説明

内燃機関の制御装置

【課題】この発明は、内燃機関の制御装置に関し、燃焼ガスの圧力振動に基づいて異常燃焼を検出するためのノックセンサを利用して、熱面着火に起因するプレイグニッションの発生を正確に検出できるようにすることを目的とする。
【解決手段】燃焼ガスの圧力振動に基づいて異常燃焼を検出可能なノックセンサ34を備える。プレイグが短期間で頻繁に発生している場合に、プレイグが発生する燃焼サイクルの間隔がゼロサイクルであって、ノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなっている場合に、熱面着火に起因するプレイグニッションが発生していると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に係り、特に、火花点火式の内燃機関に用いるうえで好適な内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、筒内圧センサを利用してプレイグニッション(以下、「プレイグ」と略する)の検出を行う内燃機関の制御装置が開示されている。この従来の制御装置では、点火時期よりも前の所定のクランク角において検出される筒内圧と基準筒内圧(正常燃焼時の筒内圧)との比較結果に基づいて、プレイグの発生の有無を判定するようにしている。そして、プレイグが発生したと判定したときの筒内圧の上昇率に基づいて、プレイグの発生個所を特定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−117325号公報
【特許文献2】特開2005−9457号公報
【特許文献3】特開2011−163322号公報
【特許文献4】特開昭63−19049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関(特に過給機付き内燃機関)において発生し得るプレイグには、発生要因に応じて次のような2種類のものがある。1つは、熱面着火に起因するものであり、もう1つは、燃焼室等に付着しているデポジットや油滴が着火源になるといわれているものである。熱面着火に起因するプレイグは、連続的に発生する場合には、燃焼サイクルの経過とともに混合気の着火時期が早くなっていくという特性を有している。また、プレイグの発生は、基本的にノックを伴う(誘発する)ものであり、プレイグ発生時の着火時期とノックの発生時期とは相関を有している。
【0005】
上記のような熱面着火に起因して生ずるプレイグを、上述した特許文献1のように筒内圧センサを利用するのではなく、燃焼ガスの圧力振動に基づいて異常燃焼を検出するノックセンサを用いて検出しようとする場合には、次のような課題が存在する。
【0006】
燃焼ガスの圧力振動に基づいて異常燃焼を検出するノックセンサを用いている場合には、熱面着火に起因するプレイグが連続的に発生して着火時期が徐々に早くなっていく際、当該プレイグの発生初期段階(着火時期があまり早くなっていない段階)においては筒内圧力の高い状態でプレイグによる圧力振動が発生するため、ノックセンサによってプレイグを検出することができる。しかしながら、当該プレイグの発生後半段階(着火時期が早くなっている段階)において筒内圧力が低い状態で発生するプレイグの弱い圧力振動は、ノックセンサによって検出することができない。また、当該プレイグの発生初期段階(着火時期があまり早くなっていない段階)においては強いノックを伴うが、当該プレイグの発生後半段階(着火時期が早くなっている段階)においてはノックセンサによってノックを検出できなくなる。これは、プレイグによって着火時期が早くなると、筒内圧力が低い状態(すなわち、ノックが発生しにくい状態)で燃焼が開始されることになるので、点火後にノックが発生するようなタイミングでは燃焼が完了してしまっているためである。より具体的には、熱面着火に起因するプレイグが連続的に発生して着火時期が徐々に早くなっていく際には、当該プレイグに伴うノックの強さは、初期において次第に大きくなっていった後に、後半にかけては次第に弱くなっていく。このため、ノックセンサでは、熱面着火に起因するプレイグが連発して着火時期が徐々に早くなっていくにつれ、プレイグの発生に伴うノックの検出時期も徐々に早くなっていき、やがてノックが検出できなくなっていく。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、燃焼ガスの圧力振動に基づいて異常燃焼を検出するためのノックセンサを利用して、熱面着火に起因するプレイグニッションの発生を正確に検出できるようにした内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、内燃機関の制御装置であって、
燃焼ガスの圧力振動に基づいて異常燃焼を検出可能なノックセンサと、
前記ノックセンサの出力に基づいてプレイグニッションの発生の有無を判定するプレイグ判定手段と、
前記プレイグ判定手段によってプレイグニッションが発生していると判定された場合に、前記ノックセンサを用いて検出されるノックの発生タイミングと、プレイグニッションが発生する燃焼サイクルの間隔とに基づいて、前記プレイグ判定手段によって発生していると判定されたプレイグニッションが熱面着火に起因して生じたものであるか否かを判定するプレイグ種類判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記プレイグ種類判定手段は、前記ノックセンサを用いて検出されるノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなり、かつ、プレイグニッションが発生する燃焼サイクルの間隔が所定値以下である場合に、熱面着火に起因するプレイグニッションが発生していると判定することを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記プレイグ種類判定手段は、前記ノックセンサの出力がピークとなるクランク角度位置に基づいて、ノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなっているか否かを判定することを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、
前記プレイグ種類判定手段によって熱面着火に起因するプレイグニッションが発生していると判定された内燃機関の運転領域を記憶するプレイグ領域記憶手段と、
前記プレイグ領域記憶手段により記憶された運転領域の使用時に前記プレイグ種類判定手段によって熱面着火に起因するプレイグニッションが発生していると判定される頻度が所定値以上となった場合に、内燃機関に異常が生じていると判定するエンジン異常判定手段と、
を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、熱面着火に起因するプレイグニッションの発生時に検出されるノックの発生タイミングの傾向と、当該プレイグニッションの発生時の燃焼サイクル間隔の傾向とに基づいて、ノックセンサを用いて熱面着火に起因するプレイグニッションの発生を正確に検出できるようになる。
【0013】
第2の発明によれば、熱面着火に起因して生ずるプレイグニッションの特性、すなわち、ノックセンサを用いて検出されるノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなり、かつ、プレイグニッションが発生する燃焼サイクルの間隔が所定値以下となるという特性を利用して、ノックセンサを用いた熱面着火によるプレイグの検出を正確に行えるようになる。
【0014】
第3の発明によれば、ノックセンサの出力がピークとなるクランク角度位置をパラメータとして利用して、ノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなっているか否かを良好に判定することが可能となる。
【0015】
第4の発明によれば、熱面着火によるプレイグニッションの再発性を評価し、再発が認められた場合には、内燃機関に異常が生じていると判定されることになる。このような異常判定手段を備えておくことにより、熱面着火によるプレイグニッションの再発性の高い運転領域の使用によって、繰り返し熱面着火によるプレイグニッションが発生するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における内燃機関のシステム構成を説明するための図である。
【図2】筒内に供給された混合気の着火時期と燃焼サイクル数との関係において、熱面着火と過給異常燃焼との違いを表した図である。
【図3】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における内燃機関10のシステム構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、火花点火式の内燃機関(一例としてガソリンエンジン)10を備えている。内燃機関10の筒内には、ピストン12が設けられている。筒内におけるピストン12の頂部側には、燃焼室14が形成されている。燃焼室14には、吸気通路16および排気通路18が連通している。
【0018】
吸気通路16の入口近傍には、吸気通路16に吸入される空気の流量に応じた信号を出力するエアフローメータ20が設けられている。エアフローメータ20よりも下流側の吸気通路16には、ターボ過給機22のコンプレッサ22aが配置されている。更に、コンプレッサ22aよりも下流側の吸気通路16には、電子制御式のスロットルバルブ24が設けられている。
【0019】
内燃機関10の各気筒には、燃焼室14内(筒内)に直接燃料を噴射するための燃料噴射弁26、および、混合気に点火するための点火プラグ28がそれぞれ設けられている。更に、排気通路18には、ターボ過給機22のタービン22bが配置されている。
【0020】
また、図1に示すシステムは、ECU(Electronic Control Unit)30を備えている。ECU30の入力部には、上述したエアフローメータ20に加え、クランク角度やエンジン回転数を検出するためのクランク角センサ32、および、燃焼ガスの圧力振動に基づいてノックを検出するためのノックセンサ34等の内燃機関10の運転状態を検出するための各種センサが接続されている。また、ECU30の出力部には、上述したスロットルバルブ24、燃料噴射弁26および点火プラグ28等の内燃機関10の運転を制御するための各種のアクチュエータが接続されている。ECU30は、それらのセンサ出力に基づいて、所定のプログラムに従って上記各種のアクチュエータを駆動することにより、内燃機関10の運転状態を制御するものである。
【0021】
次に、本発明の実施の形態1において実行される特徴的な制御について説明する。
上述した内燃機関10のように、特に過給機を備える内燃機関において所定の低回転高負荷領域(特に過給領域)にて発生し得るプレイグニッション(以下、「プレイグ」と略する)には、発生要因に応じて次のような2種類のものがある。1つは、熱面着火に起因するものである。もう1つは、燃焼室等に付着しているデポジットや油滴が着火源になるといわれているものであり、ここでは、「過給異常燃焼」と称する。尚、プレイグは、上記のような発生要因によって、点火プラグによる火花点火の前に混合気が自己着火する現象である。一方、ノックは、点火プラグによる火花点火後に燃焼室内を伝播していく火炎が到達する前に、点火プラグから遠い場所にある未燃混合気が圧縮され、高温になって自己着火する現象である。
【0022】
図2は、筒内に供給された混合気の着火時期と燃焼サイクル数との関係において、熱面着火と過給異常燃焼との違いを表した図である。
プレイグが発生すると、図2に示すように、着火時期が早くなる。より具体的には、熱面着火に起因するプレイグは、連続的に発生し、かつ、図2中に破線で示すように、燃焼サイクルの経過とともに混合気の着火時期がどんどん早くなっていく。これに対し、過給異常燃焼は、図2中に実線で示すように、数サイクル程度のサイクル間隔をおいて発生する傾向にある。また、これらのプレイグの発生は、基本的にノックを伴う(誘発する)ものであり、ノックの発生タイミングは、図2に示すプレイグの着火時期と相関を有している。
【0023】
本実施形態のプレイグ判定手法は、燃焼ガスの圧力振動に基づいて異常燃焼を検出するノックセンサ34を利用して、熱面着火に起因するプレイグをもう一方のプレイグ(過給異常燃焼)と切り分けて検出できるようにするというものである。ノックセンサ34を用いて熱面着火に起因して生ずるプレイグを検出しようとする場合には、次のような課題が存在する。
【0024】
すなわち、熱面着火に起因するプレイグが連続的に発生して着火時期が徐々に早くなっていく際、当該プレイグの発生初期段階(着火時期があまり早くなっていない段階)においては筒内圧力の高い状態でプレイグによる圧力振動が発生するため、ノックセンサ34によってプレイグを検出することができる。しかしながら、当該プレイグの発生後半段階(着火時期が早くなっている段階)において筒内圧力が低い状態で発生するプレイグの弱い圧力振動は、ノックセンサ34によって検出することができない。また、当該プレイグの発生初期段階(着火時期があまり早くなっていない段階)においては強いノックを伴うが、当該プレイグの発生後半段階(着火時期が早くなっている段階)においてはノックセンサ34によってノックを検出できなくなる。これは、プレイグによって着火時期が早くなると、筒内圧力が低い状態(すなわち、ノックが発生しにくい状態)で燃焼が開始されることになるので、点火後にノックが発生するようなタイミングでは燃焼が完了してしまっているためである。より具体的には、熱面着火に起因するプレイグが連続的に発生して着火時期が徐々に早くなっていく際には、当該プレイグに伴うノックの強さは、初期において次第に大きくなっていった後に、後半にかけては次第に弱くなっていく。このため、ノックセンサ34では、熱面着火に起因するプレイグが連発して着火時期が徐々に早くなっていくにつれ、プレイグの発生に伴うノックの検出時期も徐々に早くなっていき、やがてノックが検出できなくなっていく。
【0025】
上述したように、熱面着火によるプレイグをノックセンサ34によって検出しようとする場合には、着火時期が進んでいくとノックが検出できなくなる可能性がある。従って、ノックセンサ34を利用してプレイグを検出した場合には、早いタイミング(ノックを検出できているタイミング)で、プレイグを抑制するための制御(例えば、フューエルカット)を開始する必要が生ずる。しかしながら、プレイグの発生要因が熱面着火によるか過給異常燃焼であるかを判別することなく単にプレイグ発生の検出を受けて早期にフューエルカット等の対策を行うようにすると、熱面着火ではなく過給異常燃焼の場合においても、早期にフューエルカット等を行うことになる。その結果、フューエルカット等が実行される確率が増えてしまい、内燃機関10のドライバビリティが悪化することが懸念される。
【0026】
そこで、本実施形態では、ノックセンサ34を利用して短期間で頻繁なプレイグの発生が検出されている状況下において、ノックの発生タイミングと、プレイグが発生する燃焼サイクルの間隔とに基づいて、今回検出されたプレイグが熱面着火に起因して生じたものであるか否かを判定するようにした。より具体的には、ノックセンサ34の出力がピークとなるクランク角度位置(以下、「ノックピーク位置」と称する)に基づいてノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなり、かつ、プレイグが発生する燃焼サイクルの間隔がゼロである(すなわち、プレイグが連続して発生している)場合に、熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定するようにした。
【0027】
そして、本実施形態では、熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定された場合には、過給異常燃焼が発生していると判定される場合よりも早いタイミングで、プレイグ抑制のための制御(例えば、フューエルカット)を実行するようにした。
【0028】
更に、本実施形態では、上記の判定によって以前に熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定されたことのある運転領域を使用した際に、熱面着火に起因するプレイグが発生していると再度判定された場合には、内燃機関10に異常が生じていると判定するようにした。そして、この場合には、熱面着火によるプレイグが発生していると判定された上記運転領域を避ける態様で内燃機関10が使用する負荷領域を制限するという手法を用いて、内燃機関10を搭載する車両の走行モードを退避走行モードに切り換えるようにした。
【0029】
図3は、熱面着火に起因して生ずるプレイグを検出し、当該プレイグへの対策を行うための制御を実現するために、ECU30が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0030】
図3に示すルーチンでは、先ず、プレイグが短期間で頻繁に発生しているか否かが判定される(ステップ100)。プレイグが短期間で頻繁に発生するような状況下において、プレイグの発生初期段階であれば、ノックセンサ34の出力を利用してプレイグを検出することができる。尚、ノックセンサ34の出力を利用して(初期の)プレイグを検出すること自体については、公知の手法を用いて行うことができる。本ステップ100では、このようにして検出されるプレイグの発生頻度が所定数の燃焼サイクルにおいて(すなわち、短期間で)所定値以上であるか否かに基づく判断が実行される。
【0031】
上記ステップ100において、プレイグが短期間で頻繁に発生していると判定された場合には、プレイグの頻繁な発生の認められる直近の上記所定数の燃焼サイクルにおけるプレイグの発生間隔がゼロサイクル(すなわち、プレイグが連続して発生している)か否かが判定される(ステップ102)。
【0032】
上記ステップ102において、プレイグの発生間隔がゼロサイクルであると判定された場合には、上記所定数の燃焼サイクルにおけるノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなっているか否かが判定される(ステップ104)。具体的には、本ステップ104では、ノックセンサ34およびクランク角センサ32を用いて取得される上記ノックピーク位置が燃焼サイクルの経過とともに進角側に変化しているか否かが判定される。
【0033】
上記ステップ104の判定が成立する場合、つまり、プレイグの発生間隔がゼロサイクルであって、ノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなっていると判定された場合には、今回の上記所定数の燃焼サイクルにおいて検出されたプレイグが、熱面着火に起因して生じたものであると判定される(ステップ106)。
【0034】
上記ステップ106において、熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定された場合には、過給異常燃焼が発生していると判定される場合よりも早いタイミングで、プレイグ抑制のための制御としてのフューエルカットが実行される(ステップ108)。尚、上記ステップ100においてプレイグが短期間で頻繁に発生していると判定された場合において、上記ステップ102または104の判定が不成立となるような場合には、今回の上記所定数の燃焼サイクルにおいて検出されたプレイグが、過給異常燃焼に起因して生じたものであると判定することができる。
【0035】
図4は、熱面着火に起因するプレイグの検出に伴う内燃機関10の異常判定を実現するために、ECU30が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。
図4に示すルーチンでは、先ず、上記図3に示すルーチンにおけるステップ106にて熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定された状況下であるか否かが判定される(ステップ200)。
【0036】
上記ステップ200の判定が成立する場合には、後述するステップ204における、熱面着火に起因するプレイグの発生領域の記憶結果に基づいて、熱面着火に起因するプレイグが発生していると今回判定された運転領域を以前使用した際にも、熱面着火に起因するプレイグが発生していたか否かが判定される(ステップ202)。
【0037】
上記ステップ202の判定が不成立である場合には、熱面着火に起因するプレイグが発生していると今回判定された運転領域が、熱面着火に起因するプレイグの発生領域としてECU30に記憶される(ステップ204)。
【0038】
一方、上記ステップ202の判定が成立する場合、つまり、熱面着火に起因するプレイグが発生していると今回判定された運転領域を以前使用した際にも、熱面着火に起因するプレイグが発生していたことが判明した場合には、内燃機関10に異常が生じていると判定される(ステップ206)。この場合には、熱面着火によるプレイグが発生していると今回判定された上記運転領域を避ける態様で内燃機関10が使用する負荷領域を制限するという手法を用いて、内燃機関10を搭載する車両の走行モードが退避走行モードに切り換えられる(ステップ208)。
【0039】
先に説明した図3に示すルーチンによれば、ノックセンサ34を利用して短期間で頻繁なプレイグの発生が検出されている状況下において、プレイグが発生する燃焼サイクルの間隔がゼロであり、かつ、上記ノックピーク位置に基づいてノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなっていると判定された場合には、熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定される。これにより、プレイグが発生する燃焼サイクルの間隔が過給異常燃焼時と比べて短く(ゼロとなり)、かつ、ノックの発生タイミングと相関のある着火時期が燃焼サイクルの経過とともに早くなっていくという熱面着火に起因して生ずるプレイグの特性(図2参照)を利用して、ノックセンサ34を用いた熱面着火によるプレイグの検出を正確に行えるようになる。
【0040】
また、上記図3に示すルーチンによれば、熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定された場合には、過給異常燃焼が発生していると判定される場合よりも早いタイミングで、プレイグ抑制のための制御としてのフューエルカットが実行される。このように、熱面着火に起因するプレイグを検出できた時点で早めの対策をとることにより、プレイグの連続的な発生を早期に解消できるようになる。
【0041】
また、後で説明した図4に示すルーチンによれば、以前に熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定されたことのある運転領域を再び使用した際に、熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定された場合には、内燃機関10に異常が生じていると判定される。ある運転領域を使用するたびに熱面着火によるプレイグが検出されるような状況下では、内燃機関10に何らかの異常が発生していると考えられる。本ルーチンによれば、熱面着火によるプレイグの再発性を評価し、再発が認められた場合には、内燃機関10の異常と判定して、該当する運転領域の使用を避ける態様での退避走行モードが実行される。これにより、熱面着火によるプレイグの再発性の高い運転領域の使用によって、繰り返し熱面着火によるプレイグが発生するのを回避することができる。
【0042】
ところで、上述した実施の形態1においては、熱面着火によるプレイグの発生を検出するために、プレイグが発生する燃焼サイクルの間隔がゼロであるか否かを判定するようにしている。しかしながら、本発明においてこれに対応する判定は、上記間隔がゼロであるか否かを判定するものに限らず、当該間隔がゼロ以外の所定値以下であるか否かを判定するものであってもよい。
【0043】
また、上述した実施の形態1においては、以前に熱面着火に起因するプレイグが発生していると判定されたことのある運転領域を使用した際に、熱面着火に起因するプレイグが発生していると再び判定された場合に、内燃機関10に異常が生じていると判定するようにしている。しかしながら、本発明においてこれに対応する判定は、上記の態様によるものに限らない。すなわち、熱面着火によるプレイグが発生していると判定されたことのある運転領域の使用時に、熱面着火に起因するプレイグニッションが発生していると判定される頻度が所定値以上となった場合に、内燃機関に異常が生じていると判定するものであればよい。
【0044】
尚、上述した実施の形態1においては、ECU30が、上記ステップ100の処理を実行することにより前記第1の発明における「プレイグ判定手段」が、上記ステップ102〜106の処理を実行することにより前記第1の発明における「プレイグ種類判定手段」が、それぞれ実現されている。
また、上述した実施の形態1においては、ECU30が、上記ステップ204の処理を実行することにより前記第4の発明における「プレイグ領域記憶手段」が、上記ステップ200および202の判定が共に成立する場合に上記ステップ206の処理を実行することにより前記第4の発明における「エンジン異常判定手段」が、それぞれ実現されている。
【符号の説明】
【0045】
10 内燃機関
12 ピストン
14 燃焼室
16 吸気通路
18 排気通路
20 エアフローメータ
22 ターボ過給機
22a コンプレッサ
22b タービン
24 スロットルバルブ
26 燃料噴射弁
28 点火プラグ
30 ECU(Electronic Control Unit)
32 クランク角センサ
34 ノックセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスの圧力振動に基づいて異常燃焼を検出可能なノックセンサと、
前記ノックセンサの出力に基づいてプレイグニッションの発生の有無を判定するプレイグ判定手段と、
前記プレイグ判定手段によってプレイグニッションが発生していると判定された場合に、前記ノックセンサを用いて検出されるノックの発生タイミングと、プレイグニッションが発生する燃焼サイクルの間隔とに基づいて、前記プレイグ判定手段によって発生していると判定されたプレイグニッションが熱面着火に起因して生じたものであるか否かを判定するプレイグ種類判定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記プレイグ種類判定手段は、前記ノックセンサを用いて検出されるノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなり、かつ、プレイグニッションが発生する燃焼サイクルの間隔が所定値以下である場合に、熱面着火に起因するプレイグニッションが発生していると判定することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記プレイグ種類判定手段は、前記ノックセンサの出力がピークとなるクランク角度位置に基づいて、ノックの発生タイミングが燃焼サイクルの経過とともに早くなっているか否かを判定することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記プレイグ種類判定手段によって熱面着火に起因するプレイグニッションが発生していると判定された内燃機関の運転領域を記憶するプレイグ領域記憶手段と、
前記プレイグ領域記憶手段により記憶された運転領域の使用時に前記プレイグ種類判定手段によって熱面着火に起因するプレイグニッションが発生していると判定される頻度が所定値以上となった場合に、内燃機関に異常が生じていると判定するエンジン異常判定手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104371(P2013−104371A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249519(P2011−249519)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】