説明

入れ子を備えたポンプハウジング組立体

ポンプハウジング組立体は、ポンプケーシング12と入れ子20とを備えている。ポンプケーシング12は、少なくとも2つの部品13、14を含んでいる。これらの部品13、14は、組み付けられた状態では互いに結合することができるようになっている。このポンプハウジング組立体において、ポンプケーシング12は、互いに背向する前側部及び後側部を備えている。ポンプケーシング12の2つの部品13、14は、組み付けられた状態では、1つ又は2つの面内に配置される共通の接合領域を有している。これらの面は、組み付けられた状態ではポンプケーシング12の前側部及び後側部を通り抜けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、例えば端部吸引遠心力ポンプ(end suction centrifugal pump)などの、外側のケーシングと内側の入れ子(liner)とを有するポンプに関するものである。本発明は、とくに、圧力及び管路負荷に耐える外側のケーシングと、外側のケーシングによって支持され摩耗に対する抵抗性が高い内側の入れ子とを有するスラリポンプに適するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心力スラリポンプは、典型的には、耐摩耗性のエラストマ(高分子弾性体)化合物で成形された内側の入れ子を備えた、鋳鉄又はダクタイル鋳鉄で鋳造された外側のケーシングを備えている。ケーシング及び入れ子は、従来、ケーシングの周縁部でボルトによって互いに締結保持される2つの部品又は半割部の形態とされている。これらの2つの部品は、組み付けられたときには、入口部を備えた前側部を有するポンプハウジングと、ポンプ室を備えた後側部とを形成する。ポンプ室内には、インペラシャフトに取り付けられて回転するインペラが配置される。インペラシャフトは、後側部からポンプ室内に入っている。ポンプ室の周縁側の端部には出口部が設けられている。ケーシング及び入れ子の半割部の形状は、外側では凸状であり、内側では凹状である。入れ子は、通常、エラストマの内側に形成された金属製の骨格を有している。この骨格は、入れ子の形状の維持に役立つだけでなく、入れ子をケーシングの半割部に固定するためのボルト又は留め具(スタッド)の取り付け部としても機能する。2つの部品は、一般にポンプインペラの回転軸に対して垂直な平面に沿って結合されている
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
入れ子の2つの半割部は、組み付けられているときは、圧力に対して確実なシールを行うために、ケーシング及びケーシングボルトによってその周縁部で互いに圧接させなければならない。その結果、継ぎ目は、とくにインペラの吐出部に隣り合っている場合、ポンプ内の損傷しやすい摩耗領域となる。この継ぎ目に沿った入れ子の半割部の整列不良は、継ぎ目に段差又は間隙を生じさせ、摩耗をより進行させるであろう。局所的に摩耗が発生すると、段差又は間隙における連続的な乱流が摩耗部の摩耗を加速させる。最悪の場合、局所的な摩耗が入れ子全体を摩耗させ、これにより、圧力を閉じ込めているケーシングを露出させて摩耗させることになる。
【0004】
本発明の目的は、前記不具合中の1つ又は複数の不具合を軽減することができるポンプハウジング組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、組み付けられた状態では互いに接続される(connected)ように形成されている少なくとも2つの部品(parts)を含んでいるポンプケーシングと、入れ子(liner)とを含むポンプハウジング組立体(pump housing assembly)であって、ポンプケーシングは、互いに背向する前側部(front side)と後側部(rear side)とを含んでいて、組み付けられた状態ではポンプケーシングの2つの部品は、1つ又は複数の平面(plane)内に位置する共通の結合領域(junction region)を有し、上記平面は、組み付けられた状態ではポンプケーシングの前側部及び後側部を通り抜けている(pass through)ことを特徴とするポンプハウジング組立体を提供する。
【0006】
組み付けられた状態にあるときには、入れ子は、ポンプケーシング内に配置され、かつ、ポンプケーシングの前側部と後側部との間を伸びる回転軸のまわりに回転することができるインペラのためのポンプ室を形成する。
【0007】
本発明の1つの形態においては、ポンプケーシングの上記2つの部品は、上記インペラの回転軸と整列している(aligned)平面内に位置する共通の結合領域を有する。
【0008】
入れ子は、エラストマ(elastomer)、例えばゴム、合成ゴムなどでもって一体物として形成されているのが望ましい。入れ子は、その各側部(side)に、環状のフランジを備えていてもよい。ここで、フランジは、組み付けられた状態では、ポンプケーシングの2つの部品間に固定される(clamped)ように形成されていてもよい。フランジはシール部を備えていてもよい。シール部は、ポンプケーシングとポンプ端板組立体との間に形成された空隙部(cavity)内に収容されるように形成されていてもよい。シール部は、入れ子と一体的に形成された全体的には(generally)くさび形(wedge shaped)のものであってもよく、また、ポンプの動作前及び動作中に発生する圧力に反応するようになっていてもよい。これは、本発明の別の態様を構成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を具体的に説明する。
図1は、参照番号10で包括的に示されたポンプの分解図を示している。このポンプ10は、互いに組み付けることができる2つの部品(パーツ)13、14を有するポンプケーシング12と、エラストマ(高分子弾性体)からなる入れ子(ライナ)20と、駆動シャフト組立体22と、インペラ24と、前側及び後側の2つの側部入れ子25、26(前側の入れ子は、しばしば「スロートブッシュ(throat bush)」と呼ばれる)と、端板28(end plate)とを備えている。
【0010】
組み付けられた状態においては、インペラ24は、ポンプ室29内に配置され、回転軸X−Xのまわりにおいて、回転駆動用の駆動シャフト組立体22に(回転)動作可能に接続されている。従来のポンプと同様に、スラリは、入口部27を経由してポンプ室29内に吸入され、出口部23を介して吐出される。
【0011】
ポンプケーシング12は、図3及び図4に最も分かりやすく示されているが、互いにぴったり締結することができる2つの部品13、14を備えている。フランジ15は、取付ボルトを受け入れて2つの部品13、14を締結保持するための孔部16を備えている。組み付けられた状態においては、ポンプケーシング12は、入口部21を有する前側部17と、駆動シャフト組立体が動作可能に取り付けられる後側部18とを備えている。2つの部品13、14は、回転軸X−Xを含む平面内で互いにぴったり締結されている。ここで、この平面は、ポンプケーシングの前側部17と後側部18とを通って伸びている(広がっている)。
【0012】
入れ子20は、適切なエラストマで形成された一体構造のもの(一体物)である。図5〜図7に最も分かりやすく示すように、入れ子20は環状のフランジ31、32を有している。これらのフランジ31、32は、ポンプケーシングの部品13、14の両フランジ15間に固定することができるようになっている。フランジ31、32は、弾性的なリップ35、36(flexible lip)を伴ったシール部33、34を有している。フランジ31、32、及び、これらに対応するシール部33、34は、その表面に補強リブ38(strengthening rib)を有している。図7に示す断面は、一方ではシール部31、33及びフランジの形状(configuration)を示し、他方では、リブ38の1つに沿って切断された切断面を示している。
【0013】
図8は、シール組立体が装着された状態を示している。シール部34は、ケーシング14と端板組立体19との間に形成された空隙部42(cavity)内に配置されている。シール部34は、空隙部42内に、ぴったりはまるように取り付けられている。リップ36の直径は、側部の入れ子26の外直径より小さい。このため、リップ36は、側部の入れ子26(side liner)を主入れ子20(main liner)内に組み付けるときに圧縮される。すなわち、シールが行われ、リップ36は、最初の液の充填時にポンプが静圧を保持することを確実にする。空隙部42は、シール部34にかかる圧力とその形状とを調整(control)するのに寄与する。動作時に、内部領域は加圧され、シール部34に作用する圧力はそのシール性(sealing capacity)を高める。
【0014】
エラストマからなる入れ子は、一体物として形成されているので、従来のポンプのような上下方向の継ぎ目(joint line)は存在せず、継ぎ目の摩耗(wear)に起因して生じる脆弱化(weakness)を回避することができる。さらに、エラストマからなる入れ子は、内部の金属の骨格を必要としない。このため、入れ子は、より均一な厚さで製造することができ、あるいは、入れ子の製造性に影響を及ぼすことなく、またその耐用期間を損なうことなく、既知の摩耗が大きい領域を厚くすることができる。さらに、内部に強化材を設けることなく、エラストマからなる入れ子を、ポンプの運転時に発生する内部ポンプ圧力に起因するポンプケーシングの内部形状に、より容易に順応させる(conform)ことができる。これにより、金属製のケーシングと入れ子との間の遊び又は間隙は最小となり、より強固な入れ子にすることができる。なぜなら、遊び及び間隙は、潜在的に、エラストマの振動及びヒステリシス加熱を惹起し、これにより寿命を縮めるからである。
【0015】
前記のとおり、入れ子が外側の金属のケーシングによって保持されることを可能にするために、入れ子の水平方向の中心線のまわりに厚くされた領域が設けられ、かつ、入れ子の一方の側部に延長部が設けられ、外側の金属のケーシングによって固定すること(clamping)を可能にしている。さらに、ゴム製の入れ子のいずれか一方の側部の延長部は、一体的なシールを備えている。この一体的なシールは、まず外側のケーシングによって行われる固定によって動作し、この後ポンプ輸送される流体の内部圧力によって動作する。このような構成により、内部の金属の骨格又は強化が不要となり、入れ子が異なるエラストマの化合物(compound)で成形されたときに、入れ子のシールをより容易に促進することができる。
【0016】
上下方向の割れ目が存在しない一体形成された入れ子は、ケーシングの設計仕様を単純化するとともに、ケーシングのボルトを不要にする。入れ子のいずれか一方の側の入れ子突起部及びシールは、その直径が十分大きく設定され、インペラが入れ子の側部を通って装着され、かつ入れ子側部に順応する(suit)ことを可能にする。
【0017】
外側のケーシングは、2つの部品で構成されて、一体形成された入れ子の装着を可能にすることが必要とされる。ケーシングの割れ目は、多数の異なる位置を選択して設けることができるということが分かるであろう。したがって、ケーシングのボルトの必要数は減少し、ポンプの中心線(pump centreline)での少数のボルトだけですむ。ケーシングのボルトは、ケーシングの両半割部を互いに締結保持する機能、及び、隆起したエラストマのランド部(land)を圧迫して(squeeze)入れ子をケーシング内に保持する機能の2つの機能を有する。外側の金属のケーシングの側部はまた、エラストマ突起部及びシールを、エラストマからなる入れ子の両側部で保持して圧縮し、これらが加圧により押し出され、又は減圧(真空)により吸い込まれるのを防止するのに寄与する。金属のケーシングは、2つの個別の部品として製造してもよく、あるいは一体物として成形(鋳造)した後に製造工程で分割してもよい。
【0018】
一体形成された入れ子と2つの部品からなるケーシングとを用いることは、メンテナンス費用の低減に寄与する。大抵の場合、ポンプの吐出側の配管をポンプに取り付けたままでメンテナンスを行うことができる。ポンプの吸込側の配管と、前側の入れ子と、インペラとを除去することにより、検査のためにポンプ内部に作業を施す(gain access)ことが可能となる。
【0019】
ケーシングの設計仕様は、高圧で使用する場合は、リブを設けてもよく、また設けなくてもよい。ケーシングのボルトは、それらの弾性限界を超えることなくその全設計圧力に耐えるように設定される。
【0020】
本明細書における従来技術についての参照文献は認識することができない。また、上記従来技術がオーストラリアにおける一般共通の知識の一部をなすことについて、どのような提案もすることができない。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲の全部において、文言上とくに断りがない限り、「含む(comprise)」との語、及びその変形である「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」との語は、言及された物(integer)もしくはステップ、又は、物もしくはステップの集合を含むということを意味し、その他の物もしくはステップ、又は、物もしくはステップの集合を排斥するものではないということを理解すべきである。
【0022】
最後に、すべての態様における本発明の概念は、多くの異なる構成(construction)に組み入れることができるものであり、したがって以上の記載の一般性は、添付の図面の特殊性によって限定されるものではないということが理解されるべきである。本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変形物、修正物及び/又は付加物を種々の構成及び構成部分に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るポンプの分解図である。
【図2】本発明に係るポンプハウジング組立体の分解図である。
【図3】図1及び図2に示す組立体のポンプケーシングの概略的な図である。
【図4】図1及び図2に示す組立体のポンプケーシングの概略的な図である。
【図5】図1及び図2に示す入れ子の概略的な図である。
【図6】図1及び図2に示す入れ子の概略的な図である。
【図7】図1及び図2に示す入れ子の概略的な図である。
【図8】シール組立体の詳細な図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ポンプ、12 ポンプケーシング、13 部品、14 部品、15 フランジ、16 孔部、17 前側部、18 後側部、20 入れ子(主入れ子)、21 入口部、22 駆動シャフト組立体、23 出口部、24 インペラ、25 前側の側部入れ子、26 後側の側部入れ子、27 入口部、28 端板、29 ポンプ室、31 環状のフランジ、32 環状のフランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み付けられた状態では互いに接続されるように形成されている少なくとも2つの部品を含んでいるポンプケーシングと、入れ子とを含むポンプハウジング組立体であって、
上記ポンプケーシングは、互いに背向する前側部と後側部とを含んでいて、
組み付けられた状態では上記ポンプケーシングの上記2つの部品は、1つ又は複数の平面内に位置する共通の結合領域を有し、
上記平面は、組み付けられた状態では上記ポンプケーシングの前側部及び後側部を通り抜けていることを特徴とするポンプハウジング組立体。
【請求項2】
組み付けられた状態にあるときには、上記入れ子は、上記ポンプケーシング内に配置され、かつ、上記ポンプケーシングの前側部と後側部との間を伸びる回転軸のまわりに回転することができるインペラのためのポンプ室を形成することを特徴とする、請求項1に記載のポンプハウジング組立体。
【請求項3】
上記ポンプケーシングの上記2つの部品は、上記インペラの回転軸と整列している平面内に位置する共通の結合領域を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のポンプハウジング組立体。
【請求項4】
上記入れ子は、エラストマでもって一体的に形成され、かつ、その各側部に環状のフランジを備えていて、
上記フランジは、組み付けられた状態では上記ポンプケーシングの上記2つの部品間に固定されるように形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のポンプハウジング組立体。
【請求項5】
上記フランジはシール部を備えていて、
上記シール部は、上記ポンプケーシングとポンプ端板組立体との間に形成された空隙部内に収容されるように形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のポンプハウジング組立体。
【請求項6】
上記シール部は、上記入れ子と一体的に形成された全体的にはくさび形のものであり、かつ、ポンプの動作前及び動作中に発生する圧力により動作するようになっていることを特徴とする、請求項5に記載のポンプハウジング組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−533886(P2007−533886A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525568(P2006−525568)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001153
【国際公開番号】WO2005/024243
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(505433910)ウィアー・ウォーマン・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】WEIR WARMAN LTD
【Fターム(参考)】