説明

内燃機関の吸入空気量制御装置

【課題】内燃機関の過渡運転時でも吸気系の応答遅れを補償した目標スロットル開度を設定しながら目標スロットル開度の振動を抑制できるようにする。
【解決手段】要求吸入空気量Mt をベース系統の規範モデル31でモデル後要求吸入空気量BMtsm に変換し、そのモデル後要求吸入空気量BMtsm を実現するように吸気系モデルの逆モデルを用いてベース系統の要求スロットル開度BTAを算出する。一方、要求吸入空気量Mt を高応答系統の規範モデル33でモデル後要求吸入空気量HMtsm に変換し、そのモデル後要求吸入空気量HMtsm を実現するように吸気系モデルの逆モデルを用いて高応答系統の要求スロットル開度HTAを算出する。この後、ベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内で且つ動作量が少なくなるように目標スロットル開度TAt を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の要求吸入空気量に基づいて目標スロットル開度を算出する機能を備えた内燃機関の吸入空気量制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸入空気量(筒内に吸入される空気量)の制御において吸気系の応答遅れ(例えばスロットルバルブの応答遅れや吸気通路の容積による応答遅れ)を補償する技術として、例えば、特許文献1(特開2006−70701号公報)に記載されているように、内燃機関の目標吸入空気量を規範モデルによって実現可能な目標吸入空気量に変換し、吸気系の応答遅れを考慮したモデルの逆モデルを用いて規範モデルの出力と実吸入空気量(又は推定吸入空気量)とが一致するように目標スロットル開度を算出するようにしたものがある。
【0003】
また、特許文献2(特許第3873608号公報)に記載されているように、内燃機関の目標吸入空気量から算出した目標吸気管圧力に基づいて、スロットルバルブの動作前後の開口面積比を算出し、そのスロットルバルブの動作前後の開口面積比とスロットルバルブの動作前の開口面積とに基づいて、スロットルバルブの動作後の目標スロットル開度を算出するようにしたものもある。
【0004】
ところで、吸気系の応答遅れを考慮した吸気系モデルの逆モデルを用いて要求吸入空気量から目標スロットル開度を算出する場合、目標スロットル開度が振動しながら変化する傾向がある。目標スロットル開度が振動すると、実スロットル開度が振動して実スロットル開度の動作量が増加するため、スロットルバルブや該スロットルバルブを駆動するモータ等からなるスロットル装置の摺動部の摩耗量が増加して耐久性が低下したり、スロットルバルブを駆動するモータが過熱する可能性がある。
【0005】
そこで、特許文献3(特開2006−200466号公報)に記載されているように、内燃機関の過渡運転時には吸気系の応答遅れを考慮した吸気系モデルの逆モデルを用いて要求吸入空気量から目標スロットル開度を算出し、内燃機関の定常運転時には吸気系モデルの逆モデルを用いずに内燃機関の運転状態に基づいて目標スロットル開度を算出するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−70701号公報(第2頁等)
【特許文献2】特許第3873608号公報(第1頁等)
【特許文献3】特開2006−200466号公報(第2頁〜第3頁等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3の技術では、内燃機関の定常運転時には吸気系モデルの逆モデルを用いずに内燃機関の運転状態に基づいて目標スロットル開度を算出するため、目標スロットル開度の振動を抑制することができるが、内燃機関の過渡運転時には吸気系の応答遅れを補償するために吸気系モデルの逆モデルを用いて要求吸入空気量から目標スロットル開度を算出するため、目標スロットル開度の振動を抑制することができず、目標スロットル開度の振動による不具合を解決することができない。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、内燃機関の過渡運転時でも吸気系の応答遅れを補償した目標スロットル開度を設定しながら目標スロットル開度の振動を抑制することができる内燃機関の吸入空気量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の要求吸入空気量に基づいて目標スロットル開度を算出する機能を備えた内燃機関の吸入空気量制御装置において、要求吸入空気量に基づいて吸気系の応答遅れを考慮して第1の要求スロットル開度を算出する第1の要求スロットル開度算出手段と、この第1の要求スロットル開度算出手段とは異なる応答特性で要求吸入空気量に基づいて吸気系の応答遅れを考慮して第2の要求スロットル開度を算出する第2の要求スロットル開度算出手段と、第1の要求スロットル開度と第2の要求スロットル開度とに基づいて目標スロットル開度を算出する目標スロットル開度算出手段とを備え、この目標スロットル開度算出手段によって、目標スロットル開度が第1の要求スロットル開度から第2の要求スロットル開度までの範囲内で且つ目標スロットル開度の動作量が要求スロットル開度の動作量よりも少なくなるように目標スロットル開度を設定するようにしたものである。
【0010】
この構成では、吸気系の応答遅れを考慮して要求吸入空気量から第1の要求スロットル開度と第2の要求スロットル開度を算出し、その一方を要求スロットル開度の低応答側の許容限界値とし、他方を要求スロットル開度の高応答側の許容限界値とすることで、吸気系の応答遅れを補償した要求スロットル開度の許容範囲を設定することができる。そして、目標スロットル開度が第1の要求スロットル開度から第2の要求スロットル開度までの範囲内(つまり吸気系の応答遅れを補償した要求スロットル開度の許容範囲内)になるように目標スロットル開度を設定することで、吸気系の応答遅れを補償した目標スロットル開度を許容範囲内で設定することができ、更に、目標スロットル開度の動作量が要求スロットル開度の動作量よりも少なくなるように目標スロットル開度を設定することで、目標スロットル開度の振動を抑制することができる。このようにすれば、内燃機関の過渡運転時でも吸気系の応答遅れを補償した目標スロットル開度を設定しながら目標スロットル開度の振動を抑制することができる。
【0011】
この場合、請求項2のように、第1の要求スロットル開度算出手段と第2の要求スロットル開度算出手段は、それぞれ要求吸入空気量を所定の規範モデルによって実現可能な応答の要求吸入空気量(以下「モデル後要求吸入空気量」という)に変換し、吸気系の応答遅れを考慮した吸気系モデルの逆モデルを用いてモデル後要求吸入空気量を実現するように要求スロットル開度を算出する機能を備え、第1の要求スロットル開度算出手段と第2の要求スロットル開度算出手段とで規範モデルの応答特性が異なるようにしても良い。このようにすれば、第1の要求スロットル開度算出手段と第2の要求スロットル開度算出手段との間で、規範モデルの応答特性(例えば時定数)を変えるという簡単な方法で、要求スロットル開度の応答特性を変えることができる。
【0012】
また、第1の要求スロットル開度と第2の要求スロットル開度とに基づいて目標スロットル開度を設定する具体的な方法は、請求項3のように、目標スロットル開度の前回値に基づいて実スロットル開度の推定値である推定スロットル開度を算出するスロットル開度推定手段を備え、目標スロットル開度算出手段は、推定スロットル開度が第1の要求スロットル開度から第2の要求スロットル開度までの範囲内のときには推定スロットル開度を目標スロットル開度として設定し、推定スロットル開度が第1の要求スロットル開度から第2の要求スロットル開度までの範囲外のときには第1の要求スロットル開度と第2の要求スロットル開度のうちの推定スロットル開度に近い方を目標スロットル開度として設定するようにしても良い。このようにすれば、第1の要求スロットル開度から第2の要求スロットル開度までの範囲内に目標スロットル開度を維持しながら、目標スロットル開度の動作量を少なくすることができる。この場合、推定スロットル開度(実スロットル開度の推定値)と目標スロットル開度との偏差を小さくすることができるため、実スロットル開度の動作量を効果的に低減することができ、スロットル装置の摺動部の摩耗量を減少させて耐久性を向上させる効果を高めることができる。
【0013】
或は、請求項4のように、目標スロットル開度算出手段は、目標スロットル開度の前回値が第1の要求スロットル開度から第2の要求スロットル開度までの範囲内のときには目標スロットル開度の前回値を目標スロットル開度の今回値として設定し、目標スロットル開度の前回値が第1の要求スロットル開度から第2の要求スロットル開度までの範囲外のときには第1の要求スロットル開度と第2の要求スロットル開度のうちの目標スロットル開度の前回値に近い方を目標スロットル開度の今回値として設定するようにしても良い。このようにしても、第1の要求スロットル開度から第2の要求スロットル開度までの範囲内に目標スロットル開度を維持しながら、目標スロットル開度の動作量を少なくすることができる。この場合、目標スロットル開度の前回値と今回値との偏差を小さくすることができるため、目標スロットル開度の動作量を効果的に低減することができ、スロットルバルブを駆動するモータに流れる電流の変動を抑制してモータの過熱を防止する効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は吸入空気量制御の機能を説明するブロック図である。
【図3】図3は実施例1の目標スロットル開度の設定方法を説明するタイムチャートである。
【図4】図4はベース系統の規範モデルルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【図5】図5は高応答系統の規範モデルルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【図6】図6は実施例1の低動作開度算出ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【図7】図7は実施例2の目標スロットル開度の設定方法を説明するタイムチャートである。
【図8】図8は実施例2の目標スロットル開度の挙動を示すタイムチャートである。
【図9】図9は実施例2の低動作開度算出ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1を図1乃至図6に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。
内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。
【0017】
更に、スロットルバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20の吸気ポート近傍に、それぞれ吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各気筒の点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0018】
一方、エンジン11の排気管23には、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ24(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられ、この排出ガスセンサ24の下流側に、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒25が設けられている。
【0019】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ26や、ノッキングを検出するノックセンサ27が取り付けられている。また、クランク軸28の外周側には、クランク軸28が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ29が取り付けられ、このクランク角センサ29の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0020】
これら各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁21の燃料噴射量や点火プラグ22の点火時期を制御すると共に、スロットル開度センサ17で検出した実スロットル開度を目標スロットル開度に一致させるようにモータ15を制御して吸入空気量(筒内に吸入される空気量)を制御する。
【0021】
その際、ECU30は、エンジン運転条件(例えば、アクセル開度や要求トルク等)に基づいて要求吸入空気量を算出し、その要求吸入空気量に基づいて目標スロットル開度を次のようにして算出する。
【0022】
図2に示すように、ベース系統の規範モデル31によって要求吸入空気量Mt をベース系統のモデル後要求吸入空気量BMtsm (全運転領域で実現可能な応答の要求吸入空気量)に変換した後、応答遅れ補償手段32によって吸気系の応答遅れ(例えばスロットルバルブ16の応答遅れや吸気通路の容積による応答遅れ)を考慮した吸気系モデルの逆モデルを用いてベース系統のモデル後要求吸入空気量BMtsm を実現するようにベース系統の要求スロットル開度BTA(第1の要求スロットル開度)を算出する。このベース系統の要求スロットル開度BTAは、要求スロットル開度の低応答側の許容限界値(例えば要求吸入空気量に対する実吸入空気量の応答性を確保できる許容限界値)となる。これらのベース系統の規範モデル31と応答遅れ補償手段32が特許請求の範囲でいう第1の要求スロットル開度算出手段としての役割を果たす。
【0023】
ECU30は、後述する図4のベース系統の規範モデルルーチンを実行することでベース系統の規範モデル31として機能し、まず、下記(1)式で表される一次遅れモデル(一次ローパスフィルタ)により、モデル後要求吸入空気量の前回値Mtsm.old (前回の出力値)と要求吸入空気量の今回値Mt (今回の入力値)とを用いてモデル後要求吸入空気量の今回値Mtsm (今回の出力値)を算出する。
Mtsm =(C1 ×Mtsm.old +T1 ×Mt )/(C1 +T1 ) ……(1)
ここで、C1 は一次遅れフィルタ時定数(例えば10ms)であり、T1 は演算周期(例えば8ms)である。
【0024】
更に、下記(2)式で表される一次遅れモデル(一次ローパスフィルタ)により、ベース系統のモデル後要求吸入空気量の前回値BMtsm.old (前回の出力値)とモデル後要求吸入空気量の今回値Mtsm (今回の入力値)とを用いてベース系統のモデル後要求吸入空気量の今回値BMtsm (今回の出力値)を算出する。
BMtsm =(C2 ×BMtsm.old +T1 ×Mtsm )/(C2 +T1 ) ……(2)
ここで、C2 は一次遅れフィルタ時定数(例えば32ms)であり、T1 は演算周期(例えば8ms)である。
【0025】
このベース系統の規範モデル31の応答特性(時定数C1 ,C2 )は、ベース系統の要求スロットル開度BTAが、要求スロットル開度の低応答側の許容限界値(例えば要求吸入空気量に対する実吸入空気量の応答性を確保できる許容限界値)となるように設定される。
【0026】
この後、応答遅れ補償手段32で、吸気系の応答遅れを考慮した吸気系モデルの逆モデルを用いてベース系統のモデル後要求吸入空気量BMtsm からベース系統の要求スロットル開度BTAを算出すると共に、ベース系統のモデル後要求吸入空気量BMtsm と仮想吸入空気量Mvt(前回の最終目標スロットル開度TAttから推定した実吸入空気量)との偏差を小さくするようにベース系統の要求スロットル開度BTAを補正することで、ベース系統のモデル後要求吸入空気量BMtsm を実現するためのベース系統の要求スロットル開度BTAを求める。
【0027】
具体的には、ベース系統のモデル後要求吸入空気量BMtsm を実現するために必要な吸気管圧力BPm を算出した後、この吸気管圧力BPm を実現するために必要なスロットル通過空気量BMi を算出する。更に、このスロットル通過空気量BMi を実現するために必要なスロットル開口面積BAt を算出した後、このスロットル開口面積BAt を実現するために必要なベース系統の要求スロットル開度BTAを算出する。
【0028】
更に、ベース系統のモデル後要求吸入空気量BMtsm と仮想吸入空気量Mvt(前回の最終目標スロットル開度TAttから推定した実吸入空気量)との偏差を小さくするようにフィードバック補正量BTAfbをPI制御等により算出し、このフィードバック補正量BTAfbを用いてベース系統の要求スロットル開度BTAを次式により補正する。
BTA=BTA+BTAfb
【0029】
一方、高応答系統の規範モデル33(ベース系統の規範モデル31とは応答特性が異なるモデル)によって要求吸入空気量Mt を高応答系統のモデル後要求吸入空気量HMtsm (全運転領域で実現可能な応答の要求吸入空気量)に変換した後、応答遅れ補償手段34によって吸気系の応答遅れ考慮した吸気系モデルの逆モデル(応答遅れ補償手段32で用いる吸気系モデルの逆モデルと同じモデル)を用いて高応答系統のモデル後要求吸入空気量HMtsm を実現するように高応答系統の要求スロットル開度HTA(第2の要求スロットル開度)を算出する。この高応答系統の要求スロットル開度HTAは、要求スロットル開度の高応答側の許容限界値(例えば要求吸入空気量に対する実吸入空気量のオーバーシュートを抑制できる許容限界値)となる。これらの高応答系統の規範モデル33と応答遅れ補償手段34が特許請求の範囲でいう第2の要求スロットル開度算出手段としての役割を果たす。
【0030】
ECU30は、後述する図5の高応答系統の規範モデルルーチンを実行することで高応答系統の規範モデル33として機能し、下記(3)式で表される一次遅れモデル(一次ローパスフィルタ)により、高応答系統のモデル後要求吸入空気量の前回値HMtsm.old (前回の出力値)と要求吸入空気量の今回値Mt (今回の入力値)とを用いて高応答系統のモデル後要求吸入空気量の今回値HMtsm (今回の出力値)を算出する。
HMtsm =(C3 ×HMtsm.old +T1 ×Mt )/(C3 +T1 ) ……(3)
ここで、C3 は一次遅れフィルタ時定数(例えば32ms)であり、T1 は演算周期(例えば8ms)である。
【0031】
この高応答系統の規範モデル33の応答特性(時定数C3 )は、高応答系統の要求スロットル開度HTAが、要求スロットル開度の高応答側の許容限界値(例えば要求吸入空気量に対する実吸入空気量のオーバーシュートを抑制できる許容限界値)となるように設定される。
【0032】
この後、応答遅れ補償手段34で、吸気系の応答遅れを考慮した吸気系モデルの逆モデル(応答遅れ補償手段32で用いる吸気系モデルの逆モデルと同じモデル)を用いて高応答系統のモデル後要求吸入空気量HMtsm から高応答系統の要求スロットル開度HTAを算出すると共に、高応答系統のモデル後要求吸入空気量HMtsm と仮想吸入空気量Mvt(前回の最終目標スロットル開度TAttから推定した実吸入空気量)との偏差を小さくするように高応答系統の要求スロットル開度HTAを補正することで、高応答系統のモデル後要求吸入空気量HMtsm を実現するための高応答系統の要求スロットル開度HTAを求める。
【0033】
具体的には、高応答系統のモデル後要求吸入空気量HMtsm を実現するために必要な吸気管圧力HPm を算出した後、この吸気管圧力HPm を実現するために必要なスロットル通過空気量HMi を算出する。更に、このスロットル通過空気量HMi を実現するために必要なスロットル開口面積HAt を算出した後、このスロットル開口面積HAt を実現するために必要な高応答系統の要求スロットル開度HTAを算出する。
【0034】
更に、高応答系統のモデル後要求吸入空気量HMtsm と仮想吸入空気量Mvt(前回の最終目標スロットル開度TAttから推定した実吸入空気量)との偏差を小さくするようにフィードバック補正量HTAfbをPI制御等により算出し、このフィードバック補正量HTAfbを用いて高応答系統の要求スロットル開度HTAを次式により補正する。
HTA=HTA+HTAfb
【0035】
以上のようにして算出したベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲を、吸気系の応答遅れを補償した要求スロットル開度の許容範囲とする。
【0036】
この後、低動作開度算出手段35(目標スロットル開度算出手段)で、目標スロットル開度TAt がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内で且つ目標スロットル開度TAt の動作量が要求スロットル開度BTA,HTAの動作量よりも少なくなるように目標スロットル開度TAt を設定する。
【0037】
目標スロットル開度TAt がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内(つまり吸気系の応答遅れを補償した要求スロットル開度の許容範囲内)になるように目標スロットル開度TAt を設定することで、吸気系の応答遅れを補償した目標スロットル開度TAt を許容範囲内で設定することができ、更に、目標スロットル開度TAt の動作量が要求スロットル開度BTA,HTAの動作量よりも少なくなるように目標スロットル開度TAt を設定することで、目標スロットル開度TAt の振動を抑制することができる。
【0038】
ECU30は、後述する図6の低動作開度算出ルーチンを実行することで低動作開度算出手段35として機能し、図3に示すように、推定スロットル開度TAvt(前回の最終目標スロットル開度TAttから推定した実スロットル開度)がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内のときには推定スロットル開度TAvtを目標スロットル開度TAt として設定し、推定スロットル開度TAvtがベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲外のときにはベース系統の要求スロットル開度BTAと高応答系統の要求スロットル開度HTAのうちの推定スロットル開度TAvtに近い方を目標スロットル開度TAt として設定することで、ベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内に目標スロットル開度TAt を維持しながら、目標スロットル開度TAt の動作量を少なくする。この場合、推定スロットル開度TAvt(実スロットル開度の推定値)と目標スロットル開度TAt との偏差を小さくすることができるため、実スロットル開度の動作量を効果的に低減することができる。
【0039】
この後、図2に示すように、ガード手段36で、目標スロットル開度TAt を上限ガード値(例えば84deg)及び下限ガード値(例えば0deg)で制限すると共に、目標スロットル開度TAt の変化速度(所定時間当りの変化量)を上限速度ガード値(例えば+6.8deg/8ms)及び下限速度ガード値(例えば−6.8deg/8ms)で制限するガード処理を行って、最終目標スロットル開度TAtt(最終的な目標スロットル開度)を設定する。
【0040】
更に、吸気系モデル37で、最終目標スロットル開度TAttから仮想吸入空気量Mvt(実吸入空気量の推定値)を算出する。具体的には、最終目標スロットル開度TAttを遅れ処理(例えば一次遅れ処理)することで推定スロットル開度TAvt(実スロットル開度の推定値)を求め、この推定スロットル開度TAvtからスロットル開口面積At を算出した後、このスロットル開口面積At からスロットル通過空気量Mi を算出する。更に、このスロットル通過空気量Mi から吸気管圧力Pm を算出し、この吸気管圧力Pm から仮想吸入空気量Mvtを算出する。
【0041】
以下、ECU30が実行する図4乃至図6の各ルーチンの処理内容を説明する。
[ベース系統の規範モデルルーチン]
図4に示すベース系統の規範モデルルーチンは、ECU30の電源オン中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、モデル後要求吸入空気量の前回値Mtsm.old と要求吸入空気量の今回値Mt とを用いてモデル後要求吸入空気量の今回値Mtsm を次式で表される一次遅れモデル(一次ローパスフィルタ)により算出する。
Mtsm =(C1 ×Mtsm.old +T1 ×Mt )/(C1 +T1 )
ここで、C1 は一次遅れフィルタ時定数(例えば10ms)であり、T1 は演算周期(例えば8ms)である。
【0042】
この後、ステップ102に進み、ベース系統のモデル後要求吸入空気量の前回値BMtsm.old とモデル後要求吸入空気量の今回値Mtsm とを用いてベース系統のモデル後要求吸入空気量の今回値BMtsm を次式で表される一次遅れモデル(一次ローパスフィルタ)により算出する。
BMtsm =(C2 ×BMtsm.old +T1 ×Mtsm )/(C2 +T1 )
ここで、C2 は一次遅れフィルタ時定数(例えば32ms)であり、T1 は演算周期(例えば8ms)である。
【0043】
[高応答系統の規範モデルルーチン]
図5に示す高応答系統の規範モデルルーチンは、ECU30の電源オン中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、ステップ201で、高応答系統のモデル後要求吸入空気量の前回値HMtsm.old と要求吸入空気量の今回値Mt とを用いて高応答系統のモデル後要求吸入空気量の今回値HMtsm を次式で表される一次遅れモデル(一次ローパスフィルタ)により算出する。
HMtsm =(C3 ×HMtsm.old +T1 ×Mt )/(C3 +T1 )
ここで、C3 は一次遅れフィルタ時定数(例えば32ms)であり、T1 は演算周期(例えば8ms)である。
【0044】
[低動作開度算出ルーチン]
図6に示す低動作開度算出ルーチンは、ECU30の電源オン中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、ベース系統の要求スロットル開度BTAと、高応答系統の要求スロットル開度HTAと、推定スロットル開度TAvt(前回の最終目標スロットル開度TAttから推定した実スロットル開度)を読み込む。
【0045】
この後、ステップ302に進み、推定スロットル開度TAvtがベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内(BTA≦TAvt≦HTA 又は HTA≦TAvt≦BTA)であるか否かを判定する。
【0046】
このステップ302で、推定スロットル開度TAvtがベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内であると判定された場合には、ステップ303に進み、推定スロットル開度TAvtを目標スロットル開度TAt として設定する。
目標スロットル開度TAt =推定スロットル開度TAvt
【0047】
これに対して、上記ステップ302で、推定スロットル開度TAvtがベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内ではないと判定された場合には、ステップ304に進み、ベース系統の要求スロットル開度BTAと推定スロットル開度TAvtの差の絶対値(|BTA−TAvt|)が高応答系統の要求スロットル開度HTAと推定スロットル開度TAvtの差の絶対値(|HTA−TAvt|)以下であるか否かを判定する。
【0048】
このステップ304で、ベース系統の要求スロットル開度BTAと推定スロットル開度TAvtの差の絶対値(|BTA−TAvt|)が高応答系統の要求スロットル開度HTAと推定スロットル開度TAvtの差の絶対値(|HTA−TAvt|)以下であると判定された場合には、ベース系統の要求スロットル開度BTAの方が高応答系統の要求スロットル開度HTAよりも推定スロットル開度TAvtに近いと判断して、ステップ305に進み、推定スロットル開度TAvtに近いベース系統の要求スロットル開度BTAを目標スロットル開度TAt として設定する。
目標スロットル開度TAt =ベース系統の要求スロットル開度BTA
【0049】
一方、上記ステップ304で、ベース系統の要求スロットル開度BTAと推定スロットル開度TAvtの差の絶対値(|BTA−TAvt|)が高応答系統の要求スロットル開度HTAと推定スロットル開度TAvtの差の絶対値(|HTA−TAvt|)よりも大きいと判定された場合には、高応答系統の要求スロットル開度HTAの方がベース系統の要求スロットル開度BTAよりも推定スロットル開度TAvtに近いと判断して、ステップ306に進み、推定スロットル開度TAvtに近い高応答系統の要求スロットル開度HTAを目標スロットル開度TAt として設定する。
目標スロットル開度TAt =高応答系統の要求スロットル開度HTA
【0050】
以上説明した本実施例1では、目標スロットル開度TAt がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内(つまり吸気系の応答遅れを補償した要求スロットル開度の許容範囲内)で且つ目標スロットル開度TAt の動作量が少なくなるように目標スロットル開度TAt を設定するようにしたので、エンジン11の過渡運転時でも吸気系の応答遅れを補償した目標スロットル開度TAt を設定しながら目標スロットル開度TAt の振動を抑制することができ、スロットルバルブ16や該スロットルバルブ16を駆動するモータ15等からなるスロットル装置の摺動部の摩耗量を減少させて耐久性を向上させることができると共に、スロットルバルブ16を駆動するモータ15の過熱を防止することができる。
【0051】
また、本実施例1では、推定スロットル開度TAvt(前回の最終目標スロットル開度TAttから推定した実スロットル開度)がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内のときには推定スロットル開度TAvtを目標スロットル開度TAt として設定し、推定スロットル開度TAvtがベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲外のときにはベース系統の要求スロットル開度BTAと高応答系統の要求スロットル開度HTAのうちの推定スロットル開度TAvtに近い方を目標スロットル開度TAt として設定するようにしたので、推定スロットル開度TAvt(実スロットル開度の推定値)と目標スロットル開度TAt との偏差を小さくすることができて、実スロットル開度の動作量を効果的に低減することができ、スロットル装置の摺動部の摩耗量を減少させて耐久性を向上させる効果を高めることができる。
【実施例2】
【0052】
次に、図7乃至図9を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0053】
本実施例2では、ECU30により後述する図9の低動作開度算出ルーチンを実行することで、図7に示すように、目標スロットル開度の前回値TAt.old がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内のときには推定スロットル開度TAvtを目標スロットル開度の今回値TAt として設定し、目標スロットル開度の前回値TAt.old がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲外のときにはベース系統の要求スロットル開度BTAと高応答系統の要求スロットル開度HTAのうちの目標スロットル開度の前回値TAt.old に近い方を目標スロットル開度の今回値TAt として設定することで、図8に示すように、ベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内に目標スロットル開度TAt を維持しながら、目標スロットル開度TAt の動作量を少なくする。この場合、目標スロットル開度の前回値TAt.old と今回値TAt との偏差を小さくすることができるため、目標スロットル開度TAt の動作量を効果的に低減することができる。
【0054】
図9に示す低動作開度算出ルーチンでは、まず、ステップ401で、ベース系統の要求スロットル開度BTAと、高応答系統の要求スロットル開度HTAと、目標スロットル開度の前回値TAt.old を読み込む。
【0055】
この後、ステップ402に進み、目標スロットル開度の前回値TAt.old がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内(BTA≦TAt.old ≦HTA 又は HTA≦TAt.old ≦BTA)であるか否かを判定する。
【0056】
このステップ402で、目標スロットル開度の前回値TAt.old がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内であると判定された場合には、ステップ403に進み、目標スロットル開度の前回値TAt.old を目標スロットル開度の今回値TAt として設定する。
目標スロットル開度TAt =目標スロットル開度の前回値TAt.old
【0057】
これに対して、上記ステップ402で、目標スロットル開度の前回値TAt.old がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内ではないと判定された場合には、ステップ404に進み、ベース系統の要求スロットル開度BTAと目標スロットル開度の前回値TAt.old の差の絶対値(|BTA−TAt.old |)が高応答系統の要求スロットル開度HTAと目標スロットル開度の前回値TAt.old の差の絶対値(|HTA−TAt.old |)以下であるか否かを判定する。
【0058】
このステップ404で、ベース系統の要求スロットル開度BTAと目標スロットル開度の前回値TAt.old の差の絶対値(|BTA−TAt.old |)が高応答系統の要求スロットル開度HTAと目標スロットル開度の前回値TAt.old の差の絶対値(|HTA−TAt.old |)以下であると判定された場合には、ベース系統の要求スロットル開度BTAの方が高応答系統の要求スロットル開度HTAよりも目標スロットル開度の前回値TAt.old に近いと判断して、ステップ405に進み、目標スロットル開度の前回値TAt.old に近いベース系統の要求スロットル開度BTAを目標スロットル開度の今回値TAt として設定する。
目標スロットル開度TAt =ベース系統の要求スロットル開度BTA
【0059】
一方、上記ステップ404で、ベース系統の要求スロットル開度BTAと目標スロットル開度の前回値TAt.old の差の絶対値(|BTA−TAt.old |)が高応答系統の要求スロットル開度HTAと目標スロットル開度の前回値TAt.old の差の絶対値(|HTA−TAt.old |)よりも大きいと判定された場合には、高応答系統の要求スロットル開度HTAの方がベース系統の要求スロットル開度BTAよりも目標スロットル開度の前回値TAt.old に近いと判断して、ステップ406に進み、目標スロットル開度の前回値TAt.old に近い高応答系統の要求スロットル開度HTAを目標スロットル開度の今回値TAt として設定する。
目標スロットル開度TAt =高応答系統の要求スロットル開度HTA
【0060】
以上説明した本実施例2では、目標スロットル開度の前回値TAt.old がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲内のときには目標スロットル開度の前回値TAt.old を目標スロットル開度の今回値TAt として設定し、目標スロットル開度の前回値TAt.old がベース系統の要求スロットル開度BTAから高応答系統の要求スロットル開度HTAまでの範囲外のときにはベース系統の要求スロットル開度BTAと高応答系統の要求スロットル開度HTAのうちの目標スロットル開度の前回値TAt.old に近い方を目標スロットル開度の今回値TAt として設定するようにしたので、目標スロットル開度の前回値TAt.old と今回値TAt との偏差を小さくすることができて、目標スロットル開度TAt の動作量を効果的に低減することができ、スロットルバルブ16を駆動するモータ15に流れる電流の変動を抑制してモータ15の過熱を防止する効果を高めることができる。
【0061】
尚、上記各実施例1,2では、規範モデルを一次遅れモデルに設定するようにしたが、規範モデルは、これに限定されず、適宜変更しても良く、例えば、規範モデルを二次遅れモデルに設定するようにしても良い。
【0062】
また、上記各実施例1,2では、ベース系統の規範モデル31の応答特性と、高応答系統の規範モデル33の応答特性とが異なる仕様としたが、これに限定されず、例えば、ベース系統の応答遅れ補償手段32で用いる吸気系モデルの逆モデルの応答特性と、高応答系統の応答遅れ補償手段34で用いる吸気系モデルの逆モデルの応答特性とが異なる仕様としても良い。
【0063】
また、上記各実施例1,2では、ベース系統の要求スロットル開度(例えば要求スロットル開度の低応答側の許容限界値)と高応答系統の要求スロットル開度(例えば要求スロットル開度の高応答側の許容限界値)を算出するようにしたが、これに限定されず、例えば、要求吸入吸気量Mt よりも所定許容量(例えば1%)だけ大きい要求吸入空気量に基づいて吸気系の応答遅れを考慮してプラス系統の要求スロットル開度を算出すると共に、要求吸入吸気量Mt よりも所定許容量(例えば1%)だけ小さい要求吸入空気量に基づいて吸気系の応答遅れを考慮してマイナス系統の要求スロットル開度を算出し、目標スロットル開度がマイナス系統の要求スロットル開度からプラス系統の要求スロットル開度までの範囲内で且つ目標スロットル開度の動作量が要求スロットル開度の動作量よりも少なくなるように目標スロットル開度を設定するようにしても良い。
【0064】
その他、本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射式エンジンに限定されず、筒内噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
【符号の説明】
【0065】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、16…スロットルバルブ、21…燃料噴射弁、22…点火プラグ、23…排気管、30…ECU、31…ベース系統の規範モデル(第1の要求スロットル開度算出手段)、32…応答遅れ補償手段(第1の要求スロットル開度算出手段)、33…高応答系統の規範モデル(第2の要求スロットル開度算出手段)、34…応答遅れ補償手段(第2の要求スロットル開度算出手段)、35…低動作開度算出手段35(目標スロットル開度算出手段)、36…ガード手段、37…吸気系モデル(スロットル開度推定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の要求吸入空気量に基づいて目標スロットル開度を算出する機能を備えた内燃機関の吸入空気量制御装置において、
前記要求吸入空気量に基づいて吸気系の応答遅れを考慮して第1の要求スロットル開度を算出する第1の要求スロットル開度算出手段と、
前記第1の要求スロットル開度算出手段とは異なる応答特性で前記要求吸入空気量に基づいて吸気系の応答遅れを考慮して第2の要求スロットル開度を算出する第2の要求スロットル開度算出手段と、
前記第1の要求スロットル開度と前記第2の要求スロットル開度とに基づいて前記目標スロットル開度を算出する目標スロットル開度算出手段とを備え、
前記目標スロットル開度算出手段は、前記目標スロットル開度が前記第1の要求スロットル開度から前記第2の要求スロットル開度までの範囲内で且つ前記目標スロットル開度の動作量が前記要求スロットル開度の動作量よりも少なくなるように前記目標スロットル開度を設定することを特徴とする内燃機関の吸入空気量制御装置。
【請求項2】
前記第1の要求スロットル開度算出手段と前記第2の要求スロットル開度算出手段は、それぞれ前記要求吸入空気量を所定の規範モデルによって実現可能な応答の要求吸入空気量(以下「モデル後要求吸入空気量」という)に変換し、吸気系の応答遅れを考慮した吸気系モデルの逆モデルを用いて前記モデル後要求吸入空気量を実現するように前記要求スロットル開度を算出する機能を備え、前記第1の要求スロットル開度算出手段と前記第2の要求スロットル開度算出手段とで前記規範モデルの応答特性が異なることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸入空気量制御装置。
【請求項3】
前記目標スロットル開度の前回値に基づいて実スロットル開度の推定値である推定スロットル開度を算出するスロットル開度推定手段を備え、
前記目標スロットル開度算出手段は、前記推定スロットル開度が前記第1の要求スロットル開度から前記第2の要求スロットル開度までの範囲内のときには前記推定スロットル開度を前記目標スロットル開度として設定し、前記推定スロットル開度が前記第1の要求スロットル開度から前記第2の要求スロットル開度までの範囲外のときには前記第1の要求スロットル開度と前記第2の要求スロットル開度のうちの前記推定スロットル開度に近い方を前記目標スロットル開度として設定する手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の吸入空気量制御装置。
【請求項4】
前記目標スロットル開度算出手段は、前記目標スロットル開度の前回値が前記第1の要求スロットル開度から前記第2の要求スロットル開度までの範囲内のときには前記目標スロットル開度の前回値を前記目標スロットル開度の今回値として設定し、前記目標スロットル開度の前回値が前記第1の要求スロットル開度から前記第2の要求スロットル開度までの範囲外のときには前記第1の要求スロットル開度と前記第2の要求スロットル開度のうちの前記目標スロットル開度の前回値に近い方を前記目標スロットル開度の今回値として設定する手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の吸入空気量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−99355(P2011−99355A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253418(P2009−253418)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】