説明

内燃機関の可変動弁装置

【課題】 内燃機関のシリンダヘッドに対するコントロールシャフトの組付け性を高める。
【解決手段】 内燃機関の機関弁の作動特性を変更する可変動弁機構を制御するコントロールシャフト24をシリンダヘッド11の内部にシリンダ列線L1方向に配置し、その軸端部をシリンダヘッド11の端壁29に形成した貫通孔29aを通過させて外部に延出し、端壁29の外面に支持したアクチュエータ30に接続する際に、前記貫通孔29aをシリンダ軸線L2方向に長い長孔としたので、コントロールシャフト24に例えばカムのような突起物が形成されているためにシリンダ軸線L1方向に移動させて軸端部を前記貫通孔29aに挿入できない場合であっても、コントロールシャフト24をシリンダ列線L1方向に対して傾斜させた状態で軸端部を貫通孔29aに挿入した後にシリンダ列線L1と平行に組付けることが可能となり、コントロールシャフト24の組付け性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の機関弁の作動特性を変更する可変動弁機構を制御するコントロールシャフトをシリンダヘッドの内部にシリンダ列線方向に配置し、前記コントロールシャフトの軸端部を前記シリンダヘッドの端壁に形成した貫通孔を通過させて外部に延出し、前記端壁の外面に支持したアクチュエータに接続して駆動する内燃機関の可変動弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動アクチュエータで作動する制御軸をシリンダヘッドの支持機構に回転自在に支持し、この制御軸で作動機構を作動させて吸気弁のバルブリフトやバルブタイミングを制御する可変動弁装置において、支持機構にその端壁部の軸受孔を貫通するように支持した制御軸の軸端部に、前記端壁部の外面に取り付けた電動アクチュエータを接続するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4071481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記従来のものは、制御軸の軸端部が支持機構の端壁部の軸受孔を貫通するように支持されるため、制御軸を支持機構に組み付ける際の作業性が悪いという問題があった。即ち、制御軸には制御カム等の突起物が設けられており、かつ支持機構には制御軸を回転自在に支持する横梁部が設けられているため、制御軸をシリンダ列線方向に移動させて軸端部を端壁部の軸受孔に挿入しようとしても、制御軸の制御カムが支持機構の横梁部と干渉してしまうからである。これを回避しようとすると、制御軸の軸端部が隔壁部を貫通する貫通量を小さくしたり、制御軸の制御カムが支持機構の横梁部と干渉しないようにレイアウトを変更したりすることが必要となり、可変動弁機構の設計自由度が大幅に制限される問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、内燃機関のシリンダヘッドに対するコントロールシャフトの組み付け性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、内燃機関の機関弁の作動特性を変更する可変動弁機構を制御するコントロールシャフトをシリンダヘッドの内部にシリンダ列線方向に配置し、前記コントロールシャフトの軸端部を前記シリンダヘッドの端壁に形成した貫通孔を通過させて外部に延出し、前記端壁の外面に支持したアクチュエータに接続して駆動する内燃機関の可変動弁装置であって、前記貫通孔をシリンダ軸線方向に長い長孔としたことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記アクチュエータは減速ギヤ機構を収納するギヤハウジングを備え、前記シリンダヘッドの内部と前記ギヤハウジングの内部とは前記隔壁を貫通するオイル供給孔および前記貫通孔により連通し、前記オイル供給孔は前記貫通孔よりも高い位置に設けられることを特徴とする内燃機関の可変動弁装置が提案される。
【0008】
尚、実施の形態のウオームホイール58およびウオーム59は本発明の減速ギヤ機構に対応する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、内燃機関の機関弁の作動特性を変更する可変動弁機構を制御するコントロールシャフトをシリンダヘッドの内部にシリンダ列線方向に配置し、その軸端部をシリンダヘッドの端壁に形成した貫通孔を通過させて外部に延出し、端壁の外面に支持したアクチュエータに接続する際に、前記貫通孔をシリンダ軸線方向に長い長孔としたので、コントロールシャフトに例えばカムのような突起物が形成されているためにシリンダ列線方向に移動させて軸端部を貫通孔に挿入できない場合であっても、コントロールシャフトをシリンダ列線方向に対して傾斜させた状態で軸端部を貫通孔に挿入した後にシリンダ列線と平行に組み付けることが可能となり、コントロールシャフトの組み付け性が向上する。しかも、コントロールシャフトの軸端部が隔壁を貫通してアクチュエータ内に突出するので、アクチュエータとコントロールシャフトとの接続作業が容易になってアクチュエータの組み付け性も向上する。
【0010】
また請求項2の構成によれば、シリンダヘッドの内部と減速ギヤ機構を収納するギヤハウジングの内部とを、隔壁を貫通する貫通孔と、その貫通孔よりも高い位置で隔壁を貫通するオイル供給孔とで連通させたので、シリンダヘッドの内部のオイルをオイル供給孔からギヤハウジングの内部に供給して減速ギヤ機構を潤滑することができ、潤滑を終えたオイルを貫通孔とコントロールシャフトとの間の隙間を通してシリンダヘッドの内部に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】内燃機関のシリンダヘッドの斜視図。
【図2】図1の2方向矢視図。
【図3】図2の3方向矢視図。
【図4】図3の4−4線断面図。
【図5】図3の5−5線断面図。
【図6】図5の6−6線矢視図。
【図7】図6の7−7線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1〜図3に示すように、直列4気筒内燃機関のシリンダヘッド11は、シリンダブロック12に結合されるロアヘッド13と、ロアヘッド13に結合されるアッパーヘッド14とを備え、アッパーヘッド14がヘッドカバー15により覆われる。
【0014】
アッパーヘッド14は、ロアヘッド13に結合される本体部16と、本体部16の上面にボルト17…で結合される5個の第1キャップ部材18…と、第1キャップ部材18…の上面にボルト19…で結合される5個の第2キャップ部材20…と、本体部16の上面にボルト21…で結合される5個の第3キャップ部材22…とを備える。本体部16と第1キャップ部材18…との間に4個のコントロールカム23…が形成されたコントロールシャフト24が回転自在に支持され、第1キャップ部材18…と第2キャップ部材20…との間に4個の吸気カム25…が形成された吸気カムシャフト26が回転自在に支持され、本体部16と第3キャップ部材22…との間に4個の排気カム27…が形成された排気カムシャフト28が回転自在に支持される。
【0015】
アッパーヘッド14の本体部16の一方の端面には端壁29が起立しており、端壁29の外側面にはコントロールシャフト24を往復回転駆動するアクチュエータ30と、前記排気カムシャフト28により駆動される負圧ポンプ31とが設けられる。シリンダヘッド11には図示せぬ可変動弁機構が設けられており、コントロールシャフト24のコントロールカム23…で可変動弁機構を作動させることで、機関弁としての吸気バルブのバルブリフトやバルブタイミングを変更するようになっている。コントロールシャフト24は、内燃機関の複数のシリンダが並ぶ方向であるシリンダ列線L1方向(クランクシャフトの軸線方向)に沿って配置される。
【0016】
尚、可変動弁機構の構造は、例えば特開2008−303765号公報や特開2008−045540号公報に示されるように種々のものが公知であるが、本願発明は任意の構造の可変動弁機構に対して適用することができる。
【0017】
図2〜図4に示すように、アッパーヘッド14の端壁29に固定されるアクチュエータ30は、取り付けベース41と、ギヤハウジング42と、モータドライバー44と、ヒートシンク45とを積層して構成され、取り付けベース41およびギヤハウジング42が3本のボルト46…でアッパーヘッド14の端壁29に締結され、モータドライバー44およびヒートシンク45が4本のボルト47…でギヤハウジング42に締結される。そしてギヤハウジング42の側面に直流ブラシレスモータよりなる電動モータ48が3本のボルト49…で締結される。
【0018】
電動モータ48はモータハウジング50の内部にボルト51で固定されたステータ52と、ステータ52の内部に配置されたロータ53と、ロータ53を回転自在に支持するモータ軸54とを備えており、モータ軸54はギヤハウジング42の内部に延出してローラベアリング55およびボールベアリング56で回転自在に支持される。一方、コントロールシャフト24の軸端部は端壁29に形成した貫通孔29aを貫通してギヤハウジング42内に延出し、そこにボルト57で固定されたウオームホイール58がモータ軸54に一体に形成されたウオーム59に噛合する。
【0019】
図1、図5および図6に示すように、コントロールシャフト24の軸端部が貫通する端壁29の貫通孔29aは小判形の長孔に形成されており、この貫通孔29aでシリンダヘッド11の内部とギヤハウジング42の内部とが連通する。貫通孔29aの短径aはコントロールシャフト24の直径に略等しいが、その長径bはコントロールシャフト24の直径よりも大きくなっており、長径の方向はシリンダ軸線L2方向に沿っている。従って、コントロールシャフト24をシリンダヘッド11に組み付けたとき、貫通孔29aの下縁とコントロールシャフト24との間に隙間α(図6参照)が形成される。
【0020】
ギヤハウジング42の内部でウオームホイール58およびウオーム59の噛合位置に対向する端壁29には、シリンダヘッド11の内部とギヤハウジング42の内部とを連通させるオイル供給孔29b(図6参照)が形成される。オイル供給孔29bは貫通孔29aよりも小径の円形の孔であって、貫通孔29aよりも高い位置に配置される。
【0021】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0022】
先ず、シリンダヘッド11のアッパーヘッド14に対するコントロールシャフト24の組み付け手順を説明する。コントロールシャフト24の組み付けは、アッパーヘッド14の本体部16から第1キャップ部18…、第2キャップ部20…および第3キャップ部22…を取り外した状態で行われる。コントロールシャフト24には5個のコントロールカム23…が所定間隔で形成されており、かつコントロールシャフト24が組み付けられるアッパーヘッド14の本体部16には第1キャップ部材18…が結合される5個のジャーナル支持壁16a…(図1参照)が設けられているため、コントロールシャフト24をシリンダ列線L1方向に移動させて軸端部を端壁29の貫通孔29aに挿入しようとしても、コントロールカム23…がジャーナル支持壁16a…と干渉して挿入することはできない。
【0023】
そこで本実施の形態では、図7に示すように、コントロールシャフト24を貫通孔29aに挿入される軸端部側が低くなるように傾斜させた状態で、軸端部を貫通孔29aに挿入する。このとき、貫通孔29aがコントロールシャフト24と略同一直径の円形の孔で構成されていると過程すると、コントロールシャフト24を傾けると軸端部を貫通孔29aに挿入することができないが、本実施の形態では貫通孔29aがコントロールシャフト24を傾ける方向(シリンダ軸線L2方向)に長い長孔で構成されているため、コントロールシャフト24を傾けた状態で貫通孔29aを通過させた後にシリンダ列線L1と平行にすることで、コントロールシャフト24をアッパーヘッド14の本体部16のジャーナル支持壁16a…上に支持することができる。よって、ジャーナル支持壁16a…に第1キャップ部材18…を締結することで、アッパーヘッド14に対するコントロールシャフト24の組み付けを完了することができる。
【0024】
このようにして組み付けられたコントロールシャフト24の軸端部は端壁29の貫通孔29aを貫通して外部に延出するため、その軸端部にアクチュエータ30のウオームホイール58をボルト57で固定する作業を容易に行うことができる。
【0025】
しかして、アクチュエータ30の電動モータ48を駆動すると、モータ軸54に一体に設けられたウオーム59と、ウオーム59に噛合するウオームホイール58とを介してコントロールシャフト24が回転し、コントロールシャフト24に設けたコントロールカム23…で可変動弁機構を作動させることで、吸気バルブのバルブリフトおよびバルブタイミングが変更される。
【0026】
シリンダヘッド11の内部には可変動弁機構等を潤滑するオイルが存在しており、そのオイルの飛沫が端壁29のオイル供給孔29bを通過してギヤハウジング42の内部に浸入し、ウオーム59およびウオームホイール58の噛合部を潤滑する。潤滑を終えてギヤハウジング42の底部に溜まったオイルの液面が上昇して貫通孔29aの下縁よりも高くなると、余剰のオイルが貫通孔29aとコントロールシャフト24との間の隙間αを通過してギヤハウジング42の内部からシリンダヘッド11の内部に戻される。このように、コントロールシャフト24を組み付けるために長孔に形成した貫通孔29aをオイル戻し孔として利用するので、シリンダヘッド11の構造を簡素化することができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0028】
例えば、実施の形態のシリンダヘッド11はロアヘッド13およびアッパーヘッド14に分割されているが、それに限定されるものではない。
【0029】
また実施の形態では組み付け状態のコントロールシャフト24が貫通孔29aの上部を貫通しているが、貫通孔29aの中央部あるいは下部を貫通しても良い。
【符号の説明】
【0030】
11 シリンダヘッド
23 コントロールカム
24 コントロールシャフト
29 端壁
29a 貫通孔
29b オイル供給孔
30 アクチュエータ
42 ギヤハウジング
58 ウオームホイール(減速ギヤ機構)
59 ウオーム(減速ギヤ機構)
L1 シリンダ列線
L2 シリンダ軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の機関弁の作動特性を変更する可変動弁機構を制御するコントロールカム(23)が形成されたコントロールシャフト(24)をシリンダヘッド(11)の内部にシリンダ列線(L1)方向に配置し、前記コントロールシャフト(24)の軸端部を前記シリンダヘッド(11)の端壁(29)に形成した貫通孔(29a)を通過させて外部に延出し、前記端壁(29)の外面に支持したアクチュエータ(30)に接続して駆動する内燃機関の可変動弁装置であって、
前記貫通孔(29a)をシリンダ軸線(L2)方向に長い長孔としたことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ(30)は減速ギヤ機構(58,59)を収納するギヤハウジング(42)を備え、前記シリンダヘッド(11)の内部と前記ギヤハウジング(42)の内部とは前記隔壁(29)を貫通するオイル供給孔(29b)および前記貫通孔(29a)により連通し、前記オイル供給孔(29b)は前記貫通孔(29a)よりも高い位置に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の可変動弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−185199(P2011−185199A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52951(P2010−52951)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】