部に形成された開放された凹部に銀錫混合部が収容された第1結合体と、ガラスフリット部に形成された密閉された凹部に銀錫混合部が収容された第2結合体とがあることが確認された。
【0104】
また集電配線において、FTO膜から離れた位置においては、ガラスフリット部及び銀錫混合部が確認された。
【0105】
また集電配線と透明導電膜との間、及び、集電配線において空隙が形成されていることが確認された。
【0106】
さらに銀粒子の平均粒径について求めたところ、銀粒子の平均粒径は、表1に示す通り、0.8μmであった。
【0107】
(実施例2)
銀粒子の平均粒径を表1に示す通り、0.8μmから10μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を得た。
【0108】
(実施例3)
銀粒子の平均粒径を表1に示す通り、0.8μmから2.0μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0109】
(実施例4)
銀粒子の平均粒径を表1に示す通り、0.8μmから0.4μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0110】
(実施例5)
銀粒子の平均粒径を表1に示す通り、0.8μmから3.5μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0111】
(実施例6)結合体がガラスフリットを有しないようにしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0112】
(実施例7)
FTO膜上に集電配線を形成する際、銀ペーストの焼成時間を24時間にすることで、集電配線が、FTO膜から離れた位置に銀錫混合部及びガラスフリット部を有しないようにしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0113】
(比較例1)
銀ペースト中に、銀錫混合粒子及びガラスフリットを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0114】
(比較例2)
銀ペースト中に、銀錫混合粒子を配合しなかったこと以外は実施例7と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0115】
[色素増感太陽電池の光電変換特性評価]
実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた色素増感太陽電池について、光電変換効率(η)を測定した。結果を表1に示す。
【0116】
[色素増感太陽電池の耐久性評価]
実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた色素増感太陽電池について、JIS C8938 A−1に準拠した温度サイクル試験を行った後の光電変換効率(η)も測定した。そして、下記式:
光電変換効率の維持率(%)=η/η×100
に基づき、光電変換効率の維持率を算出した。結果を表1に示す。
【表1】

【0117】
表1に示す結果より、実施例1〜7の色素増感太陽電池は、比較例2の色素増感太陽電池に比べて、優れた光電変換効率を有することが分かった。
【0118】
また実施例1〜7の色素増感太陽電池は、比較例1の色素増感太陽電池に比べて、光電変換効率の維持率が十分に高いことも分かった。
【0119】
よって、本発明の光電変換素子用電極は、優れた光電変換特性及び耐久性を光電変換素子に付与できることが確認された。
【符号の説明】
【0120】
10…作用極(光電変換素子用電極)
13…配線部
14…透明基板(基板)
15…透明導電膜(導電膜)
16…集電配線
17…配線保護層
51…銀粒子
52、52a…銀錫混合部
53、53a…ガラスフリット部
54、54a…凹部
55…結合体
62…銀錫混合部
63…ガラスフリット部
100…色素増感太陽電池(光電変換素子)
A2…空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、錫を含有する導電膜と、
前記導電膜上に設けられ、銀粒子を含有する集電配線を有する配線部とを備え、
前記集電配線が、
前記導電膜に接触し、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部を有する、
光電変換素子用電極。
【請求項2】
前記集電配線が、前記導電膜に接触し、ガラスフリットからなるガラスフリット部と前記銀錫混合部とを結合してなる結合体を有し、
前記結合体において、前記ガラスフリット部が、前記導電膜と共に形成される凹部を有し、前記凹部に前記銀錫混合部が入り込んでいる、請求項1に記載の光電変換素子用電極。
【請求項3】
前記集電配線が、前記導電膜から離れた位置に形成される空隙をさらに含む、請求項1又は2に記載の光電変換素子用電極。
【請求項4】
前記配線部が、前記集電配線を覆って保護する配線保護層をさらに有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光電変換素子用電極。
【請求項5】
前記集電配線が、前記導電膜から離れた位置に、銀と錫との混合物からなる銀錫混合部をさらに有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光電変換素子用電極。
【請求項6】
前記銀粒子の平均粒径が0.3〜10μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電変換素子用電極。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光電変換素子用電極を含む光電変換素子。
【請求項8】
銀粒子と、
銀と錫との混合物からなる銀錫混合粒子と、
バインダ樹脂と、
溶媒とを含む銀ペースト。
【請求項9】
前記銀錫混合粒子よりも高い温度で融解するガラスフリットをさらに含む請求項8に記載の銀ペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−80567(P2013−80567A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218794(P2011−218794)
【出願日】平成23年10月1日(2011.10.1)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】