説明

共振器、フィルタおよびアンテナ分波器

【課題】 小型化が可能、または、設計の自由度を向上させることが可能な共振器、フィルタおよびアンテナ分波器を提供すること。
【解決手段】 本発明は、共振子(S31)と、共振子(S31)と並列に接続されたインダクタ(L31)と、共振子(S31)と並列に接続されたキャパシタ(C31)と、を備える共振器である。また、この共振器を有するフィルタおよびアンテナ分波器である。本発明によれば、減衰特性を改善するため共振子に付加するインダクタンスを小さくでき、実装面積を削減できる。または、2つの反共振点を任意に設定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共振器、フィルタおよびアンテナ分波器に関し、特にインダクタおよびキャパシタが共振子に並列に接続された共振器、フィルタおよびアンテナ分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴って携帯電話、携帯情報端末等が急速に普及している。例えば、携帯電話端末においては、800MHz〜1.0GHz帯および1.5GHz〜2.0GHz帯といった高周波帯が使用されている。これら移動通信システム用の機器には、共振器を用いた高周波用フィルタや、高周波用フィルタを用いたアンテナ分波器が用いられている。
【0003】
これらに用いられる共振器は図1(a)のように入力端子Inと出力端子Outの間に共振子S21が設けられ、一端子対共振器を構成する。共振子としては弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子や圧電薄膜共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)が用いられる。図1(b)はSAW共振子の上視図である。圧電基板70上に入力端子Inと出力端子Outに接続されたすだれ電極(IDT:インターディジタルトランスデューサ、Interdigital Transducer)とIDTの両側の反射器R0とが設けられる。すだれ電極IDTおよび反射器R0は例えばアルミニウム(Al)等の金属で形成される。なお、図中、反射器R0およびIDTの電極指は実際より少なく記載している。
【0004】
図1(c)はFBARの上視図、図1(d)はFBARの断面図である。基板72(例えばシリコン基板)の空隙76上に下部電極75、圧電膜74、上部電極73が積層している。圧電膜74は例えば窒化アルミニウムが用いられる。空隙76の代わりに多層反射膜が設けられる場合もある。
【0005】
高周波フィルタとしては、例えば一端子共振器を直列と並列に接続したラダー型フィルタが用いられる。図2はラダー型フィルタの構成図を示した図である。入力端子Inと出力端子Outの間に、直列に直列共振子S11、S12および並列に並列共振子P11、P12が接続される。図3および図4を用い、ラダー型フィルタの動作原理について説明する。ラダー型フィルタは直列共振器と並列共振器に分解することができる。図3(a)を参照に、直列共振器は、共振子S21を一端子対共振器としたとき、その2つの信号端子のうち、一方を入力端子In、他方を出力端子Outとしたものである。図3(b)を参照に、並列共振器は、共振子P21を一端子対共振器としたとき、その2つの信号端子のうち、一方をグランド端子に接続し、他方を入力端子Inと出力端子Outの短絡線路に接続したものである。
【0006】
図3(c)は、直列共振器と並列共振器の入力端子Inから出力端子Outへの通過特性を示した図である。横軸は周波数、縦軸は通過量である。直列共振器の通過特性は実線、並列共振器の通過特性は破線で示す。直列共振器の通過特性は、1つの共振点(共振周波数)frsと1つの反共振点(反共振周波数)fasとを有する。共振点frsで通過量は最大となり、反共振点fasで通過量は最小となる。一方、並列共振器の通過特性は、1つの共振点frpと1つの反共振点fapとを有する。共振点frpで通過量は最小となり、反共振点fapで通過量は最大となる。
【0007】
図4(a)は1段構成のラダー型フィルタの構成図である。図4(a)を参照に、直列共振子S22が直列共振器として入力端子Inと出力端子Outに直列に接続され、並列共振子P22が並列共振器として出力端子Outとグランド間に接続される。このとき、直列共振器の共振点frsと並列共振器の反共振点fapは概一致するように設計する。図4(b)は1段構成のラダー型フィルタの入力端子Inから出力端子Outへの通過特性である。横軸は周波数、縦軸は通過量を示す。図4(a)の構成により、直列共振器と並列共振器の通過特性が合成され,図4(b)の通過特性が得られる。通過量は、直列共振器の共振点frsと並列共振器の反共振点fap付近が最大となり、直列共振器の反共振点fapおよび並列共振子の共振点frpが極小となる。そして、並列共振器の共振点frpから直列共振器の反共振点fapの周波数帯域が通過帯域となり、並列共振器の共振点frp以下および直列共振器の反共振点fap以上の周波数帯域が減衰域となる。このように、ラダー型フィルタはバンドパスフィルタとして機能する。
【0008】
このような、共振子を用いたフィルタを使用しアンテナ分波器が提供されている。アンテナ分波器は2つのバンドパスフィルタを用い、送信用フィルタを送信端子とアンテナ端子の間、受信用フィルタを受信端子とアンテナ端子の間に配置する。アンテナ端子と送信用フィルタまたはアンテナ端子と受信用フィルタの間に整合回路(例えば移相器)を設ける。そして、アンテナ分波器は送信端子から入力した送信信号をアンテナ端子から出力し、アンテナ端子から入力した受信信号を受信端子から出力する機能を有する。
【0009】
整合回路の機能を、例えばアンテナ端子と受信用フィルタの間に整合回路を設けた場合について説明する。整合回路は送信端子から入力した送信信号の電力が受信用フィルタに侵入することを抑制し、アンテナ端子から出力させる機能を有する。通常、送信信号の周波数帯では受信用フィルタのインピーダンスはほぼ0である。よって、送信信号の電力の大部分は受信用フィルタに侵入してしまう。そこで、整合回路により受信用フィルタの送信信号の周波数帯でのインピーダンスをほぼ無限大に変換する。これにより、送信信号の電力が受信用フィルタに侵入することを抑制することができる。
【0010】
特許文献1ないし特許文献4にはラダー型フィルタを構成する共振子に並列にインダクタが接続されたフィルタが開示されている。図5は上記従来例に係るフィルタの構成図である。図5を参照に、入力端子Inと出力端子Out間に直列に直列共振子S11、S12が接続し、共振子S11およびS12間のノードとグランド間に並列共振子P11が接続している。出力端子Outとグランド間に並列共振子P12が接続している。さらに、直列共振子S11およびS12に、各々並列にインダクタL11およびL12が接続している。このように構成することにより、直列共振器の反共振点が2つ得られる。そこで、この2つの反共振点を用いることにより減衰特性の優れたフィルタを提供することができる。
【0011】
なお、図3および図4を用い説明した共振点、反共振点を有する機能(二重共振特性)は、共振子としてSAW共振子またはFBARを用いた場合も同様である。本明細書においては、SAW共振子またはFBARのように二重共振特性を有する共振子を単に共振子という。また、共振子単独または共振子に並列にインダクタあるいはキャパシタを接続したものを共振器(一端子対共振器)という。
【特許文献1】特開2003−332885号公報
【特許文献2】特開2003−69382号公報
【特許文献3】特開2004−135322号公報
【特許文献4】特開2004−242281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら従来例においては、共振子に並列に接続したインダクタが大型となり、共振器、フィルタおよび分波器を小型化できないという課題がある。また、2つの反共振点を任意に設定できない。このため、例えば、2つの反共振点を利用するフィルタにおいて設計の自由度が低下するという課題がある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑み、小型化が可能、または、設計の自由度を向上させることが可能な共振器、フィルタおよびアンテナ分波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、共振子と、該共振子と並列に接続されたインダクタと、前記共振子と並列に接続されたキャパシタと、を具備することを特徴とする共振器である。本発明によれば、小型化が可能、または、設計の自由度を向上させることが可能な共振器を提供することができる。
【0015】
本発明は、前記キャパシタが有する容量値は、前記共振子の容量値の0.2倍以上であることを特徴とする共振器とすることができる。本発明によれば、実用上実装面積を削減する効果が得られる。
【0016】
本発明は、前記共振子は表面弾性波共振子および圧電薄膜共振子のいずれか一方であることを特徴とする共振器とすることができる。
【0017】
本発明は、前記キャパシタおよび前記インダクタンスの少なくとも一方は、前記共振子が形成された同一基板上に形成されることを特徴とする共振器とすることができる。本発明は、前記キャパシタは弾性表面波インターディタルトランスデューサであることを特徴とする共振器とすることができる。本発明は、前記キャパシタはMIMキャパシタであることを特徴とする共振器とすることができる。本発明によれば、実装面積を削減することができる。
【0018】
本発明は、前記キャパシタは、前記共振子が実装されたパッケージのパッケージ材料を誘電体としたMIMキャパシタであることを特徴とする共振器とすることができる。本発明は、前記キャパシタおよび前記インダクタンスの少なくとも一方は、前記共振子が形成された基板以外の基板上に形成されることを特徴とする共振器とすることができる。
【0019】
本発明は、前記キャパシタおよび前記インダクタンスの少なくとも一方は、前記共振子が実装されたパッケージ外に設けられたチップキャパシタまたはチップインダクタであることを特徴とする共振器とすることができる。本発明は、前記インダクタは、前記共振子が実装されたパッケージに線路パターンとして形成されたインダクタであることを特徴とする共振器とすることができる。
【0020】
本発明は、直列共振器と、並列共振器とを具備し、前記直列共振器および前記並列共振器の少なくとも一つが上記共振器であることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。また、本発明は、前記直列共振器の少なくともひとつが上記共振器であることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、実装面積が小さく、任意の周波数の減衰量を改善することが可能なラダー型フィルタを提供することができる。
【0021】
本発明は、多重モード弾性表面波フィルタと、上記共振器と、を具備することを特徴とする弾性表面波フィルタとすることができる。本発明によれば、実装面積が小さく、任意の周波数の減衰量を改善することが可能な多重モード表面波フィルタを提供することができる。
【0022】
本発明は、アンテナ端子と、前記アンテナ端子に接続した第1のフィルタおよび第2のフィルタと、を具備し、前記第1のフィルタおよび第2のフィルタの少なくとも一方が上記フィルタであることを特徴とするアンテナ分波器とすることができる。本発明によれば、実装面積が小さく、任意の周波数の減衰量を改善することが可能なアンテナ分波器を提供することができる。
【0023】
本発明は、前記第1のフィルタおよび第2のフィルタの少なくとも一方は上記ラダー型フィルタであり、アンテナ端子に最も近い直列共振器が上記共振器であることを特徴とするアンテナ分波器とすることができる。本発明によれば、上記共振器を分波器の整合回路として機能するとともに、フィルタの減衰特性を向上させるために用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型化が可能、または、設計の自由度を向上させることが可能な共振器、フィルタおよびアンテナ分波器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、従来例において、減衰特性が改善できるメカニズムについて説明する。まず、共振子の共振点ω、反共振点ωについて説明する。図6(a)は図1(a)で示した共振子の等価回路(二重共振モデル)を示した図である。なお、以下の説明では、キャパシタの符号(例えばC0)はキャパシタのキャパシタンスとしても使用する。インダクタについても同様である。図6(a)を参照に、入力端子Inと出力端子Outの間に共振子が有するキャパシタC0と、C0に並列に、インダクタLmとキャパシタCmが直列に接続される。ここで、キャパシタンスC0はSAW共振子ではIDTで発生する静電容量に相当し、FBARでは上部電極と下部電極間の静電容量に相当する。LmおよびCmは共振周波数、反共振周波数を決定するパラメータである。
【0026】
図6(a)の等価回路において、入力端子Inと出力端子Outの間のインピーダンスZが0となる周波数が共振周波数fであり、アドミッタンスYが0となる周波数が反共振周波数fである。また、共振角周波数ω=2πfおよび反共振角周波数ω=2πfである。Z=0およびY=0を解くことにより、数式1の共振角周波数ωおよび反共振角周波数ωが得られる
【数1】

【0027】
ここで、共振角周波数ωおよび反共振角周波数ωは一定値に固定して考える。数式1を解くとLmおよびCmはC0の関数として数式2のように表される。
【数2】

【0028】
図6(b)は図6(a)の等価回路と数式2を用いて計算した共振子の周波数に対する減衰量を示す図である。ここで、共振周波数fは1900MHzおよび反共振周波数fは1970MHz、C0を2.0pFとした。図6(b)を参照に、共振点f(ω)で減衰量は最小となり、反共振点f(ω)で減衰量は最大となる。
【0029】
次に、従来例である共振子に並列にインダクタが接続された共振器について説明する。図7(a)はこの共振器の構成図であり、図7(b)はその等価回路である。図7(a)を参照に、入力端子Inと出力端子Out間に設けられた共振子S21に並列にインダクタL21が接続している。図7(b)を参照に、図6(a)で説明した共振子の等価回路に並列にインダクタンスL21が接続している。この等価回路を用い、インピーダンスZが0となる共振角周波数ω´を求めると数式3となる。この場合,共振子単独の場合の共振角周波数ωと等しくなる。
【数3】

【0030】
一方、アドミッタンスYが0となる反共振角周波数を求めると数式4および数式5のように反共振点1ω´a1および反共振点2ω´a2の2つの反共振角周波数が得られる。
【数4】

【数5】

【0031】
図7(c)は図7(b)の等価回路を用いて計算した図7(a)に記載の共振器の周波数に対する減衰量を示す図である。ここで、共振周波数fは1900MHzおよび反共振周波数fは1970MHz、C0を2.0pF、L21を3.64nHとした。図7(c)を参照に、共振点f´(ω´)で減衰量は最小となり、反共振点1f´a1(ω´a1)および反共振点2f´a2(ω´a2)で減衰量は極大となる。すなわち、反共振点1f´a1(ω´a1)および反共振点2f´a2(ω´a2)が減衰極となる。従来例に係る並列インダクタを付加した共振器を有するラダー型フィルタは、反共振点1または反共振点2を利用してフィルタの減衰特性を改善するものである。
【0032】
数式4および5より、反共振点1ω´a1および反共振点2ω´a2はC0とL21の積で決まる。図8はL21を3.64nHに固定し、共振子S21のキャパシタンスC0に対する反共振周波数f´a1およびf´a2を示した図である。横軸はC0およびC0×L21を縦軸は反共振周波数および共振周波数である。図8を参照に、反共振周波数f´a1およびf´a2は1つのパラメータ(C0×L21)により一意的に決まってしまう。したがって、例えば、2つの反共振点(減衰極)を用い設計するフィルタにおいては、一方の反共振点を所望の周波数とすると、他方の反共振点は所望の周波数値に設計できず、設計の自由度が低下してしまう。
【実施例1】
【0033】
以下、実施例1に係る共振器の構成と原理について説明する。図9(a)は実施例1に係る共振器18の構成図である。図9(a)を参照に、実施例1に係る共振器は、入力端子Inおよび出力端子Outの間に設けられた共振子S31と、共振子S31と並列に接続されたインダクタL31と、共振子S31と並列に接続されたキャパシタC31とを有している。図9(b)は実施例1に係る共振器18の等価回路(二重共振モデル)である。図6(a)の共振子の等価回路にインダクタンスL31およびキャパシタンスC31が並列に付加されている。共振器18のインピーダンスZが0となる共振角周波数ω´´rは数式6のように共振子S31の共振角周波数ωrと等しくなる。
【数6】

【0034】
一方、アドミッタンスYが0となる反共振角周波数を求めると数式7および数式8のように反共振点1ω´´a1および反共振点2ω´´a2の2つの反共振角周波数が得られる。
【数7】

【数8】

【0035】
図9(c)は図9(b)の等価回路を用いて計算した実施例1に係る共振器の周波数に対する減衰量を示す図である。ここで、共振周波数fは1900MHzおよび反共振周波数fは1970MHz、C0を2.0pF、L31を1.82nH、C31を2.0pFとした。図9(c)を参照に、共振点f´´(ω´´)で減衰量は最小となり、反共振点1f´´a1(ω´´a1)および反共振点2f´´a2(ω´´a2)で減衰量は極大となる。すなわち、反共振点1f´´a1(ω´´a1)および反共振点2f´´a2(ω´´a2)が減衰極となる。したがって、従来例の共振器と同様に、実施例1に係る共振器も、反共振点1または反共振点2を利用してラダー型フィルタの減衰特性を改善することができる。
【0036】
図10はL31を3.64nHに固定し、C31を0pFから2.0pFに変化させたときのC0に対する反共振周波数f´´a1およびf´´a2を示した図である。横軸はC0およびC0×L31を、縦軸は反共振周波数および共振周波数を示す。図10を参照に、反共振周波数f´´a1およびf´´a2はパラメータ(C0×L31)とC31により決めることができる。したがって、2つの反共振点を任意に設定することができる。よって、例えば、2つの反共振点(減衰極)を用い設計するフィルタにおいても、2つの反共振点を所望の周波数に設計することができ、設計の自由度を向上させることができる。
【0037】
次に、2つの反共振点のうち1つ(反共振点1)を減衰極として使用する場合の実施例1に係る共振器の効果について説明する。図11(a)は従来例1に係る共振器18a、図11(b)は比較例1に係る共振器18b、図11(c)は実施例1に係る共振器18の構成図である。図11(a)を参照に、従来例1に係る共振器18aは、0.885pFのキャパシタンスを有する共振子S21に4.8nHのインダクタL21を並列に付加した共振器である。図11(b)を参照に、比較例1は共振器18aのインダクタの小型化を目的に、共振子S22のキャパシタンスを1.375pFとし、並列に付加するインダクタL22のインダクタンスを3.09nHとした例である。従来例1の(C0×L21)と比較例1の(C0×L22)はほぼ同じ値となる。このため、従来例1と比較例1はほぼ同じ反共振点1を有する。図11(c)を参照に、実施例1に係る共振器18は、共振子S31のキャパシタンスは従来例1の0.885pFと同じとし、並列に付加するインダクタL31のインダクタンスは比較例1と同じ3.09nHとする。反共振点1を従来例1と同じとするため、さらに並列にキャパシタンス0.885pFのキャパシタC31を付加する。
【0038】
図12(a)は従来例1、比較例1および実施例1に係る共振器の通過特性の計算結果を示した図であり、横軸は周波数、縦軸は減衰量を示す。図12(b)は図12(a)の反共振点1付近の拡大図であり、この共振器を用い作製されるべきフィルタに求められる減衰域と通過域を示している。図12(a)を参照に、3つの共振器の反共振点1の周波数はほぼ一致している。図12(b)を参照に、求められる減衰域において、比較例1は従来例1に比べ減衰量が小さく減衰特性が悪い。一方、実施例1と従来例1との曲線はほぼ重なっており同程度の減衰特性である。
【0039】
インダクタは大きな面積が必要なため、実装面積が大きくなる。そこで、従来例1に係る共振器18aを比較例1や実施例1に係る共振器18b、18とすることにより、実装面積を削減することができる。比較例1は反共振点を従来例1と同じとするため、共振子S22のキャパシタンスを従来例1より大きくする。このため、図12のように減衰特性が悪化する。しかし、実施例1に係る共振器18は共振子S31のキャパシタンスが従来例1に係る共振器18aの共振子S21と同じであり、減衰特性を従来例1と同程度とすることができる。
【0040】
次に、付加するキャパシタC31によって、インダクタンスL31を低減できる量を計算する。L31は、数式7および8を変形することによりそれぞれ数式9および10で表される。
【数9】

【数10】

【0041】
図13は、同じ反共振点1を有する共振器となるように、数式9を用い規格化したキャパシタンスC31/C0に対する規格化したインダクタンスL31/L21を示した図である。ここで、反共振点1は図12の反共振点1と同じとした。C31/C0が0の時は、インダクタが共振子に並列に付加された従来例の共振器である。C31/C0を大きくすると、L31/L21は小さくなる。つまり、並列に付加するインダクタンスL31は小さくしたとしても同じ反共振点1を有する共振器を得るには、共振子S31に並列に付加するキャパシタンスC31を大きくすればよい。このように、キャパシタンスC31を大きくすることによりインダクタL31を小型化できる。一般に、インダクタを積層基板等に作製した場合、インダクタンスの誤差は最大10%である。そのため、実用上実装面積を小さくする効果が現れるのは、L31がL21の90%以下のときである。図13より、C31/C0を0.2以上とすることにより、L31をL21の90%以下とすることができる。このように、キャパシタC31が有する容量値は、共振子が容量値C0の0.2倍以上であることが好ましい。これにより、実用上実装面積を削減する効果が得られる。
【実施例2】
【0042】
実施例2は実施例1に係る共振器をアンテナ分波器に適用した例である。図14は作製した分波器の構成図である。図14(a)は図11(a)に示した従来例1に係る共振器18aを用いた従来例2に係る分波器100aの構成図である。図14(b)は図11(b)に示した比較例1に係る共振器18bを用いた比較例2に係る分波器100bの構成図である。図14(c)は図11(c)に示した実施例1に係る共振器18を用いた実施例2に係る分波器100の構成図である。
【0043】
図14(c)を参照に、実施例2に係る分波器100は、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に接続する受信用フィルタ10(第1のフィルタ)とを有する。また、受信用フィルタ10とアンテナ端子Antとの間に接続する共振器18からなる整合回路を有する。さらに、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に接続する送信用フィルタ12(第2のフィルタ)を有する。受信用フィルタ10は並列共振子P1ないしP3および直列共振子S1ないしS4並びのS31を有するラダー型フィルタである。送信用フィルタ12は並列共振子P5およびP6並びに直列共振子S5ないしS8を有するラダー型フィルタである。なお、共振子S31は整合回路の共振子として機能するとともに受信用フィルタ10の共振子としても機能する。
【0044】
図14(a)を参照に、従来例2に係る分波器100aは、従来例1に係る共振器18aを整合回路および受信用フィルタ10aの共振器として使用していること以外は実施例2と同じであり説明を省略する。図14(b)を参照に、比較例2に係る分波器100bは、比較例1に係る共振器18bを整合回路および受信用フィルタ10bの共振器として使用していること以外は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0045】
図15および図16は、それぞれ従来例2、比較例2、図17および図18は実施例2に係る分波器の実装状態を示す図である。
【0046】
図17は実施例2のフィルタを作製したチップ15の上視図である。図中、黒で示した領域が金属(例えばアルミニウム)が形成された領域である。圧電基板14上にSAW共振器で構成されたラダー型フィルタを用い受信用フィルタ10および送信用フィルタ12を形成した。受信用フィルタ10は直列共振子S31およびS1ないしS4が直列に接続されている。S4はRx端子に接続され、Rx端子には並列共振子P3が、直列共振子S2とS3との間には並列共振子P2が接続され、並列共振子P3、P2のもう一方の端子はグランド端子Gndに接続される。直列共振子S31とS1との間には並列共振子P1が接続され、P1の他方の端子はグランド端子Gndに接続される。共振子S31とS1との間にはさらに端子Lが接続する。共振子S31の他方にはアンテナ端子Antが接続する。
【0047】
共振子S31と並列にIDTで形成されたキャパシタ60が接続される。キャパシタ60はIDTの電極指間隔を他の共振子S1ないしS8並びにP1ないしP6の有するIDTの電極指間隔の約1.5倍としている。これは、フィルタ10、12で用いられる共振器の共振周波数と、キャパシタ60のIDTの共振周波数を異ならせるためである。また、キャパシタ60のキャパシタンスは0.885pFである。
【0048】
送信用フィルタ12は直列共振子S5ないしS7が直列に接続されている。直列共振子S5およびS8はそれぞれアンテナ端子AntおよびTx端子に接続され、直列共振子S5とS6との間には並列共振子P5が、直列共振子S7とS8との間には並列共振子P6が接続され、並列共振子P7およびP8のもう一方の端子はグランド端子Gndに接続される。直列共振子S31とS1との間には並列共振子P1が接続され、P1の他方の端子はグランド端子Gndに接続される。各端子Ant、L、Tx、RxおよびGndにはAuバンプを形成した。
【0049】
図18(c)は実施例2のチップが実装されたパッケージの断面図である。積層パッケージ30のダイアタッチ面32にバンプ20を用いチップ15をフリップチップ実装(フェースダウン実装)する。ダイアタッチ面32にはバンプを圧着する導体のバンプパッド36が形成されている。バンプパッド36は導体で埋め込まれたビア38に接続する。ビア38は積層パッケージ30の裏面34まで貫通しており、裏面34に形成された導体のフットパット40に接続される。リッド31(キャップ)を用い積層パッケージ30のキャビティ部を気密封止し、分波器100が完成する。
【0050】
図18(a)は積層パッケージ30のチップ15を実装する前の上視図である。図中、黒で示した領域が金属(例えば金)を形成した領域である。チップ15に形成されたバンプ20がバンプパッド36に圧着し、チップ15とバンプパット36が電気的に接続する。チップ15の端子Ant、L、Tx、RxおよびGndは、それぞれバンプパッドAntB、LB、TxB、RxBおよびGndBに圧着される。バンプパッドAntBとLBとの間には線路パターンによりインダクタ52が形成されている。インダクタ52のインダクタンスは3.09nHである。これにより、チップに形成された共振子S31に並列にインダクタ52が接続される。バンプパッドAntB、TxB、RxBおよびGndBはビア38に接続される。
【0051】
図18(b)は積層パッケージ30の裏面34を上から透視した図である。裏面34にフットパッド40が形成されている。バンプパッドAntB、TxB、RxBおよびGndBに接続されたビア38、それぞれフットパッドAntF、TxF、RxFおよびGndFに接続し、積層パッケージ30の外部と接続される。
【0052】
以上のように、共振子S31に並列にインダクタ52およびキャパシタ60が付加される。
【0053】
図15(a)は従来例2に係る分波器のチップの上視図、図15(b)は積層パッケージ30のチップを実装する前の上視図、図15(c)は積層パッケージ30の裏面34の透視図である。従来例2では、図15(a)のチップ表面にキャパシタ60が形成されていないこと、インダクタ50のインダクタンスが4.8nHであり、インダクタ面積が大きいこと、以外は実施例2を示した図17、図18(a)および図18(b)と同じである。
【0054】
図16(a)は比較例2に係る分波器のチップの上視図、図16(b)は積層パッケージ30のチップを実装する前の上視図、図16(c)は積層パッケージ30の裏面34の透視図である。図16(a)のチップ表面にキャパシタ60が形成されていないこと、以外は実施例2を示した図17、図18(a)および図18(b)と同じである。
【0055】
実施例2および比較例2に係る分波器は従来例2に比べパッケージの大きさ(実装面積)を小さくできている。これは、従来例2のインダクタ50のインダクタンスが4.8nHに比べ、比較例2および実施例2のインダクタ51のインダクタンスは3.05nHと約64%小さくできたことに起因する。
【0056】
図19(a)は従来例2、比較例2および実施例2に係る分波器の受信用フィルタおよび送信用フィルタの通過特性、アンテナ端子の反射特性を測定した結果である。図19(b)は受信用フィルタおよび送信用フィルタの通過特性の通過帯域付近の拡大図である。比較例2は送信帯域に相当する1850〜1910MHzで受信用フィルタの減衰量が悪化している(図19(a)楕円部分)。これは、図12(b)で示したように、比較例1に係る共振器18bの減衰量が従来例1に係る共振器18aに比べ悪いことに対応している。さらに、送信帯域の高周波端付近である1900〜1910MHz付近で送信用フィルタの損失が大きくなっている(図19(b)楕円部分)。これは、図19(a)のように、この付近でアンテナ端子の反射特性が悪くなっていることに起因する。
【0057】
一方、実施例2に係る分波器100の受信用フィルタおよび送信用フィルタの通過特性、アンテナ端子の反射特性は従来例2の分波器100aとほぼ同程度である。このように、実施例2に係る分波器100によれば、フィルタの通過特性を従来例2と同程度に保った状態で、パッケージ30の実装面積を小さくできる。また、共振器18を受信用フィルタ10のアンテナ端子Ant側に配置し共振器18の反共振点(減衰極)を送信周波数帯域に設定している。つまり、共振器18をラダー型フィルタのアンテナ端子Antに最も近い直列共振器として用いている。これにより、共振器18は、分波器の整合回路として機能するとともに、受信用フィルタ10の送信帯域での減衰特性を向上させるために用いることができる。
【0058】
また、実施例2のように、共振器18のキャパシタC31を共振子S31が形成された同一基板上のSAW共振子で形成することができる。これにより、キャパシタC31を小型化できる。さらに、共振器18のインダクタL31を共振子S31が実装された積層パッケージ30に形成された線路パターンで形成することができる。さらに、フェースダウンで実装することにより実装面積を小さくすることができる。
【実施例3】
【0059】
実施例3はチップ15上にキャパシタ60を形成し、積層パッケージ30内にインダクタ53を形成し、チップ15をフェースアップで実装した例である。図20(a)は積層パッケージ30のチップ15が実装された上視図であり、図20(b)は積層パッケージ30の断面図である。図21は積層パッケージ30の積層44の上視図である。実施例2と共通部材は同じ符号を付し説明を省略する。図20(a)および(b)を参照に、ダイアタッチ面32上にチップ15が実装されている。チップ15は端子Ant、L、Tx、RxおよびGndにバンプが形成されていない以外は実施例2と同じである。各端子は積層パッケージのパッド40にワイヤ42で接続される。アンテナ端子Antおよび端子Lが接続したパッド40には積層パッケージ30内にビア41が形成されている。そうして、積層44に形成されたインダクタ53に接続される。図21を参照に、積層44表面には導体の線路パターンからなるインダクタ53が形成される。
【0060】
実施例3のように、インダクタ53は、ビア41およびワイヤ42を介し共振子S31に並列に接続される。このように、チップ15をフェースアップで実装することもできる。
【実施例4】
【0061】
実施例4は積層パッケージ30内にキャパシタ64およびインダクタ53を形成し、チップ15をフェースアップで実装した例である。図22(a)は積層パッケージ30のチップ15が実装された上視図であり、図22(b)は積層パッケージ30の断面図である。図23(a)および(b)は積層パッケージ30の積層44および46の上視図である。実施例3と共通部材は同じ符号を付し説明を省略する。図22(a)および(b)を参照に、チップ15にはキャパシタ60が形成されていない。一方、積層44に上層電極61、積層46に下層電極62が形成されキャパシタ64が形成される。図23(a)を参照に、積層44表面には導体パターンからなる上層電極61および導体の線路パターンからなるインダクタ53が形成される。図23(b)を参照に、積層46表面には導体パターンからなり上層電極61のほぼ下に配置される下層電極62が形成される。アンテナ端子Antが接続したビア41は積層44まで接続し、端子Lが接続したビア41は積層44および積層46まで接続し、下層電極62に接続する。このようにして、インダクタ53およびキャパシタ64は、ビア41およびワイヤ42を介し共振子S31に並列に接続される。
【0062】
実施例4のように、共振器18のキャパシタC31を共振子S31が実装された積層パッケージ30のパッケージ材料を誘電体としたMIMキャパシタ64とすることができる。
【実施例5】
【0063】
実施例5はチップ上にキャパシタ60およびインダクタ54を形成し、チップ15をフェースアップで実装した例である。図24は積層パッケージ30のチップ15が実装された上視図である。実施例3と共通部材は同じ符号を付し説明を省略する。図24を参照に、チップ15にはスパイラルコイルで構成されるインダクタ54が形成される。インダクタ54の一方は共振子S31とS1の間に接続し、他方はアンテナ端子Antよりワイヤ42で接続したパッド40にワイヤ42で接続される。このようにして、インダクタ54は、ワイヤ42を介し共振子S31に並列に接続される。
【0064】
実施例5のように、共振器18のインダクタL31を共振子S31が形成された同一基板上に形成することができる。
【実施例6】
【0065】
実施例6はチップ上にMIMキャパシタ63およびインダクタ54を形成し、チップ15をフェースアップで実装した例である。図25(a)は積層パッケージ30のチップ15が実装された上視図であり、図25(b)はMIMキャパシタ63の断面図である。実施例5と共通部材は同じ符号を付し説明を省略する。図25(a)を参照に、チップ15にはMIMキャパシタ63が共振子S31と並列に形成されている。図25(b)を参照に、MIMキャパシタ63は圧電基板14上に形成された例えばアルミニウムからなる下部電極63c、下部電極63c上の例えば酸化シリコン膜からなる誘電体膜63b、誘電体膜63b上に形成されたアルミニウムからなる上部電極63aにより構成される。
【0066】
実施例6のように、共振器18のキャパシタC31を共振子S31が形成された同一基板上に形成されたMIMキャパシタとすることができる。
【実施例7】
【0067】
実施例7は積層パッケージ30を実装したプリント基板にチップキャパシタ65およびチップインダクタ55を実装した例である。図26はチップ15が実装された積層パッケージ30およびプリント基板48の上視図である。実施例3と共通部材は同じ符号を付し説明を省略する。図26を参照に、チップ15にはキャパシタおよびインダクタは形成されていない。チップ15の各端子Ant、L、Tx、RxおよびGndは積層パッケージ30に形成されたビアおよびフットパッド(図示せず)を介し、それぞれプリント基板48の端子AntT、LT、TxT、RxTおよびGndTに接続する。そして、AntTとLTの間にチップコンデンサ65およびチップインダクタ55が接続される。これにより、チップコンデンサ65およびチップインダクタ55は共振子S31に並列に接続される。
【0068】
実施例7のように、共振器18のキャパシタC31またはインダクタL31は共振子S31が実装された積層パッケージ30外のプリント基板48(基板)に設けられたチップキャパシタまたはチップインダクタとすることができる。
【実施例8】
【0069】
実施例8は集積受動素子(IPD)チップ58にキャパシタ66およびインダクタ56を実装した例である。図27(a)はチップ15およびIPDチップ58が実装された積層パッケージ30の上視図であり、図27(b)はIPDチップ上のMIMキャパシタ66の断面図である。実施例3と共通部材は同じ符号を付し説明を省略する。図27(a)を参照に、チップ15にはキャパシタおよびインダクタは形成されていない。IPDチップ58にスパイラルコイルを用いたインダクタ56およびMIMキャパシタ66が並列に接続される。チップ15とIPDチップ58はワイヤ42を用い接続される。これにより共振子S31に並列にインダクタ56およびキャパシタ66が付加される。図27(b)を参照に、MIMキャパシタ66はIPDチップ58上に形成された例えばアルミニウムからなる下部電極66c、下部電極66c上の例えば酸化シリコン膜からなる誘電体膜66b、誘電体膜66b上に形成されたアルミニウムからなる上部電極66aにより構成される。
【0070】
実施例8のように、共振器18のキャパシタC31またはインダクタL31は共振子S31が形成された圧電基板14以外のIPDチップ58(基板)に形成されたキャパシタまたはインダクタとすることができる。
【0071】
実施例3ないし実施例8の実装形態によっても、共振器18および分波器100は実施例1および実施例2と同様に、フィルタの通過特性を従来例と同程度に保った状態で、パッケージ30の実装面積を小さくできる。
【実施例9】
【0072】
図28は実施例9に係る分波器100cの構成図である。図28を参照に、分波器100cは、アンテナ端子Antに整合用インダクタLAntが直列に接続している。それ以外の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。実施例9によれば、アンテナ端子の反射損失を低減することができる。
【実施例10】
【0073】
図29は実施例10に係る分波器100dの構成図である。図29を参照に、分波器100dは、受信用フィルタ10cのアンテナ端子Ant側に共振器18を設けたことに加え、送信用フィルタ12cのアンテナ端子Ant側にも、インダクタL32およびキャパシタC32を共振子S32に並列に付加した共振器19を設けている。それ以外の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。共振器19は受信帯域に反共振点(減衰極)を有するように設定されている。これにより、共振器19は、分波器の整合回路として機能するとともに、送信用フィルタ12cの受信帯域での減衰特性を向上させるために用いることができる。よって、送信用フィルタ12cのアンテナ側からみた受信帯域のインピーダンスを大きくし、かつ、受信用フィルタ10cのアンテナ側からみた送信帯域のインピーダンスを大きくすることができる。アンテナ端子の反射損失を低減することができる。これにより、低損失の分波器が実現できる。
【実施例11】
【0074】
図30は実施例11に係る分波器100eの構成図である。図30を参照に、分波器100eは、受信用フィルタ10dおよび送信用フィルタ12dのアンテナ端子Ant側の共振子にはインダクタおよびキャパシタは付加されていない。受信用フィルタ10dの受信端子Rx側に共振器18、受信用フィルタ10dの中央に共振器19が配置されている。さらに、整合回路22a、22bおよび22cが、それぞれ受信用フィルタ10dとアンテナ端子Ant、送信用フィルタ12dとアンテナ端子Antおよびアンテナ端子Antに直列に配置されている。整合回路22aないし22cはインダクタやキャパシタを用いた集中定数回路、またはストリップラインやマイクロストリップラインを用いた分布定数回路を用い設計される。実施例11のように、アンテナ端子Ant側以外の直列共振子に並列のインダクタおよびキャパシタは付加することにより、整合回路の要請とは独立に、反共振点(減衰極)を設定することができる。これにより、任意の周波数の減衰量を改善することができる。また、インダクタL31およびL32を小型化できるため、実装面積を小さくすることができる。
【0075】
実施例9ないし実施例11のように、送信用フィルタ(第2のフィルタ)および受信用フィルタ(第1のフィルタ)の少なくとも一方が、実施例1に係る共振器18または19を含むフィルタとすることにより、実装面積が小さく、任意の周波数の減衰量を改善することが可能なアンテナ分波器を提供することができる。
【実施例12】
【0076】
図31は実施例12に係るラダー型フィルタ110の構成図である。図31を参照に、ラダー型フィルタ110は入力端子Inと出力端子Out間に、直列共振子S2およびS31並びに並列共振子P1およびP2を有している。共振子S31には並列にキャパシタC31およびインダクタL31が接続されている。共振子S31、キャパシタC31およびインダクタL31は実施例1に係る共振器18を構成している。実施例1に係る共振器18を有することによりラダー型フィルタ110は任意の周波数の減衰量を大幅に改善することができる。
【実施例13】
【0077】
図32は実施例13に係るラダー型フィルタ110aの構成図である。図32を参照に、ラダー型フィルタ110aは実施例12の共振器18に加え、残りの直列共振子S32にも並列にキャパシタC32およびインダクタL32が接続されている。共振子S32、キャパシタC32およびインダクタL32は実施例1に係る共振器19を構成している。このように、ラダー型フィルタ110aは、全ての直列共振子にキャパシタおよびインダクタを付加している。これにより、実施例11に係るフィルタ110に比べ、任意の周波数の減衰量を改善することができる。
【0078】
実施例12および13によれば、ラダー型フィルタにおいて、直列共振器の少なくとも1つが実施例1に係る共振器18である。これにより、実装面積が小さく、任意の周波数の減衰量を改善することができる。
【0079】
なお、実施例2ないし13では、ラダー型フィルタの直列共振器に実施例1に係る共振器18を適用する例であったが、並列共振器に実施例1に係る共振器を適用してもよい。つまり、並列共振器および直列共振器の少なくとも一つが実施例1に係る共振器であればよい。
【実施例14】
【0080】
図33(a)は実施例14に係るフィルタ110bの構成図である。図33(a)を参照に、フィルタ110bは、入力端子Inと出力端子Outの間の2重モードSAW(DMS)フィルタ24の入力端子In側に実施例1に係る共振器18を直列に接続している。図33(b)はDMSフィルタ24の構成図である。図33(b)を参照に、DMSフィルタ24は2つの反射器R0の間に出力端子Out0に接続された2つの出力IDT2と入力端子In0に接続された1つの入力IDT1とを有する。このように、多重モードSAWフィルタに実施例1に係る共振器18を付加することもできる。これにより、多重モードSAWフィルタにおいても、任意の周波数の減衰量を改善することができる。
【実施例15】
【0081】
図34は実施例15に係るフィルタ110cの構成図である。図34を参照に、フィルタ110cは、実施例13で用いたDMSフィルタ24の両側に実施例1に係る共振器18および19を直列に接続している。また、共振器18とDMS24との間に並列に共振子P1を、出力端子Outに並列に共振子P2を接続している。このような構成の多重モードSAWフィルタにおいても、任意の周波数の減衰量を改善することができる。
【実施例16】
【0082】
図35(a)は実施例16に係るフィルタ110dの構成図である。図35(a)を参照に、フィルタ110dは、出力端子Out1およびOut2に接続したバランス型DMSフィルタ24aの入力端子In両側に実施例1に係る共振器18および19を直列に接続している。図35(b)はバランス型DMSフィルタ24aの構成図である。図35(b)を参照に、DMSフィルタ24aは2つの反射器R0の間に出力端子Out1およびOut2に接続された出力IDT1aと入力端子In0に接続された2つの出力IDT2とを有する。出力端子Out1およびOut2には位相の反転した信号が出力しバランス型DMSフィルタとして機能する。このような構成のバランス型多重モードSAWフィルタにおいても、任意の周波数の減衰量を改善することができる。
【0083】
実施例14ないし16に係るフィルタによれば、多重モードSAWフィルタと実施例1に係る共振器18を有することにより、実装面積が小さく、任意の周波数の減衰量を改善することができる。
【0084】
実施例1ないし13は共振子としてSAW共振子の例であったが、圧電薄膜共振子を用いることもできる。この場合も、実施例1ないし12と同様の効果を奏することができる。
【0085】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1(a)は共振子を示す図である。図1(b)はSAW共振子の上視図、図1(c)はFBARの上視図、図1(d)はFBARの断面図である。
【図2】図2はラダー型フィルタの構成図である。
【図3】図3(a)は直列共振器の構成図、図3(b)は直列共振器の構成図、図3(c)は直列共振器および直列共振器の通過特性を示す図である。
【図4】図4(a)は1段ラダー型フィルタの構成図であり、図4(b)は1段ラダー型フィルタの通過特性を示す図である。
【図5】図5は従来例に係るラダー型フィルタの構成図である。
【図6】図6(a)は共振子の等価回路を示す図であり、図6(b)は共振子の通過特性を示す図である。
【図7】図7(a)は従来例に係る共振器の構成図であり、図7(b)は従来例に係る等価回路を示す図であり、図7(c)は従来例に係る共振器の通過特性を示す図である。
【図8】図8は従来例に係る共振器における、C0およびC0×L21に対する反共振周波数および共振周波数を示す図である。
【図9】図9(a)は実施例1に係る共振器の構成図であり、図9(b)は実施例1に係る等価回路を示す図であり、図9(c)は実施例1に係る共振器の通過特性を示す図である。
【図10】図10は実施例1に係る共振器における、C0およびC0×L31に対する反共振周波数および共振周波数を示す図である。
【図11】図11(a)は従来例1に係る共振器、図11(b)は比較例1に係る共振器、図11(c)は実施例1に係る共振器の構成図である。
【図12】図12(a)は従来例1、比較例1および実施例1に係る共振器の通過特性を示す図である。図12(b)は反共振点1付近の拡大図である。
【図13】図13は規格化したキャパシタンスC31/C0に対する規格化したインダクタンスL31/L21を示した図である。
【図14】図14(a)は従来例2に係る分波器、図14(b)は比較例2に係る分波器、図14(c)は実施例2に係る分波器の構成図である。
【図15】図15(a)は従来例2に係る分波器のチップの上視図、図15(b)はチップを実装する前の積層パッケージの上視図(リッドを設ける前)、図15(c)は積層パッケージを上から透視した図である。
【図16】図16(a)は比較例2に係る分波器のチップの上視図、図16(b)はチップを実装する前の積層パッケージの上視図(リッドを設ける前)、図16(c)は積層パッケージを上から透視した図である。
【図17】図17は実施例2に係る分波器のチップの上視図である。
【図18】図18(a)はチップを実装する前の積層パッケージの上視図(リッドを設ける前)、図18(b)は積層パッケージを上から透視した図、図18(c)はチップを実装しリッドを設けた積層パッケージの断面図である。
【図19】図19(a)は従来例2、比較例2および実施例2に係る分波器の受信用フィルタおよび送信用フィルタの通過特性並びにアンテナ端子の反射特性を示す図、図19(b)は受信用フィルタおよび送信用フィルタの通過特性の通過帯域付近の拡大図である。
【図20】図20(a)は実施例3に係る分波器のチップを実装した積層パッケージの上視図(リッドを設ける前)、図20(b)はチップを実装しリッドを設けた積層パッケージの断面図(リッドを設ける前)である。
【図21】図21は実施例3に係る分波器の積層パッケージ内の積層の上視図である。
【図22】図22(a)は実施例4に係る分波器のチップを実装した積層パッケージの上視図(リッドを設ける前)、図22(b)はチップを実装しリッドを設けた積層パッケージの断面図(リッドを設ける前)である。
【図23】図23(a)および(b)は実施例4に係る分波器の積層パッケージ内の積層の上視図である。
【図24】図24は実施例5に係る分波器のチップを実装した積層パッケージの上視図(リッドを設ける前)である。
【図25】図25(a)は実施例6に係る分波器のチップを実装した積層パッケージの上視図(リッドを設ける前)、図25(b)はMIMキャパシタの断面図である。
【図26】図26は実施例7に係る分波器のチップを実装した積層パッケージおよび積層パッケージを実装したプリント基板の上視図(リッドを設ける前)である。
【図27】図27(a)は実施例8に係る分波器のチップおよびIPDチップを実装した積層パッケージの上視図(リッドを設ける前)、図27(b)はMIMキャパシタの断面図である。
【図28】図28は実施例9に係る分波器の構成図である。
【図29】図29は実施例10に係る分波器の構成図である。
【図30】図30は実施例11に係る分波器の構成図である。
【図31】図31は実施例12に係るラダー型フィルタの構成図である。
【図32】図32は実施例13に係るラダー型フィルタの構成図である。
【図33】図33(a)は実施例14に係るフィルタの構成図であり、図33(b)は2重モードSAWフィルタの上視図である。
【図34】図34は実施例15に係るフィルタの構成図である。
【図35】図35(a)は実施例16に係るフィルタの構成図であり、図35(b)はバランス型SAWフィルタの上視図である。
【符号の説明】
【0087】
10、10c、10d 受信用フィルタ
12、12c、12d 送信用フィルタ
14 圧電基板
15 チップ
18、19 共振器
20 バンプ
22a、22b、22c 整合回路
24、24a DMSフィルタ
30 積層パッケージ
31 リッド
32 ダイアタッチ面
34 裏面
36 バンプパッド
38、41 ビア
40 フッドパッド
42 ワイヤ
44、46 積層
48 プリント基板
50、51、52、53 インダクタ(線路パターン)
54 インダクタ(スパイラルコイル)
55 チップインダクタ
56 インダクタ(スパイラルコイル)
58 IPDチップ
59 プリント基板
60 キャパシタ(SAW共振子)
61 上層電極
62 下層電極
64 MIMキャパシタ
65 チップコンデンサ
66 MIMキャパシタ
100 分波器
110 フィルタ
S31 共振子
L31、L32 インダクタ
C31、C32 キャパシタ
In 入力端子
Out 出力端子
Ant アンテナ端子
Tx 送信端子
Rx 受信端子
Gnd グランド端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振子と、
該共振子と並列に接続されたインダクタと、
前記共振子と並列に接続されたキャパシタと、を具備することを特徴とする共振器。
【請求項2】
前記キャパシタが有する容量値は、前記共振子の容量値の0.2倍以上であることを特徴とする請求項1記載の共振器。
【請求項3】
前記共振子は表面弾性波共振子および圧電薄膜共振子のいずれか一方であることを特徴とする請求項1または2記載の共振器。
【請求項4】
前記キャパシタおよび前記インダクタンスの少なくとも一方は、前記共振子が形成された同一基板上に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の共振器。
【請求項5】
前記キャパシタは弾性表面波インターディジタルトランスデューサであることを特徴とする請求項4記載の共振器。
【請求項6】
前記キャパシタはMIMキャパシタであることを特徴とする請求項4記載の共振器。
【請求項7】
前記キャパシタは、前記共振子が実装されたパッケージのパッケージ材料を誘電体としたMIMキャパシタであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の共振器。
【請求項8】
前記キャパシタおよび前記インダクタンスの少なくとも一方は、前記共振子が形成された基板以外の基板上に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の共振器。
【請求項9】
前記キャパシタおよび前記インダクタンスの少なくとも一方は、前記共振子が実装されたパッケージ外に設けられたチップキャパシタまたはチップインダクタであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の共振器。
【請求項10】
前記インダクタは、前記共振子が実装されたパッケージに線路パターンとして形成されたインダクタであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の共振器。
【請求項11】
直列共振器と、並列共振器とを具備し、
前記直列共振器および前記並列共振器の少なくとも一つが請求項1から10のいずれか一項記載の共振器であることを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項12】
前記直列共振器の少なくとも一つが請求項1から10のいずれか一項記載の共振器であることを特徴とする請求項11記載のラダー型フィルタ。
【請求項13】
多重モード弾性表面波フィルタと、
請求項1から10のいずれか一項記載の共振器と、を具備することを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項14】
アンテナ端子と、
前記アンテナ端子に接続した第1のフィルタおよび第2のフィルタと、を具備し、
前記第1のフィルタおよび第2のフィルタの少なくとも一方が請求項11から13のいずれか一項記載のフィルタであることを特徴とするアンテナ分波器。
【請求項15】
前記第1のフィルタおよび第2のフィルタの少なくとも一方は請求項12のラダー型フィルタであり、アンテナ端子に最も近い直列共振器が請求項1から10のいずれか一項記載の共振器であることを特徴とする請求項13記載のアンテナ分波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2007−36856(P2007−36856A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219254(P2005−219254)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(398067270)富士通メディアデバイス株式会社 (198)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】