説明

入力装置、入力方法および入力プログラム

【課題】1つのデバイスで2つ以上の操作(例えば、ポインタを二次元方向に操作する際に必要となる2つの要素、すなわち「方向指定」及び「距離指定」の両方)を連続的に行える入力装置を提供する。
【解決手段】回転操作(又はなぞり操作)を検知する検知手段100と、検知手段100で回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作が検知されない場合にポインタ40の移動の距離を指定する「動作1」を実行させる指示コマンドを出力し、検知手段100で回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作が検知された場合にポインタ40の移動の向きを指定する「動作2」を実行させる指示コマンドを出力するコマンド出力部13とを備える。これにより1つのデバイスでポインタ40の「方向指定」と「距離指定」の両方を連続的に行うことができ、しかも片手で操作することができるため、小型電子機器における操作性向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末装置、ノート型のパーソナルコンピュータ、液晶ディスプレイを備えたポータブルディジタル音楽プレイヤー等の小型電子機器に用いて好適な入力装置、入力方法および入力プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールの回転操作により、多数の選択肢に対して効率良くフォーカス(どの項目が操作対象となっているかを示す用語)を移動させるための技術が知られている(例えば、特許文献1、2)。一次元操作が可能なデバイスの一例としてスピードセレクタ(登録商標)がある。スピードセレクタは、左右の回転操作に上下左右の押し込みキーを備えたデバイスであり、一次元に配置された選択肢に対して効率良く操作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−280799号公報
【特許文献2】特開2003−296006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2で開示されているような既存の回転操作のデバイスは、1つの動作(例えば、画面を上下にスクロールするような一次元方向に対する操作)を行うためのデバイスであり、2つの動作(例えば、画面を上下/左右方向にスクロールするような、二次元方向に対する操作)はできない。仮に例えば二次元の操作をしたい場合は、例えば上下左右に対して割り当てられた4つのボタンを用いた方向指定や、回転操作を反映させる動作対象を新たなボタン(例えば、シフトキー)を設けて切り替える方法が考えられる。しかし、いずれの方法においても何度もキーを連打したり、キーを押し続けたり(長押し)、動作モードを切り換えるための操作が必要となり、決して使いやすいという操作とは言えない。
【0005】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、1つのデバイスで2つ以上の操作(例えば、ポインタを二次元方向に操作する際に必要となる2つの要素、すなわち「方向指定」及び「距離指定」の両方)を連続的に行える入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の入力装置は、なぞり操作と押込み操作を検知する検知手段と、前記検知手段でなぞり操作と同時に押込み操作が検知された場合に第1の動作を実行させ、なぞり操作と同時に押込み操作が検知されない場合に第2の動作を実行させる制御手段と、を備えた。
【0007】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を検知すれば、第1の動作を実行させ、なぞり操作と同時に押込み操作を検知しなければ、第2の動作を実行させるので、1つの検知手段で2つの動作を連続的に行うことが可能となる。
【0008】
上記構成において、前記検知手段は、回転操作と押込み操作を検知する回転検知手段であり、前記制御手段は、前記回転検知手段で回転操作と同時に押込み操作が検知された場合に第1の動作を実行させ、回転操作と同時に押込み操作が検知されない場合に第2の動作を実行させる。
【0009】
上記構成によれば、1つの回転検知手段で2つの動作を連続的に行うことが可能となる。
【0010】
上記構成において、前記第1の動作は、ポインタの移動の向きを指定する方向指定の動作であり、前記第2の動作は、前記ポインタの移動の距離を指定する距離指定の動作である。
【0011】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、ポインタの移動の向きを指定でき、なぞり操作のみ行うことで、ポインタの移動の距離を指定できる。
【0012】
上記構成において、前記第1の動作は、ポインタの移動の向きを調整しつつ前記ポインタを移動させる動作であり、前記第2の動作は、前記ポインタの移動の距離を指定する距離指定の動作である。
【0013】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、ポインタの移動の向きを調整しつつポインタを移動でき、なぞり操作のみ行うことで、ポインタの移動の距離を指定できる。
【0014】
上記構成において、前記第1の動作は、第1の方向にフォーカスを移動させる動作であり、前記第2の動作は、前記第1の動作で前記フォーカスが移動する方向と直交する第2の方向に前記フォーカスを移動させる動作である。
【0015】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、第1の方向にフォーカスを移動でき、なぞり操作のみ行うことで、なぞり操作と同時に押込み操作を行った場合のフォーカスの移動方向と直交する第2の方向にフォーカスを移動できる。
【0016】
上記構成において、前記第1の動作は、横方向又は縦方向にフォーカスを移動させる動作であり、前記第2の動作は、前記第1の動作で前記フォーカスが移動する方向と直交する方向に前記フォーカスを移動させる動作である。
【0017】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、横方向又は縦方向にフォーカスを移動でき、なぞり操作のみ行うことで、なぞり操作と同時に押込み操作を行った場合のフォーカスの移動方向と直交する方向にフォーカスを移動できる。
【0018】
上記構成において、前記第1の動作は、表示画像のページ送りを行わせる動作であり、前記第2の動作は、前記表示画像の拡大/縮小を行わせる動作である。
【0019】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、表示画像のページ送りができ、なぞり操作のみ行うことで、表示画像の拡大/縮小ができる。
【0020】
上記構成において、前記第1の動作は、表示画像を回転させる動作であり、前記第2の動作は、前記表示画像の表示領域を移動させる動作である。
【0021】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、表示画像を回転させることができ、なぞり操作のみ行うことで、表示画像の表示領域を移動させることができる。
【0022】
上記構成において、前記第1の動作は、表示画像を回転させる動作であり、前記第2の動作は、前記表示画像を回転させつつ、前記表示画像の表示領域を移動させる動作である。
【0023】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、表示画像を回転させることができ、なぞり操作のみ行うことで、前記表示画像を回転させつつ、前記表示画像の表示領域を移動させることができる。
【0024】
上記構成において、前記第1の動作は、表示画像の画素数調整を行わせる動作であり、前記第2の動作は、前記表示画像の画質調整を行わせる動作である。
【0025】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、表示画像の画素数調整ができ、なぞり操作のみ行うことで、表示画像の画質調整ができる。
【0026】
上記構成において、前記第1の動作は、撮影画像の輝度調整を行わせる動作であり、前記第2の動作は、前記撮影画像のズームを行わせる動作である。
【0027】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、撮影画像の輝度調整ができ、なぞり操作のみ行うことで、撮影画像のズーム調整ができる。
【0028】
上記構成において、前記第1の動作は、撮影画像の解像度調整を行わせる動作であり、前記第2の動作は、前記撮影画像のズームを行わせる動作である。
【0029】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、撮影画像の解像度調整ができ、なぞり操作のみ行うことで、撮影画像のズーム調整ができる。
【0030】
上記構成において、前記第1の動作は、再生音声の音質調整を行わせる動作であり、前記第2の動作は、前記再生音声の音量調整を行わせる動作である。
【0031】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、再生音声の音質調整ができ、なぞり操作のみ行うことで、再生音声の音量調整ができる。
【0032】
上記構成において、前記第1の動作は、再生音声の再生位置調整を行わせる動作であり、前記第2の動作は、前記再生音声の音量調整を行わせる動作である。
【0033】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を行うことで、再生音声の再生位置調整ができ、なぞり操作のみ行うことで、再生音声の音量調整ができる。
【0034】
本発明の携帯端末装置は、上記いずれかの入力装置を備えた。
【0035】
上記構成によれば、1つの検知手段で2つの動作を連続的に行うことが可能な携帯端末装置を提供できる。
【0036】
本発明の入力方法は、なぞり操作と押込み操作を検知する検知ステップと、前記検知ステップでなぞり操作と同時に押込み操作が検知された場合に第1の動作を実行させ、なぞり操作と同時に押込み操作が検知されない場合に第2の動作を実行させる制御ステップと、を備えた。
【0037】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を検知すれば、第1の動作を実行させ、なぞり操作と同時に押込み操作を検知しなければ、第2の動作を実行させるので、1つの検知手段で2つの動作を連続的に行うことが可能となる。
【0038】
本発明の入力プログラムは、コンピュータに、なぞり操作と押込み操作を検知する検知ステップと、前記検知ステップでなぞり操作と同時に押込み操作が検知された場合に第1の動作を実行させ、なぞり操作と同時に押込み操作が検知されない場合に第2の動作を実行させる制御ステップと、を実行させるための入力プログラムとした。
【0039】
上記構成によれば、なぞり操作と同時に押込み操作を検知すれば、第1の動作を実行させ、なぞり操作と同時に押込み操作を検知しなければ、第2の動作を実行させるので、1つの検知手段で2つの動作を連続的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、1つのデバイスで2つ以上の操作(例えば、ポインタを二次元方向に操作する際に必要となる2つの要素、すなわち「方向指定」及び「距離指定」の両方)を連続的に行える入力装置を提供でき、携帯電話やPDA等の携帯端末装置、ノート型のパーソナルコンピュータ、液晶ディスプレイを備えたポータブルディジタル音楽プレイヤー等の小型電子機器並びにそれらの入力装置、入力方法及び入力プログラムの操作性向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1に係る入力装置の概略構成を示すブロック図
【図2】図1の入力装置の操作部の一例の構造を示す図
【図3】図2の操作部の変形例を示す図
【図4】図2の操作部の変形例を示す図
【図5】図2の操作部の変形例を示す図
【図6】図4の操作部を構成する回転検知部を示す図
【図7】図5の操作部を使用したときの押込検知部の出力をグラフ化し、更に検知信号監視部による動作判定を示す図
【図8】図1の入力装置のコマンド出力部から出力された「動作1」及び「動作2」それぞれに対するコマンドをアプリケーションが実行した様子を示す図
【図9】図1の入力装置とアプリケーションの動作の概要図
【図10】図1の入力装置の使用例を示す図
【図11】図1の入力装置における押込みの切換えを2段階とした場合と3段階にした場合のフォーカス移動の軌跡を示す図
【図12】本発明の実施の形態2に係る入力装置の「動作1」を示す図
【図13】本発明の実施の形態2に係る入力装置の使用例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る入力装置の概略構成を示すブロック図である。同図において、本実施の形態に係る入力装置1は、回転検知部10と、押込検知部11と、検知信号監視部12と、コマンド出力部13と、ミドルウェア部14とを備えている。
【0044】
回転検知部10は、人の指による回転操作を検知する。回転検知部10は、例えば10msecごとに[+1]、[+1]、…といった信号を出力する。[+1]は正方向に1単位回転したことを意味する信号であり、[−1]は負方向に1単位回転したことを意味する信号である。回転操作の検知には、物理的な回転そのものを検知する方法と、指の接触位置変化を検知することで間接的に回転検知する方法とがある。物理的な回転そのものを検知する方法としては、例えば物理的な磁石の移動により発生する磁界変化を検知するメカニカル方式(メカニカルな回転体を備えたデバイスの方式)が挙げられ、間接的に回転検知する方法としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式、抵抗膜方式、電磁誘導方式の各種センサで回転を検知するバーチャル方式(物理的な回転体を持たず、指の接触位置をセンサが検知する方式)が挙げられる。
【0045】
押込検知部11は、人の指による押込み操作を検知するものであり、押込み検知時に例えば10msecごとに[on]となる信号を出力する。この押込検知部11による押込み検知と前述した回転検知部10による回転検知は同時検知が可能であり、いずれも検知信号監視部12へ検知信号が出力される。図2に操作部20の構造を示す。操作部20は、回転検知部10と押込検知部11を備えて構成され、押込み検知と回転検知を同時検知可能である。同図に示す操作部20はメカニカルな回転構造を持つものであり、回転部201、押込検知部11及び回転検知部10のそれぞれが幅広のリング状に形成され、それぞれの軸心を共通にして積層された構造を採る。なお、図2では回転部201、押込検知部11及び回転検知部10が離間配置されたようになっているが、実際はそれぞれが互いに密着した状態で積層配置されて、一体で回転するようになっている。
【0046】
一番上に位置する回転部201の上面には、中心部から外側へ放射状に延びる複数個の線状の突起部202が形成されている。突起部202は回転部201への指のかかりを良くして回転操作を容易にするために設けられたものである。中間に位置する押込検知部11の上面には、複数個の圧力センサ111が円周方向に沿って一定間隔で設けられている。一番下に位置する回転検知部10の回転体には、複数個の磁石101が円周方向に沿って一定間隔で設けられている。また、回転検知部10の回転体の近傍には磁界を検出するホールセンサ102が設けられている。回転検知部10の回転体が回転すると、ホールセンサ102からは磁石101のN極/S極の磁界変化に応じた信号が出力される。なお、ホールセンサ102は回転検知部10の一部分である。
【0047】
このような構成の操作部20において、指先で回転部201を左右いずれかの方向に回転させると、回転検知部10に設けられた磁石101のN極/S極の磁界変化に応じてホールセンサ102から信号が出力される。また、回転部201の表面上を指先で押込むことで、押込んだ箇所にある押込検知部11上の圧力センサ111あるいは押込んだ箇所の近傍にある押込検知部11上の圧力センサ111から信号が出力される。なお、圧力センサ間が押し込まれた場合は2つの圧力センサ111のそれぞれから信号が出力される。
【0048】
図3〜図5は上記操作部20の変形例を示す図である。図3は図2の操作部20の押込検知部11の変形例を示す図であり、同図に示す押込検知部11Bはリング状の圧力センサ111Bを有する。図4及び図5はメカニカルな回転構造を持たない操作部20B、20Cを示す図である。同図に示す操作部20Bは、それぞれが幅広のリング状に形成された表面シート205、押込検知部11、回転検知部10Bを備え、それぞれの軸心を共通にして積層された構造を採る。なお、図4では表面シート205、押込検知部11及び回転検知部10Bが離間配置されたようになっているが、実際はそれぞれが互いに密着した状態で積層配置される。なお、図5の操作部20Cは、圧力は検知せず、静電センサにより、指の接触度合いを検知し、その値で「どの程度押し込んでいるのか」を判定する。
【0049】
操作部20Bの表面シート205は、押込検知部11及び回転検知部10Bを保護するものであり、例えばプラスチックフィルムが用いられる。なお、回転検知部10Bには、例えば図6の(a)に示すような複数のセンサ素子10B1を離散的に配置して構成したものと、図6の(b)に示すような単一のセンサ素子10B2で構成したものとがある。図6の(a)に示す構造の回転検知部10Bは、時間経過と共に各センサ素子10B1からオン信号が出力される。図6の(b)に示す構造の回転検知部10Bは静電センサを用いたものであり、静電容量の変化により指の接触位置(座標値x,y)に応じた信号を出力する。
【0050】
図6の(a)に示す構造の回転検知部10Bは、個々のセンサ素子10B1に対する接触の有無を検知するだけで良いので、処理が簡単になるメリットがあり、図6の(b)に示す構造の回転検知部10Bは、1つのセンサ素子10B2で済むことから構造が簡単になるというメリットがある。但し、図6の(b)に示す構造の回転検知部10Bの場合は、1つのセンサ素子10B2に対する接触位置(座標値x,y)の変化軌跡を元に回転判定が必要となるため処理が複雑になる。
【0051】
操作部20Bの操作は回転操作というよりも“なぞる”感覚になるため、なぞり操作と言える。
【0052】
このような構成の操作部20Bにおいて、指先で表面シート205を左右いずれかの方向になぞると、回転検知部10Bで検知されて検知信号が出力される。また、表面シート205の表面上を指先で押込むことで、押込んだ箇所にある押込検知部11上の圧力センサ111あるいは押込んだ箇所の近傍にある押込検知部11上の圧力センサ111から信号が出力される。なお、圧力センサ間が押し込まれた場合は、2つの圧力センサ111のそれぞれから信号が出力される。
【0053】
図5に示す操作部20Cは、図4の操作部20Bの押込検知部11と回転検知部10Bを一体化したものである。
【0054】
図1に戻り、検知信号監視部12は、上述した操作部20、20B又は20Cから出力される検知信号をリアルタイムで解析し、検知信号の状態の変化を通して指がどの様な動き(回転操作、単なる接触や押込み)をしているのかを判定する。すなわち、「回転」しているのか、していないか、回転している場合は「回転方向は」、また「押込みは」されているかの動作を判定する。検知信号監視部12は、判定結果を判定信号としてコマンド出力部13へ出力する。
【0055】
図7は図5の操作部20Cを使用したときの押込検知部11の出力をグラフ化し、更に検知信号監視部12による動作判定を示す図である。検知信号監視部12には、検知度合を示す値(Z値)に対して「接触判定の閾値」と「押込みの閾値」が設定される。指の接触があった後、接触判定の閾値を超えると、「回転操作のみ」として判定し、その後、押込みの閾値を超えると、「押込み(あり)+回転」として判定する。その後、押込みの閾値を下回ると、「押込み(なし)+回転」(「回転操作のみ」)として判定する。その後、接触の閾値を下回ると、指が離れた(リリースされた)と判定する。なお、図7では、説明を簡易化するために、接触判定および押込み判定となる閾値は、接触(または押込み)の値と、解除の値を同一として表現している。しかし、これらの値は、ヒステリシスを考慮して異なる値に設定することも可能である。
【0056】
また、上記操作部20、操作部20B及び操作部20Cのいずれか1つと検知信号監視部12は検知手段100を構成する。
【0057】
コマンド出力部(制御手段)13は、検知信号監視部12が判定した動作状態を基に「動作1(第1の動作)」又は「動作2(第2の動作)」のいずれかを指示コマンドとしてミドルウェア部14に与える。検知信号監視部12からは、例えば「回転、+3単位、押込みなし」のような信号を受ける。「回転、+3単位、押込なし」の場合は「動作1、+3単位」、「回転、+3単位、押込あり」の場合は「動作2、+3単位」として指示コマンドをミドルウェア部14に与える。
【0058】
ミドルウェア部14は、コマンド出力部13からの指示コマンドを受けてそのコマンドが割り当てられている機能(ポインタ移動等)に変換する。すなわち、「動作1」に対して「ポインタ移動」に変換し、「動作2」に対して「移動方向回転」に変換する。「動作1、+3単位」の場合、「ポインタ移動」「+3単位」となる。特にポインタを移動する場合は具体的な単位に変換する。例えば1単位=液晶表示画面の3ドットとする。アプリケーション30は、割り当てられた機能を実際に実行する。例えば「動作1」の場合は、図8の(a)に示すように設定方向にポインタ40を移動させる。また、「動作2」の場合、図8の(b)に示すようにポインタ40の方向(以降に動作1の制御を指示された場合、ポインタ40が正方向として移動する向き)を変える。例えば、図8(a)では、動作1により、ポインタ40は「右向き」に移動する。そして、動作2により、図8(b)のように向きが変更されると、以降に動作1が発生した場合に、「斜め下方向」にポインタ40が移動することになる。
【0059】
図9は、本実施の形態の入力装置1とアプリケーション30の動作の概要をまとめたものである。同図において、検知手段100に対して回転操作のみ行うと、ポインタ40を設定方向に進める。また、検知手段100に対して回転操作と同時に押込み操作を行うと、ポインタ40の移動方向を調整する。ポインタ40は右に回転する方向(時計回り方向)と左に回転する方向(反時計回り方向)のそれぞれに対して微調整できる。
【0060】
このように入力装置1はポインタ40の「移動指定」と「方向指定」を連続的に行うことができるため、対象物に対してポインタ40を移動しつつ、所望のタイミングで方向の微調整をしながら効率良く対象物に近づくことができる。例えば図10に示すようにポインタ40を目的地50まで移動させる際にタイミングt1とt2で方向指定を行う。すなわち、タイミングt1とt2で押込操作を行い、方向を指定する。
【0061】
このように本実施の形態の入力装置1によれば、回転操作(又はなぞり操作)を検知する検知手段100と、検知手段100で回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作が検知されない場合にポインタ40の移動の距離を指定する「動作1」を実行させる指示コマンドを出力し、検知手段100で回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作が検知された場合にポインタ40の移動の向きを指定する「動作2」を実行させる指示コマンドを出力するコマンド出力部13とを備えたので、1つのデバイス(検知手段100)で、ポインタ40の「方向指定」と「距離指定」の両方を連続的に行うことができる。しかも片手で操作することができるため、特に携帯電話やPDA等の携帯端末装置や液晶ディスプレイを備えたポータブルディジタル音楽プレイヤーなどの小型電子機器に適用した場合、従来のスピードセレクタ(登録商標)よりも更なる利便性向上が図れる。
【0062】
なお、上記実施の形態では、回転操作(又はなぞり操作)の方向を回転方向としたが、直線方向としても良いことは言うまでもない。
【0063】
また、上記実施の形態では、押込み操作をメカニカルな構造で実現したが、押圧の検知が可能であればバーチャルな構造であっても良い。
【0064】
また、上記実施の形態では、押込みの切り換えをオン/オフの2段階としたが、3段階以上であっても良い。例えばフォーカス移動の場合、以下のように割り当てる。
「動作1」:上下方向へフォーカス移動(押込み操作無し)
「動作2」:左右方向へフォーカス移動(ある圧力より小さい圧力で操作)
「動作3」:上下左右方向へフォーカス移動(ある圧力以上の圧力で操作)
【0065】
図11に押込みの切換えを2段階とした場合と3段階にした場合のフォーカス移動の軌跡を示す。画面上の表示された項目(選択肢)の中で、“B1”から“D4”までフォーカス移動する場合、押込みの切換えを2段階とした場合、例えば“B1”→“B2”→“B3”→“B4”→“C4”→“D4”の移動軌跡70a又は“B1”→“C1”→“D1”→“D2”→“D3”→“D4”の移動軌跡70bとなる。押込みの切換えを3段階とした場合は例えば“B1”→“C2”→“D3”→“D4”の最短の移動軌跡70cとなり、明らかに少ない操作で目的のフォーカス位置まで移動することができる。なお、“B1”→“B2”→“C2”→“C3”・・・ といった軌跡も可能である。
【0066】
(実施の形態2)
上述した実施の形態1の入力装置1では、ポインタ40の方向指定中はポインタ40を停止させた状態にするが、実施の形態2の入力装置では、図12に示すようにポインタ40の方向指定中にポインタ40を規定速度で移動させるようにしている。すなわち、方向指定中もポインタ40を前進させるようにしている。実施の形態2の入力装置は、この新たな動作([動作2])を有する以外は実施の形態1の入力装置1と同様の動作を行うので、装置構成は図1と同様となり、「2」の符号を付けて入力装置2と呼ぶこととする。
【0067】
このように本実施の形態の入力装置2では、ポインタ40の方向指定中もポインタ40が前進するので、更に効率良く目的地に到達することができる。図13は、ポインタ40を目的地50まで移動させる間にタイミングt1とt2で方向指定を行った例である。方向指定を行った際にもポインタ40が移動することから、図10で示した例と比べて移動方向変更時の軌跡が滑らかになる。押込み時のポインタ40の進行速度は、規定速度(予め設定した速度)でなく、押込み操作直前の速度を継承するようにしても良いし、押込み直前の速度を元に、一定の割合で減速(又は加速)するようにしても良い。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態1、2で説明した[動作1]、[動作2]に限定されるものではなく、他に以下に列記するような動作を行うようにすることも可能である。
【0069】
(1)[動作1]は、横方向又は縦方向にフォーカスを移動させる動作であり、[動作2]は、[動作1]でフォーカスが移動する方向と直交する方向にフォーカスを移動させる動作である。これにより、回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作を行うことで、例えば、横方向又は縦方向にフォーカスを移動でき、回転操作(又はなぞり操作)のみ行うことで、回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作を行った場合のフォーカスの移動方向と直交する方向にフォーカスを移動できる。その他、例えば、[動作1]を右上45度の方向とし、[動作2]を、これと直交する右下135度の方向とすること等、任意の直交する2方向にフォーカスを移動させることも可能である。
【0070】
(2)[動作1]は、表示画像のページ送りを行わせる動作であり、[動作2]は、表示画像の拡大/縮小を行わせる動作である。これにより、回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作を行うことで表示画像のページ送りができ、回転操作(又はなぞり操作)のみ行うことで表示画像の拡大/縮小ができる。
【0071】
(3)[動作1]は、表示画像を回転させる動作であり、[動作2]は、表示画像の表示領域を移動させる動作である。これにより、回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作を行うことで表示画像を回転させることができ、回転操作(又はなぞり操作)のみ行うことで表示画像の表示領域を移動させることができる。
【0072】
(4)[動作1]は、表示画像の画素数調整を行わせる動作であり、[動作2]は、表示画像の画質調整を行わせる動作である。これにより、回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作を行うことで表示画像の画素数調整ができ、回転操作(又はなぞり操作)のみ行うことで表示画像の画質調整ができる。
【0073】
(5)[動作1]は、撮影画像の輝度調整を行わせる動作であり、[動作2]は、撮影画像のズームを行わせる動作である。これにより、回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作を行うことで撮影画像の輝度調整ができ、回転操作(又はなぞり操作)のみ行うことで撮影画像のズーム調整ができる。
【0074】
(6)[動作1]は、撮影画像の解像度調整を行わせる動作であり、[動作2]は、撮影画像のズームを行わせる動作である。これにより、回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作を行うことで撮影画像の解像度調整ができ、回転操作(又はなぞり操作)のみ行うことで撮影画像のズーム調整ができる。
【0075】
(7)[動作1]は、再生音声の音質調整を行わせる動作であり、[動作2]は、再生音声の音量調整を行わせる動作である。これにより、回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作を行うことで再生音声の音質調整ができ、回転操作(又はなぞり操作)のみ行うことで再生音声の音量調整ができる。
【0076】
(8)[動作1]は、再生音声の再生位置調整を行わせる動作であり、[動作2]は、再生音声の音量調整を行わせる動作である。これにより、回転操作(又はなぞり操作)と同時に押込み操作を行うことで再生音声の再生位置調整ができ、回転操作(又はなぞり操作)のみ行うことで再生音声の音量調整ができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、1つのデバイスで2つ以上の操作(例えば、ポインタを二次元方向に操作する際に必要となる2つの要素、すなわち「方向指定」及び「距離指定」の両方)を連続的に行えるといった効果を有し、携帯電話やPDA等の携帯端末装置、ノート型のパーソナルコンピュータ、液晶ディスプレイを備えたポータブルディジタル音楽プレイヤーなどの小型電子機器並びにそれらの入力装置、入力方法及び入力プログラムへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1、2 入力装置
10、10B 回転検知部
10B1、10B2 センサ素子
11、11B 押込検知部
12 検知信号監視部
13 コマンド出力部
14 ミドルウェア部
20、20B、20C 操作部
30 アプリケーション
40 ポインタ
50 目的地
70a〜70c 移動軌跡
100 検知手段
101 磁石
102 ホールセンサ
111、111B 圧力センサ
201 回転部
202 突起部
205 表面シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
なぞり操作と押込み操作を検知する検知手段と、
前記検知手段でなぞり操作と同時に押込み操作が検知された場合に第1の動作を実行させ、なぞり操作と同時に押込み操作が検知されない場合に第2の動作を実行させる制御手段と、
を備えた入力装置。
【請求項2】
前記検知手段は、回転操作と押込み操作を検知する回転検知手段であり、
前記制御手段は、前記回転検知手段で回転操作と同時に押込み操作が検知された場合に第1の動作を実行させ、回転操作と同時に押込み操作が検知されない場合に第2の動作を実行させる請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記第1の動作は、ポインタの移動の向きを指定する方向指定の動作であり、
前記第2の動作は、前記ポインタの移動の距離を指定する距離指定の動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記第1の動作は、ポインタの移動の向きを調整しつつ前記ポインタを移動させる動作であり、
前記第2の動作は、前記ポインタの移動の距離を指定する距離指定の動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項5】
前記第1の動作は、第1の方向にフォーカスを移動させる動作であり、
前記第2の動作は、前記第1の動作で前記フォーカスが移動する方向と直交する第2の方向に前記フォーカスを移動させる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項6】
前記第1の動作は、横方向又は縦方向にフォーカスを移動させる動作であり、
前記第2の動作は、前記第1の動作で前記フォーカスが移動する方向と直交する方向に前記フォーカスを移動させる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項7】
前記第1の動作は、表示画像のページ送りを行わせる動作であり、
前記第2の動作は、前記表示画像の拡大/縮小を行わせる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項8】
前記第1の動作は、表示画像を回転させる動作であり、
前記第2の動作は、前記表示画像の表示領域を移動させる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項9】
前記第1の動作は、表示画像を回転させる動作であり、
前記第2の動作は、前記表示画像を回転させつつ、前記表示画像の表示領域を移動させる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項10】
前記第1の動作は、表示画像の画素数調整を行わせる動作であり、
前記第2の動作は、前記表示画像の画質調整を行わせる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項11】
前記第1の動作は、撮影画像の輝度調整を行わせる動作であり、
前記第2の動作は、前記撮影画像のズームを行わせる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項12】
前記第1の動作は、撮影画像の解像度調整を行わせる動作であり、
前記第2の動作は、前記撮影画像のズームを行わせる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項13】
前記第1の動作は、再生音声の音質調整を行わせる動作であり、
前記第2の動作は、前記再生音声の音量調整を行わせる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項14】
前記第1の動作は、再生音声の再生位置調整を行わせる動作であり、
前記第2の動作は、前記再生音声の音量調整を行わせる動作である請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の入力装置を備えた携帯端末装置。
【請求項16】
なぞり操作と押込み操作を検知する検知ステップと、
前記検知ステップでなぞり操作と同時に押込み操作が検知された場合に第1の動作を実行させ、なぞり操作と同時に押込み操作が検知されない場合に第2の動作を実行させる制御ステップと、
を備えた入力方法。
【請求項17】
コンピュータに、
なぞり操作と押込み操作を検知する検知ステップと、
前記検知ステップでなぞり操作と同時に押込み操作が検知された場合に第1の動作を実行させ、なぞり操作と同時に押込み操作が検知されない場合に第2の動作を実行させる制御ステップと、
を実行させるための入力プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−128692(P2011−128692A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284051(P2009−284051)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】