説明

内燃機関における可変バルブタイミングの制御システム

【課題】電磁クラッチ又は電動モータを動力源とするVVTは内燃機関からVVTを駆動させるための電力を得ているため、常に通電していると内燃機関の効率が低下し、燃費が悪化する。
【解決手段】吸気又は排気バルブの反力による吸気又は排気カムシャフトの位相変化を防止するロック機構を有した可変バルブタイミング機構において、可変バルブタイミング機構は電磁クラッチを用いた電磁可変バルブタイミング機構とし、エンジンには吸気カム又は/及び排気カムの角度を検出するカム角センサを備え、可変バルブタイミング機構はカム角センサの検出結果に基づいたカムトルクが負となるカム角度の範囲内で動作に必要な電力のみ通電され、動作する。また、前記可変バルブタイミング機構の実際の動作がカム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構の動作より遅い場合、カム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構への通電パルスを拡張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関における可変バルブタイミング機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関において、吸気側及び排気側にそれぞれ可変バルブタイミング機構(以下「VVT」)が備えられ、ポンピングロスの低減等、内燃機関の効率を向上させて省燃費を実現している。このようなVVTには動力源に電磁クラッチ又は電動モータを用いて構成されるものが提案されているが、電磁クラッチ又は電動モータを動力源とするVVTは内燃機関からVVTを駆動させるための電力を得ている。即ち常に電磁クラッチ又は電動モータに通電していると内燃機関の効率が低下し、燃費が悪化するため、バルブ反力等によってカムシャフトの位相が変化することを防止するロック機構を備え、位相変位後に電磁クラッチの通電を切るVVTが提案されており、この代表的な例として、例えば特開2009−209746号公報(以下「特許文献1」)が知られている。
【0003】
上記特許文献1において、クランクシャフトによって回転駆動する駆動回転体と、該駆動回転体の前方に配置され、カムシャフトに一体化された中間回転体と、該中間回転体の前方に配置した制御回転体を互いに相対回動可能に同一の回動中心軸上に配置し、回動操作力付与手段によって前記制御回転体に回動操作力を付与することにより、前記中間回転体と駆動回転体を相対回動させることによって前記カムシャフトと駆動回転体との位相角を変更するエンジンの位相可変装置であって、前記位相可変装置は、前記回動中心軸を中心とした円周に対して傾斜する曲線溝として前記制御回転体に設けられた、第一ガイド溝と、半径方向に対して傾斜する溝として、前記中間回転体上に設けられた傾斜ガイド溝と、前記回動中心軸を中心とした円周に対して傾斜する曲線溝として、前記駆動回転体上に設けられた第二ガイド溝と、前記第一ガイド溝の曲線方向に沿った長手状に形成され、係合する前記第一ガイド溝に沿って変位するブロック部と、該ブロック部から突出し、係合する前記傾斜ガイド溝に沿って変位する第一スライド部材と、前記ブロック部から前記中間回転体上に設けられた逃げ溝に挿通し、係合する前記第二ガイド溝に沿って変位する第二スライド部材を有する位相変換部材を備えた。
【0004】
また、制御回転体は、回動操作力付与手段によって制動されると中間回転体に対して回転遅れを生じる。位相変換部材は、ブロック部が円周方向に傾斜する曲線状の第一ガイド溝に沿って変位することにより制御回転体の半径方向に移動する。さらに、カムシャフトと一体化された中間回転体は、位相変換部材の第一スライド部材が係合する傾斜ガイドに沿って変位し、第二スライド部材が係合する曲線状の第二ガイド溝に沿って半径方向かつ円周方向に変位することにより、第二ガイド溝の形状に基づいて駆動回転体に対して相対回動し、カムシャフトとクランクシャフトで駆動する駆動回転体の位相角が変換される。
【0005】
また、バルブスプリングから反力を受けてカムシャフトに外乱が発生すると、前記位相変換部材が変位不能に固定されることにより、中間回転体と駆動回転体を相対回動不能にし、カムシャフトとクランクシャフトによって駆動する駆動回転体と間に発生する予期せぬ位相変換を防止するセルフロック機能を備えているエンジンの位相可変装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−209746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の可変バルブタイミング機構では次のような問題が生じている。即ち、特許文献1の位相可変装置では、外乱が発生すると、カムシャフトに一体化された中間回転体は、制御回転体と駆動回転体に対して相対回動する回転トルクを受ける。その際、第一スライド部材は、係合する傾斜ガイド溝から各回転体の略半径方向の力を受け、第二スライド部材は、係合する第二ガイド溝から略半径方向成分の力であって、第一スライド部材と逆向きの力を受ける。位相変換部材のブロック部は、第一及び第二スライド部材から各回転体の半径方向に対して互いに逆向きの力を受けて、係合する第一ガイド溝の内部においてひねられるため、第一ガイド溝の内周の両側面に押し付けられ、両側面から摩擦力を受けることにより、第一ガイド溝内部において変位不能に固定される。また、コイルバネの代わりに電磁クラッチを用いて位相角を戻すことによりコイルバネの付勢力を考慮する必要が無くなるため、位相変位後に電磁クラッチの通電を切ることが可能になると記載されているが、この具体的な制御内容についての記載がない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、電磁クラッチ又は電動モータを駆動源とする可変バルブタイミング機構において、可変バルブタイミング機構の消費電力低減を行うことで内燃機関から得ている電力を低減し、内燃機関の燃費を向上させることができる可変バルブタイミング機構の制御システムを提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は次のような構成とする。即ち、請求項1の発明において、複数の気筒を有したエンジンと、当該エンジンに形成されたシリンダへ供給する空気と燃料の混合気の量を調整する吸気バルブと、当該シリンダから排出する排気ガスの量を調整する排気バルブを備え、前記エンジンには当該吸気バルブの開閉動作を行う吸気カムを有した吸気カムシャフトと、当該排気バルブの開閉動作を行う排気カムを有した排気カムシャフトを備え、当該吸気カムシャフト又は/及び当該排気カムシャフトに前記吸気又は排気バルブの反力による前記吸気又は排気カムシャフトの位相変化を防止するロック機構を有した可変バルブタイミング機構を備えている内燃機関における可変バルブタイミングの制御システムにおいて、前記エンジンには前記吸気カム又は/及び前記排気カムの角度を検出するカム角センサを備え、前記可変バルブタイミング機構は当該カム角センサの検出結果に基づいたカムトルクが負となるカム角度の範囲内で動作に必要な電力のみ通電され、動作することを特徴とる可変バルブタイミングの制御システムとする。
【0010】
上記構成においては、前記可変バルブタイミング機構の実際の動作がカム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構の動作より遅い場合、カム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構への通電パルスを拡張してもよい。また、拡張した通電パルスによる前記可変バルブタイミング機構の動作がカム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構の動作より遅い場合、前記可変バルブタイミング機構を初期位相に戻してもよいし、拡張した通電パルスによる前記可変バルブタイミング機構の動作がカム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構の動作より遅い場合、前記可変バルブタイミング機構の動作量を前記エンジンの燃焼を安定させる方向に制御してもよい。さらに、前記カム角センサの代わりに前記エンジンに備えられたピストンの上下運動を回転運動に変換するクランクの角度を検出するクランク角センサを備えてもよい。
【0011】
また、前記可変バルブタイミング機構は電磁クラッチを用いた電磁可変バルブタイミング機構としてもよいし、前記可変バルブタイミング機構は電動モータを用いた電動可変バルブタイミング機構としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記の通り、ロック機構を有した可変バルブタイミング機構において、エンジンには吸気カム又は/及び排気カムの角度を検出するカム角センサを備え、可変バルブタイミング機構はカム角センサの検出結果に基づいたカムトルクが負となるカム角度の範囲内で動作に必要な電力のみ通電され、動作することで、可変バルブタイミング機構の消費電力が低減されるため、内燃機関から得ている電力も低減し、内燃機関の燃費を向上させることができる可変バルブタイミング機構の制御システムが実現できる。
【0013】
また、エンジンの回転数や個体差、経年劣化等の原因により可変バルブタイミング機構の実際の動作がカム角度から算出した可変バルブタイミング機構の動作より遅い場合が生じるが、カム角度から算出した可変バルブタイミング機構への通電パルスを拡張することで安定した可変バルブタイミング機構を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例とする内燃機関の斜視図である。
【図2】第1の実施例とする内燃機関の気筒の断面図である。
【図3】第1の実施例とする吸気側及び排気側電磁可変バルブタイミング機構の分解斜視図である。
【図4】(A)は3気筒エンジンにおける燃焼行程を示す図、(B)は吸気カムシャフトに掛かるカムトルクを示すタイムチャート、(C)は吸気側電磁可変バルブタイミング機構への通電を示すタイムチャートである。
【図5】(D)は3気筒エンジンにおける燃焼行程を示す図、(E)は排気カムシャフトに掛かるカムトルクを示すタイムチャート、(F)は排気側電磁可変バルブタイミング機構への通電を示すタイムチャートである。
【図6】第1の実施例とする吸気側及び排気側電磁可変バルブタイミング機構の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を示す実施例を図1乃至図6に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例とする内燃機関の斜視図を図1に、内燃機関の気筒の断面図を図2に、吸気側及び排気側電磁可変バルブタイミング機構の分解斜視図を図3に、(A)は3気筒エンジンにおける燃焼行程を示す図、(B)は吸気カムシャフトに掛かるカムトルクを示すタイムチャート、(C)は吸気側電磁可変バルブタイミング機構への通電を示すタイムチャートを図4に、(D)は3気筒エンジンにおける燃焼行程を示す図、(E)は排気カムシャフトに掛かるカムトルクを示すタイムチャート、(F)は排気側電磁可変バルブタイミング機構への通電を示すタイムチャートを図5に、吸気側及び排気側電磁可変バルブタイミング機構の動作を示すフローチャートを図6にそれぞれ示す。
【0017】
図1及び図2において、内燃機関のエンジン10は図示しないエンジンブロックに直列に形成された3つのシリンダ14にピストン16を配置した直列3気筒エンジンとしている。また、当該エンジン10の1気筒12に対して当該シリンダ14内に燃料と空気の混合気を供給する吸気管26と、当該シリンダ14内からの排気ガスを排出する排気管36と、当該シリンダ14内の混合気に着火させる点火プラグ19を備えている。さらに、当該吸気管26内には燃料を噴射するための燃料噴射装置50を備えている。
【0018】
また、前記吸気管26には前記シリンダ14内への混合気の量を調整する吸気バルブ20を前記気筒12毎に2本ずつ合計6本備え、前記エンジン10には当該吸気バルブ20の開閉動作を行う吸気カム22を有した吸気カムシャフト24を備え、当該吸気カム22が回転することで当該吸気バルブ20が押し開かれる。さらに、当該吸気カムシャフト24は3つの前記気筒12に備えられた全ての当該吸気バルブ20の開閉動作を行う構成とする。
【0019】
また、前記排気管36には前記シリンダ14内からの排気ガスの量を調整する排気バルブ30を前記気筒12毎に2本ずつ合計6本備え、前記エンジン10には当該排気バルブ30の開閉動作を行う排気カム32を有した排気カムシャフト34を備え、当該排気カム32が回転することで当該排気バルブ30が押し開かれる。さらに、当該排気カムシャフト34は3つの前記気筒12に備えられた全ての当該排気バルブ30の開閉動作を行う構成とする。
【0020】
また、前記エンジン10には前記ピストン16の上下運動を回転運動に変換するクランク18とクランクシャフト17を備え、当該クランクシャフト17はタイミングベルト15を介して前記吸気カムシャフト24及び前記排気カムシャフト34を駆動させている。さらに、前記吸気カムシャフト24には吸気側電磁可変バルブタイミング機構40(以下「吸気側電磁VVT」)と前記排気カムシャフト34には排気側電磁可変バルブタイミング機構42(以下「排気側電磁VVT」)を備え、当該吸気側電磁VVT40及び当該排気側電磁VVT42は当該タイミングベルト15と接続されている。
【0021】
また、エンジンルームには前記クランク18の角度を検出するクランク角センサ52と、前記エンジン10における電気的な制御を行うECU54を備えている。さらに、当該ECU54は当該クランク角センサ52の検出したクランク角度に基づいて前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42へ制御信号を供給している。
【0022】
次に、吸気側電磁VVT及び排気側電磁VVTの構成を図3に基づいて説明する。
【0023】
図3において、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42は第2の電磁クラッチ62の外周に第1の電磁クラッチ60を配置し、当該第1の電磁クラッチ60及び当該第2の電磁クラッチ62の同軸後方にセンターシャフト76が配置され、当該センターシャフト76は前記吸気カムシャフト24又は前記排気カムシャフト34とそれぞれ固定されている。また、当該センターシャフト76の外周に第1制御プレート64及び第2制御プレート66、中間プレート70、駆動プレート74が配置され、当該第1制御プレート64と当該第2制御プレート66の間にギア68を配置し、当該第1制御プレート64と当該中間プレート70の間にロックプレート72を配置している。さらに、当該第2制御プレート66は当該センターシャフト76に固定されることで構成されている。
【0024】
また、前記第1の電磁クラッチ60及び前記第2の電磁クラッチ62に通電されない状態において、前記第2制御プレート66及び前記第1制御プレート64、前記駆動プレート74は前記センターシャフト76の回転方向と同様に矢印ア方向に回転する。さらに、前記第1の電磁クラッチ60に通電すると、前記第1制御プレート64は前記センターシャフト76及び前記中間プレート70の回転方向に対して矢印イ方向に回転するため、前記駆動プレート74に対する前記中間プレート70の位相角は矢印イ方向に遅角されている。
【0025】
また、前記第2の電磁クラッチ62に通電すると、前記第2制御プレート66は前記センターシャフト76及び前記第1制御プレート64の回転方向に対して矢印イ方向に回転し、前記第1制御プレート64は前記ギア68が矢印イ方向に回転することによって前記中間プレート70に対して矢印ア方向に回転するため、前記駆動プレート74に対する前記中間プレート70の位相角は矢印ア方向に進角されている。
【0026】
また、前記中間プレート70に対して前記吸気カム22又は前記排気カム32に掛かるカムトルクが入力されると前記ロックプレート72が固定され、前記中間プレート70は前記駆動プレート74に対してロックされるため、前記中間プレート70と前記駆動プレート74の位相は保持される。
【0027】
次に、3気筒エンジンにおける吸気カムに掛かるカムトルクと吸気側電磁VVTの通電を図4に基づいて説明する。
【0028】
図4において、(A)は3気筒エンジンの前記気筒12毎の燃焼行程を示しており、前記エンジン10は前記クランクシャフト17が180度毎に1行程を終了し、720度で1サイクルを終了する。また、(B)は前記吸気カムシャフト24に掛かるカムトルクの波形を示しており、前記吸気カムシャフト24の回転により前記吸気バルブ20が下死点に到達するまでは前記吸気バルブ20に備えられたバルブスプリング21を押し下げる正のカムトルクが前記吸気カム22に生じ、前記吸気バルブ20が下死点を通過後は当該バルブスプリング21によって押し戻される負のカムトルクが前記吸気カム22に生じる。さらに、前記エンジン10の各行程は前記気筒12毎に60度ずつ間隔が空いているため、前記各気筒12の吸気行程間は前記吸気カム22に負荷が掛かっていない。
【0029】
また、(C)は前記吸気側電磁VVT40への通電のオン・オフのパルス波形が示されており、前記クランク角センサ52が検出したクランク角度から(B)の波形で示される前記吸気カムシャフト24に掛かるカムトルクが負となるクランク角度の範囲内のみ通電をしている。
【0030】
次に、3気筒エンジンにおける排気カムに掛かるカムトルクと排気側電磁VVTの通電を図5に基づいて説明する。
【0031】
図5において、(D)は3気筒エンジンの前記気筒12毎の燃焼行程を示しており、前記エンジン10は前記クランクシャフト17が180度毎に1行程を終了し、720度で1サイクルを終了する。また、(E)は前記排気カムシャフト34に掛かるカムトルクの波形を示しており、前記排気カムシャフト34の回転により前記排気バルブ20が下死点に到達するまでは前記排気バルブ30に備えられたバルブスプリング31を押し下げる正のカムトルクが前記排気カム32に生じ、前記排気バルブ30が下死点を通過後は当該バルブスプリング31によって押し戻される負のカムトルクが前記排気カム32に生じる。さらに、前記エンジン10の各行程は前記気筒12毎に60度ずつ間隔が空いているため、前記各気筒12の排気行程間は前記排気カム32に負荷が掛かっていない。
【0032】
また、(F)は前記排気側電磁VVT42への通電のオン・オフのパルス波形が示されており、前記クランク角センサ52が検出したクランク角度から(E)の波形で示される前記排気カムシャフト34に掛かるカムトルクが負となるクランク角度の範囲内のみ通電をしている。
【0033】
次に、吸気側電磁VVT及び排気側電磁VVTの動作を図6に基づいて説明する。
【0034】
図6において、前記クランク角センサ52によって前記クランク18の角度を検出し(S1)、ステップ1で検出されたクランク角度から前記エンジン10においての図4(B)に示した前記吸気カムシャフト24に掛かるカムトルク及び図5(E)に示した前記排気カムシャフト34に掛かるカムトルクが負となるクランク角度の範囲を算出し(S2)、ステップ1で算出したクランク角度から前記エンジン10の燃焼状態に必要な前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の動作量を算出し(S3)、ステップ2で算出されたカムトルクが負となるクランク角度の範囲内で、ステップ3で算出された前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の動作に必要な電力を通電する(S4)。
【0035】
また、前記ECU54は前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の実際の動作がステップ4で算出した前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の通電期間で動作より遅れるかの識別を行い(S5)、ステップ5で前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の通電期間で動作が遅れていると判定された場合、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の動作が遅れている方への通電パルスをステップ4で算出した前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の動作に必要な通電パルスより拡張させたパルスで通電する(S6)。さらに、前記ECU54はステップ6で実施した前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の動作が前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の動作に必要な通電パルスより拡張させた通電パルスでの動作より遅れるかの識別を行い(S7)、ステップ7で前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の動作に必要な通電パルスより拡張させた通電パルスでの動作が遅れていると判定された場合、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42は前記エンジン10の燃焼状態に応じて前記エンジン10の燃焼が安定するように前記吸気カムシャフト24及び前記排気カムシャフト34の位相を制御する(S8)。
【0036】
なお上記実施例1の変形例として、前記エンジン10は前記吸気カムシャフト24又は前記排気カムシャフト34のどちらか一方に可変バルブタイミング機構を備える構成としてもよい。また、前記エンジン10は3気筒以外の気筒数を有した前記エンジン10としてもよいし、ディーゼルエンジンとしてもよい。さらに、前記クランク角センサ52の代わりにカム角センサを用いて前記吸気カム22又は/及び前記排気カム32の角度を検出し、カム角度から前記エンジン10においての図4(B)に示した前記吸気カムシャフト24に掛かるカムトルク及び図5(E)に示した前記排気カムシャフト34に掛かるカムトルクが負となるカム角度の範囲の算出及びカム角度から前記エンジン10の燃焼状態に必要な前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の動作量の算出を行ってもよい。
【0037】
また、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の実際の動作が前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の通電期間で動作より遅れると判断された場合の前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42を初期位相に戻してもよい。さらに、前記エンジン10の燃焼状態に応じて前記エンジン10の燃焼が安定するように前記吸気カムシャフト24及び前記排気カムシャフト34の位相を制御する際の前記エンジン10の燃焼状態を判定する方法としては、例えば前記エンジン10の燃焼時に前記シリンダ14内に発生するイオン電流を検出して判定してもよいし、前記エンジン10の燃焼時における前記シリンダ14内の圧力を検出して判定してもよい。
【0038】
また、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42は前記第2の電磁クラッチ62の代わりにコイルスプリングを用いた構造としてもよいし、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の構成は設計事情によって任意に変更してもよい。さらに、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の代わりに電動モータを用いた電動可変バルブタイミング機構としてもよい。
【0039】
また、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の前記バルブスプリング21,31からのカムトルクに対する固定構造は、例えばアクチュエータを用いてロックピンを作動させる方法等任意の構造に変更してもよい。さらに、前記ECU54は前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の実際の動作が前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の動作に必要な通電パルスより拡張させた通電パルスでの動作より遅れていると判定した場合の前記エンジン10の燃焼を安定させる方法として、例えば前記点火プラグ19からの放電のタイミングを変更してもよいし、前記燃料噴射装置50から噴射させる燃料の量を変更してもよい。
【0040】
また、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42に通電する範囲は図4(C)及び図5(F)に示されるパルス波形の範囲内であれば任意に変更してもよい。さらに、前記クランク角センサ52が検出したクランク角度から算出されるカムトルクが負となるクランク角度の範囲は、前記エンジン10の回転数や個体差、経年劣化等による要素から補正をかけてもよい。
【0041】
また、前記吸気側電磁VVT40及び前記排気側電磁VVT42の制御をそれぞれ個別のECUで行い、前記吸気側電磁VVT40又は前記排気側電磁VVT42の動作の遅れる方に対して個別に制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10:エンジン
12:気筒
14:シリンダ
15:タイミングベルト
16:ピストン
17:クランクシャフト
18:クランク
19:点火プラグ
20:吸気バルブ
21:バルブスプリング
22:吸気カム
24:吸気カムシャフト
26:吸気管
30:排気バルブ
31:バルブスプリング
32:排気カム
34:排気カムシャフト
36:排気管
40:吸気側電磁可変バルブタイミング機構(吸気側電磁VVT)
42:排気側電磁可変バルブタイミング機構(排気側電磁VVT)
50:燃料噴射装置
52:クランク角センサ
54:ECU
60:第1の電磁クラッチ
62:第2の電磁クラッチ
64:第1制御プレート
66:第2制御プレート
68:ギア
70:中間プレート
72:ロックプレート
74:駆動プレート
76:センターシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有したエンジンと、当該エンジンに形成されたシリンダへ供給する空気と燃料の混合気の量を調整する吸気バルブと、当該シリンダから排出する排気ガスの量を調整する排気バルブを備え、
前記エンジンには当該吸気バルブの開閉動作を行う吸気カムを有した吸気カムシャフトと、当該排気バルブの開閉動作を行う排気カムを有した排気カムシャフトを備え、
当該吸気カムシャフト又は/及び当該排気カムシャフトに前記吸気又は排気バルブの反力による前記吸気又は排気カムシャフトの位相変化を防止するロック機構を有した可変バルブタイミング機構を備えている内燃機関における可変バルブタイミングの制御システムにおいて、
前記エンジンには前記吸気カム又は/及び前記排気カムの角度を検出するカム角センサを備え、
前記可変バルブタイミング機構は当該カム角センサの検出結果に基づいたカムトルクが負となるカム角度の範囲内で動作に必要な電力のみ通電され、動作することを特徴とる可変バルブタイミングの制御システム。
【請求項2】
前記可変バルブタイミング機構の実際の動作がカム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構の動作より遅い場合、カム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構への通電パルスを拡張することを特徴とする請求項1に記載の可変バルブタイミングの制御システム。
【請求項3】
拡張した通電パルスによる前記可変バルブタイミング機構の動作がカム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構の動作より遅い場合、前記可変バルブタイミング機構を初期位相に戻すことを特徴とする請求項2に記載の可変バルブタイミングの制御システム。
【請求項4】
拡張した通電パルスによる前記可変バルブタイミング機構の動作がカム角度から算出した前記可変バルブタイミング機構の動作より遅い場合、前記可変バルブタイミング機構の動作量を前記エンジンの燃焼を安定させる方向に制御することを特徴とする請求項2に記載の可変バルブタイミングの制御システム。
【請求項5】
前記カム角センサの代わりに前記エンジンに備えられたピストンの上下運動を回転運動に変換するクランクの角度を検出するクランク角センサを備えることを特徴とする請求項1乃至4に記載の可変バルブタイミングの制御システム。
【請求項6】
前記可変バルブタイミング機構は電磁クラッチを用いた電磁可変バルブタイミング機構であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の可変バルブタイミングの制御システム。
【請求項7】
前記可変バルブタイミング機構は電動モータを用いた電動可変バルブタイミング機構であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の可変バルブタイミングの制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83155(P2013−83155A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221454(P2011−221454)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】