説明

内型枠の型枠ピース

【課題】型枠ピースのボルト孔を着脱可能とし、ボルト孔が変形した状態での型枠ピースの使用を回避できる型枠ピースを提供する。
【解決手段】地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピース40Aにおいて、互いに隣接して設置される型枠ピース同士を繋ぐための継手面47を備えた継手板42と、継手板を貫通する貫通孔43と、貫通孔に着脱可能に嵌め合わされた筒状体であって、貫通孔に嵌め合わされた筒状体の筒内が、隣接して設置される型枠ピースの継手面47同士を密接状態に結合する継手ボルトを通すためのボルト孔64となるボルト孔形成部品50とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネルの覆工部を形成するための内型枠の型枠ピースに関し、型枠ピースのボルト孔が変形した状態で使用されることを回避可能とした型枠ピースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド掘進機で地山を掘削して掘進するとともに、シールド掘進機の後部(坑口側)において掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面とトンネル空洞部の内周面に沿って設置される内型枠との間に生コンクリートを流し込んで覆工部としての覆工コンクリートを構築するECL工法と呼ばれるトンネル施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
内型枠は複数個の型枠ピースにより形成される。図6に示すように、型枠ピース40は、トンネル空洞部21の内周面33(図7参照)の周方向において隣接するように設置される型枠ピース40同士を繋ぐためのピース継手面47aが形成されたピース継手板45を備えるとともに、トンネル空洞部21の内周面33のトンネル掘進方向において隣接するように設置される型枠ピース40;40同士を繋ぐためのリング継手面47bが形成されたリング継手板46を備える。
継手板45;46には、互いに隣接する型枠ピース40の継手面同士がボルト及びナットによる締結によって密接状態に接合されるように、継手板45;46を貫通してボルトを通すためのボルト孔43が形成される。
従って、トンネル空洞部21の内周面33の周方向において互いに隣接して設置される型枠ピース40のピース継手面47a同士を接触させた状態でボルト孔43に図外のボルトを挿入し、ボルトの先端から図外のナットを締結していくことで、ピース継手面47a同士が密接状態に接合される。また、トンネル空洞部21の内周面33のトンネル掘進方向において互いに隣接して設置される型枠ピース40のリング継手面47b同士を接触させた状態でボルト孔43にボルトを挿入し、ボルトの先端からナットを締結していくことで、リング継手面47b同士が密接状態に接合される。
図7に示すように、トンネル空洞部21の内周面33を1周する分のいわゆる1リング分の内型枠30を形成するには、複数個の型枠ピース40を、トンネル空洞部21の内周面33との間に覆工部Dの厚さ分の間隔dを隔ててトンネル空洞部21の内周面33に沿って内周面33を1周するように設置していく。この場合、ピース継手面47a同士が密接状態に接合されるように、図外の内型枠組立装置によって1リング分の内型枠を組み立てていく。そして、掘削が進む毎に、トンネル掘進方向に向けてさらに1リング分の内型枠30を組み立てていく。この場合、型枠ピース40が、トンネル空洞部21の内周面33の周方向においてピース継手面47a同士が密着状態に接合されるように、かつ、トンネル空洞部21の内周面33のトンネル掘進方向において前回組み立てた1リング分の内型枠30のリング継手面47bと今回組み立てる内型枠30のリング継手面47bとが密着状態に接合されるように、内型枠組立装置によって1リング分の内型枠30を組み立てていく。
型枠ピース40は、所定数のリング分(例えば16リング分)の内型枠30を形成できる数分だけ用いられ、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、坑口側に組み立てられた内型枠30の掘進方向後部に位置する1リング分の型枠ピース40を図外の内型枠脱型装置を用いて解体して取り外した後に、シールド掘進機を進行させ、取り外した1リング分の型枠ピース40を内型枠30の掘進方向先頭位置に盛り替えて使う。即ち、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、掘進する毎に、型枠ピース40を後方(坑口側)から前方(切羽側)に盛り替えて繰り返して使用する。
尚、図7に示すように、1リング分の内型枠30を形成する複数個の型枠ピース40のうちの1つの型枠ピース40は、脱型用の型枠ピース39に形成される。脱型用の型枠ピース39は、トンネル空洞部21の内周面33に近い方に位置して型枠面39aとなる当該型枠面側のトンネル空洞部21の周方向の幅寸法bが、型枠面39aの反対側の面39b(トンネル空洞部21の中心2Cに近い方に位置した面)のトンネル空洞部21の周方向の幅寸法aよりも小さい。そして、1リング分の内型枠30を組み立てるときは、脱型用の型枠ピース39を最後に取り付け、1リング分の内型枠30を解体する場合は、脱型用の型枠ピース39から取り外す。
【特許文献1】特開2005−188099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、型枠ピースを盛り替えて繰り返して使用する場合、型枠ピースの取り付け及び取り外しが繰り返され、型枠ピースの継手板に形成されたボルト孔に対するボルトの着脱操作が頻繁に繰り返されることになるので、ボルト孔が変形しやすくなる。ボルト孔が変形すると、型枠ピース同士の位置ずれが大きくなり、内型枠の変形や型枠ピース同士の継手面の密接性能低下を招くという問題点があった。また、ボルト孔が変形すると、継手面の密接性が低下し、継手面同士が滑りやすくなり、ボルトに過剰な力が加わりボルト自体が破断するという問題点があった。
そこで、本発明は、型枠ピースのボルト孔を着脱可能とし、ボルト孔が変形した状態での型枠ピースの使用を回避できる型枠ピースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る内型枠の型枠ピースは、地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピースにおいて、互いに隣接して設置される型枠ピース同士を繋ぐための継手面を備えた継手板と、継手板を貫通する貫通孔と、貫通孔に着脱可能に嵌め合わされた筒状体であって、貫通孔に嵌め合わされた筒状体の筒内が、隣接して設置される型枠ピースの継手面同士を密接状態に結合する継手ボルトを通すためのボルト孔となるボルト孔形成部品とを備えたことを特徴とする。
ボルト孔形成部品は、貫通孔に嵌め合わされてボルト孔を形成する筒部と、筒部の筒の一端縁より筒の外側に向けて筒の中心軸と直交する方向に延長するように形成された鍔部とを備え、鍔部の裏面と継手面の裏面とが接触した状態に筒部が貫通孔内に嵌め込まれて筒部の他端が継手面よりも突出しないように貫通孔に取付けられたことも特徴とする。
ボルト孔形成部品は、貫通孔に嵌め合わされてボルト孔を形成する筒部と、筒部の筒の一端縁より筒の外側に向けて筒の中心軸と直交する方向に延長するように形成された鍔部とを備え、貫通孔は、主孔と、主孔と同軸で主孔よりも径の大きい径に形成されて継手面に開口する鍔部収納孔とを備え、鍔部の裏面と鍔部収納孔の孔底面とが接触して鍔部が継手面よりも突出しない状態に筒部が貫通孔内に嵌め込まれて筒部の他端部が継手面の裏面より突出し、この突出した筒部の他端部に形成された止輪収納溝に止輪が取付けられたことによって、ボルト孔形成部品が貫通孔よりも脱落しないように貫通孔に取付けられたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の型枠ピースによれば、継手板を貫通する貫通孔に嵌め合わされた筒状体の筒内が、隣接して設置される型枠ピースの継手面同士を密接状態に結合する継手ボルトを通すためのボルト孔となるボルト孔形成部品を設けたので、ボルト孔形成部品により形成されたボルト孔が変形する前にボルト孔形成部品を交換することが可能となり、ボルト孔が変形した状態での型枠ピースの使用を回避できるようになる。
ボルト孔形成部品は、鍔部を備えたので、継手面の裏面に開口する貫通孔の孔縁部の磨耗を防止できるので、ボルト孔形成部品が貫通孔内に傾いて取付けられるようなことを防止でき、貫通孔に対するボルト孔形成部品の取付精度を長期間維持できる。
ボルト孔形成部品は、貫通孔内に嵌め込まれて継手面の裏面より突出する筒部の他端部に形成された止輪収納溝を備え、この止輪収納溝に止輪が係合されたことで、貫通孔からのボルト孔形成部品の脱落を防止できるので、ボルト孔内にボルトを挿入する際のボルト孔形成部品の脱落を防止でき、結合作業の作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1乃至図4は最良の形態1を示し、図1は型枠ピース同士の結合方法を示し、図2は型枠ピースを分解して示し、図3は型枠ピースを用いた密閉型のシールド掘進機によるトンネル施工方法を示し、図4はコンクリート供給管と筒状前型枠に形成されたコンクリート打設口との関係を示す。
【0007】
図1;2に示すように、型枠ピース40Aは、型枠面板41、継手板42、貫通孔43、ボルト孔形成部品50を備える。
型枠面板41は、トンネル空洞部21の内周面33(図3参照)と対向する型枠面44を備える。継手板42は、ピース継手板45とリング継手板46とを備える。ピース継手板45は、トンネル空洞部21の内周面33の周方向で互いに隣接するように設置される型枠ピース40A同士を繋ぐためのピース継手面47aを備える。リング継手板46は、トンネル空洞部21の内周面33の掘削進行方向で互いに隣接するように設置される型枠ピース40A同士を繋ぐためのリング継手面47bを備える。貫通孔43として、ピース継手板45を貫通する貫通孔43aとリング継手板46を貫通する貫通孔43bとを備える。以上の構成は、図6に示した型枠ピース40と同じである。つまり、型枠ピース40Aは、型枠面板41と継手板42と貫通孔43とを備えた型枠ピース本体(従来の型枠ピース40と同じ構成)と、ボルト孔形成部品50とにより形成される。
【0008】
ボルト孔形成部品50は、貫通孔43(43a;43b)に着脱可能に嵌め込まれて嵌め合わされた筒状体である。貫通孔43に嵌め合わされた筒状体の筒孔が、隣接して設置される型枠ピース40Aの継手面47(47a;47b)同士を密接状態に結合する継手ボルト63を通すためのボルト孔64となる。
【0009】
ボルト孔形成部品50は、筒孔を形成する筒部65と鍔部66とを備えた筒状体により形成される。鍔部66は、筒部65の筒の一端縁67より筒の外側に筒の中心軸と直交する方向に延長するように形成される。例えば、中心に筒部65の外周径と同じ径の孔を備えた孔開き円板により形成される。
【0010】
ボルト孔形成部品50は、例えば、金属により形成される。尚、鍔部66、筒部65、継手板42を形成する金属の硬さは、継手板42を最も硬い金属により形成し、筒部65と鍔部66とを同じ硬さの金属により形成することが好ましい。
【0011】
図1を参照し、ボルト孔形成部品50の取付方法及び継手面47同士の結合方法を説明する。
図1(a)に示すように、継手板42の継手面47と対向する反対面である継手面47の裏面48側から、貫通孔43内に、ボルト孔形成部品50の筒部65を筒の他端(先端)26側から嵌め込むことにより、ボルト孔形成部品50が貫通孔43内に嵌合状態に取付けられる。ボルト孔形成部品50の筒部65の長さは、継手面47の裏面48と鍔部66の裏面71とが密接状態に接触した状態において、筒部65の他端26(鍔部66の反対側)が継手面47より突出しないような寸法に設定される。尚、貫通孔43からのボルト孔形成部品50の脱落を防止したい場合には、図示しないが、例えば、鍔部66に鍔部66を貫通するボルト孔を形成しておくととともに継手面47の裏面48からボルトを突出するように設けておき、鍔部66のボルト孔にボルトを通して、鍔部66の裏面71と継手面47の裏面48とを接触させた状態でボルトの先端からナットを締結することによって、ボルト孔形成部品50が貫通孔43から脱落しないように取付けられる。
【0012】
そして、隣り合う型枠ピース40Aの継手面47同士を接触させて貫通孔43同士が一致するように位置合わされた状態で、図1(b)に示すように、ボルト63がボルト孔形成部品50により形成されたボルト孔64の一方の開口64aから他方の開口64bを通過するようにボルト孔64内に挿入された後に、ボルト63の先端63aからナット72を締結することによって、継手面47同士がボルト63及びナット72による締結により密接状態に結合される。尚、平座金92を用いてボルト63とナット72との締結力を得るようにすればよい。
【0013】
具体的には、型枠ピース40Aのピース継手面47a同士が接触するように、型枠ピース40A同士を互いに隣接させて設置し、互いに隣接する型枠ピース40Aのピース継手面47aの貫通孔43aに嵌め込まれたボルト孔形成部品50の筒孔62により形成されたボルト孔64にボルト63が通されてボルト63の先端部63aにナット72が締結されることによって、ピース継手面47a同士が密接状態となるように型枠ピース40A同士が繋がれる。
また、型枠ピース40Aのリング継手面47b同士が接触するように、型枠ピース40A同士を互いに隣接させて設置し、互いに隣接する型枠ピース40Aのリング継手面47bの貫通孔43bに嵌め込まれたボルト孔形成部品50の筒孔62により形成されたボルト孔64にボルト63が通されてボルト63の先端部63aにナット72が締結されることによって、リング継手面47b同士が密接状態となるように型枠ピース40A同士が繋がれる。
【0014】
次に、図3;図4を参照し、型枠ピースを用いた密閉型のシールド掘進機によるトンネル施工方法を説明する。
図3;4を参照して、シールド掘進機1の構造を説明する。シールド掘進機1は、前端に回転切削部2を有し、回転切削部2の後部には後方に延長する円筒状のテールプレート3を備える。テールプレート3の内側には複数の推進ジャッキ4とプレスジャッキ5とが設けられ、プレスジャッキ5の後端5aに取付けられてテールプレート3の内周面3aに沿って前後に移動可能な妻型枠と呼ばれる筒状前型枠7を備える。筒状前型枠7は、テールプレート3の内周面3aと後述する内型枠30の外周面34との間を塞いだ状態でプレスジャッキ5の伸縮で前後に移動可能な構成物であり、後述するコンクリート充填空間100を形成するとともにコンクリート充填空間100に流入した高流動性生コンクリート80を加圧するものである。8はシールド掘進機1の推進に伴って図外の牽引手段で牽引されるコンクリート供給装置である。このコンクリート供給装置8は例えば高流動性生コンクリート80を生成する1台のレミキサー81とこのレミキサー81に接続管82で繋がれた6台のコンクリートポンプ83とで構成される。
【0015】
図4に示すように、筒状前型枠7には、前後面に貫通するコンクリート打設口9が周方向に等間隔で例えば12個形成される。各コンクリートポンプ83のコンクリート排出口10には第1コンクリート供給ホース11が接続され、この第1コンクリート供給ホース11の終端には二方切替弁12が接続され、この二方切替弁12の2つの排出口13;13とそれぞれ1つのコンクリート打設口9とが第2コンクリート供給ホース14;14で接続される。第2コンクリート供給ホース14における終端側には油圧シリンダピストン等による塞止弁装置15が設けられる。塞止弁装置15の塞止弁15aが第2コンクリート供給ホース14と打設口9とを繋ぐ接続通路14a内に進退移動して接続通路14aを開閉する。接続通路14aに近い第2コンクリート供給ホース14の終端側にはこの第2コンクリート供給ホース14内の管内圧力を計測する管内圧力計16が設けられる。また、筒状前型枠7の後面7aにおける12箇所のそれぞれ打設口9の近傍、あるいは12箇所のうちの少なくとも1つの打設口9の近傍には、コンクリート充填空間100に充填された生コンクリートの圧力を計測するためのコンクリート圧力計17が設けられる。
【0016】
図3;4を参照して、本形態の内型枠を用いたトンネル施工方法を説明する。まず、図外の反力受けで推進ジャッキ4の反力を取って推進ジャッキ4のピストンを伸ばしながら回転切削部2を回転させてシールド掘進機1を一定距離だけ掘進させて地山(地盤/岩盤)20にトンネル空洞部21を掘る。一定距離は例えば内型枠30の1リング分の筒長31(例えば1m〜2m程度)の長さ+シールド掘進機1の前後長さ32である。シールド掘進機1を一定距離だけ掘進させた後にシールド掘進機1の推進ジャッキ4のピストンを縮めて、推進ジャッキ4の後端4aに、図外の内型枠組立装置によって1リング分の内型枠を組み立てる。1リング分の内型枠30は、1リング分の内型枠30の円筒の円弧の一部分を形成する複数個の型枠ピース40Aを用いて円筒形状に組み立てられる。型枠ピース40Aの外周面34がトンネル空洞部21の円形の内周面33との間に空間を隔てて内周面33に沿うように図外の内型枠組立装置により保持されて、トンネル空洞部21の内側にトンネル空洞部21の中心軸と同軸の円筒形状の内型枠が形成されるように、円筒形の円周上で互いに隣り合う型枠ピース40A同士がボルト63及びナット72により締結される。この隣り合う型枠ピース40A同士を連結するボルト63をピース間継手ボルトと呼ぶ。以上により、トンネル空洞部21の内側に円筒形状の1リング分の内型枠30が形成されるととともに、トンネル空洞部21の円形の内周面33と1リング分の内型枠30の円形の外周面34との間の円筒形状のコンクリート充填空間100が形成される。このコンクリート充填空間100の坑口22側を図外の塞板などで閉塞して、筒状前型枠7の後面7aをコンクリート充填空間100の先端側に移動させ、筒状前型枠7の後面7aの周囲の例えば12箇所の打設口9を介してコンクリートポンプ83で加圧された高流動性生コンクリート80を流し込みながらプレスジャッキ5で筒状前型枠7を押圧して高流動性生コンクリート80を加圧する。そして、人がコンクリート圧力計17から送信されてくる圧力値をモニタ等で監視しながらコンクリート充填空間100に流し込まれた高流動性生コンクリート80の圧力が予め決められた所定値になったら人が塞止弁15aの操作部を操作して塞止弁15aで接続通路14aを塞いで、コンクリート充填空間100内の高流動性生コンクリート80を固化させる。したがって、6個のコンクリートポンプ83を用い、筒状前型枠7の後面7aの周囲の12箇所の打設口9からコンクリート充填空間100に高流動性生コンクリート80を充填するので、複数のコンクリートポンプ83での圧力付加と複数の打設口9からの高流動性生コンクリート80の流し込みと高流動性生コンクリート80の高流動性とにより、コンクリート充填空間100内に短時間で均等に高密度に高流動性生コンクリート80を充填でき、トンネル空洞部21の内周面33(地山20)と密接して一体化した高密度構造の覆工部としての覆工コンクリート90を構築できる。また、打設口9の数と同数のコンクリートポンプ83を設け、1つのコンクリートポンプ83で1つの打設口9から高流動性生コンクリート80を打設してもよいが、実施形態のように打設口9の数の1/2の数のコンクリートポンプ83を用いて1つのコンクリートポンプ83に2つの打設口9を繋ぐことにより、コンクリートポンプ83の数を減らして多くの打設口9から打設できるので経済的である。また、コンクリート圧力計17を備えたので、コンクリート充填空間100内に流し込まれた高流動性生コンクリート80の圧力監視制御を容易に行える。また、コンクリート圧力計17からの信号を判読して塞止弁15aを開閉する図外の制御装置を設ければ、塞止弁15aの開閉を自動化できる。
【0017】
次に、覆工コンクリート90の内側に残された内型枠30を反力受けとして利用して推進ジャッキ4の反力を取って推進ジャッキ4のピストンを伸ばしながら回転切削部2を回転させてシールド掘進機1を一定距離だけ掘進させる。そして、坑口22側に形成された最初の内型枠30に連続するよう掘進方向側に次の1リング分の内型枠30を形成し、このように掘進方向に沿って前後に隣り合う内型枠30同士をボルト63及びナット72により締結する。掘進方向に沿って前後に隣り合う内型枠30同士を連結するボルト63をリング間継手ボルトと呼ぶ。そして、新しく形成した内型枠30の外周面34とトンネル空洞部21の内周面33との間に覆工コンクリート90を形成する。
【0018】
以後、上記と同様にしてシールド掘進機1を一定距離だけ掘進させて、1リング分の内型枠30を形成し、形成した内型枠30の1つ前に形成した内型枠30とを連結し、新しく形成した内型枠30の外周面34とトンネル空洞部21の内周面33との間に覆工コンクリート90を形成していく。
【0019】
一般に、トンネル長さは長距離であるため、上述したように、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、掘進する毎に、型枠ピース40Aを後方(坑口22側)から前方(切羽22a側)に盛り替えて繰り返して使用することが効率的である。このため、従来は、型枠ピース40の取り付け及び取り外しが繰り返され、型枠ピース40に形成された貫通孔43によるボルト孔に対するボルト63の着脱操作が頻繁に繰り返されることになるので、貫通孔43によるボルト孔が変形しやすくなっていた。
【0020】
最良の形態1の型枠ピース40Aによれば、従来のボルト孔として利用していた貫通孔43内に着脱(交換)可能なボルト孔形成部品50を設けたので、ボルト孔形成部品50により形成されたボルト孔64が変形する前にボルト孔形成部品50を交換することが可能となる。よって、ボルト孔64が変形した状態での型枠ピース40Aの使用を回避できるようになり、変形のないボルト孔64を維持できるようになるため、型枠ピース40A同士の位置ずれ、内型枠30の変形、型枠ピース40A同士の継手面47の密接性能低下、ボルト63の脱落を防止できる。尚、ボルト孔形成部品50の交換時期は、経験的に決定すればよい。
【0021】
最良の形態1の型枠ピース40Aによれば、ボルト孔形成部品50が鍔部66を備えたので、継手面47の裏面48に開口する貫通孔43の孔縁部43cの磨耗を防止できる。つまり、ボルト孔形成部品50が嵌め込まれる貫通孔43の孔縁部43cの磨耗を防止できるため、ボルト孔形成部品50が貫通孔43内に傾いて取付けられるようなことを防止でき、貫通孔43に対するボルト孔形成部品50の取付精度を長期間維持できる。また、ボルト孔形成部品50の取付けの際に、継手面47の裏面48と鍔部66の裏面71との接触状態を確認することによって貫通孔43に対してボルト孔形成部品50が正確に取付けられているか否かを確認できるし、また、継手面47の裏面48と鍔部66の裏面71とが接触するまで、ボルト孔形成部品50を押し込めばよいので、取り付け作業も容易となる。また、ボルト孔形成部品50が貫通孔43から脱落しにくいように、ボルト孔形成部品50の筒部65の外径寸法を貫通孔43内にきつく嵌め込まれるような寸法に形成することが可能となり、このようにきつく嵌め込まれるようにした場合でも、継手面47の裏面48と鍔部66の裏面71とが接触するまで、ボルト孔形成部品50を押し込めばよいので、取り付け作業も容易となる。
【0022】
最良の形態2
図5を参照し、最良の形態2による型枠ピースを説明する。
型枠ピース40Aは、型枠面板41と継手板42と貫通孔43とを備えた型枠ピース本体40aと、ボルト孔形成部品50とにより形成される。継手板42に形成される貫通孔43は、主孔75と鍔収納孔76とを備える。鍔収納孔76は、継手面47に開口する凹部を形成するための孔であって、主孔75と同軸でかつ主孔75の径よりも大きい径の孔により形成される。
ボルト孔形成部品50は、貫通孔43に着脱可能に嵌め合わされた筒状体61である。この貫通孔43に嵌め合わされた筒状体の筒孔62が、隣接して設置される型枠ピース40Aの継手面47同士を接合する継手ボルト63を通すためのボルト孔64となる。ボルト孔形成部品50は、筒孔を形成する筒部65と鍔部66とを備えた筒状体により形成される。鍔部66は、筒部65の筒の一端縁67より筒の外側に筒の中心軸と直交する方向に延長するように形成される。例えば、中心に筒部65の外周径と同じ径の孔を備えた孔開き円板により形成される。ボルト孔形成部品50は、例えば、金属により形成される。尚、ボルト孔形成部品50は継手板42よりも柔らかい金属により形成することが好ましい。
筒部65の筒の他端部78の外周面には、当該外周面をリング状に1周する周溝により形成された止輪収納溝85を備える。即ち、最良の形態2によるボルト孔形成部品50は、鍔部66の裏面71と鍔収納孔76の孔底面77とが接触して鍔部66が継手面47よりも突出しない状態に筒部65が貫通孔43内に嵌め込まれて筒部65の他端部78が継手面47の裏面48より突出する。この突出した筒部65の他端部78に止輪収納溝85が形成される。この止輪収納溝85に係合される止輪86は、例えば、筒部65の横から止輪収納溝85に嵌め込み可能な開口を備えたC字形状の止輪86を用いる。
【0023】
図5を参照し、ボルト孔形成部品の取付方法及び継手面同士の結合方法を説明する。
図5(a)に示すように、継手板42の継手面47側から、貫通孔43内に、ボルト孔形成部品50の筒部65を筒の他端部78側から嵌め込むことにより、ボルト孔形成部品50が貫通孔43内に嵌合状態に取付けられた状態で継手面47の裏面48より突出する止輪収納溝85に止輪86を係合する。尚、ボルト孔形成部品50は、上述のように止輪収納溝85に止輪86が係合された状態で、鍔部66の裏面71が主孔75と鍔収納孔76との段差面(即ち、鍔収納孔76により形成された凹部の孔底面77)に接触し、鍔部66が継手面47より突出しない寸法に形成される。
そして、隣り合う型枠ピース40Aの継手面47同士を接触させて貫通孔43中心同士が一致するように位置合わされた状態で、図5(b)に示すように、ボルト63がボルト孔形成部品50によって形成されたボルト孔64の一方の開口64aから他方の開口64bを通過するようにボルト孔64内に挿入された後に、ボルト63の先端63aからナット72を締結することによって、継手面47同士がボルト63及びナット72による締結により密接状態に接合される。
【0024】
この場合、特殊座金91及び平座金92を用いてボルト63とナット72との締結力を得るようにすればよい。特殊座金91は、ボルト63を貫通させる孔93と、ボルト孔64内に嵌め込まれたボルト孔形成部品50の他端部78と接触する環状の筒部押圧面94と、この環状面の外周縁より設けられて継手面47の裏面48と接触する環状の継手押圧面95と備えた構成である。
【0025】
最良の形態2の型枠ピース40Aによれば、止輪収納溝85に止輪86が係合されたことで、貫通孔43からのボルト孔形成部品50の脱落を防止できるので、ボルト孔64内にボルト63を挿入する際のボルト孔形成部品50の脱落を防止でき、結合作業の作業性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
ボルト孔形成部品50は、貫通孔43内に嵌め込まれてボルト孔64を形成する筒体のみにより形成してもよい。
ボルト孔形成部品50は、プラスチックやセラミックにより形成されたものを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】型枠ピース同士の結合方法を示す断面図(最良の形態1)。
【図2】型枠ピース本体とボルト孔形成部品との関係を分解して示す分解斜視図(最良の形態1)。
【図3】型枠ピースを用いた密閉型のシールド掘進機によるトンネル施工方法を示す断面図(最良の形態1)。
【図4】コンクリート供給管と筒状前型枠に形成されたコンクリート打設口との関係を示す図(最良の形態1)。
【図5】型枠ピース同士の結合方法を示す断面図(最良の形態2)。
【図6】型枠ピースを示す斜視図(従来)。
【図7】トンネル空洞部と内型枠との関係を示す図(従来)。
【符号の説明】
【0028】
21 トンネル空洞部、D 覆工部、30 内型枠、33 内周面、
40A 型枠ピース、42 継手板、43 貫通孔、47 継手面、
50 ボルト孔形成部品、61 筒状体、63 継手ボルト、
64 ボルト孔、65 筒部、66 鍔部、67 一端縁、
71 裏面、75 主孔、76 鍔収納孔、77 孔底面、
78 他端部、85 止輪収納溝、86 止輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピースにおいて、互いに隣接して設置される型枠ピース同士を繋ぐための継手面を備えた継手板と、継手板を貫通する貫通孔と、貫通孔に着脱可能に嵌め合わされた筒状体であって、貫通孔に嵌め合わされた筒状体の筒内が、隣接して設置される型枠ピースの継手面同士を密接状態に結合する継手ボルトを通すためのボルト孔となるボルト孔形成部品とを備えたことを特徴とする内型枠の型枠ピース。
【請求項2】
ボルト孔形成部品は、貫通孔に嵌め合わされてボルト孔を形成する筒部と、筒部の筒の一端縁より筒の外側に向けて筒の中心軸と直交する方向に延長するように形成された鍔部とを備え、鍔部の裏面と継手面の裏面とが接触した状態に筒部が貫通孔内に嵌め込まれて筒部の他端が継手面よりも突出しないように貫通孔に取付けられたことを特徴とする請求項1に記載の内型枠の型枠ピース。
【請求項3】
ボルト孔形成部品は、貫通孔に嵌め合わされてボルト孔を形成する筒部と、筒部の筒の一端縁より筒の外側に向けて筒の中心軸と直交する方向に延長するように形成された鍔部とを備え、貫通孔は、主孔と、主孔と同軸で主孔よりも径の大きい径に形成されて継手面に開口する鍔部収納孔とを備え、鍔部の裏面と鍔部収納孔の孔底面とが接触して鍔部が継手面よりも突出しない状態に筒部が貫通孔内に嵌め込まれて筒部の他端部が継手面の裏面より突出し、この突出した筒部の他端部に形成された止輪収納溝に止輪が取付けられたことによって、ボルト孔形成部品が貫通孔よりも脱落しないように貫通孔に取付けられたことを特徴とする請求項1に記載の内型枠の型枠ピース。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−243142(P2009−243142A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90985(P2008−90985)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】