説明

内燃機関の排気ガス浄化システム

【課題】高濃度のオゾンを、低消費電力で生成することを可能とする。
【解決手段】内燃機関の排気ガス浄化システムは、内燃機関の排気系において、排気ガスを浄化する浄化手段(502)と、内燃機関の吸気系から分岐した空気を原料空気として冷却する冷却手段(350)と、冷却された原料空気によって、排気ガスを酸化するオゾンを生成するオゾン生成手段(400)と、生成されたオゾンを、浄化手段に供給するオゾン供給路(303)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスを浄化する触媒等の浄化手段を備えた内燃機関の排気ガス浄化システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(オゾンは、硫化水素や可溶有機分の酸化作用に用いる)
近年、希薄(リーン)燃焼型の内燃機関の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するべくNOx触媒が実用化されている。NOx触媒は、例えば吸蔵還元型NOx触媒の場合、例えばアルミナを担体としてバリウム(Ba)などのアルカリ土類と白金(Pt)のような貴金属とが担持されたものであり、排気ガス中のNOxは硝酸塩(Ba(NO3)2)の形でNOx触媒に吸蔵される。そして、NOx触媒は内燃機関がリーン空燃比にて運転中であるときにはその排気ガス中のNOxを吸蔵する一方、内燃機関の排気空燃比が理論空燃比以下のリッチ空燃比で運転されるときにはその吸蔵したNOxを放出し還元する機能を有している。
【0003】
ところが、燃料および機関の潤滑油内には硫黄(S)が含まれているので、排気ガス中にも硫黄が含まれる。このため、NOx触媒は排ガス中の硫黄成分をBaSO4などの硫酸塩として吸蔵してしまい、硫黄成分により被毒(S被毒)される性質を有する。NOx触媒に吸蔵された硫酸塩は硝酸塩に比べて安定性が高いため、排気空燃比を燃料リッチにしてもNOx触媒から放出されず、NOx触媒に次第に蓄積される。そして、NOx触媒内の硫酸塩の量が増大するとNOx触媒が吸収しうるNOxの量が次第に低下し、NOx触媒のNOx吸蔵能力が低下するという問題を生ずる。
【0004】
そこで、硫黄被毒されたNOx触媒の温度を高めるとともにNOx触媒を還元雰囲気下におくことにより、吸蔵された硫酸塩を硫黄酸化物(SOx)に分解してNOx触媒から離脱させ、NOxの吸蔵能力を回復或いは再生させることが知られている。しかし、S被毒したNOx触媒を再生する際には、例えば下記の化学反応式により脱離したSOxが排ガス中の水素(H2)と反応し、硫化水素(H2S)が一時的に多量に生成される。
【0005】
BaSO4+CO→BaCO3+SO2
SO2+H2→H2S+O2
このような硫化水素は強い臭気を発生させる性質があり、大気中に放出されると、例えば内燃機関が搭載された車両の周囲で異臭を放つため、好ましいものではない。そこで、硫化水素を、オゾンにより酸化分解する手法について提案されている。
【0006】
一方、パティキュレートフィルタに捕集された排気ガス中の微粒子を、パティキュレートフィルタに担持された活性酸素放出剤により酸化することが提案されている。これにおいて、パティキュレートフィルタのS被毒回復時にはパティキュレートフィルタの温度が昇温され、これにより発生した硫化水素は、活性酸素放出剤から発生した活性酸素によりSOxに酸化され、分解される。更に、この硫化水素の酸化分解を、排気ガスにオゾンを供給することによって、より効果的に行う手法についても提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−144341号公報
【特許文献2】特開2005−69041号公報
【特許文献3】特開平9−195784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した手法では、オゾンを生成する際に、内燃機関の排気系に存在しない空気をオゾンを生成するための原料空気とする場合、例えばエンジンルーム内の空気などの空気を原料空気とするため、原料空気の温度は高温となってしまい、オゾンの生成効率が低下してしまうという技術的な問題点が生じる。このオゾンの生成効率の低下によって、オゾンの生成量が低下してしまい、ひいては、排気ガス浄化装置の浄化効率が低下してしまうという技術的な問題点が生じる。仮に、オゾンの生成量を増加させるために、例えば低温プラズマを利用したオゾン生成装置における放電電力を増加させた場合、消費電力が増加し、オルタ発電量が増加してしまい、ひいては、内燃機関の燃料消費量が増加し、燃費が低下してしまうという技術的な問題点が生じる。
【0009】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、高濃度のオゾンを、低消費電力で生成することが可能な排気ガス浄化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る内燃機関の排気ガス浄化システムは、内燃機
関の排気系において、前記内燃機関から排気される排気ガスを浄化する浄化手段(例えばNOx触媒)と、前記内燃機関の吸気系から分岐した空気を原料空気として冷却する冷却手段(例えば車内用エアコン装置)と、前記冷却された原料空気によって、前記排気ガスを酸化するオゾンを生成するオゾン生成手段と、前記生成されたオゾンを、前記浄化手段に供給するオゾン供給路とを備える。
【0011】
本発明に係る内燃機関の排気ガス浄化システムによれば、オゾン生成手段によって、内燃機関の吸気系から分岐した空気である原料空気を原料して、オゾンが生成される。特に、本発明では、例えば冷媒の吸熱作用を利用して冷却手段によって、原料空気の温度を低下させる。具体的には、例えば車内用エアコン装置に備えられた冷媒圧縮機によって循環される冷媒が気化することによる吸熱作用によって、原料空気の温度を低下させてよい。
【0012】
以上の結果、オゾンの原料となる原料空気の温度を低下させるによって、オゾン生成量をより多量にすることが可能である。
【0013】
本発明に係る内燃機関の排気ガス浄化システムの一の態様では、前記排気ガスを浄化する所定タイミングで、前記原料空気を冷却するように前記冷却手段を制御することに加えて又は代えて、前記オゾンを生成するように前記オゾン生成手段を制御する制御手段(例えばECU(Engine Control Unit))を更に備える。
【0014】
この態様によれば、オゾンを生成するために、常時、オゾン生成手段を駆動させる場合と比較して、オゾンを生成する要求が発生した場合だけ、オゾン生成手段を駆動させるので、省電力を実現可能である。
【0015】
本発明に係る内燃機関の排気ガス浄化システムの他の態様では、前記排気浄化手段の上流側において、前記排気ガスの圧力を測定する測定手段を更に備え、前記制御手段は、前記所定タイミングとして、前記測定された排気ガスの圧力が、所定閾値より大きい場合、前記冷却手段を制御することに加えて又は代えて、前記オゾン生成手段を制御する。
【0016】
この態様によれば、排気ガスの圧力が所定閾値より大きい状態により、例えば各種の触媒等の浄化手段において、可溶有機分(SOF:SolubleOrganicFraction)の目詰まりが発生したことに迅速に対応して、制御手段の制御下で、オゾン生成手段を適切なタイミングで駆動させ、オゾンを適切なタイミングで生成させることが可能である。ここに、本発明に係る、所定閾値とは、理論的、実験的、経験的、シミュレーション等に基づいて、可溶有機分の目詰まりの発生に対応して、オゾンを生成する所望のタイミングが得られるように個別具体的に規定することが可能である。
【0017】
本発明に係る内燃機関の排気ガス浄化システムの他の態様では、前記冷却手段は、前記原料空気を冷却する冷媒を圧縮する冷媒圧縮機を有し、前記冷却された原料空気を前記オゾン生成手段に供給させる空気圧縮機を更に備え、前記冷媒圧縮機と、前記空気圧縮機とは、電動機を共有している。
【0018】
この態様によれば、例えばオゾンを生成する要求が発生した場合だけ、空気圧縮機を駆動することができるので、冷媒圧縮機及び空気圧縮機に共有される電動機による消費電力を低減させ、省電力化することができる。
【0019】
本発明に係る内燃機関の排気ガス浄化システムの他の態様では、前記冷却手段において、前記原料空気を熱交換によって冷却する冷媒を循環させる循環経路(例えば車内用エアコン装置)と、前記冷却された原料空気を前記オゾン生成手段に供給する原料供給路とは、物理的又は構造的に異なる。
【0020】
この態様によれば、原料空気は、冷媒に物理的に接触することなく間接的に冷却される。言い換えると、冷却された原料空気をオゾン生成手段に供給する原料供給路と、冷媒が循環する循環経路とを物理的又は構造的に区別できる。これにより、原料空気から生成されたオゾンが、上述の原料供給経路を逆流した場合、オゾンと冷媒とが物理的に接触して、予想されない化学反応が起こることを防止することができる。
【0021】
本発明に係る内燃機関の排気ガス浄化システムの他の態様では、前記オゾン供給路は、前記浄化手段の上流側で、前記生成されたオゾンを前記排気ガスに供給する。
【0022】
この態様によれば、例えば各種の触媒等の浄化手段の上流側において、可溶有機分(SOF)を効果的に酸化分解させることが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る排気ガス浄化システムによれば、高濃度のオゾンの生成を、低消費電力で実現し、この高濃度のオゾンを利用することで、浄化性能が高いと共に、燃費の悪化を効果的に抑制可能な排気ガス浄化システムを提供することができる。例えば車内用エアコン装置等の冷却手段と、オゾンに空気を供給する空気供給手段との構成を統合することで、オゾン生成装置を含む排気ガス浄化システムの小型化を低コストで実現可能であり、車両へ容易に搭載することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0025】
(1) 基本構成
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るオゾン生成部を含む排気ガス浄化システムの基本構成について説明する。ここに、図1は、本実施形態に係るオゾン生成部を含む排気ガス浄化システムの基本構成を概念的に示したブロック図である。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態に係る排気ガス浄化システムは、エアフィルタ100、内燃機関200、空気供給部300、オゾン生成部400、排圧センサ501、浄化手段502、及びECU600を備えて構成されている。
【0027】
具体的には、内燃機関200は、例えば直噴型のガソリンエンジンであり、燃料を噴射する燃料噴射弁201、空気を吸気するための吸気弁202、燃焼室203内で燃料を点火する点火プラグ204、燃料の燃焼によって摺動するピストン205、及び、燃焼室から燃焼ガスを排気するための排気弁206を備えて構成されている。詳細には、内燃機関の吸気系は、図示しない外気を取り込むためのエアダクトから、エアフローメータ並びにスロットルモータ及びスロットルポジションセンサ付きの電子制御スロットル弁を経由して吸気管からサージタンクへ流れ、更に吸気ポートを経由して、気筒内の燃焼室203へ吸気されるように構成されている。吸気ポートには、吸気ポートを開閉する吸気弁202が設けられている。他方で、内燃機関の排気系は、排気ガスが、気筒内の燃焼室203から図示しない排気ポート、排気管、浄化手段502及びマフラーを経由して、大気中へ排出されるように構成されている。排気ポートには、排気ポートを開閉する排気弁206が設けられている。
【0028】
空気供給部300は、内燃機関に吸気される空気をフィルタリングするエアフィルタ100を介して供給される空気を圧縮する空気圧縮機301、圧縮した空気をオゾン生成器400に供給する空気供給管302、空気供給管302を流れる空気を冷却する冷却部350を備えて構成されている。
【0029】
上述した空気圧縮機301は、エアフィルタ100の通過し、内燃機関の吸気系とは分岐した空気供給管304を流れる空気を、オゾン(O3)を生成する際の原料である原料空気として圧縮して、オゾン生成部400へ供給する。この空気圧縮機301により、オゾンの生成に必要十分な所定の流量の原料空気を確保できる。
【0030】
冷却部350は、冷媒の気化熱を利用して、空気供給管302を流れる空気を冷却するために、冷媒圧縮機351、凝縮器352、膨張弁353、蒸発器354、モーター310、及び、これらの要素を接続する循環経路355を備えて構成されている。尚、冷媒圧縮機351の一具体例としては、市販されている、例えば車内用エアコン装置に備えられた冷媒を循環させる冷媒圧縮機(冷媒コンプレッサ)を挙げることができる。また、上述した空気圧縮機301は、この冷媒圧縮機の内部に備えられ、例えばモーター(電動機)等の各種の要素を共有することが部品点数を低減できるので好ましい。
【0031】
特に、モーターはECU600の制御下で、冷媒圧縮機351を駆動することに加えて又は代えて空気圧縮機301を駆動するように構成してよい。具体的には、冷媒圧縮機351と空気圧縮機301とは、ECU600の制御下で、同一のモーターを共有してインバータ駆動されることが好ましい。より具体的には、ECU600の制御下で、クラッチ等の切り替え手段によって、共有されるモーターの回転駆動が冷媒圧縮機351及び空気圧縮機301のうち少なくとも一方に伝達されるように、伝達経路が切り替えられる。これにより、オゾンを生成する要求が発生した場合だけ、空気圧縮機301を駆動することができるので、冷媒圧縮機351及び空気圧縮機301に共有されるモーターによる消費電力を低減させ、省電力化することができる。
【0032】
オゾン生成部400は、オゾンを生成する生成器401、及びこの生成器401に電力を供給する電源を備えて構成されている。具体的には、オゾン生成部400としては、高電圧を印加可能な放電管内に原料となる空気又は酸素を流しつつオゾンを発生させる形態や他の任意の形式のものを用いることができる。特に、生成器401は、例えばパルス放電等により形成される低温プラズマを利用して、オゾンを生成する。この低温プラズマを利用した手法は、オゾンの生成量を排気ガスの浄化する上で十分な量だけ確保できるので、信頼性の面で車載用途に適するといえる。
【0033】
排圧センサ501は、浄化手段502の上流側に設けられ、排気ガスの圧力、所謂、排圧を測定する。ECU600は、排気ガスの浄化は、この排圧センサ501によって測定された排気ガスの圧力が所定閾値より大きい場合、オゾンを生成する必要性がある又は必要性が高いと判定してよい。
【0034】
ECU600は、内部にCPU、ROM、RAM、バックアップRAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従って、通常走行時における内燃機関を統括制御する。更にECU600は、本発明に係る「制御手段」の一例を構成しており、後述の如く排気ガス浄化システムを統括制御する。具体的には、ECU600は、上述の排圧センサ501、エアフローメータ、スロットルポジションセンサ、内燃機関に取り付けられたクランク角センサに加え、図示しない水温センサ、アクセルポジションセンサ、エンジン回転数センサ、車速センサ、クラッチ位置センサ或いはブレーキペダルの踏み込み有無を検出するブレーキスイッチセンサ等のその他のセンサとが電気配線を介して接続されている。更に、ECU600には、点火プラグ204、燃料噴射弁201及びその他のアクチュエータが電気配線を介して接続されている。
【0035】
浄化手段502は、内燃機関の排気系において、燃焼室203から排出された排気ガスを浄化する手段として、排気ガス中のNOxを浄化するNOx触媒が設けられている。但し、浄化手段502は、NOx触媒503に限られず、排気ガス中に含まれる硫黄成分によって被毒され、本来有する排気浄化性能を喪失するようなものであればいかなるものであってもよい。このような浄化手段としては他に三元触媒、HC吸着剤、NOx吸着剤及び粒子状物質酸化触媒等が挙げられる。また浄化手段はこれらのうちの2以上の組み合わせからなってもよい。
【0036】
尚、三元触媒は、アルミナ、セリアなどの多孔質酸化物にPt,Pd及びRhなどの貴金属を担持してなるものであり、理論空燃比(ストイキ)近傍雰囲気で排気ガス中のHC,CO及びNOxを同時に浄化し得るものである。HC吸着剤は、例えば、シリカを主成分とする多孔質吸着剤(例えばSiO4の層状結晶間にSiO2を担持させたもの)やゼオライト等の多孔質材料等を、多数の細い軸線方向流路(セル)を有する円筒状に形成したものであり、吸着剤温度が低いときに流入する排気中のHC成分を多孔質の細孔内に吸着し、吸着剤温度が高いときに吸着したHC成分を放出するHCの吸放出作用を行う。これは特にエンジンの冷間始動時におけるいわゆるコールドHCの低減に有効である。NOx吸着剤は、多孔質のゼオライト等からなり、排気ガス中のNOやNO2を硝酸塩の形ではなくそのままの形で保持するものである。粒子状物質酸化触媒は、主にディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(PM;ParticulateMatter)を捕集するパティキュレートフィルタの表面に担持され、その捕集された粒子状物質を比較的低温で酸化(燃焼)除去するものであり、例えば、白金Pt、パラジウムPd、ロジウムRh等の貴金属、および、カリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCs等のアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCa、ストロンチウムSr等のアルカリ土類金属、ランタンLa、イットリウムY、セリウムCe等の希土類、鉄Fe等の遷移金属から選ばれた少なくとも一つからなる。
【0037】
特に、本実施形態の排気ガス浄化システムにおいては、硫黄被毒再生時にNOx触媒503から排出される硫化水素を、大気中に放出される前に、酸化性ガスとしてのオゾンによりSOxに酸化し、これによって硫化水素の大気中への放出及びこれに伴う異臭発生を防止している。具体的には、オゾンの生成器401で発生したオゾンが、NOx触媒503よりも上流側の位置にて、空気供給管303から排気系に供給される。これにより、NOx触媒503へ排気された硫化水素を、NOx触媒503の上流側でオゾンによりSOxに酸化することができ、硫化水素のNOx触媒503への放出、ひいては、大気中への排出を抑制できる。硫化水素H2SとオゾンO3との反応は次式(1)で表される。
【0038】
H2S+O3→H2O+SO2 …… (1)
尚、これから分かるように硫化水素H2SとオゾンO3との反応は等モル反応である。
【0039】
(2)排気ガス浄化システムの制御方法
次に、図2を参照して、本実施形態に係る、オゾンの生成により排気ガスを浄化する排気ガス浄化システムの制御方法について説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る、排気ガス浄化システムの制御処理の流れを示したフローチャートである。尚、この排気ガス浄化システムの制御処理は、ECUによって、例えば、数十μ秒、又は数μ秒等の所定の周期で繰り返し実行される。
【0040】
図2に示されるように、ECU600の制御下で、車内用エアコン装置(車内用Air Conditioner)の駆動が、例えばドライバー等によって要求されたか否かが判定される(ステップS101)。ここで、車内用エアコン装置の駆動が、例えばドライバーやECU600等によって要求されたと判定される場合(ステップS101:Yes)、ECU600の制御下で、車内用エアコン装置に備えられた冷媒を循環させるための冷媒圧縮機351(冷媒コンプレッサ)が駆動される(ステップS102)。他方、ステップS101の判定の結果、車内用エアコン装置の駆動が、例えばドライバー等によって要求されたと判定されない場合(ステップS101:No)、冷媒圧縮機351の駆動は省略される。
【0041】
次に、ECU600の制御下で、排気ガスの浄化が要求されたか否かが判定される(ステップS103)。具体的には、ECU600の制御下で、この排気ガスの浄化は、排気ガス浄化システムの上流側における排気ガスの圧力が所定閾値より大きい場合、自動的に要求されるようにしてよい。或いは、ECU600の制御下で、この排気ガスの浄化は、例えばドライバー等によるボタン操作によって、手動的に要求されるようにしてよい。
【0042】
上述のステップS103の判定の結果、ECU600の制御下で、排気ガスの浄化が要求されたと判定される場合(ステップS103:Yes)、更に、ECU600の制御下で、冷媒圧縮機351が動作中であるか否かが判定される(ステップS104)。ここで、冷媒圧縮機351が動作中であると判定されない場合、即ち、冷媒圧縮機351が動作中でないと判定される場合(ステップS104:No)、ECU600の制御下で、冷媒圧縮機351が駆動される(ステップS105)。他方、ステップS104の判定の結果、冷媒圧縮機351が動作中であると判定される場合(ステップS104:Yes)、上述したステップS105は省略される。
【0043】
仮に、オゾンを生成するために、常時、冷媒圧縮機351を駆動させる場合、電力消費量が増大してしまう。
【0044】
これに対して、本実施形態によれば、モーター310は、ECU600の制御下で、冷媒圧縮機351を駆動することに加えて又は代えて空気圧縮機301を適宜、選択的に駆動するように構成する。具体的には、ECU600の制御下で、クラッチ等の切り替え手段によって、共有されるモーターの回転駆動が冷媒圧縮機351及び空気圧縮機301のうち少なくとも一方に伝達されるように、伝達経路が切り替えられる。これにより、オゾンを生成する要求が発生した場合だけ、空気圧縮機301を駆動することができるので、冷媒圧縮機351及び空気圧縮機301に共有されるモーターによる消費電力を低減させ、省電力化することができる。
【0045】
次に、ECU600の制御下で、オゾン生成用の空気圧縮機301が駆動され、オゾンの生成器401に対して、冷媒圧縮機351により所定温度に冷却された空気が供給される(ステップS106)。
【0046】
(原料空気の温度を低下させる原理)
ここで、原料空気の温度を低下させる原理について説明する。上述したように、冷媒360の吸熱作用によって、原料空気の温度を低下させる。具体的には、例えば車内用エアコン装置に備えられた冷媒圧縮機351によって循環される冷媒が気化することによる吸熱作用によって、原料空気の温度を低下させてよい。特に、原料空気は、冷媒360に物理的に接触することなく間接的に冷却されることが好ましい。言い換えると、原料空気からオゾンが生成される生成経路(即ち、空気供給管302、オゾン生成部400及び空気供給管303の経路)と、冷媒が循環する循環経路(即ち、冷却部350)とを物理的又は構造的に区別することが好ましい。これにより、原料空気から生成されたオゾンが、上述の生成経路を逆流した場合、オゾンと冷媒360とが物理的に接触して、予想されない化学反応が起こることを防止することができる。
【0047】
以上の結果、オゾンの原料となる原料空気の温度を低下させるによって、オゾン生成量をより多量にすることが可能である。
【0048】
再び、図2に戻って、ECU600の制御下で、オゾンの生成器401に電力が供給され、オゾンの生成器401が駆動され、供給された所定温度に冷却された空気に基づいて、オゾンが生成される(ステップS107)。
【0049】
この結果、所定温度に冷却された空気によってオゾンを生成することで、より高濃度のオゾンを生成することが可能である。加えて、オゾンを生成するために、常時、オゾンの生成器を駆動させる場合と比較して、オゾンを生成する要求が発生した場合だけ、オゾンの生成器401を駆動させるので、省電力を実現可能である。
【0050】
上述したように、一般的な車両に装備されている、例えば車内用エアコン装置等の冷却部350と、オゾンを生成する原料空気を供給する空気供給部300との構成を統合し、冷媒360の吸熱作用によって、原料空気の温度を低下させる。この結果、高濃度のオゾンを、低消費電力で生成することが可能である。加えて、例えば車内用エアコン装置等の冷却部350と、オゾンに空気を供給する空気供給部300との構成を統合することで、オゾン生成装置を含む排気ガス浄化システムの小型化を低コストで実現可能であり、車両へ容易に搭載することが可能である。この高濃度のオゾンを利用することで、浄化性能が高いと共に、燃費の悪化を効果的に抑制可能な排気ガス浄化システムを提供することができる。
【0051】
上述した実施形態では、本発明に係る冷却手段の一具体例として、車内用エアコン装置(車内用Air Conditioner)について説明したが、この限りではない。本発明に係る冷却手段は、例えばハイブリッド車両に利用される各種の冷却手段等の既存の冷却システムを構成する全ての冷却手段及び冷却手法によって、実現可能である。
【0052】
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、本発明はガソリンエンジンに限らず、ディーゼルガソリンその他の燃料を利用する各種の内燃機関に適用してよい。
【0053】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の排気ガス浄化システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態に係るオゾン生成部を含む排気ガス浄化システムの基本構成を概念的に示したブロック図である。
【図2】本実施形態に係る、排気ガス浄化システムの制御処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
100……エアフィルタ、
200……内燃機関
300……空気供給部
301……空気圧縮機
302……空気供給管
310……モーター
350……冷却部
351……冷媒圧縮機
352……凝縮器
353……膨張弁
354……蒸発器
355……循環経路
400……オゾン生成部
501……排圧センサ
502……浄化手段
600……ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系において、前記内燃機関から排気される排気ガスを浄化する浄化手段と、
前記内燃機関の吸気系から分岐した空気を原料空気として冷却する冷却手段と、
前記冷却された原料空気によって、前記排気ガスを酸化するオゾンを生成するオゾン生成手段と、
前記生成されたオゾンを、前記浄化手段に供給するオゾン供給路と
を備えることを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化システム。
【請求項2】
前記排気ガスを浄化する所定タイミングで、前記原料空気を冷却するように前記冷却手段を制御することに加えて又は代えて、前記オゾンを生成するように前記オゾン生成手段を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
前記排気浄化手段の上流側において、前記排気ガスの圧力を測定する測定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記所定タイミングとして、前記測定された排気ガスの圧力が、所定閾値より大きい場合、前記冷却手段を制御することに加えて又は代えて、前記オゾン生成手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記原料空気を冷却する冷媒を圧縮する冷媒圧縮機を有し、
前記冷却された原料空気を前記オゾン生成手段に供給させる空気圧縮機を更に備え、
前記冷媒圧縮機と、前記空気圧縮機とは、電動機を共有していることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
前記冷却手段において、前記原料空気を熱交換によって冷却する冷媒を循環させる循環経路と、前記冷却された原料空気を前記オゾン生成手段に供給する原料供給路とは、物理的又は構造的に異なることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。
【請求項6】
前記オゾン供給路は、前記浄化手段の上流側で、前記生成されたオゾンを前記排気ガスに供給することを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−133244(P2009−133244A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309292(P2007−309292)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】