説明

内燃機関の冷却システム、並びに同冷却システムを備えた内燃機関

【課題】冷却液の温度が高くなり、ラジエータを通じて冷却液が循環されるようになったときに、たくさんの冷却液をラジエータを通じて循環させることができ、高い冷却効率を実現することのできる内燃機関の冷却システム、並びに同冷却システムを備えた内燃機関を提供する。
【解決手段】本発明にかかる内燃機関の冷却システムは第1循環通路21aから分岐する第1バイパス通路51とヘッド側ウォータジャケット12から延びて第1バイパス通路51に合流する第2バイパス通路52とを備えている。サーモスタットバルブ40は第2循環通路21bを開閉するトップ側バルブ43と、トップ側バルブ43の開弁量が大きくなるほど開弁量が小さくなるボトム側バルブ46とを備えている。第1バイパス通路51と第2バイパス通路52が合流している集合部53はボトム側バルブ46を介してウォータポンプ30に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は冷却液を循環させて内燃機関を冷却する内燃機関の冷却システム、並びに同冷却システムを備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関にあっては、ウォータジャケットに冷却液を循環させ、冷却液との間で熱交換を行うことによって機関温度の過度の上昇を抑制するようにしている。そして、熱交換によって温度が上昇した冷却液は、ラジエータに導入され、同ラジエータを通過する間に放熱して冷却されるようになっている。
【0003】
ところで、安定した機関運転を実現し、排気性状の向上を図る上では、機関冷間始動時などの機関温度が低いときには速やかに機関温度を上昇させ、早期に暖機を完了させることが望ましい。
【0004】
そこで、内燃機関の冷却システムにあっては、冷却液の循環経路にラジエータを迂回するバイパス通路を設け、機関温度が低いときにはラジエータを通じての冷却液の循環を停止してバイパス通路を通じて冷却液を循環させるようにしたものがある。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の冷却システムにあっては、ラジエータを迂回するバイパス通路を設けるとともに、冷却液の温度が低いときに閉弁するサーモスタットバルブを設け、冷却液の温度が低いときにラジエータからウォータポンプに冷却液を還流させる通路を閉塞するようにしている。こうした構成を採用すれば、冷却液の温度が低いときにはラジエータを通じた冷却液の循環を停止し、バイパス通路を通じてラジエータを迂回させて冷却液を循環させることができるようになり、冷却液に奪われた熱がラジエータにおいて放熱されてしまうことを抑制することができる。したがって、ウォータジャケットを通過して暖められた冷却液を再びウォータジャケットに還流することができるため、機関温度の上昇を促進させ、早期に暖機を完了させることができるようになる。また、サーモスタットバルブは冷却液の温度が高くなったときに開弁するため、冷却液の温度が高くなったときにはラジエータを通じた放熱が行われるようになる。そのため、こうした構成によれば機関温度の過度の上昇も抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−54440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載された冷却システムのようにラジエータを迂回するバイパス通路と、ラジエータからウォータポンプに冷却液を還流させる通路を開閉するサーモスタットバルブとを備える冷却システムにあっては、サーモスタットバルブの開閉状態とは関係なく、バイパス通路には常に冷却液が流れている。すなわち、サーモスタットバルブが開弁しているときも、サーモスタットバルブが閉弁しているときも、冷却液の一部はラジエータを通じて放熱が行われることなく循環されていることになる。
【0008】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は冷却液の温度が高くなり、ラジエータを通じて冷却液が循環されるようになったときに、たくさんの冷却液をラジエータを通じて循環させることができ、高い冷却効率を実現することのできる内燃機関の冷却システム、並びに同冷却システムを備えた内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、ラジエータを迂回するバイパス通路と、ラジエータからウォータポンプに冷却液を還流する通路を開閉するサーモスタットバルブとを備え、冷却液の温度が低いときに前記サーモスタットバルブによって前記ラジエータを通じての冷却液の循環が停止される内燃機関の冷却システムであり、前記サーモスタットバルブが、前記ラジエータから前記ウォータポンプに冷却液を還流する通路を開閉するトップ側バルブと、同トップ側バルブの開弁量が大きくなるほど開弁量が小さくなるボトム側バルブとを備えたボトムバイパス型サーモスタットバルブであるとともに、前記バイパス通路として、前記ラジエータに冷却液を供給する通路から分岐する第1バイパス通路と、内燃機関のウォータジャケットから延びて前記第1バイパス通路に合流する第2バイパス通路とを備え、第1バイパス通路と第2バイパス通路が合流している集合部が前記ボトム側バルブを介して前記ウォータポンプに接続されていることをその要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、冷却液の温度が低く、トップ側バルブが閉弁しているときには、ラジエータを通じての冷却液の循環が停止される。また、トップ側バルブが閉弁しているときには、ボトム側バルブが開弁されているため、第1バイパス通路及び第2バイパス通路を通じてラジエータを迂回するように冷却液が循環されることになる。
【0011】
これに対して、トップ側バルブが開弁しているときには、サーモスタットバルブを介してラジエータ側からウォータポンプに向かって冷却液が流れるようになる。
そして、トップ側バルブが開弁しており、ボトム側バルブは閉弁しているときには、サーモスタットバルブを介してラジエータ側からウォータポンプに向かって冷却液が流れている一方で、ボトム側バルブが閉弁しているため、ラジエータに冷却液を供給する通路内の圧力が低くなる一方、集合部内の圧力が高くなる。その結果、集合部内の冷却液は第1バイパス通路を通じてラジエータに冷却液を供給する通路に流れ込むようになる。
【0012】
すなわち、上記構成によれば、トップ側バルブが閉弁している一方、ボトム側バルブが開弁してラジエータを迂回させて冷却液を循環させているときと、トップ側バルブが開弁している一方、ボトム側バルブが閉弁してラジエータを通じて冷却液を循環させているときとで第1バイパス通路内を流れる冷却液の流れの方向が反転するようになる。
【0013】
そして、その結果、トップ側バルブが開弁している一方、ボトム側バルブが閉弁してラジエータを通じて冷却液を循環させているときには、第2バイパス通路を通じて集合部に導入された冷却液が第1バイパス通路を通じてラジエータに冷却液を供給する通路に流れ込み、ラジエータを通過してサーモスタットバルブに導入されるようになる。したがって、バイパス通路を流れる冷却液もラジエータを通過するようになるため、常に冷却液の一部がバイパス通路を通じてラジエータを迂回して循環されている従来の冷却システムと比較して循環される冷却液の量に対するラジエータを通過する冷却液の量の割合が増大し、冷却効率が向上するようになる。すなわち、冷却液の温度が高くなり、ラジエータを通じて冷却液が循環されるようになったときに、たくさんの冷却液をラジエータを通じて循環させることができ、高い冷却効率を実現することができるようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の冷却システムにおいて、前記ラジエータに冷却液を供給する通路が、内燃機関のシリンダヘッド内に形成されたウォータジャケットに接続されていることをその要旨とする。
【0015】
内燃機関にあってはピストンが上昇し、混合気が圧縮された状態で点火が行われ、燃焼が生じる。そのため、シリンダブロック側よりもシリンダヘッド側の部分の方が燃焼熱の影響を受けやすく、高温になりやすい。上記請求項2に記載の構成によれば、高温になりやすいシリンダヘッド内に形成されたウォータジャケットを通過して温度が上昇した冷却液がラジエータに導かれるようになる。そのため、燃焼熱の影響を受けて高温になった冷却液をラジエータに導いて冷却することができ、効果的に内燃機関の過熱を抑制することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の内燃機関の冷却システムにおいて、前記第2バイパス通路が、内燃機関のシリンダヘッド内に形成されたウォータジャケットに接続されていることをその要旨とする。
【0017】
上述したように、シリンダブロック側のウォータジャケットを通過した冷却液よりもシリンダヘッド側のウォータジャケットを通過した冷却液の方がより燃焼熱の影響を受けやすい。そのため、シリンダブロック側のウォータジャケットを通過した冷却液よりもシリンダヘッド側のウォータジャケットを通過した冷却液の温度の方が内燃機関の温度変化をより的確に表しているといえる。そこで、上記請求項3に記載されているように第2バイパス通路をシリンダヘッド内に形成されたウォータジャケットに接続し、シリンダヘッド内に形成されたウォータジャケットを通過した冷却液をサーモスタットバルブの感温部に導くようにすれば、内燃機関の温度変化をより速やかに反映させた態様でサーモスタットバルブを作動させることができるようになる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の冷却システムにおいて、前記ボトム側バルブのシート部には、同ボトム側バルブの閉弁時にも前記集合部内の冷却液の一部を前記サーモスタットバルブの感温部に導くことができるように連通路が設けられていることをその要旨とする。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の冷却システムにおいて、前記ボトム側バルブの弁体には、同ボトム側バルブの閉弁時にも前記集合部内の冷却液の一部を前記サーモスタットバルブの感温部に導くことができるように連通路が設けられていることをその要旨とする。
【0020】
上記請求項4または請求項5に記載されている構成を採用すれば、ボトム側バルブが閉弁したときであってもシリンダヘッド側のウォータジャケットを通過した冷却液の一部が連通路を通じて感温部に導入されるようになる。そのため、ボトム側バルブが閉弁しているときであっても、内燃機関の温度に応じて適切にサーモスタットバルブを作動させることができるようになる。
【0021】
なお、具体的には請求項6に記載されているように、シート部または弁体に溝を形成するようにすれば、シート部に弁体が着座したときにもこの溝を通じて冷却液をサーモスタットバルブの感温部に導入することができるようになる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷却システムを備えた内燃機関である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態にかかる内燃機関の冷却システムの構成を示す模式図。
【図2】同実施形態にかかる冷却システムにおけるサーモスタットバルブのトップ側バルブが閉弁している状態を示す断面図。
【図3】同実施形態にかかる冷却システムにおけるサーモスタットバルブのボトム側バルブが閉弁している状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明にかかる内燃機関の冷却システムを自動車に搭載される車載内燃機関の冷却システムとして具体化した一実施形態について、図1〜3を参照して説明する。
図1に示されるように内燃機関のウォータジャケット10には主循環通路21が接続されている。図1の左側に示されるように主循環通路21の途中にはラジエータ20とウォータポンプ30が設けられており、ウォータポンプ30が駆動されることによって冷却液がウォータジャケット10とラジエータ20との間を循環するようになっている。すなわち、ウォータジャケット10内を通過して内燃機関の熱を奪うことにより暖められた冷却液はこの主循環通路21を通じてラジエータ20に導入され、同ラジエータ20を通過する間に放熱して冷却されたあと、ウォータジャケット10に戻される。
【0025】
なお、図1の右側に示されるように本実施形態にかかる内燃機関のウォータジャケット10は、シリンダブロック内に形成されたブロック側ウォータジャケット11とシリンダヘッド内に形成されたヘッド側ウォータジャケット12とによって構成されている。ブロック側ウォータジャケット11とヘッド側ウォータジャケット12はエンジン内部で連通しているため、ウォータポンプ30から吐出され、ブロック側ウォータジャケット11に導入された冷却液はシリンダの周囲を冷却するとともにヘッド側ウォータジャケット12に導入される。
【0026】
図1の左側下方に示されるように主循環通路21におけるラジエータ20とウォータポンプ30との間を接続する部分には、冷却液の温度に応じて動作するサーモスタットバルブ40が設けられている。なお、サーモスタットバルブ40は後述するようにトップ側バルブ43とボトム側バルブ46とを備えたボトムバイパス型のサーモスタットバルブである。
【0027】
図1の右側下方に示されるようにブロック側ウォータジャケット11には、主循環通路21に加え、同ブロック側ウォータジャケット11内の冷却液をサーモスタットバルブ40に導く還流通路54が接続されている。還流通路54の途中には、ウォータジャケット10を通過することによって暖められた冷却液の熱を利用して空気を暖めて暖房用の温風にするヒータコア55が設けられている。
【0028】
なお、以下の説明では、主循環通路21のうち、ヘッド側ウォータジャケット12とラジエータ20とを接続している通路を第1循環通路21aとする一方、ラジエータ20とサーモスタットバルブ40とを接続している通路を第2循環通路21bとする。また、ウォータポンプ30が設けられ、サーモスタットバルブ40とブロック側ウォータジャケット11とを接続している通路を第3循環通路21cとし、説明の便宜上、これらの通路を必要に応じて区別して説明する。
【0029】
図1の中央に示されるように第1循環通路21aには、第1バイパス通路51が接続されている。第1バイパス通路51は第1循環通路21aから分岐してサーモスタットバルブ40のボトム側バルブ46の部分に接続されている。すなわち、第1バイパス通路51はラジエータ20を迂回する通路であり、ラジエータ20を通過させずにサーモスタットバルブ40を介してウォータポンプ30に冷却液を還流させる通路である。
【0030】
この第1バイパス通路51には、ヘッド側ウォータジャケット12から延びる第2バイパス通路52が接続されている。すなわち、本実施形態の冷却システムには、ラジエータ20を迂回するバイパス通路として第1バイパス通路51と第2バイパス通路52の2つのバイパス通路が設けられている。
【0031】
次に、図2を参照してサーモスタットバルブ40の構成と、サーモスタットバルブ40を介して接続される各通路と同サーモスタットバルブ40との関係を詳しく説明する。
サーモスタットバルブ40のホルダ41は、主循環通路21をはじめとする各通路が接続されているハウジングに固定されている。ホルダ41の内部には感温部42が収容されている。感温部42には板状の弁体43aが固定されており、ホルダ41の一部を構成するシート部43bとこの弁体43aとによりトップ側バルブ43が構成されている。シート部43bには図示しない貫通孔が形成されており、図2に示されるようにシート部43bに弁体43aが当接している場合にはこの貫通孔が弁体43aによって閉塞され、トップ側バルブ43が閉弁された状態となる。
【0032】
図2の中央に示されるように弁体43aとホルダ41との間にはスプリング44が挟み込まれており、弁体43aはこのスプリング44が復元しようとする力によって作用する付勢力によってトップ側バルブ43を閉弁する方向に常に付勢されている。図2の左側に示されるように感温部42の端部からはプッシュロッド45が突出しており、ホルダ41に当接している。感温部42の内部には感温部42に触れる冷却液の温度に応じて融解したり、凝固したりするワックスが封入されている。プッシュロッド45はこのワックスが融解することによって体積が膨張したときに感温部42から繰り出されるようになっている。すなわち、感温部42は周囲の温度変化に応じて動作するサーモエレメントであり、感温部42に触れる冷却液の温度に応じてプッシュロッド45の突出量が変化するようになっている。具体的には感温部42に触れる冷却液の温度が高くなるほどプッシュロッド45の突出量が多くなる一方、感温部42に触れる冷却液の温度が低くなるほどプッシュロッド45の突出量が少なくなるように動作する。
【0033】
図2の右側に示されるように、感温部42のプッシュロッド45が突出している部分とは反対側の端部には、弁体46aが取り付けられている。弁体46aはハウジング内に形成されたシート部46bと対向しており、この弁体46aとシート部46bとによりボトム側バルブ46が構成されている。弁体46aと感温部42との間には、弁体46aがシート部46bに着座したときのショックを和らげるスプリング47が取り付けられている。
【0034】
このように構成されたサーモスタットバルブ40は図2に示されるようにトップ側バルブ43を第2循環通路21bに向ける一方、ボトム側バルブ46を第1バイパス通路51と第2バイパス通路52とが合流する集合部53に向けるように配設されている。そして、図2に示されるように還流通路54と第3循環通路21cは、このように配設されたサーモスタットバルブ40の感温部42に望むように接続されている。
【0035】
上述したように感温部42にはワックスが封入されており、このワックスの体積に応じてプッシュロッド45の突出量が変化するようになっている。プッシュロッド45はホルダ41に当接しているため、感温部42及びこの感温部42に固定された弁体43a及び弁体46aはプッシュロッド45の突出量の変化に伴ってホルダ41に対して相対的に変位することになる。
【0036】
サーモスタットバルブ40はこうした原理を利用して感温部42に導かれる冷却液の温度に応じてトップ側バルブ43とボトム側バルブ46の開弁量を変化させ、それぞれの弁を開閉することによって冷却液の循環経路を切り替える。
【0037】
感温部42に導かれる冷却液の温度が低く、プッシュロッド45の突出量が少ないときには、図2に示されるようにスプリング44の付勢力によってトップ側バルブ43が閉弁された状態に保たれるため、トップ側バルブ43が閉弁されている一方でボトム側バルブ46が開弁されている状態になる。
【0038】
一方、感温部42に導かれる冷却液の温度が高くなるほどプッシュロッド45の突出量は多くなるため、スプリング44の付勢力に抗して感温部42は図2における右側に向かって変位し、弁体43aがシート部43bから離間してトップ側バルブ43が開弁するようになる。このように感温部42に触れる冷却液の温度が高くなり、感温部42が図2における右側に向かって変位してトップ側バルブ43の開弁量が次第に大きくなると、ボトム側バルブ46の開弁量は次第に小さくなる。
【0039】
そして、さらに感温部42に触れる冷却液の温度が高くなり、図3に示されるように弁体46aがシート部46bに当接すると、ボトム側バルブ46が閉弁されるようになる。なお、図3に示されるようにシート部46bには、弁体46aが当接する部分よりも外側まで延びる溝56が形成されている。これにより、本実施形態にかかる燃料供給システムにあっては、弁体46aが同シート部46bに当接し、ボトム側バルブ46が閉弁している状態であっても集合部53内の冷却液の一部を感温部42に導くことができるようになっている。
【0040】
(作用)
次に上記のように配設されたサーモスタットバルブ40を介して各通路が接続されている本実施形態にかかる内燃機関の冷却システムの作用について説明する。
【0041】
感温部42に導かれる冷却液の温度が低く、図2に示されるようにトップ側バルブ43が閉弁しているときには、第2循環通路21bが閉塞されるため、ラジエータ20を通じての冷却液の循環が停止される。また、このようにトップ側バルブ43が閉弁しているときには、ボトム側バルブ46が開弁されているため、図1並びに図2に実線矢印で示されるように冷却液が流れ、第1バイパス通路51及び第2バイパス通路52を通じてラジエータ20を迂回するように冷却液が循環されることになる。
【0042】
これに対して、感温部42に導かれる冷却液の温度が高くなり、図3に示されるようにトップ側バルブ43が開弁している一方、ボトム側バルブ46が閉弁している状態になっているときには、図3の左側に破線矢印で示されるように第2循環通路21bを通じて導かれた冷却液が第3循環通路21c側に流れる。その結果、図1の上方に破線矢印で示されるように第1循環通路21aを通じてラジエータ20に冷却液が供給されるとともに、図1の左側下方に破線矢印で示されるようにラジエータ20からサーモスタットバルブ40に冷却液が導かれ、サーモスタットバルブ40を介してラジエータ20側からウォータポンプに向かって冷却液が流れる。そのため、ラジエータ20に冷却液を供給している第1循環通路21a内の圧力は低くなる。その一方で、このときには図3に示されるようにボトム側バルブ46が閉弁しているため、集合部53内の圧力は高くなる。その結果、集合部53内の冷却液は図1の中央及び図3の右側に破線矢印で示されるように第1バイパス通路51を通じて第1循環通路21aに流れ込むようになり、第1循環通路21aを通じてラジエータ20に供給されるようになる。
【0043】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)トップ側バルブ43が閉弁している一方、ボトム側バルブ46が開弁してラジエータ20を迂回させて冷却液を循環させているときと、トップ側バルブ43が開弁している一方、ボトム側バルブ46が閉弁してラジエータ20を通じて冷却液を循環させているときとで第1バイパス通路51内を流れる冷却液の流れの方向が反転するようになる。
【0044】
そして、その結果、トップ側バルブ43が開弁している一方、ボトム側バルブ46が閉弁してラジエータ20を通じて冷却液を循環させているときには、第2バイパス通路52を通じて集合部53に導入された冷却液が第1バイパス通路51を通じて第1循環通路21aに流れ込むようになる。したがって、第1バイパス通路51及び第2バイパス通路52を流れる冷却液もラジエータ20を通過するようになるため、常に冷却液の一部がバイパス通路を通じてラジエータを迂回して循環されている従来の冷却システムと比較して循環される冷却液の量に対するラジエータを通過する冷却液の量の割合が増大し、冷却効率が向上するようになる。すなわち、冷却液の温度が高くなり、ラジエータ20を通じて冷却液が循環されるようになったときに、たくさんの冷却液をラジエータ20を通じて循環させることができ、高い冷却効率を実現することができる。
【0045】
(2)内燃機関にあってはピストンが上昇し、混合気が圧縮された状態で点火が行われ、燃焼が生じる。そのため、ブロック側ウォータジャケット11内を流れる冷却液よりもヘッド側ウォータジャケット12内を流れる冷却液の方が燃焼熱の影響を受けやすく、高温になりやすい。上記の実施形態によれば、高温になりやすいシリンダヘッド内に形成されたヘッド側ウォータジャケット12を通過して温度が上昇した冷却液がラジエータ20に導かれるようになる。そのため、燃焼熱の影響を受けて高温になった冷却液をラジエータ20に導いて冷却することができ、効果的に内燃機関の過熱を抑制できる。
【0046】
(3)上述したように、ブロック側ウォータジャケット11を通過した冷却液よりもヘッド側ウォータジャケット12を通過した冷却液の方がより燃焼熱の影響を受けやすい。そのため、ブロック側ウォータジャケット11を通過した冷却液よりもヘッド側ウォータジャケット12を通過した冷却液の温度の方が内燃機関の温度変化をより的確に表しているといえる。これに対して上記実施形態にあっては、第2バイパス通路52をヘッド側ウォータジャケット12に接続し、ヘッド側ウォータジャケット12を通過した冷却液をサーモスタットバルブ40の感温部42に導くようにしている。そのため、内燃機関の温度変化をより速やかに反映させた態様でサーモスタットバルブ40を作動させることができる。
【0047】
(4)ボトム側バルブ46のシート部46bに溝56を形成することによって連通路を形成している。そのため、ボトム側バルブ46が閉弁したときであってもヘッド側ウォータジャケット12を通過した冷却液の一部がこの連通路を通じて感温部42に導入されるようになっている。そのため、ボトム側バルブ46が閉弁しているときであっても、内燃機関の温度に応じて適切にサーモスタットバルブ40を作動させることができる。
【0048】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、ボトム側バルブ46のシート部46bに溝56を設け、この溝56を連通路とする構成を例示したが、こうした構成に替えてボトム側バルブ46の弁体46aに溝を設け、これを連通路とする構成を採用することもできる。
【0049】
・なお、連通路を弁体46aとシート部46bの双方に設けるようにしてもよい。
・また、連通路の具体的な構成としては、上記実施形態のように溝を形成する構成以外に、弁体46aを貫通する孔を設ける構成や、弁体46aを迂回するようにハウジングに連通孔を形成する構成などを採用することもできる。
【0050】
・第1バイパス通路51及び第2バイパス通路52がヘッド側ウォータジャケット12に接続されている例を示したが、第1バイパス通路51や第2バイパス通路52はウォータジャケット10に接続されてラジエータ20を迂回させて冷却液をサーモスタットバルブ40のボトム側バルブ46に導くものであればよい。そのため、第1バイパス通路51及び第2バイパス通路52は、必ずしもヘッド側ウォータジャケット12に接続されていなくてもよい。例えば、第1バイパス通路51をブロック側ウォータジャケット11に接続する構成や、第2バイパス通路52をブロック側ウォータジャケット11に接続する構成を採用することもできる。
【0051】
・還流通路54をブロック側ウォータジャケット11に接続し、ブロック側ウォータジャケット11を通過した冷却液をウォータポンプ30に還流させる構成を示したが、還流通路54はヘッド側ウォータジャケット12に接続されていてもよい。
【0052】
・また、上記実施形態にあっては、還流通路54の途中にヒータコア55を設け、ウォータジャケット10を通過して暖められた冷却液の熱を利用して暖房用の温風を作る例を示した。これに対して、その他、ウォータジャケット10を通過して暖められた冷却液の熱を利用する方法として、還流通路54を流れる冷却液をスロットルボデーやEGRバルブなどに循環させ、これらが凝縮水の凍結によって固着してしまうことを抑制する構成を採用することもできる。
【0053】
・また、暖房の利便性を向上させるために、還流通路54に電動のウォータポンプを設け、主循環通路21とは異なる態様で還流通路54内の冷却液を循環させる構成を採用することもできる。
【0054】
・また、その他、冷却液との熱交換の作用を利用するために還流通路54内にオイルクーラやEGRクーラを設ける構成を採用することもできる。
・さらに、還流通路54をブロック側ウォータジャケット11ではなくヘッド側ウォータジャケット12に接続する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
10…ウォータジャケット、11…ブロック側ウォータジャケット、12…ヘッド側ウォータジャケット、20…ラジエータ、21…主循環通路、21a…第1循環通路、21b…第2循環通路、21c…第3循環通路、30…ウォータポンプ、40…サーモスタットバルブ、41…ホルダ、42…感温部、43…トップ側バルブ、43a…弁体、43b…シート部、44…スプリング、45…プッシュロッド、46…ボトム側バルブ、46a…弁体、46b…シート部、51…第1バイパス通路、52…第2バイパス通路、53…集合部、54…還流通路、55…ヒータコア、56…溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータを迂回するバイパス通路と、ラジエータからウォータポンプに冷却液を還流する通路を開閉するサーモスタットバルブとを備え、冷却液の温度が低いときに前記サーモスタットバルブによって前記ラジエータを通じての冷却液の循環が停止される内燃機関の冷却システムであり、
前記サーモスタットバルブが、前記ラジエータから前記ウォータポンプに冷却液を還流する通路を開閉するトップ側バルブと、同トップ側バルブの開弁量が大きくなるほど開弁量が小さくなるボトム側バルブとを備えたボトムバイパス型サーモスタットバルブであるとともに、
前記バイパス通路として、前記ラジエータに冷却液を供給する通路から分岐する第1バイパス通路と、内燃機関のウォータジャケットから延びて前記第1バイパス通路に合流する第2バイパス通路とを備え、第1バイパス通路と第2バイパス通路が合流している集合部が前記ボトム側バルブを介して前記ウォータポンプに接続されている
ことを特徴とする内燃機関の冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の冷却システムにおいて、
前記ラジエータに冷却液を供給する通路が、内燃機関のシリンダヘッド内に形成されたウォータジャケットに接続されている
ことを特徴とする内燃機関の冷却システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内燃機関の冷却システムにおいて、
前記第2バイパス通路が、内燃機関のシリンダヘッド内に形成されたウォータジャケットに接続されている
ことを特徴とする内燃機関の冷却システム。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の冷却システムにおいて、
前記ボトム側バルブのシート部には、同ボトム側バルブの閉弁時にも前記集合部内の冷却液の一部を前記サーモスタットバルブの感温部に導くことができるように連通路が設けられている
ことを特徴とする内燃機関の冷却システム。
【請求項5】
請求項3に記載の内燃機関の冷却システムにおいて、
前記ボトム側バルブの弁体には、同ボトム側バルブの閉弁時にも前記集合部内の冷却液の一部を前記サーモスタットバルブの感温部に導くことができるように連通路が設けられている
ことを特徴とする内燃機関の冷却システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の内燃機関の冷却システムにおいて、
前記連通路が溝である
ことを特徴とする内燃機関の冷却システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷却システムを備えた内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−225216(P2012−225216A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92196(P2011−92196)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】