説明

共重合体及びこれを含有する組成物

【課題】歯牙等の対象表面への蛋白質の付着を阻害する共重合体、これを含有する組成物を提供する。
【解決手段】(A)リン酸基又はリン酸塩基を有するモノマーと、(B)非イオン性親水性モノマーと、(C)疎水性モノマーと、(D)共重合可能な(A)〜(C)以外のモノマーとの共重合体であって、上記モノマー全体に対して(A)モノマー0.1〜79.6質量%、(B)モノマー20〜99.5質量%、(C)モノマー0.4〜79.9質量%、及び(D)0〜20質量%を共重合してなる共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙等への蛋白質付着を阻害する共重合体、及びこれを含有する組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯牙表面、ステンレス、陶器等の表面に有機物汚れによる粘つき、着色、及び表面の細菌汚染は、これらの表面に付着する蛋白質が関与することが報告されている。従って、蛋白質の表面に対する付着を防止できれば、有機物汚れを予防し、細菌の付着をも抑制することができるため、結果として、粘つき抑制、着色汚れの付着防止や、う蝕や歯垢形成、においの発生等を抑制することもできる。
【0003】
従来、固体表面への蛋白質の付着を防止するものとして、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体によりコーティングする技術(例えば特許文献1:特開2004−194874号公報参照)、歯牙表面に対して蛋白質の付着を防止する物質として、特定のスタテリン、ヒスタチン又はリン酸化多糖類もしくはその塩が提案されている(例えば特許文献2:特開2002−29948号公報参照)が報告されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、エタノール等の溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗布して使用するため使用方法が煩雑である。また、天然物を素材とするため、組成物中への配合が困難である等の不具合があり、水溶液として使用が可能でかつ対象表面に付着・滞留して表面改質することで、簡便に蛋白質の付着を阻害する方法が要望されていた。なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−194874号公報
【特許文献2】特開2002−29948号公報
【特許文献3】特開2003−48842号公報
【特許文献4】特開2003−105031号公報
【特許文献5】特開2003−342140号公報
【特許文献6】特開2003−342374号公報
【特許文献7】特開2005−200345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、歯牙等の対象表面への蛋白質の付着を阻害する共重合体、これを含有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、表面に付着する有機物汚れ成分について検討したところ、有機物汚れが付着する際の原因となる初期の付着物は、蛋白質であり、特に高分子糖蛋白質であることを見出した。これらの蛋白質は、静電電荷により付着することが知られており、特にCa塩からなる歯牙表面や、水垢等のCa塩が付着した表面に対して蛋白質が付着しやすいという知見を得た。
【0008】
上記知見から、表面に存在するCa塩等の電荷を中和し、さらに親水性ノニオン側鎖で表面を親水化し立体障害によりブロックすることで、蛋白質の付着を防止できることを見出した。すなわち、本発明は、(A)リン酸基又はリン酸塩基を有するモノマーと、(B)非イオン性親水性モノマーと、(C)共重合可能な疎水性モノマーと、必要に応じて、(D)共重合可能な(A)〜(C)以外のモノマーとの共重合体が、Ca塩からなる歯牙表面や、水垢等のCa塩が付着した表面に付着すること、Ca(イオン)存在下で、共重合体が対象表面に付着することで、これらの表面への蛋白質付着を防止することを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、(A)リン酸基又はリン酸塩基を有するモノマーと、(B)非イオン性親水性モノマーと、(C)疎水性モノマーと、(D)共重合可能な(A)〜(C)以外のモノマーとの共重合体であって、上記モノマー全体に対して(A)モノマー0.1〜79.6質量%、(B)モノマー20〜99.5質量%、(C)モノマー0.4〜79.9質量%、及び(D)0〜20質量%を共重合してなる共重合体、この共重合体からなる蛋白質付着阻害剤、ならびにこの共重合体を含有する口腔用組成物及び蛋白質付着阻害用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の共重合体は、歯牙等の対象表面への蛋白質の付着を阻害する効果が高く、これらを含有する口腔用組成物、蛋白質付着阻害用組成物として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の共重合体は、(A)リン酸基又はリン酸塩基を有するモノマーと、(B)非イオン性親水性モノマーと、(C)疎水性モノマーと、(D)共重合可能な(A)〜(C)以外のモノマーとの共重合体であって、上記モノマー全体に対して(A)モノマー0.1〜79.6質量%、(B)モノマー20〜99.5質量%、(C)モノマー0.4〜79.9質量%、(D)0〜20質量%である共重合体である。なお、本発明において、R1等は互いに独立である。
【0012】
(A)リン酸基又はリン酸塩基を有するモノマーとしては、下記一般式(1)で表される1種又は2種以上のモノマーが挙げられる。
【0013】
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基であって、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。Aは酸素原子又はNH、mは1〜40、好適には1であり、M1及びM2はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミン又は塩基性アミノ酸を示す。)
【0014】
一般式(1)で表されるモノマーとしては、アシッドホスホオキシ(アルキル)(メタ)アクリレート及びその塩、アシッドホスホオキシ(ポリオキシアルキレン)(メタ)アクリレート及びその塩、ならびにハロゲン化アシッドホスホオキシアルキル(メタ)アクリレート及びその塩が挙げられる。これらは、あらかじめ中和して塩として用いてもよく、また重合終了後に中和することで水溶性にしてもよい。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、アルカノールアミンとのハーフ塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。(A)リン酸基又はリン酸塩基を有するモノマーとしては、アシッドホスホオキシ(アルキル)(メタ)アクリレート及びその塩、アシッドホスホオキシ(ポリオキシアルキレン)(メタ)アクリレート及びその塩が好ましい。具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート(商品名:ホスマーM(ユニケミカル(株)製))、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ホスマーPE(ユニケミカル(株)製))、メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエタノールアミンハーフ塩(ホスマーMH(ユニケミカル(株)製))等が挙げられる。この中で、アシッドホスホオキシ(アルキル)(メタ)アクリレート及びその塩、アシッドホスホオキシ(ポリオキシアルキレン)(メタ)アクリレート及びその塩が好ましい。なお、(メタ)アクリルは、アクリル及び/又はメタクリルを示す。
【0015】
(A)モノマーの(A)〜(D)モノマー全体に対する割合は、0.1〜79.6質量%であり、好ましくは0.2〜60質量%、より好ましくは0.3〜50質量%、さらに好ましくは0.3〜18質量%、特に好ましくは1〜18質量%、5〜10質量%である。0.1質量%未満では、対象表面への強固な付着性が発現されず、表面処理効果が低減する。また、79.6質量%を超えると、共重合体の水溶性が高すぎるため、対象表面への付着性が低下し、表面処理効果が低減するので好ましくない。なお、本発明中において、各モノマーは(A)〜(D)モノマー全体合計の配合量(100質量%)に対して、各モノマーの配合量が特定割合になるように配合したものである。従って、本発明の共重合体における各モノマーからなる構成単位の含有量は、共重合する際の各モノマーの配合量と同様である。
【0016】
(B)非イオン性親水性モノマーとしては、共重合可能な非イオン性親水性モノマーが挙げられ、具体的に下記一般式(2)で表されるモノマー、糖類縁基含有モノマー等が挙げられ、モノマーは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0017】
【化2】

(式中、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であって、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい。Aは酸素原子又はNH、R5は水素原子の一部が水酸基で置換された炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、R6は炭素数2〜3のアルキレン基であり、炭素数の異なる2種以上が含まれていてもよく、nは1〜40、R7は水素原子又は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、R8は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【0018】
3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20、好ましくは1〜10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であって、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい。Aは酸素原子又はNH、R5は水素原子の一部が水酸基で置換された炭素数1〜20、好ましくは1〜10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、R6は炭素数2〜3のアルキレン基、nは1〜40、好ましくは1〜30、R7は水素原子又は炭素数1〜20、好ましくは1〜10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、R8は炭素数1〜20、好ましくは1〜10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。
【0019】
一般式(2)で表されるモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド(構造式(3))、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(構造式(4))、ポリアルキレンオキシド基含有モノマー(構造式(5))、アルキルビニルエーテル(構造式(6)が挙げられる。この中でも、ポリアルキレンオキシド基含有モノマーが適しており、具体的には、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
このうち好ましくは、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
糖類縁基含有モノマーとしては、酵素により糖を共重合性モノマーに導入したもの等が挙げられ、例えば、特開2001−247590号公報、特開2002−65290号公報記載の酵素反応により(メタ)アクリル酸エステルと糖とを反応させてエステル交換によって得られる(メタ)アクリル酸糖エステル、特開2003−212890号公報記載の酵素的糖鎖伸長反応によって得られる糖質マクロマー等も挙げられる。
【0022】
糖類縁基含有モノマーとしては下記一般式(7)で表されるものが挙げられる。
CH2=C(R1)−(Z)p−R9−(Z’)p'−R10 (7)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、Zは−O−C(=O)−、−C(=O)−NH−又は−C(=O)−O−、Z’は−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−又は−O−C(=O)−を示し、p及びp’はそれぞれ独立に0又は1を示し、R9は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜10のアルキレン基であって、−O−、−NH−、−C(=O)−又は−C(=O)−O−で分断されていてもよい。R10は単糖残基又は多糖残基を示す。)
一般式(7)で表される糖類縁基含有モノマーは糖をエステル結合又はエーテル結合を介して有する。
【0023】
(B)モノマーの(A)〜(D)モノマー全体に対する割合は、20〜99.5質量%であり、好ましくは25〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%、さらに好ましくは40〜80質量%、特に好ましくは60〜80質量%である。20質量%未満では、対象表面の親水化が不十分のため、蛋白質付着阻害効果が低減する。また、99.5質量%を超えると、共重合体の水溶性が高すぎるため、対象表面への付着性が低下し、表面処理効果が低減する。
【0024】
(C)疎水性モノマーとしては、共重合可能な疎水性モノマーが挙げられ、下記一般式(8)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
CH2=C(R1)COOR11 (8)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R11は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示す。)
【0025】
具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。この中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルがさらに好ましい。
【0026】
(C)モノマーの(A)〜(D)モノマー全体に対する割合は、0.4〜79.9質量%であり、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは2〜60質量%、さらに好ましくは2〜40質量%、特に好ましくは2〜35質量%である。(C)モノマーの割合が79.9質量%を超えると得られた共重合体の溶媒置換後の水溶性を確保することが困難となる。
【0027】
本発明の共重合体には、(D)上記(A)〜(C)以外のモノマーであって、上記(A)〜(C)モノマーと共重合可能なモノマーを含有してもよい。(D)成分は任意成分である。(D)モノマーとしては、上記(A)〜(C)モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限されず、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(D)モノマーとしては、一般的には各種の水溶性モノマーが挙げられ、(D1)重合性基とアニオン基又はその塩を含む官能基とを有するアニオン性モノマー、(D2)重合性基とカチオン基又はカチオン化可能な官能基とを有するモノマーが挙げられる。
【0028】
(D1)重合性基とカルボン酸、スルホン酸等のアニオン基又はその塩を含む官能基とを有するアニオン性モノマーとしては、具体的に、(メタ)アクリル酸及びその塩、無水マレイン酸、無水マレイン酸の加水分解物、無水マレイン酸の加アルコール分解物、無水マレイン酸のハーフエステル及びそれらの塩、クロトン酸及びその塩、ビニルスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、メタリルスルホン酸及びその塩、ならびにスチレンスルホン酸及びその塩、下記一般式(11)
CH2=C(R1)-A-R20 (11)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、Aは酸素原子又はNH、R20はアニオン基又はその塩を含む官能基を示す。)
で表されるモノマー及びその塩が挙げられ、具体的にはアクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩が挙げられる。また、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。(D1)としては、(メタ)アクリル酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸が好ましい。
【0029】
(D2)重合性基とカチオン基又はカチオン化可能な官能基とを有するモノマーとしては、下記一般式(9)又は(10)で表されるモノマーが挙げられる。
CH2=C(R1)CO−A−R12−N(R13)(R14) (9)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、Aは酸素原子又はNHを示し、R12は炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示し、水酸基を1つ以上含んでもよい。R13及びR14はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示す。)
CH2=C(R1)CO−A−R15−N+(R16)(R17)(R18)・X- (10)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、Aは酸素原子又はNHを示し、R15は炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示し、水酸基を1つ以上含んでもよい。R16、R17及びR18はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、Xは、ハロゲン、OH、1/2HSO4、1/3PO4、HCO2又はCH3CO2を示す。)
【0030】
一般式(9)で表されるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。一般式(9)で表されるモノマーは、重合前又は重合後に他の化合物と反応させてもよい。例えば、臭化ブロム等のハロゲン化アルキルによるカチオン化、モノクロロ酢酸等のハロゲン化カルボン酸によるカルボキシベタイン化、1,3−プロパンサルトン等のアルキルサルトンによるスルホベタイン化等が挙げられる。
【0031】
一般式(10)で示すモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエチル硫酸、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルリン酸、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエチルリン酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルメチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエチル硫酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルメチルリン酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエチルリン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドメチルクロライド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエチルクロライド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエチル硫酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドメチルリン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエチルリン酸等が挙げられる。(D2)重合性基とカチオン基又はカチオン化可能な官能基とを有するモノマーとしては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが好ましい。
【0032】
(D)モノマーの(A)〜(D)モノマー全体に対する割合は0〜20質量%であり、好ましくは0〜15質量%である。20質量%を超えると、共重合体の特徴である対象表面への付着性や親水化による蛋白質付着阻害効果が十分に発揮できない。
【0033】
本発明の共重合体において、上記(A)〜(D)の質量比は、(A):(B):(C):(D)は1〜18:40〜80:2〜40:0〜20が好ましく、より好ましくは5〜10:60〜80:2〜35:0〜15である。
【0034】
本発明の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよく、通常の重合方法、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等により得ることができる。例えば、溶液重合で用いられる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノールのような炭素数1〜4のアルコール、アセトン又はテトラヒドロフランを使用することができる。この中でも、使用性、安全性、操作性の点から、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンが好ましく、特に、エタノール、イソプロパノールが好ましい。また、2種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。溶媒中のモノマー合計濃度は特に制限されないが、通常溶媒中10〜50質量%で重合するのがよい。
【0035】
重合に際してはラジカル開始剤を用いる。ラジカル開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド等のパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。重合開始剤濃度は、通常、使用するモノマー合計量に対して0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。さらに、分子量を制御するためにアルキルメルカプタンのような連鎖移動剤、ルイス酸化合物等の重合促進剤、リン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等のpH調整剤を使用してもよい。開始剤の使用濃度は、通常、使用するモノマーの総質量に対して0.1〜5質量%で使用するのが好ましい。重合温度は、用いられる溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、通常、室温〜150℃がよい。
【0036】
本発明の共重合体は、重量平均分子量が、通常1,000〜1,000,000であり、好ましくは、5,000〜500,000、より好ましくは、10,000〜400,000である。この範囲で、歯牙等の対象表面への蛋白質の付着阻害効果が特に発揮される。重量平均分子量の測定は、中和前の重合体乾燥物を試料とし、一般的なGPCカラムを用いた液体クロマトグラフィーを用いて、テトラヒドロフラン溶媒で、ポリスチレン標準で換算して分子量を算出する。
【0037】
本発明の共重合体を用いて、Ca塩からなる歯牙表面や、水垢等のCa塩が付着した表面を表面処理することによって、唾液中や生活排水に存在する蛋白質による歯牙表面や固体表面への付着を阻害することが可能であり、蛋白質付着阻害剤として好適である。このような蛋白質とは、唾液中に含まれる蛋白質、特に糖蛋白質をいい、例えば分子量が30kDa以上の高分子量糖蛋白質が挙げられる。また、本発明の共重合体を含有する組成物で、例えば、この共重合体を含有する洗浄剤で対象面を洗浄することによっても、蛋白質付着阻害が可能である。このことから、本発明の共重合体を含有する口腔用組成物、蛋白質付着阻害用組成物とすることもできる。
【0038】
本発明の共重合体を含有する口腔用組成物は、実施例に示すようにヒドロキシアパタイト平板への蛋白質付着を阻害することから、通常の歯磨剤や洗口剤と同様に使用することで、共重合体が歯牙表面に付着・滞留するため、歯牙表面に対する唾液蛋白質の付着が阻害され、その結果として、粘つき抑制、着色汚れの付着防止や、う蝕や歯垢形成、においの発生等を抑制することもできる。
【0039】
本発明の共重合体の口腔用組成物中の含有量は、組成物の粘性の点から0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0040】
本発明の口腔用組成物には、通常の口腔用組成物に用いられる成分、例えば発泡剤、発泡助剤、界面活性剤、研磨剤、増量剤、甘味剤、保存料、う蝕予防成分等の薬効成分、pH調整剤、粘着剤、粘稠剤、顔料、色素、香料、水、エタノール等を適宜配合することができる。口腔用組成物としては、粘つき抑制、着色汚れの付着防止や、う蝕や歯垢形成、においの発生等を抑制することができる歯磨、液状歯磨、液体歯磨、潤製歯磨、洗口剤、マウススプレー、歯牙コーティング剤、義歯コーティング剤、義歯洗浄剤等とすることができる。
【0041】
う蝕予防成分としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ等が挙げられ、さらにフッ化カルシウム、モノフルオロリン酸カルシウム等の水難溶性フッ化物を分散配合してもよい。また、薬効成分としては、トリクロサン、クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム等の殺菌剤、ポリフェノール類(グルコシルトランスフェラーゼ活性阻害作用)等の酵素防止剤、インドメタシン、グリチルリチン酸ジカリウム等の抗炎症剤等が挙げられる。抗炎症剤と併用すれば歯周疾患の予防改善のための口腔用組成物とすることもできる。
【0042】
本発明の共重合体を含有する蛋白質付着阻害用組成物としては、台所、浴室、洗面所又はトイレ用の組成物が挙げられる。これらの組成物は洗浄剤でもよく、表面処理剤でもよい。本発明の蛋白質付着阻害用組成物には、通常の洗浄剤あるいはコーティング剤組成物に用いられる成分、例えば、水、エタノール等の溶剤、界面活性剤、研磨剤、pH調整剤、粘度調整剤、色素、香料、保存料、抗菌剤、殺菌剤等を適宜配合することができる。
【0043】
本発明の共重合体を含有する口腔用組成物又は蛋白質付着阻害用組成物は、上記成分及び水(残部)を混合して常法に基づいて得ることができる。口腔用組成物又は蛋白質付着阻害用組成物の使用方法としては、本発明の共重合体を含有する組成物を用いて対象表面を洗浄・洗口、又は共重合体を対象表面に付着処理させることで、対象表面を親水化させ、唾液等の蛋白質類の付着を阻害したり、本発明の共重合体を含有する組成物を対象表面に塗布・乾燥させることで、対象表面に親水性の皮膜を形成させ、表面を親水化させて唾液等の蛋白質類の付着を阻害することができる。
【実施例】
【0044】
以下、合成例、比較合成例及び処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示す。
【0045】
[合成例1]
1.重合
冷却還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、エタノール117gを仕込み、撹拌しながら窒素ガスを導入して、78℃に加熱し、エタノール83g、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート(ホスマーM:ユニケミカル(株)製)10g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(平均n数9、商品名:NKエステルM90G 新中村化学(株)製)85g及びメタクリル酸メチル(MMA 純正化学(株)製)5gの混合溶液と、開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8g及びエタノール33gの混合溶液とを連続的に3時間かけて加え、さらに3時間かけて加熱し続けて、共重合体のエタノール溶液を得た。
2.中和・精製
得られた共重合体のエタノール溶液をイオン交換水にて5倍希釈し、25℃にてpH計にて測定しながら、pH7になるまで水酸化ナトリウム水溶液を添加した。中和した溶液は、残留物を72時間流水中で透析を行い、エバポレーターにて濃縮後、凍結乾燥して粉体として共重合体を回収した。
3.溶液調製
精製した共重合体を、KClバッファー(pH7)(塩化カリウム50mmol/L、KH2PO4;1mmol/L、塩化カルシウム1mmol/L、塩化マグネシウム0.1mmol/L)に溶解して共重合体1%KClバッファー溶液とした。
【0046】
[合成例2〜6、比較合成例1〜2]
表1に示すモノマーを用いる以外は、合成例1の重合方法・中和・精製方法及び溶液調製方法で合成例2〜6、比較合成例1〜2の共重合体を得た。得られた共重合体について、重量平均分子量を測定し、下記方法で評価を行った。結果を表中に併記する。
【0047】
[評価方法]
1.付着性・滞留性評価
ハイドロキシアパタイト粉末(太平化学(株)製)100mgを、上記共重合体1%KClバッファー溶液5mL(ブランク)と混合し、2時間室温にて回転処理した後に遠心分離し、沈殿物と上澄み液に分けた。上澄み液を0.45ミクロンクロマトディスクにてろ過したろ液試料を、ハイドロキシアパタイト粉末付着後の共重合体溶液とした。共重合体1%KClバッファー溶液(ブランク)と、ハイドロキシアパタイト粉末付着後の共重合体溶液中の有機分を、全有機体炭素計(TOC;(株)島津製作所製)にて測定し、付着前後における溶液中の有機分濃度の差から、付着量を算出した。
上記沈殿物に、0.9%塩化ナトリウム溶液l5mLを加え、2時間室温にて回転処理した後に遠心分離し、上澄み液を0.45ミクロンクロマトディスクにてろ過したろ液試料を洗浄後の処理液とした。この処理液中の有機分をTOCにより測定し、脱着量を算出し、上記で得られた付着量から脱着量を引いた値を滞留量とした。ハイドロキシアパタイト粉末に対する共重合体の付着性・滞留性を、下記評価基準に基づいて評価した。
【0048】
<付着性評価基準>
付着量として
0.2mg/m2以上 ○
0〜0.2mg/m2未満 △
ゼロ未満 ×
(ゼロ未満は、ハイドロキシアパタイト粉末付着後の共重合体溶液のTOC測定値が、ブランクのTOC測定値よりも増大したことを意味する。)
【0049】
<滞留性評価基準>
滞留量として
0.1mg/m2以上 ○
0以上0.1mg/m2未満 △
ゼロ未満 ×
(ゼロ未満は、脱着量のTOC測定値が付着量より多いことを意味する。)
【0050】
2.蛋白質付着阻害評価
鏡面研磨した旭光学(株)製ハイドロキシアパタイト(HAP)平板(2cm×6cm);以下、HAP板)を用いた。HAP板上に、共重合体1%KClバッファー溶液100μLを滴下し、2時間放置した。その後、HAP板をKClバッファー100mL中にて10回振り洗い、100mLイオン交換水にてさらに10回振り洗いして洗浄した。窒素気流にてHAP板を乾燥させたものを試料として、蛋白質付着阻害評価に用いた。
モデル蛋白質溶液10mL中に試料を浸漬させ、2時間室温にて処理した。引き上げた試料を、KClバッファー100mL中にて10回振り洗い、100mLイオン交換水にてさらに10回振り洗いして洗浄した。窒素気流にて乾燥させ、歯垢染め出し液(RED−COTE、BUTLER社製)を用いて蛋白質を染色し、色差計にてa値を測定した。共重合体1%溶液100μLで処理しない以外は同様の処理を行ったHAP板での色差の値をa0(ブランク)とし、測定値asとの差δ=(a0−as)を算出し、この値から下記評価基準に基づいて蛋白質付着阻害を評価した。
〈評価基準〉
δが1以上 ○
δがゼロ以上1未満 △
δがゼロ未満(ブランクよりも染まる) ×
【0051】
モデル蛋白質溶液の組成 %
アルブミン(ウシ血清由来、和光純薬工業(株)製) 1
ムチン(豚胃、関東化学(株)製) 1
リゾチーム(卵白由来、和光純薬工業(株)製) 1
ラクトフェリン(和光純薬工業(株)製) 1
KClバッファー溶液(pH7) バランス
合計 100
【0052】
3.着色汚れ防止評価
荒面研磨した旭光学(株)製ハイドロキシアパタイト(HAP)平板(2cm×6cm)を用いた。HAP板上に、共重合体1%KClバッファー溶液100μLを滴下し、2時間放置した。その後、HAP板をKClバッファー100mL中にて10回振り洗い、100mLイオン交換水にてさらに10回振り洗いして洗浄した。窒素気流にてHAP板を乾燥させたものを試料として、着色汚れ防止評価に用いた。
モデル紅茶溶液10mL中に試料を浸漬させ、4時間室温にて処理した。引き上げた試料を、KClバッファー100mL中にて10回振り洗い、100mLイオン交換水にてさらに10回振り洗いして洗浄した。窒素気流にて乾燥させ、色差計にてb値を測定した。共重合体1%溶液100μLで処理しない以外は同様の処理を行ったHAP板での色差の値をb0(ブランク)としたとき、測定値bsとの差δ=(b0−bs)を算出し、この値から下記評価基準に基づいて評価した。
〈評価基準〉
δが0.5以上 ○
δがゼロ以上0.5未満 △
δがゼロ未満(ブランクよりも染まる) ×
【0053】
モデル紅茶溶液の組成 %
アルブミン(ウシ血清) 1
ムチン 1
リゾチーム 1
ラクトフェリン 1
塩化第1鉄の4水和物(純正化学社製試薬一級) 0.05
インスタントコーヒー(Nescafe、ネスレジャパン社製) 0.37
インスタント紅茶(Instant Tea、Kroger社製) 0.37
KClバッファー溶液(pH7) バランス
合計 100.0
【0054】
4.水垢タイルへの付着性・蛋白質付着阻害評価
白色タイル表面に濃縮水道水(濃縮率20倍)を1mL塗布して乾燥させたものを使用した。このタイル上に10cm×10cmのシリコンゴム枠を載せ、枠内に共重合体1%KClバッファー溶液5mLを流し込み、2時間室温にて処理した後、枠内の溶液を回収し付着後の共重合体1%溶液とした。共重合体1%KClバッファー溶液と付着後の共重合体1%溶液中における有機分を、全有機体炭素計(TOC;(株)島津製作所製)にて測定し、付着前後における溶液中の有機分濃度の差を算出した(付着前−付着後)。共重合体を含まないKClバッファー溶液で処理したタイルでの濃度の差をC0とし、共重合体1%KClバッファー溶液で処理したタイルでの濃度の差Csから、以下評価基準に基づいて、水垢タイルへの付着性を評価した。
〈評価基準〉
s>C0
s≦C0 ×
【0055】
枠内の溶液を回収し、窒素気流にて乾燥させた後の共重合体1%KClバッファー溶液で処理したタイル枠内に、モデル蛋白質溶液(蛋白質付着阻害評価で使用したもの)5mLを流し込み、2時間室温にて処理した。処理後のタイルを窒素気流下にて乾燥させ、ニンヒドリン試薬にて蛋白質を染色し、蛋白質量を定量して、蛋白質付着阻害を評価した。ニンヒドリン法は、タイル上に直径2.5cmの円形状の枠を3点以上設置し、円形枠内にニンヒドリン試薬を2mL加え、室温で終夜染色し、10mLの水道水にてすすいだ後、窒素気流下にて乾燥し、蛋白質によって紫色に呈色した表面をブランクと比較し、目視にて判定した。蛋白質付着阻害を下記評価基準に基づいて評価した。なお、共重合体1%KClバッファー溶液での処理を行わないタイルを、上記と同様にモデル蛋白質溶液で処理し、ニンヒドリン試薬で染色したものをブランクとした。
〈評価基準〉
共重合体処理したタイルの着色がブランクより明らかに弱い ○
共重合体処理したタイルの着色がブランクと同等 △
共重合体処理したタイルの着色がブランクより強い ×
【0056】
5.水垢ステンレス板への付着性・蛋白質付着阻害評価
ステンレス表面に濃縮水道水(濃縮率20倍)を1mL塗布して乾燥させたものを試料とした。このステンレス上に10cm×10cmのシリコンゴム枠を載せ、枠内に共重合体1%KClバッファー溶液5mLを流し込み、2時間室温にて処理した後、枠内の溶液を回収し付着後の共重合体1%溶液とした。共重合体1%KClバッファー溶液と付着後の共重合体1%溶液中における有機分を、全有機体炭素計(TOC;(株)島津製作所製)にて測定し、付着処理前後の有機分濃度の差を算出した。共重合体を含まないKClバッファー溶液で処理したステンレスでの濃度の差をC0とし、共重合体1%KClバッファー溶液で処理したステンレスでの濃度の差Csから、以下評価基準に基づいて、水垢ステンレス板への付着性を評価した。
〈評価基準〉
s>C0
s≦C0 ×
【0057】
枠内の溶液を回収し、窒素気流にて乾燥させた後の共重合体1%KClバッファー溶液で処理したステンレス枠内に、モデル蛋白質溶液(蛋白質付着阻害評価で使用したもの)5mLを流し込み、2時間室温にて処理した。処理後のタイルを窒素気流にて乾燥させ、ニンヒドリン試薬にて蛋白質を染色し、蛋白質量を定量して、蛋白質付着阻害を評価した。ニンヒドリン法は、ステンレス上に直径2.5cmの円形状の枠を3点以上設置し、円形枠内にニンヒドリン試薬を2mL加え、室温で終夜染色し、10mLの水道水にてすすいだ後、窒素気流下にて乾燥し、蛋白質によって紫色に呈色した表面をブランクと比較し、目視にて判定した。蛋白質付着阻害を下記評価基準に基づいて評価した。なお、共重合体1%KClバッファー溶液での処理を行わないステンレス板を、上記と同様にモデル蛋白質溶液で処理し、ニンヒドリン試薬で染色したものをブランクとした。
〈評価基準〉
共重合体処理したステンレスの着色がブランクより明らかに弱い ○
共重合体処理したステンレスの着色がブランクと同等 △
共重合体処理したステンレスの着色がブランクより強い ×
【0058】
【表1】

【0059】
表1中の略号を下記に示す。
【表2】

【0060】
下記処方の組成物を常法に基づいて調製した。
【0061】
[処方例1]
歯磨剤
組成 %
合成例1共重合体 1
無水ケイ酸(研磨剤) 10
カルボキシメチルセルロースナトリウム 2
(ダイセル化学工業(株)製 CMC1250)
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ソルビット 20
キシリット 10
フッ化ナトリウム 0.22
プロピレングリコール 3
水 残部
合計 100.0
【0062】
[処方例2]
洗口剤
組成 %
合成例1共重合体 1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.5
ピロリン酸カリウム 1
エタノール 0.5
サッカリンナトリウム 10
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.05
香料 0.3
ラウリル硫酸ナトリウム 0.3
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100EO) 0.3
色素 0.01
安息香酸ナトリウム 0.05
酸化防止剤 0.05
精製水 残部
合計 100.0
【0063】
[処方例3]
義歯洗浄剤
組成 %
合成例1共重合体 2
モノ過硫酸水素カリウム 19
過硼酸ナトリウム 35
テトラアセチルエチレンジアミン 2
トリポリリン酸ナトリウム 10
ラウリル硫酸ナトリウム 2
スルファミン 5
アルカラーゼ 1
(アルカラーゼ(登録商標))ノボザイムズジャパン(株)製
乳糖 2
硫酸ナトリウム 残部
合計 100.0
【0064】
[処方例4]
住居用洗浄剤
組成 %
合成例1共重合体 1
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(20E.O.) 0.5
ポリオキシエチレン(p=5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 0.5
エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物 1
香料 0.3
色素 0.05
エタノール 5
水 残部
合計 100.0
【0065】
[処方例5]
コーティング剤
組成 %
合成例1共重合体 10
エタノール 10
ラウリル硫酸ナトリウム 0.6
香料 0.3
色素 0.01
水 残部
合計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リン酸基又はリン酸塩基を有するモノマーと、(B)非イオン性親水性モノマーと、(C)疎水性モノマーと、(D)共重合可能な(A)〜(C)以外のモノマーとの共重合体であって、上記モノマー全体に対して(A)モノマー0.1〜79.6質量%、(B)モノマー20〜99.5質量%、(C)モノマー0.4〜79.9質量%、及び(D)0〜20質量%を共重合してなる共重合体。
【請求項2】
(A)モノマーが下記一般式(1)で表される1種又は2種以上のモノマーであり、
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基であって、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。Aは酸素原子又はNH、mは1〜40、M1及びM2はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミン又は塩基性アミノ酸を示す。)
(B)モノマーが下記一般式(2)又は(7)で表される1種又は2種以上のモノマーであり、
【化2】

(式中、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であって、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい。Aは酸素原子又はNH、R5は水素原子の一部が水酸基で置換された炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、R6は炭素数2〜3のアルキレン基であり、炭素数の異なる2種以上が含まれていてもよく、nは1〜40、R7は水素原子又は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、R8は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
CH2=C(R1)−(Z)p−R9−(Z’)p'−R10 (7)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、Zは−O−C(=O)−、−C(=O)−NH−又は−C(=O)−O−、Z’は−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−又は−O−C(=O)−を示し、p及びp’はそれぞれ独立に0又は1を示し、R9は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜10のアルキレン基であって、−O−、−NH−、−C(=O)−又は−C(=O)−O−で分断されていてもよい。R10は単糖残基又は多糖残基を示す。)
(C)モノマーが下記一般式(8)で表される1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、
CH2=C(R1)COOR11 (8)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R11は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示す。)
(D)モノマーが下記(D1)及び(D2)からなる群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーである請求項1記載の共重合体。
(D1)重合性基とアニオン基又はその塩を含む官能基とを有するアニオン性モノマー
(D2)下記一般式(9)又は(10)で表される重合性基とカチオン基又はカチオン化可能な官能基とを有するモノマー
CH2=C(R1)CO−A−R12−N(R13)(R14) (9)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、Aは酸素原子又はNHを示し、R12は炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示し、水酸基を1つ以上含んでもよい。R13及びR14はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示す。)
CH2=C(R1)CO−A−R15−N+(R16)(R17)(R18)・X- (10)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、Aは酸素原子又はNHを示し、R15は炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示し、水酸基を1つ以上含んでもよい。R16、R17及びR18はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、Xは、ハロゲン、OH、1/2HSO4、1/3PO4、HCO2又はCH3CO2を示す。)
【請求項3】
請求項1又は2記載の共重合体からなる蛋白質付着阻害剤。
【請求項4】
請求項1又は2記載の共重合体を含有する口腔用組成物。
【請求項5】
請求項1又は2記載の共重合体を含有する蛋白質付着阻害用組成物。

【公開番号】特開2007−284609(P2007−284609A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115458(P2006−115458)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】