説明

内燃機関で燃料による潤滑油の希釈をモニターするための方法および装置

本発明は、内燃機関で燃料による潤滑油の希釈率を決定する方法に関する。本発明は、次のステップを含んでなることで特徴付けられる:潤滑油または燃料のいずれかを放射性トレーサーでマーキングし、放射性トレーサーから放射される放射線に感受性である検出器を用いてオイルサンプルの放射能を測定し、燃料による潤滑油の希釈率を計算するために該結果を用いるコンピューターへ上記測定の結果を伝える。本発明は、該方法を実施するために用いられる装置、特にエンジン用のテストベンチにも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、潤滑油または燃料へ導入された放射性トレーサーの放射能を測定することにより、内燃機関の燃料による潤滑油の希釈率を決定する方法、並びにこの方法を実施するための内燃機関用テストベンチのような装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車メーカーとエンジンオイル用潤滑油および/または機能性添加剤のメーカーの双方で、新世代の直接噴射式エンジン、特にポジティブイグニッションまたは圧縮イグニッション式エンジンの内部における燃料による潤滑剤の希釈現象の正確な知識について、重要性が知られている。
【0003】
そのため、ディーゼルエンジンと通称される圧縮イグニッション式エンジンでは、燃焼室内で直接噴射による燃料供給の原理が、燃料が潤滑油と混じり合う底端部への燃料の一部の移動の基礎となる。
【0004】
エンジンの潤滑システムへ向かうこの燃料移動は、粒子フィルターまたは触媒コンバーターのような排気ガス後処理システムを装備したエンジンで更に強調されている。実際に、このような後処理システムを装備したエンジンでは、燃料が燃焼室で燃えずに、排気ラインへ送られ、そこで、例えば粒子フィルターに蓄積したススの燃焼のため、排気ガス後処理システムを再生するか、または触媒システム内で媒体の酸化状態を変えるために、それが用いられるようなときに、追加の燃料噴射が燃焼室レベルで行われることがある。こうして燃料による潤滑油の希釈率が10容量%以上の値に達することがある。
【0005】
オイル潤滑システムへの燃料の混入は、結果として、一方で潤滑剤の特性の劣化、例えばその粘度の低下、添加剤の希釈、他方でオイルパン内に存在する容量の増加を招く。それは、油圧の低下および異常に多いオイル消費で顕在化するエンジンの動きの変化、長期的には、機械部品の磨耗増加、更にはエンジン破損すら招く。
【0006】
しかしながら、排気ガス後処理システムの使用が、次第に厳しくなる汚染防止基準のために広がっており、結果的に、上記のような潤滑油希釈問題の解決が自動車産業で重要な課題となっている。
【0007】
自動車メーカーは、現在および将来、燃焼室へ噴射された燃料による潤滑油の希釈を制御する、できれば最少に抑えるエンジンを開発する上で、多くの試験を行わねばならない。
【0008】
テストベンチにおいてエンジン内部から採取されたオイルサンプル中の燃料量を調べられる、充填カラムまたはキャピラリーガスクロマトグラフィーのような、いくつかの技術が存在している。しかしながら、これらの分析技術は不連続で比較的複雑であり、分析オイルサンプルを消費するために、それを潤滑システムへ再導入できなくさせ、しかも比較的長い分析時間を要する。
【発明の概要】
【0009】
本発明者は、既知技術より比較的簡単かつ迅速であり、分析サンプルを消費せず、エンジンが作動しながら連続的に機能できるため、燃料による潤滑油の希釈率を実際上リアルタイムで与える、燃料による潤滑油の希釈を評価するための方法を開発した。
【0010】
この分析方法はオイルサンプルの放射能の測定に基づいており、希釈が分析される潤滑油、または希釈液、即ちエンジンへ入る燃料のいずれかに存在する、放射性トレーサーの形で、この放射能がシステム中へ導入される。ある条件下で、この放射能は分析オイルサンプル中における潤滑油の量または燃料の量を実際上完璧に反映し、結果的にコンピューターにより行われる簡単な計算で、燃料によるオイルの希釈率を直接得ることを可能にしているのである。
【0011】
本発明は、内燃機関の燃料による潤滑油の希釈率を決定する方法であって、
潤滑油または燃料を放射性トレーサーでマーキングし、
オイルサンプルの放射能を、好ましくは連続的にかつエンジンを作動させながら、放射性トレーサーにより放射される放射線に感受性である検出器を用いて測定し、そして、
これらの測定の結果を、これらの結果から燃料による潤滑油の希釈率を計算するコンピューターへ伝達する方法を、目的として有する。
【0012】
本発明は、このような分析方法を実施することを可能にする装置、特に内燃機関用のテストベンチであって、
潤滑油で潤滑化され、空気/燃料混合物が供給され、潤滑油または燃料のいずれかが放射性トレーサーを含有している内燃機関と、
エンジンのオイルシステムからオイルサンプルの、連続的または不連続的な、一時的サンプリングおよび再注入を行わせる手段と、
この一時的サンプリングおよび再注入を行わせる手段のすぐ近くにある、オイルサンプル中に存在する放射性トレーサーから放射される放射線に感受性の検出器と、
オイルサンプルの放射能の測定の上記検出器により得られた結果から、燃料による潤滑油の希釈率を計算するようにプログラムされた、上記検出器へ接続されたコンピューターと
を備えたものも、目的として有する。
【発明の具体的説明】
【0013】
本発明の方法および装置を更に詳細に説明するために、“潤滑油”および“潤滑剤”という用語が、未希釈オイルまたは分析されるオイル/燃料混合物中のオイル分を示す上で、完全に同義で以下で用いられる。加えて、“オイルサンプル”という用語は、一時的に迂回させたまたは採取された、放射能が測定されるサンプルを示すために、体系的に用いられている。エンジン試験の開始時点では、この“オイルサンプル”はもちろん排他的に滑沢剤から構成されており、燃料はまだ含有していない。
【0014】
加えて、用語“潤滑油”またはその同義語が、最終潤滑製品、即ち、おそらく存在する機能性添加剤のすべてと、以下でみられるような、おそらくこれら機能性添加剤の1種である放射性トレーサーを含有した潤滑剤ベースを示すことも、留意すべきである。
【0015】
エンジンで燃料による潤滑油の希釈率を決定するための方法は、いかなる放射性トレーサーでも実施しうるわけではない。特に、それは下記パラグラフで記載された条件を満たさねばならない。
【0016】
放射性トレーサーはエンジンの働きを妨げたり、あるいは潤滑油または燃料の物理化学的性質を望ましくない方向に変えてはならない。この目的のために、それは特に潤滑油または燃料の他成分に対して化学的に不活性であるか、あるいはそれら成分のうち1種(例えば機能性添加剤)のものと類似して該成分と一部または完全に置き換われる機能を有していなければならない。
【0017】
放射性トレーサーは、正確で再現性のある測定を行えるほどの放射能を有していなければならない。放射性トレーサーの選択は、特に、採取されるオイルサンプルの量と、用いられる検出器の感度に関連している。換言すると、検出器がさほど高感度でなければ、オイルサンプルの放射能は高くなければならない(高放射能の放射性トレーサーまたは高濃度の比較的弱い放射能の放射性トレーサー)。他方、用いられる検出器が高感度であれば、オイルサンプルの放射能は比較的低くてもよい。
【0018】
最後に、放射性トレーサーは、エンジンのオイルシステムでその循環量が、プロセスの継続中ずっと、エンジンのオイルシステムで循環する潤滑油の量または燃料の量のいずれかと正比例するように選択されねばならない。
【0019】
この比例性は、放射性トレーサーおよびそれが最初に導入される液体媒体(潤滑油または燃料)の物理化学的性質に依存する。実際に、オイルサンプル(オイル/燃料混合物)中における潤滑油の量または燃料の量をいつでも反映するように、放射性トレーサーは、オイルまたは燃料が消費されるときに混合物中に蓄積したり、例えば蒸発、燃焼または熱分解で、オイルまたは燃料より速く消費されたり、エンジンのどこか、例えばオイルフィルターで捕捉されたりしてはいけない。
【0020】
上記のことから、放射性トレーサーが導入されて、それが量を反映しなければならない液体媒体のものとその物理化学的性質(揮発性、熱安定性、化学反応性)が適合するように、当業者は放射性トレーサーを選択する。特に、当業者であれば、エンジンで存在する温度および圧力条件にトレーサー/潤滑油混合物またはトレーサー/燃料混合物を付すことにより、所定媒体に適したトレーサーを見つけられるであろう。
【0021】
上記のように、本発明の方法は、原則として、放射性トレーサーでマーキングされた燃料またはマーキングされた潤滑油のいずれかで実施される。
【0022】
放射性燃料の使用は、比較的多量の上記燃料のマーキングと、放射性トレーサーを含有した燃料の燃焼産物の、排気ガス中への排出の制御を伴う。
【0023】
放射性潤滑剤の使用の場合には、容量が少なくて済み、排気ガス中へ生じうる排出は非常に限られ、オイルの消費に依存する。
【0024】
以下の記載では、最初に導入された放射性トレーサーを潤滑油が含有している態様について、本発明の方法が更に詳細に説明されている。
【0025】
使用可能な検出器は電離放射線(ベータ、Xまたはガンマ線)を検出するためのプローブであり、これは液体もしくは固体タイプ(ヨウ化ナトリウム結晶NaI(T1)、BGO結晶)または半導体タイプ(ゲルマニウム結晶、CZT結晶)いずれかのシンチレーションカウンターである。加えて、検出器は様々な放射性トレーサーの存在を同時に検出しうることに留意すべきである。オイルサンプルの放射能が高い場合(高放射能の放射性トレーサーまたは高濃度の弱放射能の放射性トレーサー)、検出器は高感度である必要はない。他方、オイルサンプルの放射能が高くない場合、検出器は高感度を必要とする。好ましくは、用いられる放射性トレーサーの量を制限するために、高検出効率の測定プローブ、例えば3×3インチのヨウ化ナトリウムタイプ結晶が用いられる。
【0026】
このタイプの検出器は、装置をビヒクルに載せられる可能性のある、コンパクト型で存在しうる。
【0027】
一般的に、試験されるエンジンのオイルシステムから、検出器にまたはその近くに置かれた固定容量測定室の方へ、オイルサンプルを運搬することが必要である。この“一時的サンプリング”、次いでオイルシステムへのこのサンプルの再導入は、好ましくは迂回路により行われる。エンジンの調整に関する実際的理由から、この迂回路は好ましくは低または無油圧で特徴付けられるオイルシステムのエリアに置かれる。
【0028】
次いで、検出器により検出されたシグナルは、燃料による潤滑油の希釈率を計算することを可能にする一連の手段により処理される。これらの手段として、特に、検出されたシグナルを処理する手段(例えば、増幅器、フィルターおよびアナログ/計数ADC変換器)、インパルスを処理する手段(例えば、マルチチャンネル分析器)および収集データを記憶および処理する手段、例えばパーソナルコンピューターがある。希釈率の計算に際して、コンピュータープログラムは、もちろん、半減期と直接関連した、放射性トレーサーの放射能の自然減少を考慮しなければならない。
【0029】
オイルサンプルの迂回、迂回サンプルの放射能の測定および結果の処理は、好ましくは、作動中の熱機関で連続的に行われる。
【0030】
本発明で用いうる放射性トレーサーは、放射性元素(放射性核種)の有機もしくは無機化合物、または元素形をとる放射性元素自体のいずれかである。しかしながら、潤滑油に及ぼす放射性トレーサーの物理化学的性質に関した上記事項を考慮すると、放射性トレーサーの分子状有機または無機形、特に有機形の方が、放射性核種の元素形と比べて好ましい。
【0031】
このように、放射性トレーサーは、上記条件(即ち、潤滑剤に対して不活性な特徴または潤滑剤の諸成分のうち1種との代替性、十分な放射能およびオイル/トレーサーの均整)を満たす有機もしくは無機化合物または元素の中から選択される。しかしながら、取扱いおよび環境保護に関連した明白な理由から、短い半減期、好ましくは3年以下、特に1年以下、更に好ましくは30日以下の半減期を有した放射性核種を含有するトレーサーが好ましくは選択される。そのため、長い半減期の放射性廃棄物の産出が避けられる。
【0032】
放射性核種の半減期は試験の予定期間と等しいかまたはそれより長いことが好ましい。コンピューターは、放射性崩壊の法則により、測定値を容易に補正しうる。
【0033】
適切な半減期(括弧内に記載)を有する放射性核種の例として以下が挙げられる:22Na(2.61年)、65Zn(243.8日)、45Ca(165日)、35S(87.2日)、32P(14.3日)、47Ca(4.54日)、99Mo(65.9時間)、82Br(35.3時間)、64Cu(12.7時間)、99mTc(6.01時間)、28Mg(20.91時間)、68Ge(270.95日)、69Ge(39時間)、77Ge(11.30時間)、85Sr(64.8日)および56Co(77.3日)
【0034】
これらの放射性トレーサーは一般的に核反応、特に活性化反応で、人工的に生産される。この活性化は当業者に周知の方法に従い、例えば不活性元素または該不活性元素を含有した化合物を中性子線源に曝すか、または粒子加速器から生じる加速イオンのビームに曝すことにより行われる。
【0035】
場合に応じて、不活性元素または該不活性元素を含有した化合物は、潤滑油または燃料へのそれらの配合前に、またはオイルまたは燃料内で、即ち活性化させる元素または化合物を含有したオイルまたは燃料を例えば中性子線または陽子ビームに曝すことにより活性化される。
【0036】
人工放射性核種を得る上で可能なオプションの1つは、不活性元素または該不活性元素を含有した化合物を適切な量のベクター(例えば溶媒またはオイルのような希釈液)に配合し、次いでこの混合物を活性化に付し、最後にそれを潤滑油または燃料へ加えることである。
【0037】
放射性トレーサーとしては、潤滑油または燃料で典型的に用いられる添加剤、例えば防錆剤、酸化防止剤、粘度を加減する剤、潤滑添加剤、色素、流動点を下げる添加剤、および清浄または分散添加剤がある。機能性添加剤として機能するこのような放射性トレーサーの例としては以下が挙げられる:ジチオリン酸亜鉛、カルシウムまたはマグネシウムスルホネート類、例えばアルキルスルホネート類、アリールスルホネート類、カルシウムまたはマグネシウムアルキルアリールスルホネート類、カルシウムフェノレート類、マグネシウムフェノレート類、カルシウムサリチレート類およびマグネシウムサリチレート類。
【0038】
しかしながら、エンジン潤滑システムで物理的または化学的機能を有しない放射性トレーサーの使用も全く適切である。
【0039】
本発明者は、潤滑油中への導入に際して特に興味ある放射性トレーサーがゲルマニウム‐69のある化合物であることを見出した。これらの化合物は、例えば、テトラアルキルゲルマニウム類の中から選択される。これらテトラアルキルゲルマニウム類の沸点はアルキル鎖の長さに比例しているため、混合物の沸点が用いられるオイルの蒸留範囲内に属するような長さのアルキル鎖を有利には有した、テトラアルキルゲルマニウム類の混合物が用いられる。例えば、テトラヘキシルゲルマニウム、テトラヘプチルゲルマニウムおよびテトラオクチルゲルマニウムは各々、伝統的エンジン潤滑剤のものに匹敵した沸点を有している。
【実施例】
【0040】
例1
閉鎖オイル系でディーゼル油による潤滑油の希釈率の連続モニタリング
図1は、この例で記載された方法を行うために用いられる実験装置を示している。流速が3L/分であるポンプ(2)を用いて、15W40鉱物タイプ潤滑油(TOTALブランド)5.5Lの容量を閉鎖系で循環させる。該オイルは放射性トレーサーを含有している。この例で用いられているトレーサーは、水溶液中過テクネチウム酸ナトリウム(Na99mTcO)形の99mTcである。この放射性トレーサーの特徴は次の通りである:140keVでガンマ放射、89%の放射強度および6時間の半減期。潤滑油中への該水溶液の配合を促進するために、ブランド名“Bardahl Water Dispersant”で販売されている水分散剤を用いる。
【0041】
閉鎖系は、内燃機関のケーシングに似せた温度調節可能なオイルリザーバー(1)、および分析室を構成するキャパシティ1Lの二重壁シリンダー(3)を連結して含んでなり、この容量は採取されるオイルサンプルのものである。オイルの温度は70℃に維持される。温度がサーモスタットグループ(5)により30℃で安定化される集積光電子増倍管を装備した、サイズ7.62×7.62cm(3×3インチ)の標準ヨウ化ナトリウムNaI(T1)検出器(4)が、分析室の中央に置かれている。該検出器は、放射性トレーサーにより放射される140keVガンマ線に感受性であり、Canberraモデル2007P前置増幅器、Canberraモデル2020分光増幅器、Canberraモデル8087ADC変換器およびCanberraモデルS100マルチチャンネルカードから構成されるデータ捕捉プロセッシングシステム(6)へ接続されている。この例で用いられているソフトウェアは“IDSWear”という名称で通用しており、カナダに本拠をおくAtlantic Nuclear Services(ANS)から販売されている。このソフトウェアによれば、99mTcのシグナル特徴が存在する100keVから180keVに及ぶエネルギーの枠内において、検出器の計数率の時間的経過をたどることができる。
【0042】
5.5Lの潤滑油を1MBqの99mTcでマーキングしたところ、未希釈オイルに関して記録された初期計数率は9020カウント/秒であり、これは分析室に含有されたオイルL当たりの活性に相当する。50分、95分および120分間後に、各々55mlの燃料、200mlの燃料および200mlの燃料(ディーゼル油、欧州標準)をオイルリザーバーへ加えるが、これは各々0.99容量%、4.4容量%および7.6容量%の希釈に相当する。
【0043】
図2は、分析室レベルの計数率(薄灰色ドット)およびオイル/ディーゼル油混合物中ディーゼル油による潤滑油の希釈(黒ドット)の経過を、時間の関数として一緒に示している。希釈曲線を比例法則に従い計数率の測定値からソフトウェアにより計算する:初期計数率は0容量%の希釈に相当し、一方ゼロ計数率は100容量%の希釈に相当する。
【0044】
この例は、検出器により測定された計数率が、測定不確実性の限界内で、燃料(ディーゼル油)の混入による希釈率を正確に反映していることを示している。
【0045】
例2
ディーゼルエンジンでディーゼル油による潤滑油の希釈率の連続モニタリング
この例で、ディーゼルエンジンテストベンチは低流速オイル迂回システムを装備している。このシステムでは、オイルパンから検出器の方へ潤滑剤を連続サンプリングしてから、それをエンジンへ戻すことができる。実験装置は例1のものと実質的に同一であるが、但しオイルリザーバーがディーゼルエンジンに置き換わっている。この試験では、ディーゼル油による希釈を行わせるためにディーゼルエンジンを典型的方式により低負荷および低速で作動させた:1500rpm、8.2kWの仕事率および80℃の油温。
【0046】
この例で用いられているトレーサーは、オイルの蒸留範囲の中間にある沸点(約450℃)で、オイルに可溶性の、有機化合物の形をとる、ゲルマニウム‐69(Ge‐69)である。トレーサーは5Lのオイル中1MBqの濃度で用いる。この放射性トレーサーの特性は次の通りである:
‐511keV(47%)、574keV(13%)、871keV(12%)、1106keV(36%)および1336keV(5%)でガンマ放射
‐39時間の半減期
【0047】
未希釈オイルに関して記録された初期計数率は約950カウント/秒である。この計数率は各測定ポイントで0.6%程度の統計誤差を伴う。
【0048】
この例で用いられているエンジンは4気筒コモンレール直接噴射式ディーゼルエンジンである。
【0049】
連続測定と平行して、潤滑剤の少量サンプルを規則的間隔で採取し、ディーゼル油によるオイルの希釈率を伝統的気相クロマトグラフィー法(DIN51380標準)で決定する。
【0050】
図3の曲線は、放射性トレーサー検出システムによりオイルパンで連続測定された(連続線)および気相クロマトグラフィーにより規則的間隔で測定された(黒四角)、ディーゼル油によるオイルの希釈率(%表示)の経過を示している。本発明の方法による希釈率の連続測定は、現行技術水準の不連続測定法と完全に対等であることが観察される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】
【図2】
【図3】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料による潤滑油の希釈率を決定する方法であって、
潤滑油または燃料を放射性トレーサーでマーキングし、
オイルサンプルの放射能を、放射性トレーサーにより放射される放射線に感受性である検出器を用いて測定し、そして、
これらの測定の結果を、これらの結果から燃料による潤滑油の希釈率を計算するコンピューターへ伝達する、方法。
【請求項2】
潤滑油が放射性トレーサーを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃料が放射性トレーサーを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
放射能が測定されるオイルサンプルが検出器の方へ運搬され、次いで迂回路によりエンジンのオイルシステムへ再注入される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
無または低油圧下にあるエンジンのオイルシステムのエリアから、迂回路によりオイルシステムを採取する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
放射性トレーサーが、放射性元素の有機または無機化合物、好ましくは放射性元素の有機化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
放射性元素が、3年以下、好ましくは1年以下、特に30日以下の半減期を有している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
放射性元素が、22Na、65Zn、45Ca、35S、32P、47Ca、99Mo、82Br、64Cu、99mTc、28Mg、68Ge、69Ge、77Ge、85Srおよび56Coの中から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
放射性トレーサーが、69Geを含有したテトラアルキルゲルマニウム類の中から、好ましくはテトラヘキシルゲルマニウム類、テトラヘプチルゲルマニウム類およびテトラオクチルゲルマニウム類またはそれらの混合物の中から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
検出器が電離放射線検出プローブである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
内燃機関の燃料による潤滑油の希釈率をモニターするための装置であって、
潤滑油で潤滑化され、空気/燃料混合物が供給され、潤滑油または燃料のいずれかが放射性トレーサーを含有している内燃機関と、
エンジンのオイルシステムからオイルサンプルの、連続的または不連続的な、一時的サンプリングおよび再注入を行わせる手段と、
この一時的サンプリングおよび再注入を行わせる手段のすぐ近くにある、オイルサンプル中に存在する放射性トレーサーから放射される放射線に感受性の検出器と、
オイルサンプルの放射能の測定の上記検出器により得られた結果から、燃料による潤滑油の希釈率を計算するようにプログラムされた、上記検出器へ接続されたコンピューターと
を備えた、装置。
【請求項12】
潤滑油が放射性トレーサーを含有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
燃料が放射性トレーサーを含有する、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
オイルサンプルの、連続的または不連続的な、一時的サンプリングおよび再注入を行わせる手段が、迂回路である、請求項11または12に記載の装置。
【請求項15】
無または低油圧下にあるエンジンのオイルシステムのエリアで、迂回路がオイルサンプルをサンプリングおよび再注入する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
放射性トレーサーが、放射性元素の有機または無機化合物、好ましくは放射性元素の有機化合物である、請求項11〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
放射性元素が、3年以下、好ましくは1年以下、特に30日以下の半減期を有している、請求項11〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
放射性元素が、22Na、65Zn、45Ca、35S、32P、47Ca、99Mo、82Br、64Cu、99mTc、28Mg、68Ge、69Ge、77Ge、85Srおよび56Coの中から選択される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
放射性トレーサーが、69Geを含有したテトラアルキルゲルマニウム類の中から、好ましくはテトラヘキシルゲルマニウム類、テトラヘプチルゲルマニウム類およびテトラオクチルゲルマニウム類またはそれらの混合物の中から選択される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
検出器が電離放射線検出プローブである、請求項11〜19のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−522442(P2007−522442A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546233(P2006−546233)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/FR2004/003276
【国際公開番号】WO2005/071403
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(505036674)トータル・フランス (39)
【氏名又は名称原語表記】TOTAL FRANCE
【Fターム(参考)】