説明

共振器、光学システム、検査装置、処理装置および測定装置

【課題】 レーザーの高出力化や高効率波長変換を行うことが可能な共振器およびこれを用いた光学システムを提供する。
【解決手段】 インプットカプラーM1、M3と高反射ミラーM2、M4とによりボウタイ型リング共振器10を構成する。シードレーザー12から放出されるレーザー光13を周波数が互いに等しいレーザー光13a、13bに分け、これらのレーザー光13a、13bを増幅モジュール15、18で増幅した後にそれぞれインプットカプラーM1、M3に入射させてボウタイ型リング共振器10と結合させる。この光学システムをレーザー光源として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共振器、光学システム、検査装置、処理装置および測定装置に関し、例えば、レーザー光のコヒレント加算による単一周波数かつ直線偏光レーザーの高出力化や高効率波長変換などに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
単一周波数かつ直線偏光レーザーの高出力化には、次に挙げるようにいくつかの方法がある。一つの方法は、レーザーそのものの投入励起パワーを増やすことで発振出力を増やす方法である。これは最も単純な方法であるが、ある一定以上の出力を超えるとレーザー自体が大型化して、発振する周波数および偏光の制御が難しくなる問題点がある。もう一つの方法は、図15に示すように、小型の単一周波数かつ直線偏光レーザーをシードレーザー(主レーザー)5101とし、このシードレーザー5101から放出されるレーザー光5102を励起された増幅媒体5103に通してこの増幅媒体5103中の誘導放出により元のレーザー光5102の出力を増幅する方法である。この方法は、増幅媒体5103をモジュール化すれば、これを多段カスケードに配置することでパワーアップが容易なことが利点であるが、横モード制御が難しい欠点がある。また、シードレーザー5101が低パワーから出発した場合、増幅媒体5103を光飽和させることが難しいため、複数段の増幅媒体5103を使うか、レーザー光5102を同一の増幅媒体5103に複数回通す方法がとられるが、一般的に効率はあまりよくない。また、増幅媒体5103の多段カスケード配置による増幅には、増幅媒体5103の損傷閾値で限定される限界値がある。
【0003】
最近では、この方法の一種であるファイバアンプによる増幅技術の開発が進んでいる。この方法では、図16に示すように、シードレーザー5101から放出されるレーザー光5102を励起モジュール5104により励起されたファイバアンプ5105に通して元のレーザー光5102の出力を増幅する。
【0004】
次に、増幅媒体5103を低パワーのシードレーザー5101で簡便に光飽和させる方法として、増幅媒体5103自体を共振器構造にしてしまう注入同期法がある。この方法では、図17に示すように、シードレーザー5101から放出されるレーザー光5102をインプットカプラー(内部結合素子)5106に入射させ、このインプットカプラー5106を通過したレーザー光5102を増幅媒体5103に通して高反射ミラー5107、5108、5109で順次反射させてインプットカプラー5106に入射させ、このインプットカプラー5106から増幅されたレーザー光5102を取り出す。ここで、インプットカプラー5106は、一般的には、数%の透過率を有するパーシャルリフレクター(部分反射鏡)である。この方法では、一段だけの増幅モジュールで高い利得を期待できるが、自発振しているシードレーザー5101に外部から強制的に特定の光を注入することで周波数を制御するために、従共振器の高精度な共振器長制御が必要である点が難点である。
【0005】
一方、これらの光の誘導放出制御による方法とは異なるコヒレント加算と呼ばれる方法がある(例えば、非特許文献1参照。)。これは基本的にはマッハツェンダー(Mach-Zehnder)干渉計の各支光路に上記の増幅モジュールを配置して、二つの支光路の位相を一致させて干渉加算する方法であり、増幅モジュールの出力を単純に加算できることが特徴である。一例を図18に示す。図18に示すように、シードレーザー5101から放出されるレーザー光5102をハーフミラー5110に入射させ、レーザー光5102a、5102bに分ける。ハーフミラー5110を透過したレーザー光5102aを増幅モジュール5111に通し、折り返しミラー5112で反射させてからハーフミラー5113に入射させて反射させるとともに、ハーフミラー5110で反射されたレーザー光5102bを増幅モジュール5114に通し、折り返しミラー5115で反射させてからハーフミラー5113に入射させ、透過させる。この場合、折り返しミラー5115をアクチュエータ5116上に載せ、アクティブに制御することで、増幅モジュール5111を通る支光路と増幅モジュール5114を通る支光路との位相を一致させて干渉加算を行う。
【非特許文献1】Appl.Opt. 30 (1991), 317
【0006】
ところで、多くのレーザーの発振波長は近赤外付近にあるため、非線形光学結晶と呼ばれる特殊な光学結晶を使って可視もしくは紫外線の波長を持つ光源を作ることができる。非線形光学結晶としてはLN(LiNbO3 )、KTP(KTiOPO4 )、LBO(LiTaO3 )、BBO(β−BaB2 4 )、LT(LiTaO3 )などがあり、これらに近赤外付近の波長のレーザー光を通すことで短波長レーザー光への変換が可能である。また、周期分極反転(PP,Periodically Poled)LN(PPLN)、PPKTP、周期分極反転化学量論(PPS,Periodically Poled Stoichiometric)LT(PPSLN)などの特殊なデバイスを使うことで波長変換の高効率化も進められている。非線形変換では入力パワーが増えるほど変換の効率が非線形に向上する。また、非線形光学結晶の励起が高くなるほど、その変換効率が向上する。
【0007】
この変換効率向上においては、外部共振器を用いる方法がよく用いられる。この方法では、外部共振器は、元になる光源から取り出したレーザー光を高フィネスの共振器に入力してその光を閉じ込める。一例を図19に示す。図19に示すように、この方法では、シードレーザー5101から放出されるレーザー光5102を増幅モジュール5117に通して増幅してからインプットカプラー5106に入射させ、このインプットカプラー5106を通過したレーザー光5102を高反射ミラー5107、5108、5109で順次反射させて共振器内に光を閉じ込める。この場合、閉じ込めた光は共振器のフィネス数回程度、共振器内部を周回するため、共振器内部の光学パス(経路)上のレーザー光強度を非常に強くすることができる。したがって、外部共振器による変換を使えば、図20に示すように、共振器内部の光学パス上に非線形光学結晶5118を挿入することにより、高い変換効率で波長変換が実現できる。一般に共振器に閉じ込められた光は、共振器を周回しながら共振器内の損失(吸収・散乱)で散逸するか、もしくは共振器を構成するミラーの微小な透過光として共振器外に漏れ出て行く。外部共振器による波長変換の場合、変換波長で使われるエネルギーは、上記の共振器内の損失に含めて考えることができる。
【0008】
共振器への光は、インプットカプラーを介して結合(入射)する。このインプットカプラーは数%の透過率であるため、通常であればほとんどの光がインプットカプラーで反射されてしまう。しかし、外部共振器のインピーダンスマッチング理論によれば、共振器内部のすべての損失の合計をΔとした場合、インプットカプラーの透過率Tを
【数1】

となるよう設定することにより、位相条件(共振器長ロッキング)が満たされ、モードマッチングが得られた条件で共振器への100%の結合(入射)が実現できる。上記の条件で外部共振器内の光強度は最大になり、最も効率よく外部共振器内の損失要素(ロスエレメント)で消費されることになる。例えば、外部共振器を使った波長変換の場合、外部共振器内の損失は主に吸収・散乱などの線形損失と非線形波長変換のエネルギー変換に伴う非線形損失とで構成されるが、上記のインピーダンスマッチング条件の下で非線形変換により発生する短波長光パワーが最大となる。これにより外部共振器内のパワーPcircは入力パワーをPinとして、
【数2】

で表される。
【0009】
なお、外部共振器型レーザー光源の共振器内部で発生する逆巡回方向の光をもう一つのレーザー光源に光注入することで周波数同期を取る固体レーザーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、波長1064nmのレーザー光と波長780nmのレーザー光とのダブリーレゾナントで和周波の波長198nmのレーザー光を発生させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、レーザー光を用いた散乱異物検査装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、レーザー光を用いた回路パターンの検査装置(レビューステーション)が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。また、波長266nmの外部共振器ロッキングのための位相変調を波長266nmのレーザー光の発生前の532nm位相変調器に532nm外部共振器の位相変調と同時に実施することが提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
【特許文献1】米国特許第5068546号明細書
【特許文献2】特開2002−99007号公報
【特許文献3】米国特許第4898471号明細書
【特許文献4】特開2000−352507号公報
【特許文献5】特開2002−311467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のようにレーザーの高出力化の方法として共振器を用いたコヒレント加算が挙げられるが、このコヒレント加算システムとしては、これまで、共振器に一つのインプットカプラーを設けたものしかなかった。しかしながら、このコヒレント加算システムでは、レーザーの高出力化や高効率波長変換を行うことは困難であった。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、レーザーの高出力化や高効率波長変換を行うことが可能な共振器、これを用いた高性能の光学システム、検査装置、処理装置および測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、従来技術が有する上記の課題を解決すべく鋭意研究を行っている中で、共振器(外部共振器)に光を閉じ込めてレーザーの高出力化や高効率波長変換を実現するためには、共振器に複数のインプットカプラーを設けて複数の同一周波数(波長)のレーザー光を別々に結合させることが有効であることに着目したが、このように複数のインプットカプラーを有する共振器の設計手順についてはこれまで明らかではなかった。特に、共振器のインピーダンスマッチング条件を満たさなければ、共振器に入射させたレーザー光を共振器内部で効率よく消費できず、高効率な波長変換を実現できない。そこで、種々検討の結果、後述するインピーダンスマッチング理論を元に、各インプットカプラーの最適な透過率を設計解として求め、効率のよい結合の実現方法を見出し、この発明を案出するに至った。
【0012】
すなわち、上記課題を解決するために、第1の発明は、
2枚以上の複数のミラーにより構成される共振器であって、
上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが、周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光をそれぞれ結合させるための第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている
ことを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明は、
一つのシードレーザーと、
2枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させる
ことを特徴とする光学システムである。
【0014】
第1および第2の発明においては、レーザー光と共振器との結合効率の最大化を図る観点より、好適には、第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーの透過率の合計が共振器の内部の合計損失にほぼ等しく、かつ第1のインプットカプラーの透過率が第1のレーザー光のパワーに比例する値であり、第2のインプットカプラーの透過率が第2のレーザー光のパワーに比例する値であるようにする。特に、第1のレーザー光のパワーと第2のレーザー光のパワーとが互いにほぼ等しい場合、第1のインプットカプラーの透過率と第2のインプットカプラーの透過率とを互いにほぼ等しくすることにより、レーザー光と共振器との結合効率の最大化を図ることができる。
ここで、インプットカプラーは、すでに述べたように、一般的には数%の透過率を有するパーシャルリフレクター(部分反射鏡)であるが、同様な機能を有する他の素子、例えば回折格子であってもよい。
共振器には、リング型共振器や直線型共振器(スタンディングウェイブ型)などの各種のものが含まれる。
第1のレーザー光および第2のレーザー光には、赤外光・可視光や紫外光などの広い波長(周波数)帯のものが含まれる。
【0015】
第2の発明においては、例えば、シードレーザー(主レーザー)から放出されるレーザー光をハーフミラーなどにより第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、これらの第1のレーザー光および第2のレーザー光をそれぞれ増幅した後に第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーに結合させる。あるいは、シードレーザーから放出されるレーザー光を増幅した後に第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、これらの第1のレーザー光および第2のレーザー光のうちの一方を増幅した後にこれらの第1のレーザー光および第2のレーザー光を第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーに結合させる。あるいはまた、シードレーザーから放出されるレーザー光を第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、これらの第1のレーザー光および第2のレーザー光をそれぞれ波長変換した後に第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーに結合させる。あるいは、共振器中に非線形光学結晶を配置することにより波長変換を行う。
この光学システムは、例えば、単一周波数かつ直線偏光レーザーの高出力化に用いることができるほか、例えば近赤外レーザー光源を用い、非線形光学結晶による非線形波長変換により高出力可視光源や高出力深紫外光源を得るために用いることができる。
【0016】
第3の発明は、
3枚以上の複数のミラーにより構成される共振器であって、
上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが、周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光をそれぞれ結合させるための第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている
ことを特徴とするものである。
【0017】
第4の発明は、
一つのシードレーザーと、
3枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光、上記第2のレーザー光および上記第3のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラー、上記第2のインプットカプラーおよび上記第3のインプットカプラーに結合させる
ことを特徴とする光学システムである。
【0018】
第3および第4の発明においては、レーザー光と共振器との結合効率の最大化を図る観点より、好適には、第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーの透過率の合計が共振器の内部の合計損失にほぼ等しく、かつ第1のインプットカプラーの透過率が第1のレーザー光のパワーに比例する値であり、第2のインプットカプラーの透過率が第2のレーザー光のパワーに比例する値であり、第3のインプットカプラーの透過率が第3のレーザー光のパワーに比例する値であるようにする。特に、第1のレーザー光のパワーと第2のレーザー光のパワーと第3のレーザー光のパワーとが互いにほぼ等しい場合、第1のインプットカプラーの透過率と第2のインプットカプラーの透過率と第3のインプットカプラーの透過率とが互いにほぼ等しくすることにより、レーザー光と共振器との結合効率の最大化を図ることができる。
【0019】
第4の発明においては、例えば、シードレーザーから放出されるレーザー光を第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、これらの第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光をそれぞれ増幅した後に第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーに結合させる。あるいは、シードレーザーから放出されるレーザー光を増幅した後に第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、これらの第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光のうちの全部、二つまたは一つを増幅した後にこれらの第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光を第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーに結合させる。あるいはまた、シードレーザーから放出されるレーザー光を第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、これらの第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光をそれぞれ波長変換した後に第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーに結合させる。あるいは、共振器中に非線形光学結晶を配置することにより波長変換を行うことができる。
第3および第4の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第1および第2の発明に関連して説明したことが成立する。
【0020】
第5の発明は、
n枚(nは2以上の整数)以上の複数のミラーにより構成される共振器であって、
上記複数のミラーのうちのn枚のミラーが、周波数が互いに等しいn本のレーザー光をそれぞれ結合させるためのn個のインプットカプラーにより構成されている
ことを特徴とするものである。
【0021】
第6の発明は、
一つのシードレーザーと、
n枚(nは2以上の整数)以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちのn枚のミラーがn個のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しいn本のレーザー光に分け、上記n本のレーザー光をそれぞれ上記n個のインプットカプラーに結合させる
ことを特徴とする光学システムである。
第5および第6の発明においては、その性質に反しない限り、第1〜第4の発明に関連して説明したことが成立する。
【0022】
第7の発明は、
光源を用いた検査装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
2枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とするものである。
【0023】
第8の発明は、
光源を用いた処理装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
2枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とするものである。
【0024】
第9の発明は、
光源を用いた測定装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
2枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とするものである。
【0025】
第10の発明は、
光源を用いた検査装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
3枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光、上記第2のレーザー光および上記第3のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラー、上記第2のインプットカプラーおよび上記第3のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とするものである。
【0026】
第11の発明は、
光源を用いた処理装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
3枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光、上記第2のレーザー光および上記第3のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラー、上記第2のインプットカプラーおよび上記第3のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とするものである。
【0027】
第12の発明は、
光源を用いた測定装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
3枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光、上記第2のレーザー光および上記第3のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラー、上記第2のインプットカプラーおよび上記第3のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とするものである。
【0028】
第7〜第12の発明において、検査装置、処理装置および測定装置には、およそレーザー光を用いるものである限り、どのようなものも含まれる。具体的には、検査装置は、例えば半導体ウェハ表面の異物や回路パターンなどを検査する装置であり、処理装置は、各種の基板や材料などの熱処理、加工、表面改質などの各種の処理を行う装置であり、測定装置は、レーザー光を用いて各種の計測を行う装置などである。
【0029】
上述のように構成されたこの発明においては、コヒレント加算の利用により、周波数が互いに等しい複数のレーザー光を同一の共振器に、高い結合効率で結合させることができる。このため、例えば、増幅モジュールの出力が限定される場合でも単純にレーザーのスケールアップが可能になる。特に、増幅モジュールに光強度の出力制限がありシリアルな増幅ができない場合には、この発明による手法は極めて有効である。また外部共振器への結合部分を振り分けることができるため、インプットカプラーが劣化ポイントとして問題になる場合にその信頼性向上に効果がある。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、周波数が互いに等しい複数のレーザー光を同一の共振器に高い結合効率で結合させることができるので、レーザーの高出力化や高効率波長変換を行うことができる高性能の光学システムを得ることができ、この光学システムを光源に用いることにより高性能の検査装置、処理装置および測定装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態においては、同一または対応する部分には同一の符号を用い、適宜重複説明を省略する。
まず、この発明の第1の実施形態について説明する。
この第1の実施形態においては、4枚のミラーで構成されるボウタイ型リング共振器において、4枚のミラーのうちの2枚のミラーをインプットカプラーにより構成したものについて説明する。
【0032】
図1はこの第1の実施形態によるボウタイ型リング共振器を示す。
図1に示すように、このボウタイ型リング共振器は、4枚のミラーにより構成され、それらのうち2枚がインプットカプラーM1、M3、残りの2枚が高反射ミラーM2、M4となっている。これらのインプットカプラーM1、M3は後述する所定の透過率を有し、これらを介して外部から共振器内部にレーザー光を取り込むことができるようになっている。この共振器内には損失があるとし、ここでは仮にインプットカプラーにより構成されない高反射ミラーM2、M4のうちの高反射ミラーM4が所定の透過率を有するものとし、この高反射ミラーM4から共振器内部に蓄えられた光が外部に漏れるとする。言い換えれば、この高反射ミラーM4から外部に出力レーザー光が取り出される。高反射ミラーM2の透過率はゼロであるとする。共振器内部の損失要素としては、この例のようにミラー(ここでは高反射ミラーM4)に透過率がある場合(アウトプットカプラー)のほか、外部共振器型の非線形波長変換を目的とした非線形光学結晶を共振器内に配置した場合の結晶の吸収・散乱および非線形損失も想定し得る。
【0033】
インプットカプラーM1、M3の振幅反射率および振幅透過率をそれぞれr1 ,t1 ,r3 ,t3 とする。また、インプットカプラーM1、M3の強度反射率および強度透過率をそれぞれR1 ,T1 ,R3 ,T3 とする。透過の際に吸収がないと仮定すると、次式が成り立つ。
【数3】

高反射ミラーM2、M4については、振幅反射率rm2 ,rm4を以下のように定める。
【数4】

上述のように高反射ミラーM4は所定の透過率を有するが、その強度透過率をΔとして表記する。計算上、この高反射ミラーM4の透過による漏れは共振器内の別コンポーネントで発生する損失に置き換えて考えることも可能であり、結果的に共振器内に分布したいくつかの損失要素の合計として考えることもできる。例えば、共振器内部に非線形光学結晶を配置した場合、この非線形光学結晶の吸収散乱などの損失のほか、非線形変換に消費されるエネルギー分も考慮した損失の合計として考えればよい。
【0034】
さて、ここでインプットカプラーM1、M3に入射するレーザー光の電場振幅をそれぞれEin1 , Ein3 とする。これらの入射レーザー光は同一の周波数ωを持つよう一つのシードレーザーから放出されるレーザー光を分割・増幅して得られたものであり、それらの電場を
【数5】

と表示する。式中δは、シードレーザーから放出されるレーザー光を分割して最終的に共振器に入射させるまでの光路差から生じる位相差を表す。また、インプットカプラーM1、M3による反射光電場振幅をEout1, Eout3とする。一方、共振器内では、図1中インプットカプラーM1、M3による反射直後の電場をそれぞれEcirc1 、Ecirc3 とする。これらの電場は以下の連立方程式で表される。
【数6】

共振器内の電場Ecirc1 , Ecirc3 は、それぞれ外部からインプットカプラーM1、M3を透過したレーザー光と、共振器内を周回してインプットカプラーM1、M3および高反射ミラーM2、M4により反射される反射光との和で表される。インプットカプラーM1、M3で反射された電場Eout1, Eout3については、共振器を周回し、これらのインプットカプラーM1、M3を透過して外部に取り出される光と、これらのインプットカプラーM1、M3による反射光との和で表される。インプットカプラーM1、M3を透過する際に位相回転項として虚数iが付加されていることに注意すべきである。また、上式でφ1 ,φ2 はそれぞれ共振器内の光路M1−M4−M3と光路M3−M2−M1とから計算される位相項である。周回の位相はφ1 +φ2 で表される。(式6)の連立方程式を解くと、それぞれ以下の式が導かれる。
【数7】

【0035】
図2はこの発明の第2の実施形態による光学システムの基本構成を示す。
図2に示すように、この光学システムにおいては、2枚のインプットカプラーM1、M3と2枚の高反射ミラーM2、M4とによりボウタイ型リング共振器10が構成されている。この場合、このボウタイ型リング共振器10内の光路上に非線形光学結晶11が配置されている。このボウタイ型リング共振器10の構成は、内部に非線形光学結晶11が配置されていることを除いて第1の実施形態によるボウタイ型リング共振器と同様である。この光学システムは一台のシードレーザー12を有する。そして、このシードレーザー12から放出されるレーザー光13がハーフミラー14でレーザー光13aとレーザー光13bとに分けられ、それらのうちレーザー光13aは増幅モジュール15で増幅された後にインプットカプラーM1に入射するとともに、レーザー光13bはアクチュエーター16上に載せられた折り返しミラー17で反射され、増幅モジュール18で増幅された後にインプットカプラーM3に入射するようになっており、レーザー光13a、13bがそれぞれインプットカプラーM1、M3を介して共振器に結合するようになっている。高反射ミラーM4から外部に出力レーザー光が取り出される。この場合、ボウタイ型リング共振器10の内部に非線形光学結晶11が配置されていることにより、高次高調波を発生させることができ、非線形光学結晶11として使用するものに応じて、シードレーザー12から放出されるレーザー光13の波長の1/2などの短波長の出力レーザー光を取り出すことができる。
【0036】
この光学システムにおいては、入射するレーザー光13a、13bがボウタイ型リング共振器10の共鳴周波数に厳密に一致すれば、外部からインプットカプラーM1、M3を介して共振器内部に入ったレーザー光13a、13bは共振器内部で強め合うように干渉し蓄えられる。このような入射レーザー光13a、13bの周波数と共振器の共鳴周波数との同期を取るために、共振器の1枚のミラー、ここでは高反射ミラーM2をアクチュエーター19上に載せ、入力光の周波数に同期を取るようにアクティブに制御するようにしている。この同期には特に、Pound Drever Hall 法などの高精度な周波数ロッキング方法などがよく用いられる。シードレーザー12に対する共振器長の同期条件は(式7)において
【数8】

で表される。さらに、コヒレント加算を行う場合、二つに分けられた光路間の位相差が一致している必要がある。これに関しては、二つの支光路のうち一方に含まれる折り返しミラー17をアクチュエーター16で波長距離程度移動させることで位相差を調整できる。具体的には、レーザー光13a、13b間の位相差δが
【数9】

となるよう折り返しミラー17の位置を調整することにより、レーザー光13a、13bのボウタイ型リング共振器10への同時結合が可能となる。
【0037】
次に、共振器外部と内部との結合効率の最適化(インピーダンスマッチング)について説明する。インピーダンスマッチングは、共振器内の損失に対してインプットカプラーM1、M3の透過率を最適化し、共振器に入射させたレーザー光13a、13bを効率的に共振器内部で消費させるよう設計することである。具体的には、(式7)のインプットカプラーM1、M3による反射光電場振幅Eout1, Eout3がゼロになるようにこれらのインプットカプラーM1、M3の透過率を選べばよい。例えば、βを定数(二つの入射レーザー光13a、13bの強度比)として
【数10】

の場合、インプットカプラーM1、M3の振幅反射率r1 , r3 は、
【数11】

と表される。
【0038】
(式4)およびR1 =r1 2 、R3 =r3 2 により、
【数12】

が導かれる。この条件のとき、共振器の内部パワーが最大になることを、Ecirc1 , Ecirc3 の値から確認することができる。さらにここで、共振器内部損失Δが十分小さい条件に限定して考えた場合、(式12)をテイラー展開することで、
【数13】

という式が求まり、インプットカプラーM1、M3の透過率は入力するレーザー光13a、13bのパワーの比で表されることがわかる。(式13)より、インプットカプラーM1、M3の透過率の合計は、共振器内部の合計損失にほぼ等しくなる。
【数14】

また、特に入射させるレーザー光13a、13bが同程度のパワーである場合、
【数15】

が、インピーダンスマッチングを実現する最適な条件となる。
【0039】
共振器内部損失が大きい場合は、例えば、モードクリーナーを兼ねたコヒレント加算技術として実用化の可能性があると考えられる。さらに極限的なケースとして内部損失最大(Δ=100%)の場合は、共振器に入射したレーザー光13a、13bはもはや共振器内を周回せずに内部損失要素により直ちに消費される。この場合の最適条件は、R3 =0%(つまりインプットカプラーM3に無反射(AR)コーティングを施すか、もしくはインプットカプラーM3そのものを除去する)かつR1 =50%(β=1とした場合)となり、コヒレント加算の従来例と一致する。一方、共振器内部損失Δは数%であるとして、β=0となる極限を考えた場合にはT1 =Δ、T3 =0となり、従来例の単独レーザー光の外部共振器への結合に相当する。
以上のように、この第2の実施形態によれば、高効率波長変換を行うことができる高性能の光学システムを実現することができる。
【0040】
増幅モジュール15、18で十分なゲインを取るためには入力用のシードレーザー12としてある程度のパワーが必要であるが、シードレーザー12単体で二つの増幅モジュール15、18のシードパワーを賄いきれない場合がある。そこで次に、このような場合に適用して好適なこの発明の第3および第4の実施形態による光学システムについて説明する。
すなわち、第3の実施形態による光学システムにおいては、図3に示すように、シードレーザー12とハーフミラー14との間に増幅モジュール20を配置し、このシードレーザー20から放出されるレーザー光13をこの増幅モジュール20で増幅した後にハーフミラー14によりレーザー光13a、13bに分ける。こうすることで、レーザー光13a、13bのパワーを十分に大きくすることができるため、増幅モジュール15、18のシードパワーを十分に賄うことができる。
上記以外のことは第2の実施形態と同様である。
この第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様な利点を得ることができる。
【0041】
第4の実施形態による光学システムにおいては、図4に示すように、シードレーザー12から放出されるレーザー光13を一旦増幅モジュール20で増幅した後、パーシャルミラー21でその一部をレーザー光13bとして取り出し、これを増幅モジュール18でさらに増幅してからインプットカプラーM3に入射させるとともに、残りをレーザー光13aとして取り出し、そのままインプットカプラーM1に入射させることにより、全体の増幅モジュールの個数を2個に抑えながら所望のレーザー光の本数(この場合、レーザー光13a、13bの2本)を確保できる。
この第4の実施形態によれば、第2の実施形態と同様な利点を得ることができる。
【0042】
第1〜第4の実施形態においては、ボウタイ型リング共振器10を用いる場合について説明したが、共振器はこれに限定されるものではなく、他のリング共振器はもちろん、直線型の共振器であってもよい。そこで次に、直線型の共振器を用いたこの発明の第5の実施形態による光学システムについて説明する。
すなわち、この第5の実施形態による光学システムにおいては、図5に示すように、シードレーザー12から放出されるレーザー光13がハーフミラー14でレーザー光13aとレーザー光13bとに分けられ、それらのうちレーザー光13aは折り返しミラー22で反射され、増幅モジュール15で増幅された後にハーフミラー23に入射するとともに、レーザー光13bはアクチュエーター16上に載せられた折り返しミラー17で反射され、増幅モジュール18で増幅された後にハーフミラー23に入射するようになっている。この場合、ハーフミラー23が第1〜第4の実施形態におけるインプットカプラーM1、M3に相当し、このハーフミラー23と高反射ミラーM2、M4とにより直線型共振器24が構成されている。レーザー光13a、13bはインプットカプラーM1、M3に相当するこのハーフミラー23を介して直線型共振器24に結合するようになっている。出力レーザー光は高反射ミラーM4から外部に取り出される。
この第5の実施形態によれば、高出力のレーザー光を得ることができる光学システムを実現することができる。
【0043】
次に、この発明の第6の実施形態による光学システムについて説明する。
この第6の実施形態による光学システムにおいては、図6に示すように、直線型共振器24は、高反射ミラーM4と対向して配置された高反射ミラー25を有し、ハーフミラー23を透過したレーザー光が高反射ミラーM4されて高反射ミラー25に向かう光路上に非線形光学結晶11が配置されている。このように直線型共振器24の内部に非線形光学結晶11が配置されていることにより、高次高調波を発生させることができ、非線形光学結晶11として使用するものに応じて、シードレーザー12から放出されるレーザー光13の波長の1/2などの短波長の出力レーザー光を取り出すことができる。
【0044】
次に、この発明の第7の実施形態による光学システムについて説明する。この光学システムにおいては、シードレーザー12と波長変換が可能なボウタイ型リング共振器10との間に波長変換用のボウタイ型リング共振器を二つ挿入し、2段の波長変換により高次高調波発生を行う。波長変換時に光の位相関係は保持されるため、増幅モジュールを挿入するのと同様の手法で波長変換用のボウタイ型リング共振器を挿入することができる。
すなわち、この第7の実施形態による光学システムにおいては、図7に示すように、ボウタイ型リング共振器10の前段に、二つのボウタイ型リング共振器26、27が配置されている。ボウタイ型リング共振器10は、インプットカプラーM1、M3と高反射ミラーM2、M4とにより構成され、内部に第四次高調波発生(FHG)結晶28が配置されたものである。ボウタイ型リング共振器26は、インプットカプラーM5と3枚の高反射ミラーM6、M7、M8とにより構成され、内部に第二次高調波発生(SHG)結晶29が配置されたものである。高反射ミラーM6はアクチュエーター30上に載せられている。高反射ミラーM8は所定の透過率を有し、高反射ミラーM6、M7の透過率はゼロである。ボウタイ型リング共振器27は、インプットカプラーM9と3枚の高反射ミラーM10、M11、M12とにより構成され、内部にSHG結晶31が配置されたものである。高反射ミラーM12はアクチュエーター32上に載せられている。高反射ミラーM10は所定の透過率を有し、高反射ミラーM11、M12の透過率はゼロである。
【0045】
この光学システムにおいては、シードレーザー12から放出されるレーザー光13を増幅モジュール20で増幅した後にパーシャルミラー21でその一部をレーザー光13bとして取り出し、折り返しミラー17で反射させ、増幅モジュール18で増幅してからボウタイ型リング共振器27のインプットカプラーM9に入射させるとともに、残りをレーザー光13aとして取り出し、そのままボウタイ型リング共振器26のインプットカプラーM5に入射させる。そして、ボウタイ型リング共振器26の高反射ミラーM8から取り出されたレーザー光を折り返しミラー33、34で順次反射させてからボウタイ型リング共振器10のインプットカプラーM1に入射させるとともに、ボウタイ型リング共振器27の高反射ミラーM10から取り出されたレーザー光を折り返しミラー35、36で順次反射させてからボウタイ型リング共振器10のインプットカプラーM3に入射させる。折り返しミラー35はアクチュエーター37上に載せられている。
【0046】
この光学システムにおいては、シードレーザー12から放出されるレーザー光13を分岐して得られるレーザー光13a、13bをそれぞれボウタイ型リング共振器26、27のインプットカプラーM5、M9に入射させることでそれぞれ1/2波長に波長変換し、これらの波長変換されたレーザー光を後段のボウタイ型リング共振器10のインプットカプラーM1、M3に入射させることで1/4波長に波長変換することができる。こうすることで、長波長のレーザー光13から、その波長の1/4の波長の極短波長のレーザー光を取り出すことができる。
この第7の実施形態によれば、高効率波長変換を行うことができる高性能の光学システムを実現することができる。
【0047】
次に、この発明の第8の実施形態によるリング共振器について説明する。このリング共振器では、三つのインプットカプラーを用いる。
図8はこのリング共振器を示す。
図8に示すように、このリング共振器は、4枚のミラーにより構成され、それらのうち3枚がインプットカプラーM1、M2´、M3、残りの1枚が高反射ミラーM4となっている。これらのインプットカプラーM1、M2´、M3は後述する所定の透過率を有し、これらを介して外部から共振器内部にレーザー光を取り込むことができるようになっている。この共振器内には損失があるとし、ここではインプットカプラーにより構成されない高反射ミラーM4が所定の透過率を有するものとし、この高反射ミラーM4から共振器内部に蓄えられた光が外部に漏れるとする。言い換えれば、この高反射ミラーM4から外部に出力レーザー光が取り出される。
【0048】
インプットカプラーM2´の振幅反射率および振幅透過率をそれぞれr2 ,t2 、強度反射率および強度透過率をそれぞれR2 ,T2 とする。インプットカプラーM2´に入射するレーザー光の電場をEin2 、インプットカプラーM2´で反射された電場をEout2、共振器内の電場をEcirc2 とする。
第1の実施形態と同様に、共振器に結合するレーザー光はすべて周波数が等しいとして、その電場振幅を以下のように表す。
【数16】

これをもとに、2本のレーザー光を用いる場合と同様に適当な洞察により、以下の解がインピーダンスマッチングを満たすことが確認できる。
【数17】

この式は、α=0もしくはβ=0とおくことで、2本のレーザー光を用いる第1の実施形態の場合と一致することが簡単に確認できる。この場合においても、第2の実施形態において導いた(式11)と同様に共振器損失が小さい場合について
【数18】

が導ける。さらに、同様に三つのインプットカプラーM1、M2´、M3の透過率の合計は、次式のように共振器内部の合計損失にほぼ等しくなる。
【数19】

【0049】
(式18)(式19)より共振器損失に等しい透過率をそれぞれのインプットカプラーM1、M2´、M3に入射させるパワー比にしたがって振り分ける値がインピーダンスマッチング条件となることがわかる。特に共振器に入射させるそれぞれのレーザー光の強度が等しい場合、それぞれのインプットカプラーM1、M2´、M3の透過率を以下のように等しくすることが最適設計となる。
【数20】

【0050】
図9はこの発明の第9の実施形態による光学システムの基本構成を示す。
図9に示すように、この光学システムにおいては、3枚のインプットカプラーM1、M2´、M3と3枚の高反射ミラーM41、M42、M43とによりリング共振器40が構成されている。この場合、高反射ミラーM41、M42、M43は第8の実施形態によるリング共振器の高反射ミラーM4に相当し、このリング共振器40は第8の実施形態によるリング共振器と実質的に同一のものである。高反射ミラーM41はアクチュエーター41上に載せられている。この光学システムは一台のシードレーザー12を有する。そして、このシードレーザー12から放出されるレーザー光13を増幅モジュール20で増幅した後、パーシャルミラー21でその一部をレーザー光13cとして取り出し、アクチュエーター16上に載せられた折り返しミラー17で反射させるとともに、残りをレーザー光13aとして取り出し、そのままインプットカプラーM1に入射させる。折り返しミラー17で反射されたレーザー光13cは、増幅モジュール18で増幅した後、パーシャルミラー42でその一部をレーザー光13dとして取り出し、アクチュエーター43上に載せられた折り返しミラー44で反射させ、さらに増幅モジュール45で増幅してからインプットカプラーM2´に入射させる。パーシャルミラー42を透過したレーザー光13bはそのままインプットカプラーM3に入射する。
この光学システムでは、高反射ミラーM42、M43の一方が所定の透過率を有し、他方の透過率はゼロとすることで、その所定の透過率を有する高反射ミラーから外部に出力レーザー光が取り出される。
【0051】
上述の第2〜第7および第9の実施形態においては、一台のシードレーザー12から放出されるレーザー光を分離増幅して同一の共振器に結合させる場合について説明したが、二つの異なるレーザー光源を用い、これらのレーザー光源から放出されるレーザー光を同一の共振器に結合させるようにしてもよい。そこで次に、この場合に適したこの発明の第10の実施形態による光学システムについて説明する。
すなわち、この第10の実施形態による光学システムにおいては、図10に示すように、2枚のインプットカプラーM1、M3と2枚の高反射ミラーM2、M4とによりボウタイ型リング共振器10が構成されている。この場合、このボウタイ型リング共振器10内の光路上に非線形光学結晶11が配置されている。このボウタイ型リング共振器10の構成は、内部に非線形光学結晶11が配置されていることを除いて第1の実施形態によるボウタイ型リング共振器と同様である。この光学システムは一台のシードレーザー12、アイソレーター51、スレーブレーザー52を有する。そして、シードレーザー12から放出されるレーザー光13がアイソレーター51を通ってインプットカプラーM1に入射する。一方、スレーブレーザー52から放出されるレーザー光53がインプットカプラーM3に入射する。この場合、ボウタイ型リング共振器10の内部の例えば非線形光学結晶11の端面による反射が原因で発生した逆巡回方向のレーザー光54がボウタイ型リング共振器10の外部に漏れ出てきてスレーブレーザー52に光注入が行われることで、シードレーザー12との周波数同期が起こる(例えば、特許文献1参照。)。
【0052】
次に、この発明の第11の実施形態について説明する。
この第11の実施形態においては、第2の実施形態による光学システムをより具体化した構成について説明する。
図11にこの具体化した光学システムを示す。
図11に示すように、この光学システムにおいては、シードレーザー12として、例えば、発振波長が780nmにおいて出力が12mWのレーザーを用いる。ハーフミラー14としては、例えば、波長780nmの光に対して透過率が50%のものを用いる。アクチュエーター16としては、例えば、ピエゾアクチュエーターを用いる。折り返しミラー17としては、例えば、波長780nmの光に対する高反射ミラーを用いる。増幅モジュール15、18としては、例えば、出力1Wのテーパーアンプリファイアーを用いる。インプットカプラーM1、M3としては、例えば、波長780nmの光に対して透過率が0.5%のものを用いる。高反射ミラーM2、M4としては、例えば、波長780nmの光に対する高反射ミラーを用いる。非線形光学結晶11としては、例えば、SHG結晶であるLBO結晶を用いる。
【0053】
ハーフミラー14で分けられたレーザー光13aは電気光学位相変調器(EOM)60を介して増幅モジュール15に送られる。インプットカプラーM1、M3から外部に出てくるレーザー光はそれぞれフォトディテクター61、62で検出される。フォトディテクター61から得られる信号はRFミキサー63において、発振周波数が10MHzの発信器64の信号と混合される。RFミキサー63の出力信号はフィードバック回路65によりピエゾアクチュエーターからなるアクチュエーター19に送られ、このアクチュエーター19の制御が行われる。一方、フォトディテクター62から得られる信号はフィードバック回路66によりピエゾアクチュエーターからなるアクチュエーター16に送られ、このアクチュエーター16の制御が行われる。
【0054】
次に、この発明の第12の実施形態による光学システムについて説明する。
この第12の実施形態においては、発振波長が1064nmのレーザー光源と発振波長が780nmのレーザー光源とを用いて波長198nmのレーザー光を得ることができる光学システムについて説明する。
図12はこの光学システムを示す。
図12に示すように、この光学システムは、第二次高調波発生用共振器71、第四次高調波発生用共振器72、和周波発生用266nm共振器73および和周波発生用780nm共振器74を有し、和周波発生用266nm共振器73から放出される波長266nmのレーザー光と和周波発生用780nm共振器74から放出される波長780nmのレーザー光とを用いて波長198nmのレーザー光75を発生させる。
【0055】
発振波長が1064nmのレーザー光源としては、1064nmノンプレーナーリングオシレーター(NPRO)100を用いる。この1064nmノンプレーナーリングオシレーター100から放出されるレーザー光は電気光学位相変調器2000を介してファイバアンプ200(励起モジュールは省略)で増幅された後、折り返しミラー3000、3001、3002で順次反射されて第二次高調波発生用共振器71に入射する。この第二次高調波発生用共振器71は、1064nmインプットカプラー(T=5%)1000、ダイクロイックミラー(1064nm高反射、532nm高透過)1001および2枚の1064nm高反射ミラー1002、1003により構成され、内部にLBO結晶300が配置されている。このLBO結晶300をレーザー光が通ることにより1/2波長、すわち波長532nmに波長変換される。電気光学位相変調器2000にはRFジェネレーター2001から信号が送られ、制御が行われる。RFジェネレーター2001からの信号はRFミキサー2002に送られ、1064nmインプットカプラー1000から外部に出てくるレーザー光がフォトディテクター2003で検出されることにより得られる信号と混合される。このRFミキサー2002の出力信号は、フィードバック回路2005を介して、1064nm高反射ミラー1003を載せているPZTアクチュエーター2004に送られ、このPZTアクチュエーター2004の制御が行われる。
【0056】
第二次高調波発生用共振器71のダイクロイックミラー1001から外部に取り出される波長532nmのレーザー光は、電気光学位相変調器2010を通り、さらに折り返しミラー3003、3004で順次反射されて第四次高調波発生用共振器72に入射する。この第四次高調波発生用共振器72は、532nmインプットカプラー(T=2%)1100、ダイクロイックミラー(532nm高反射、266nm高透過)1101および2枚の532nm高反射ミラー1102、1103により構成され、内部にBBO結晶310が配置されている。このBBO結晶310をレーザー光が通ることにより1/2波長、すわち波長266nmに波長変換される。電気光学位相変調器2010にはRFジェネレーター2011から信号が送られ、制御が行われる。RFジェネレーター2011からの信号はRFミキサー2012に送られ、532nmインプットカプラー1100から外部に出てくるレーザー光がフォトディテクター2013で検出されることにより得られる信号と混合される。このRFミキサー2012の出力信号は、フィードバック回路2015を介して、532nm高反射ミラー1103を載せているPZTアクチュエーター2014に送られ、このPZTアクチュエーター2014の制御が行われる。
【0057】
第四次高調波発生用共振器72のダイクロイックミラー1101から外部に取り出される波長266nmのレーザー光は、折り返しミラー3005、3006で順次反射されて和周波発生用266nm共振器73に入射する。この和周波発生用266nm共振器73は、266nmインプットカプラー(T=2%)1200および3枚の266nm高反射ミラー1201、1202、1203により構成されている。電気光学位相変調器2010にはRFジェネレーター2021からも信号が送られ、制御が行われる。RFジェネレーター2021からの信号はRFミキサー2022に送られ、266nmインプットカプラー1200から外部に出てくるレーザー光がフォトディテクター2023で検出されることにより得られる信号と混合される。このRFミキサー2022の出力信号は、フィードバック回路2025を介して、266nm高反射ミラー1202を載せているPZTアクチュエーター2024に送られ、このPZTアクチュエーター2024の制御が行われる。
【0058】
一方、発振波長が780nmのレーザー光源としては、例えば、リットマン型回折格子帰還外部共振器半導体レーザー400を用いる。このリットマン型回折格子帰還外部共振器半導体レーザー400から放出されるレーザー光は、電気光学位相変調器2200を通り、折り返しミラー3100、3101で順次反射され、半導体テーパーアンプリファイアー421で増幅され、パーシャルリフレクター(T=2%)3106で一部が取り出され、折り返しミラー3103で反射されて和周波発生用780nm共振器74に入射する。この和周波発生用780nm共振器74は、780nmインプットカプラー(T=1%)1300、2枚の780nm高反射ミラー1301、1302および780nmインプットカプラー(T=0.5%)1304により構成されている。電気光学位相変調器2200にはRFジェネレーター2201から信号が送られ、制御が行われる。RFジェネレーター2201からの信号はRFミキサー2202に送られ、780nmインプットカプラー1300から外部に出てくるレーザー光がフォトディテクター2203で検出されることにより得られる信号と混合される。このRFミキサー2202の出力信号は、フィードバック回路2205を介して、780nm高反射ミラー1302を載せているPZTアクチュエーター2204に送られ、このPZTアクチュエーター2204の制御が行われる。パーシャルリフレクター3106を透過したレーザー光は、折り返しミラー3110、3111で順次反射され、半導体テーパーアンプリファイアー422で増幅され、折り返しミラー3112で反射されて780nmインプットカプラー(T=0.5%)1304に入射する。この780nmインプットカプラー1304から外部に出てくるレーザー光がフォトディテクター2213で検出されることにより得られる信号は、フィードバック回路2215を介して、780nm高反射ミラー3112を載せているPZTアクチュエーター2214に送られ、このPZTアクチュエーター2214の制御が行われる。
なお、リレーレンズを始めとする集光レンズ・コリメータレンズ・モードマッチングレンズなどの図示および説明は省略する。
【0059】
和周波発生用266nm共振器73の内部に発生された波長266nmのレーザー光と和周波発生用780nm共振器74の内部に発生された波長780nmのレーザー光とはブリュースターカットBBO結晶320上に同時に入射し、これによってこれらのレーザー光の角周波数の和の角周波数のレーザー光、すなわち波長198nmのレーザー光が取り出される(例えば、特許文献2参照。)。
【0060】
次に、この発明の第13の実施形態による光学システムについて説明する。
この第13の実施形態においては、発振波長が1064nmのレーザー光源と発振波長が1.56μm(1560nm)のレーザー光源とを用いて波長198nmのレーザー光を得ることができる光学システムについて説明する。
図13はこの光学システムを示す。
図13に示すように、この光学システムにおいては、発振波長が1.56μm(1560nm)のレーザー光源として、1.56μmブラッググレーティング型単一周波数ファイバレーザー401を用いる。この1.56μmブラッググレーティング型単一周波数ファイバレーザー401から放出されるレーザー光は、インライン位相変調器402を通って1.56μmファイバレーザー411(励起モジュールは省略)で増幅され、パーシャルリフレクター(T=2%)3106で一部が取り出され、折り返しミラー3103で反射され、分極反転LN結晶330を通って1/2波長、すなわち780nmに波長変換され、折り返しミラー3104、3105で順次反射されて和周波発生用780nm共振器74の780nmインプットカプラー1300に入射する。パーシャルリフレクター3106を透過したレーザー光は、1.56μmファイバレーザー412(励起モジュールは省略)で増幅され、折り返しミラー3110、3111で順次反射され、分極反転LN結晶331を通って1/2波長、すなわち780nmに波長変換され、折り返しミラー3113、3114、3112で順次反射されて和周波発生用780nm共振器74の780nmインプットカプラー1304に入射する。
上記以外のことは第12の実施形態と同様である。
【0061】
次に、この発明の第14の実施形態による光学システムについて説明する。
この第14の実施形態においては、発振波長が1064nmのレーザー光源と発振波長が1.56μm(1560nm)のレーザー光源とを用いて波長198nmのレーザー光を得ることができる光学システムについて説明する。
図14はこの光学システムを示す。
図14に示すように、この光学システムにおいては、ファイバアンプ200から放出される波長1064nmのレーザー光は、パーシャルリフレクター(T=2%)3007で一部が取り出され、残りは折り返しミラー3001に向かう。パーシャルリフレクター3007を透過した一部のレーザー光は、電気光学位相変調器2100を通り、ファイバアンプ201(励起モジュールは省略)で増幅された後、折り返しミラー3001、3011、3012で順次反射されて第二次高調波発生用共振器81に入射する。この第二次高調波発生用共振器81は、1064nmインプットカプラー(T=5%)1010、ダイクロイックミラー(1064nm高反射、532nm高透過)1011および2枚の1064nm高反射ミラー1012、1013により構成され、内部にLBO結晶301が配置されている。このLBO結晶301を波長1064nmのレーザー光が通ることにより1/2波長、すなわち波長532nmに波長変換される。電気光学位相変調器2100にはRFジェネレーター2101から信号が送られ、制御が行われる。RFジェネレーター2101からの信号はRFミキサー2102に送られ、1064nmインプットカプラー1010から外部に出てくるレーザー光がフォトディテクター2103で検出されることにより得られる信号と混合される。このRFミキサー2102の出力信号は、フィードバック回路2105を介して、1064nm高反射ミラー1013を載せているPZTアクチュエーター2104に送られ、このPZTアクチュエーター2104の制御が行われる。
【0062】
第二次高調波発生用共振器81のダイクロイックミラー1011から外部に取り出される波長532nmのレーザー光は、電気光学位相変調器2110を通り、さらに折り返しミラー3013、3014で順次反射されて第四次高調波発生用共振器82に入射する。この第四次高調波発生用共振器82は、532nmインプットカプラー(T=2%)1110、ダイクロイックミラー(532nm高反射、266nm高透過)1111および2枚の532nm高反射ミラー1112、1113により構成され、内部にBBO結晶311が配置されている。このBBO結晶311を波長532nmのレーザー光が通ることにより1/2波長、すなわち波長266nmに波長変換される。
【0063】
第二次高調波発生用共振器82のダイクロイックミラー1111から外部に取り出される波長266nmのレーザー光は、折り返しミラー3015、3016、3017で順次反射されて和周波発生用266nm共振器73に入射する。この場合、この和周波発生用266nm共振器73は、2枚の266nm高反射ミラー1201、1202および266nmインプットカプラー(T=1%)1204、1205により構成されている。この和周波発生用266nm共振器73の780nmインプットカプラー1204から外部に出てくるレーザー光がフォトディテクター2123で検出されることにより得られる信号は、フィードバック回路2125を介して、780nm高反射ミラー3017を載せているPZTアクチュエーター2124に送られ、このPZTアクチュエーター2124の制御が行われる。
和周波発生用780nm共振器74は、2枚の780nm高反射ミラー1301、1302および780nmインプットカプラー(T=0.5%)1304、1305により構成されている。
上記以外のことは第12および第13の実施形態と同様である。
【0064】
上述の第2〜第7、第9〜第14の実施形態による光学システムは、各種の装置の光源に用いて好適なものである。そのような装置の例として散乱異物検査装置(詳細については、例えば、特許文献3参照。)がある。この散乱異物検査装置は、半導体ウェハ(平坦化処理をしたウェハ)上の微小な異物を発見するための装置で、半導体工場では一般的に使われている。異物に照射したレーザー光が散乱されることで半導体ウェハ上の異物の位置などの情報を得る。異物のサイズは半導体技術(回路パターンの微細化技術)の進展とともに小さくなっており、使われるレーザー光の波長よりも小さいため、異物による散乱はレイリー散乱になる。異物によるレーザー光の散乱強度を上げるためには、非常に高いパワーのレーザー光源を用意するか、十分な散乱強度を得ることができる短波長レーザーを用意することが現在求められている。現時点では波長355nmもしくは266nmのレーザー光が最先端の装置に採用され始めているが、半導体装置の開発レベルでは次世代は波長198nmのレーザー光源が使われると考えられている。上述の第12〜第14の実施形態による光学システムは、このような散乱異物検査装置用の波長198nmのレーザー光源として好適なものである。
【0065】
一方、回路パターン付き半導体ウェハの光学顕微鏡を使った検査装置の例として、レビューステーションと呼ばれるものがある(この検査装置の詳細については、例えば、特許文献3参照。)。この検査装置は、その顕微鏡光源の短波長化により、回路パターンの微細化進展に対応している。上述の散乱異物検査装置と同様に、波長198nmのレーザー光源が次世代の顕微鏡光源として嘱望されているが、上述の第12〜第14の実施形態による光学システムは、このような散乱異物検査装置用の波長198nmのレーザー光源としても好適なものである。
【0066】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、構成、構成素子などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、構成素子などを用いてもよい。
具体的には、上述の第1〜第14の実施形態においては、2個または3個のインプットカプラーを用いた共振器およびこれを用いた光学システムについて説明したが、この発明は、4個以上のインプットカプラーを用いた共振器およびこれを用いた光学システムにも同様に適用することが可能である。
また、上述の第12の実施形態において、リットマン型回折格子帰還外部共振器半導体レーザー400の代わりに、リットロウ型回折格子帰還外部共振器半導体レーザーやDFB型半導体レーザーなどを用いてもよい。
なお、この発明と同一の技術的思想は、レーザー光を含む各種波長帯の電磁波一般に成立し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の第1の実施形態によるボウタイ型リング共振器を示す略線図である。
【図2】この発明の第2の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図3】この発明の第3の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図4】この発明の第4の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図5】この発明の第5の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図6】この発明の第6の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図7】この発明の第7の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図8】この発明の第8の実施形態によるボウタイ型リング共振器を示す略線図である。
【図9】この発明の第9の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図10】この発明の第10の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図11】この発明の第11の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図12】この発明の第12の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図13】この発明の第13の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図14】この発明の第14の実施形態による光学システムを示す略線図である。
【図15】従来の光学システムの第1の例を示す略線図である。
【図16】従来の光学システムの第2の例を示す略線図である。
【図17】従来の光学システムの第3の例を示す略線図である。
【図18】従来の光学システムの第4の例を示す略線図である。
【図19】従来の光学システムの第5の例を示す略線図である。
【図20】従来の光学システムの第6の例を示す略線図である。
【符号の説明】
【0068】
M1、M3、M2´、1204、1205、1300、1304、1305…インプットカプラー、M2、M3、1201、1202、1301、1302…高反射ミラー、10…ボウタイ型リング共振器、11…非線形光学結晶、12…シードレーザー、13、13a、13b、13c、13d…レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上の複数のミラーにより構成される共振器であって、
上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが、周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光をそれぞれ結合させるための第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている
ことを特徴とする共振器。
【請求項2】
上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーの透過率の合計が上記共振器の内部の合計損失にほぼ等しく、かつ上記第1のインプットカプラーの透過率が上記第1のレーザー光のパワーに比例する値であり、上記第2のインプットカプラーの透過率が上記第2のレーザー光のパワーに比例する値であることを特徴とする請求項1記載の共振器。
【請求項3】
上記第1のレーザー光のパワーと上記第2のレーザー光のパワーとが互いにほぼ等しく、かつ上記第1のインプットカプラーの透過率と上記第2のインプットカプラーの透過率とが互いにほぼ等しいことを特徴とする請求項2記載の共振器。
【請求項4】
3枚以上の複数のミラーにより構成される共振器であって、
上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが、周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光をそれぞれ結合させるための第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている
ことを特徴とする共振器。
【請求項5】
上記第1のインプットカプラー、上記第2のインプットカプラーおよび上記第3のインプットカプラーの透過率の合計が上記共振器の内部の合計損失にほぼ等しく、かつ上記第1のインプットカプラーの透過率が上記第1のレーザー光のパワーに比例する値であり、上記第2のインプットカプラーの透過率が上記第2のレーザー光のパワーに比例する値であり、上記第3のインプットカプラーの透過率が上記第3のレーザー光のパワーに比例する値であることを特徴とする請求項4記載の共振器。
【請求項6】
上記第1のレーザー光のパワーと上記第2のレーザー光のパワーと上記第3のレーザー光のパワーとが互いにほぼ等しく、かつ上記第1のインプットカプラーの透過率と上記第2のインプットカプラーの透過率と上記第3のインプットカプラーの透過率とが互いにほぼ等しいことを特徴とする請求項5記載の共振器。
【請求項7】
n枚(nは2以上の整数)以上の複数のミラーにより構成される共振器であって、
上記複数のミラーのうちのn枚のミラーが、周波数が互いに等しいn本のレーザー光をそれぞれ結合させるためのn個のインプットカプラーにより構成されている
ことを特徴とする共振器。
【請求項8】
一つのシードレーザーと、
2枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させる
ことを特徴とする光学システム。
【請求項9】
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ増幅した後に上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させることを特徴とする請求項8記載の光学システム。
【請求項10】
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を増幅した後に上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光のうちの一方を増幅した後に上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光を上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させることを特徴とする請求項8記載の光学システム。
【請求項11】
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ波長変換した後に上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させることを特徴とする請求項8記載の光学システム。
【請求項12】
上記共振器中に非線形光学結晶を配置することにより波長変換を行うことを特徴とする請求項8記載の光学システム。
【請求項13】
一つのシードレーザーと、
3枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光、上記第2のレーザー光および上記第3のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラー、上記第2のインプットカプラーおよび上記第3のインプットカプラーに結合させる
ことを特徴とする光学システム。
【請求項14】
一つのシードレーザーと、
n枚(nは2以上の整数)以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちのn枚のミラーがn個のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しいn本のレーザー光に分け、上記n本のレーザー光をそれぞれ上記n個のインプットカプラーに結合させる
ことを特徴とする光学システム。
【請求項15】
光源を用いた検査装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
2枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とする検査装置。
【請求項16】
光源を用いた処理装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
2枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とする処理装置。
【請求項17】
光源を用いた測定装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
2枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの2枚のミラーが第1のインプットカプラーおよび第2のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光および第2のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光および上記第2のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラーおよび上記第2のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とする測定装置。
【請求項18】
光源を用いた検査装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
3枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光、上記第2のレーザー光および上記第3のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラー、上記第2のインプットカプラーおよび上記第3のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とする検査装置。
【請求項19】
光源を用いた処理装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
3枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光、上記第2のレーザー光および上記第3のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラー、上記第2のインプットカプラーおよび上記第3のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とする処理装置。
【請求項20】
光源を用いた測定装置において、
上記光源として、
一つのシードレーザーと、
3枚以上の複数のミラーにより構成され、上記複数のミラーのうちの3枚のミラーが第1のインプットカプラー、第2のインプットカプラーおよび第3のインプットカプラーにより構成されている共振器とを有し、
上記シードレーザーから放出されるレーザー光を周波数が互いに等しい第1のレーザー光、第2のレーザー光および第3のレーザー光に分け、上記第1のレーザー光、上記第2のレーザー光および上記第3のレーザー光をそれぞれ上記第1のインプットカプラー、上記第2のインプットカプラーおよび上記第3のインプットカプラーに結合させる光学システムを用いた
ことを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−3616(P2007−3616A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180938(P2005−180938)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】