説明

内燃機関のスロットルバルブ制御装置

【課題】
従来技術においては、樹脂成形による剛性向上技術があるが、この場合スロットルバルブ外径寸法精度はこれまでの外周の加工精度よりは悪化するため、スロットルバルブとボアとの隙間が増加し、結果としてエンジンへ吸入する空気流量が多くなることになる。内燃機関のスロットルバルブ制御装置の最小空気流量の低減を達成する。
【解決手段】
本発明は上記目的を達成するため、スロットルバルブ2の下流側の剛性を向上させ、スロットルバルブ2の撓み量減らす、つまり変形し難くくすることで開口面積が出来るだけ変化しない様にし、結果として内燃機関に吸入される最小空気流量を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関のスロットルバルブ制御装置に関し、例えば制御信号に基づきモータを駆動してスロットルバルブを開閉制御する電子制御スロットル装置に用いられる。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のスロットルバルブ制御装置は、通常スロットルバルブシャフトにスロットルバルブを固定し、このスロットルバルブシャフトを回転させることでスロットルバルブも回転し、吸気管とスロットルバルブの間に形成される吸気通路面積を変化させ内燃機関へ供給される吸入空気量を制御する。
【0003】
通常、スロットルバルブはスロットルバルブを有する吸気管に金属若しくは樹脂成形された1枚の平板で構成される。また、スロットルバルブと吸気管が接触して噛付くのを防止する目的で、スロットルバルブは特定の角度傾いた位置に制御上の全閉位置が形成されている。その角度に合わせて、吸気管の内壁面に対面するスロットルバルブの外周面を機械加工あるいは型成形して、特定の隙間を形成している。制御状態時は、スロットルバルブと吸気管の噛付きが発生しないように、例えばアイドル開度,退避走行開度まで開かせている。
【0004】
特開2004−132236号公報にはスロットルバルブが全閉位置から開く際に吸気流の下流側に移動する下流側半分の上面に吸気流を整流する整流フィンを一体に樹脂成形したものが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−132236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今の環境問題の要求で、車輌から排出される排気ガスを低減する課題がある。その排気ガスの低減させる手段の一つに燃費の向上がある。燃費向上のためにスロットルバルブ制御装置への要求として、エンジン回転数を低減するには、スロットルバルブから内燃機関に供給する空気流量の低減を達成する課題がある。
【0007】
エンジンからの吸入負圧、あるいは上流側からの過給機で加圧される場合、スロットルバルブに圧力が印加されスロットルバルブが撓む。とりわけ、スロットルバルブの下流側が撓むとスロットルバルブは吸気管から離れるため、撓み量が増加するとスロットルバルブと開口面積が増加し、結果としてエンジンへ吸入する空気流量が多くなることになる。
【0008】
従来技術においては、樹脂成形による剛性向上技術があるが、この場合スロットルバルブ外径寸法精度はこれまでの外周の加工精度よりは悪化するため、スロットルバルブとボアとの隙間が増加し、結果としてエンジンへ吸入する空気流量が多くなることになる。
【0009】
本発明の目的は内燃機関に吸入される最小空気流量を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、スロットルバルブのスロットルシャフトより下流側に位置する部分の剛性を上流側に位置する部分の剛性よりも向上させ、スロットルバルブの撓み量を減らす、つまり変形し難くくすることで開口面積が出来るだけ変化しない様にして、結果として内燃機関に吸入される最小空気流量を低減させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内燃機関のスロットルバルブ制御装置の最小空気流量を低減したモータ駆動式のスロットルバルブ制御装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施形態の第1実施例にかかるスロットルバルブをガソリンエンジン用のモータ駆動式スロットルバルブ制御装置に適用した例であり、部品構成について本図1にて説明する。
【0014】
アルミダイカスト製のスロットルバルブ組体(以下スロットルボディと呼ぶ)6には吸気通路1(以下ボアと呼ぶ)とモータ20収納用のモータハウジング20Aが一緒に成型されている。
【0015】
スロットルボディ6にはボア1の一つの直径線に沿って金属製の回転軸(以下スロットルバルブシャフトと呼ぶ)3が配置されている。スロットルバルブシャフト3の両端はシャフトの回転を受ける軸受9,10に支持されている。軸受9,10はスロットルボディ6に設けた軸受ボス部7,8に圧入固定されており、スロットルバルブ2の作動は、モータ20の回転力をモータギア22から中間ギア23を介してスロットルギア13に伝達される。スロットルギア13は、スロットルバルブシャフト3に固定されているため、モータ20の回転力が、前記ギアを介しスロットルバルブシャフト3上に固定されたスロットルバルブ2を回転作動させることにより空気流量を制御する。
【0016】
スロットルバルブ2には、エンジンの吸入空気による圧力差が生じるため、より強度を上げることで、スロットルバルブ2の撓み量を小さくすることが可能である。
【0017】
図2は本発明の実施形態の第1実施例にかかる内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略構成を示す斜視図である。
【0018】
図2において、上側が上流側(エアクリーナ側)、下側が下流側(エンジン側)であり、吸気管1Aに垂直にスロットルバルブシャフト3が配置されており、そのスロットルバルブシャフト3にスロットルバルブ2が固定されている。
【0019】
スロットルバルブシャフト3が回転することでスロットルバルブ2が回転し、吸気管1Aとスロットルバルブ2のクリアランス(開口面積)が変化することで、エンジンに吸入される空気流量が制御される。
【0020】
昨今の環境問題からの要求で、車輌から排出される排気ガスを低減する課題がある。その排気ガスの低減させる手段の一つに燃費の向上がある。燃費向上からスロットルへの要求として、エンジン回転数を低減するために最小空気流量の低減が課題としてある。
【0021】
上記課題を達成するためには、スロットルバルブ2が内燃機関の負圧、あるいは加給機による加圧の力でも変形し難くする必要がある。1つの方法として、スロットルバルブ2にリブ5を配設し強度を向上させる。エンジンからの吸入負圧、あるいは過給機による加圧によりスロットルバルブに圧力が印加された場合、リブ5の効果でリブ5がない場合よりもスロットルバルブ2の撓み量が減少する。撓み量が少なくなると、吸気管1Aとスロットルバルブ2のクリアランスは小さくなり、結果としてエンジンへ吸入する最小空気流量は少なくすることができる。
【実施例2】
【0022】
図3は本発明の実施形態の第2実施例にかかる内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略構成を示す斜視図である。
【0023】
本実施例では、スロットルバルブ2の下面の主にスロットルバルブ2下流側に金属部材26を追加することで、スロットルバルブ2を補強して撓みに対する強度を向上させ、撓み量を低減することが出来るため、吸気管1Aとスロットルバルブ2のクリアランスは小さくなり、結果としてエンジンへ吸入する最小空気流量は少なくすることができる。
【実施例3】
【0024】
図4は本発明の実施形態の第2実施例にかかる内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略構成を示す斜視図である。
【0025】
本実施例では、スロットルバルブ2の下流側にリブ5を配設して撓みに対する強度を向上させ、実施例2と同様に撓み量の低減を図っている。
【実施例4】
【0026】
図5は本発明の実施形態の第2実施例にかかる内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略構成を示す斜視図である。
【0027】
本実施例では、構成は実施例3と同じであるが、スロットルバルブ2の上流側の厚みを変更せずに、下流側の厚みを厚くすることで撓みに対する強度を向上させ、実施例2と同様に撓み量の低減を図っている。
【0028】
図6は本発明の実施形態の第3,4実施例にかかるスロットルバルブの形状を示す図である。
【0029】
本実施例では、スロットルバルブ3の厚み形状を異型にした場合、スロットルバルブ外周を加工する時に数枚重ねて加工することが難しくなるため、1枚毎の加工が必要になるが、形状をスロットルバルブシャフト3に対して対象形状で且つ、重ねた時に一定厚みになる様な形状にして、スロットルバルブ2の外周加工を容易にすることを特徴とする。
【実施例5】
【0030】
図7は本発明の実施形態の第2実施例にかかる内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略構成を示す斜視図である。
【0031】
本実施例では、スロットルバルブ2の外周部が図1,図2,図4の様なリブ形状そのままでボア1と組合せる場合、スロットルバルブ2とボア1の間に微小な隙間が出て、エンジンへ吸入する最小空気流量が増加するため、スロットルバルブ2の外周部を除く領域にリブ5を配設して、強度を向上させ、実施例2と同様に撓み量の低減を図るとともに、更にエンジンへ吸入する最小空気流量の低減を図っている。
【0032】
本実施例の特徴を整理すると以下の通りである。
【0033】
〔実施態様1〕
内燃機関の吸入空気流量または圧力を制御するためのスロットルバルブを用いた吸入空気流量制御装置において、アルミや黄銅の平板を用いて構成されたスロットルバルブよりも、弁体の強度を向上させることによって、吸入空気による発生負圧による弁体の撓みを抑制したことを特徴とする内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【0034】
〔実施態様2〕
実施態様1に記載したスロットルバルブ装置において、
スロットルバルブを構成するバルブ表面にリブを設け、スロットルバルブの強度を向上させたことを特徴とする内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【0035】
〔実施態様3〕
実施態様1に記載したスロットルバルブ装置において、
スロットルバルブに金属の板材を追加し、スロットルバルブの強度を向上させたことを特徴とする内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【0036】
〔実施態様4〕
実施態様1〜3に記載したスロットルバルブ装置において、
スロットルバルブシャフトを中心に前記スロットルバルブの下流側の強度を向上させ、上流側よりも下流側の撓み量を抑制することを特徴とする内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【0037】
〔実施態様5〕
実施態様4に記載したスロットルバルブ装置において、
スロットルバルブの下流側の板厚を上流側よりも厚くし、下流側の撓み量を抑制することを特徴とする内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【0038】
〔実施態様6〕
実施態様4,5に記載したスロットルバルブ装置において、
2枚のスロットルバルブを重ね合わせた時に一定の厚みとなる様に強度を向上させる構造にしたことを特徴とした実施態様1〜5に記載したスロットルバルブ装置。
【0039】
〔実施態様7〕
実施態様1〜5に記載したスロットルバルブ装置において、
バルブ外周部を除く領域にスロットルバルブの強度を向上させるための形状を構成し、スロットルバルブの撓み量を抑制することを特徴とする内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【0040】
このように構成した実施例では従来のスロットルバルブ材料を使用でき且つ、外周の加工が可能であり、これまでと同等のスロットルバルブ外径寸法精度が得られるため、スロットルバルブとボアとの隙間は従来と同等にすることが可能である。よってスロットルバルブの撓み低減分エンジンへ吸入する空気流量が低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1に係る車輌に用いるモータ駆動式のスロットルバルブ制御装置の断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略斜視図。
【図3】本発明の実施例2に係る内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略斜視図。
【図4】本発明の実施例3に係る内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略斜視図。
【図5】本発明の実施例4に係る内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略斜視図。
【図6】本発明の実施例3,4に係るスロットルバルブの形状図。
【図7】本発明の実施例5に係る内燃機関のスロットルバルブ制御装置が適用された電子制御スロットル装置におけるスロットルバルブの概略斜視図。
【符号の説明】
【0042】
1 ボア
1A 吸気管
2 スロットルバルブ
3 スロットルバルブシャフト
4 ねじ
5 リブ
6 スロットルボディ
7,8 軸受ボス部
9,10 軸受
13 スロットルギア
20 モータ
20A モータハウジング
22 モータギア
23 中間ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットル装置の本体に設けられた吸気通路、
吸気通路に取り付けられ吸気通路の開口面積を制御して吸気流量若しくは、吸気通路内の圧力を制御するスロットルバルブ、
当該スロットルバルブが固定され、前記本体に回転可能に支持されたスロットルシャフト、
を備え、前記スロットルバルブが樹脂材で成形されたものにおいて、
スロットルバルブシャフトを中心に前記スロットルバルブの下流側のバルブの撓み変形量を、前記スロットルバルブの上流側の撓み変形量によりも小さくなるよう構成した
内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、
前記スロットルバルブを構成するバルブ表面に空気の流れに沿ったリブを設けた
内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載したものにおいて、
スロットルバルブに金属の板材を張り合わせた
内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載したものにおいて、
前記金属の板材は前記スロットルバルブが全閉時に吸気流の下流側面になる側で前記スロットルシャフトを挟んで上下の領域に張り合わせた
内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【請求項5】
請求項3若しくは4のいずれかに記載のものにおいて、
その張り合わせ領域は、前記スロットルシャフトより下流側の面積の方が大きく構成されている
内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載したものにおいて、
前記金属の板材は前記スロットルバルブシャフトより下流側の板厚を上流側よりも厚くした
内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載したものにおいて、
2枚のスロットルバルブを重ね合わせた
内燃機関のスロットルバルブ制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のものにおいて、
前記2枚重ねたスロットルバルブの厚みが全領域で一定の厚みを有し、
バルブ外周部を除く領域にスロットルバルブの撓み量を抑制する補強部を設けた
内燃機関のスロットルバルブ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−264114(P2009−264114A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110855(P2008−110855)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】