説明

共重合体、それらの製造ならびに湿潤剤及び分散剤としての使用

【課題】塗料やコーティングの分野より広い用途分野に対して可能な限りオーダーメイド対応ができる湿潤剤及び分散剤を提供する。
【解決手段】本発明は、(a)少なくとも一つのエチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸誘導体の1〜80モル%、(b)少なくとも一つの炭素数12〜30の不飽和モノカルボン酸誘導体の2〜80モル%、(c)少なくとも一つの5,000g/モル以下の数平均分子量を有するポリアルキレンオキシアリルエーテルの1〜90モル%及び(d)(a)、(b)又は(c)に該当しない更なる不飽和モノマーの0〜30モル%を共重合して得られる共重合体、ならびに該共重合体とアンモニア、アミン、水、アルコール、アミノアルコール及び/又は水酸化アルカリ金属もしくは水酸化アルカリ土類金属との反応生成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジカルボン酸及び/又はそれらの誘導体、不飽和モノカルボン酸及びアリルポリエーテル誘導体に基づく共重合体に関するものである。更に、本発明はこれら共重合体及びそれらの前駆体を製造する方法に関するものであり、また、この共重合体の使用、特に湿潤剤及び分散剤としての使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に、色素の入った(pigmented)又はフィラーを含有するコーティング組成物の製造に際し、コーティングシステム中に粒子状固形物が均一かつ微細に分散されることが重要である。粒子状固形物が最適に混入されないと、凝集を起こしたり、光沢が損なわれたり、色相が変化したり、沈降が生じたり、流動性が損なわれたりする。この種のシステム中に粒子状固体物を均一に混入することができるのは湿潤剤及び分散剤のみである。
【0003】
例えば、塗装の仕事のような各種のコーティング業に溶媒系(soloventborne)システムが採用されるに伴い、ソルベントフリーのコーティングシステムに対する需要が一段と増して来ている。システムの多様化を可能にするために、特定の目的や用途分野に使用できるように、オーダーメイドの湿潤剤及び分散剤への要望も増している。
【0004】
特許文献1(EP 1 142 972 A2)には、水系色素調剤(aqueous pigment preparation)を製造するために不飽和ジカルボン酸とビニル官能性ポリエーテルとの共重合体を使用することが記載されている。しかしながら、異なるオキシアルキレングリコール又はポリアルキレンオキシドビニルエーテルの入手が制限されているので、特定の系に合わせた共重合体を提供することは非常に限られる。
【0005】
特許文献2(EP 0 542 033 A2)には、色素及び通例の助剤の他に、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸もしくはその無水物から得られる共重合体、及びモノオレフィン及び/又はアルキルビニルエーテルから得られる共重合体を、色素調剤(pigment preparation)に使用することが開示されている。しかしながら、オレフィンを使用すると、多くの場合に、製品の湿潤及び分散作用に悪影響を及ぼす。更に、通常、炭化水素を共重合させた共重合体中の炭化水素モノマー残渣が臭いの問題を生じること以外に、水系システムで使用する時に濁りを生じる。
【0006】
特許文献3(GB 1,093,081)には、微粒子を分散させるためにマレイン酸誘導体とオレフィンとの共重合体を使用することも十分に開示されているが、これらの共重合体も上述したようなデメリットがある。
【0007】
特許文献4(DE 195 08 655 A1)には、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸又はそれらの無水物と分岐オレフィンオリゴマーとの共重合体を使用することが記述されている。更に、この共重合体にアリルアルキルエーテル又はモノエチレン性不飽和短鎖(例えばC3〜C10)モノカルボン酸を場合によっては共重合しても良いという記載がある。
【0008】
特許文献5(US 5,585,427)には、酸価が1未満である共重合体をつくるために、修飾ジカルボン酸誘導体のポリエーテルと種々のビニル化合物との共重合が開示されている。こうして得られたポリエーテルエステルは水媒質中で長期安定性に欠けるというデメリットがある。
【0009】
特許文献6(DE 42 14 011 C1)には、特に革や毛皮を処理するために、二成分から成る共重合体が記載されており、この共重合体はエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸エステル及び/又はジカルボン酸アミド、ならびに末端又はエキソ位置に二重結合を有する不飽和化合物の重合により得られている。
【0010】
特許文献7(EP 0 831 104 A2)には、例えばマレイン酸のような不飽和酸反応化合物、1−オレフィン及び1,1−二置換オレフィンとの三元共重合体が開示されている。これらの三元共重合体には上述したようなデメリットがあり、更に、潤滑油の分散剤や炭化水素燃料油の沈降防止剤として使用されている。
【0011】
【特許文献1】EP 1 142 972 A2
【特許文献2】EP 0 542 033 A2
【特許文献3】GB 1,093,081
【特許文献4】DE 195 08 655 A1
【特許文献5】US 5,585,427
【特許文献6】DE 42 14 011 C1
【特許文献7】EP 0 831 104 A2
【特許文献8】EP−A−0 270 126
【特許文献9】DE−A−36 43 007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の一つは、公知技術の問題点を改善できる共重合体及びそれらの前駆体を提供することにある。該共重合体は湿潤剤及び分散剤として特に適しなければならず、公知の共重合体のデメリットが無いものでなければならない。 更に、本発明の共重合体の前駆体は、塗料やコーティングの分野より広い用途分野に対して可能な限りオーダーメイド対応ができることである。したがって、選択する次の反応により、前駆体から得られる生成物は、例えば、塗料、印刷インク、色素濃縮物(pigment concentrates)及び/又は重合体組成物のような溶媒系、水系及び/又はソルベントフリー系システムで使用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(a)少なくとも一つのエチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸誘導体の1〜80モル%、
(b)少なくとも一つの炭素数12〜30の不飽和モノカルボン酸誘導体の2〜80モル%、
(c)少なくとも一つの5,000g/モル以下の数平均分子量を有するポリアルキレンオキシアリルエーテルの1〜90モル%及び
(d)(a)、(b)又は(c)に該当しない更なる不飽和モノマーの0〜30モル%を共重合して得られる共重合体、ならびに該共重合体とアンモニア、アミン、水、アルコール、アミノアルコール及び/又は水酸化アルカリ金属もしくは水酸化アルカリ土類金属との反応生成物を提供することで該目的を達成することができた。
【発明の効果】
【0014】
本発明の共重合体は固体物の湿潤剤及び分散剤として驚くほど適している。特に、水系、溶媒系又は溶媒フリーの重合体組成物、塗料、ポリビニルクロライド、グラフィックインク、トナー、インクジェットインクのようなプリントインク、粉体コーティング材料又はUVコーティング材料の湿潤剤及び分散剤として優れている。
更に、本発明の共重合体の前駆体は、塗料やコーティングの分野より広い用途分野に対して可能な限りオーダーメイド対応ができる。また、前駆体から得られる生成物は、例えば、塗料、印刷インク、色素濃縮物及び/又は重合体組成物のような溶媒系、水系及び/又はソルベントフリー系システムで使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
モノマー(a)
モノマー(a)はエチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸化合物、特に、炭素数4〜8の1,2−ジカルボン酸無水物であり、無水マレイン酸が好ましい。
【0016】
その代わりとして、又はこれとの組み合わせで、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸及びシトラコン酸のような1,2−ジカルボン酸化合物のモノエステル又はジエステルをモノマー(a)として使用することができる。かかるエステル用のアルコールは炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルコールであり、所望により脂環式基、芳香族基及び/又は脂肪族(araliphatic)基を有する。適切なアルコールには該アルコールのC1〜C4アルキレンオキシド付加物が含まれ、例えば、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−フェノキシエタノール又は2−(2−フェノキシエトキシ)エタノールのようなものである。
【0017】
加えて、モノマー(a)として明記できるモノマーは、例えば、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸ジブチルエステル、マレイン酸モノオクタデシルエステル、マレイン酸モノオクタデシル3 EOエステル, マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシルエステル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジイソトリデシルエステル及びフマル酸ジオクタデシルエステルが挙げられる。
【0018】
更に、モノマー(a)として、また、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸及びシトラコン酸を含んで、単量の1,2−ジカルボン酸誘導体のモノアミド、ジアミド及びイミドを挙げることができる。これらの化合物は第一級及び/又は第二級アミンもしくは炭素数1〜20のアミノアルコール、及びアンモニアに基づくものである。これらの化合物の具体例として、N−シクロヘキシルマレイン酸アミド、N−オクタデセニルマレイン酸アミド、N,N’−ジブチルマレイン酸アミド、N−ベンジルマレイン酸アミド及びN,N’−ジイソトリデシルマレイン酸アミドが挙げられる。
【0019】
モノマー(a)はそれぞれ単独で、もしくは2以上のモノマー(a)を組み合わせて用いることができ、1〜80モル%、好ましくは5〜75モル%、より好ましくは20〜70モル%、さらに好ましくは40〜65モル%の割合でモノマー混合物中に存在させる。モノマー(a)の割合が1モル%より少ないと分散される固体物への吸収が弱くなり、80モル%より多いと立体安定性に必要な吸収層が拡張されない。
【0020】
共重合体を水系システムで湿潤剤及び分散剤として使用する場合には、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に対して20〜80モル%、特に40〜70モル%の割合のモノマー(a)を使用するのが望ましい。水系システム用にデザインした共重合体中のモノマー(a)の割合が20モル%より少ないと、ほとんどの場合において水溶解性が十分でない。
【0021】
非水系システム及び/又は成形用組成物に使用する場合には、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に対して1〜70モル%、特に5〜65モル%の割合のモノマー(a)を使用するのが望ましい。この場合のモノマー(a)の割合が70モル%より多いと十分な相溶性が得られないことが多く、特に、非常に無極性のコーティングシステム又は成形用組成物でそのことが生じる。
【0022】
モノマー(b)
モノマー(b)は炭素数12〜30の不飽和モノカルボン酸誘導体であり、合成及び天然由来の炭素数12〜30のモノカルボン酸及びその誘導体から成るものである。特に、1以上の炭素−炭素二重結合有し、炭素数12−30のモノカルボン酸で、天然物由来のものが好ましい。パルミトレイン酸(例えば、海洋性動物や種油から)、オレイン酸(例えば、ヤシ油から)、エライジン酸、シス−バクセン酸、リノール酸(例えば、野菜油から)、α−及びγ−リノレン酸(例えば、野菜油から)、エレオステアリン酸(例えば、野菜油から)、ジ−ホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸(例えば、肝臓や動物脂肪から)、エルカ酸及びネルボン酸などを例示することができる。これらの脂肪酸は、例えば、混合物としても使用することができる。また、既にこれらの脂肪酸、又はこれらの混合物から成る天然製品の使用が特に適している。したがって、リノール酸やオレイン酸含有量が豊富な抱合型ひまわり油脂肪酸、又はリノール酸含有量が豊富なトール油脂肪酸のものも使用できる。これらの天然製品は市販されており、有利な価格で、かつ十分な純度で入手できる。かかる天然製品中にたまに存在する飽和脂肪酸の割合はできるだけ低くすべきであり、モノマー(b)の全重量基準で20重量%未満が好ましく、10重量%未満がより好ましく、5%未満がさらに好ましい。直鎖のモノカルボン酸で、その分子中の二重結合が分子の末端やエキソ位置ではなく中央か中央付近にあるものが好ましい。このことにより、共重合中に、二重結合の両サイドにある分子末端が共重合体の基幹の両側枝となる。モノマー(b)として使用する不飽和モノカルボン酸をモノマー(a)の所でエステル化成分として記述したアルコール、又はモノマー(a)所でアミド化成分として記述したアミンで全体的もしくは部分的にエステル化することができる。
【0023】
モノマー(b)として不飽和モノカルボン酸誘導体を使用などの工夫をすることにより、公知の通例の分散剤に入っているオレフィンに起因するデメリットを避けることが可能となった。一方、カルボキシ基によりポリマーに極性が追加されるので、水システムや極性システム中での分散に寄与する。他方、重合後に残存するモノマー残渣がどのようなものであっても、オレフィンを使用した場合に比べて水システムや極性システムにおける破壊が遥かに少ない。更に、カルボキシル基は色素表面上で吸収プロモーターとして適していることが判明した。
【0024】
モノマー(b)はそれぞれ単独で、もしくは2以上のモノマー(b)を組み合わせて用いることができ、2〜80モル%、好ましくは5〜60モル%、より好ましくは10〜40モル%の割合で共重合体に存在する。
【0025】
共重合体を水系システムで湿潤剤及び分散剤として使用する場合には、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に対して5〜60モル%、特に5〜40モル%の割合のモノマー(b)を使用した方が良い。とりわけ、炭素数12〜18の不飽和モノカルボン酸を使用することも望ましい。
【0026】
非水系システム及び/又は成形用組成物に使用する場合には、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に対して5〜80モル%、特に10〜60モル%の割合のモノマー(b)を使用するのが望ましい。とりわけ、炭素数16〜30の不飽和モノカルボン酸を使用することも望ましい。
【0027】
モノマー(c)
モノマー(c)はポリアルキレンオキシアリルエーテル(アリルポリエーテル誘導体)であり、下記の一般式(1)で表されるものが好ましい。

CH2=CH−CH2−O−[AO]p−R1 (1)

ここで、AOは炭素数2〜10のアルキレンオキシ単位、R1は水素、炭素数1〜6のアルキルラジカル又はCO−R2ラジカル、R2は炭素数1〜6のアルキルラジカル、及びpはアリルポリエーテル誘導体の数平均分子量Mnが5、000g/モル以下となるように選択する。
【0028】
しかしながら、モノマー(a)としてカルボン酸無水物を使用すると重合中に望まない無水物環の開環が起こるので、モノマー(c)としては水酸基を有しないものが好ましい。
【0029】
同じ分子中のAOはそれぞれ同一又は異なる炭素数2〜10のアルキレンオキシ単位を意味する。AOとしては、エチレンオキシ(=EO)単位又はプロピレンオキシ(=PO)単位が好ましい。アリルポリエーテル誘導体のポリエーテル部分の化学組成及び分子量により、共重合体の水溶解性及び/又は極性をコントロールすることができる。したがって、例えば、EO−及びPO−を有しているアリルポリエーテル中のEO部分を増加すると共重合体の親水性を増加させることができるので、水系システムシステムに適切なものとなる。
【0030】
EO/POアリルポリエーテル誘導体は下記の一般式(2)で表される。

CH2=CH−CH2−O−[EO]m−[PO]n−R1 (2)

ここで、R1は前述したものと同じであり、mとnの和は前述のpに対応する。すなわち、mとnはアリルポリエーテル誘導体の数平均分子量Mnが5,000g/モル以下となるように選択する。
【0031】
モノマー(c)のMnが5,000g/モルを超える場合には、得られる共重合体の分子量が大き過ぎ、十分な溶解性や幅広い相溶性を持つことができなくなる。
アリルポリエーテル誘導体の数平均分子量Mnとして200以上が好ましい。
モノマー(c)の分子量は約300〜3,000g/モルが好ましく、400〜2,000g/モルがより好ましい範囲である。
【0032】
下記のアリルポリエーテル誘導体の使用が好ましい;
ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアリルメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアリルメチルエーテル。これらは、例えば、Uniox PKAR、Unisafe PKAR及びUnicelin PKARの商標で日本油脂株式会社から入手できるものである。異なるアルキレンオキシ単位を有す一般式(2)CH2=CH−CH2−O−[EO]m−[PO]n−R1のアリルポリエーテルを使用する場合には、例えば、異なるアルキレンオキシ単位(この場合は[EO]及び[PO]がポリアルキレンオキシ基にランダムに分散したものでも、勾配構造又はブロック構造として存在するものでも良い。
【0033】
これらのアリルポリエーテルは、アリルアルコールと、特にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドのようなオキシランとから公知の方法を用いて製造することができる。上述の添字m及びnはモル比を適切に選ぶことによりコントロールできる。更に、よく知られている方法を用いて、オキシランのシークエンスを選択すれは、異なるブロックポリアルキレンオキシドラジカル又はランダムに分散したポリアルキレンオキシドラジカルを製造することができる。
【0034】
モノマー(c)はそれぞれ単独で、もしくは2以上のモノマー(c)を組み合わせて用いることができ、1〜90モル%、好ましくは5〜60モル%、より好ましくは10〜40モル%の割合で共重合体に存在する。モノマー(c)の割合が1モル%より少ない場合は、分散される粒子の表面に十分な吸収層を設けることができないし、90モル%より多い場合は、粒子表面への親和性が低過ぎる。とりわけ、片方は相対的に疎水性のアルキレンオキシ鎖、もう片方は相対的に親水性のアルキレンオキシ鎖というように2種の異なるモノマー(c)の混合物を使用すればメリットがあることが判明している。このように2種以上のモノマー(c)の混合物を含む共重合体は、特に、多面的に有用であり、かつ普遍的な湿潤剤及び分散剤として使用できる。
【0035】
共重合体を水系システムで湿潤剤及び分散剤として使用する場合には、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に対して5〜50モル%、特に15〜45モル%の割合のモノマー(c)を使用するのが望ましい。水系システム用に企図した共重合体中のモノマー(c)の割合が5モル%より少ないと水溶解性が低下する。更に、とりわけ、EOのように格段の親水性を有するアルキレンオキシ基の存在がメリットに繋がる。
【0036】
非水系システム及び/又は成形用組成物に使用する場合には、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に対して5〜65モル%、特に10〜50モル%の割合のモノマー(c)を使用するのが望ましい。更に、とりわけ、POのようにより顕著ではない親水性の性質を有するアルキレンオキシ基の存在がメリットに繋がる。
【0037】
モノマー(d)
モノマー(d)として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類のようなアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びビニルシクロヘキサン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル及びトリフルオロ酢酸ビニルのような脂肪族又は芳香族カルボン酸のビニルエステル類;又は酢酸アリル、プロピオン酸アリル、ブタン酸アリル、ヘキサン酸アリル、オクタン酸アリル、デカン酸アリル、ステアリン酸アリル、パルミチン酸アリル、サリチル酸アリル、乳酸アリル、シュウ酸ジアリル、ステアリン酸アリル、コハク酸ジアリル、グルタール酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、ピメリン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル及びイソフタル酸ジアリルのような脂肪族又は芳香族のアリルエステル類;ビニルエチルエーテル及び/又はビニルポリエーテルのようなアルキルビニルエーテル類が例示することができる。
【0038】
これらのモノマーは分散作用に決定的に重要なものではないが、種々の用途分野に必要とされる共重合体の性質、特に相溶性、を細かく調整するために本質的に作用する。
【0039】
モノマー(d)はそれぞれ単独で、もしくは2以上のモノマー(d)を組み合わせて用いることができ、0〜30モル%、好ましくは0〜15モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは未だ0モル%、の割合で共重合体に存在する。
【0040】
共重合体を水系システムで湿潤剤及び分散剤として使用する場合には、モノマー(d)、(b)、(c)及び(d)の合計に対して0〜20モル%、特に0〜5モル%の割合のモノマー(d)の使用が望ましい。
【0041】
非水系システム及び/又は成形用組成物に使用する場合には、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に対して0〜25モル%、特に0〜10モル%の割合のモノマー(d)を使用するのが望ましい。
【0042】
本発明の共重合体及びその前駆体の製造
本発明の共重合体は、エマルジョン、サスペンジョン、析出、溶液及びバルク重合のような既知の良く使用される重合方法で製造することができる。その中でも、フリーラジカル溶液重合及びバルク重合が好ましい。
【0043】
重合のために、初期充填にモノマーの全部又は幾らかを入れ、そして、重合の途中にフリーラジカル開始剤を量り入れるのが良い。重合は通常の容器、必要に応じて耐圧容器を用いて行い、この容器には攪拌機、供給槽及び計量装置を取り付ける。
【0044】
モノマー(b)及び/又は(c)を初期充填に含め、この初期充填をモノマー(a)と一緒にゆっくり供給するのが望ましい。これは、マレイン酸無水物のような可溶性の低いジカルボン酸誘導体をモノマー(a)として使用する場合に、望ましい方法である。このような場合に、モノマー(a)を反応開始剤と一緒に数時間以内で、好ましくは4時間未満で、より好ましくは約2時間以内で加えるのが良い。反応後、更に数時間まで、好ましくは4時間未満、より好ましくは約2時間の重合後の反応時間を設けて、ついで、例えば核磁気共鳴分光法を使って重合反応の完結を確認する。この重合後の反応時間内に、更にモノマー(a)及び必要に応じて開始剤を加えることで反応完結度を向上させる場合がある。
【0045】
使用する重合方法によるが、公知技術と同じように、粘度によって、バルクで又は適切な溶媒、混合溶媒もしくは他の適切なキャリア媒体の存在下で本発明の化合物を製造することができる。トルエン、キシレン、脂肪族及び/又は脂環式石油留分のような炭化水素;クロロホルム、トリクロロエタンのような塩素化炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルのような環状及びアクリル酸エーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルラクトン、フタル酸エステルのようなエステル;又は他の可塑剤、ジカルボン酸もしくはポリカルボン酸エステル、C2-4ジカルボン酸のジアルキルエステル「二塩基エステル“Dibasic Ester”と称する」;エチルグリコール酢酸エステル、メトキシプロピル酢酸エステルのようなアルキルグリコールエステル;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトンのようなケトン;プロピレングリコールのような脂肪族アルコール;2−ブトキシ−エタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−フェノキシエタノールもしくは2−(2−フェノキシエトキシ)エタノールのようなエーテルアルコール;ポリエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンのような酸アミドなどが例示できる。使用を企図している分野に合わせて溶媒もしくは混合溶媒及び/又はキャリア媒体を選択するのが良い。例えば、水希釈可能コーティングシステム又は色素合成後の水系サスペンジョンのコーティング色素に用いる本発明の化合物には、完全に、又は部分的に水希釈可能な溶媒を使用することが良い。 例えば、使用する製品がVOC(揮発性有機化合物)の存在を嫌うような用途の場合には、できるだけ溶媒フリーの仕様とするか、相当の高沸点のキャリア媒体を使用する仕様とすべきである。
【0046】
用途分野により、合成に使用した溶媒を反応混合物にそのまま残存させるか、完全に、又は部分的に除去し、必要に応じて他の溶媒かキャリア媒体で置換することができる。相溶性によるが、本発明の共重合体はレジン、レジン溶液、反応性希釈剤、バインダー、又は他の湿潤剤及び分散剤、抗沈降剤、シリコンのような表面活性添加剤のようなものと結合させることができる。
【0047】
減圧下及び/又は水を加えて共沸させるなどの適切な方法で、溶媒を完全に又は部分的に、蒸留などにより除去することができる。その代わりとして、脂肪族炭化水素、例えばヘキサンのような非溶媒を加え沈殿させ、ついでろ過して活性物質を分離することができ、必要に応じて分離したものは乾燥する。このようにして得られた活性物質は特定の用途分野に適した溶媒で希釈することができるし、必要に応じて粉体コーティングの場合のように希釈していない形で使用することもできる。必要に応じて減圧下及び/又は水を加え共沸させるなどの適切な方法を用いて、共重合体溶液の溶媒を蒸留して除去した後、適切な高沸点溶媒を加える。このようにして、生成物を特定の用途分野に適したキャリア媒体に移すことができる。
【0048】
更に、大多数の場合に、本発明の共重合体製造用のモノマーは溶媒をまったく使用しないで共重合体を製造することができる。したがって、重合溶媒を除去する必要が無くなるので、共重合体を溶媒フリー又は水系システムで使用する場合にメリットとなる。
望ましくは一般的に使用されているフリーラジカルを形成する開始剤の存在下で、好ましくは60〜220℃、より好ましくは100〜180℃、非常に好ましくは120〜160℃で共重合を行う。
【0049】
フリーラジカル開始剤は過酸化物、ヒドロ過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物及びレドックス触媒から選ぶのが良い。レドックス触媒はアルコルビン酸、グルコース、亜硫酸水素塩のような酸化成分と還元成分から成るものである。好ましいものとして、2,2−アゾジ(イソブチロニトリル)、2,2−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、t−ブチル−過マレイン酸塩、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーベンゾエート(TBPB), ジクミルパーオキシド、ジ−t−アミルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ジドデカノイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーアセテート、tert−ブチル−2−メチルパープロピネートがあり、特に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキシドが好ましい。メリットのある開始剤の使用量は用いるモノマーを基準にして0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%である。
【0050】
本発明の共重合体の数平均分子量は1,000〜50,000g/モル、好ましくは1,500〜25,000g/モルである。
【0051】
共重合体の分子量及び分子量分布は適用する反応の条件、特に、開始剤の種類と量、モノマーの比率及び重合温度に影響される。あるケースでは、一緒に通常用いられる重合調節剤を使用することが理に適っている。その重合調節剤としては短鎖アルデヒド、特に、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール及びチオグリコール酸エステルのような硫黄化合物を使用するのが通例である。例えば、これらの調節剤の使用量は0.1〜5重量%である。
【0052】
重合を行うために、所望に応じ窒素ガスのような不活性ガス雰囲気下で、初期充填したモノマーを反応温度まで加熱する。フリーラジカル開始剤を別に量り入れるが、場合によってはモノマー(a)と同時に加えても良い。調節剤についても同様にする。
【0053】
このようにして得られた共重合体は分散剤として直接使用することができる。一方、得られた共重合体の湿潤性能及び分散性能の制御をより発揮させるために、共重合体のカルボキシル基及び/又は無水物基の全量又は一部を最初にアミド化及び/又はエステル化及び/又は中和、又は加水分解することもできる。
【0054】
かかる目的のために、必要に応じてp−トルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸のようなスルホン酸もしくはジブチル錫ジラウレート、テトラアルコシキチタンのような有機金属化合物などの適した通例の触媒の存在下に、この共重合体を、所望により加圧し、20〜250℃、好ましくは50〜200℃で選択したアルコール、アミン及び/又はアミノアルコールを混合するのが有利である。 この反応はバルク又は適切な不活性溶媒中で行う。この反応速度は単量カルボン酸無水物の反応速度に似ており、反応は一般的に1〜6時間で終了する。部分的加溶媒分解の場合には、共重合体中に無水物基が残存しており、これらは水で加水分解するか、所望により、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、アンモニア水溶液及び/又はアミノアルコールで中和することができるし、共重合体中に未反応のまま残すこともできる。
【0055】
所望により、加水分解はその次に行う共重合体の中和処理と同時に行うこともできる。 これはアルコール、アミン及び/又はアミノアルコールと反応していない重合体に同じように適用する。
【0056】
アンモニア、及び一般に炭素数1〜50、好ましくは炭素数2〜30の第1級及び第2級アミンを使用してアミドを形成する。メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−オクチルアミン、イソトリデシルアミン、獣脂脂肪族アミン、ステアリルアミン及びオレイルアミン、及び ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ビス(メチルシクロヘキシル)アミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジイソトリデシルアミン、ジ−獣脂脂肪族アミン、ジステアリルアミン及びジオレイルアミンのような飽和及び不飽和脂肪族アミンならびに脂環式アミン;アニリン、ナフチルアミン、o−、m−及びp−トルイジン及び2−フェニルエチルアミン、ならびにN−エチル−o−トルイジンのような芳香族アミン;エタノールアミン、n−プロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジエタノールアミン及びジ−n−プロパノールアミンのようなアルカノールアミン;モルフォリン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン、ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン及びアミン端末ポリオキシアルキレンアミン(市販品:huntsman社のJeffamines)のようなエーテルアミン及びポリエーテルアミン;エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、ジプロピレンジアミン及び3,3‘−ジメチル−4,4’−ジアミノフェノールメタン、ならびにジエチルトリアミン、ジプロピルトリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン及びN−獣脂脂肪族1,3−ジアミノプロパンのようなジアミン及びオリゴアミンなどが例示できる。特に、2−(ジエチルアミノ)エチルミン, 3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタン−ジアミン、1−ジエチルアミノ−4−アミノペンタン、N−(3−アミノ−プロピル)モルフォリン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−メチルピペラジン及びアミノエチルピペラジン、好ましくは3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン及び/又はN−(3−アミノプロピル)イミダゾールのような第1級又は第2級アミノ基及び第3級アミノ基を有す脂肪族ジアミンが例示でき、第3級窒素の場合は複素環の部分であっても良い。
【0057】
共重合体中のカルボキシル基又は無水物基はそれぞれ炭素数1〜50、好ましくは4〜30を有す第1級、第2級及び第3級アルコールでエステル化できる。これらのアルコールは直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のものである。適切なアルコールとして下記のものを例示する:
メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナオール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール及びこれらの異性体、シクロヘキサノール、獣脂脂肪族アルコール、ステアリルアルコールやオレイルアルコールのような脂肪族アルコール、C9/C11オキソアルコールやC13/C15オキソアルコールのようなオキソ法アルコールのような脂肪族及び脂環式アルコール;炭素数12〜24のチーグラーアルコール;アルキルフェノール、ビスフェノール A及びエトキシル化アルキルフェノールのような芳香族アルコール;エチレングリコール、1,10−デカンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチルプロパン−1,3−ジオール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びグルコースのようなジオール、オリゴオール及びポリオール;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジー及びトリエチレングリコールモノエチルエーテル、2−ブトキシエタノール、ジー及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−フェノキシエタノールもしくは2−(2−フェノキシエトキシ)エタノール、ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのようなエーテルアルコール及びポリエーテルジオール。
【0058】
共重合体中の酸基を中和するために、前述した水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属及びアンモニア以外に、第1級、第2級又は第3級アミン及びアミノアルコールを使用することができる。共通塩基類(common bases)の例として、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、N−オレイル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、アミノメチルプロパノール、2−ジブチルアミノエタノール、モノアミン、ジアミン又はポリアミンアルコキシレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン、N、N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]−N−オレイルアミンがあり、特に、市場で一般的になっているもので、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの25〜50重量%力価のアルカリ溶液又はアミノアルコールの形をとっているものが好ましい。
【0059】
中和の程度は共重合体の親水性及び企図している使用により導くことになる。従って、親水的に調節した重合体の中和は疎水的に調節したものよりも遥かに中和が少なくて済む。強い塩基性を必要とするシステムに使用する場合には、過剰の塩基を用いることが有利であるというようなケースもある。また、中和の程度は中和剤の種類によるので、トリエチレンアミンを使用する場合は水酸化カリウムを使用する場合に比べ、中和の程度を高くしなければならない。最終製品の溶解性、分散特性及び安定性は、とりわけ中和の程度によるものである。一般的に、無水物基を完全に加水分解した後の共重合体中に残存している酸基の中和の程度は0〜100%、特に、50〜100%が好ましい。しかし、多くの場合に、中和しないで共重合体を使用することができる。
【0060】
中和は好ましくは40から100℃、より好ましくは50〜70℃の温度で、水による均一化もしくは中和剤の添加により行う。加圧リアクターでは高温を使うが、この場合には存在するエステル基やアミド基の加水分解安定性を考慮することが必要である。共重合体中に存在する無水物基はこの過程で加水氏分解してカルボキシル基になり、中和の対象となる。直ぐ使用できる状態にあるポリマー分散のpHは4〜10、好ましくは5〜8、より好ましくは7±0.5である。
【0061】
フリーカルボキシル基の加溶媒分解もしくは加水分解及び/又は中和と同様に、アンモニアもしくは第1級アミンを用いて、反応条件を適切に選ぶことにより、共重合体中のジカルボキシ無水物単位からイミド構造作ることが可能である。エステル化もしくはアミド化共重合体と同じ方法で、これらのイミド官能性共重合体を水系分散や水溶液に変換することができる。
【0062】
使用するモノマー(a)〜(d)の分子量及び種類と量を変えることで、本発明の化合物の効果や相溶性を各種の溶媒、キャリア媒体、バインダー、レジン、固形物及び適切な場合には、更に本発明の製品が使用されるコーティング組成物や成形用組成物に存在する重合体化合物のいづれにも合わせることができる。
【0063】
水系塗料や電着コーティングような高度極性システムに使用するためには、重合体が、特定用途分野に適するような水溶解性を有すようにポリエチレンオキシド及び/又はカルボキシレート基のような極性基を十分に高い比率で含むようにしなければならない。しかしながら、その比率が高過ぎると水に対する敏感性が不必要に増加することに留意しなければならない。
【0064】
ロング・オイルアルキド塗料、PVCプラスチゾル又はポリオレフィンのような無極性システムに使用する場合には、適切な割合の無極性基でなければならない。従って、色素濃縮物(pigment concentrates) のような幅広い相溶性を必要とするシステムに使用する場合には、極性基と無極性基の組合せのバランスが大切である。
【0065】
本発明の共重合体は固体物の湿潤剤及び分散剤として驚くほど適している。特に、水系、溶媒系又は溶媒フリーの重合体組成物、塗料、ポリビニルクロライド、グラフィックインク、トナー、インクジェットインクのようなプリントインク、粉体コーティング材料又はUVコーティング材料の湿潤剤及び分散剤として優れている。
【0066】
公知の分散剤で知られている技術に従い、公知の分散剤の代わりに本発明の分散剤を使用することができる。従って、例えば、色素入りならびに/もしくは充填剤入り塗料、プリントインク、ペースト、色素濃縮物及び/又はポリビニルクロリド、不飽和ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンなどのような重合体組成物の製造に使用することができる。 例としては、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂又はエポキシ樹脂のようなフィルム形成バインダー、及び/又は溶媒、色素ならびに、必要に応じて充填材、本発明の分散剤及び一般的な助剤を混合して色素入り塗料を製造するために本発明の分散剤を使用することができる。水ベースのコーティングの例として、エマルジョン塗料、車体用の陰極又は陽極電着コーティング、又は水系二成分コーティング材料がある。
【0067】
更に、本発明の分散剤は色素濃縮物のような固体物濃縮物の製造に特に好適である。この目的のために、本発明の化合物を有機溶媒、可塑剤及び/又は水のようなキャリア媒体に加えた後に分散する固体物を攪拌しながら加える。さらに、これらの濃縮物はバインダー及び/又は他の助剤を含有することができる。ついで、これらの固体物濃縮物を異なるバインダーに入れることができる。代わりに、溶媒を使用しないで色素を分散剤に直接分散することができ、特に、色素入り熱可塑性及び熱硬化性ポリマー処方に適している。
【0068】
最後に、本発明は次のような分散剤の使用を提供するものである。すなわち、基板上の色素入りコーティング、基板に塗布する色素入りコーティング材料及び焼成又は硬化もしくは架橋される基板に塗布する色素入りコーティング材料の製造にこの種の分散剤を使用することである。
【0069】
本発明の分散剤は単独で又は公知技術で通例使用される分散剤と一緒に使用する。例えば、ポリオレフィンに使用する場合には、本発明の分散剤と一緒にキャリア材料として対応する低分子量のポリオレフィンをするのが好都合である。
【0070】
本発明のもう一つの発明的使用は粉末粒子及び/又は繊維状粒子の形に分散可能な固体物、特に、必要な場合には粒子を本発明の分散剤でコーティングするが、分散可能色素又は重合体充填材を製造することにある。有機及び無機固体物によるこの種のコーティングは例えば、特許文献8(EP-A-0 270 126)に記載されている既知の方法によって行う。この場合に、溶媒又はエマルジョン媒体は混合物から除去されるか残存し、ペーストができる。これらのペーストは通常の市販品であり、更にバインダー、助剤、添加剤を含むことができる。特に色素の場合には、色素の合成中又は合成後に色素の表面をコーティングすることができる。例えば、色素の仕上げ中又は仕上げ後に本発明の分散剤を色素のサスペンジョンに加えて色素表面をコーティングする。このようにして事前に処理された色素は未処理のものと比べて、混和が著しく容易となり、粘度、凝集性及び光沢性能が高められ、色強度が高くなる。
【0071】
本発明の分散剤は、上述した微粉や繊維状固体物の分散剤及びコーティング材料としての用途の他に、合成樹脂の粘度低下剤や相溶化剤としても使用されるし、例えばポリマーブレンドのような非相溶性成分の混合物の相溶性を向上させるためにも使用される。そのような合成樹脂の例としてはシートモールディング組成物(SMC)及びバルクモールディング組成物(BMC)として知られているものがあり、充填材や繊維の含有量が多い不飽和ポリエステルからできるものである。これらの調整や加工については特許文献9(DE-A-36 43 007)の実施例に記載されている。
【0072】
他の例としては、ポリウレタンの製造に使用される非相溶性のポリオール混合物、ポリイソシアネート混合物又はポリオール/発泡剤組成物がある。本発明の分散剤を使用すると、非相溶性に起因する分離という問題を部分的あるいは全体的に避けることができる場合が多い。
【0073】
本発明の分散剤の使用量は分散される固体物に対して0.5〜100重量%である。しかしながら、分散される固体物が特殊なものの場合には、より多くの量の該分散剤を用いることが必要である。
分散される固体物の表面積を分散剤で被覆するので、分散剤の量は本質的にその表面積によるものである。例えば、カーボンブラックの場合はTiO2よりも実質的により多くの分散剤を必要とする。
【0074】
微粉又は繊維状固体物の例としては、公知技術にしたがって分散剤でコーティングされるものがあり、塗料、他のコーティング材料、成形用組成物又は他のプラスチック類に使用される有機及び無機の色素、及び充填もしくは強化塗料、他のコーティング材料、成形用組成物又は他のプラスチック類に使用される有機又は無機の充填材がその例である。そのような充填材の一つとして、有機及び/又は無機の繊維があり、同様に充填材もしくは強化材料として使用されるものである。
【0075】
色素の例として下記に例示する:
モノ−、ジ−、トリ−及びポリアゾ色素、オキサジン、ジオキサジン及びチアジン色素、ジケトピロロピロール、フタロシアニン及び他の金属錯体色素、インジゴイド色素、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、キサンチン、アクリジン、キナクリドン及びメチン色素、アントラキノン、ピラントロン、ペリレン及び他の多環カルボニル色素、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、硫化バリウム、リトポン、酸化鉄、ウルトラマリン、リン酸マグネシウム、アルミン酸コバルト、スズ酸コバルト、亜鉛酸コバルト、酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化クロム、クロム酸亜鉛、ニッケル、チタン、亜鉛、マグネシウム、コバルト、鉄、クロム、アンチモン、マグネシウム及び/又はアルミニウムの混合金属酸化物(例えば、ニッケルチタンイエロー又はクロムチタンイエロー)、純鉄、酸化鉄及び酸化クロム、又はこれらの混合酸化物ベースの磁性色素、アルミ青銅のような金属効果色素、真珠光沢色素、及び蛍光及び燐光色素である。
【0076】
微粉又は繊維状充填材の例として、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、珪藻土、珪質土、水晶、シリカゲル、タルク、カオリン、マイカ、パーライト、長石、スレート粉末、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カルサイト、ドロマイト、ガラスもしくは炭素の微粉又は繊維状粒子から成るものがある。他の色素や充填材の例が特許文献8(EP-A-0 270 126)の実施例に記載されている。
【0077】
更に、炭酸カルシウム又は酸化カルシウムのような鉱物系充填材、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムのような難燃剤及びシリカのような艶消し剤の分散化と安定化を見事に行うことができる。
【実施例】
【0078】
本発明の共重合体について、以下の実施例により詳細に説明する。
製造実施例
別途記述しない限り、平均分子量は数平均分子量Mnのことである。
【0079】
実施例1
12モルの無水マレイン酸(MAA)、4.5モルのトール油脂肪酸、抱合型ひまわり脂肪酸及び3モルのポリオキシエチレンアリルメチルエーテルの共重合体(平均MW(分子量)が450g/モル)
トール油脂肪酸の40.6g(等量(EW)=289g/モル)、抱合型ひまわり脂肪酸39.5g(EW=281g/モル)、MAA36.7g(0.3745モル)及びポリオキシエチレンアリルメチルエーテル42.1g(0.0936モル)の混合物を反応槽に入れ、攪拌しながら137℃に加熱した。ジプロピレングリコールジメチルエーテル53gにtert−ブチルパーベンゾエート(TBPB)4.24gを溶解した液を4時間かけて滴下した。添加終了後に、この混合物を137℃で0.5時間攪拌した。生成物には75%の固体物(SC)が含まれる。
【0080】
実施例2
実施例1の生成物とジェフアミン(Jeffamin M2070(EO/PO比が70/30で、数平均MWが2000の第1級モノアミンアルコキシレート:Huntsman社製))との反応生成物
実施例1の生成物91gをジェフアミン M2070 84g及びp−トルエンスルホン酸0.18gと混合し、混合物を170℃で3時間攪拌する。ついで、反応で生成する水を170℃で3時間、蒸留除去する。得られた生成物のアミン数は1未満であり、酸価は約46である。
【0081】
実施例3
実施例1の反応生成物とベンジルアミンとの反応生成物
実施例1の生成物108g、ベンジルアミン8g及びp−トルエンスルホン酸0.12gを混合し、この混合物170℃で3時間攪拌する。ついで、反応で生成する水を3時間かけて蒸留除去する。この時の温度は最初が170℃で、段階的に上げ、蒸留の最後は182℃に上げる。得られた生成物のSCは100%である。
【0082】
実施例4
実施例3の生成物とジエチルエタノールアミンとの塩化(Salification)生成物
実施例3の生成物39gを蒸留水142gで均質化する。ついで、ジエチルエタノールアミン5gを室温でゆっくりと添加する、次に、この混合物を50℃で更に5分間攪拌する。得られた混合物のpHは7である。
【0083】
実施例5
12モルのMAA、4モルのトール油脂肪酸、4モルの抱合型ひまわり脂肪酸、3モルのポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(平均分子量MW=1100g/モル)及び1モルのポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート(平均MW=1,600g/モル)の共重合体
トール油脂肪酸の24.8g(EW=289)、抱合型ひまわり脂肪酸24.1g(EW=281)、MAA25.2g(0.257モル)、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル70.7g(0.0643モル)及びポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート36.2g(0.0226モル)の混合物を反応槽に入れ、攪拌しながら137℃に加熱した。ジプロピレングリコールジメチルエーテル60gにTBPB4.83gを溶かした液を4時間かけて滴下した。添加終了後に、この混合物を137℃で、さらに0.5時間攪拌した。生成物のSCは76%である。
【0084】
実施例6
実施例5の生成物とジエチルエタノールアミンとの塩化生成物
実施例5の生成物54gを蒸留水31gで均質化する。ついで、ジエチルエタノールアミン7.8gを室温でゆっくりと添加する、次に、この混合物を50℃で、さらに5分間攪拌する。得られた混合物のpHは7である。
【0085】
実施例7
12モルのMAA、4モルのトール油脂肪酸、5モルのポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(平均分子量MW=1,100g/モル)及び5モルのポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート(平均MW=1,600g/モル)の共重合体

トール油脂肪酸の7.2g(EW=289)、MAA14.7g(0.15モル)、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル68.9g(0.0626モル)及びポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート106g(0.0663モル)の混合物を反応槽に入れ、攪拌しながら137℃に加熱した。ジプロピレングリコールジメチルエーテル66gにTBPB5.25gを溶かした液を4時間かけて滴下した。添加終了後に、この混合物を137℃で、さらに0.5時間攪拌した。
【0086】
実施例8
実施例7の生成物とジエチルエタノールアミンとの塩化生成物
ジエチルエタノールアミン6.1gを蒸留水41gとジプロピレングリコールジメチルエーテル37.6gとで均質化する。ついで、実施例7の生成物79gを60℃でゆっくりと添加する、次に、この混合物を60℃で、さらに15分間攪拌する。
【0087】
実施例9
12モルのMAA、8モルの抱合型ひまわり脂肪酸のモノフェニルグリコールエステル(平均当量=430g/モル)、3モルのポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(平均MW=1,100g/モル)及び1モルのポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート(平均MW=1,600g/モル)の共重合体。
モノフェニルグリコールエステル80g(0.1844 eq)、MAA27.1g(0.2765モル)、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル76g(0.0692モル)及びポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート39g(0.0244モル)の混合物を反応槽に入れ、攪拌しながら137℃に加熱した。ジプロピレングリコールジメチルエーテル74gにt−ブチルパーベンゾエート(TBPB)5.92gを溶かした液を4時間かけて滴下した。 添加終了後に、この混合物を137℃で、さらに0.5時間攪拌した。生成物のSCは75%である。
【0088】
実施例10
実施例9の生成物とジエチルエタノールアミンとの塩化生成物
ジエチルエタノールアミン6gと蒸留水40g及びジプロピレングリコールジメチルエーテル26.6gとを均質化する。ついで、実施例9の生成物66gを60℃でゆっくりと添加する、次に、この混合物を60℃で、さらに15分間攪拌する。
【0089】
実施例11
実施例9の生成物とジエチルエタノールアミン、及び平均当量770g/モルのエトキシル化オレイルアミンとの塩化生成物
ジエチルエタノールアミン4.1g及びオレイルアミンエトキシレート12.8gを蒸留水0.6g及びブチルグリコール41gで均質化する。ついで、実施例9の生成物50gを60℃でゆっくりと添加する、次に、この混合物を60℃で、さらに15分間攪拌する。
【0090】
実施例12
12モルのMAA、6モルの抱合型ひまわり脂肪酸、6モルのポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート(平均MW=2,200g/モル)の共重合体
抱合型ひまわり脂肪酸36g(EW=281)、MAA50g(0.5102モル)及びポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート563g(0.256モル)を反応槽に入れ、攪拌しながら137℃に加熱した。TBPB10.7gを2時間かけて滴下した。添加終了後に、この混合物を137℃で、さらに1時間攪拌した。
【0091】
実施例13
実施例12の生成物とジエチルエタノールアミンとの塩化生成物
ジエチルエタノールアミン19gと蒸留水240gとを均質化する。ついで、実施例12の生成物143gを60℃でゆっくりと添加する、次に、この混合物を60℃で、さらに30分間攪拌する。
【0092】
実施例14
13.2モルのMAA、1.5モルのトール油脂肪酸、3モルの抱合型ひまわり脂肪酸、4モルのポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(平均MW=1,100g/モル)、1.5モルのポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート(平均MW=1,600g/モル)及び2モルのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−アリルメチルエーテル(EO/PO=70/30、 Mn=1850g/モル)の共重合体。
トール油脂肪酸8.7g(EW=289)、抱合型ひまわり脂肪酸16.9g(EW=281)、MAA26g(0.265モル)、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル88.4g(0.08モル)、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート48.2g(0.03モル)及びのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−アリルメチルエーテル72.3g(0.039モル)の混合物を反応槽に入れ、攪拌しながら140℃に加熱した。ジ−tert−ブチルパーオキシド4.9gを4時間かけて滴下した。添加終了後に、この混合物を140℃で、さらに0.5時間攪拌した。
【0093】
実施例15
実施例14の生成物とジエチルエタノールアミンとの塩化生成物
ジエチルエタノールアミン8gと蒸留水114gとを均質化する。ついで、実施例14の生成物68gを60℃でゆっくりと添加する、次に、この混合物を60℃で更に30分間攪拌する。
【0094】
実施例16
実施例1の生成物とジメチルアミノプロピルアミンとの反応生成物
N,N−ジメチルアミノプロピルアミン11.3をキシレン120gに溶解し、この溶液を120℃に加熱する。ついで、実施例1の生成物151gを20分かけて加える。次に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.7gを添加し、この混合液を還流下で1時間攪拌する。ついで、この反応の水を約144℃で蒸留除去する。キシレンを蒸留により除去し、同量のメトキシプロピルアセテートで置き換える。
【0095】
実施例17
16モルのMAA、2モルのトール油脂肪酸、3モルの抱合型ひまわり脂肪酸、4モルのポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(平均MW=1,100g/モル)、1.5モルのポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート(平均MW=1,600g/モル)及び2モルのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−アリルメチルエーテル(EO/PO=70/30、 Mn=1,850g/モル)の共重合体。
トール油脂肪酸10.7g(EW=289)、抱合型ひまわり脂肪酸15.6g(EW=281)、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル81.4g、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート44.4g及びのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−アリルメチルエーテル66.6gの混合物を反応槽に入れ、攪拌しながら140℃に加熱した。ジ−tert−ブチルパーオキシド3.7gを4時間かけて、連続的に量り入れると同時に、MAA29gを少しずつ添加した。添加終了後に、この混合物を140℃で、さらに0.5時間攪拌した。
【0096】
実施例18
水で希釈した実施例14の生成物
蒸留水116gを反応槽に入れ、約50℃に加熱した。ついで、実施例14の生成物79gをゆっくりと添加した後、この系を80℃で30分間攪拌した。得られた生成物は少し濁っており、固体物含量(SC)が40%、粘度は低いものである。
【0097】
使用実施例
異なる2種類の色素をベースとした水系色素濃縮物を製造することにより、本発明の化合物を評価した。20℃で1日貯蔵した後、その粘度を目視で評価した。すなわち、粘度が低いほど、良い分散結果が得られる。下記で示す処方類中の数字の単位はグラムである。発明では無いものとして、比較例に特許文献1(EP 1 142 972 A2)の製造実施例1の生成物(無水マレイン酸とメチルポリエチレングリコールモノビニルエーテル及びポリプロピレングリコール−ビス−マレイン酸の共重合体)を使用した。
【0098】
色素ペーストの調整のために、下記表に示した材料をディスパーマット(Dispermat)の温度調節槽に連続して量り入れ、同量の1mm又は2mmのガラスビーズを混合し、ついで、40℃で40mmのテフロンディスクを用いて分散した。酸化チタンTioxide TR−85の場合には、2mmのガラスビーズを用い、18m/s(8,000rpm)の周速度で、分散時間を30分とした。フタロシアニンブルー HeliogenBlau L7101Fの場合には、1mmのガラスビーズを用い、23m/s(10,000rpm)の周縁速度で、分散時間を40分とした。AMP 90(アミノメチルプロパノール)を用いて、色素濃縮物のpHを8.0に合わせた。
【0099】
分散したペーストは紙製篩(メッシュサイズ:80μm)で篩に掛け、ガラス瓶に移した。非常に良好なレオロジー特性を有す流動性色素ペーストが本発明の付随的化合物として得られた。逆に、本発明では無い比較化合物である青色ペーストは非常に高に粘度を示した。
白色減退(white reductions)のデルタEをByk-Gardner社の「TCS」機器を使用し、DIN 5033に従って決定した。
【0100】
【表1】

【0101】
白色及び青色ペーストを用いて、水系2成分(2K)エポキシシステム(Vantico社のAradur 39 BD/Araldite PZ 756/67 BD)及び水系2Kポリウレタンニス(Bayer社のSetalux 6511AQ-47/Bayhydur 3100、Desmodur VP LS 2150/1)に白色減退を作成した。
【0102】
2K EP ニス
Aradur 39 BD 41.00
脱塩水 16.00 A成分
Dowanol PnB 9.00
BYK(登録商標)−347 0.13(A成分ベースの0.2%)
66.13

Araldite PZ 756/67 BD 34.00 B成分
100.13

A成分とB成分との混合比=66:34
全処方ベースの+30%脱塩水
【0103】
2K PU ニス
Setalux 6511 AQ−47 53.6
脱塩水 10
Solvesso 100(SN) 1.3 A成分
BYK(登録商標)−345 0.2
BYK(登録商標)−333 0.2

Bayhydur 3100 11
Desmodur VP LS 2150/1 20.4 B成分
ブチルアセテート 2.6
ブチルグリコールアセテート 1
100.3

A成分とB成分との混合比=65:35
全処方ベースの+20%脱塩水
【0104】
擦り取り試験(rubout test)法により、凝集安定性を評価した。この試験のために、塗料を傾斜度約80°のガラスプレート上に注ぎ、初期乾燥の直前まで放置して蒸散させ、ついで、一定の色になるまでプレート面積の約3分1を指で擦った。フィルムが硬化した後に、擦った部分と擦っていない部分との色強度の差を決定した。それがデルタ(Delta)E値である。デルタE値が小さくなればなるほど、凝集や分離現象に関する色素の安定性が良くなる。
【0105】
上記処方に示した市販品の化学的特性は次のようである: Aradur 39 BDはアミン硬化剤である。Araldite PZ 756/67 BDはエポキシ樹脂エマルジョン、Bayhydur 3100 はHDIベースのポリイソシアネート、Byk-011は重合物質及び親水性固体物ベースのシリコンフリーの消泡剤、Byk(登録商標)-333、Byk(登録商標)-345及びByk(登録商標)-347はポリエーテル修飾のポリシロキサン、Byk(登録商標)-420は修飾した尿素ベースのレオロジー添加剤、Desmodur VP LS 2151/1はIPDIベースのポリイソシアネート、Dowanol PnBはプロピレングリコールブチルエーテル、Proxel GXLは防腐剤、Setalux 6511 AQ-47は水酸基官能性ポリアクリレート樹脂及びSolvesso 100(SN)は溶媒ナフサ。
【0106】
ニスと白色ペースト及びカラーペーストとのブレンド
下記に示したニス/白色ペースト混合物が20%のTiO2を含むように、白色ペーストをニスに加えた。

ニス(ストック(stock)ニス⇒比較例 A) 28
+白色ペースト
カラーペースト
30

スカンデックス(Skandex)シェーカーを用いて5分間混合する。
【0107】
【表2】

【0108】
本発明で無い比較例を使用して製造した白色ブレンドは、それが持つ凝集傾向に起因して最大の浮遊性を示し、かつ不十分な粉状色素粒子に起因して、小片状で低光沢性、高ヘイズ値及び表面欠陥を示す。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の共重合体は固体物の湿潤剤及び分散剤として、塗料、ポリビニルクロライド、グラフィックインク、トナー、インクジェットインクのようなプリントインク、粉体コーティング材料又はUVコーティング材料に用いられる。
更に、本発明の共重合体の前駆体は、塗料やコーティングの分野より広い用途分野、例えば、塗料、印刷インク、色素濃縮物及び/又は重合体組成物のような溶媒系、水系及び/又はソルベントフリー系システムで使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも一つのエチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸誘導体の1〜80モル%、(b)少なくとも一つの炭素数12〜30の不飽和モノカルボン酸誘導体の2〜80モル%、(c)少なくとも一つの5,000g/モル以下の数平均分子量を有するポリアルキレンオキシアリルエーテルの1〜90モル%及び(d)(a)、(b)又は(c)に該当しない更なる不飽和モノマーの0〜30モル%を共重合して得られる共重合体、ならびに該共重合体とアンモニア、アミン、水、アルコール、アミノアルコール及び/又は水酸化アルカリ金属もしくは水酸化アルカリ土類金属との反応生成物。
【請求項2】
(a)少なくとも一つのエチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸誘導体の20〜70モル%、(b)少なくとも一つの炭素数12〜30を有する不飽和モノカルボン酸誘導体の5〜60モル%、(c)少なくとも一つの5,000g/モル以下の数平均分子量を有するポリアルキレンオキシアリルエーテルの5〜60モル%及び(d)(a)、(b)又は(c)に該当しない更なる不飽和のモノマーの0〜15モル%を共重合して得られる共重合体であること、ならびに該共重合体とアンモニア、アミン、水、アルコール、アミノアルコール及び/又は水酸化アルカリ金属もしくは水酸化アルカリ土類金属との反応生成物であることを特徴とする、特許請求の範囲1に記載の共重合体。
【請求項3】
(a)少なくとも一つのエチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸誘導体の40〜65モル%、(b)少なくとも一つの炭素数12〜30の不飽和モノカルボン酸誘導体の10〜40モル%、(c)少なくとも一つの5,000g/モル以下の数平均分子量を有するポリアルキレンオキシアリルエーテルの10〜40モル%及び(d)更なる不飽和のモノマーの0〜5モル%を共重合して得られる共重合体であること、ならびに該共重合体とアンモニア、アミン、水、アルコール、アミノアルコール及び/又は水酸化アルカリ金属もしくは水酸化アルカリ土類金属との反応生成物であることを特徴とする、特許請求の範囲1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
エチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸誘導体が、エチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸の無水物、イミド、モノエステル、ジエステル、モノアミド及びジアミドならびに該不飽和1,2−ジカルボン酸そのものからなるグループから選ばれたものであることを特徴とする特許請求の範囲1〜3のいずれかに記載の共重合体。
【請求項5】
エチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸又は1,2−ジカルボン酸誘導体のベースである1,2−ジカルボン酸がマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸及びシトラコン酸からなるグループから選ばれることを特徴とする特許請求の範囲3又は4記載の共重合体。
【請求項6】
エチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸誘導体がマレイン酸無水物であることを特徴とする特許請求の範囲1〜4のいずれかに記載の共重合体。
【請求項7】
不飽和モノカルボン酸誘導体が炭素数12〜24であることを特徴とする特許請求の範囲1〜6のいずれかに記載の共重合体。
【請求項8】
不飽和モノカルボン酸誘導体が一つの不飽和モノカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸の混合物であり、かつ、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、シス−バクセン酸、リノール酸、α−及びγ−リノレン酸、エラエオステアリン酸(elaeostearic acid)、ジ−ホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ひまわり油脂肪酸及びトール油脂肪酸からなるグループから選ばれることを特徴とする特許請求の範囲7記載の共重合体。
【請求項9】
ポリアルキレンオキシアリルエーテルが下記の一般式(1)であることを特徴とする特許請求の範囲1〜8のいずれかに記載の共重合体。

CH2=CH−CH2−O−[AO]p−R1 (1)

(式中、AOは炭素数2〜10のアルキレンオキシ単位、R1は水素、炭素数1〜6のアルキルラジカル又はCO−R2ラジカル(R2は炭素数1〜6のアルキルラジカル)及びpはポリアルキレンオキシアリルエーテルの数平均分子量Mnが5,000g/モル以下であるように選択する。)
【請求項10】
ポリアルキレンオキシアリルエーテルが下記の一般式(2)であることを特徴とする特許請求の範囲7に記載の共重合体。

CH2=CH−CH2−O−[EO]m[PO]n−R1 (2)

(式中、R1は炭素数1〜6のアルキルラジカル又はCO−R2ラジカル(R2は炭素数1〜6のアルキルラジカル)、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基及びmとnの和はポリアルキレンオキシアリルエーテルの数平均分子量Mnが5,000g/モル以下であるように選択する。)
【請求項11】
更なる不飽和モノマー(d)が、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルシクロへキサン、ビニルエステル、アルキルビニルエーテル及び/又はビニルポリエーテルからなるグループから選ばれることを特徴とする特許請求の範囲1〜10に記載の共重合体。
【請求項12】
(a)少なくとも一つのエチレン性不飽和1,2−ジカルボン酸誘導体の1〜80モル%、(b)少なくとも一つの炭素数12〜30の不飽和モノカルボン酸誘導体の2〜80モル%、(c)少なくとも一つの5,000g/モル以下の数平均分子量を有するポリアルキレンオキシアリルエーテルの1〜90モル%及び(d)(a)、(b)又は(c)に該当しない更なる不飽和モノマーの0〜30モル%を共重合し、得られる生成物を、必要に応じてアンモニア、アミン、水、アルコール、アミノアルコール、水酸化アルカリ金属及び水酸化アルカリ土類金属からなるグループから選ばれる一つ以上の化合物と反応させることを特徴とする特許請求の範囲1〜11のいずれかに記載の共重合体を製造する方法
【請求項13】
(b)、(c)及び必要に応じて(d)に規定した成分を初期充填として導入し、ついで、(a)の成分を、場合によっては触媒と同時に、量り入れることを特徴とする特許請求の範囲12に記載の方法。
【請求項14】
特許請求の範囲1〜11のいずれかの共重合体又は特許請求の範囲12又は13の方法により得られる共重合体の湿潤剤及び/又は分散剤、特に、コーティング材料、ペースト及び重合体組成物における湿潤剤及び/又は分散剤、としての使用。
【請求項15】
該共重合体が粉状粒子又は繊維状粒子の形で固体物を分散するために作用する、特許請求の範囲14に記載の使用。
【請求項16】
該固体物が全体的又は部分的に該共重合体でコーティングされる、特許請求の範囲15に記載の使用。
【請求項17】
特許請求の範囲1〜11のいずれかによる一つ以上の共重合体を含有する組成物。
【請求項18】
該組成物がコーティング材料、ペースト又は成形用組成物である、特許請求の範囲17に記載の組成物・


【公開番号】特開2006−89738(P2006−89738A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−250598(P2005−250598)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】