説明

入力装置

【課題】簡単な装置で、描画した内容を保存・再生可能とする。
【解決手段】入力装置1は、描画ペン21を用いて描画を行うための装置であって、ハニカム構造体5と、静電容量センサ7と、制御部27と、記憶部29とを備えている。ハニカム構造体5は、描画面5aを構成する複数のセル5Aと、描画面5aに接近及び離反が可能となるようにセル5A内に収納され描画面5aに接近及び離反可能に配置された磁性体含有の磁性粉19とを有する。静電容量センサ7は、ハニカム構造体5の描画面5aと反対側に設けられ、磁性粉19の移動にしたがって生じる静電容量の変化を検出する。制御部27は、静電容量センサ7からの検出量に基づいて描画内容を取得する。記憶部29は、描画内容を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、特に、磁性体入力部材を用いて描画を行うため入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、子供の絵描き用の装置として、複数のセルを連結したハニカム構造体と、各セル内に黒色の磁性粉と白色流体とを封入した磁気泳動型表示装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この装置の各セルの初期状態では、磁性粉はセルの下部に溜まっており、そのためセルは白色に見える。そして、永久磁石を有するペンをハニカム構造の表面に接触させると、当該セル内において磁性粉がセル内を上方に移動する。そして、磁性粉は白色流体によって上方位置で支持された状態を続け、その結果、ペンが接触したセルは黒色に見える。このようにして、簡単な操作で描画が可能となる。
【0003】
なお、描画内容を消去するためには、永久磁石をハニカム構造体の裏側を通過させることで、磁性粉をセル内で下方に移動させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気泳動型表示装置では、簡単に描画できるというメリットがあるが、描画内容を保存できないという問題がある。しかし、ユーザーからは、描画した内容を保存して将来再生できるようにしてほしいという要望が多くあった。
【0005】
本発明の課題は、簡単な装置で、描画した内容を保存及び再生可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係る入力装置は、磁性体入力部材を用いて描画を行うための装置であって、入力部と、静電容量センサと、制御部と、記憶部とを備えている。入力部は、描画面を構成する複数の収納部と、描画面に接近及び離反が可能なように収納部に収納された磁性体含有の第1材料とを有する。静電容量センサは、入力部の描画面と反対側に設けられ、第1材料の移動にしたがって生じる静電容量の変化を検出する。制御部は、静電容量センサからの検出量に基づいて、描画内容を取得する。記憶部は、描画内容を記憶する。
【0008】
この装置では、磁性体入力部材が入力部の特定の収納部に接近又は接触すると、当該収納部内の第1材料が描画面に接近するように移動する。静電容量センサは、第1材料の移動によって生じた静電容量の変化を検出する。制御部は静電容量センサからの検出量に基づいて描画内容を取得し、続いて、記憶部は描画内容を記憶する。以上のように描画内容は、記憶部によって保存されるので、再生可能である。
【0009】
静電容量センサは、複数のセルに対応した複数の検出部を有してもよい。
【0010】
静電容量センサは、複数の座標における静電容量の変化を検出することができてもよい。制御部は、座標における静電容量の変化に基づいてセルの描画状態を判断することで、描画内容を取得してもよい。
【0011】
入力部は、複数のセル内に収納され第1材料とは異なる色の非磁性及び非導電性の第2材料をさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る入力装置では、簡単な装置で、描画した内容を保存・再生可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態における入力装置の概略分解斜視図。
【図2】第1実施形態における入力装置の概略断面図。
【図3】ハニカム構造体の平面図。
【図4】セル内の模式的構成図。
【図5】入力装置の概略断面図(初期画面状態)。
【図6】入力装置の概略断面図(描画状態)。
【図7】ハニカム構造体と静電容量センサの検出素子との関係を示す模式図。
【図8】セルと静電容量センサ(自己容量検出方式)の検出素子との関係を示す模式図。
【図9】セルと静電容量センサ(相互容量検出方式)の検出素子との関係を示す模式図。
【図10】入力装置の制御構成ブロック図。
【図11】入力装置の操作制御を示すフローチャート。
【図12】画像スキャン制御を示すフローチャート。
【図13】特定のセルに対して描画ペンを近接させた状態を説明するための、ハニカム構造体の平面図。
【図14】特定のセルに対して描画ペンを近接させた状態を説明するための、検出素子ごとの静電容量検出量の変化を示すグラフ。
【図15】変形例としての入力装置の概略断面図。
【図16】第2実施形態における入力装置に用いられる静電容量センサの電極配置の平面図。
【図17】ハニカム構造体と静電容量センサの電極との関係を示す模式図。
【図18】ハニカム構造体と静電容量センサの電極との関係を示す模式図。
【図19】画像スキャン制御を示すフローチャート。
【図20】特定のセルに対して描画ペンを近接させた状態を説明するための、ハニカム構造体の平面図。
【図21】特定のセルに対して描画ペンを近接させた状態を説明するための、受信電極の平面図。
【図22】特定のセルに対して描画ペンを近接させた状態を説明するための、受信電極ごとの静電容量検出量の変化を示すグラフ。
【図23】第3実施形態における入力装置の概略平面図。
【図24】第3実施形態における入力装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.第1実施形態
(1)入力装置の機械的構成
図1〜図8を用いて、本発明の一実施形態に係る入力装置1の機械的構成について説明する。入力装置1は、永久磁石を有する入力部材を用いて描画を行うための装置であり、描画内容を保存可能である。
【0015】
入力装置1は、図1に示すように、主に、透明シート3と、ハニカム構造体5と、静電容量センサ7と、制御基板9とを備えている。透明シート3、ハニカム構造体5、及び静電容量センサ7は、この順番で上から重ねられた平面状部材である。この実施形態では、上記部材は平面視で長方形になっている。また、静電容量センサ7は、FPC(Flexible Printed Circuit)11によって制御基板9に接続されている。
【0016】
なお、図2に示すように、静電容量センサ7及び透明シート3との四辺同士の間には、スペーサ13が設けられている。スペーサ13は、ハニカム構造体5に作用する荷重を低減するための部材である。
【0017】
透明シート3は、透明であればよく、例えば、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートである。
【0018】
ハニカム構造体5は、磁気泳動型入力装置であり、図3に示すように、複数のセル5Aが連結して構成された部材である。ハニカム構造体5は概ね透明の部材からなる。セル5Aは、平面六角形の形状であり、全体でハニカム構造となっている。ハニカム構造体5は、図4に示すように、図上側の描画面5aと、図下側の反対側面5bとを有している。
【0019】
各セル5Aには、図4に示すように、流体17と、磁性粉19とが封入されている。流体17は、例えば白色の非磁性・非導電性材料であり、例えば絶縁性の樹脂又はセラミックからなる。磁性粉19は、例えば鉄粉であり、必要に応じて黒色にコーティングされている。なお、図4においては各材料は模式的に描かれており、粒子の寸法・比率は実際の物とは異なる。
【0020】
図4では、磁性粉19はセル5A内で下側(すなわち、反対側面5b近傍)に位置しており、この場合セル5Aは白色に見える。一方、磁性粉19が上側(すなわち、描画面5a近傍)に位置した場合には、図3の描画部分23に示すように、セル5Aは黒色に見える。
【0021】
図5は、全てのセル5Aにおいて、磁性粉19が下部に配置されている状態を示している。図6は、永久磁石からなる描画ペン21を1つのセル5Aの描画面5aに近づけており、それによって磁性粉19が当該セル5Aの上部に移動してそこに留まっている状態を示している。
【0022】
静電容量センサ7は、透明に作成する場合は、例えばPETからなるフィルムの上にITO(Indium Tin Oxide)を用いてセンサを構成する。また、静電容量センサ7は、非透明に作成する場合は、ガラスエポキシ基板などのリジット基板又はFPCなどのフレキシブル基板で構成する。
【0023】
図7は、ハニカム構造体5のセル5Aと、静電容量センサ7の検出素子7Aとの関係を示している。静電容量センサ7の検出素子7Aは、セル5Aに一対一で対応しており、さらにセル5Aと同じ六角形状を有している。静電容量センサ7は、投影容量方式のうちの自己容量検出方法であって、図8にその構造を示している。なお、図7は一実施例であり、静電容量センサの検出素子がセル5Aと一対一に対応していさえすればよく、検出素子は六角形状ではなく他の形状であってもよい。 図8を用いて、静電容量センサ7の静電容量検出原理について説明する。図8(a)に示すように磁性粉19がセル5Aの下部にある消去状態では、磁性粉19と検出素子7Aの距離(d1)が短くなっている。それに対して、図8(b)に示すように磁性粉19がセル5Aの上部にある描画状態では、磁性粉19と検出素子7Bの距離(d2)が長くなっている。したがって、図8(a)の状態では検出素子7Aによって検出される静電容量は大きくなっており、図8(b)の状態では検出素子7Aによって検出される静電容量は小さくなっている。
【0024】
図9は、投影容量方式のうちの相互容量検出方法の静電容量センサを示している。この静電容量センサの検出素子7Bは、セル5A’に一対一で対応しており、さらにセル5A’と同じ六角形状を有している。各検出素子7Bは、送信センサ7Cと受信センサ7Dとを有している。送信センサ7Cと受信センサ7Dは、所定の間隔を空けて配置されている。なお、図9は一実施例であり、静電容量センサの検出素子がセル5Aと一対一に対応していさえすればよく、検出素子は六角形状ではなく他の形状であってもよい。
【0025】
図9を用いて、静電容量センサ7の静電容量検出原理について説明する。図9(a)に示すように磁性粉19がセル5A’の下部にある消去状態では、磁性粉19と検出素子7Bの距離が短くなっており、つまり導電体である磁性粉19の影響が大きくなり、その結果送信センサ7Cと受信センサ7Dとの間の結合容量が少なくなる。それに対して、図9(b)に示すように磁性粉19がセル5A’の上部にある描画状態では、磁性粉19と検出素子7Bの距離が長くなっており、導電体である磁性粉19の影響が少なくなり、その結果送信センサ7Cと受信センサ7Dとの間の結合容量が多くなる。
【0026】
(2)入力装置の制御構成
図10を用いて、入力装置1の制御構成を説明する。制御基板9は、制御部27と、記憶部29とを備えている。制御部27は、CPU、RAM、ROM等からなりプログラムを実行するコンピュータを有している。制御部27には、操作部31からの入力信号、静電容量センサ7によって検出された静電容量の変化からなる検出信号が入力される。制御部27は、検出信号を画像データに変換して、記憶部29に保存する。
【0027】
記憶部29は、制御部27から送信されてきた画像データが保存されるメモリである。記憶部29は、ハードディスク又はフラッシュメモリであり、好ましくは入力装置1から取り外し可能なメモリである。
【0028】
操作部31は、操作者が操作することで、入力装置1に操作信号を入力するための装置である。操作部31は、電源ボタン31aと、準備開始ボタン31bと、画像保存ボタン31cと、消去完了通知ボタン31dと、その他ボタンを有している。準備開始ボタン31bが押されると、画像検出初期値が保存される。画像保存ボタン31cが操作されると、画像スキャン動作が実行される。消去完了通知ボタン31dは、消去後に操作されるボタンであり、それが操作されると一連の画像入力動作が終了する。
【0029】
通信部59は、外部の装置と通信するための装置である。制御部27は、通信部59を介して記憶部29に保存された画像データを外部の装置に送信できる。
【0030】
(3)描画・記録制御動作
図11を用いて、描画・記録制御動作を説明する。なお、以下の説明において、主な動作主体は制御部27である。
【0031】
ステップS1では、制御部27は、準備開始ボタン31b又は消去完了通知ボタン31dが押されるのを待つ。
【0032】
ステップS2では、制御部27は、静電容量センサ7からの検出信号に基づいて、静電容量センサ7の各検出素子7Aの初期値を保存する。
【0033】
ステップS3では、制御部27は、画像保存ボタン31cが押されるのを待つ。なお、画像保存ボタン31cが押されるのは、操作者が、描画ペン21を使って入力装置1に描画を行い、描画終了後にハニカム集合体5の表面に描かれた画像を保存したいと思った場合である。
【0034】
ステップS4では、制御部27は、画像スキャン動作を実行する。画像スキャン動作については後述する。
【0035】
ステップS5では、制御部27は、画像スキャン動作により得られた全ての検出素子7Aからの静電容量変化を画像データに変換する。
【0036】
ステップS6では、制御部27は、画像データを記憶部29に保存する。
【0037】
ステップS7では、制御部27は、消去完了通知ボタン31dが押されるのを待ち、その後プロセスはステップS1に戻る。なお、通常、消去通知ボタン31dが押されるのは、操作者が図示しない消去手段を用いて入力装置1における画像を消去した後である。消去手段(図示せず)としては、例えば、入力装置1の下面又は上面に永久磁石を用いて磁性粉19をセル5Aの下部に移動させるものがある。なお、消去作業後に自動的に消去完了通知ボタンが操作される構成であってもよい。例えば、消去レバーを端まで移動すると消去完了通知ボタンが押されるような構造が考えられる。
【0038】
(4)画像スキャン制御動作
図12を用いて、画像スキャン制御動作を説明する。なお、以下の説明において、主な動作主体は制御部27である。
【0039】
ステップS11では、制御部27は、No.n(nは自然数)のセル5Aの静電容量を検出する。最初に検出されるセル5AはNo.0である。
【0040】
ステップS12では、制御部27は、検出した静電容量の値が初期値に比べて十分に小さい否かを判断する。YesであればプロセスはステップS13に移行し、NoであればプロセスはステップS16に移行する。
【0041】
図13及び図14を用いて、各セル5Aにおいて静電容量がどのように変化しているかを説明する。図13では、描画ペン21の先端はセル41を指している。この場合、図14に示すように、各セルの静電容量検出量は、描画したタイミングAにおいて減少する。ただし、セル41に対応する検出素子41の静電容量検出量の減少は大きく、それに対して、セル41の周囲のセル42〜46に対応する検出素子42〜46の静電容量検出量の減少は小さい。
【0042】
ステップS13では、制御部27は、No.nのセル5Aは「描画あり」と判断する。
【0043】
ステップS16では、制御部27は、No.nのセル5Aは「描画なし」と判断する。
【0044】
ステップS13又はステップS16が終了すると、プロセスはステップS14に移行する。ステップS14では、制御部27はセル5Aの番号nをインクリメントする。
【0045】
ステップS15では、制御部27は、番号nが最大セル番号を超えたか否かを判断する。Yesであれば、プロセスはステップS11に戻る。Noであればプロセスは終了する。
【0046】
(5)画像再生方法
操作者は、記憶部29を画像入力装置1から取り外して、他のコンピュータに接続することで、画像データを画面に表示又はプリンタに印刷できる。また、制御部27は、通信部59を介して、画像データを他のコンピュータに送信することもできる。
【0047】
(6)変形例
図15を用いて、第1実施形態の変形例を説明する。この場合、ハニカム構造体5と静電容量センサ7との間には、補強シート部材65が設けられている。補強シート部材65は、補強用樹脂ボード又はガラスからなる。これにより、入力装置1’の強度が向上している。
【0048】
2.第2実施形態
(1)入力装置の機械的構成
第2実施形態では、入力装置1の基本的な構成は第1実施形態と同様である。以下、異なる点を中心に説明する。
【0049】
図16、図17及び図18に示すように、静電容量センサ7’は、投影容量方式の相互容量検出方法を採用している。したがって、静電容量センサ7’は、Y方向に延びる複数の送信センサ33と、X方向に延びる複数の受信センサ35とから構成されている。送信センサ33と受信センサ35は、交互に並んで配置され、座標における静電容量の変化を検出可能になっている。なお、図18に示すように受信センサ35の位置とセル5Aの位置は一致していないが、両者の位置関係は予め把握されている。具体的には、1つのセル5Aには複数の受信センサ35が重なっているが、当該セル5Aが描画された場合には容量変化を検出している複数の受信センサ35に基づいて描画されたセル5Aを検出するようになっている。
【0050】
(2)画像スキャン制御動作
図19を用いて、画像スキャン制御動作を説明する。なお、以下の説明において、主な動作主体は制御部27である。
【0051】
ステップS21では、制御部27は、全座標の静電容量を検出する。
【0052】
ステップS22では、制御部27は、特定の座標において検出した静電容量の値が初期値に比べて十分に小さい否かを判断する。YesであればプロセスはステップS23に移行し、NoであればプロセスはステップS27に移行する。
【0053】
ステップS23では、制御部27は、当該座標は「描画あり」と判断する。
【0054】
ステップS24では、制御部27は、描画座標から描画セルを特定する。
【0055】
ステップS27では、制御部27は、当該セル5Aは「描画なし」と判断する。
【0056】
図20、図21及び図22を用いて、各座標における静電容量の変化及び描画座標から描画セルを特定する方法を説明する。図20では、描画ペン21の先端はセル51を指している。この場合、図21に示すように、セル51に最も重なっている面積が大きい受信センサを受信センサaとして、その周囲の受信センサを受信センサb〜eとする。セルaの次にセル51に最も多くの面積が重なっている受信センサが受信センサbである。この場合、図22に示すように、各セルの静電容量検出量は、描画したタイミングAにおいて減少する。ただし、受信センサaにおける静電容量検出量の減少が最も大きく、その次に受信センサbにおける静電容量検出量の減少が大きく、受信センサc〜gの静電容量検出量の減少は小さい。以上より、制御部27は、セル51が描画されたことを知ることができる。
【0057】
なお、この実施形態では、受信センサc〜gにおいて検出した静電容量の値が初期値に比べて十分に小さい場合は、それぞれ、セル57、52、53、54、55が描画されたと判断される。
【0058】
ステップS24又はステップS27が終了すると、プロセスはステップS25に移行する。ステップS25では、対象座標を更新する。
【0059】
ステップS26では、制御部27は、次座標があるか否かを判断する。Yesであれば、プロセスはステップS22に戻る。Noであればプロセスは終了する。
【0060】
3.第3実施形態
図23及び図24に示すように、入力装置1’’は、筐体61に装着された描画消去用磁石63を有している。描画消去用磁石63は、図に示すように、静電容量センサ7の下方において、ハニカム構造体5及び静電容量センサ7の幅方向に対応して延びており、さらに両部材の長手方向に図示しないスライド機構によって移動可能になっている。描画消去用磁石63がハニカム構造体5の下方を通過すると、そのときにセル5A内の磁性粉19が下方に移動する。これにより、静電容量が初期値に戻る。
【0061】
なお、描画消去用磁石63は、移動範囲の両端において静電容量センサ7のエリアから外側に離れた位置に配置される。これにより、ハニカム構造体5においてセル5A内の磁性粉19が描画消去用磁石の影響を受けにくい。特に、描画消去用磁石63は、静電容量センサ7の縁から10mm以上離れていることが好ましい。
【0062】
4.特徴
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0063】
(A)本発明の一見地に係る入力装置1は、描画ペン21(磁性体入力部材)を用いて描画を行うための装置であって、ハニカム構造体5(入力部)と、静電容量センサ7と、制御部27と、記憶部29とを備えている。ハニカム構造体5は、描画面を構成する複数のセル5A(収納部)と、描画面5aに接近及び離反が可能となるようにセル5Aに収納された磁性粉19(第1材料)とを有する。静電容量センサ7は、ハニカム構造体5の描画面5aと反対側に設けられ、磁性粉19の移動にしたがって生じる静電容量の変化を検出する。制御部27は、静電容量センサ7からの検出量に基づいて描画内容を取得する。記憶部29は、描画内容を記憶する。
【0064】
この装置では、描画ペン21がハニカム構造体5の特定のセル5Aに接近又は接触すると、当該セル5A内の磁性粉19が描画面5aに接近するように移動する。静電容量センサ7は、磁性粉19の移動によって生じた静電容量の変化を検出する。制御部27は静電容量センサ7からの検出量に基づいて描画内容を取得し、続いて、記憶部29は描画内容を記憶する。以上のように描画内容は、記憶部29によって保存されるので、再生可能である。
【0065】
(B)第1実施形態では、静電容量センサ7は、複数のセル5Aに対応した複数の検出素子7A又は7Bを有している。
【0066】
(C)第2実施形態では、静電容量センサ7’は、複数の座標における静電容量の変化を検出することができる。制御部27は、座標における静電容量の変化に基づいてセルの描画状態を判断することで、描画内容を取得する。
【0067】
5.他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0068】
(a)前記実施形態ではセル内で移動する材料としては磁性粉が用いられていたが、磁性流体であってもよい。
【0069】
(b)前記実施形態ではセル内で移動する材料としては鉄粉が用いられていたが、フェライトなどの他の磁性材料であってもよい。
【0070】
(c)前記実施形態では磁気泳動描画装置としてハニカム構造体を採用していたが、本発明はこの実施形態に限定されない。例えば、透明シートの下部に複数のマイクロカプセルを配置して、マイクロカプセル内に磁性粉及び白色流体を配置してもよい。
【0071】
(d)前記実施形態ではハニカム構造体が表示用画面を兼用していたが、本発明はこの実施形態に限定されない。例えば、液晶画面パネルをハニカム構造体の描画面側に設けて描画と同時に液晶画面パネルに描画内容を表示させてもよい。この場合は、ハニカム構造体は検出機能だけを実現している。
【0072】
(e)前記実施形態では磁性粉が黒色で流体が白色あったが、両者とも他の色であってもよいし、描画色は複数あってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、磁性体入力部材を用いて描画を行うため入力装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 入力装置
3 透明シート
5 ハニカム構造体(入力部)
5A セル(収納部)
5a 描画面
5b 反対側面
7 静電容量センサ
7A 検出素子
7B 検出素子
7C 送信センサ
7D 受信センサ
9 制御基板
11 FPC
13 スペーサ
17 流体(第2材料)
19 磁性粉(第1材料)
21 描画ペン
23 描画部分
27 制御部
29 記憶部
31 操作部
31a 電源ボタン
31b 準備開始ボタン
31c 画像保存ボタン
31d 消去完了通知ボタン
33 送信センサ
35 受信センサ
57 補強シート部材
59 通信部
61 筐体
63 描画消去用磁石
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【特許文献1】特許第3126119号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体入力部材を用いて描画を行うための装置であって、
描画面を構成する複数の収納部と、前記描画面に接近及び離反が可能なように前記収納部内に収納された磁性体含有の第1材料とを有する入力部と、
前記入力部の前記描画面と反対側に設けられ、前記第1材料の移動にしたがって生じる静電容量の変化を検出するための静電容量センサと、
前記静電容量センサからの検出量に基づいて描画内容を取得する制御部と、
前記描画内容を記憶する記憶部と、
を備えた入力装置。
【請求項2】
前記静電容量センサは、前記複数のセルに対応した複数の検出部を有する、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記静電容量センサは、複数の座標における静電容量の変化を検出することができ、
前記制御部は、前記座標における静電容量の変化に基づいて前記セルの描画状態を判断することで、前記描画内容を取得する、請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記複数のセル内に収納され前記第1材料とは異なる色の非磁性及び非導電性の第2材料をさらに有している、請求項1〜3のいずれかに記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−118671(P2012−118671A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266531(P2010−266531)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】