説明

免震装置

【課題】 フリーアクセスフロアに好適であり、フロアパネルと置き換えて設置が可能であり、所定量以上の振動時には、変位を規制することが可能な免震装置を提供する。
【解決手段】 下摺動プレート7の摺動範囲外周部には、ストッパ8が設けられる。ストッパ8は、下摺動プレート7の摺動範囲を囲むように、上方に向けて起立する突起である。上摺動プレート11には曲面部が設けられ、曲面部が摺動部材9の摺動範囲である。上摺動プレート11の摺動範囲外周部には、ストッパ12が設けられる。ストッパ12は、上摺動プレート11の摺動範囲を囲むように、下方に向けて起立する突起である。摺動部材9は、上下各摺動プレートのストッパ8、12に接するまでは摺動可能であるが、摺動部材9がストッパ8、12に接すると、これ以上摺動部材9が摺動することができず、変位が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーアクセスフロアに用いられる免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フリーアクセスフロア上に載置されるサーバ等の設備に対して免震機能を得るためには、フロア全体を免震構造にするか、または、フロアパネル上に簡易な免震装置を設置する方法が採られている。
【0003】
しかし、フロア全体を免震構造とするような方法では、規模が大きくなるため、免震構造としての費用がかさみ、工期も長くなる。一方、フロアパネル上に簡易な免震装置を設置する場合には、地震時にフロアパネル自体の落下や浮き上がりなどの問題があり、特に上下方向の免震効果が小さい。また、サーバ部分のみを簡易な方法で確実に免震することが可能で、かつフリーアクセスフロアの一部に組み込まれる免震装置は存在しなかった。
【0004】
従来より、建物などの免震に使用されている免震構造としては、例えば、上下のベアリングプレートに球径の剛性ボールを配置し地震による振動をベアリングプレート内の剛性ボールの転がり時の抵抗により吸収する地震アイソレーションベアリングがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−266933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の地震アイソレーションベアリングは、剛性ボールの転がり抵抗によって振動を吸収するが、転がり抵抗による振動エネルギーの吸収には限界があり、減衰能力があまり高くできないという問題がある。また、剛性ボールが振動によって上下のベアリングプレートから飛び出してしまう恐れがある。
【0007】
また、剛性ボールと上下のベアリングプレートとの設置が点接触となるため、剛性ボールの剛性が極めて高くないと剛性ボールの変形や破損のおそれがあるという問題がある。
【0008】
また、このような免震構造はそもそもフリーアクセスフロアの免震構造として考慮されていないため、フロアパネル上に設置してもフロアパネルの浮き上がりや落下等の問題は解決できない。また、フロアパネル上に免震装置が設置されるため、免震装置の高さが高くなり、その上に設置される装置等がかえって不安定となるなどの問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、フリーアクセスフロアに好適であり、フロアパネルと置き換えて設置が可能であり、所定量以上の振動時には、変位を規制することが可能な免震装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するための本発明は、フリーアクセスフロアに使用される免震装置であって、支持脚に設置される受け部材と、前記受け部材上に固定され、上方からの重量を支持可能な下部支持構造体と、前記下部支持構造体上に配置される摺動部材と、前記摺動部材上に配置され、上方からの重量を支持可能な上部支持構造体と、を具備し、前記摺動部材は下部支持構造体および前記上部支持構造体の少なくとも一方との接触面において摺動可能であり、前記下部支持構造体および/または前記上部支持構造体の前記摺動部材の摺動範囲の外周部には前記摺動部材の摺動を規制するストッパが設けられることを特徴とする免震装置である。
【0011】
前記下部支持構造体は、前記受け部材上に固定される下フレームと、前記下フレーム上に固定される下取付プレートと、前記下取付プレート上に固定される下側プレートと、を有し、前記下フレーム、前記下取付プレートおよび前記下側プレートの一部または全部が一体または別体で形成されてもよい。また、前記上部支持構造体は、前記摺動部材上に配置される上側プレートと、前記上側プレート上に固定される上取付プレートと、前記上取付プレート上に固定される上フレームと、前記上フレーム上に固定される上板と、を有し、前記上側プレート、前記上取付プレート、前記上フレームおよび前記上板の一部または全部が一体または別体で形成されてもよい。
【0012】
前記ストッパは、前記下部支持構造体に設けられる摺動面外周部に上方に向けて設けられた突起および/または前記上部支持構造体に設けられる摺動面外周部に下方に向けて設けられた突起であってもよい。前記下部支持構造体に設けられる摺動面と前記摺動部材との接触面および/または前記上部支持構造体に設けられる摺動面と前記摺動部材との接触面は、一定の曲率を有する凹曲面であり、前記摺動部材の前記凹曲面との接触面は、前記凹曲面に対応する凸曲面であることが望ましい。
【0013】
本発明の免震装置によれば、下部支持構造体および上部支持構造体の内、少なくとも一方の摺動面と摺動部材との接触面において、摺動部材が摺動可能であるため、効率良く摺動時の摩擦による減衰能力を得ることができる。また、上下の支持構造体における摺動部材との摺動範囲外周部にストッパが設けられるため、地震等の揺れに対して、摺動部材がストッパを超えて摺動することがない。したがって摺動部材が上下の支持構造体の摺動範囲を超えて飛び出すことがない。すなわち、下部支持構造体と上部支持構造体の相対的な変位量を規制することができる。
【0014】
また、ストッパが、上部支持構造体および下部支持構造体における摺動部材との摺動範囲外周部に設けられた突起であれば、簡易な構造で免震装置の変位量を規制することができる。
【0015】
また、上部支持構造体および下部支持構造体の少なくとも一方が所定の曲率を有し、摺動部材を挟み込むように設けられれば、摺動部材と上下の支持構造体とが面接触するため、摺動時の摩擦による減衰能力が高く、また、上方からの重量を面で受けることができるため、高い支承力を得ることができる。また、上下の支持構造体の中央位置が、曲面の頂点となり、上方から力を受けた際に、摺動部材は摺動面の中心位置(原位置)に安定するため、高い復元力を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フリーアクセスフロアに好適であり、フロアパネルと置き換えて設置が可能であり、所定量以上の振動時には、変位を規制することが可能な免震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】免震装置1を示す分解斜視図。
【図2】免震装置1が組み立てられた状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は摺動部材9近傍の拡大図。
【図3】免震装置1の動作を示す図。
【図4】免震装置1の設置方法を示す図で、フロアパネル29を撤去した状態を示す図。
【図5】受け部材33、35を設置した状態を示す図で(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図6】固定金具36を示す図で、(a)は分解斜視図、(b)は固定金具36により受け部材33を取り付けた状態を示す側面図、(c)は固定金具36により受け部材33を取り付けた状態を示す正面図。
【図7】下フレーム3を設置した状態を示す図で(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図8】下取付プレート5、下摺動プレート7を設置した状態を示す図で(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図9】摺動部材9、上摺動プレート11、上取付プレート13、上フレーム15を設置した状態を示す図で(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図10】上プレート17を設置した状態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図11】その他の実施例を示す図で、免震装置60を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかる免震装置1の分解斜視図であり、図2は組み立てられた状態を示す図である。免震装置1は、主に、下フレーム3、下取付プレート5、下摺動プレート7、摺動部材9、上摺動プレート11、上取付プレート13、上フレーム15、上プレート17等から構成される。なお、以下の説明において、特に必要がない限り、各部材の取り付けに用いられるボルトやナット等は図示を省略する。
【0019】
下フレーム3は、免震装置1の下側の強度を確保するためのフレームであり、例えば角鋼管等を所定の形状に溶接等により接合したものである。下フレーム3の長手方向の長さは、設置されるフリーアクセスフロア用のフロアパネルの1辺長さと略同一の長さとなる。なお、下フレーム3は、図2に示すように、支持脚19上に設置される。
【0020】
下フレーム3上には、図示を省略したボルト等によって下取付プレート5が設けられる。下取付プレート5は下摺動プレート7と下フレーム3とを接合する板状部材である。下取付プレート5の一部には孔6が設けられる。孔6には下摺動プレート7の下面の一部が露出する。
【0021】
下取付プレート5上には、図示を省略したボルト等によって下側プレートである下摺動プレート7が設置される。下摺動プレート7は、図中下方に向かって凸形状(上面が凹形状)の曲面を有する、例えばステンレス製の板状部材である。下摺動プレート7の曲面部が摺動部材9の摺動範囲となる。
【0022】
下摺動プレート7の摺動範囲外周部には、図2(a)に示すようにストッパ8が設けられる。ストッパ8は、下摺動プレート7の摺動範囲を囲むように、上方に向けて起立する突起である。
【0023】
なお、一定の曲率を有する凹曲面とは、曲面全体がどの位置においても三次元的に同一の曲率を有することを意味し、所定の径の球体の一部の曲面で構成されることを意味する。
【0024】
下摺動プレート7の摺動範囲には摺動部材9が載置される。摺動部材9は、例えばフッ化樹脂製である。摺動部材9の下面は、下摺動プレート7の曲面と同一の曲面を有する凸形状である。すなわち、下摺動プレート7の凹曲面と摺動部材9の凸局面とは面で接触する。
【0025】
ここで、摺動部材9の接触面が、下摺動プレート7の凹曲面に対応する凸曲面であるとは、下摺動プレート7の凹曲面と同一の曲率(すなわち、同一径の球体の一部の曲面)を有し、下摺動プレート7との接触面方向に凸形状であることを意味する。また、下摺動プレート7の摺動部材9との接触面が凹曲面であるとは、摺動部材9から見て接触面が凹形状であることを意味する。
【0026】
なお、摺動部材9は例えば50mm高さで60φの略円柱状形状(上下面が凸曲面)である。摺動部材9が安定して機能するためには、摺動部材9の高さは、外径よりも低いことが望ましい。なお、摺動部材9の形状は、円柱状には限られない。
【0027】
摺動部材9上には上側プレートである上摺動プレート11が設置される。上摺動プレート11には曲面部が設けられ、曲面部が摺動部材9の摺動範囲である。上摺動プレート11の摺動範囲外周部には、図2(a)に示すようにストッパ12が設けられる。ストッパ12は、上摺動プレート11の摺動範囲を囲むように、下方に向けて起立する突起である。なお、上摺動プレート11、上取付プレート13、上フレーム15は、前述した下摺動プレート7、下取付プレート5、下フレーム3をちょうど摺動部材9に対して上下反対向きとした形態である。したがって、詳細な説明を省略する。
【0028】
図2(b)は、組み立てられた状態での摺動部材9近傍の拡大図である。前述のように、摺動部材9は、下摺動プレート7と上摺動プレート11とに挟まれて、それぞれに対して摺動可能に配置される。下摺動プレート7の摺動部材9との接触面(上面)は凹曲面23(曲面の曲率はC)であり、これに接する摺動部材9の下面は、凸曲面27(曲面の曲率はD)である。
【0029】
同様に、上摺動プレート11の摺動部材9との接触面(下面)は凹曲面21(曲面の曲率はA)であり、これに接する摺動部材9の上面は、凸曲面25(曲面の曲率はB)である。この場合、AとBとが一致し、CとDとが一致する。
【0030】
なお、上摺動プレート11の摺動範囲の曲率Aと、下摺動プレートの曲率Cとは同じであることが望ましいが、曲率を変えてもよい。この場合、摺動部材9の上下面の曲率を変えて、それぞれ上下の摺動プレートの曲面に合わせた曲面(凸曲面)を有すれば良い。また、同様に、各摺動プレートを曲率ではなく、平坦な摺動面としてもよい。
【0031】
上フレーム15の上には上板である上プレート17が設けられる。上プレート17は、実際に設備等が設置される床となる部位である。なお、図1に示すように、上プレート17の上面の対向する辺に、一対の連結部18が設けられる。連結部18は、他の部位よりもやや厚さが薄い部位であり、辺に沿って設けられる。免震装置1の連結については、後述する。
【0032】
次に、免震装置1の動作について説明する。図3は、免震装置1の動作を示す図である。免震装置1が設置された状態で地震等の揺れが発生すると、支持脚19(床面)に固定されている下フレーム3、下取付プレート5、下摺動プレート7が一体となって変位する。この際、摺動部材9の下面は下摺動プレート7の摺動範囲(曲面部)との間を曲面に沿って摺動する。
【0033】
更に、設備等が設置されている上プレート17と一体に固定されている、上フレーム15、上取付プレート13、上摺動プレート11が摺動部材9に対して変位する。すなわち、摺動部材9の上面は上摺動プレート11の摺動範囲(曲面部)との間を曲面に沿って摺動する。
【0034】
図3(a)、図3(b)は揺れに対してそれぞれ逆の方向に変位した状態である。免震装置1は、揺れに対して、図3(a)、図3(b)の状態を繰り返して、この際の摺動部材9と上下の摺動プレートとの摺動に伴う摩擦によって揺れを減衰する。免震装置1の最大変位量は、図3(a)と図3(b)との間の変位量である。すなわち、摺動部材9が、上下各摺動プレートのストッパ8、12に接するまでは摺動可能であるが、摺動部材9がストッパ8、12に接すると、これ以上摺動部材9が摺動することができず、変位が規制される。
【0035】
免震装置1では、摺動部材9が上下の摺動プレートそれぞれに対して摺動するため、各摺動プレートの摺動範囲の略2倍の変位量を得ることができる。なお、揺れが収まると、摺動部材9は、最も安定位置である各摺動プレートの略中心の位置で停止する。したがって、復元力も高い。
【0036】
なお、この際、下摺動プレート7と上摺動プレート11の各凹曲面21、23の曲率が同じであれば、上下摺動プレートは、それぞれ、摺動部材9に対して略同じ変位量となる。たとえば、摺動部材9が下摺動プレート7に対して所定量摺動すると、摺動部材9の軸方向(上下凸曲面25、27方向)は、下摺動プレート7の曲率に応じて、下摺動プレート7の曲率中心方向に傾く。この際、同様に上摺動プレート11の曲面とも接触するため、上摺動プレート11の曲率中心を向くように上摺動プレート11と摺動部材7とが摺動する。したがって、下摺動プレート7および上摺動プレート11と摺動部材9との摺動量はほぼ同じとなる。
【0037】
次に、免震装置1の設置方法を説明する。図4〜図10は、免震装置1の設置方法を示す図である。なお、免震機能を得るためには、例えば免震装置1が4台1セットで設置して用いられる。まず、図4に示すように、設備等を設置する装置設置部31に該当する位置のフロアパネル29を撤去する。フロアパネル29の撤去によって、撤去したフロアパネル29を支持していた支持脚19が露出する。なお、免震装置1を4台設置するために、隣接する縦横2枚のフロアパネル29が撤去される。
【0038】
次に、図5に示すように、支持脚19上に受け部材33、35を設置する。図5(a)は受け部材33、35を設置した状態の平面図、図5(b)はE−E線断面図である。なお、以下の説明では、特に説明のない限り、各図(a)を平面図、各図(b)を対応する各図(a)のE−E線断面図として示す。受け部材33、35は、それぞれフロアパネル29の2枚分の長さの棒状部材である。
【0039】
図5(b)に示すように、装置設置部31の両側に設置される受け部材33はL字断面形状であり、一方の面は支持脚19が貫通可能な穴が設けられており、他方の面には固定金具36が接合可能である。同様に、装置設置部31の中央に設置される受け部材35は、コの字断面形状であり、上面には支持脚19が貫通可能な穴が設けられており、側面には固定金具36が接合可能である。
【0040】
図6は固定金具36を示す図であり、図6(a)は固定金具36の分解斜視図、図6(b)は固定金具36により受け部材33を取り付けた状態の側面図、図6(c)は固定金具36により受け部材33を取り付けた状態の正面図である。なお、受け部材35との取付状態は受け部材33との取付状態と同一であるので説明を省略する。
【0041】
固定金具36は、本体41、押さえ板38、Uボルト45等から構成される。本体41は、L字断面形状を有する板状部材であり、受け部材接合部39および支持脚保持部43の2面を有する。受け部材接合部39は受け部材33、35と接合される面であり、接合用のボルト孔が設けられる。支持脚保持部43は、支持脚を保持する部位であり、支持脚19(支持脚19の軸47(図6(b)、図6(c)参照))が貫通する切欠き部42が設けられる。
【0042】
押さえ板38は、L字断面形状の板状部材であり、一方の面が本体41の支持脚保持部43上にボルト等によって設けられる。押さえ板38は、U字状の切欠き部42の開口部を塞ぐように、切り欠き部42の両側にまたがるように、かつ支持脚保持部43端部と押さえ板38端部が略揃うように設置される。
【0043】
押さえ板38のもう一方の面は、本体41の受け部材接合部39側に向けられて配置され、受け部材接合部39側からUボルト45が貫通し、ナットによって固定される。Uボルト45のボルト間隔は、間に支持脚19(ナット49)が貫通可能な大きさである。
【0044】
図6(b)、図6(c)に示すように、本体41の受け部材接合部39は、受け部材33の側面と重ねられ、ボルトで接合される。本体41の支持脚保持部43は、切欠き部42に支持脚19の軸47が挿入されて取り付けられる。この際、支持脚19の取り付け用のナット49の外径は、切欠き部42の切欠き幅よりも大きい。したがって、本体41は、支持脚保持部43がナット49の下側に引っ掛かった状態となる。
【0045】
この状態で、切欠き部42のU字部と押さえ板38によって支持脚19を挟み込むように、押さえ板38を支持脚保持部43に取り付ける。更に、Uボルト45が支持脚19を抱え込むようにUボルト45を設置し、Uボルト45の両端部をナットで押さえ板38に固定する。
【0046】
受け部材33が支持脚19上に載置されたのみでは、支持脚19と受け部材33とのクリアランスによって、受け部材33は支持脚19に対して水平方向にガタが生じるおそれがある。さらに受け部材33は上方にはフリーであるため、垂直方向の揺れの際に、受け部材33が支持脚19に対して浮き上がる恐れがある。
【0047】
しかし、固定金具36によって、支持脚保持部43がナット49に引っ掛かる。このため、受け部材33の上方へのガタを防止でき、さらにUボルト45と押さえ板38によって支持脚19を上下方向から抱え込むため、受け部材33の水平方向へのガタも防止できる。以上により、受け部材33が支持脚19に確実に固定される。なお、受け部材33、35と支持脚19との固定は、この形態に限られない。受け部材33、35が支持脚19に対してずれたり浮き上がったりしなければよく、例えば、板状等の固定部材を支持脚19と受け部材に直接ボルト等で固定してもよく、その形態は問わない。
【0048】
次に、図7に示すように受け部材33、35上に下フレーム3を設置する。下フレーム3は、それぞれ受け部材33、35をまたぐように4台設置される。なお、下フレーム3と受け部材33、35とは図示を省略したボルトで接合される。
【0049】
次に、図8に示すように、下フレーム3上に下取付プレート5、下摺動プレート7をそれぞれ設置する。この際、下摺動プレート7が設備設置範囲の4隅に均等な位置に来るように配置する。
【0050】
次に、図9に示すように、下摺動プレート7上に摺動部材9を配置し、その上方に上摺動プレート11、上取付プレート13、上フレーム15を設置する。なお、上摺動プレート11、上取付プレート13、上フレーム15はあらかじめそれぞれを接合して一体化しておいてもよい。この際、下摺動プレート7と上摺動プレート11とが上下に同一の位置に来るように配置し、摺動部材9が下摺動プレート7と上摺動プレート11それぞれの中心に来るように配置する。
【0051】
上フレーム15は、略長方形であり、上フレーム15の長辺方向(図9(a)左右方向)には隣接する上フレーム15同士が接触し、上フレーム15の短辺方向(図9(a)上下方向)に隣り合う上フレーム15同士は、それぞれ上フレーム15の下方で連結部材37によって接合される。なお、上フレーム15の短辺方向とは、受け部材33、35の設置方向である。連結部材37はL字断面形状の棒状部材である。連結部材37によって、短辺方向に隣り合う免震装置1同士が連結される。
【0052】
なお、この際、支持脚上端部から摺動部材9の上面までの総厚さは、隣接するフロアパネル29の厚さよりも厚い。すなわち、上摺動プレート11下面は、隣接するフロアパネル29の上面よりも高い位置となる。したがって、上摺動プレート11およびこれと一体化された各部材が地震等により変位する際に、隣接するフロアパネル29と干渉することがない。
【0053】
次に、図10に示すように、上フレーム15上に上プレート17を設置する。なお、上プレート17は略長方形であり、上プレート17の長辺方向(図10(a)左右方向)には隣接する上プレート17同士が接触する。前述の通り、上プレート17上面短辺側には連結部18が設けられる。上プレート17の長辺側に隣接する上プレート17同士(図10(a)左右方向)は、互いの連結部18をまたぐように連結部材53が設置され、さらに、対向する短辺方向(図中上下方向)に隣り合う上プレート17のそれぞれの連結部18に接合される。これにより、4枚の上プレート17同士(免震装置1同士)が連結される。
【0054】
連結に使用されない連結部18は塞ぎ部材51によって塞がれる。塞ぎ部材51は板状部材である。なお、連結部材53、塞ぎ部材51は、連結部18の段深さとほぼ同厚みであり、それらを取り付けた状態で、上プレート17上は平な面となる。以上により、免震装置1が4台セットされ、それぞれが一体化されて使用される。
【0055】
以上説明したように、本発明の実施形態にかかる免震装置1によれば、上下の各摺動プレートにそれぞれストッパ8、12が設けられるため、摺動部材9の摺動範囲を規制することができる。すなわち、免震装置1の変位量を規制することができる。このため、摺動部材9の飛び出しなどを防止することができる。
【0056】
また、摺動部材9と、下摺動プレート7および上摺動プレート11とのそれぞれの接触面が、対応する曲面を有しているため、摺動部材9と各摺動プレートとが面接触する。このため、摺動部材9が各摺動プレートに対して摺動する際の摩擦による減衰能力が高い。また、上方からの重量を面で受けることができるため、高い支承力を得ることができる。また、各摺動プレートの中央位置が、曲面の頂点となり、上方から力を受けた際に、摺動部材9が各摺動プレートの中心位置(原位置)に安定するため、高い復元力を得ることができる。
【0057】
また、下摺動プレート7および上摺動プレート11がそれぞれ摺動部材9に対して摺動するため、免震装置1の最大(水平)変位は、下摺動プレート7および上摺動プレート11の摺動範囲の和(厳密には摺動部材9の大きさを除く)となるため、小さな装置で大きな変位を得ることができる。
【0058】
また、フロアパネル29を撤去した部位に、免震装置1を設置可能であるため、フリーアクセスフロア上に簡単に免震装置を構築することができる。また、支持脚19に設けられた受け部材33、35が設けられ、この上に下フレーム3から順に上フレーム15および上プレート17までが設置される。このため、フリーアクセスフロアに確実に設置が可能である。
【0059】
さらに隣接する上フレーム15同士が連結部材37で連結され、連結された上フレーム15同士の連結方向とは垂直な方向で上プレート17同士が連結部材53により連結されているため、免震を受け持つ複数の免震装置1が確実に連結され、フリーアクセスフロア上に確実に免震構造を構築することができる。また、固定金具36を用いるため、受け部材33、35が支持脚19に対してずれたり浮き上がったりすることがなく、地震時に免震装置1が浮き上がったり落下したりすることがない。
【0060】
また、受け部材33、35の下端から上摺動プレート11下端までの厚さが、周囲のフロアパネル29の厚さよりも厚いため、免震装置が動作した際にも、上摺動プレート11等がフロアパネル29に接触することがない。
【0061】
また、免震装置を縦横2個ずつ隣接させて設置することで、上部に設置される装置等を安定して支承することができ、免震効果を確実に得ることができる。
【0062】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
例えば、図11に示す実施形態である免震装置60のように、下側プレートのみを曲面を有する下摺動プレート7として、他方の上プレート61を平坦面としてもよい。この場合、上プレート61と摺動部材9とを接合し、摺動を規制してもよい。上プレート61は、摺動部材9と摺動しないため、ストッパは不要である。さらに、下摺動プレート7を平坦面としてもよい。平坦面とした場合であっても、摺動部材9の摺動を許容する範囲の外周部にストッパ8を設ければよい。さらに、このような態様を上下逆にしてもよく、上下を平坦面として、かつ両方を摺動面としてもよい。いずれにしても、摺動範囲の外周部にストッパが設けられれば良い。
【0064】
また、下フレーム3、下取付プレート5、下摺動プレート7の一部または全部が一体で成形されてもよく、別体で形成されてもよい。すなわち、下フレーム、下取付プレート、下摺動プレートの機能を有する下部支持構造体を用いれば、それら各部が別体であっても一体であってもよい。同様に、上摺動プレート11、上取付プレート13、上フレーム15、上プレート17の一部または全部が一体で成形されてもよく、上摺動プレート、上取付プレート、上フレーム、上プレートの機能を有する上部支持構造体を用いれば、それら各部が別体であっても一体であってもよい。たとえば、下取付プレート5と下摺動プレート7とが一体で形成され、また、上摺動プレート11と上取付プレート13とが一体で形成されてもよい。
【0065】
また、実施例においては免震装置1を縦横2列ずつ計4台連結して用いたが、免震装置をさらに追加して連結してもよい。この場合、例えば横方向(図10の左右方向)へ免震装置を追加する場合には、連結側の連結部18に、塞ぎ部材51に代えて連結部材53を設置すれば良い。また、縦方向(図10の上下方向)へ免震装置を追加する場合には、例えば連結部18を上プレート17の短辺側全長に設けておき、2以上の免震装置を一本の連結部材53により連結してもよい。この場合、塞ぎ部材51も上プレート17の短辺側全長にわたって配置されればよい。
【符号の説明】
【0066】
1、60………免震装置
3………下フレーム
5………下取付プレート
6………孔
7………下摺動プレート
8、12………ストッパ
9………摺動部材
11………上摺動プレート
13、63………上取付プレート
14………孔
15………上フレーム
17………上プレート
18………連結部
19………支持脚
21、23………凹曲面
25、27………凸曲面
29………フロアパネル
31………総地設置部
33、35………受け部材
36………固定金具
37………連結部材
38………押さえ板
39………受け部材接合部
41………本体
42………切り欠き部
43………支持脚保持部
45………Uボルト
47………軸
49………ナット
51………塞ぎ部材
53………連結部材
61………上プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーアクセスフロアに使用される免震装置であって、
支持脚に設置される受け部材と、
前記受け部材上に固定され、上方からの重量を支持可能な下部支持構造体と、
前記下部支持構造体上に配置される摺動部材と、
前記摺動部材上に配置され、上方からの重量を支持可能な上部支持構造体と、
を具備し、
前記摺動部材は下部支持構造体および前記上部支持構造体の少なくとも一方との接触面において摺動可能であり、
前記下部支持構造体および/または前記上部支持構造体の前記摺動部材の摺動範囲の外周部には前記摺動部材の摺動を規制するストッパが設けられることを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記下部支持構造体は、
前記受け部材上に固定される下フレームと、
前記下フレーム上に固定される下取付プレートと、
前記下取付プレート上に固定される下側プレートと、
を有し、
前記下フレーム、前記下取付プレートおよび前記下側プレートの一部または全部が一体または別体で形成されることを特徴とする請求項1記載の免震装置。
【請求項3】
前記上部支持構造体は、
前記摺動部材上に配置される上側プレートと、
前記上側プレート上に固定される上取付プレートと、
前記上取付プレート上に固定される上フレームと、
前記上フレーム上に固定される上板と、
を有し、
前記上側プレート、前記上取付プレート、前記上フレームおよび前記上板の一部または全部が一体または別体で形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の免震装置。
【請求項4】
前記ストッパは、前記下部支持構造体に設けられる摺動面外周部に上方に向けて設けられた突起および/または前記上部支持構造体に設けられる摺動面外周部に下方に向けて設けられた突起であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の免震装置。
【請求項5】
前記下部支持構造体に設けられる摺動面と前記摺動部材との接触面および/または前記上部支持構造体に設けられる摺動面と前記摺動部材との接触面は、一定の曲率を有する凹曲面であり、前記摺動部材の前記凹曲面との接触面は、前記凹曲面に対応する凸曲面であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−185241(P2010−185241A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30851(P2009−30851)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】