光音響イメージング装置
【課題】 感度が均一でSN比が高い信号を高速に入力することが可能な光音響イメージング装置を提供する。
【解決手段】 本発明の光音響イメージング装置の移動手段は、機械電気変換素子群が連続移動しながら弾性波を受信すべく、前記機械電気変換素子群を複数の電気機械変換素子の配列方向における第1の位置から第2の位置に連続移動させる手段であり、加算手段は、前記第1の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記被検体に対して特定位置にある第1の機械電気変換素子が変換した電気信号と、前記第2の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記特定位置にある第2の機械電気変換素子が変換した電気信号と、を加算する手段であることを特徴とする。
【解決手段】 本発明の光音響イメージング装置の移動手段は、機械電気変換素子群が連続移動しながら弾性波を受信すべく、前記機械電気変換素子群を複数の電気機械変換素子の配列方向における第1の位置から第2の位置に連続移動させる手段であり、加算手段は、前記第1の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記被検体に対して特定位置にある第1の機械電気変換素子が変換した電気信号と、前記第2の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記特定位置にある第2の機械電気変換素子が変換した電気信号と、を加算する手段であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から発生した弾性波を画像化する光音響イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報取得方法である光音響イメージング法は、パルスレーザ光を生体に照射することで生体内部に誘起される音響波を検出して、生体内部の3次元構造を画像化する方法である。この音響波は、生体中の検出対象にパルスレーザ光が照射され、生体内部の検出対象が熱膨張することで発生する。また、このパルスレーザ光の波長を変化させることによって、血液中のヘモグロビンやグルコースなど、その波長を吸収帯とする特定物質の分布を映像化できる。そのため、非侵襲で異常新生血管などの潜在的腫瘍を判定することができるため、近年、乳がんのスクリーニングや早期発見の手段として注目されている。
【0003】
従来、光音響イメージング法の具体的な手順は、例えば特許文献1において次のように開示されている。
(1)被検体表面に2次元配列機械電気変換素子(トランスデューサ)を位置決めし、被検体に単パルスの電磁エネルギーを照射する。
(2)電磁エネルギーの照射直後から、各機械電気変換素子の受信信号をサンプリングして記憶する。
(3)映像化する被検体内の点r’について、音響波が点r’から各機械電気変換素子iの位置rに達する遅れ時間を計算し、遅れ時間に対応する各機械電気変換素子の信号を加算して点r’の画像値とする。
(4)画像化する各点r’についてステップ(3)を繰り返す。
【0004】
また、特許文献2には、光音響画像と通常の超音波エコー画像の双方を、共通の一次元配列機械電気変換素子を用いて再構成する方法、及び一次元配列機械電気変換素子の間にグラスファイバーを用いた照明系を配置する構成が開示されている。この特許文献2では、一次元配列機械電気変換素子を用いているので、三次元画像を再構成するためには、一次元配列機械電気変換素子を配列方向と直交する方向に機械的に移動して再構成を繰り返すことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−507952号公報
【特許文献2】特開2005−21380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光音響イメージング法を用いて三次元画像を再構成するためには、画像分解能の方向依存性を少なくするために2次元配列機械電気変換素子を使用することが望ましい。2次元配列機械電気変換素子の使用を前提として広い領域の光音響画像を得る方法としては、次の方法が考えられる。(1)広い領域全面に機械電気変換素子を配列する方法。(2)比較的小規模な機械電気変換素子群(機械電気変換素子を配列したもの)をステップアンドリピート式に位置決めして機械走査する方法。しかし、(1)の方法には受信システムが大規模化してコスト的に実用化が困難と言う問題がある。また、(2)の方法には2次元配列機械電気変換素子の中央部分と端部分とで感度上の不均一さが生じてしまうと言う問題がある。また、ステップアンドリピート式に次々と次の位置へ位置決めする時間が無駄になるという問題がある。
【0007】
よって本発明は、機械電気変換素子群を機械的に走査して広い検査領域の弾性波を受信する場合に、位置決めのための時間を省略しつつ、感度が均一でSN比が高い信号を高速に入力することが可能な光音響イメージング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み本発明の光音響イメージング装置は、電磁波が被検体中の検出対象に照射されることで発生した弾性波を受信して電気信号に変換する機械電気変換素子が複数配列された機械電気変換素子群と、前記機械電気変換素子群を前記複数の機械電気変換素子の配列方向に移動させる移動手段と、前記複数の機械電気変換素子のうち少なくとも2つ以上の機械電気変換素子から送信される電気信号を加算する加算手段と、を有し、前記加算手段で加算された電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響イメージング装置であって、前記移動手段は、前記機械電気変換素子群が連続移動しながら弾性波を受信すべく、前記機械電気変換素子群を前記配列方向における第1の位置から第2の位置に連続移動させる手段であり、前記加算手段は、前記第1の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記被検体に対して特定位置にある第1の機械電気変換素子が変換した電気信号と、前記第2の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記特定位置にある第2の機械電気変換素子が変換した電気信号と、を加算する手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械電気変換素子群を機械的に走査して広い検査領域の弾性波を受信する場合に、位置決めのための時間を省略しつつ、感度が均一でSN比が高い信号を高速に入力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1の生体情報取得装置の原理を示す図である。
【図2】実施形態1の広い領域の音響波を入力する方法を示す図である。
【図3】実施形態1の機械走査するためのXY移動機構を示す図である。
【図4】実施形態1の生体情報取得装置の動作原理を示す図である(光源と機械電気変換素子群を一体化して移動させた場合)。
【図5】実施形態1に係る発明の効果を説明するための図である。
【図6】実施形態1の生体情報取得装置の動作原理を示す図である(光源を固定し、機械電気変換素子群を移動させた場合)。
【図7】実施形態1の生体情報取得装置の受信信号処理部の具体的な構成を示す図である。
【図8】実施形態1の生体情報取得装置の累積加算処理のフローチャートを示す図である。
【図9】実施形態1の生体情報取得装置の累積加算の時間推移を示す図である(1素子幅移動時)。
【図10】実施形態1の生体情報取得装置の累積加算の時間推移を示す図である(2素子幅移動時)。
【図11】実施形態2の空隙のある機械電気変換素子群の走査を示す図である。
【図12】実施形態2の生体情報取得装置の累積加算の時間推移を示す図である(空隙あり。6素子幅移動)。
【図13】実施形態2の生体情報取得装置の累積加算の時間推移を示す図である(空隙あり。2素子幅移動)。
【図14】実施形態2の空隙部に光源を配置した機械電気変換素子群を示す図である。
【図15】実施形態2の空隙部を接合部とした機械電気変換素子群を示す図である。
【図16】実施形態3のストライプ内の2次元に配列した受信信号を1次元配列で表わす方法を示す図である。
【図17】実施形態3のストライプを移動させながら累積加算する時の時間推移を示す図である。
【図18】実施形態3の空隙のある機械電気変換素子群を用いて累積加算する時の時間推移を示す図である。
【図19】実施形態3の空隙のある機械電気変換素子群の別の例を示す図である。
【図20】実施形態4の超音波エコー画像用の1次元配列送受信素子と光音響イメージング法用の2次元配列機械電気変換素子を組み合わせて構成した配列素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において弾性波とは、音波、超音波、音響波、光音響波と呼ばれるものを含み、例えば、被検体内部に近赤外線等の電磁波である光を照射して被検体内部で発生する音響波や、被検体内部に超音波を送信して反射された超音波を含む。また、被検体から放出された弾性波とは、被検対の少なくともある部分で反射した弾性波や、当該部分で発生した弾性波を含む。すなわち本発明の生体情報取得装置とは、被検体内部に電磁波である光を照射して、被検体内部で発生する音響波を探触子で受信し、被検体内部の組織画像を表示する光音響イメージング装置や、被検体内部に送信され検出対象で反射した超音波を受信し、被検体内部の組織画像を表示する超音波装置を含む。
【0012】
また、本発明において電磁波源としてはレーザが好ましいが、レーザ光のみでなく一般に発光ダイオードやキセノンランプなどから発する電磁波でも、本発明の実施は可能である。
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について説明する。本実施形態に係る生体情報取得装置は、パルスレーザを発生する電磁波源としての光源と、光源からのパルスレーザを被検体中の検出対象に照射することで発生した弾性波としての音響波を受信して電気信号に変換する機械電気変換素子を複数配列してなる機械電気変換素子群とを有する。更に、機械電気変換素子群を機械電気変換素子の配列方向に移動する移動手段と、複数の機械電気変換素子から送信される電気信号を加算する加算手段と、加算手段で加算された加算信号に基づいて被検体内部の像を再構成する(計算する)計算手段と、を有する。
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は音響信号の受信原理を示す図である。図1において、被検体6は圧迫板7a、7bによって上下から挟まれるように固定されている。その被検体6に対し、圧迫板7a上のパルスレーザを発生する電磁波源としての光源8からパルスレーザ光を照射する。その結果、被検体内部のヘモグロビンなどの検出対象がレーザ光のエネルギーを吸収し、この吸収したエネルギー量に応じて検出対象の温度が上昇する。これに起因して検出対象が瞬間的に膨張して音響波を発生する。発生した音響波は下部の圧迫板7bに接して配置された機械電気変換素子群2によって電気信号9に変換され、後段に出力される。なお、光源8は、離れた位置の光源からの光をミラーやグラスファイバーによって導いたものであっても良い。また光源8は本発明の生体情報取得装置と一体として設けられていても良いし、光源8を分離して別体として設けられていても良い。
【0015】
光源8は、検出対象から音響波を効率よく発生させるために、数ナノから数百ナノ秒オーダーのパルスレーザ光を発生可能なパルスレーザ光源であることが望ましい。その際、パルスレーザ光の波長は、400nm以上、1600nm以下の範囲であることが好ましい。更に、生体内において吸収が少ない700nmから1100nmの領域がより好ましい。レーザとしては、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、半導体レーザなど様々なレーザを使用することができる。
【0016】
次に、図2を用いてこの受信原理に従って広い領域3の音響信号を入力する手法について説明する。図2において、機械電気変換素子群2は複数の機械電気変換素子1を2次元格子状に配列したものである。広い検査領域3の音響波の受信は、図2の様に機械電気変換素子群2を一つの方向(X方向)に移動し、一つのストライプ領域4の受信を完了させ、移動方向と直交した方向(Y方向)に移動して位置決めする。そして、再び移動して隣接ストライプ領域5の受信を行うという手順を繰り返すことによって実行できる。このように本発明において、電気音響変換素子群を前記電気音響変換素子の配列方向に移動するとは電気音響変換素子1を2次元格子状に配列した場合にはX方向又はY方向に移動することを意味する。
【0017】
また、本実施形態の機械電気変換素子1は、光源から被検体に照射された光のエネルギーの一部を吸収した被検体内の検出対象13から発生する音響波を検出し、電気信号に変換する必要がある。そのため、機械電気変換素子1の受信可能な周波数帯域は、被検体内にある検出対象の大きさにより最適化されることが望ましい。
【0018】
機械電気変換素子1としては、圧電現象を用いたトランスデューサー、光の共振を用いたトランスデューサー、容量の変化を用いたトランスデューサーなど音響波を検知できるものであれば、どのような検出器を用いてもよい。例えば、様々な大きさの検出対象から発生した音響波を受信する場合には、検出周波数帯の広い容量の変化を用いたトランスデューサーや、検出帯域の異なる複数のトランスデューサーを用いることが好ましい。
【0019】
図3は機械電気変換素子群2と光源8を被検体に沿って機械走査するためのXY移動機構を示す。図3に示す様に、本実施形態の移動はX方向移動機構11a、11bとそれをY方向にステップアンドリピート移動するY方向移動機構12a、12bとの組み合わせで容易に実現できる。光源8は機械電気変換素子群2と独立に移動させてもよいが、通常光源の照明できる範囲は限定されるので、機械電気変換素子群2と一体化して移動させるのが好ましい。
【0020】
図4は光源8と機械電気変換素子群2とを一体化して動かした場合の動作原理を説明した図である。図4において、13は血液中のヘモグロビンなどの検出すべき検出対象、8a、8b、8cと2a、2b、2cはそれぞれt=1、t=3、t=5の各時点での光源と機械電気変換素子群である(簡略のためにt=2、t=4の場合を省略している)。
【0021】
t=1の時、光源8aによって照射された検出対象13は音響波を発生し、被検体の特定位置である点Pの位置に到達した音響波は、第1番目の機械電気変換素子で電気信号9aに変換され一時記憶メモリ14aに記憶される。
【0022】
t=3の時、光源8bによって照射された検出対象の音響波はt=1の時と同じ被検体の特定位置であるPの位置において、第3番目の機械電気変換素子で電気信号9bに変換され一時記憶メモリ14bに記憶される。
【0023】
同様にt=5の時点では特定位置である点Pにおいて第5番目の機械電気変換素子によって電気信号に変換され一時記憶メモリ14cに記憶される。この時、各々記憶された電気信号はレーザ照射後の一定期間の信号であり、AD変換器(不図示)によって1次元ディジタル波形信号に変換されて記憶される。
【0024】
本実施形態では、移動手段はt=1のときに機械電気変換素子群が2aに示す位置となるように、t=3のときに機械電気変換素子群が2bに示す位置となるように、t=5のときに機械電気変換素子群が2cに示す位置となるように機械電気変換素子群を移動する。
【0025】
つまり移動手段は、被検体の特定位置Pにおける音響波を、t=1のときは第1番目の機械電気変換素子で、t=3のときは第3番目の機械電気変換素子で、t=5のときは第5番目の機械電気変換素子で受信するように機械電気変換素子群を移動する。
【0026】
典型的には、本実施形態において移動手段は被検体の特定位置に所定のタイミングで到達する音響波を、異なる機械電気変換素子で受信できるように機械電気変換素子群を移動する。このように移動することで、被検体の特定位置に所定のタイミングで到達する音響波に起因する電気信号を加算することができる。
【0027】
本実施形態の移動手段による機械電気変換素子群の移動は下記の考えに基づくものである。すなわち、機械電気変換素子群を連続移動しながら音響波を受信すると受信位置が音響波受信中に移動してしまうという問題がある。ここで、音響波の受信時間はパルスレーザ光照射後のたかだか50〜100μs程度であり、極めて短時間である。一方、パルスレーザ光照射の周期は生体への損傷を回避するため、通常100ms程度の遅い周期に制限される。したがって、機械電気変換素子は遅い照射周期にあわせて低速で移動せざるをえないので、音響波を連続移動しながら受信しても停止して受信した時と実質的にほとんど差は生じない。このように連続移動しながら受信することによって、機械電気変換素子群の移動時間と位置決めのための時間を省略し、高速な信号入力を可能にすることが出来る。
【0028】
記憶された1次元ディジタル波形信号は適切な時点で並列に読み出され、加算回路15によって1次元波形信号として加算される。このようにすると、同一検出対象13から同一地点Pへ達した複数回の音響信号が加算されることになり、P点での受信信号のSN比を向上させることが出来る。またこの時、被検体上の同一地点Pでみると、図5に示したように加算された音響信号は相対的に異なる位置で照明された音響波信号が加算されたものであり、異なる位置の三つの照明8a、8b、8cを同時に発光した時の音響信号と等価になる。従って、これにより照明の空間的な照度むらが平滑化され、受信信号品質の更なる向上が達成できる。特に、本実施形態の方式の場合には、このような照明の平滑化はストライプ内のいたるところで行われるため、特に問題となる機械電気変換素子群の境界部での照明むらを減少させることが出来る。
【0029】
尚、このような特徴は1次元配列、2次元配列の機械電気変換素子のどちらにおいても、配列方向に移動させることにより実現可能であるが、2次元配列の場合には複数の1次元配列素子があったものとしてそれぞれ並列に処理することにより、高速化の効果がある。
【0030】
また、図4ではt=1からt=5へと変化するに伴い、光源8を8aの位置から8cの位置へ移動した例を示したが、光源8は図6のように特定の位置に固定したままでもよい。しかし、光源8からのパルスレーザ光が照射される範囲は限定されるので、少なくともパルスレーザ光が検出対象に届くように光源8を移動する必要がある。つまり、光源8はパルスレーザ光が検出対象に届くように機械電気変換素子群2と一定の相対位置を保ちながら移動することが好ましい。
【0031】
尚、図4では説明を簡略化するために検出対象13から発生した音響波のうち点Pに到達した音響波について説明した。しかし、実際は検出対象13から発生した音響波は各方向に向けて伝播するため、特定位置であるP点以外の位置においても検出される。
【0032】
以上の内容をまとめると次のようになる。
【0033】
移動手段は、第1のタイミング(例えばt=1)で第1の位置(2a)にある機械電気変換素子群が、第2のタイミング(例えばt=3)で第2の位置(2b)となるように移動する。
【0034】
機械電気変換素子群2は、第1のタイミング(t=1)でパルスレーザを検出対象に照射し、同じく第1のタイミングで検出対象から音響波を、第1の位置(2a)において受信する。更に、機械電気変換素子群2は、第2のタイミング(t=3)でパルスレーザを検出対象に照射し、同じく第2のタイミングで検出対象から発生した音響波を、第2の位置(2b)において受信する。
【0035】
加算手段である加算回路15は、次の電気信号9a、9bを加算する。第1のタイミング(t=1)で受信した音響波のうち、被検体の特定位置(点P)に対応する第1の機械電気変換素子(第1番目の変換素子)で発生した電気信号(9a)。第2のタイミング(t=3)で受信した音響波のうち、特定位置(点P)に対応する第2の機械電気変換素子(第3番目の変換素子)で発生した電気信号(9b)。
【0036】
次に、図7を用いて受信信号処理部の具体的な構成について説明する。図7の右端に全体を制御し、かつ受信信号から画像再構成を行う計算機21があり、左端に被検体6を含む信号入力のための機構部がある。光源8と機械電気変換素子群2はステージ23、24に搭載され、ステージ制御回路22で移動される。この図では機械電気変換素子群2は4×4個の素子配列を具体例として使用している。
【0037】
光源8は、レーザ制御回路25によって機械電気変換素子群2の位置に同期して発光制御され、レーザ発光から一定時間内の音響波信号が4×4個の受信素子から並列に入力される。図7の矢印の移動方向に配列した4個の素子(紙面法線方向の最も奥に位置する4個の素子)からの信号S00、S01、S02、S03は、それぞれ回路ブロック40中のAD変換器27a、27b、27c、27dで1次元のディジタル波形信号に変換される。そして、回転シフト回路28によって選択された一時記憶メモリMa、Mb、Mc、Mdに、加算器29a、29b、29c、29dを使用して波形信号として累積加算される。所定回数の累積加算が終了した一時記憶メモリ中の1次元のディジタル波形信号は、選択回路31、32を介して計算機21に転送される。上記移動方向に配列した4個の素子以外の機械電気変換素子の信号も、それぞれ同様の回路ブロック41、42、43によって並列に処理され、計算機21に時分割で転送される。これらの一連の手順は計算機21より指令を受けたタイミング制御回路26によって制御される。計算機21は転送されたディジタル波形信号を基に受信ストライプに対応する位置の3次元画像を再構成する。
【0038】
図8は、回転シフト回路28と累積加算回路(29aとMa、29bとMb、29cとMc、29dとMd)の具体的動作を、フローチャート形式で示したものである。フローチャートにおいて、各一時記憶メモリMa、Mb、Mc、Mdに対応する処理は全て並列に実行されるので、並列に実行される処理を各ブロック中に並べて表記している。
【0039】
まず、一時記憶メモリMaに対応した処理を順に説明する。フローチャートの各ブロックは、音響波を受信する周期T毎に一つずつ処理される。t=4m*Tの時点では、一時記憶メモリMaは、Maの内容を計算機21に転送するとともにS00の信号を加算処理せずにそのまま入力格納する。t=(4m+1)*Tの時点では、Maの内容にS01信号を1次元波形として加算し、再格納する。t=(4m+2)*Tの時点では、Maの内容にS02信号を1次元波形として加算し、再格納する。t=(4m+3)*Tの時点では、Maの内容にS03信号を1次元波形として加算し、再格納する。t=(4m+3)*Tの処理が終了したら、mをインクリメントして再びt=4m*Tの処理に戻る。このようにすれば、Maには4周期ごとに4個の変換素子信号の加算結果が格納され、その内容が計算機21に転送される。
【0040】
一時記憶メモリMbに対しては、図8のフローチャートに示すように、一時記憶メモリMaに対すると同様な処理がTだけずれたタイミングで実行される。一時記憶メモリMc、Mdについても同様である。すなわち、特定の受信素子から入力される信号は1単位時間Tごとに累積加算メモリMa、Mb、Mc、Md、Ma・・・の順に対応付けられることになる。この時、各信号の累積加算メモリが同一時点で重複することはないので、受信信号の割り当ては前述の様に回転シフト回路28で実現可能である。また、計算機21への転送タイミングも各メモリが順に処理することになるため、時分割での転送が容易に可能となる。
【0041】
図9はこの累積加算の時間推移を、横軸を移動方向の位置、縦軸を入力時刻として示したものである。図では4個の変換素子を配列方向に移動し、1素子の幅だけ移動するごとにレーザ光源を発光して音響信号を入力するようにしている。
【0042】
このように音響信号を入力して被検体の位置ごとに累積加算すると、最下段の数字で示したように最初の部分を除いて4回ずつ信号を加算することができる。4回の信号加算により約2倍のSN比改善が期待できるので、4回加算の部分を入力有効領域として計算機に入力して画像再構成に使用すれば、SN比の改善された三次元画像を作成することが可能になる。
【0043】
図10は累積加算の時間推移の別の例を示す図である。図10では、2素子幅移動するごとに音響信号を入力する時の様子を示している。この場合は2回の信号加算になるので、SN比の改善率は前の例に比べてやや低下するが、ストライプを走査するステージ速度は2倍に改善される。一般に、M個の素子からなる配列素子を移動する場合、Mの約数の一つをdとしてd素子幅移動するごとに音響信号を入力するようにすると、M/d回の加算信号が得られ、ストライプ走査速度はdに比例して速くなる。加算回数の最大はd=1の時のM回加算であり、最小はd=Mの時の1回加算である。また、図9、図10の説明は移動方向に1次元配列した機械電気変換素子を用いて説明したが、移動方向と直交した方向にN個の素子配列のある2次元配列素子の場合には、前述のごとくN組の処理を並列に行う。
【0044】
本実施形態に係る本発明によれば、機械電気変換素子群を機械的に走査して広い検査領域の音響信号を入力する生体情報取得装置において、感度が均一でSN比が高い信号を高速に入力することが可能となる。
【0045】
また本発明においては、被検体内に電磁波を照射して発生した音響波を受信するだけでなく、被検体に超音波を送信して検出対象で反射した超音波を受信することもできる。例えば図6において、光源8を超音波音源に置き換えても、検出対象13に反射して点Pに達する超音波波形は常に同一となる。そのため同じ点Pで受信した、異なる受信素子の信号を加算することができ、本発明の主旨を実施することができる。超音波音源は被検体に固定されていればどの位置にあってもよい。超音波音源は単一であっても良いし、複数の超音波音源から構成されていても良い。
【0046】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2では、実施形態1とは異なる機械電気変換素子群を用いている。それ以外については実施形態1の場合と同様である。
【0047】
本実施形態に係る機械電気変換素子群51は、図11に示すように移動方向に6個の機械電気変換素子52を、2素子幅の2個の空隙53を挟んで配列している。図12はこの機械電気変換素子群を用いて6素子幅移動するごとに音響信号を入力した時の時間的推移を示したものである。図12で示したように、この場合には空隙53のある機械電気変換素子群51を使用しているにもかかわらず、連続した位置で1回加算された音響信号の入力が可能である。本実施形態の機械電気変換素子群は、典型的には配列の内部に機械電気変換素子の配列ピッチの整数倍の寸法の空隙を設けたものである。
【0048】
図13は図11と同じ機械電気変換素子群51を用いて2素子幅移動するごとに音響信号を入力した場合の時間的推移である。この場合にはそれぞれ3回の音響信号加算が可能になる。このように、機械電気変換素子群内に空隙があっても空隙の無い機械電気変換素子群と同様の信号入力が可能になる。よって、例えば図14の様に、機械電気変換素子54の間の空隙部55に光源部56を配置することで、配列した機械電気変換素子側からパルスレーザ光を照明することも容易になる。光音響イメージング法では被検体内部での光強度減衰が大きいので、配列した機械電気変換素子側からのパルスレーザ光の照明は、再構成画像の品質向上に極めて有効である。
【0049】
さらに、素子数の多い大きな機械電気変換素子群を製造する場合には、製造が容易な小さい機械電気変換素子群を複数接合することで大きな機械電気変換素子群を形成する方法がとられる。この場合にも図15の様に小さい機械電気変換素子群の境界部57を上記のような空隙部として構成すれば、境界部の寸法を大きくすることが出来て製造が容易になるという利点がある。
【0050】
本実施形態によれば、以上に説明したごとく、機械電気変換素子の配列と音響信号入力とのタイミングを工夫することによって、いろいろな入力方法が可能である。通常、音響信号入力の繰返し周期は被検体の損傷を回避するために一定周期以下に制限される場合が多い。そのため、高速入力が必要な場合には移動速度を速くして加算回数を減らす方法を選び、高品質信号入力が必要な場合には移動速度を遅くして加算回数を増やす方法を選ぶことになる。
【0051】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態3では、機械電気変換素子群の移動方向における加算処理以外に、機械電気変換素子群の移動方向と直交する方向における加算処理も実施している。それ以外については上記実施形態1、実施形態2と同様である。
【0052】
移動方向にM個、移動方向と直交する方向にN個が配列された機械電気変換素子群を用いて音響信号入力を行うと、一回の移動が終了した時点ではN個の幅のストライプ長に相当する個数の信号波形が計算機に入力される。次に、隣接ストライプを一部領域を重複させて設定し、同様に連続移動によって音響波信号を入力して計算機に取り込めば、計算機上で重複領域のデータの加算が可能になる。
【0053】
図16を用いて説明すると、図16のように入力信号波形を移動方向に纏めて各々一つの小さな矩形領域で表現すると、ストライプ4の音響波データ58は縦方向に連続したN個(図16の場合は4個)の小矩形59で表わすことが出来る。図17はこの表現を用いて加算処理の時間的推移を図示したものである。図17では、N=4の2次元配列素子を用いて、1素子の縦幅ずつストライプ位置をずらしながら信号入力した場合の例である。この場合でも計算機を用いれば前述の連続移動の場合と同様に4回の移動加算が可能になる。
【0054】
図18(a)は、移動方向に直交する方向(ストライプ移動方向)の機械電気変換素子領域61に空隙領域62のある機械電気変換素子群60を用いた場合の例を示したものである。この場合も移動方向の場合と同様に、図18(b)のようにストライプ位置を2素子分の縦幅ずつずらすことによって、3回の累積加算が可能になる。
【0055】
図19は移動方向と直交方向(ストライプ移動方向)の両方の機械電気変換素子領域63に空隙64を設けた機械電気変換素子群65の例である。このような機械電気変換素子群65であっても、上で述べた理由から位置的に密な信号入力や加算入力を実行することが出来る。
【0056】
このように2次元配列機械電気変換素子を用いて移動方向だけでなく直交方向(ストライプ移動方向)にも累積加算するようにすると、加算信号の数が多くなるのでSN比が改善する。照明むらも2次元的に平滑化することが出来るので、更に品質の良い画像再構成が可能になる。
【0057】
入力信号に対する画像再構成処理は線形、又は線形に近い処理となる場合が多いので、入力信号を直接加算するのではなく、再構成後の3次元ボクセル画像を加算するようにしても等価な効果が得られる。この場合、ストライプ領域の音響信号を入力しながらストライプ領域の画像再構成を行うことができるので、隣接ストライプの入力を待つための無駄時間を少なくすることができる。
【0058】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4について説明する。実施形態4では超音波エコー信号用の1次元配列送受信素子(第2の機械電気変換素子群)と電磁波を照射して発生する音響波を受信する機械電気変換素子群(第1の機械電気変換素子群)を一体化している。本実施形態は、超音波エコー画像と光音響画像とを同時に生成する診断装置に対しても有効である。その他の点については他の実施形態と同様である。
【0059】
光音響イメージング法においては光音響画像分解能の等方性を実現するために2次元配列の機械電気変換素子を用いることが望ましい。超音波エコー画像でも同様に2次元配列超音波送受信素子を用いることが望ましいが、超音波の周波数が相対的に高いため小さい送受信素子を多数用いる必要があり、2次元配列は信号処理回路の大型化とコスト増大の問題がある。そのため、多くの実用的な装置では1次元配列の送受信素子を連続移動しながら3次元超音波エコー信号を入力している。よって、図20のように超音波エコー信号用の1次元配列送受信素子71と機械電気変換素子が2次元配列した機械電気変換素子群72とを一体化構造73にして連続移動することで、高品質の光音響画像と超音波エコー画像を同時に再構成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 機械電気変換素子
2、2a、2b、2c 機械電気変換素子群
6 被検体
8、8a、8b、8c 光源
9、9a、9b、9c 電気信号
13 音響波を発生する検出対象
14a、14b、14c 一時記憶メモリ
15 加算回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から発生した弾性波を画像化する光音響イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報取得方法である光音響イメージング法は、パルスレーザ光を生体に照射することで生体内部に誘起される音響波を検出して、生体内部の3次元構造を画像化する方法である。この音響波は、生体中の検出対象にパルスレーザ光が照射され、生体内部の検出対象が熱膨張することで発生する。また、このパルスレーザ光の波長を変化させることによって、血液中のヘモグロビンやグルコースなど、その波長を吸収帯とする特定物質の分布を映像化できる。そのため、非侵襲で異常新生血管などの潜在的腫瘍を判定することができるため、近年、乳がんのスクリーニングや早期発見の手段として注目されている。
【0003】
従来、光音響イメージング法の具体的な手順は、例えば特許文献1において次のように開示されている。
(1)被検体表面に2次元配列機械電気変換素子(トランスデューサ)を位置決めし、被検体に単パルスの電磁エネルギーを照射する。
(2)電磁エネルギーの照射直後から、各機械電気変換素子の受信信号をサンプリングして記憶する。
(3)映像化する被検体内の点r’について、音響波が点r’から各機械電気変換素子iの位置rに達する遅れ時間を計算し、遅れ時間に対応する各機械電気変換素子の信号を加算して点r’の画像値とする。
(4)画像化する各点r’についてステップ(3)を繰り返す。
【0004】
また、特許文献2には、光音響画像と通常の超音波エコー画像の双方を、共通の一次元配列機械電気変換素子を用いて再構成する方法、及び一次元配列機械電気変換素子の間にグラスファイバーを用いた照明系を配置する構成が開示されている。この特許文献2では、一次元配列機械電気変換素子を用いているので、三次元画像を再構成するためには、一次元配列機械電気変換素子を配列方向と直交する方向に機械的に移動して再構成を繰り返すことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−507952号公報
【特許文献2】特開2005−21380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光音響イメージング法を用いて三次元画像を再構成するためには、画像分解能の方向依存性を少なくするために2次元配列機械電気変換素子を使用することが望ましい。2次元配列機械電気変換素子の使用を前提として広い領域の光音響画像を得る方法としては、次の方法が考えられる。(1)広い領域全面に機械電気変換素子を配列する方法。(2)比較的小規模な機械電気変換素子群(機械電気変換素子を配列したもの)をステップアンドリピート式に位置決めして機械走査する方法。しかし、(1)の方法には受信システムが大規模化してコスト的に実用化が困難と言う問題がある。また、(2)の方法には2次元配列機械電気変換素子の中央部分と端部分とで感度上の不均一さが生じてしまうと言う問題がある。また、ステップアンドリピート式に次々と次の位置へ位置決めする時間が無駄になるという問題がある。
【0007】
よって本発明は、機械電気変換素子群を機械的に走査して広い検査領域の弾性波を受信する場合に、位置決めのための時間を省略しつつ、感度が均一でSN比が高い信号を高速に入力することが可能な光音響イメージング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み本発明の光音響イメージング装置は、電磁波が被検体中の検出対象に照射されることで発生した弾性波を受信して電気信号に変換する機械電気変換素子が複数配列された機械電気変換素子群と、前記機械電気変換素子群を前記複数の機械電気変換素子の配列方向に移動させる移動手段と、前記複数の機械電気変換素子のうち少なくとも2つ以上の機械電気変換素子から送信される電気信号を加算する加算手段と、を有し、前記加算手段で加算された電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響イメージング装置であって、前記移動手段は、前記機械電気変換素子群が連続移動しながら弾性波を受信すべく、前記機械電気変換素子群を前記配列方向における第1の位置から第2の位置に連続移動させる手段であり、前記加算手段は、前記第1の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記被検体に対して特定位置にある第1の機械電気変換素子が変換した電気信号と、前記第2の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記特定位置にある第2の機械電気変換素子が変換した電気信号と、を加算する手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械電気変換素子群を機械的に走査して広い検査領域の弾性波を受信する場合に、位置決めのための時間を省略しつつ、感度が均一でSN比が高い信号を高速に入力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1の生体情報取得装置の原理を示す図である。
【図2】実施形態1の広い領域の音響波を入力する方法を示す図である。
【図3】実施形態1の機械走査するためのXY移動機構を示す図である。
【図4】実施形態1の生体情報取得装置の動作原理を示す図である(光源と機械電気変換素子群を一体化して移動させた場合)。
【図5】実施形態1に係る発明の効果を説明するための図である。
【図6】実施形態1の生体情報取得装置の動作原理を示す図である(光源を固定し、機械電気変換素子群を移動させた場合)。
【図7】実施形態1の生体情報取得装置の受信信号処理部の具体的な構成を示す図である。
【図8】実施形態1の生体情報取得装置の累積加算処理のフローチャートを示す図である。
【図9】実施形態1の生体情報取得装置の累積加算の時間推移を示す図である(1素子幅移動時)。
【図10】実施形態1の生体情報取得装置の累積加算の時間推移を示す図である(2素子幅移動時)。
【図11】実施形態2の空隙のある機械電気変換素子群の走査を示す図である。
【図12】実施形態2の生体情報取得装置の累積加算の時間推移を示す図である(空隙あり。6素子幅移動)。
【図13】実施形態2の生体情報取得装置の累積加算の時間推移を示す図である(空隙あり。2素子幅移動)。
【図14】実施形態2の空隙部に光源を配置した機械電気変換素子群を示す図である。
【図15】実施形態2の空隙部を接合部とした機械電気変換素子群を示す図である。
【図16】実施形態3のストライプ内の2次元に配列した受信信号を1次元配列で表わす方法を示す図である。
【図17】実施形態3のストライプを移動させながら累積加算する時の時間推移を示す図である。
【図18】実施形態3の空隙のある機械電気変換素子群を用いて累積加算する時の時間推移を示す図である。
【図19】実施形態3の空隙のある機械電気変換素子群の別の例を示す図である。
【図20】実施形態4の超音波エコー画像用の1次元配列送受信素子と光音響イメージング法用の2次元配列機械電気変換素子を組み合わせて構成した配列素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において弾性波とは、音波、超音波、音響波、光音響波と呼ばれるものを含み、例えば、被検体内部に近赤外線等の電磁波である光を照射して被検体内部で発生する音響波や、被検体内部に超音波を送信して反射された超音波を含む。また、被検体から放出された弾性波とは、被検対の少なくともある部分で反射した弾性波や、当該部分で発生した弾性波を含む。すなわち本発明の生体情報取得装置とは、被検体内部に電磁波である光を照射して、被検体内部で発生する音響波を探触子で受信し、被検体内部の組織画像を表示する光音響イメージング装置や、被検体内部に送信され検出対象で反射した超音波を受信し、被検体内部の組織画像を表示する超音波装置を含む。
【0012】
また、本発明において電磁波源としてはレーザが好ましいが、レーザ光のみでなく一般に発光ダイオードやキセノンランプなどから発する電磁波でも、本発明の実施は可能である。
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について説明する。本実施形態に係る生体情報取得装置は、パルスレーザを発生する電磁波源としての光源と、光源からのパルスレーザを被検体中の検出対象に照射することで発生した弾性波としての音響波を受信して電気信号に変換する機械電気変換素子を複数配列してなる機械電気変換素子群とを有する。更に、機械電気変換素子群を機械電気変換素子の配列方向に移動する移動手段と、複数の機械電気変換素子から送信される電気信号を加算する加算手段と、加算手段で加算された加算信号に基づいて被検体内部の像を再構成する(計算する)計算手段と、を有する。
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は音響信号の受信原理を示す図である。図1において、被検体6は圧迫板7a、7bによって上下から挟まれるように固定されている。その被検体6に対し、圧迫板7a上のパルスレーザを発生する電磁波源としての光源8からパルスレーザ光を照射する。その結果、被検体内部のヘモグロビンなどの検出対象がレーザ光のエネルギーを吸収し、この吸収したエネルギー量に応じて検出対象の温度が上昇する。これに起因して検出対象が瞬間的に膨張して音響波を発生する。発生した音響波は下部の圧迫板7bに接して配置された機械電気変換素子群2によって電気信号9に変換され、後段に出力される。なお、光源8は、離れた位置の光源からの光をミラーやグラスファイバーによって導いたものであっても良い。また光源8は本発明の生体情報取得装置と一体として設けられていても良いし、光源8を分離して別体として設けられていても良い。
【0015】
光源8は、検出対象から音響波を効率よく発生させるために、数ナノから数百ナノ秒オーダーのパルスレーザ光を発生可能なパルスレーザ光源であることが望ましい。その際、パルスレーザ光の波長は、400nm以上、1600nm以下の範囲であることが好ましい。更に、生体内において吸収が少ない700nmから1100nmの領域がより好ましい。レーザとしては、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、半導体レーザなど様々なレーザを使用することができる。
【0016】
次に、図2を用いてこの受信原理に従って広い領域3の音響信号を入力する手法について説明する。図2において、機械電気変換素子群2は複数の機械電気変換素子1を2次元格子状に配列したものである。広い検査領域3の音響波の受信は、図2の様に機械電気変換素子群2を一つの方向(X方向)に移動し、一つのストライプ領域4の受信を完了させ、移動方向と直交した方向(Y方向)に移動して位置決めする。そして、再び移動して隣接ストライプ領域5の受信を行うという手順を繰り返すことによって実行できる。このように本発明において、電気音響変換素子群を前記電気音響変換素子の配列方向に移動するとは電気音響変換素子1を2次元格子状に配列した場合にはX方向又はY方向に移動することを意味する。
【0017】
また、本実施形態の機械電気変換素子1は、光源から被検体に照射された光のエネルギーの一部を吸収した被検体内の検出対象13から発生する音響波を検出し、電気信号に変換する必要がある。そのため、機械電気変換素子1の受信可能な周波数帯域は、被検体内にある検出対象の大きさにより最適化されることが望ましい。
【0018】
機械電気変換素子1としては、圧電現象を用いたトランスデューサー、光の共振を用いたトランスデューサー、容量の変化を用いたトランスデューサーなど音響波を検知できるものであれば、どのような検出器を用いてもよい。例えば、様々な大きさの検出対象から発生した音響波を受信する場合には、検出周波数帯の広い容量の変化を用いたトランスデューサーや、検出帯域の異なる複数のトランスデューサーを用いることが好ましい。
【0019】
図3は機械電気変換素子群2と光源8を被検体に沿って機械走査するためのXY移動機構を示す。図3に示す様に、本実施形態の移動はX方向移動機構11a、11bとそれをY方向にステップアンドリピート移動するY方向移動機構12a、12bとの組み合わせで容易に実現できる。光源8は機械電気変換素子群2と独立に移動させてもよいが、通常光源の照明できる範囲は限定されるので、機械電気変換素子群2と一体化して移動させるのが好ましい。
【0020】
図4は光源8と機械電気変換素子群2とを一体化して動かした場合の動作原理を説明した図である。図4において、13は血液中のヘモグロビンなどの検出すべき検出対象、8a、8b、8cと2a、2b、2cはそれぞれt=1、t=3、t=5の各時点での光源と機械電気変換素子群である(簡略のためにt=2、t=4の場合を省略している)。
【0021】
t=1の時、光源8aによって照射された検出対象13は音響波を発生し、被検体の特定位置である点Pの位置に到達した音響波は、第1番目の機械電気変換素子で電気信号9aに変換され一時記憶メモリ14aに記憶される。
【0022】
t=3の時、光源8bによって照射された検出対象の音響波はt=1の時と同じ被検体の特定位置であるPの位置において、第3番目の機械電気変換素子で電気信号9bに変換され一時記憶メモリ14bに記憶される。
【0023】
同様にt=5の時点では特定位置である点Pにおいて第5番目の機械電気変換素子によって電気信号に変換され一時記憶メモリ14cに記憶される。この時、各々記憶された電気信号はレーザ照射後の一定期間の信号であり、AD変換器(不図示)によって1次元ディジタル波形信号に変換されて記憶される。
【0024】
本実施形態では、移動手段はt=1のときに機械電気変換素子群が2aに示す位置となるように、t=3のときに機械電気変換素子群が2bに示す位置となるように、t=5のときに機械電気変換素子群が2cに示す位置となるように機械電気変換素子群を移動する。
【0025】
つまり移動手段は、被検体の特定位置Pにおける音響波を、t=1のときは第1番目の機械電気変換素子で、t=3のときは第3番目の機械電気変換素子で、t=5のときは第5番目の機械電気変換素子で受信するように機械電気変換素子群を移動する。
【0026】
典型的には、本実施形態において移動手段は被検体の特定位置に所定のタイミングで到達する音響波を、異なる機械電気変換素子で受信できるように機械電気変換素子群を移動する。このように移動することで、被検体の特定位置に所定のタイミングで到達する音響波に起因する電気信号を加算することができる。
【0027】
本実施形態の移動手段による機械電気変換素子群の移動は下記の考えに基づくものである。すなわち、機械電気変換素子群を連続移動しながら音響波を受信すると受信位置が音響波受信中に移動してしまうという問題がある。ここで、音響波の受信時間はパルスレーザ光照射後のたかだか50〜100μs程度であり、極めて短時間である。一方、パルスレーザ光照射の周期は生体への損傷を回避するため、通常100ms程度の遅い周期に制限される。したがって、機械電気変換素子は遅い照射周期にあわせて低速で移動せざるをえないので、音響波を連続移動しながら受信しても停止して受信した時と実質的にほとんど差は生じない。このように連続移動しながら受信することによって、機械電気変換素子群の移動時間と位置決めのための時間を省略し、高速な信号入力を可能にすることが出来る。
【0028】
記憶された1次元ディジタル波形信号は適切な時点で並列に読み出され、加算回路15によって1次元波形信号として加算される。このようにすると、同一検出対象13から同一地点Pへ達した複数回の音響信号が加算されることになり、P点での受信信号のSN比を向上させることが出来る。またこの時、被検体上の同一地点Pでみると、図5に示したように加算された音響信号は相対的に異なる位置で照明された音響波信号が加算されたものであり、異なる位置の三つの照明8a、8b、8cを同時に発光した時の音響信号と等価になる。従って、これにより照明の空間的な照度むらが平滑化され、受信信号品質の更なる向上が達成できる。特に、本実施形態の方式の場合には、このような照明の平滑化はストライプ内のいたるところで行われるため、特に問題となる機械電気変換素子群の境界部での照明むらを減少させることが出来る。
【0029】
尚、このような特徴は1次元配列、2次元配列の機械電気変換素子のどちらにおいても、配列方向に移動させることにより実現可能であるが、2次元配列の場合には複数の1次元配列素子があったものとしてそれぞれ並列に処理することにより、高速化の効果がある。
【0030】
また、図4ではt=1からt=5へと変化するに伴い、光源8を8aの位置から8cの位置へ移動した例を示したが、光源8は図6のように特定の位置に固定したままでもよい。しかし、光源8からのパルスレーザ光が照射される範囲は限定されるので、少なくともパルスレーザ光が検出対象に届くように光源8を移動する必要がある。つまり、光源8はパルスレーザ光が検出対象に届くように機械電気変換素子群2と一定の相対位置を保ちながら移動することが好ましい。
【0031】
尚、図4では説明を簡略化するために検出対象13から発生した音響波のうち点Pに到達した音響波について説明した。しかし、実際は検出対象13から発生した音響波は各方向に向けて伝播するため、特定位置であるP点以外の位置においても検出される。
【0032】
以上の内容をまとめると次のようになる。
【0033】
移動手段は、第1のタイミング(例えばt=1)で第1の位置(2a)にある機械電気変換素子群が、第2のタイミング(例えばt=3)で第2の位置(2b)となるように移動する。
【0034】
機械電気変換素子群2は、第1のタイミング(t=1)でパルスレーザを検出対象に照射し、同じく第1のタイミングで検出対象から音響波を、第1の位置(2a)において受信する。更に、機械電気変換素子群2は、第2のタイミング(t=3)でパルスレーザを検出対象に照射し、同じく第2のタイミングで検出対象から発生した音響波を、第2の位置(2b)において受信する。
【0035】
加算手段である加算回路15は、次の電気信号9a、9bを加算する。第1のタイミング(t=1)で受信した音響波のうち、被検体の特定位置(点P)に対応する第1の機械電気変換素子(第1番目の変換素子)で発生した電気信号(9a)。第2のタイミング(t=3)で受信した音響波のうち、特定位置(点P)に対応する第2の機械電気変換素子(第3番目の変換素子)で発生した電気信号(9b)。
【0036】
次に、図7を用いて受信信号処理部の具体的な構成について説明する。図7の右端に全体を制御し、かつ受信信号から画像再構成を行う計算機21があり、左端に被検体6を含む信号入力のための機構部がある。光源8と機械電気変換素子群2はステージ23、24に搭載され、ステージ制御回路22で移動される。この図では機械電気変換素子群2は4×4個の素子配列を具体例として使用している。
【0037】
光源8は、レーザ制御回路25によって機械電気変換素子群2の位置に同期して発光制御され、レーザ発光から一定時間内の音響波信号が4×4個の受信素子から並列に入力される。図7の矢印の移動方向に配列した4個の素子(紙面法線方向の最も奥に位置する4個の素子)からの信号S00、S01、S02、S03は、それぞれ回路ブロック40中のAD変換器27a、27b、27c、27dで1次元のディジタル波形信号に変換される。そして、回転シフト回路28によって選択された一時記憶メモリMa、Mb、Mc、Mdに、加算器29a、29b、29c、29dを使用して波形信号として累積加算される。所定回数の累積加算が終了した一時記憶メモリ中の1次元のディジタル波形信号は、選択回路31、32を介して計算機21に転送される。上記移動方向に配列した4個の素子以外の機械電気変換素子の信号も、それぞれ同様の回路ブロック41、42、43によって並列に処理され、計算機21に時分割で転送される。これらの一連の手順は計算機21より指令を受けたタイミング制御回路26によって制御される。計算機21は転送されたディジタル波形信号を基に受信ストライプに対応する位置の3次元画像を再構成する。
【0038】
図8は、回転シフト回路28と累積加算回路(29aとMa、29bとMb、29cとMc、29dとMd)の具体的動作を、フローチャート形式で示したものである。フローチャートにおいて、各一時記憶メモリMa、Mb、Mc、Mdに対応する処理は全て並列に実行されるので、並列に実行される処理を各ブロック中に並べて表記している。
【0039】
まず、一時記憶メモリMaに対応した処理を順に説明する。フローチャートの各ブロックは、音響波を受信する周期T毎に一つずつ処理される。t=4m*Tの時点では、一時記憶メモリMaは、Maの内容を計算機21に転送するとともにS00の信号を加算処理せずにそのまま入力格納する。t=(4m+1)*Tの時点では、Maの内容にS01信号を1次元波形として加算し、再格納する。t=(4m+2)*Tの時点では、Maの内容にS02信号を1次元波形として加算し、再格納する。t=(4m+3)*Tの時点では、Maの内容にS03信号を1次元波形として加算し、再格納する。t=(4m+3)*Tの処理が終了したら、mをインクリメントして再びt=4m*Tの処理に戻る。このようにすれば、Maには4周期ごとに4個の変換素子信号の加算結果が格納され、その内容が計算機21に転送される。
【0040】
一時記憶メモリMbに対しては、図8のフローチャートに示すように、一時記憶メモリMaに対すると同様な処理がTだけずれたタイミングで実行される。一時記憶メモリMc、Mdについても同様である。すなわち、特定の受信素子から入力される信号は1単位時間Tごとに累積加算メモリMa、Mb、Mc、Md、Ma・・・の順に対応付けられることになる。この時、各信号の累積加算メモリが同一時点で重複することはないので、受信信号の割り当ては前述の様に回転シフト回路28で実現可能である。また、計算機21への転送タイミングも各メモリが順に処理することになるため、時分割での転送が容易に可能となる。
【0041】
図9はこの累積加算の時間推移を、横軸を移動方向の位置、縦軸を入力時刻として示したものである。図では4個の変換素子を配列方向に移動し、1素子の幅だけ移動するごとにレーザ光源を発光して音響信号を入力するようにしている。
【0042】
このように音響信号を入力して被検体の位置ごとに累積加算すると、最下段の数字で示したように最初の部分を除いて4回ずつ信号を加算することができる。4回の信号加算により約2倍のSN比改善が期待できるので、4回加算の部分を入力有効領域として計算機に入力して画像再構成に使用すれば、SN比の改善された三次元画像を作成することが可能になる。
【0043】
図10は累積加算の時間推移の別の例を示す図である。図10では、2素子幅移動するごとに音響信号を入力する時の様子を示している。この場合は2回の信号加算になるので、SN比の改善率は前の例に比べてやや低下するが、ストライプを走査するステージ速度は2倍に改善される。一般に、M個の素子からなる配列素子を移動する場合、Mの約数の一つをdとしてd素子幅移動するごとに音響信号を入力するようにすると、M/d回の加算信号が得られ、ストライプ走査速度はdに比例して速くなる。加算回数の最大はd=1の時のM回加算であり、最小はd=Mの時の1回加算である。また、図9、図10の説明は移動方向に1次元配列した機械電気変換素子を用いて説明したが、移動方向と直交した方向にN個の素子配列のある2次元配列素子の場合には、前述のごとくN組の処理を並列に行う。
【0044】
本実施形態に係る本発明によれば、機械電気変換素子群を機械的に走査して広い検査領域の音響信号を入力する生体情報取得装置において、感度が均一でSN比が高い信号を高速に入力することが可能となる。
【0045】
また本発明においては、被検体内に電磁波を照射して発生した音響波を受信するだけでなく、被検体に超音波を送信して検出対象で反射した超音波を受信することもできる。例えば図6において、光源8を超音波音源に置き換えても、検出対象13に反射して点Pに達する超音波波形は常に同一となる。そのため同じ点Pで受信した、異なる受信素子の信号を加算することができ、本発明の主旨を実施することができる。超音波音源は被検体に固定されていればどの位置にあってもよい。超音波音源は単一であっても良いし、複数の超音波音源から構成されていても良い。
【0046】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2では、実施形態1とは異なる機械電気変換素子群を用いている。それ以外については実施形態1の場合と同様である。
【0047】
本実施形態に係る機械電気変換素子群51は、図11に示すように移動方向に6個の機械電気変換素子52を、2素子幅の2個の空隙53を挟んで配列している。図12はこの機械電気変換素子群を用いて6素子幅移動するごとに音響信号を入力した時の時間的推移を示したものである。図12で示したように、この場合には空隙53のある機械電気変換素子群51を使用しているにもかかわらず、連続した位置で1回加算された音響信号の入力が可能である。本実施形態の機械電気変換素子群は、典型的には配列の内部に機械電気変換素子の配列ピッチの整数倍の寸法の空隙を設けたものである。
【0048】
図13は図11と同じ機械電気変換素子群51を用いて2素子幅移動するごとに音響信号を入力した場合の時間的推移である。この場合にはそれぞれ3回の音響信号加算が可能になる。このように、機械電気変換素子群内に空隙があっても空隙の無い機械電気変換素子群と同様の信号入力が可能になる。よって、例えば図14の様に、機械電気変換素子54の間の空隙部55に光源部56を配置することで、配列した機械電気変換素子側からパルスレーザ光を照明することも容易になる。光音響イメージング法では被検体内部での光強度減衰が大きいので、配列した機械電気変換素子側からのパルスレーザ光の照明は、再構成画像の品質向上に極めて有効である。
【0049】
さらに、素子数の多い大きな機械電気変換素子群を製造する場合には、製造が容易な小さい機械電気変換素子群を複数接合することで大きな機械電気変換素子群を形成する方法がとられる。この場合にも図15の様に小さい機械電気変換素子群の境界部57を上記のような空隙部として構成すれば、境界部の寸法を大きくすることが出来て製造が容易になるという利点がある。
【0050】
本実施形態によれば、以上に説明したごとく、機械電気変換素子の配列と音響信号入力とのタイミングを工夫することによって、いろいろな入力方法が可能である。通常、音響信号入力の繰返し周期は被検体の損傷を回避するために一定周期以下に制限される場合が多い。そのため、高速入力が必要な場合には移動速度を速くして加算回数を減らす方法を選び、高品質信号入力が必要な場合には移動速度を遅くして加算回数を増やす方法を選ぶことになる。
【0051】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態3では、機械電気変換素子群の移動方向における加算処理以外に、機械電気変換素子群の移動方向と直交する方向における加算処理も実施している。それ以外については上記実施形態1、実施形態2と同様である。
【0052】
移動方向にM個、移動方向と直交する方向にN個が配列された機械電気変換素子群を用いて音響信号入力を行うと、一回の移動が終了した時点ではN個の幅のストライプ長に相当する個数の信号波形が計算機に入力される。次に、隣接ストライプを一部領域を重複させて設定し、同様に連続移動によって音響波信号を入力して計算機に取り込めば、計算機上で重複領域のデータの加算が可能になる。
【0053】
図16を用いて説明すると、図16のように入力信号波形を移動方向に纏めて各々一つの小さな矩形領域で表現すると、ストライプ4の音響波データ58は縦方向に連続したN個(図16の場合は4個)の小矩形59で表わすことが出来る。図17はこの表現を用いて加算処理の時間的推移を図示したものである。図17では、N=4の2次元配列素子を用いて、1素子の縦幅ずつストライプ位置をずらしながら信号入力した場合の例である。この場合でも計算機を用いれば前述の連続移動の場合と同様に4回の移動加算が可能になる。
【0054】
図18(a)は、移動方向に直交する方向(ストライプ移動方向)の機械電気変換素子領域61に空隙領域62のある機械電気変換素子群60を用いた場合の例を示したものである。この場合も移動方向の場合と同様に、図18(b)のようにストライプ位置を2素子分の縦幅ずつずらすことによって、3回の累積加算が可能になる。
【0055】
図19は移動方向と直交方向(ストライプ移動方向)の両方の機械電気変換素子領域63に空隙64を設けた機械電気変換素子群65の例である。このような機械電気変換素子群65であっても、上で述べた理由から位置的に密な信号入力や加算入力を実行することが出来る。
【0056】
このように2次元配列機械電気変換素子を用いて移動方向だけでなく直交方向(ストライプ移動方向)にも累積加算するようにすると、加算信号の数が多くなるのでSN比が改善する。照明むらも2次元的に平滑化することが出来るので、更に品質の良い画像再構成が可能になる。
【0057】
入力信号に対する画像再構成処理は線形、又は線形に近い処理となる場合が多いので、入力信号を直接加算するのではなく、再構成後の3次元ボクセル画像を加算するようにしても等価な効果が得られる。この場合、ストライプ領域の音響信号を入力しながらストライプ領域の画像再構成を行うことができるので、隣接ストライプの入力を待つための無駄時間を少なくすることができる。
【0058】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4について説明する。実施形態4では超音波エコー信号用の1次元配列送受信素子(第2の機械電気変換素子群)と電磁波を照射して発生する音響波を受信する機械電気変換素子群(第1の機械電気変換素子群)を一体化している。本実施形態は、超音波エコー画像と光音響画像とを同時に生成する診断装置に対しても有効である。その他の点については他の実施形態と同様である。
【0059】
光音響イメージング法においては光音響画像分解能の等方性を実現するために2次元配列の機械電気変換素子を用いることが望ましい。超音波エコー画像でも同様に2次元配列超音波送受信素子を用いることが望ましいが、超音波の周波数が相対的に高いため小さい送受信素子を多数用いる必要があり、2次元配列は信号処理回路の大型化とコスト増大の問題がある。そのため、多くの実用的な装置では1次元配列の送受信素子を連続移動しながら3次元超音波エコー信号を入力している。よって、図20のように超音波エコー信号用の1次元配列送受信素子71と機械電気変換素子が2次元配列した機械電気変換素子群72とを一体化構造73にして連続移動することで、高品質の光音響画像と超音波エコー画像を同時に再構成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 機械電気変換素子
2、2a、2b、2c 機械電気変換素子群
6 被検体
8、8a、8b、8c 光源
9、9a、9b、9c 電気信号
13 音響波を発生する検出対象
14a、14b、14c 一時記憶メモリ
15 加算回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波が被検体中の検出対象に照射されることで発生した弾性波を受信して電気信号に変換する機械電気変換素子が複数配列された機械電気変換素子群と、
前記機械電気変換素子群を前記複数の機械電気変換素子の配列方向に移動させる移動手段と、
前記複数の機械電気変換素子のうち少なくとも2つ以上の機械電気変換素子から送信される電気信号を加算する加算手段と、を有し、
前記加算手段で加算された電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響イメージング装置であって、
前記移動手段は、前記機械電気変換素子群が連続移動しながら弾性波を受信すべく、前記機械電気変換素子群を前記配列方向における第1の位置から第2の位置に連続移動させる手段であり、
前記加算手段は、
前記第1の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記被検体に対して特定位置にある第1の機械電気変換素子が変換した電気信号と、
前記第2の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記特定位置にある第2の機械電気変換素子が変換した電気信号と、を加算する手段であることを特徴とする光音響イメージング装置。
【請求項2】
前記加算手段で加算される電気信号は、ディジタル変換された電気信号であることを特徴とする請求項1に記載の光音響イメージング装置。
【請求項3】
前記機械電気変換素子群の機械電気変換素子が2次元格子状に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光音響イメージング装置。
【請求項4】
前記機械電気変換素子群の連続移動する方向と直交する方向においても、異なる機械電気変換素子が前記特定位置において弾性波を受信し変換した電気信号を前記加算手段で加算することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光音響イメージング装置。
【請求項5】
前記光音響イメージング装置は電磁波を発生する電磁波源を有し、前記電磁波源が前記被検体へ照明する範囲が前記機械電気変換素子群と一定の相対位置を保ちながら移動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光音響イメージング装置。
【請求項6】
前記機械電気変換素子群は、配列の内部に機械電気変換素子の配列ピッチの整数倍の寸法の空隙が設けられており、前記移動手段は、前記機械電気変換素子群が前記寸法の整数倍の距離を移動した時点で前記弾性波を受信するように前記機械電気変換素子を連続移動させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光音響イメージング装置。
【請求項1】
電磁波が被検体中の検出対象に照射されることで発生した弾性波を受信して電気信号に変換する機械電気変換素子が複数配列された機械電気変換素子群と、
前記機械電気変換素子群を前記複数の機械電気変換素子の配列方向に移動させる移動手段と、
前記複数の機械電気変換素子のうち少なくとも2つ以上の機械電気変換素子から送信される電気信号を加算する加算手段と、を有し、
前記加算手段で加算された電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響イメージング装置であって、
前記移動手段は、前記機械電気変換素子群が連続移動しながら弾性波を受信すべく、前記機械電気変換素子群を前記配列方向における第1の位置から第2の位置に連続移動させる手段であり、
前記加算手段は、
前記第1の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記被検体に対して特定位置にある第1の機械電気変換素子が変換した電気信号と、
前記第2の位置において前記機械電気変換素子群が弾性波を受信して変換した電気信号のうち、前記特定位置にある第2の機械電気変換素子が変換した電気信号と、を加算する手段であることを特徴とする光音響イメージング装置。
【請求項2】
前記加算手段で加算される電気信号は、ディジタル変換された電気信号であることを特徴とする請求項1に記載の光音響イメージング装置。
【請求項3】
前記機械電気変換素子群の機械電気変換素子が2次元格子状に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光音響イメージング装置。
【請求項4】
前記機械電気変換素子群の連続移動する方向と直交する方向においても、異なる機械電気変換素子が前記特定位置において弾性波を受信し変換した電気信号を前記加算手段で加算することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光音響イメージング装置。
【請求項5】
前記光音響イメージング装置は電磁波を発生する電磁波源を有し、前記電磁波源が前記被検体へ照明する範囲が前記機械電気変換素子群と一定の相対位置を保ちながら移動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光音響イメージング装置。
【請求項6】
前記機械電気変換素子群は、配列の内部に機械電気変換素子の配列ピッチの整数倍の寸法の空隙が設けられており、前記移動手段は、前記機械電気変換素子群が前記寸法の整数倍の距離を移動した時点で前記弾性波を受信するように前記機械電気変換素子を連続移動させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光音響イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−104816(P2010−104816A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6758(P2010−6758)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【分割の表示】特願2009−29953(P2009−29953)の分割
【原出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【分割の表示】特願2009−29953(P2009−29953)の分割
【原出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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