説明

内燃機関のスロットル装置

【課題】吸気流量の急激な変化を低減して低流量域での流量制御性へ与える影響を少なくしたうえで、全閉位置近傍に位置しているスロットルバルブの外縁とスロットルボアの内壁面との間に水が溜まり難いようにすること。
【解決手段】デフォルト位置にあるスロットルバルブ30の外縁32と対向する基準断面積部位20よりスロットルボア11の吸気上流側と吸気下流側のそれぞれに、スロットルボア全周のうちの鉛直下側領域のみを鉛直下側に拡大する凹部21、22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のスロットル装置に関し、特に、横置きされるスロットル装置の凍結防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気系に設けられるスロットル装置において、スロットルボディに形成されているスロットルボア(吸気通路)に存在する水分がスロットルボアの内壁面に着氷する凍結現象(アイシング)によってスロットルバルブの開閉動作が損なわれることを防止するために、スロットルボアの内壁面が全閉位置近傍に位置しているスロットルバルブの外縁と対向する部位に、スロットルボアの内壁面の全周に亘って同心円状の突出部(突条部)を設け、その突出部の全周に亘ってヒータ部材を設置したものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
このスロットル装置では、スロットルボアが略水平に延在する横置き配置において、スロットルボアの内壁面の鉛直下側領域が突起部によって一段高くなることにより、全閉位置近傍に位置しているスロットルバルブの外縁とスロットルボアの内壁面との間に水が溜まり難くなる。更には、凍結現象が生じるような運転条件に応じてヒータ部材に電流を流し、ヒータ部材を発熱させることにより、氷結が溶け、スロットルバルブの外縁部と突出部との凍結が解消される。
【特許文献1】特開2002−206434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のスロットル装置では、突出部がスロットルボアの内壁面の全周(バルブ全閉位置全周)に亘って設けられており、この突出部の幅は、全閉位置近傍に位置しているスロットルバルブの外縁とスロットルボアの内壁面との間に水が溜まり難いよう、比較的狭く設定されるため、スロットルバルブの全閉位置よりの開き始めに、スロットルボアの実効通路断面積が急激に増大する。このため、スロットルバルブの全閉位置よりの開き始めに、当該スロットルバルブによって計量される流量、つまり吸気流量が急激に変化することになり、吸気流量制御が難しいものになる。
【0005】
また、従来技術では、ヒータ部材がスロットルボア内壁面の全周に亘って設置されているため、横置き配置において、本来必要のないボア上部(鉛直上側領域)やバルブ軸受周辺も一律に暖めることになり、ヒータ通電による無駄な消費電力が多い。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、スロットル装置の凍結防止構造として、吸気流量の急激な変化を低減して低流量域での流量制御性へ与える影響を少なくしたうえで、全閉位置近傍に位置しているスロットルバルブの外縁とスロットルボアの内壁面との間に水が溜まり難いようにし、更には、凍結解消のためのヒータ通電による無駄な消費電力を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による内燃機関のスロットル装置は、スロットルボアを形成されたスロットルボディと、前記スロットルボア内に配置されて前記スロットルボディより開閉可能に支持されたバタフライ式のスロットルバルブとを備えた内燃機関のスロットル装置であって、
【0008】
前記スロットルバルブの機関停止時の位置をデフォルト位置とし、前記デフォルト位置にある前記スロットルバルブの鉛直下側領域の外縁と対向する部位より前記スロットルボアの吸気上流側と吸気下流側のそれぞれに、スロットルボアを鉛直下側に拡大する凹部を有し、前記吸気上流側と前記吸気下流側のそれぞれに存在する前記凹部のうち、前記スロットルバルブの開弁移動において当該スロットルバルブの鉛直下側部分の開弁移動進み側に存在する凹部の横断面積が他方の凹部の横断面積より小さい。
【0009】
本発明によるスロットル装置は、好ましくは、前記吸気上流側と前記吸気下流側のそれぞれに存在する前記凹部のうち、前記吸気下流側の凹部の横断面積が前記吸気上流側の凹部の横断面積より大きい。
【0010】
本発明によるスロットル装置は、好ましくは、前記デフォルト位置は前記スロットルバルブの全閉位置よりも開き側に設定され、前記吸気下流側の凹部は前記全閉位置にある前記スロットルバルブの鉛直下側領域の外縁と対向する部位の直下流に形成されている。
【0011】
本発明によるスロットル装置は、好ましくは、更に、前記吸気上流側の凹部と前記吸気下流側の凹部との間にヒータ手段を有する。
【0012】
本発明によるスロットル装置は、好ましくは、前記スロットルボディが合成樹脂製である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスロットル装置によれば、スロットルボア全周のうちの鉛直下側領域のみに、スロットルボアを鉛直下側に拡大する凹部が設けられているから、スロットルボアの内壁面が全閉位置近傍(デフォルト位置)に位置しているスロットルバルブの外縁と対向する部位の鉛直下側にのみ、つまり、水が溜まる虞がある部位にのみ凹部が、換言すると、突出部が形成されることになる。これにより、凍結防止構造(突条部)の設置が必要な部位に絞られ、凍結防止構造が、低開度側の低流量域で、流量制御性へ与える影響を少なくなる。
【0014】
更には、ヒータ手段の設置も、凍結防止に必要な部位に絞られ、熱源を最低限にすることができ、コスト・ウェイトに有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明による内燃機関用のスロットル装置の一つの実施形態を、図1〜図6を参照して説明する。
【0016】
本実施形態のスロットル装置は、吸気通路をなすスロットルボア11を形成されたスロットルボディ10と、スロットルボア11内に配置されて弁軸31によってスロットルボディ11より開閉可能に支持されたバタフライ式のスロットルバルブ30とを備えている。
【0017】
スロットルボディ10は、全体を、合成樹脂、たとえば、PPS(ポリフェニレンサルサルファイド)等に、ガラス繊維や無機フィラを混入した強化合成樹脂により構成されている。
【0018】
スロットルボディ10は、車載のアレンジメントの都合上、図1に示されているように、スロットルボア11が、略水平方向に延在するように、横置きされる。この横置きにおいて、スロットルボア11は、円形の横断面形状をもってスロットルボディ10を略水平方向(左右方向)に貫通し、図1で見て右側の開口端がエアクリーナ側(吸気上流側)の吸気入口12に、左側が吸気マニホールド側の吸気出口13になっている。
【0019】
スロットルボディ10の吸気出口13の側の外周部には、スロットルボディ10を吸気マニホールドあるいは吸気サージタンク等と接続するための吸気マニホールド接続用フランジ部14が拡張成形されている。吸気マニホールド接続用フランジ部14には、複数個のボルト通し孔、本実施形態では三個のボルト通し孔15、16、17が貫通成形されている。
【0020】
なお、スロットルボディ10の吸気入口12の側は、吸気入口12の側のスロットルボディ10の円筒状外周にエアクリーナからの樹脂製の吸気チューブを直接差し込まれる構造になっており、フランジレスになっている。
【0021】
スロットルバルブ30、弁軸31は、金属製のものである。但し、合成樹脂製のスロットルバルブ30、弁軸31を用いてもよい。スロットルバルブ30は、スロットルボア11の横断面形状に合わせて円盤状をなしている。弁軸31は、図示されていないが、減速機構を介して電動モータと駆動連結され、電動モータによって回転(回動)駆動される。ここに、本実施形態のスロットル装置は電動式(Drive By Wire)のものである。
【0022】
スロットルバルブ30は、弁軸31を回動中心として、図1で見て反時計廻り方向に回動することにより、バルブ開度を増大する。図5において、実線Aにより示されている回動位置(開閉位置)がスロットルバルブ30の全閉位置であり、図5において、仮想線Bにより示されているように、上述の全閉位置より僅かに開弁した位置がスロットルバルブ30の機関停止時(電断時)のデフォルト位置である。なお、本実施形態では、スロットルバルブ30の全閉位置は、吸気流れ方向Fに対して垂直となる面よりもスロットルバルブ30がバルブ開度増大方向に僅かに回動変位した位置に設定される。
【0023】
ここで、スロットルボア11の内壁が、デフォルト位置にあるスロットルバルブ30の外縁32と対向する部位を、スロットルボア11の基準断面積部位20とする。この基準断面積部位20のスロットルボア11の横断面形状は円形のままである。
【0024】
基準断面積部位20よりスロットルボア11の吸気上流側と吸気下流側のそれぞれに、スロットルボア全周のうちの鉛直下側領域のみを鉛直下側に拡大する吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22が形成されている。つまり、デフォルト位置にあるスロットルバルブ30の鉛直下側領域の外縁と対向する部位よりスロットルボア11の吸気上流側と吸気下流側のそれぞれに、スロットルボア11を鉛直下側に拡大する凹部21、22を有する。吸気上流側凹部21は基準断面積部位20より吸気入口12にまで延在し、吸気下流側凹部22は基準断面積部位20より吸気出口13にまで延在している。
【0025】
吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22は、ともに、スロットルボア全周のうちの鉛直下側領域であって、スロットルボア11のボア中心軸線周りに90度程度の回転角範囲に、スロットルボア11と同心円状の円弧状の溝断面形状をもって形成(成形)されている。つまり、吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22は、共に、スロットルボア11のボア中心軸線の真下位置の両側に45度程度の回転角範囲の広がりをもってスロットルボア11と同心円状の円弧状の溝断面形状に成形されている。
【0026】
吸気上流側凹部21は、スロットルバルブ30の開弁移動(図1において、反時計廻り方向の回転)において、スロットルバルブ30の鉛直下側部分の開弁移動進み側に存在する凹部であり、当該吸気上流側凹部21の横断面積は、吸気下流側凹部22の横断面積より小さい。
【0027】
この凹部の横断面積の大小関係は、溝深さ、溝幅(回転角)によって決まり、本実施形態では、吸気上流側凹部21の溝深さDaが吸気下流側凹部22の溝深さDbより浅い。
【0028】
ここで、換言すると、吸気下流側凹部22の横断面積は、吸気上流側凹部21の横断面積より大きい。つまり、吸気下流側凹部22の溝深さDbが吸気上流側凹部21の溝深さDaより深い。
【0029】
吸気上流側凹部21の溝底面23と基準断面積部位20のボア面24とは傾斜面(水滴案内面)25によって接続されている。また、吸気下流側凹部22の溝底面26と基準断面積部位20のボア面24とは傾斜面(水滴案内面)27によって接続されている。本実施形態では、吸気下流側凹部22は、傾斜面27をもって、全閉位置にあるスロットルバルブ30の鉛直下側領域の外縁と対向する部位の直下流にまで形成されている。
【0030】
スロットルボア11の基準断面積部位20の鉛直下側領域にはフィルム状のヒータ28が埋め込まれている。ヒータ28は、電熱線のものやPCTヒータ等のセラミックヒータにより構成されている。ヒータ28は、基準断面積部位20のボア面24の円弧面に沿って湾曲して設けられている。換言すると、ヒータ28は、スロットルボア11と同心円状に、スロットルボア11のボア中心軸線周りに90度程度の回転角範囲に亘って設けられている。このヒータ28のボア周方向の配置位置は、吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22のボア周方向の配置位置と同じであってよい。
【0031】
ヒータ28の設置により、スロットルボディ10は、ヒータ28の発熱により熱変質しない樹脂材料により構成されている必要がある。このことに対して、本実施形態では、スロットルボディ10は、前述したように、所要の耐熱性を有するPPSを母材とする強化合成樹脂により構成されている。
【0032】
スロットルボア11内で結露等により生じた水分(水滴)は、重力により、スロットルボア11の内壁を伝わるなどしてスロットルボア11の鉛直下側に流れる。この水分の多くは、吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22に直接流れ、吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22に集められる。
【0033】
スロットルボア11内で結露等により生じた水分のうち、基準断面積部位20のボア面24に流れた水分の多くは、基準断面積部位20の両側(吸気上流側と吸気下流側)にある傾斜面25、27を伝わって吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22へ流れ、吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22に溜まる。このような水の流れにより、基準断面積部位20のボア面24に、多くの水分が溜まることがない。
【0034】
これにより、機関停止時に、デフォルト位置にあるスロットルバルブ30の周囲に多くの水が溜まることがなく、凍結現象が生じ難くなる。仮に、図5(b)、(c)に示されているように、基準断面積部位20のボア面24とデフォルト位置にあるスロットルバルブ30の外縁32との間に凍結部iが生じても、大きい凍結部iが生じることがなく、凍結部iのスロットルボア(基準断面積部位20)との接触面積が小さくなるから、電動モータによるスロットルバルブ30の開弁駆動力によってスロットルバルブ30は、凍結部iの氷を引き剥がして開弁することができる。
【0035】
また、傾斜面27はスロットルバルブ30の全閉位置の直下流に位置し、デフォルト位置にあるスロットルバルブ30の縁部32は傾斜面27の極く近くにあるから、図5(b)に示されているように、デフォルト位置にあるスロットルバルブ30の閉弁側(EGRやブローバイガスによって水分が生じ易いスロットル下流側)には、開弁側よりも水が溜まり難く、スロットルバルブ30の開弁駆動力によって容易に引き剥がされる程度の極く小さい凍結部iしか生じないようになっている。
【0036】
これらのことにより、デフォルト位置にあるスロットルバルブ30が凍結現象によって動作不能に陥ることが回避される。
【0037】
なお、樹脂製のスロットルボディ10は、金属製のものよりも熱伝導性が低く、また濡れ性も低いため、凍結対策に有利である。
【0038】
更には、ヒータ28に対する通電によってヒータ28を発熱稼働させ、基準断面積部位20のボア面24を暖め、凍結部iを熱により解凍することにより、デフォルト位置にあるスロットルバルブ30が凍結現象によって動作不能に陥ることが、より確実回避される。
【0039】
凍結防止構造である吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22は、スロットルボア全周のうちの鉛直下側領域のみに設けられているから、基準断面積部位20は、水が溜まる虞がある鉛直下側領域においてのみ突条部になり、突条部がスロットルボア全周に亘って設けられている場合に比して、スロットルバルブ30の低開度側の低流量域で、流量制御性へ与える影響が少なくなる。
【0040】
更に、基準断面積部位20の両側に存在する吸気上流側凹部21、吸気下流側凹部22のうち、スロットルバルブ30の開弁移動において当該スロットルバルブ30の鉛直下側部分の開弁移動進み側に存在する吸気上流側凹部21の横断面積(通路拡大横断面積)は、吸気下流側凹部22の横断面積(通路拡大横断面積)より小さいから、吸気流量の急激な変化が減少し、吸気上流側凹部21が、スロットルバルブ30の低開度側の低流量域で、流量制御性へ与える影響がより一層、少なくなる。
【0041】
吸気上流側凹部21の横断面積が吸気下流側凹部22の横断面積より小さいことは、同時に、吸気下流側凹部22の横断面積が吸気上流側凹部21の横断面積より大きいことになり、吸気下流側凹部22の貯水容量が大きい。このことは、スロットルバルブ30の吸気下流側では、EGRガスやブローバイガスによって水分が溜まり易いことに適合する。
【0042】
本実施形態では、デフォルト位置にあるスロットルバルブ30と吸気上流側凹部21との間に、吸気下流側凹部22に比して大きい離間距離がある。このことにより、スロットルバルブ30の外縁32は、図5において、仮想線Cにより示されているような軌跡を描いて開弁し、スロットルバルブ30が低流量域(例えば、アイドル制御域)を超えた中流量域において初めて傾斜面25、吸気上流側凹部21にさしかかるから、低流量域において、傾斜面25、吸気上流側凹部21が流量制御性に影響を与えることがなく、線形の流量制御特性を維持できる。
【0043】
これにより、アイドル運転時等における吸入空気量の制御が、正確に、且つ複雑化することなく行われ得るようになる。
【0044】
ヒータ28は、スロットルボア11の基準断面積部位20の鉛直下側領域、つまり、凍結部iが生じる部位に絞って設けられているので、熱源を最低限にすることができ、コスト・ウェイトに有利になり、凍結解消のためのヒータ通電による無駄な消費電力を低減することができる。
【0045】
また、段差の大きい吸気下流側凹部22、ヒータ28の設置部は、スロットルボディ10の吸気マニホールド接続用フランジ部(肉厚部)14に形成されるから、剛性低下や大型化・重量化を招くことがない。
【0046】
スロットルボディ10は、吸気マニホールド接続用フランジ部14の三個のボルト通し孔15、16、17に通される締結ボルトによって吸気マニホールドに3点で接続支持される。吸気下流側凹部22は鉛直下側領域のみで、ボア拡径部がスロットルボア11の全周に設けられていないから、フランジ部14の肉厚増加を抑制してスロットルボディ10をコンパクト化できる。
【0047】
吸気下流側凹部22、ヒータ28は、ボルト通し孔16、17に通された締結ボルトによる二つの締結点の間に位置する。この締結点の離間回転角は、図2に示されているように、θ2で、ボルト通し孔15と16との離間回転角θ1、ボルト通し孔15と17との離間回転角θ3より小さい。吸気下流側凹部22によりスロットルボディ10の肉厚が薄くなるが、小さい離間回転角θ2による締結点間に該肉薄部を位置させることで、シール面圧を合理的に確保することができる。また、ヒータ28の領域を最小限に抑えることができる。
【0048】
以下に、本実施形態の効果を要約する。
(1)スロットルバルブ30のデフォルト位置に対向するボア周面よりも凹部、つまり拡大部は鉛直下方に配置されるため、エンジン停止時にスロットル周囲の水滴は拡大部に流下し、デフォルト位置にあるスロットルバルブ周辺に水が溜まることが抑制される。拡大部(凹部)は、水が溜まり易く、凍結が起こり易いボア下部にのみ設けられており、デフォルト位置周辺の保水量を最小限にできる
(2)しかも、デフォルト位置から開き側に回動するスロットルバルブ30の鉛直下側と対向する一方の拡大部(吸気上流側凹部21)におけるスロットルボア断面積を、他方の拡大部(吸気下流側凹部22)におけるスロットルボア断面積よりも小さくしているので、スロットルバルブ30を開く際に、吸気流量が急激に変化してしまうことを回避できる。
(3)スロットルバルブ30よりも吸気下流側では、EGRガスやブローバイガスが導入されるため水が溜まり易い。水が溜まり易い吸気下流側の拡大部(吸気下流側凹部22)を吸気上流側よりも大きくすることで、スロットルバルブ30のデフォルト位置周辺の保水量を低減できる。
(4)吸気下流側凹部22は全閉位置にあるスロットルバルブ30の鉛直下側領域の外縁と対向する部位の直下流に形成されていることにより、デフォルト位置周辺における水の溜まり量を最小限に少なくできる。
(5)ヒータ28を設けることで確実に凍結を解消できる。しかも、ヒータ28はボア全周に設けず、水が溜まり易く凍結が起こり易いボア下部に設けられるので、消費電力を抑えると共に、コスト・ウェイトにおいても優位性を持つ。
(6)樹脂製のスロットルボディ10は、金属製のものよりも熱伝導性が低く、また濡れ性も低いため、凍結対策に有利である。
【0049】
なお、本発明によるスロット装置は、上述の実施形態に限られることはなく、図7に示されているように、スロットルバルブ30の開弁方向が時計廻り方向であってもよい。
【0050】
この場合、吸気下流側凹部22が、スロットルバルブ30の開弁移動(図7において、時計廻り方向の回転)において、スロットルバルブ30の鉛直下側部分の開弁移動進み側に存在する凹部であり、当該吸気下流側凹部22の横断面積が、吸気上流側凹部21の横断面積より小さい。
【0051】
これにより、本実施形態でも、スロットルバルブ30を開く際に、吸気流量が急激に変化してしまうことを回避できる。
【0052】
なお、ヒータ手段は、電気的に発熱する型式のものには限定されず、例えば、温水(エンジン冷却水)が流通する通路をヒータ手段として構成してもよい。また、ヒータ手段そのものが発熱する型式には限定されず、例えば、金属板の一端を熱源(電気式ヒータやエンジン冷却水など)に接触させて、伝熱により該金属板をヒータ手段としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による内燃機関用のスロットル装置の一つの実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本実施形態による内燃機関用のスロットル装置の左端面図である。
【図3】本実施形態による内燃機関用のスロットル装置の右端面図である。
【図4】図1の線IV−IVによる断面図である
【図5】(a)〜(c)は本実施形態による内燃機関用のスロットル装置の動作を示す拡大縦断面および凍結現象を示す拡大解図である。
【図6】本実施形態による内燃機関用のスロットル装置の斜視図である。
【図7】本発明による内燃機関用のスロットル装置の他の実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 スロットルボディ
11 スロットルボア
12 吸気入口
13 吸気出口
14 吸気マニホールド接続用フランジ部
15、16、17 ボルト通し孔
21 吸気上流側凹部
22 吸気下流側凹部
23 溝底面
24 ボア面
25 傾斜面
26 底面
27 傾斜面
28 ヒータ
30 スロットルバルブ
31 弁軸
32 外縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルボアを形成されたスロットルボディと、前記スロットルボア内に配置されて前記スロットルボディより開閉可能に支持されたバタフライ式のスロットルバルブとを備えた内燃機関のスロットル装置であって、
前記スロットルバルブの機関停止時の位置をデフォルト位置とし、前記デフォルト位置にある前記スロットルバルブの鉛直下側領域の外縁と対向する部位より前記スロットルボアの吸気上流側と吸気下流側のそれぞれに、スロットルボアを鉛直下側に拡大する凹部を有し、前記吸気上流側と前記吸気下流側のそれぞれに存在する前記凹部のうち、前記スロットルバルブの開弁移動において当該スロットルバルブの鉛直下側部分の開弁移動進み側に存在する凹部の横断面積が他方の凹部の横断面積より小さいことを特徴とする内燃機関のスロットル装置。
【請求項2】
前記吸気上流側と前記吸気下流側のそれぞれに存在する前記凹部のうち、前記吸気下流側の凹部の横断面積が前記吸気上流側の凹部の横断面積より大きいことを特徴とする請求項1記載のスロットル装置。
【請求項3】
前記デフォルト位置は前記スロットルバルブの全閉位置よりも開き側に設定され、前記吸気下流側の凹部は前記全閉位置にある前記スロットルバルブの鉛直下側領域の外縁と対向する部位の直下流に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のスロットル装置。
【請求項4】
前記吸気上流側の凹部と前記吸気下流側の凹部との間にヒータ手段を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の内燃機関のスロットル装置。
【請求項5】
前記スロットルボディが合成樹脂製であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の内燃機関のスロットル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−52512(P2009−52512A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222008(P2007−222008)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】