説明

光電池モジュール及び光電池モジュールの製造方法

【課題】本発明は、工程を簡略化することができる。
【解決手段】本発明は、電極側基板12上に透明導電体層5を設け、透明導電体層5上に多孔質半導体層7を設け、多孔質半導体層7と離隔した状態の対極層9を設ける、電極側基板12上に設けられ多孔質半導体層7の周囲を囲むセル隔壁6を設ける。増感型太陽電池モジュール11では、多孔質半導体層7及び対極層9に電解液10を含浸させ、セル隔壁6の上部を覆って電解液10を封止するように液状封止材料を配置し、液状封止材料を固化させる
ようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電池モジュール及び光電池モジュールの製造方法に関し、例えば増感型太陽電池モジュールに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、色素によって増感された光誘起電子移動を応用した増感型太陽電池モジュールが提案されている。増感型太陽電池モジュールは、セル内に電解液を充填させる湿式電池である。この増感型太陽電池モジュールとして、1枚の基板上に全ての電極を形成するモノリシック構造を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
モノリシック構造を有する増感型太陽電池モジュールでは、図1に示すように、2枚の基板(電極側ガラス基板2及びカバーガラス基板3)間にセルを形成し、セル内を電解液で充満させるものが一般的である。
【0004】
このモノリシック構造でなる増感型太陽電池モジュールは、材料及び製造コストが安価であることから、次世代の太陽電池として実用化が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−171827公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでかかる構成の増感型太陽電池モジュールでは、2枚の基板を貼り合わせてセル間を離隔させた後に、真空のセルに空けられた微細な孔から電解液を充填する方法が一般的に行われている。このように、増感型太陽電池モジュールは、セルを形成した後にセル内部を真空状態にして電解液を充填する必要があり、製造工程が煩雑であるという問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、工程を簡略化できる光電池モジュール及び光電池モジュールの製造方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の光電池モジュールにおいては、透明基板と、透明基板上に設けられた透明導電体層と、透明導電体層上に設けられた多孔質半導体層と、多孔質半導体層と離隔して設けられた対極層と、多孔質半導体層及び対極層に含浸された電解液と、透明基板上に設けられ、多孔質半導体層及び対極層の周囲を囲むセル隔壁と、液状材料の状態でセル隔壁の透明基板と反対側を覆って電解液を封止するように配置され、当該液状材料が固化してなる封止剤層とを設けるようにした。
【0009】
これにより、光電池モジュールでは、セル隔壁及び透明基板によって形成されたセル内の空間に電解液を充填した後に当該セル隔壁に蓋をするように液状材料を配置して当該液状材料を固化させることにより、電解液をセル内に密封することができる。
【0010】
透明基板上に透明導電体層を設ける透明導電体層形成ステップと、透明導電体層上に多孔質半導体層を設ける多孔質半導体層形成ステップと、多孔質半導体層と離隔した状態の対極層を設けると共に、透明基板上に設けられ多孔質半導体層の周囲を囲むセル隔壁を設ける対極層及びセル隔壁形成ステップと、多孔質半導体層及び対極層に電解液を含浸させる電解液含浸ステップと、セル隔壁の透明基板と反対側を覆って電解液を封止するように液状材料を配置する液状樹脂配置ステップと、液状材料を固化させる固化ステップとをもうけるようにした。
【0011】
これにより、光電池モジュールの製造方法では、セル隔壁及び透明基板によって形成されたセル内の空間に電解液を充填した後に当該セル隔壁に蓋をするように液状材料を配置して当該液状材料を固化させることにより、電解液をセル内に密封することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セル隔壁及び透明基板によって形成されたセル内の空間に電解液を充填した後に当該セル隔壁に蓋をするように液状材料を配置して当該液状材料を固化させることにより、電解液をセル内に密封することができる。かくして本発明は、工程を簡略化できる光電池モジュール及び光電池モジュールの製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の増感型太陽電池モジュールの構成を示す略線図である。
【図2】本実施の形態による増感型太陽電池モジュールの構成を示す略線図である。
【図3】製造方法の説明に供するフローチャートである。
【図4】電極の形成を示す略線図である。
【図5】セル隔壁の形成の説明に供する略線図である。
【図6】電界液の充填の説明に供する略線図である。
【図7】液状封止剤の充填の説明に供する略線図である。
【図8】他の実施の形態による増感型太陽電池モジュールの構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.他の実施の形態
【0015】
<1.実施の形態>
[1−1.増感型太陽電池の構成]
図2において、11は、全体として増感型太陽電池モジュールを示しており、従来の構成と対応する箇所に同一符号を附して示す。
【0016】
増感型太陽電池モジュール11は、電極側基板12とカバーフィルム14との間に、直列に接続された8個のセルが形成されることにより構成されている。図2(B)に、増感型太陽電池モジュール11の断面図を示す。なお図2(B)では、便宜上、4個のセルのみを示している。以下の図面についても同様であり、断面図については4個のセルのみを示しているが、実際には8個のセルが配置されている。
【0017】
増感型太陽電池モジュール11は、電極側基板12と、透明導電性層5と、セル離壁6と、多孔質半導体層7と、多孔質絶縁層8と、対極層9と、電解液10(図示せず)と、封止剤層13と、カバーフィルム14とを有している。なお電解液10は、多孔質半導体層7、多孔質絶縁層8及び対極層9に含浸された状態にある。
【0018】
光は、電極側基板12を介して入射される。光は、電極側基板12及び透明導電性層5を通過し、多孔質半導体層7に照射される。多孔質半導体層7は、光を吸収してイオン化し、電子を放出する。この放出された電子は、透明導電性層5に伝達される。
【0019】
一方、透明導電性層5は、対極層9を介して電解液10に対して電子を供給する。電解液10は、還元反応により電子を受容する。ここで、電解液10は、多孔質半導体層7、多孔質絶縁層8及び対極層9に含浸されている。このため、電解液10は、受容した電子を多孔質半導体層7に供給する。この結果、多孔質半導体層7は、電子を受容し、イオン化されていない通常の状態に戻ることができる。
【0020】
すなわち、増感型太陽電池モジュール11は、光に応じて電流を発生させ、対極層9を正極、透明導電性層5を負極とする電池として作用することができる。
【0021】
電極側基板12は、光電変換に使用される波長の光を高透過率で透過させると共に、電気絶縁性を有する材料であれば良く、例えばガラスや樹脂などが用いられる。耐熱性に優れることから、ガラスが用いられることが多い。樹脂を用いる場合には、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂など、耐熱性及び透明性に優れる材料を用いることが好ましい。
【0022】
透明導電性層5は、電極側基板12上に形成されており、各セル15を直列に接続するようにパターニングされている。透明導電性層5は、光電変換に使用される波長の光を高透過率で透過させると共に、電気導電性を有する材料であれば良く、酸化スズや酸化インジウムが好適に用いられる。また、他の原子をドープさせることにより、透明導電清掃5の導電性を向上させることが可能である。このドープされる原子としては、酸化スズであればフッ素やアンチモンなど、酸化インジウムであればスズなどが挙げられる。
【0023】
具体的には、透明導電性層5は、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)や、フッ素がドープされた酸化スズ(IV)(FTO)、酸化スズ(IV)、酸化亜鉛(II)、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)などが用いられる。
【0024】
多孔質半導体層7は、透明導電性層5に隣接して設けられている。多孔質半導体層7は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛などのn型金属酸化物でなる半導体微粒子や、ペロブスカイト構造を有する材料などが好適に用いられる。多孔質半導体層7の材料としては、アタナーゼ型の酸化チタンが特に好ましい。
【0025】
この半導体微粒子には、光電変換効率を向上させるため、増感色素が吸着されていることが好ましい。この増感色素としては、特に限定されないが、有機色素や金属錯体などが好適に用いられる。その性能面から、ルテニウム系金属錯体が特に好適に用いられる。
【0026】
多孔質絶縁層8は、多孔質半導体層7及び対極層9に隣接して設けられ、多孔質半導体層7及び対極層9間を離隔して絶縁する。多孔質絶縁層8は、電極側基板12を介して入射される光を拡散反射することが好ましい。多孔質半導体層7における光の吸収率を向上させるためである。
【0027】
多孔質絶縁層8は、電気絶縁性を有する公知の材料を用いることができ、例えば二酸化シリコン、ルチル型酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの微粒子が好適に用いられる。
【0028】
対極層9は、導電性を有する公知の材料を用いることができる。対極層9の材料としては、電気安定性を有することが好ましく、白金、金、カーボン及び導電性ポリマーなどが好適に用いられる。対極層9は、電解質の還元反応を促進させるため、表面積が大きいことが好ましい。
【0029】
電解液10は、酸化還元剤(レドックス体)を含む溶液でなる。酸化還元剤としては特に制限はないが、例えば、要素と金属又は有機物のヨウ化物塩との組み合わせや、臭素と金属又は有機物の臭化物塩との組み合わせなどを用いる。
【0030】
電解液10は、液体又はゲル状でなる。液漏れ防止の観点から、ゲル状の電解液が用いられることが好ましい。電解液をゲル化する手法に特に制限はないが、繊維状の無機マトリックス材料に電解液を保持させることが特に好ましい。少量の無機マトリックス材料により多くの電解液を保持でき、マトリックス材料の添加により生じる内部抵抗を抑制し、光電効率の低下を防止し得るからである。
【0031】
この無機マトリックス材料は、無機材料(例えば酸化チタン)の粉末を水酸化カリウム溶液に分散し、オートクレーブ中で水熱反応を生じさせてから乾燥させることにより生成される。さらに、酸化還元剤が溶解してなる電解溶液に対して、無機マトリックス材料が添加され、超音波処理などにより分散されることにより、電解液10が調製される(特許文献2参照)。
【0032】
【特許文献2】特開2007−200796公報
【0033】
電解液10は、多孔質半導体層7、多孔質絶縁層8及び対極層9に含浸するだけの量でなり、電界液10のみからなる層を形成しないことが好ましい。封止剤層13の特性を良好に保つためである。
【0034】
セル隔壁6は、多孔質半導体層7、多孔質絶縁層8及び対極層9の周囲を包囲し、セル15間を離隔している。言い換えると、セル隔壁6は、セル15の外周を構成している。セル隔壁6は、対極層9の高さよりも封止剤層13の厚みとほぼ同一厚みだけ高く形成されており、封止剤層13と共にセル15を封止している。
【0035】
セル隔壁6の隔壁材料としては、電気絶縁性を有する公知の材料を用いることができる。特に、種々の樹脂材料が好適に用いられる。具体的に、例えば紫外線に応じて硬化する紫外線硬化型樹脂や、硬化剤との混合後に硬化を開始する2液硬化型樹脂、加熱により硬化する熱硬化型樹脂、高温で液状化するホットメルト樹脂、低融点ガラスフリットなどが好適に用いられる。セル隔壁6としては、紫外線硬化型樹脂又は2液硬化型樹脂が特に好ましい。吸着後の増感色素に熱を加えずに済むからである。
【0036】
樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アミノ樹脂などの各種樹脂材料を用いることができる。電解液10に接触するため、電解液10に対する耐薬品性が高い材料が好適に用いられる。
【0037】
封止剤層13は、セル隔壁6のカバー側を覆うことにより、電解液10をセル15内に封止している。言い換えると、封止剤層13は、セル隔壁6と共にセル15を包囲し、セル15に蓋をしている。封止剤層13は、対極層9に接触していることが好ましい。すなわち、対極層9と封止剤層13との間に、電解液10でなる層が形成されないことが好ましい。封止剤層13が固化する前の液状の状態(以下、これを液状封止材料と呼ぶ)に電解液10が接触すると、液状封止材料の固化を阻害し、封止剤層13としての特性に悪影響を及ぼすからである。
【0038】
封止剤層13は、液状封止材料が固化した物質でなる。液状封止材料としては、電気絶縁性を有する公知の材料を用いることができ、液状の状態で塗布された後に固化する性質を有する様々な材料を用いることができる。例えば紫外線に応じて硬化する紫外線硬化型樹脂や、硬化剤との混合後に硬化を開始する2液硬化型樹脂、加熱により硬化する熱硬化型樹脂、高温で液状化するホットメルト樹脂、低融点ガラスフリットなどが液状封止材料として好適に用いられる。
【0039】
液状封止材料として紫外線硬化型樹脂を用いた場合、紫外線の照射により液状封止材料が固化される。液状封止材料として2液硬化型樹脂を用いた場合、室温において所定時間(例えば数分〜数時間)放置することにより、液状封止材料が固化される。液状封止材料として熱硬化型樹脂を用いた場合、オーブンなどにより所定の加熱温度(例えば80[℃]〜200[℃])において所定の加熱時間に亘って加熱されることにより、液状封止材料が固化される。ホットメルト樹脂及びガラスフリットは、加熱された状態で液状化し、液状材料として用いられる。液状封止材料が塗布された後、冷却されることにより、液状封止材料が固化される。
【0040】
液状封止材料としては、紫外線硬化型樹脂及び2液硬化型樹脂硬化が特に好ましい。硬化の際にほとんど加熱せずに済み、電解液10に熱を加えずに済むからである。この樹脂材料としては、電解液10の蒸発を防止するため、透湿性の低いものが好ましい。例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アミノ樹脂などの各種樹脂材料を用いることができる。
【0041】
カバーフィルム14は、セル15を保護するために設けられ、外部の環境(特に湿度)の影響を抑制する役割を有し、直列に接続された8つのセル15を外部から遮蔽している。カバーフィルム14は、少なくとも8つのセル15の周囲を電極側基板12又は透明電極層5、若しくはその両方に接着されることにより、電極側基板12に固定されている。接着方法に制限はなく、例えば熱ラミネートや、接着剤を用いることができる。また、カバーフィルム14は、セル15の周囲だけでなく、セル15のカバー側の全面に接着されていても良い。
【0042】
カバーフィルム14としては、特に制限はないが、透湿性の低いフィルムが好適に用いられる。例えばポリアミドなどの樹脂フィルムや、金属蒸着フィルム、金属箔と樹脂フィルムとが予めラミネートされたラミネートフィルムなどが好適に用いられる。カバーフィルム14の厚みに制限はないが、透湿性を低減するため、20[μm]以上、特に50[μm]以上のものが用いられることが好ましい。
【0043】
[1−2.製造方法]
次に、増感型太陽電池モジュール11の製造方法について、図3のフローチャートを用いながら説明する。
【0044】
まず、図4に示すように、電極側基板12上に例えばスパッタリング法や蒸着法などによって透明導電性層5が形成される(ステップSP1)。なお図4〜図7では、便宜上、カバー側を紙面上側に示しており、図2とは上下方向が反転した状態となっている。
【0045】
次いで、透明導電性層5の上に電極(多孔質半導体層7、多孔質絶縁層8及び対極層9)が形成される(ステップSP2)。多孔質半導体層7は、例えばシルクスクリーン印刷や平板印刷などによりスラリー状の多孔質半導体材料が塗布された後、加熱により多孔質半導体材料を焼結させることにより形成される。
【0046】
次に、多孔質半導体層7上に多孔質絶縁層8及び対極層9が順次形成される。多孔質絶縁層8及び対極層9は、多孔質半導体層7と同様にして形成される。そして電極側基板12が増感色素溶液に含浸されることにより色素が吸着され、過剰の増感色素が除去された後、乾燥される。
【0047】
図5に示すように、セル15間を離隔するようにセル隔壁6を形成する(ステップSP3)。セル離壁6は、例えばディスペンサ、スクリーン印刷や平板印刷などにより液状の隔壁材料が塗布された後、固化されることにより形成される。
【0048】
そして図6に示すように、セル15の内部に電解液10が充填される(ステップSP4)。電界液10として低粘度の液体状のものが用いられる場合、例えばディスペンサなどにより単純に電解液10が充填されることにより、電解液10が表面張力や毛細管現象などによってセル15の内部全体に行き渡り、多孔質半導体層7、多孔質絶縁層8及び対極層9に電解液10が含浸される。
【0049】
電解液10としてゲル状のものが用いられる場合、例えばディスペンサにより各セル15内に電解液10が充填された後、電解液10が表面張力や毛細管現象などによってセル15の内部全体に行き渡り、多孔質半導体層7、多孔質絶縁層8及び対極層9に電解液10が含浸される。また、電解液10を対極層9上に載せた後、へらなどにより電解液10を対極層9の内部へ押し込むことにより、多孔質半導体層7、多孔質絶縁層8及び対極層9に電解液10が含浸されてもよい。当該電解液10のセル15内部への浸透を促進するため、当該電解液10に対して振動又は超音波処理などを実行しても良い。
【0050】
図7に示すように、対極層9上に液状封止材料が塗布される(ステップSP5)。塗布方法に制限はなく、液状封止材料の特性に応じて塗布方法が適宜選択される。液状封止材料が比較的高粘度(10[rpm]において10000[Pa・s]以上)の場合、例えばディスペンサなどによりセル15の内部(対極層9の表面からセル隔壁6の上面まで)を埋める量の液状封止材料が塗布される。また、液状封止材料が過剰量塗布された後、スキージを用いて過剰な液状封止材料が除去されても良い。また、例えばシルクスクリーン印刷や平板印刷などの手法を用いることも可能である。
【0051】
液状封止材料が比較的低粘度(10[rpm]において10000[Pa・s]未満)の場合、例えばディスペンサ、シルクスクリーン印刷や平板印刷などにより液状封止材料が塗布されると、重力によりカバー側の表面がならされる。
【0052】
そして液状封止材料の特性に応じて、当該液状封止材料が固化されることにより、封止剤層13が形成される(ステップSP6)。
【0053】
最後に、電極側基板12に対してカバーフィルム14が接着されることにより、セル15がカバーフィルム14で覆われる(ステップSP7)。このとき、例えば真空引きにより、カバーフィルム14及びセル15間を真空の状態にしても良い。
【0054】
このように、増感型太陽電池モジュール11は、予め多孔質半導体層7、多孔質絶縁層8及び対極層9を囲むセル隔壁6を設け、電解液10を充填する。そして液状封止材料によってセル隔壁6のカバー側に蓋をし、当該液状封止材料を固化させることにより、封止剤層13を設けるようにした。
【0055】
これにより、増感型太陽電池モジュール11は、カバー側に大きく開口したセル隔壁6内に電解液10を充填すればよい。このため、増感型太陽電池モジュール11は、わざわざセルの内部空間を密封された状態で形成してから、セルに空けた小さな孔を介して電解液10を注入する従来の方法と比して、電解液10を充填する工程を著しく簡易にすることができる。
【0056】
[1−3.動作及び効果]
以上の構成において、増感型太陽電池モジュール11は、透明基板としての電極側基板12と、電極側基板12上に設けられた透明導電体層5と、透明導電体層5上に設けられた多孔質半導体層7と、多孔質絶縁層8を解することにより多孔質半導体層7と離隔して設けられた対極層9とを有する。増感型太陽電池モジュール11は、多孔質半導体層7及び対極層9に含浸された電解液10と、電極側基板12上に設けられ、多孔質半導体層7及び対極層9の周囲を囲むセル隔壁6とを有する。さらに、増感型太陽電池モジュール11は、液状材料(液状封止材料)の状態でセル隔壁6の電極側基板12と反対側となるカバー側を覆って電解液10を封止するように配置され、当該液状封止材料が固化してなる封止剤層13を有するようにした。
【0057】
これにより、増感型太陽電池モジュール11は、電解液10を充填した後に柔軟性の高い液状封止材料を用いてセル隔壁6に蓋をし、電解液10を密封することができるため、電解液10を充填する工程を簡略化し得る。
【0058】
ここで、セル15では、ヒートサイクルなどの耐環境性を向上させるため、セル15の内部に極力空気を混入させないことが好ましい。例えば固形のフィルム及び接着剤を用いてセル15を密封する場合、真空下においてセル隔壁6及び対極層9とフィルムを完全に密着させながら接着剤を硬化させなくてはならず、工程が煩雑になってしまう。また、この場合、フィルムを変形させる必要があるため、常に一定の応力がかかった状態となり、フィルムが剥がれやすい状態となってしまう。
【0059】
これに対して、増感型太陽電池モジュール11は、変形自在な液状封止材料を用いることにより、無理なく、かつ簡易な工程で液状封止材料を塗布させることができる。このように塗布された液状封止材料が固化されることにより、変形による応力が加えられることなく、安定的にセル15を封止することができる。
【0060】
また、特許文献1に記載の増感型太陽電池では、セル隔壁が設けられていないため、電解液を電極が保持しなければならず、高熱や振動により電解液の液漏れの危険性を避けることができなかった。また、電解液を固体に近い状態にまで固める必要があり、内部抵抗の増大により光電変換効率が低下してしまっていた。
【0061】
これに対して、増感型太陽電池モジュール11は、電極側基板12、セル隔壁6及び封止剤層13によってセル15を密封するため、液漏れの危険性が小さく、電解液10として液体からゲル状のものまで、自由に選択することができ、高い光電変換効率を維持できる。
【0062】
封止剤層13は、紫外線硬化型樹脂又は2液硬化型樹脂でなる。これにより、電解液10の充填後に加熱工程が不要となるため、電解液10を加熱せずに済み、電解液の加熱による特性劣化などを防止できる。
【0063】
封止剤層13は、対極層9に接触している。これにより、液状封止材料が電解液10にほとんど接触しないため、電解液10による液状封止材料の硬化反応の阻害及び当該阻害による特性劣化を抑制できる。
【0064】
電解液10は、ゲル状でなる。これにより、電解液10が低粘度の液体である場合と比較して、小さな隙間などからの電解液10の液漏れを効果的に防止することができる。
【0065】
電解液10は、繊維状の無機マトリックスに保持されている。これにより、電解液10は、少量の無機マトリックスのみにより電界液10をゲル化させて電解液10としての内部の流動性をある程度維持することができ、ゲル化による光電変換効率の低下を極力抑制できる。
【0066】
セル隔壁6は、樹脂でなる。これにより、無機材料を用いる場合と比して、焼結や溶融による高温加熱を不要とすることができる。
【0067】
多孔質半導体層7は、増感色素が吸着されており、セル隔壁6は、紫外線硬化型樹脂又は2液硬化型樹脂でなる。
【0068】
これにより、増感色素の吸着後に加熱工程を行わずに済み、増感色素の加熱による特性劣化を防止することができる。
【0069】
増感型太陽電池モジュール11は、電極側基板12又は透明導電体層5に接着され、多孔質半導体層7、対極層9、電解液10、セル隔壁6、封止剤層13を有するセル15を覆うカバーフィルム14をさらに有する。
【0070】
これにより、増感型太陽電池モジュール11は、電極側基板12とカバーフィルム14とによってセル15を密封することができるため、外部環境からの湿度などの影響を低減でき、耐久性を向上させることができる。
【0071】
以上の構成によれば、増感型太陽電池モジュール11では、電極側基板12上に透明導電体層5を設け、透明導電体層5上に多孔質半導体層7を設け、多孔質半導体層7と離隔した状態の対極層9を設ける、電極側基板12上に設けられ多孔質半導体層7の周囲を囲むセル隔壁6を設ける。増感型太陽電池モジュール11では、多孔質半導体層7及び対極層9に電解液10を含浸させ、セル隔壁6の上部を覆って電解液10を封止するように液状封止材料を配置し、液状封止材料を固化させるようにした。
【0072】
これにより、増感型太陽電池モジュール11は、カバー側が大きく開口するセル隔壁6の内部に電解液10を充填するだけの簡易な工程で電解液10を充填することができる。かくして本発明は、工程を簡易にし得る光電池モジュール及び当該光電池モジュールの製造方法を実現できる。
【0073】
<2.他の実施の形態>
なお上述した実施の形態においては、増感型太陽電池モジュール11がカバーフィルム14を有するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば図8に示す増感型太陽電池モジュール21のように、カバーフィルム14は必ずしも必要ではない。
【0074】
また上述した実施の形態においては、セル隔壁6の対極層9からの突出部分を埋めるように封止剤層13が形成されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば図8に示す増感型太陽電池モジュール21のように、対極層9及びセル隔壁6をカバー側から覆うように封止剤層23が形成されるようにしても良い。この場合、セル隔壁6は、対極層9よりも突出する必要はなく、ほぼ同一の高さに形成されても良い。この封止剤層23は、例えばダイコーティングなどの各種コーティングにより形成される。図8では、8つのセル15の周囲にまで封止剤層23が設けられているが、少なくともセル離壁6のカバー側を覆えば良く、8つのセル15の周囲にまで封止剤層23が形成される必要はない。
【0075】
これにより、各セル15ごとに液状封止樹脂を充填するのではなく、増感型太陽電池モジュール21ごとに液状封止樹脂を塗布することができるため、工程を簡易にすることができる。
【0076】
さらに上述した実施の形態においては、特に言及していないが、例えば電解液10と液状封止材料の相溶性を非常に悪くしておき、液状封止材料の粘度を低粘度(例えば10[rpm]で500[Pa・s]以下)にする。これにより、電解液10と液状封止材料間に空気を入れず、かつ電解液10と液状封止材料が混ざりあわないようにできると共に、電解液10に沿って液状封止材料が広がるため、簡易にかつ確実に電解液10を密封することができる。
【0077】
さらに、上述した実施の形態においては、対極層9と封止剤層13が接触するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、必ずしも対極層9と封止剤層13が接触する必要はない。例えば封止剤層13として電解液10によっても固化を阻害されない材料を用いれば、電解液10の層が形成されても問題はない。また、電解液10及び封止剤層13間に、これらを離隔するための離隔層を設けることもできる。離隔層としては、液体又はフィルムなどを用いることが可能である。
【0078】
さらに上述した実施の形態においては、多孔質絶縁体層8によって多孔質半導体層7及び対極層9を離隔させるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、多孔質半導体層7及び対極層9を離隔させれば良く、必ずしも多孔質絶縁体層8は必要ではない。
【0079】
さらに上述した実施の形態においては、スラリー状の物質が塗布後に焼結されることにより、多孔質半導体層7、多孔質絶縁体層8及び対極層9が形成されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、必ずしも焼結される必要はない。増感色素が破壊されない範囲の乾燥工程により多孔質絶縁体層8及び対極層9が形成可能な場合には、多孔質半導体層7に増感色素が吸着された後に多孔質絶縁体層8及び対極層9が形成されても良い。また、この場合、セル隔壁6が形成された後に多孔質絶縁体層8及び対極層9が形成されても良い。
【0080】
さらに上述した実施の形態においては、光電池モジュールが、多孔質半導体層7に増感色素を吸着させた増感型太陽電池でなるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、必ずしも増感色素を吸着させる必要はなく、湿式の光電池モジュールの全てに本発明を適用することが可能である。
【0081】
さらに上述した実施の形態においては、透明基板としての電極側基板12と、透明導電体層としての透明導電体層5と、多孔質半導体層としての多孔質半導体層7と、対極層としての対極層9と、電解液としての電解液10と、セル隔壁としてのセル隔壁6と、封止剤層としての封止剤層13とによって光電池モジュールとしての太陽電池モジュール11を構成するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成による透明基板と、透明導電体層と、多孔質半導体層と、対極層と、電解液と、セル隔壁と、封止剤層とによって本発明の光電池モジュールを構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、例えば種々の電子機器に搭載される光電池モジュールに利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1、11、21……増感型太陽電池モジュール、5……透明導電性層、6……セル隔壁、7……多孔質半導体層、8……多孔質絶縁層、9……対極層、10……電解液、12……電極側基板、13、23……封止剤層、14……カバーフィルム、15……セル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
透明基板上に設けられた透明導電体層と、
上記透明導電体層上に設けられた多孔質半導体層と、
上記多孔質半導体層と離隔して設けられた対極層と、
上記多孔質半導体層及び上記対極層に含浸された電解液と、
上記透明基板上に設けられ、上記多孔質半導体層及び対極層の周囲を囲むセル隔壁と、
液状材料の状態で上記セル隔壁の上記透明基板と反対側を覆って上記電解液を封止するように配置され、当該液状材料が固化してなる封止剤層と
を有する光電池モジュール。
【請求項2】
上記封止剤層は、
紫外線硬化型樹脂又は2液硬化型樹脂でなる
請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項3】
上記封止剤層は、
上記対極層に接触している
請求項2に記載の光電池モジュール。
【請求項4】
上記電解液は、
ゲル状でなる
請求項3に記載の光電池モジュール。
【請求項5】
上記電解液は、
繊維状の無機マトリックスに保持されている
請求項4に記載の光電池モジュール。
【請求項6】
上記セル隔壁は、
樹脂でなる
請求項5に記載の光電池モジュール。
【請求項7】
上記多孔質半導体層は、
増感色素が吸着されており、
上記セル隔壁は、
紫外線硬化型樹脂又は2液硬化型樹脂でなる
請求項6に記載の光電池モジュール。
【請求項8】
上記透明基板又は上記透明導電体層に接着され、上記多孔質半導体層、上記対極層、上記電解液、上記セル隔壁、上記封止剤層を有するセルを覆うカバーフィルム
をさらに有する請求項7に記載の光電池モジュール。
【請求項9】
透明基板上に透明導電体層を設ける透明導電体層形成ステップと、
上記透明導電体層上に多孔質半導体層を設ける多孔質半導体層形成ステップと、
上記多孔質半導体層と離隔した状態の対極層を設けると共に、上記透明基板上に設けられ上記多孔質半導体層の周囲を囲むセル隔壁を設ける対極層及びセル隔壁形成ステップと、
上記多孔質半導体層及び上記対極層に電解液を含浸させる電解液含浸ステップと、
上記セル隔壁の上記透明基板と反対側を覆って上記電解液を封止するように液状材料を配置する液状樹脂配置ステップと、
上記液状材料を固化させる固化ステップと
を有する光電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−44357(P2011−44357A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192351(P2009−192351)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】