説明

内燃機関の冷却装置

【課題】 サーモエレメント感温部分への冷却水の感温を鈍くし、より電気的なヒータによる任意のタイミングでのメインバルブ開閉を制御できるサーモスタット装置を得る。
【解決手段】 サーモスタット装置1は、ピストン3と、該ピストンに対し進退動作し冷却水のメイン流路を開閉するフランジ弁を有するシリンダ容器4と、その内部で温度変化に伴う体積変化でシリンダ容器をピストン上で進退動作させる熱膨張体Wと、ピストン内に設けられ通電により熱膨張体に熱を与える発熱素子Hからなるサーモエレメント組立体10を備える。シリンダ容器の冷却水に臨む外側部分を覆うように形成した断熱カバー20を設ける。また、断熱カバーの内側でシリンダ容器外側面との間に樹脂製断熱材21や空気層22を選択的に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等に使用される内燃機関(以下、エンジンという)の冷却水温度を可変制御する冷却水温度制御系において水温可変制御を行う内燃機関の冷却装置としてのサーモスタット装置(以下、サーモスタット装置という)に関し、特にそのサーモエレメント組立体の装置ハウジングに対する組付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジン等の冷却水系に配置されるサーモスタット装置は、循環流路内を流れる冷却水の温度変化を感知して膨張・収縮するワックス(熱膨張体)を内蔵している。そして、前記サーモスタット装置は、ワックスの膨張、収縮に伴う体積変化により弁体の開閉を行って、冷却水を所定の温度に保持するように機能する。
【0003】
この種のサーモスタット装置として、たとえば複数の流路に連結されるハウジング内に設置されると共に、ハウジング内に固定されたピストンと、ピストンに対して進退動作するシリンダ容器と、シリンダ容器内に設けられ、温度変化に伴う体積変化によりシリンダ容器を進退動作させるワックスと、ピストンのケーシング内に設けられ、通電することによりワックスに熱を与える発熱素子とを備えた構造のものが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この従来構造による装置では、発熱素子を、ピストンのケーシング外からケーシング内に貫通して形成された熱伝導性を有する延設部材と、ケーシング内における延設部材内に形成された発熱部と、ケーシング外における延設部材に形成され、発熱部と電気的に接続された電極部とで構成し、発熱部に電圧供給するターミナル端子を電極部に当接させて、電圧供給源と前記発熱部を電気的に接続している。そして、発熱部を選択的に発熱させることにより、感温部のワックスに熱を伝達させ、シリンダ容器をピストンに対して進退動作させることにより、冷却水温度には連動せずに、サーモスタット装置を動作させ得る電気制御式の構造となるものである。
【0005】
このように構成によれば、電圧供給されるターミナル端子が延設部材の電極部と当接し、発熱素子に対して着脱自在に構成されているため、組立、メンテナンスが容易となる。また、発熱素子における発熱部は延設部材内に形成され、電圧印加される電極部のみが延設部材に形成されるため、容易に破断することのない耐久性の高い発熱素子を得ることができ、さらに発熱素子はピストンのケーシング内に設けられるため、ピストン周面から略均一に発熱することができ、効果的に熱膨張体を加熱することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−155831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したような従来の電気制御式のサーモスタット装置においては、サーモエレメント組立体の感温部は常時冷却水中に晒されることにより、冷却水の温度影響を受ける構造となっており、これにより本来のサーモスタットとしての機能を確保し得るものである。
【0008】
しかし、このような従来装置では、例えばデフロスト(車内空調装置での除霜のこと)要求により、低温度域でも、メインバルブを強制的に開弁させるために、サーモエレメントの感温部分に該サーモエレメントとは別体の断熱カバー等を装着し、これにより低温時の水温の影響を受けにくくする必要がある。
メインバルブを強制的に開弁させる必要があるが、軽量化のため、シリンダ容器を薄く形成することが考えられる。しかし、その場合、低温度域でワックスが冷却水温度の影響を受け過ぎてしまい、ヒータを用いても、暖まりにくくなる。また、ケース自体が厚い構成に比べ、ケースを薄くした断熱カバーの方が軽量である。
【0009】
特に、この種のサーモエレメントの感温部分は、ワックスにより冷却水の水温を感知するうえで必要なところであり、当該部分に断熱カバー等の断熱材による断熱構造を採用するにあたっては、単純に断熱材を設ければよいというものではなく、何らかの対策を講じる必要がある。すなわち、必要時には、冷却水温度の熱影響でワックスを膨張、収縮させて所要の作動状態を確保する一方、電気制御が必要なときには、所要の状態での発熱部の発熱を利用した作動状態を確保することが必要であり、これらの相反する要請を満足することが必要である。
【0010】
また、上述した従来装置において、断熱カバーが樹脂のみで構成する場合には、断熱カバー部分とメインバルブ用ばね及びバイパスバルブ用ばねが接触するが、金属であるメインバルブ用ばね及びバイパスバルブ用ばねと樹脂である断熱カバーが当接する摩擦で断熱カバーが破損もしくは削れてしまうことになり、これにより冷却回路内に樹脂片が混入してしまうといった不具合を生じるおそれがある。このような不具合をなくすには、ばねを当接する際には、金属ワッシャー等を前記当接部に挟むことが必要になり、部品点数が増加するといった構造上での問題を生じるものであり、このような点にも配慮する必要がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、サーモスタット感温部分への冷却水の感温を鈍くし、より電気的なヒータによる任意のタイミングでのメインバルブ開閉を適切かつ確実に制御することができる内燃機関の冷却装置としてのサーモスタット装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る内燃機関の冷却装置は、冷却水が流れる複数の流路に連結された装置ハウジング内に臨んで設置固定されたピストンと、前記ピストンに対して進退動作し前記冷却水のメイン流路を開閉するフランジ弁を有するシリンダ容器と、前記シリンダ容器内に設けられ温度変化に伴う体積変化によりシリンダ容器をピストン上で進退動作させる熱膨張体と、前記ピストンのケーシング内に設けられ、通電することにより前記熱膨張体に熱を与える発熱素子とを備えた内燃機関の冷却装置であって、前記シリンダ容器の冷却水に臨む外側部分を覆うように形成された断熱カバーを設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明(請求項2記載の発明)に係る内燃機関の冷却装置は、冷却水が流れる複数の流路に連結された装置ハウジング内に臨んで設置固定されたピストンと、前記ピストンに対して進退動作し前記冷却水のメイン流路を開閉するフランジ弁を有するシリンダ容器と、前記シリンダ容器内に設けられ温度変化に伴う体積変化によりシリンダ容器をピストン上で進退動作させる熱膨張体と、前記ピストンのケーシング内に設けられ、通電することにより前記熱膨張体に熱を与える発熱素子とを備えた内燃機関の冷却装置であって、前記シリンダ容器の冷却水に臨む外側部分を覆うように形成された断熱カバーを備え、この断熱カバーには、前記シリンダ容器の感温部側の先端に可動可能に設けられ前記冷却水のサブ流路を開閉する第2のフランジ弁を付勢するばね手段の一端を係止するばね受け座として機能する受け部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明(請求項3記載の発明)に係る内燃機関の冷却装置は、請求項1または請求項2において、前記断熱カバーの内側には樹脂製断熱材が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明(請求項4記載の発明)に係る内燃機関の冷却装置は、請求項1または請求項2において、前記断熱カバーの内側には、前記シリンダ容器の外側面との間に、断熱材層と空気層との複層構造による断熱部を形成する樹脂製断熱材が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明(請求項5記載の発明)に係る内燃機関の冷却装置は、請求項1または請求項2において、前記断熱カバーは、前記シリンダ容器の外側面との間に断熱用の空気層を形成するように形成されていることを特徴とする。
【0017】
このような本発明によれば、金属製等による断熱カバーの内側に樹脂製断熱材を焼き付け等で設けたり、樹脂製断熱材に部分的に空気層を形成する形状で形成し複層構造としたり、空気層を介してサーモエレメント感温部分を取り囲むようにすることにより、サーモエレメント感温部分での冷却水温度を感温を鈍くし、これによりヒータ発熱部による所要の電気制御を行って、環境などに応じた所要のサーモスタット作動状態を得ることができるものである。勿論、上述した断熱材は、取り外し可能の別体構造であっても良い。
【0018】
また、本発明によれば、断熱カバーの一部にバルブ用ばねの一端を係止するばね受け座といて機能する受け部を設けているから、余分な部品をばね受けとして追加する必要がなく、構造が簡素化し、作業性も優れ、コスト面でも安価な構造とすることができるものである。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明に係る内燃機関の冷却装置によれば、サーモエレメントとしてのシリンダ容器の少なくとも感温部分に金属製等による断熱カバーを設け、所要の断熱効果を発揮できるように構成しているから、簡単な構成であるにもかかわらず、サーモエレメントの感温部分での冷却水温度の感温度合いを鈍くし、冷却水温度の影響を少なくし、冷却水温度を感温することによるサーモエレメント自身の作動を抑制し、より電気的なヒータによる任意でのメインバルブの開閉制御を簡単かつ確実に制御することが可能であり、また断熱材による保温機能、保温機能によるサーモエレメントのピストンリフト保持機能等もあり、これによりサーモスタット装置としての所要の作動状態を得ることができる。さらに電気的ヒータへの通電量、通電時間等を削減でき、省エネ効果もある。
【0020】
特に、本発明によれば、断熱カバーのサーモエレメント感温部分に対応する部分に、樹脂製断熱材、樹脂製断熱材による断熱材層と空気層とによる複層構造、あるいは空気層を設けた構造とすることにより、サーモエレメント感温部分での感温度合いを所要の状態で鈍くすることができ、所要のサーモスタット作動状態を得ることができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る内燃機関の冷却装置の一実施形態を示し、サーモスタット装置全体の概略構成を示す概略断面図である。
【図2】図1のサーモスタット装置における要部を拡大した拡大断面図である。
【図3】本発明に係る内燃機関の冷却装置の別の実施形態を示し、図2に対応する要部拡大断面図である。
【図4】図3におけるサーモエレメント部分の横断面図である。
【図5】図4の変形例を示す横断面図である。
【図6】図4、図5の変形例を示す横断面図である。
【図7】本発明に係る内燃機関の冷却装置の他の実施形態を示し、図2、図3に対応する要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1および図2は本発明に係る内燃機関の冷却装置であるサーモスタット装置の一実施形態を示す。
これらの図において、全体を符号1で示すサーモスタット装置は、冷却水が流れる複数の流路に連結される装置ハウジング(以下、単にハウジングという)2内に設置され、前記流路を弁動作により連通または遮断する働きをする。
【0023】
このサーモスタット装置1は、ハウジング2内に垂下した状態で固定されているピストン3と、このピストン3に対して進退動作するシリンダ容器(サーモエレメントケース)4とを備えている。また、前記シリンダ容器4の上端側の外周に形成され前記冷却水のメイン流路を開閉するフランジ弁5と、シリンダ容器4を取り巻いて設置されるとともにフランジ弁5の裏側に一端が当接したスプリング6と、シリンダ容器4の下部外周に形成されるとともにスプリング6の他端が当接する下部フランジ7とを備えている。
【0024】
前記ピストン3は、長尺な金属管により先端が密封された円管形状を呈する形状で形成されている。そして、その外周部にシリンダ容器4が嵌装されることにより、内部に熱膨張体としてのワックスWを封入したサーモエレメント組立体(サーモエレメント)10を構成している。
【0025】
なお、ワックスWの温度が上昇するとワックスWの体積が膨張し、シリンダ容器4に対してピストン3を伸長するように進退動作する。すなわち、ピストン3は、ハウジング2に対して固定されているため、シリンダ容器4が下方に摺動し、該シリンダ容器4の上端側のフランジ弁5が弁座5aから離れて冷却水流路を開弁するように動作する。
【0026】
一方、ワックスWの温度が低く、ピストン3が収縮状態にある場合にはスプリング6の弾発力により前記フランジ弁5が前記弁座5aに対して圧着され、冷却水流路を閉弁した状態となる。
【0027】
ここで、シリンダ容器4は、内部に円柱状空間をもち、その内部に前記ピストン3が挿入されることで形成されるすきま空間内にワックスWが封入されている。なお、シリンダ容器4の上端開口部は、ピストン3を摺動自在に保持するシール部材でシールされている。
【0028】
また、前記ハウジング2には、前記サーモエレメント組立体10を構成するピストン3の上端部を組み付け固定するための組付け孔11が形成されている。この組付け孔11には、前記ピストン3の上端側に設けられた筒状部12が嵌合保持されることで固定されている。
【0029】
一方、前記シリンダ容器4の下端部には、ロッド部13が延設するように設けられるとともに、その下端部には、前記冷却水のメイン流路に選択的に連通されるサブ流路を構成するバイパス通路(図示せず)を開閉する第2のフランジ弁(バイパスバルブ)14が摺動可能に設けられ、バイパスバルブ用スプリング15が該第2のフランジ弁14を常時弁閉方向に付勢している。
【0030】
図中Hはピストン3のケーシング内に設けられ、通電することによりワックスWに熱を与える発熱素子としての棒状ヒータであり、該ピストン3の先端部には、シリコン等の熱伝導性材料が封入されて該ピストン3に一体的に組み立てられるようになっている。
【0031】
この棒状ヒータHは、周知の通り、たとえばセラミック材等の耐熱絶縁体内に発熱線を埋設した構造を有している。この棒状ヒータHは、前記ピストン3のケーシング内に挿入され、外部電源が制御部(図示せず)を介して電気的に接続されることにより、必要に応じて発熱し、前記ワックスWを加熱昇温させ得るように構成されている。これにより、ピストン3上でシリンダ容器4を進退動作させ、流路中のバルブを開閉制御することは言うまでもない。
【0032】
なお、上記棒状ヒータHの上端部は装置ハウジング2の外方に導かれ、図示しない外部電源にコントローラ等を介して接続されている。
【0033】
ここで、このような棒状ヒータHは、予めピストン3内に組込み、前記サーモエレメント組立体10として構成していてもよいし、あるいは、コネクタ部材21側に組み付けておき、サーモエレメント組立体10をハウジング2に組み付けてから、ピストン3内に組み込むように構成してもよいことは言うまでもない。
【0034】
さて、本発明によれば、上述した構成によるサーモスタット装置1において、図1および図2に示すように、シリンダ容器4のワックスWを封入した感温部分の外側を覆うように形成したほぼ円筒状を呈する金属製等による断熱カバー20を設けている。そして、この断熱カバー20には、前記シリンダ容器4の感温部側の先端のロッド部13に可動可能に設けた第2のフランジ弁14を該バルブの弁閉方向に付勢するバイパスバルブ用スプリング(ばね手段)15の一端を係止するばね受け座として機能する受け部20aが設けられている。
【0035】
ここで、断熱カバー20としては、金属製によるものに限定されず、所要の断熱効果が得られる材料であれば、セラミック製、あるいは樹脂製、さらに例えばゴム等の弾性部材等、適宜の材料を選択できる。
また、前記受け部20aは、断熱カバー20に設けた段差部、段部、縮径部等により形成されている。
【0036】
さらに、前記断熱カバー20の内側には、図1および図2に示すように、樹脂製断熱材21が設けられている。この樹脂製断熱材21は、断熱カバー20の内側でサーモエレメントとなるシリンダ容器4の外側との間に介在されるようにして該カバー内側に焼き付け等で設けられている。
【0037】
また、この実施形態では、ほぼ円筒状を呈する断熱カバー20を、サーモエレメントケースとなるシリンダ容器4の軸線方向に沿ってほぼ全体を覆うように配置している。ここで、この断熱カバー20の上端側は前記フランジ弁5のバルブプレート部20bとして一連に形成され、該フランジ弁5を構成するフランジ状弁体を構成している。
【0038】
また、上述した樹脂製断熱材21は、図1に示すように、断熱カバー20の内側で前記サーモエレメントケースであるシリンダ容器4の感温部分を覆う位置に対応してカバー裏側に焼き付けられている。ここで、図1、図2から明らかなように、樹脂製断熱材21は、ケース内部のワックスWに対応する部位に位置づけられており、この樹脂製断熱材21の存在により、冷却水温度による熱影響がワックスWに及ばないようになっている。
【0039】
換言すれば、断熱カバー20及びその内側の樹脂製断熱材21は、シリンダ容器4内のワックスW部分を全周にわたって覆うことにより、冷却水温度による熱影響を断熱するようになっている。
【0040】
なお、断熱カバー20の外側の流路を流れる冷却水温度による熱影響は、図1中矢印で示すように、樹脂製断熱材21が内側に存在していないシリンダ容器4の上端側部分からシリンダ容器4内に侵入し、ワックスWを膨張または収縮させるようになっている。
【0041】
このような金属製等による断熱カバー20を用いると、前記シリンダ容器(サーモエレメントケース)4の少なくとも感温部分を所要の状態で断熱保護することが可能で、これによりサーモエレメント感温部分での冷却水温度の感温度合いを鈍くし、より電気的なヒータHによる任意でのメインバルブの開閉制御を簡単かつ確実に制御することが可能であり、これによりサーモスタット装置1としての所要の作動状態を得ることができる。
【0042】
そして、上述した断熱カバー20を設けることにより、従来、デフロスト要求時に問題となっていた低温時の水温の影響を受けにくくし、これにより所望の状態でのサーモスタット作動を行わせることができるものである。
【0043】
また、上述した構成では、断熱カバー20を金属製とし、その一部にばね受け座となる受け部20aを設けているから、従来のように余分にばね受けを設ける必要はなくなり、備品点数、組立工数等の削減が可能となる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、サーモスタット装置1を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
たとえば上述した実施形態では、断熱カバー20のサーモエレメント感温部分に対応する部分に、樹脂製断熱材21を介在させるように設けた場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、図3以下に示すバリエーションを適宜採用することは自由である。
【0045】
すなわち、図3に示すように、断熱カバー20の裏側に樹脂断熱材による断熱材層(21)と空気層22とによる複層構造の断熱部を形成してもよい。ここで、このような複層構造の断熱部としては、図4に示すように、断熱材層21の外側に放射方向に複数の突条部を突設して断熱カバー20の裏面側に設けることで空気層22を形成した構造、あるいは図5に示すように、断熱材層21の内側に求心方向に突設した突条部を設けて空気層を形成した構造にいずれであってもよい。ここで、断熱材層21に設けた突条部は、サーモエレメント(シリンダ容器4)の外側に断熱カバー20を保持しつつ、空気層22を形成する役割りを果たすところである。
【0046】
また、図6(a),(b)に示すように、樹脂製断熱材21として波形断面形状のものを筒状に形成したものを用いてもよい。ここで、同図(b)に示すものは、断熱材21と合わせて断熱カバー20をも、同様の波状断面をもつ筒体で構成した例である。要は、断熱材21による部分と空気層22による部分とで断熱性能を発揮させ得るような構成とすればよい。勿論、これら図6(a),(b)で示す波状断面の形状や数、大きさ等は適宜変形、変更してもよいことは言うまでもない。
【0047】
さらに、図7に示すように、断熱カバー20の内側でサーモエレメント(シリンダ容器4)の感温部分の外側との間に環状の断熱用空気層22を設けた構造であってもよい。
このような断熱部構造を採用することにより、サーモエレメント感温部分での感温度合いを所要の状態で鈍くし、ヒータHの発熱による電気制御を所要の状態で行うことができ、これにより所要のサーモスタット作動状態を得ることができるものである。
【0048】
ここで、上述した図7の構造では、断熱カバー20の内側が断熱用空気層22により構成されているから、該断熱カバー20の下端側小径部分を前記サーモエレメント(シリンダ容器4)に対し圧入して組み付けるように構成している。
【0049】
さらに、上述した説明では、断熱材21を断熱カバー20の内側に焼き付け等で固着して設けた場合を説明したが、これに限定されず、別体構造であってもよいことは言うまでもない。
【0050】
また、上述した実施形態では、サーモスタット装置1として、棒状ヒータHを内設した構造のものを説明したが、本発明はこれに限定されず、電気的制御を必要としないサーモスタット装置であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 サーモスタット装置(内燃機関の冷却装置)
2 装置ハウジング
3 ピストン
4 シリンダ容器(サーモエレメントケース)
5 フランジ弁(メインバルブ;第1のフランジ弁)
6 スプリング
7 下部フランジ
10 サーモエレメント組立体(サーモエレメント)
11 取付け孔
12 筒状部
13 ロッド部
14 第2のフランジ弁(バイパスバルブ)
15 バイパスバルブ用スプリング(ばね手段)
20 断熱カバー
20a 受け部(ばね受け座)
20b 第1のフランジ弁のバルブプレート部
21 樹脂製断熱材
22 空気層
W ワックス(熱膨張体)
H 棒状ヒータ(発熱素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水が流れる複数の流路に連結された装置ハウジング内に臨んで設置固定されたピストンと、前記ピストンに対して進退動作し前記冷却水のメイン流路を開閉するフランジ弁を有するシリンダ容器と、前記シリンダ容器内に設けられ温度変化に伴う体積変化によりシリンダ容器をピストン上で進退動作させる熱膨張体と、前記ピストンのケーシング内に設けられ、通電することにより前記熱膨張体に熱を与える発熱素子とを備えた内燃機関の冷却装置であって、
前記シリンダ容器の冷却水に臨む外側部分を覆うように形成された断熱カバーを設けたことを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項2】
冷却水が流れる複数の流路に連結された装置ハウジング内に臨んで設置固定されたピストンと、前記ピストンに対して進退動作し前記冷却水のメイン流路を開閉するフランジ弁を有するシリンダ容器と、前記シリンダ容器内に設けられ温度変化に伴う体積変化によりシリンダ容器をピストン上で進退動作させる熱膨張体と、前記ピストンのケーシング内に設けられ、通電することにより前記熱膨張体に熱を与える発熱素子とを備えた内燃機関の冷却装置であって、
前記シリンダ容器の冷却水に臨む外側部分を覆うように形成された断熱カバーを備え、
この断熱カバーには、前記シリンダ容器の感温部側の先端に可動可能に設けられ前記冷却水のサブ流路を開閉する第2のフランジ弁を付勢するばね手段の一端を係止するばね受け座として機能する受け部が設けられていることを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の内燃機関の冷却装置において、
前記断熱カバーの内側には樹脂製断熱材が設けられていることを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の内燃機関の冷却装置において、
前記断熱カバーの内側には、前記シリンダ容器の外側面との間に、断熱材層と空気層との複層構造による断熱部を形成する樹脂製断熱材が設けられていることを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の内燃機関の冷却装置において、
前記断熱カバーは、前記シリンダ容器の外側面との間に断熱用の空気層を形成するように形成されていることを特徴とする内燃機関の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−102621(P2012−102621A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249510(P2010−249510)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000228741)日本サーモスタット株式会社 (52)
【Fターム(参考)】