説明

内照式看板用フィルム

【課題】優れた耐候性を発現し、かつ、防汚性、マーキングフィルムとの接着力、耐水性、耐摩耗性、柔軟性および抗張力などの力学的強度等にも優れる内照式看板用フィルムを提供する。
【解決手段】シート状繊維の両面に膜厚50μm〜1mmのエチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層した構成体の片面または両面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体系プライマーを介して、膜厚1〜100μmの特定のアクリルウレタン共重合体からなる保護層を積層してなる内照式看板用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内照式看板などに用いられるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
内照式看板とは、看板の中に蛍光灯などの照明が入っているものであり、看板全体が光るので、広告効果が高く、袖看板、ポール看板等に使用されるものである。内照式看板用フィルムとは、透光性の通常半透明のフィルムであって、照明用光源の入った看板用枠体に展貼されて用いられる。
店名のような意匠を施すには内照式看板用フィルムに印刷やマーキングフィルムを積層等して行われる。
内照式看板用フィルムには、耐候性、防汚性、マーキングフィルムとの接着力、耐水性、耐摩耗性、柔軟性及び抗張力等の力学的性質が必要とされている。このため、通常、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムが用いられてきた。しかし、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを用いた場合、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂に含有される可塑剤等が、経時的に表層へ滲み出すことにより、表面の粘着性が増して大気中の汚れが付着したり、耐候性または柔軟性等が低下したりするという問題点があった。
【0003】
一方、工業用途に用いられる高分子材料には、近年、廃プラスチックの処理や環境ホルモンの問題から、環境に負荷をかけない材料、すなわち、環境適応型材料への転換が望まれている。具体的には、燃焼時のダイオキシン発生や可塑剤の毒性等の問題から、例えば、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂からポリオレフィン系樹脂への転換が検討されている。このように、近年では、環境対応型材料に転換するために軟質ポリ塩化ビニル樹脂以外の樹脂を用いた、いわゆるエコ材料に対する要求が高まっている。
【0004】
これらの問題点を解決するために、現状では、エチレン−酢酸ビニル共重合体が検討されているが、必要とされる柔軟性を向上させるために酢酸ビニル含有量を上げると、表面の粘着性が増して大気中の汚れが付着し、また逆に酢酸ビニル含有量を下げると、意匠を付与するためのマーキングフィルムとの密着性が低下したり、柔軟性が低下することにより施工性が低下する等の問題があった。
【0005】
本発明の背景技術としては、エチレンビニルアセテート,エチレンメチルメタクリレート,エチレンエチルアクリレート,もしくはエチレンメチルアクリレートを単独あるいはこれらを2種以上ブレンドしてなるエチレン系共重合体樹脂組成物に、ポリオレフィン系樹脂を添加した組成物で、この組成物中におけるビニルアセテート,メチルメタクリレート,エチルアクリレートもしくはメチルアクリレートあるいはこれらの単量体の2種以上の含有率が10%以上の樹脂組成物を加熱混練してシート状に形成し、該シートを、糸の材質がポリエステル系、ナイロン系、ビニロン系、ガラスクロス系、アラミド系の編織された粗目基布の両面に接合一体化してなる、耐熱性に優れたエチレン系共重合体のターポリンの製造方法が特許文献1に開示され、また、特許文献2には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メラミンと強酸との塩及び滑剤から成る難燃性組成物を所定の成型方法で圧延加工したシートを所定の基布の片面に接着一体化した難燃性ターポリンが開示されている。しかしながら、ターポリンは、通常、基布の片面或いは両面にゴム、或いは熱可塑性合成樹脂をコーティングしたもので、建築現場の各種防護シート類、テント、バッグ、フレキシブルコンテナー、鞄、衣料、レジャー関連施設、フレキシブルケース等の分野で使用されているものであり、これらの用途においては、通常、長期にわたる耐候性は要求されないものである。そこで、これらのターポリンは、内照式看板用フィルムのような3〜5年のような長期にわたる耐候性が要求されるものには、耐候性が不十分であるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特許第3126439号公報
【特許文献2】特開2001−2874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、優れた耐候性を発現し、かつ、防汚性、マーキングフィルムとの接着力、耐水性、耐摩耗性、柔軟性および抗張力などの力学的強度等にも優れる内照式看板用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明による内照式看板用フィルムは、シート状繊維の両面に膜厚50μm〜1mmのエチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層した構成体の片面または両面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体系プライマーを介して、膜厚1〜100μmのエチレン性不飽和二重結合基を両末端に有する高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーに、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含有するビニル系化合物を反応させてなるアクリルウレタン共重合体からなるものであって、前記高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーの重量平均分子量が10,000〜100,000であり、該高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーとビニル系化合物との重量比が60/40〜30/70からなる保護層を積層してなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明による内照式看板用フィルムは、請求項1に記載の発明による内照式看板用フィルムにおいて、保護層の膜厚が3〜20μmであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明による内照式看板用フィルムは、請求項1又は2記載の内照式看板用フィルムにおいて、保護層の表面粗さが、下記式で表されることを特徴とする。
50>Rz/Sm>5(ここで、Rzは十点平均粗さ、Smは凹凸の平均間隔を示す)
【0011】
請求項4に記載の発明による内照式看板用フィルムは、請求項1、2又は3記載の内照式看板用フィルムにおいて、透光率が15%を超えることを特徴とする。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるシ−ト状繊維としては特に限定されず、例えば、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維又は木綿、麻等の天然繊維を単独又は混合した編織物;ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。なかでも、機械強度および難燃性能が必要とされる用途においては、ガラス繊維が好適に用いられる。
【0013】
また、上記合成繊維を構成する糸の形態としては特に限定されず、例えば、フィラメント、紡績糸等が挙げられる。なかでも、防汚性の面から表面に繊維羽毛を有しないフィラメントが好適である。また糸の太さも限定されるものではない。
【0014】
上記シ−ト状繊維としては、難燃性能を向上させるために、表面をポリリン酸カルバメ−ト等の難燃剤により処理したものを用いてもよい。上記ポリリン酸カルバメ−ト等の難燃剤の塗工量としては特に限定されないが、好ましい下限は固形分として20g/m、上限は70g/mである。20g/m未満であると、難燃性が不充分となることがあり、70g/mを超えると、繊維自身が硬くなり、内照式看板用フィルムとして要求される柔軟性が低下することがある。
【0015】
また上記シ−ト状繊維は、熱可塑性樹脂からなるフィルムとの接着性を向上させるために必要に応じて、片面もしくは両面に粘(接)着加工が施されていても良い。上記粘(接)着加工を施すために用いられる粘(接)着剤としては、熱可塑性樹脂からなるフィルムとシート状繊維との接着力に優れるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系粘(接)着剤、エラストマ−(ゴム)系粘(接)着剤、アクリル樹脂系粘(接)着剤、ポリビニルエ−テル系粘(接)着剤、シリコ−ン系粘(接)着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘(接)着剤、エチレン−エチルアクリレ−ト系粘(接)着剤、ウレタン系粘(接)着剤や、これらの粘(接)着剤からなる両面粘(接)着シ−ト(両面粘(接)着テ−プ)等が挙げられる。これらの粘(接)着剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上併用されても良い。
【0016】
本発明で用いられる粘(接)着剤は溶媒中で重合した溶剤型粘(接)着剤であっても良いし、水中で重合したエマルジョン系粘(接)着剤であっても良い。また、モノマー混合物に紫外線照射した塊状重合型粘(接)着剤であっても良い。
【0017】
また、本発明で用いられる粘(接)着剤には、耐候性向上の目的のために紫外線吸収剤、光安定剤、あるいはシート状繊維−熱可塑性樹脂からなるフィルム間へ水が侵入することを防ぐためにフッ素系樹脂等の撥水剤を含有してもよい。
【0018】
本発明で用いられる粘(接)着剤層の厚みは、1〜10μmが好ましい。より好ましくは3〜5μmである。3μm未満であると十分な粘着力が得られない。また5μmを超えると粘着物性的には過剰品質となることからコストの面で実用上必要ない。
【0019】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂に限定される。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、本発明で言う例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0020】
上記エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体の(メタ)アクリル酸アルキル含有量、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の(メタ)アクリル酸含有量、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量またはエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体のビニルアルコ−ル含有量は、特に限定されるものではないが、10〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜30重量%である。エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体の(メタ)アクリル酸アルキル含有量、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の(メタ)アクリル酸含有量、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量またはエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体のビニルアルコ−ル含有量が10重量%未満であると、内照式看板用フィルムの柔軟性が低下し、施工性が悪くなることがあり、逆に上記(メタ)アクリル酸アルキル含有量、(メタ)アクリル酸含有量、酢酸ビニル含有量またはビニルアルコ−ル含有量が50重量%を超えると、内照式看板用フィルムが保管中にブロッキングを起こすことがある。
【0021】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、固形のみならず、エマルジョンの形態、すなわちエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンであっても良い。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンは、特に限定されるものでがないが、粘度が1000〜10000mPa・sであることが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンの粘度が1000mPa・s未満であると、ガラスクロス等のシート状繊維などに塗工した場合、ハジキが発生し内照式看板用フィルムの厚みが不十分となることがあり、逆にエチレン−酢酸ビニル共重合体の粘度が10000mPa・sを超えると、同様に塗工した場合、ムラが発生し均一な厚みの内照式看板用フィルムを成形することが困難となることがある。
【0022】
また、上記熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、重量平均分子量が5千〜500万であることが好ましく、より好ましくは2万〜30万であり、また、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜80であることが好ましく、より好ましくは1.5〜40である。
【0023】
さらに、上記熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂ひいては内照式看板用フィルムの力学的強度をより向上させるために、例えば過酸化物等を用いて架橋されていても良い。
【0024】
本発明における熱可塑性樹脂からなるフィルムの厚みは、50μm〜1mmに限定される。フィルムの厚みが50μm未満であると、充分な抗張力などの機械強度が得られず、また、フィルムの厚みが1mmを超えると重量が増加する、あるいは柔軟性が低下することにより施工性が低下する等の問題がある。またこの内照式看板用フィルムを用いて看板を作製した場合に、透光率が不足し意匠性や鮮明性が不十分になることがある。
【0025】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなるフィルムには、難燃性を付与するために難燃剤を添加してもよい。用いられる難燃剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属水酸化物、メラミン誘導体、金属酸化物、リン系難燃剤、シリコ−ン系難燃剤などの非ハロゲン系難燃剤が挙げられ、なかでも、金属水酸化物、メラミン誘導体、金属酸化物等が好適に用いられる。これらの難燃剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0026】
上記金属水酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ド−ソナイト、アルミン酸カルシウム、2水和石こう、水酸化カルシウム等が挙げられ、なかでも、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムが好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0027】
上記金属水酸化物としては、各種の表面処理剤により表面処理が施されているものであっても良い。上記表面処理剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ポリビニルアルコ−ル系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤等が挙げられる。これらの表面処理剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0028】
上記金属水酸化物(表面処理金属水酸化物も含む)は、燃焼時の高熱下で吸熱脱水反応を起こすことにより、吸熱し、かつ、水分子を放出することで燃焼場の温度を低下させ、消火する効果を発揮する。また、2種類以上の金属水酸化物を併用することにより、各々が異なる温度で吸熱脱水反応を開始するので、より高い難燃効果を得ることができる。
【0029】
上記メラミン誘導体としては、特に限定されるものではないが、例えば、メラミン、メラミンシアヌレ−ト、メラミンイソシアヌレ−ト等や、これらに表面処理が施されたもの等が挙げられ、なかでも、メラミンシアヌレ−トが好適に用いられる。これらのメラミン誘導体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0030】
上記金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化銅、硼酸亜鉛(2ZnO・3B・3.5HO)等や、これらに表面処理を施したもの等が挙げられ、なかでも、硼酸亜鉛が好適に用いられる。これらの金属酸化物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。上記金属酸化物は、燃焼時の高熱下で重合反応を起こすことにより、焼結体を形成する。この焼結体は燃焼時の早い段階で形成されるので、外界からの酸素の供給を遮断するのみならず、燃焼により発生する可燃性ガスも遮断することができ、熱可塑性樹脂からなるフィルムの発熱速度を抑制することができる。すなわち、優れた延焼防止性能を発現することが可能となる。
【0031】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなるフィルムにおいては、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記難燃剤5〜100重量部が配合されていることが好ましく、より好ましくは20〜60重量部である。熱可塑性樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量が5重量部未満であると、充分な難燃化効果を得られなくなることがあり、逆に熱可塑性樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量が100重量部を超えると、難燃化効果は充分に得られるものの、内照式看板用フィルムの密度(比重)が高くなって、重量増加および柔軟性低下により施工性が低下することがある。
【0032】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなるフィルムは、さらに、難燃助剤が含有されてなることが好ましい。難燃助剤を含有することにより、熱可塑性樹脂からなるフィルムは、酸素指数が向上するとともに、最大発熱速度が大幅に低下する。
【0033】
上記難燃助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリコ−ン・アクリル複合ゴム、シリコ−ンオイル等が挙げられ。好適に用いられる。これらの難燃助剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。上記シリコ−ン・アクリル複合ゴムやシリコ−ンオイルは、活性基を有する熱可塑性樹脂と燃焼時に反応してチャ−形成(チャ−化)を促進し、または、ガラス状の無機化合物の被膜が形成されるときには、保護材として強固なものとなり、熱可塑性樹脂の熱分解を抑制する。
【0034】
上記難燃助剤の配合量は、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、難燃助剤0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜15重量部である。熱可塑性樹脂100重量部に対する難燃助剤の配合量が0.1重量部未満であると、不燃性フィルム材料の酸素指数が充分に向上しなかったり、最大発熱速度が充分に低下しないことがあり、逆に熱可塑性樹脂組成物100重量部に対する難燃助剤の配合量が20重量部を超えると、内照式看板用フィルムの密度(比重)が高くなったり、力学的強度等が低下したり、柔軟性が乏しくなることがある。
【0035】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなるフィルムは、白色性、隠蔽力、さらなる難燃化効果等が必要な場合には、さらに、酸化チタンが含有されていても良い。上記酸化チタンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ルチル型酸化チタン、アナタ−ゼ型酸化チタン等が挙げられ、なかでも、隠蔽力、耐候性、難燃化効果に優れることから、ルチル型酸化チタンが好適に用いられる。また、内照式看板用フィルムに防汚性が要求される場合には、光触媒効果を有する酸化チタンを用いることが好ましい。これらの酸化チタンは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0036】
上記酸化チタンの配合量は、特に限定されるものではないが、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、酸化チタン1〜20重量部が好ましく、より好ましくは2〜7重量部である。熱可塑性樹脂100重量部に対する酸化チタンの配合量が1重量部未満であると、充分な白色性、隠蔽力、さらなる難燃化効果等を得られなくなることがあり、逆に熱可塑性樹脂100重量部に対する酸化チタンの配合量が20重量部を超えると、白色性、隠蔽性、さらなる難燃化効果等は充分に得られるものの、熱可塑性樹脂からなるフィルムとしての成形性が低下したり、柔軟性が乏しくなることがある。
【0037】
また、本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなるフィルムは、さらなる白色性が必要な場合には、上記酸化チタンに加えるに、さらに、ブル−イング剤や蛍光顔料が含有されていても良い。上記ブル−イング剤や蛍光顔料の配合量は、特に限定されるものではないが、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1重量部〜10重量部が好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。熱可塑性樹脂100重量部に対するブル−イング剤や蛍光顔料の配合量が0.1重量部未満であると、さらなる白色性向上効果を充分に得られなくなることがあり、逆に熱可塑性樹脂100重量部に対するブル−イング剤や蛍光顔料の配合量が10重量部を超えると、さらなる白色性向上効果は充分に得られるものの、熱可塑性樹脂からなるフィルムの成形性が低下したり、柔軟性が乏しくなることがある。
【0038】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなるフィルムには、必須成分である熱可塑性樹脂、および必要に応じて含有させる難燃助剤、酸化チタン、ブル−イング剤、蛍光顔料に加えるに、必要に応じて、例えば、層状珪酸塩やそれ以外の無機充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が含有されていても良い。また、本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなるフィルムは、物性を均一にするために、結晶核剤となりうるものが少量含有されて、結晶が微細化されていても良い。上記無機充填剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレ−、シリカ等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなるフィルムの製造に用いられる熱可塑性樹脂組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、必須成分である熱可塑性樹脂組成物、必要に応じて含有させる難燃助剤、酸化チタン、ブル−イング剤、蛍光顔料等の各所定配合量を直接混練する直接混練法や、熱可塑性樹脂に所定配合量以上の層状珪酸塩、難燃剤、難燃助剤、酸化チタン、ブル−イング剤、蛍光顔料等を混練してマスタ−バッチを調整した後、調製されたマスタ−バッチに各成分が所定配合量となるように熱可塑性樹脂を配合して希釈するマスタ−バッチ法等が挙げられ、いずれの方法が採られても良い。
【0040】
また、熱可塑性樹脂として前記エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンを用いる場合は、必須成分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、必要に応じて含有させる難燃剤、難燃助剤、酸化チタン、ブル−イング剤、蛍光顔料等の各所定配合量を、ホモジナイザ−、アトライタ−、ディスパ−、ミキサ−、3本ロ−ル等を用いて、均一に混合すれば良い。
【0041】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなるフィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、上記方法で調整された熱可塑性樹脂組成物を、押出成形法、カレンダ−成形法、熱プレス成形法、インフレ−ション成形法等の公知の成形法で成形(製膜)することにより、所望のフィルムを得ることができる。
【0042】
本発明において熱可塑性樹脂からなるフィルムと上記シ−ト状繊維とを貼付する方法としては特に限定されず、例えば、シート状繊維を上記熱可塑性樹脂エマルジョン溶液に浸漬し、ロ−ル等で絞った後、熱処理を行う方法(ディッピング法)、シ−ト状繊維に熱可塑性樹脂(組成物)溶液を塗布後、熱処理を行う方法(コ−ティング法);カレンダ−成形や押出成形により熱可塑性樹脂からなるフィルムを作製した後、加熱圧着ロ−ルにより、シ−ト状繊維と積層する方法(ラミネ−ト法)等が挙げられる。
【0043】
本発明の内照式看板用フィルムは、耐候性、防汚性、マーキングフィルムとの接着力、耐水性、耐摩耗性等を付与するために、片面もしくは両面に膜厚1〜100μmの保護層が形成されている。本発明において、保護層の厚みが1μm未満であると、充分な耐候性、防汚性が得られなくなり、また、マーキングフィルムとの接着力が得られない。逆に100μmを超えると、内照式看板用フィルムの柔軟性が不足する、あるいは熱可塑性樹脂からなるフィルムとの追従性不良により保護層の剥離が起きる等の問題がある。より好ましい膜厚は、3〜20μmであり、特に好ましくは3〜19μmである。
【0044】
上記保護層に用いられるアクリルウレタン共重合体は、エチレン性の不飽和二重結合基を両末端に有する高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーに、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含有するビニル系化合物を反応させることにより得られる共重合体であり、基本的には、特開平10−1524号公報に記載される方法に従って得ることができる。すなわち、このようなアクリルウレタン共重合体は、両末端不飽和二重結合基を有する高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーを製造する工程、およびこのプレポリマー存在下で、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル基を有するビニル系化合物を重合させる工程といった2工程により得ることができる。また、本発明で用いられるアクリルウレタン共重合体の重量平均分子量は、15,000〜150,000の範囲であることが好ましい。
【0045】
まず、第一工程でエチレン性不飽和二重結合基を有する高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーを製造する。重量平均分子量10,000−100,000の範囲にある両末端にNCO基を有する高分子直鎖状ウレタンセグメントを合成し、次に両末端のNCOに、これと反応し得る水酸基一個を含む(メタ)アクリル酸エステルを理論量付加させることからなる。この高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーを合成するには、一般的な手法に従えばよく、すなわち、長鎖ジオール、短鎖グリコール、場合に応じ鎖延長剤等を併用し、共重合体の設計分子量に対して理論量の有機ジイソシアネートを加えて反応させればよい。この反応は不活性有機溶剤中で行い、反応を促進するために金属触媒や第三級アミン触媒を用いることも可能である。
【0046】
第二工程では、第一工程で合成した両末端にエチレン性不飽和二重結合基を持ったポリウレタンプレポリマーに、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含有するビニル系化合物を加え、ラジカル発生剤の存在下、有機溶剤中において高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーの両末端不飽和二重結合を起点としたビニル系化合物のラジカル重合反応を行い、アクリルウレタン共重合物を合成する。この反応はアクリル樹脂重合の一般的な手法である、ラジカル発生剤添加の下に行われるラジカル重合を行えばよい。この際、適宜チオール基含有化合物を連鎖移動剤として反応液に添加してアクリルの重合度を調整することもできる。
【0047】
前記有機ジイソシアネートとして、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4−ジイソシアネート、2,2−ジフェニルプロパン−4,4−ジイソシアネート、3,3−ジメチルジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、4,4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3−ジメトキシジフェニル−4,4−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート等の脂肪族、水添化キシレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。中でも耐候性に優れ、ウレタンセグメントの結晶化を防ぐため非対称構造であるイソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネートのような脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0048】
長鎖ジオールとしてはポリウレタン工業において公知のものが用いられ、例えば、ポリエステルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステル・ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。具体的にはコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等のジカルボン酸、これらの酸エステルあるいは酸無水物と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタングリコール、1,9−ノナングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等のグリコール、あるいはヘキサメチレンアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等のジアミン、またはアミノアルコール等、単独、またはこれらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルジオール、ポリエステルアミドジオールが挙げられる。さらに、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレルラクトン等の環状エステル(すなわちラクトン)モノマーの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルジオール等のポリエステルジオールが挙げられる。
【0049】
ポリエーテルジオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。ポリエーテル・ポリエステルジオールとしては、前記のポリエーテルポリオールと前記のジカルボン酸又は酸無水物等とから製造されるものが挙げられる。ポリカーボネートジオールとしては、例えば、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタングリコール、ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等とジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのカーボネート類との反応から得られるものを挙げることができ、具体的な商品としては日本ポリウレタン工業社製のニッポラン980、ニッポラン981等が挙げられる。
【0050】
また尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール等も、一般にポリウレタン工業において公知のもので活性水酸基を2個以上含有するものであれば、長鎖ポリオールあるいはその一部として使用することができる。
【0051】
これら長鎖ポリオールの分子量は350−8,000の範囲が好ましい。分子量が350未満ではウレタン成分の柔軟性を発揮できず、また分子量が8,000を越えると共重合物のウレタン基濃度が低下し、例えば、ポリウレタンの特徴の一つである耐摩耗性や耐熱性に乏しくなる。これらは単独、あるいは2種類以上組み合わせて使用することもできる。中でも、耐候性、透明性、機械的強度に優れるポリカーボネートジオールが好ましい。
【0052】
短鎖グリコールとしては、前記長鎖ポリオールの原料として挙げた単分子ジオール類、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタングリコール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサノン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。これらは単独、あるいは2種類以上組み合わせて使用することもできる。
【0053】
鎖延長剤としては、ヒドラジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の単分子ジアミン、トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、あるいはポリエーテルの末端がアミノ基となったポリエーテルジアミン等が挙げられる。前記アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等が挙げられる。これらは単独、あるいは2種類以上組み合わせて使用することもできる。
【0054】
ここで、長鎖ジオールと短鎖グリコールの使用比率は、重量比で長鎖ジオール/短鎖グリコール=100/0〜70/30の範囲が好ましく、より好ましくは100/0〜80/20である。
【0055】
エチレン性不飽和二重結合基を両末端に有する高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーの重量平均分子量は10,000−100,000に限定される。10,000未満ではアクリルとウレタンプレポリマーの架橋間距離が短く、共重合反応の際にゲル化する可能性があり、また十分な引き裂き強度が得られない。また、100,000より大きくなると、アクリルとウレタンプレポリマーの架橋間距離が大きくなりすぎ、相溶性を確保しにくくなる。高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーの分子量は、用いられる長鎖ジオール、短鎖グリコール、および鎖延長剤等に含まれる全活性水素数と、これと反応させるイソシアネート基のモル数の比率を適宜変えることで、調整することができる。
【0056】
次に、ビニル系化合物を共重合させる第二工程では、上記第一工程で製造した高分子直鎖状ウレタンプレポリマーに少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含有するビニル系化合物に加え、さらにアゾビスイソブチロニトリルのようなジアゾ化合物あるいはベンゾイルパーオキサイド、カヤエステル−O(火薬アクゾ(株)製)のような過酸化物などをラジカル発生剤として添加し、通常の有機溶剤中でラジカル重合を行う。この際、高分子直鎖状ウレタンプレポリマーの両末端不飽和二重結合は容易にラジカルを発生し、これを起点としてビニル系化合物の連鎖移動反応が行われ、アクリルウレタン共重合物を生成する。重合度の調整は連鎖移動剤を反応液に添加することで行う。ラジカル発生剤量は全固形分重量に対して、0.2%〜5.0%の範囲が好ましい。連鎖移動剤量は全固形分重量に対して、5%以下が好ましい。5%を越えると残存した連鎖移動剤が耐候性に悪影響を与える可能性がある。
【0057】
本発明において用いられるビニル化合物のうち、(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタアクリレート、iso−ブチルメタアクリレート、tert−ブチルメタアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デカニル(メタ)アクリレート、ウンデカニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのC〜C24アルキル等が挙げられる。これらは単独、または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0058】
また本発明においては水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルも使用できる。具体的には2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられ、上記(メタ)アクリル酸エステルとの併用が好ましい。この場合はイソシアネート基と反応しうるアルコール性水酸基を有するアクリルウレタン共重合体が得られる。また、これらは単独、または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
さらに本発明においては、上記のもの以外に、ビニル系化合物として、シクロアルキルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル化合物、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、あるいは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メタ(アクリルアミド)等の極性基含有モノマーが挙げられる。これらは単独、または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
本発明で用いられるアクリルウレタン共重合体は、両末端にエチレン性不飽和二重結合を持つ高分子直鎖状ウレタンプレポリマーの分子量が大きいため、重合後に得られるアクリルウレタン共重合体の架橋間距離が拡大し、その分子構造が二次元的構造(網状構造)となる。従って、本来相溶性の悪いアクリル成分と、ウレタン成分とを化学的に結合させることにより、相溶性のよいアクリルウレタン共重合体を得ることができる。またウレタンプレポリマーが高分子でかつ直鎖状であることから、外力がかかった時に延伸効果を発揮することができる。したがって、このアクリルウレタン共重合体を用いた保護層はアクリルの特徴である耐候性、耐汚染性、ウレタンの特徴である柔軟性、強靱性を合わせもつ。
【0061】
上記保護層において、高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマー/ビニル系化合物の重量比は60/40〜30/70の範囲内に限定される。ビニル系化合物が70重量%を越えると、柔軟性が低下し熱可塑性樹脂からなるフィルムへの追従性が悪くなる。またビニル系化合物が40重量%より少なくなると、柔軟性は良くなるものの、耐候性、防汚性が損なわれる。
【0062】
上記保護層は、架橋剤、顔料、光安定剤、紫外線吸収剤等が適宜配合されて成形される。本発明で用いられるアクリルウレタン共重合体は架橋剤を使用することによりで緻密な3次元構造を形成することができる。架橋剤としては、従来よりアクリル樹脂の架橋剤として使用されている架橋剤であれば特に限定されず、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤が挙げられる。中でも耐候性に優れる、脂肪族イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0063】
上記架橋剤の量は、アクリルウレタン共重合体100重量部に対して0.2〜30重量部を配合することが好ましい。0.2重量部未満では添加効果が認められず、30重量部を超えるとアクリルウレタン共重合体本来の柔軟性が発揮できなくなる。尚、架橋方法は任意の方法が採用されてよく、例えば、加熱養生法、放射線照射法等が挙げられる。
【0064】
本発明において、熱可塑性樹脂からなるフィルムの片面または両面に保護層を形成する際に、熱可塑性樹脂からなるフィルムと保護層との接着力を向上させるために、エチレン−酢酸ビニル共重合体系プライマーを使用する。
【0065】
エチレン−酢酸ビニル共重合体系プライマーとしては、例えば主成分に架橋剤等の任意成分が必要に応じて配合されたものが用いられる。本発明に用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体系プライマーは溶媒中で重合した溶剤型粘着剤であっても良いし、水中で重合したエマルジョン系粘着剤であっても良い。また、モノマー混合物に紫外線照射した塊状重合型粘着剤であっても良い。
【0066】
上記プライマー層の厚みは、1〜10μmが好ましい。より好ましくは3〜5μmである。3μm未満であると十分な粘着力が得られない。また5μmを超えると粘着物性的には過剰品質となることからコストの面で実用上必要ない。
【0067】
熱可塑性樹脂からなるフィルムの片面または両面に保護層を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記保護層形成用樹脂からなる保護シ−トを積層する方法や、上記保護層形成用樹脂(水)溶液をコ−ティングする方法等が挙げられる。
【0068】
本発明における保護層の表面形状は、十点平均粗さをRz、凹凸間の平均間隔をSmとした場合、50>Rz/Sm>5であることが好ましい。Rz/Smが50以上であるとマーキングフィルムとの接着力は向上するが、粉塵、ゴミなどの付着量が増加し、充分な防汚性が得られなくなる。また、Rz/Smが5以下であると、マーキングフィルムとの充分な接着力が得られない。より好ましくは、25>Rz/Sm>10である。
【0069】
本発明の内照式看板用フィルムは、透光率が15%を超えることが好ましく、より好ましくは20%以上である。内照式看板用フィルムの透光率が15%以下であると、この内照式看板用フィルムを用いて作製した例えば看板、膜構造建築物等の透光率が必要とされる用途に用いる場合に、充分な明るさが確保できず、意匠性や鮮明性等が不十分となることがある。
【発明の効果】
【0070】
本発明によると、優れた耐候性を発現し、かつ、防汚性、マーキングフィルムとの接着力、耐水性、耐摩耗性、柔軟性および抗張力などの力学的強度等にも優れる内照式看板用フィルムを得ることができる。
【0071】
本発明の内照式看板用フィルムは、その用途を限定されるものではなく、耐候性、防汚性、意匠性が要求される各種製品や各種用途に好適に用いることができる。具体的には、内照式看板用フィルムの熱可塑性を利用した熱融着、高周波融着や縫製等の常法による加工を施すことにより、内照式看板以外にも、例えば、外照式看板、膜構造建築物、テント倉庫、ファサ−ド、トラック用幌、防水シ−ト、遮水シ−ト、フレキシブルコンテナ等の各種製品を得ることができる。
【0072】
上記膜構造建築物としては、例えば、イベントパビリオンやド−ム等の天井膜、軒出しテント、日よけテントなどが挙げられる。また、マーキングフィルムを貼付することによって、例えば、屋内用看板、屋外用看板、垂れ幕などを得ることができる。さらに、内照式看板用フィルムの片面または両面に受容層を設け、インクジェットプリンタ−やグラビアロ−ル等による印刷を施すことによって、同様に、看板、垂れ幕等を得ることもできる。
【0073】
本発明の内照式看板用フィルムを用いることにより、耐候性、マーキングフィルム接着性、防汚性、耐水性、耐摩耗性、柔軟性および抗張力などの力学的強度ならびに施工性に優れ、かつ、廃棄時に有害物質を排出せず、環境に負荷をかけない上記に例示したような各種製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【0075】
「保護層用表面処理剤の作製」
まず、保護層用の表面処理剤を以下のようにして作製した。なお、以下の表面処理剤の配合と性状を、表1にまとめて示した。
(表面処理剤1)
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に分子量1000のポリカーボネートジオール(日本ポリウレタン工業(株)製 商品名:ニッポラン981) 320.3部、イソホロンジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製 商品名:ディスモジュールI)75.1部、トルエン500部を仕込み、窒素雰囲気下80℃、6時間以上反応させた。イソシアネート(NCO)濃度が理論量に到達した時点で2−ヒドロキシエチルメタアクリレート4.6部、トルエン100部を仕込み、ウレタンプレポリマーの両末端のNCOが消滅するまでさらに80℃、6時間反応させ、樹脂固形分濃度40%、粘度4000mPa・s(25℃)、重量平均分子量34000の高分子直鎖状ウレタンプレポリマー溶液を得た。
【0076】
次に、攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた反応容器に、高分子直鎖状ウレタンプレポリマー溶液393.8部、メチルメタアクリレート184.4部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート8.1部、1−チオグリセロール 1.75部、トルエン82.7部を仕込み、攪拌しながら105℃まで昇温した。そこにラジカル開始剤(商品名:ABN−E、日本ヒドラジン工業(株)製 )3.5部およびトルエン331部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で6時間反応させ、樹脂固形分濃度35%、粘度4000mPa・s(25℃)、重量平均分子量84000のアクリルウレタン共重合樹脂溶液を得た。さらにアクリルウレタン共重合樹脂溶液1000部にヒンダードアミン光安定剤(HALS)「商品名:チヌビン622LD チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製」および紫外線吸収剤(UVA)「商品名:UV5411 サンケミカル(株)製」をおのおの10部、5部添加し、イソシアネート硬化剤(架橋剤)としてデュラネートD−101(旭化成工業(株)製)15部を混合した。この樹脂溶液を表面処理剤1とする。
【0077】
(表面処理剤2)
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に分子量1000のポリカーボネートジオール(日本ポリウレタン工業(株)製 商品名:ニッポラン981) 324.7部、ノルボルナンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製 商品名:コスモネートNBDI)70.6部、トルエン500部を仕込み、窒素雰囲気下80℃、6時間以上反応させた。イソシアネート(NCO)濃度が理論量に到達した時点で2−ヒドロキシエチルメタアクリレート4.7部、トルエン100部を仕込み、ウレタンプレポリマーの両末端のNCOが消滅するまでさらに80℃、6時間反応させ、樹脂固形分濃度40%、粘度4700mPa・s(25℃)、重量平均分子量36000の高分子直鎖状ウレタンプレポリマー溶液を得た。
【0078】
次に、攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた反応容器に、高分子直鎖状ウレタンプレポリマー溶液393.8部、メチルメタアクリレート184.4部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート8.1部、1−チオグリセロール1.75部、トルエン82.7部を仕込み、攪拌しながら105℃まで昇温した。そこにラジカル開始剤(商品名:ABN−E、日本ヒドラジン工業(株)製 )3.5部およびトルエン331部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で6時間反応させ、樹脂固形分濃度35%、粘度4500mPa・s(25℃)、重量平均分子量86000のアクリルウレタン共重合樹脂溶液を得た。さらにアクリルウレタン共重合樹脂溶液1000部にヒンダードアミン光安定剤(HALS)「商品名:チヌビン622LD チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製」および紫外線吸収剤(UVA)「商品名:UV5411 サンケミカル(株)製」をおのおの10部、5部添加し、イソシアネート硬化剤(架橋剤)としてデュラネートD−101(旭化成工業(株)製)15部を混合した。この樹脂溶液を表面処理剤2とする。
【0079】
(表面処理剤3)
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた反応容器に、トルエン450部を仕込み、攪拌しながら110℃まで昇温した。そこにメチルメタアクリレート220.5部、n−ブチルメタアクリレート77.0部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート52.5部、ラジカル開始剤(商品名:ABN−E、日本ヒドラジン工業(株)製)1.0部、トルエン100部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた。さらにトルエン100部、ABN−E0.5部からなる混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で3時間反応させ、樹脂固形分35%、粘度110mPa・s(25℃)、重量平均分子量43000のアクリル樹脂を得た。このアクリル樹脂1000部にイソシアネート硬化剤(架橋剤)としてコロネートHLS(日本ポリウレタン工業(株)製)225部を混合した。この樹脂溶液を表面処理剤3とする。
【実施例1】
【0080】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
「サンプル作製」
(基材作製)
エチレン−酢酸ビニル共重合体 EVAFLEX V5274(三井−デュポンポリケミカル(株)製)100重量部および水酸化アルミニウム H−42STV(昭和電工(株)製)50重量部を160℃にて2本ロールにて混練した後、熱プレスにより300μmのフィルムを作製した。ここで得られたフィルムをガラスクロス H202(ユニチカ(株)製)の両面にラミネーター(130℃)により積層させた。
【0081】
(表面処理)
得られた基材の片面にバーコーターにより変性エチレン−酢酸ビニル共重合体系プライマー ハニセメン P−957(ハニー化成(株)製)を乾燥膜厚5μmにて塗工した後、乾燥機にて乾燥を行った。その後、表2に記載の各表面処理剤を所定厚みに塗工した後、同様に乾燥を行った。
最後に表2に記載の表面粗さを付与するために、ロール表面にシボ加工が施された2本ロールによりシボ加工を実施した。
【0082】
評価
得られた内照式看板用フィルムについて以下の評価を行った。
(表面粗さ)
作製した内照式看板用フィルムの表面形状を走査型レーザー顕微鏡(商品名:1LM21レーザーテック(株)製)にて測定した。
(表面処理剤密着性)
作製した内照式看板用フィルムを180°に折り曲げた後、粘着テープにより表面処理剤の密着性を確認した。目視により粘着テープに表面処理剤が転写されないものを○、転写されるものを×と判断した。
【0083】
(耐候性)
プラスチックス樹脂の耐候性評価(JIS A1415)に準拠し作製した内照式看板用フィルムを促進曝露2000時間実施した後の外観を目視にて確認した。また併せて退色度合いを測色機(商品名:3600CD ミノルタ(株)製)にて測定した。
(マーキングフィルム接着性)
内照式看板用フィルムの表面に25mm×300mmにカットしたマーキングフィルム(商品名:エコパレット タックペイント KT0000 積水化学工業(株)製)を2kgのロールにて300mm/分の速度で貼付した後、23℃×24時間サンプルを養生した後、常法に従い接着力を測定した。
(透光率)
JIS K 7105「プラスチックの光学的特性評価試験方法」に準拠して、内照式看板用フィルムの全光線透過率(%)を測定した。
以上の評価結果を表2及び表3に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の内照式看板用フィルムを用いることにより、耐候性、マーキングフィルム接着性、防汚性、耐水性、耐摩耗性、柔軟性および抗張力などの力学的強度ならびに施工性に優れ、かつ、廃棄時に有害物質を排出せず、環境に負荷をかけない内照式看板を得ることができる。更に、内照式看板用フィルムの熱可塑性を利用した熱融着、高周波融着や縫製等の常法による加工を施すことにより、内照式看板以外にも、例えば、外照式看板、膜構造建築物、テント倉庫、ファサ−ド、トラック用幌、防水シ−ト、遮水シ−ト、フレキシブルコンテナ等の各種製品を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状繊維の両面に膜厚50μm〜1mmのエチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層した構成体の片面または両面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体系プライマーを介して、膜厚1〜100μmのエチレン性不飽和二重結合基を両末端に有する高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーに、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含有するビニル系化合物を反応させてなるアクリルウレタン共重合体からなるものであって、前記高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーの重量平均分子量が10,000〜100,000であり、該高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーとビニル系化合物との重量比が60/40〜30/70からなる保護層を積層してなることを特徴とする内照式看板用フィルム。
【請求項2】
保護層の膜厚が、3〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の内照式看板用フィルム。
【請求項3】
保護層の表面粗さが、下記式で表されることを特徴とする請求項1又は2記載の内照式看板用フィルム。
50>Rz/Sm>5(ここで、Rzは十点平均粗さ、Smは凹凸の平均間隔を示す)
【請求項4】
透光率が15%を超えることを特徴とする請求項1、2又は3記載の内照式看板用フィルム

【公開番号】特開2007−237698(P2007−237698A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66832(P2006−66832)
【出願日】平成18年3月11日(2006.3.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】