説明

内燃機関の排気再循環装置

【課題】冷却水を加熱する必要が生じた時に、高い上昇率で冷却水の温度を高めることが出来る排気再循環装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の燃焼室から排気通路40に排出される排気ガスを吸気通路30に導入するための排気再循環管51と排気再循環管を冷却することによって排気再循環管内を流れる排気ガスを冷却する冷却水を循環させる冷却水循環通路55、56、57を備えた冷却手段53とを具備し、冷却水が冷却水循環通路を循環せしめられることによって冷却水の温度が低下せしめられ、吸気通路への排気ガスの導入の停止中に冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止される内燃機関の排気再循環装置50であって、排気再循環装置は排気再循環管を加熱する加熱手段54をさらに具備し、冷却水循環通路内における冷却水の循環の停止中に加熱手段によって排気再循環管を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気再循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に内燃機関の排気再循環装置(以下この装置を「EGR装置」という)が記載されている。このEGR装置は、内燃機関の燃焼室から排気通路に排出される排気ガスを吸気通路に導入する装置である。また、このEGR装置は、吸気通路に導入する排気ガス(以下この排気ガスを「EGRガス」という)を流すための排気再循環管(以下この管を「EGR管」という)と、該EGR管を冷却するための冷却装置と、を具備する。冷却装置は、冷却水を循環させる冷却水循環通路と有する。冷却水が冷却水循環通路内を循環せしめられると、冷却水の温度が低下する。
【0003】
ところで、特許文献1には、冷却水の温度がEGRガスの温度よりも過剰に低いと、冷却水によって排気ガスが過剰に冷却され、冷却装置の領域においてEGR管内に凝縮水が生成され、この凝縮水によってEGR管が腐食する可能性があるとの指摘がある。そして、こうしたEGR管の腐食を抑制するために、特許文献1のEGR装置では、冷却水の温度が所定の温度よりも低いときには、ヒータによって冷却水が加熱されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−125151号公報
【特許文献2】特開2004−197634号公報
【特許文献3】特開2000−87810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に関連して上述したように、EGR装置では、冷却水の温度が所定の温度よりも低いときに冷却水の温度を上昇させることが要請されることがある。そして、こうした冷却水の温度の上昇は、上述したEGR管の腐食を抑制する目的以外の目的でも要請されることがある。そして、こうした要請が生じた場合、冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることが好ましい。しかしながら、特許文献1のEGR装置では、冷却水が冷却水循環通路内を循環せしめられた状態で冷却水が加熱される。上述したように、冷却水が冷却水循環通路内を循環せしめられると、冷却水の温度が低下する。したがって、特許文献1のEGR装置のように、冷却水の温度を上昇させるために冷却水を加熱したときに冷却水が冷却水循環通路内を循環せしめられていると、冷却水の加熱による冷却水の温度上昇率が低くなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、冷却水の温度を上昇させるために冷却水を加熱する必要が生じたときに、冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明は、燃焼室から排気通路に排出される排気ガスを吸気通路に導入するための排気再循環管と、該排気再循環管を冷却することによって該排気再循環管内を流れる排気ガスを冷却する冷却水を循環させる冷却水循環通路を備えた冷却手段と、を具備し、冷却水が前記冷却水循環通路を循環せしめられることによって冷却水の温度が低下せしめられ、吸気通路への排気ガスの導入の停止中に前記冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止される内燃機関の排気再循環装置に関する。そして、本発明の排気再循環装置は、前記排気再循環管を加熱する加熱手段をさらに具備し、前記冷却水循環通路内における冷却水の循環の停止中に前記加熱手段によって前記排気再循環管を加熱する。
【0008】
本発明には、吸気通路への排気ガスの導入の停止中に冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点がある。すなわち、排気再循環装置による吸気通路への排気ガスの導入(以下この導入を「EGRガスの導入」ともいう)の停止中は排気再循環管内を排気ガスが流れないことから、排気再循環管の温度が低下する。ここで、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度が或る温度よりも低くなってしまうと、たとえば、排気再循環管の内壁面に凝縮水が生成され、この凝縮水によって排気再循環管が腐食されてしまうという好ましくない状況が生じる可能性がある。したがって、凝縮水による排気再循環管の腐食を抑制するためには、EGRガスの導入の停止中、排気再循環管の温度を凝縮水の生成温度よりも高い温度に維持しておくことが好ましい。また、排気再循環装置を具備する内燃機関の各種の制御システムが排気再循環装置によって吸気通路に導入される排気ガスの温度が或る温度よりも高い温度であることを前提に構築されている場合に、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度が前記或る温度(以下この温度を「想定温度」という)以下の温度になってしまうと、EGRガスの導入が再開されたときに、想定温度以下の温度の排気ガスが吸気通路に導入される可能性がある。このことは、内燃機関の各種の制御システムに所期の制御特性を発揮させる観点からは好ましくない。したがって、想定温度以下の温度の排気ガスが吸気通路に導入されることを抑制するために、EGRガスの導入の停止中、排気再循環管の温度を想定温度よりも高い温度に維持しておくことが好ましい。
【0009】
そして、EGRガスの導入の停止中、排気再循環管の温度を凝縮水の生成温度よりも高い温度に維持し、あるいは、排気再循環管の温度を想定温度よりも高い温度に維持するためには、EGRガスの導入の停止中の排気再循環管の温度を凝縮水の生成温度よりも高い温度、あるいは、想定温度よりも高い温度に維持しておくことが有効である。このように、上記状況を含めた好ましくない状況の発生を抑制するのに必要な温度ためには、EGRガスの導入の停止中の排気再循環管の温度を比較的高い温度に維持しておくことが有効である。
【0010】
そして、EGRガスの導入の停止中の排気再循環管の温度の低下率が比較的大きいことを考慮すれば、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度を比較的高い温度に維持するためには、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度を高い温度上昇率で上昇させることが要請される。ここで、本発明では、EGRガスの導入の停止中の冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止された状態で排気再循環管が加熱される。したがって、冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止されていない状態で排気再循環管が加熱される場合に比べて、排気再循環管の温度上昇率が高い。したがって、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点が得られるのである。
【0011】
なお、上記発明において、冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止されるタイミングは、吸気通路への排気ガスの導入の停止中のタイミングであればよく、特定のタイミングに制限されず、たとえば、吸気通路への排気ガスの導入の停止と同時に前記冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止されてもよいし、吸気通路への排気ガスの導入の停止から予め定められた時間が経過した時点で前記冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止されてもよい。
【0012】
また、本願の別の発明は、燃焼室から排気通路に排出される排気ガスを吸気通路に導入するための排気再循環管と、該排気再循環管を冷却することによって該排気再循環管内を流れる排気ガスを冷却する冷却水を循環させる冷却水循環通路を備えた冷却手段と、を具備し、冷却水が前記冷却水循環通路を循環せしめられることによって冷却水の温度が低下せしめられる内燃機関の排気再循環装置に関する。そして、本発明の排気再循環装置は、前記排気再循環管を加熱する加熱手段をさらに具備し、前記排気再循環管を加熱する必要が生じたときには前記冷却水循環通路内における冷却水の循環を停止し、該循環の停止中に前記加熱手段によって前記排気再循環管を加熱する。
【0013】
本発明には、排気再循環管を加熱する必要が生じたときに排気再循環管の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点がある。すなわち、排気再循環管の温度として種々の理由から必要な温度がある場合、排気再循環管の温度がこうした必要な温度のうち最も低い温度(以下この温度を「最低限必要な温度」という)よりも低くなることは好ましくない。本発明において、排気再循環管を加熱する必要が生じたときとは、たとえば、排気再循環管の温度がこうした最低限必要な温度よりも低くなったときである。ここで、最低限必要な温度とは、たとえば、以下の温度である。
【0014】
排気再循環管の温度が或る温度よりも低くなってしまうと、たとえば、排気再循環管の内壁面に凝縮水が生成され、この凝縮水によって排気再循環管が腐食されてしまうという好ましくない状況が生じる可能性がある。したがって、凝縮水による排気再循環管の腐食を抑制するためには、排気再循環管の温度を凝縮水の生成温度よりも高い温度に維持しておくことが好ましい。この場合、凝縮水の生成温度のうち最も高い温度(別の言い方をすれば、凝縮水が生成されない温度のうち最も低い温度)が最低限必要な温度に相当する。
【0015】
また、排気再循環装置を具備する内燃機関の各種の制御システムが排気再循環装置によって吸気通路に導入される排気ガスの温度が或る温度よりも高い温度であることを前提に構築されている場合に、排気再循環管の温度が前記或る温度(以下この温度を「想定温度」という)以下の温度になってしまうと、EGRガスの導入が開始されたときに、想定温度以下の温度の排気ガスが吸気通路に導入される可能性がある。このことは、内燃機関の各種の制御システムに所期の制御特性を発揮させる観点からは好ましくない。したがって、想定温度以下の温度の排気ガスが吸気通路に導入されることを抑制するために、EGR管の温度を想定温度以上の温度に維持しておくことが好ましい。この場合、吸気通路に導入される排気ガスの温度を想定温度以上の温度に維持するのに必要な排気再循環管の温度のうち最も低い温度が最低限必要な温度に相当する。
【0016】
そして、排気再循環管の温度がこうした最低限必要な温度よりも低くなったとき、つまり、排気再循環管を加熱する必要が生じたときには、排気再循環管の温度を最低限必要な温度以上の温度まで素早く上昇させること、つまり、排気再循環管の温度を高い温度上昇率で上昇させることが好ましい。
【0017】
本発明では、排気再循環管を加熱する必要が生じたときには、冷却水循環通路内における冷却水の循環(以下これを単に「冷却水の循環」ともいう)が停止され、この冷却水の循環の停止中に排気再循環管が加熱される。冷却水の循環が実行されているときには冷却水が冷却されるのであるから、冷却水の循環の停止中に排気再循環管が加熱される場合、冷却水の循環の実行中に排気再循環管が加熱される場合に比べて、排気再循環管の温度上昇率が高い。したがって、本発明には、排気再循環管を加熱する必要が生じたときに排気再循環管の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点があるのである。
【0018】
なお、上記発明において、排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断する手法は、特に制限されないが、一例を挙げると、たとえば、この手法として、目標とする前記排気再循環管の温度を目標排気再循環管温度として設定し、吸気通路への排気ガスの導入の停止中に排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったときに前記排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断するという手法を採用することができる。
【0019】
この構成が採用された場合、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度を目標排気再循環管温度に維持することができるという利点がある。そして、内燃機関の性能として所望の性能を達成するために望ましいEGRガスの導入の停止中の排気再循環管の温度を目標排気再循環管温度に設定すれば、内燃機関の性能として所望の性能を確実に達成することができる。
【0020】
また、冷却水を加熱する必要が生じたと判断する手法として、たとえば、目標とする前記排気再循環管の温度を目標排気再循環管温度として設定し、吸気通路への排気ガスの導入の停止中に前記排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなると予測されたとき、あるいは、前記排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったと推定されたときに前記排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断するという手法を採用することもできる。
【0021】
EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなると予測されたときに排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断される構成が採用された場合には、排気再循環管の温度が実際に目標排気再循環管温度よりも低くなる前に排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断されることから、より確実にEGRガスの導入の停止中の排気再循環管の温度を目標排気再循環管温度以上の温度に維持することができるという利点がある。一方、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったと推定されたときに排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断される構成が採用された場合には、排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったことが推定によって判断されることから、より簡便にEGRガスの導入の停止中の排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったことを判断することができるという利点がある。
【0022】
なお、上記発明において、排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなると予測する手法は、特に制限されないが、一例を挙げると、たとえば、この手法として、内燃機関の運転が停止せしめられたときに排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなると予測するという手法を採用することができる。また、上記発明において、排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったと推定する手法は、特に制限されないが、一例を挙げると、たとえば、この手法として、内燃機関の運転が停止せしめられたときに排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったと推定するという手法を採用することができる。
【0023】
内燃機関の運転が停止せしめられると、排気再循環管内を排気ガスが流れないことから、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなる蓋然性が高い。この場合に、内燃機関の運転が停止せしめられたことをもって冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなると予測し、あるいは、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったと推定することは、これら予測または推定を簡便に行うという観点から好ましい。
【0024】
また、排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断する手法として、たとえば、目標とする冷却水の温度を目標冷却水温度として設定し、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったときに排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断するという手法を採用することもできる。
【0025】
この構成が採用された場合、冷却水の温度を目標冷却水温度に維持することができるという利点がある。そして、内燃機関の性能として所望の性能を達成するために望ましい冷却水の温度(たとえば、上述したEGRガス下限温度)を目標冷却水温度に設定すれば、内燃機関の性能として所望の性能を確実に達成することができる。
【0026】
また、排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断する手法として、たとえば、目標とする冷却水の温度を目標冷却水温度として設定し、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなると予測されたとき、あるいは、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったと推定されたときに前記排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断するという手法を採用することもできる。
【0027】
冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなると予測されたときに排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断される構成が採用された場合には、冷却水の温度が実際に目標冷却水温度よりも低くなる前に排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断されることから、より確実に冷却水の温度を目標冷却水温度以上の温度に維持することができるという利点がある。一方、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったと推定されたときに排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断する構成が採用された場合には、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったことが推定によって判断されることから、より簡便に冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったことを判断することができるという利点がある。
【0028】
なお、上記発明において、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなると予測する手法は、特に制限されないが、一例を挙げると、たとえば、この手法として、内燃機関の運転が停止せしめられたときに冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなると予測する手法を採用することができる。また、上記発明において、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったと推定する手法は、特に制限されないが、一例を挙げると、たとえば、この手法として、内燃機関の運転が停止せしめられたときに冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったと推定するという手法を採用することができる。
【0029】
内燃機関の運転が停止せしめられると、排気再循環管内を排気ガスが流れないことから、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなる蓋然性が高い。この場合に、内燃機関の運転が停止せしめられたことをもって冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなると予測し、あるいは、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったと推定することは、これら予測または推定を簡便に行うという観点から好ましい。
【0030】
また、排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断する手法として、たとえば、内燃機関が始動されることが予測されたときに前記排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断するという手法を採用することもできる。
【0031】
この構成が採用された場合、内燃機関の始動直後に排気再循環装置による吸気通路への排気ガスの導入が開始されたとしても比較的高い温度の排気ガスを吸気通路に導入することができるという利点がある。すなわち、内燃機関の運転が停止されると、排気再循環管内を排気ガスが流れないことから、排気再循環管の温度が低下する。ここで、排気再循環管の温度が低すぎると上記想定温度よりも低い温度の排気ガスが排気再循環装置によって吸気通路に導入される可能性がある。しかしながら、上記構成が採用された場合、内燃機関が始動されることが予測されたときに排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断され、排気再循環管が加熱される。したがって、内燃機関が始動されたときには少なくとも排気再循環管の温度が上昇せしめられている。こうした理由から、上記構成が採用された場合、内燃機関の始動直後に排気再循環装置による吸気通路への排気ガスの導入が開始されたとしても比較的高い温度の排気ガスを吸気通路に導入することができるという利点が得られるのである。
【0032】
また、本願のさらに別の発明は、上記発明の排気再循環装置を備えた内燃機関と、電動機と、を具備し、前記内燃機関から出力される動力と前記電動機から出力される動力との少なくとも一方を動力として出力するハイブリッドシステムに関する。そして、本発明のハイブリッドシステムでは、前記内燃機関から動力を出力する必要がないときには前記内燃機関の運転が停止せしめられ、前記内燃機関の運転の停止中に該内燃機関から動力を出力する必要が生じたときに該内燃機関が始動される。
【0033】
ハイブリッドシステムでは、内燃機関の運転が比較的頻繁に停止されることから、吸気通路への排気ガスの導入も比較的頻繁に停止される。このため、排気再循環管の温度が最低限必要な温度よりも低い温度になる可能性が高い。本発明では、内燃機関の運転が停止されたときに、排気再循環管を加熱する必要が生じれば(つまり、排気再循環管の温度が最低限必要な温度よりも低くなれば)、排気再循環管が加熱されることから、本発明には、内燃機関の運転が始動されたときに排気再循環管の温度が最低限必要な温度以上の温度に維持されるという利点がある。
【0034】
なお、上記発明において、加熱手段による排気再循環管の加熱が開始されるタイミングは、冷却水循環通路内における冷却水の循環の停止中のタイミングであればよく、特定のタイミングに制限されないが、一例を挙げると、たとえば、前記冷却水循環通路内における冷却水の循環の停止と同時に前記加熱手段による前記排気再循環管の加熱が開始されるようにしてもよい。
【0035】
この構成が採用された場合、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに排気再循環管の温度が大きく低下する場合において、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度を比較的高い温度に確実に維持することができるという利点がある。すなわち、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに排気再循環管の温度が大きく低下する場合、EGRガスの導入の停止から可能な限り早期に排気再循環管の加熱を開始しなければ、排気再循環管の温度が上記好ましくない状況を発生させる温度以下の温度になってしまう可能性がある。ここで、上記構成が採用された場合、冷却水の循環の停止と同時に排気再循環管の加熱が開始されることから、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに排気再循環管が加熱される。このため、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度を比較的高い温度に確実に維持することができるのである。
【0036】
あるいは、上記発明において、前記冷却水循環通路内における冷却水の循環の停止から予め定められた時間が経過した時点で前記加熱手段による前記排気再循環管の加熱が開始されるようにしてもよい。
【0037】
この構成が採用された場合、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに排気再循環管の温度が大きく低下しない場合において、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度を比較的高い温度にエネルギ効率良く維持することができるという利点がある。すなわち、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに排気再循環管の温度が大きく低下しない場合、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに、すなわち、冷却水の循環の停止と同時に排気再循環管の加熱を開始しなくても排気再循環管の温度が上記好ましくない状況を発生させる温度以下の温度になる可能性が低い。したがって、こうした場合に冷却水の循環の停止と同時に排気再循環管を加熱することはエネルギ効率の観点から不利である。上記構成が採用された場合、冷却水の循環の停止から予め定められた時間が経過した時点で排気再循環管の加熱が開始されることから、EGRガスの導入の停止中に排気再循環管の温度を比較的高い温度にエネルギ効率良く維持することができるのである。
【0038】
なお、内燃機関が排気再循環装置を備えており、その内燃機関に上記発明が適用されたときに上記利点を得ることができるので、上記発明の内燃機関は、排気再循環装置を備えた内燃機関であれば如何なる内燃機関でもよい。したがって、上記発明の内燃機関は、たとえば、圧縮自着火式内燃機関(いわゆるディーゼルエンジン)であってもよいし、火花点火式内燃機関(いわゆるガソリンエンジン)であってもよい。
【0039】
また、上記発明の加熱手段は、排気再循環管を加熱することができる手段であれば如何なる手段でもよい。したがって、上記発明の加熱手段は、たとえば、電力を用いて排気再循環管を加熱する手段であってもよいし、火力を用いて排気再循環管を加熱する手段であってもよいし、これら電力や火力以外のエネルギを用いて排気再循環管を加熱する手段であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態の排気再循環装置が適用された内燃機関を示した図である。
【図2】(A)は排気再循環装置による吸気通路への排気ガスの導入を実行する機関運転領域と排気再循環装置による吸気通路への排気ガスの導入を停止する機関運転領域とを示した図であり、(B)は目標EGR率を取得するために用いられるマップを示した図である。
【図3】第1実施形態の排気再循環装置の制御を説明するための図である。
【図4】第1実施形態の排気再循環制御弁(EGR制御弁)の制御を実行するルーチンの一例を示した図である。
【図5】第1実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例を示した図である。
【図6】第2実施形態の排気再循環装置の制御を説明するための図である。
【図7】第2実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例の一部を示した図である。
【図8】第2実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例の一部を示した図である。
【図9】第3実施形態の排気再循環装置の制御を説明するための図である。
【図10】第3実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例の一部を示した図である。
【図11】第3実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例の一部を示した図である。
【図12】第4実施形態の排気再循環装置の制御を説明するための図である。
【図13】第4実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例の一部を示した図である。
【図14】第4実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例の一部を示した図である。
【図15】第5実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例を示した図である。
【図16】第6実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例を示した図である。
【図17】第7実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例の一部を示した図である。
【図18】第7実施形態のEGRクーラ・EGRヒータの制御を実行するルーチンの一例の一部を示した図である。
【図19】第8実施形態の排気再循環装置が適用された内燃機関を具備する動力装置を備えたハイブリッド車両を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の内燃機関の排気再循環装置の実施形態(以下「第1実施形態」という)について説明する。なお、以下の説明において「機関運転」とは「内燃機関の運転」を意味し、「機関運転状態」とは「内燃機関の運転状態」を意味し、「機関回転数」とは「内燃機関の回転数」を意味し、「機関負荷」とは「内燃機関の負荷」を意味する。
【0042】
第1実施形態の排気再循環装置が適用された内燃機関が図1に示されている。図1に示されている内燃機関は、圧縮自着火式内燃機関(いわゆるディーゼルエンジン)である。図1において、10は内燃機関、20は内燃機関10の本体、21は燃料噴射弁、22は燃料ポンプ、23は燃料供給通路、30は吸気通路、31は吸気マニホルド、32は吸気管、33はスロットル弁、36はエアクリーナ、40は排気通路、41は排気マニホルド、42は排気管、50は排気再循環装置(以下この装置を「EGR装置」という)、80は電子制御装置をそれぞれ示している。吸気通路30は、吸気マニホルド31と吸気管32とから構成されている。排気通路40は、排気マニホルド41と排気管42とから構成されている。
【0043】
電子制御装置80は、マイクロコンピュータからなる。また、電子制御装置80は、CPU(すなわち、マイクロプロセッサ)81、ROM(すなわち、リードオンリメモリ)82、RAM(すなわち、ランダムアクセスメモリ)83、バックアップRAM84、および、インターフェース85を有する。これらCPU81、ROM82、RAM83、バックアップRAM84、および、インターフェース85は、双方向バスによって互いに電気的に接続されている。
【0044】
燃料噴射弁21は、内燃機関の本体20に取り付けられている。燃料噴射弁21には、燃料供給通路23を介して燃料ポンプ22が接続されている。燃料ポンプ22は、燃料噴射弁21に燃料供給通路23を介して高圧の燃料を供給する。また、燃料噴射弁21は、電子制御装置80のインターフェース85に電気的に接続されている。電子制御装置80は、燃料噴射弁21に燃料を噴射させるための指令信号を燃料噴射弁21に供給する。電子制御装置80から燃料噴射弁21に指令信号が供給されると、燃料噴射弁21は燃焼室内に燃料を直接噴射する。
【0045】
吸気マニホルド31は、その一端で複数の管に分岐している。これら分岐した管は、それぞれ内燃機関の本体20の燃焼室にそれぞれ対応して形成されている吸気ポート(図示せず)に接続されている。また、吸気マニホルド31は、その他端で吸気管32の一端に接続されている。
【0046】
排気マニホルド41は、その一端で複数の管に分岐している。これら分岐した管は、それぞれ内燃機関の本体20の燃焼室にそれぞれ対応して形成されている排気ポート(図示せず)に接続されている。また、排気マニホルド41は、その他端で排気管42の一端に接続されている。
【0047】
スロットル弁33は、吸気管32に配置されている。また、スロットル弁33の開度(以下この開度を「スロットル弁開度」という)が変更されると、スロットル弁33の配置された領域における吸気管32内の流路面積が変わる。これによってスロットル弁33を通過する空気の量が変わり、ひいては、燃焼室に吸入される空気の量が変わる。スロットル弁33には、その動作状態(すなわち、スロットル弁開度)を変更するためのアクチュエータ(以下このアクチュエータを「スロットル弁アクチュエータ」という)33Aが接続されている。スロットル弁アクチュエータ33Aは、電子制御装置80のインターフェース85に電気的に接続されている。電子制御装置80は、スロットル弁33を動作させるためにスロットル弁アクチュエータ33Aを駆動するための制御信号をスロットル弁アクチュエータ33Aに供給する。
【0048】
EGR装置50は、排気再循環管(以下この管を「EGR管」という)51と、排気再循環制御弁(以下この制御弁を「EGR制御弁」という)52と、排気再循環クーラ(以下このクーラを「EGRクーラ」という)53と、排気再循環ヒータ(以下このヒータを「EGRヒータ」という)54と、を具備する。EGR装置50は、燃焼室から排気通路40に排出された排気ガスをEGR管51を介して吸気通路30に導入することができる。EGR管51は、その一端で排気通路40(より具体的には、排気マニホルド41)に接続されているとともに、その他端で吸気通路30(より具体的には、吸気マニホルド31)に接続されている。すなわち、EGR管51は、排気通路40を吸気通路および39に連結している。
【0049】
EGR制御弁52は、EGR管51に配置されている。EGR制御弁52の開度(以下この開度を「EGR制御弁開度」という)が変更されると、EGR制御弁52を通過する排気ガスの量が変わり、ひいては、吸気通路30に導入される排気ガスの量が変わる。EGR制御弁52は、その動作状態(すなわち、EGR制御弁開度)を変更するためのアクチュエータ(以下このアクチュエータを「EGR制御弁アクチュエータ」という)を内蔵している。EGR制御弁アクチュエータは、電子制御装置80のインターフェース85に電気的に接続されている。電子制御装置80は、EGR制御弁52を動作させるためにEGR制御弁アクチュエータを駆動するための制御信号をEGR制御弁アクチュエータに供給する。
【0050】
EGRクーラ53は、冷却部55と、冷却水循環管56と、冷却水循環ポンプ57と、を有する。冷却水循環管56は、その一端で冷却部55内部の冷却水通路の冷却水流入口に接続されているとともに、その他端で冷却部55内部の冷却水通路の冷却水流出口に接続されている。これら冷却水循環管56と冷却部55内部の冷却水通路によって冷却水循環通路が形成されている。冷却水循環ポンプ57は、冷却水循環管56に配置されている。また、冷却水循環ポンプ57は、電子制御装置80のインターフェース85に電気的に接続されている。電子制御装置80は、冷却水循環ポンプ57を作動させるための制御信号(以下この信号を「ポンプ作動信号」という)を冷却水循環ポンプ57に供給する。電子制御装置80から冷却水循環ポンプ57にポンプ作動信号が供給されると、冷却水循環ポンプ57は、冷却水を冷却水循環通路内を循環させる。一方、電子制御装置80から冷却水循環ポンプ57へのポンプ作動信号の供給が停止されると、冷却水循環ポンプ57による冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止される。
【0051】
冷却水循環ポンプ57によって冷却水循環通路56内を冷却水が循環せしめられているときには、冷却水循環ポンプ57から放出された冷却水は、冷却水循環管56を介して冷却部55内部の冷却水通路の冷却水流入口から同冷却水通路に流入する。冷却水通路に流入した冷却水は、冷却水通路内を流れ、同冷却水通路の冷却水流出口から冷却水循環管56に流出する。そして、冷却水循環管56に流出した冷却水は、冷却水循環管56を介して冷却水循環ポンプ57に到達する。冷却水循環通路内の冷却水の温度は、当該冷却水が冷却水循環通路内を循環せしめられることによって低下する。そして、冷却部55内部の冷却水通路を流れる冷却水の温度がEGR管51の温度よりも低いとき、同冷却水は、EGR管51を冷却し、ひいては、EGR管51内を流れる排気ガスを冷却する。
【0052】
EGRヒータ54は、EGRクーラ53の冷却部55に配置されている。また、EGRヒータ54は、電力によって発熱せしめられ、その熱によって冷却部55内部の冷却水通路内の冷却水を加熱することができる。EGRヒータ54は、電子制御装置80のインターフェース85に電気的に接続されている。電子制御装置80は、EGRヒータ54を作動させるための制御信号(以下この信号を「ヒータ作動信号」という)をEGRヒータ54に供給する。電子制御装置80からEGRヒータ54にヒータ作動信号が供給されると、EGRヒータ54は、発熱する。一方、電子制御装置80からEGRヒータ54へのヒータ作動信号の供給が停止されると、EGRヒータ54の発熱が停止される。
【0053】
次に、第1実施形態のEGR制御弁の制御について説明する。第1実施形態では、機関回転数と機関負荷とによって定まる機関運転状態に応じて、EGR装置による吸気通路への排気ガスの導入(以下この導入を「EGRガスの導入」という)が実行されるか否かが決定される。より具体的には、機関回転数NEと機関負荷Lとによって定まる機関運転状態が図2(A)の領域Xにあるときには、EGRガスの導入が実行される。一方、機関回転数NEと機関負荷Lとによって定まる機関運転状態が図2(A)の領域Yにあるときには、EGRガスの導入は実行されない。なお、図2(A)から判るように、領域Xは、機関回転数NEが比較的小さく且つ機関負荷Lが比較的小さい領域であり、領域Yは、それ以外の領域である。
【0054】
そして、EGRガスの導入が実行される場合、機関運転状態に応じて適切なEGR率(すなわち、燃焼室に吸入されるガスの総量に対するEGRガスの量の比)が異なる。そこで、第1実施形態では、機関運転状態に応じた適切なEGR率が実験等によって予め求められ、これら求められたEGR率が図2(B)に示されているように機関回転数NEと機関負荷Lとの関数のマップの形で目標EGR率TRegrとして電子制御装置に記憶されている。そして、機関運転中、EGRガスの導入が実行されるときには、そのときの機関回転数NEと機関負荷Lとに対応する目標EGR率TRegrが図2(B)のマップから取得される。そして、斯くして取得された目標EGR率が達成されるようにEGR制御弁を制御するための制御信号が電子制御装置からEGR制御弁アクチュエータに供給される。そして、斯くして供給された制御信号に応じてEGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁を駆動する。
【0055】
次に、第1実施形態のEGRクーラの制御について説明する。第1実施形態では、EGRガスの導入が開始されると同時にEGRクーラ(より具体的には、冷却水循環ポンプ)の作動が開始される。そして、EGRガスの導入が停止されると同時にEGRクーラの作動も停止される。したがって、EGRガスの導入が行われている間、EGRクーラが作動され、冷却水が冷却水循環通路内を循環せしめられ、冷却水によってEGR管が冷却されて当該EGR管の温度が低下せしめられ、ひいては、EGR管内を流れる排気ガスが冷却されて当該排気ガスの温度が低下せしめられる。一方、EGRガスの導入が停止されている間は、EGRクーラの作動は停止され、冷却水循環ポンプによる冷却水循環通路内における冷却水の循環(以下この循環を単に「冷却水の循環」ともいう)は行われない。
【0056】
次に、第1実施形態のEGRヒータの制御について説明する。第1実施形態では、EGRクーラの作動が停止されると同時(すなわち、EGRガスの導入が停止されると同時)にEGRヒータの作動が開始される。そして、EGRヒータの作動が開始されてから予め定められた時間(以下この時間を「所定ヒータ作動時間」という)が経過した時点でEGRヒータの作動が停止される。したがって、EGRクーラの作動が停止されてから所定ヒータ作動時間が経過するまでの間、EGRヒータが作動され、EGRヒータによって冷却水が加熱されて冷却水の温度が上昇せしめられ、ひいては、EGR管が加熱されてEGR管の温度が上昇せしめられる。一方、所定ヒータ作動時間が経過した時点から次にEGRクーラの作動が停止されるまでの間は、EGRヒータの作動は停止され、EGRヒータによる冷却水の加熱(以下この加熱を単に「冷却水の加熱」ともいう)は行われない。なお、所定ヒータ作動時間中にEGRクーラの作動が開始されたときには、当該EGRクーラの作動開始時点でEGRヒータの作動が停止される。
【0057】
以上説明した制御に従ってEGR装置(すなわち、EGR制御弁、EGRクーラ、および、EGRヒータ)が制御される場合におけるEGR装置によるEGRガスの導入の有無、EGRクーラによる冷却水の循環の有無、および、EGRヒータによる冷却水の加熱の有無の様子の一例が図3に示されている。
【0058】
図3の例では、時刻T0以前は、機関運転状態が領域Xにある。したがって、時刻T0以前では、EGRガスの導入が行われ、冷却水の循環が行われているが、冷却水の加熱は行われていない。そして、時刻T0において、機関運転状態が領域Xから領域Yに移行すると同時にEGRガスの導入が停止され、それと同時に冷却水の循環が停止され、それと同時に冷却水の加熱が開始される。そして、時刻T0から所定ヒータ作動時間が経過した時刻T1において、冷却水の加熱が停止される。そして、時刻T1よりも後の時刻T2において、機関運転状態が領域Yから領域Xに移行すると同時に、EGRガスの導入が開始され、それと同時に冷却水の循環が開始されるが、冷却水の加熱は停止された状態に維持される。
【0059】
第1実施形態には、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点がある。すなわち、EGRガスの導入の停止中はEGR管内を排気ガスが流れないことから、EGR管の温度が低下する。ここで、EGRガスの導入の停止中にEGR管の温度が或る温度よりも低くなってしまうと、たとえば、EGR管の内壁面に凝縮水が生成され、この凝縮水によってEGR管が腐食されてしまうという好ましくない状況が生じる可能性がある。したがって、凝縮水によるEGR管の腐食を抑制するためには、EGRガスの導入の停止中、EGR管の温度を凝縮水の生成温度よりも高い温度に維持しておくことが好ましい。また、内燃機関の各種の制御システム(たとえば、EGR制御弁を制御するシステム、スロットル弁を制御するシステム、燃料噴射弁を制御するシステムなど)がEGR装置によって吸気通路に導入される排気ガスの温度が或る温度よりも高い温度であることを前提に構築されている場合に、EGRガスの導入の停止中にEGR管の温度が上記或る温度(以下この温度を「想定温度」という)以下の温度になってしまうと、EGRガスの導入が再開されたときに、想定温度以下の温度の排気ガスが吸気通路に導入される可能性がある。このことは、排気再循環の各種の制御システムに所期の制御特性を発揮させる観点(たとえば、燃焼室から排出される排気ガス中のエミッションを所定レベルよりも低いレベルに抑制するといった制御特性など)からは好ましくない。したがって、想定温度以下の温度の排気ガスが吸気通路に導入されることを抑制するためには、EGRガスの導入の停止中、EGR管の温度を想定温度よりも高い温度に維持しておくことが好ましい。
【0060】
そして、EGRガスの導入の停止中、EGR管の温度を凝縮水の生成温度よりも高い温度に維持し、あるいは、EGR管の温度を想定温度よりも高い温度に維持するためには、EGRガスの導入の停止中の冷却部内部の冷却水通路内の冷却水(以下この冷却水を「冷却部冷却水」という)の温度を凝縮水の生成温度よりも高い温度、あるいは、想定温度よりも高い温度に維持しておくことが有効である。つまり、上記状況を含めた好ましくない状況の発生を抑制するためには、EGRガスの導入の停止中の冷却部冷却水の温度を比較的高く維持しておくことが有効である。
【0061】
そして、EGRガスの導入の停止中のEGR管の温度の低下率が比較的大きいことを考慮すれば、EGRガスの導入の停止中に冷却部冷却水の温度を比較的高い温度に維持するためには、EGRガスの導入の停止中に冷却部冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることが要請される。ここで、第1実施形態では、EGRガスの導入の停止中の冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止された状態で冷却部冷却水がEGRヒータによって加熱される。したがって、冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止されていない状態で冷却部冷却水がEGRヒータによって加熱される場合に比べて、冷却部冷却水の温度上昇率が高い。したがって、EGRガスの導入の停止中に冷却部冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点が得られるのである。
【0062】
また、第1実施形態には、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに冷却水の温度が大きく低下する場合において、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を比較的高い温度に確実に維持することができるという利点がある。すなわち、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに冷却水の温度が大きく低下する場合、EGRガスの導入の停止から可能な限り早期に冷却水の加熱を開始しなければ、冷却水の温度が上記好ましくない状況を発生させる温度以下の温度になってしまう可能性がある。ここで、第1実施形態では、冷却水の循環の停止と同時、すなわち、EGRガスの導入の停止と同時に冷却水の加熱が開始されることから、EGRガスの導入の停止から極めて短時間のうちに冷却水が加熱される。このため、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を比較的高い温度に確実に維持することができるのである。
【0063】
なお、第1実施形態では、EGRヒータは、EGRクーラの冷却部内部の冷却水通路内の冷却水を加熱することができるようにEGRクーラの冷却部に配置されている。しかしながら、上記利点を得るために必須の構成は、冷却水循環ポンプによる冷却水の循環の停止中に冷却水循環通路内の冷却水がEGRヒータによって加熱されることである。したがって、上記利点を得るという観点では、EGRヒータは、冷却水循環通路内の冷却水を加熱することができるように配置されていればよい。
【0064】
また、第1実施形態の所定ヒータ作動時間は、EGRガスの導入の停止中の冷却部冷却水の温度が種々の観点から適切であると考えられる温度にまで上昇するのに十分な温度に設定されればよく、たとえば、EGRヒータの作動の開始直前のEGRガスの導入の開始から停止までの時間(以下この時間を「EGRガス導入時間」という)に応じて設定されてもよいし、EGRヒータの作動の開始直前のEGRガスの導入の開始から停止までに吸気通路に導入された排気ガスの量(以下この量を「EGRガス導入量」という)に応じて設定されてもよい。EGRヒータの作動時間がEGRガス導入時間に応じて設定される場合、たとえば、所定ヒータ作動時間は、EGRガス導入時間が長いほど長い時間に設定され、EGRヒータの作動時間がEGRガス導入量に応じて設定される場合、たとえば、所定ヒータ作動時間は、EGRガス導入量が多いほど長い時間に設定される。
【0065】
次に、第1実施形態のEGR制御弁の制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図4に示されている。なお、図4のルーチンは、所定時間が経過する毎に実行されるルーチンである。
【0066】
図4のルーチンが開始されると、始めに、ステップ10において、現在の機関回転数NEと現在の機関負荷Lとが取得される。次いで、ステップ11において、ステップ10で取得された機関回転数NEと機関負荷Lとに基づいて現在の機関運転状態が図2(A)の領域Xにあるか否かが判別される。ここで、機関運転状態が領域Xにあると判別されたときには、ルーチンはステップ12に進む。一方、機関運転状態が領域Xにないと判別されたとき(すなわち、現在の機関運転状態が領域Yにあるとき)には、ルーチンはステップ15に進む。
【0067】
ステップ11において機関運転状態が領域Xにあると判別され、ルーチンがステップ12に進むと、EGRガス導入フラグFegrがセットされる(Fegr←1)。このEGRガス導入フラグFegrは、EGRガスの導入が実行されているときにセットされ、EGRガスの導入が停止されているときにリセットされるフラグである。次いで、ステップ13において、ステップ10で取得された機関回転数NEと機関負荷Lとに対応する目標EGR率TRegrが図2(B)のマップから取得される。次いで、ステップ14において、ステップ13で取得された目標EGR率TRegrが達成されるようにEGR制御弁を開弁させるための制御信号SopenがEGR制御弁アクチュエータに供給され、ルーチンが終了する。
【0068】
一方、ステップ11において機関運転状態が領域Xにないと判別され、ルーチンがステップ15に進むと、EGRガス導入フラグFegrがリセットされる(Fegr←0)。次いで、ステップ16において、EGR制御弁を全閉させるための制御信号ScloseがEGR制御弁アクチュエータに供給され、ルーチンが終了する。
【0069】
次に、第1実施形態のEGRクーラおよびEGRヒータの制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図5に示されている。なお、図5のルーチンは、所定時間が経過する毎に実行されるルーチンである。
【0070】
図5のルーチンが開始されると、始めに、ステップ100において、EGRガス導入フラグFegrが取得される。このEGRガス導入フラグFegrは、図4のステップ12でセットされ、あるいは、図4のステップ15でリセットされるフラグである。次いで、ステップ101において、ステップ100で取得されたEGRガス導入フラグFegrがセットされている(Fegr=1)か否かが判別される。ここで、Fegr=1であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が行われているとき)には、ルーチンはステップ102に進む。一方、Fegr=1ではない(すなわち、Fegr=0である)と判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が停止されているとき)には、ルーチンはステップ104に進む。
【0071】
ステップ101においてFegr=1であると判別され、ルーチンがステップ102に進むと、ポンプ作動信号SPが電子制御装置から冷却水循環ポンプに供給されるとともに、電子制御装置からEGRヒータへのヒータ作動信号SHの供給が停止される。したがって、この場合、冷却水の循環が行われるが、冷却水の加熱は行われない。次いで、ステップ103において、加熱完了フラグFhがリセットされ(Fh←0)、ルーチンが終了する。この加熱完了フラグFhは、EGRヒータの作動が停止されたときにセットされ、EGRクーラが作動されているとき(すなわち、EGRガスの導入が行われているとき)にリセットされるフラグである。
【0072】
一方、ステップ101においてFegr=1ではないと判別され、ルーチンがステップ104に進むと、加熱完了フラグFhがセットされている(Fh=1)か否かが判別される。この加熱完了フラグFhは、EGRガスの導入の停止後に冷却水の加熱が完了したときにステップ111でセットされ、EGRガスの導入が再開されたときにステップ103でリセットされるフラグである。ここで、Fh=1であると判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了しているとき)には、ルーチンはそのまま終了する。一方、Fh=1ではない(すなわち、Fh=0である)と判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了していないとき)には、ルーチンはステップ105に進む。
【0073】
ステップ104においてFh=1ではないと判別され、ルーチンがステップ105に進むと、電子制御装置から冷却水循環ポンプへのポンプ作動信号SPの供給が停止されるとともに、ヒータ作動信号SHが電子制御装置からEGRヒータに供給される。したがって、この場合、冷却水の循環は行われないが、冷却水の加熱が行われる。次いで、ステップ106において、EGRガス導入フラグFegrが再び取得される。次いで、ステップ107において、ステップ106で取得されたEGRガス導入フラグFegrがリセットされている(Fegr=0)か否かが判別される。ここで、Fegr=0であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が未だ停止されているとき)には、ルーチンはステップ108に進む。一方、Fegr=0ではない(すなわち、Fegr=1である)と判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が再開されているとき)には、ルーチンはステップ112に進む。
【0074】
ステップ107において、Fegr=0ではないと判別され、ルーチンがステップ112に進むと、ヒータ作動時間カウンタChがクリアされる。このヒータ作動時間カウンタChは、ステップ105おいて冷却水の加熱が開始されてから経過した時間を示すカウンタである。次いで、ステップ102およびステップ103において、上述した処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0075】
一方、ステップ107において、Fegr=0であると判別され、ルーチンがステップ108に進むと、ヒータ作動時間カウンタChがカウントアップされる。このヒータ作動時間カウンタChは、ステップ105でEGRヒータの作動が開始されてから経過した時間を示すカウンタである。次いで、ステップ109において、ステップ108でカウントアップされたヒータ作動時間カウンタChが所定ヒータ作動時間に相当する値Chth以上である(Ch≧Chth)か否かが判別される。ここで、Ch≧Chthであると判別されたとき(すなわち、EGRヒータの作動が開始されてから所定ヒータ作動時間が経過したとき)には、ルーチンはステップ110に進む。一方、Ch≧Chthではないと判別されたときには、ルーチンはステップ106に戻り、ステップ109でCh≧Chthであると判別されるまで、ステップ106〜ステップ109が繰り返し実行される。
【0076】
ステップ109においてCh≧Chthであると判別され、ルーチンがステップ110に進むと、電子制御装置からEGRヒータへのヒータ作動信号SHの供給が停止される。次いで、ステップ111において、加熱完了フラグFhがセットされる(Fh←1)とともに、ヒータ作動時間カウンタChがクリアされ、ルーチンが終了する。
【0077】
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであるか、あるいは、第2実施形態の構成に鑑みたときに第1実施形態の構成から当然に導き出される構成である。
【0078】
第2実施形態のEGR制御弁の制御は、第1実施形態のEGR制御弁の制御と同じであるので、この制御の説明は省略し、第2実施形態のEGRクーラの制御について説明する。
【0079】
第2実施形態では、EGRガスの導入が開始されると同時にEGRクーラ(より具体的には、冷却水循環ポンプ)の作動が開始される。そして、EGRガスの導入が停止されると、当該EGRガスの導入が停止されてから予め定められた時間(以下この時間を「所定クーラ停止待機時間」という)が経過した時点でEGRクーラの作動が停止される。したがって、EGRガスの導入が行われている間、EGRクーラが作動され、冷却水が冷却水循環通路内を循環せしめられ、冷却水によってEGR管が冷却されて当該EGR管の温度が低下せしめられ、ひいては、EGR管内を流れる排気ガスが冷却されて当該排気ガスの温度が低下せしめられる。また、EGRガスの導入が停止されてから所定クーラ停止待機時間が経過するまでの間も、EGRクーラが作動され、冷却水が冷却水循環通路内を循環せしめられ、冷却水によってEGR管が冷却されて当該EGR管の温度が低下せしめられる。一方、所定クーラ停止待機時間が経過した時点から次にEGRガスの導入が開始されるまでの間は、EGRクーラの作動は停止され、冷却水循環通路内における冷却水の循環は行われない。なお、所定クーラ停止待機時間中にEGRガスの導入が開始されたときには、当該EGRガスの導入の開始時点でEGRクーラの作動が開始される。
【0080】
次に、第2実施形態のEGRヒータの制御について説明する。第2実施形態では、EGRクーラの作動が停止されると同時にEGRヒータの作動が開始される。そして、EGRヒータの作動が開始されてから予め定められた時間(以下この時間を「所定ヒータ作動時間」という)が経過した時点でEGRヒータの作動が停止される。したがって、EGRクーラの作動が停止されてから所定ヒータ作動時間が経過するまでの間、EGRヒータが作動され、EGRヒータによって冷却水が加熱されて冷却水の温度が上昇せしめられ、ひいては、EGR管が加熱されてEGR管の温度が上昇せしめられる。一方、所定ヒータ作動時間が経過した時点から次にEGRクーラの作動が停止されるまでの間は、EGRヒータの作動は停止され、冷却水の加熱は行われない。なお、所定ヒータ作動時間中にEGRクーラの作動が開始されたときには、当該EGRクーラの作動開始時点でEGRヒータの作動が停止される。
【0081】
以上説明した制御に従ってEGR装置(すなわち、EGR制御弁、EGRクーラ、および、EGRヒータ)が制御される場合におけるEGR装置によるEGRガスの導入の有無、EGRクーラによる冷却水の循環の有無、および、EGRヒータによる冷却水の加熱の有無の様子の一例が図6に示されている。
【0082】
図6の例では、時刻T0以前は、機関運転状態が領域Xにある。したがって、時刻T0以前では、EGRガスの導入が行われ、冷却水の循環が行われているが、冷却水の加熱は行われていない。そして、時刻T0において、機関運転状態が領域Xから領域Yに移行すると同時にEGRガスの導入が停止され、当該EGRガスの導入の停止から所定クーラ停止待機時間が経過した時刻T1において、冷却水の循環が停止され、それと同時に冷却水の加熱が開始される。そして、時刻T1から所定ヒータ作動時間が経過した時刻T2において、冷却水の加熱が停止される。そして、時刻T2よりも後の時刻T3において、機関運転状態が領域Yから領域Xに移行すると同時に、EGRガスの導入が開始され、それと同時に冷却水の循環が開始されるが、冷却水の加熱は停止された状態に維持される。
【0083】
第2実施形態には、第1実施形態に関連して説明した理由と同様の理由から、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点がある。
【0084】
また、第2実施形態には、第1実施形態と同様に、EGRガスの導入から比較的短時間のうちに冷却水の温度が大きく低下する場合において、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を比較的高い温度に確実に維持することができるという利点がある。すなわち、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに冷却水の温度が大きく低下する場合、EGRガスの導入の停止から可能な限り早期に冷却水の加熱を開始しなければ、冷却水の温度が上記好ましくない状況を発生させる温度以下の温度になってしまう可能性がある。ここで、第2実施形態では、冷却水の循環の停止と同時、すなわち、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに冷却水の加熱が開始されることから、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに冷却水が加熱される。このため、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を比較的高い温度に確実に維持することができるのである。
【0085】
次に、第2実施形態のEGRクーラおよびEGRヒータの制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図7および図8に示されている。なお、図7および図8のルーチンは、所定時間が経過する毎に実行されるルーチンである。
【0086】
図7および図8のルーチンが開始されると、始めに、図7のステップ200において、EGRガス導入フラグFegrが取得される。このEGRガス導入フラグFegrは、図4のステップ12でセットされ、あるいは、図4のステップ15でリセットされるフラグである。次いで、ステップ201において、ステップ200で取得されたEGRガス導入フラグFegrがセットされている(Fegr=1)か否かが判別される。ここで、Fegr=1であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が行われているとき)には、ルーチンはステップ202に進む。一方、Fegr=1ではない(すなわち、Fegr=0である)と判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が停止されているとき)には、ルーチンはステップ204に進む。
【0087】
ステップ201においてFegr=1であると判別され、ルーチンがステップ202に進むと、図5のステップ102と同じ処理が実行され、次いで、ステップ203において、図5のステップ103と同じ処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0088】
一方、ステップ201においてFegr=1ではないと判別され、ルーチンがステップ204に進むと、加熱完了フラグFhがセットされている(Fh=1)か否かが判別される。この加熱完了フラグFhは、EGRガスの導入の停止後に冷却水の加熱が完了したときにステップ211でセットされ、EGRガスの導入が再開されたときにステップ203でリセットされるフラグである。ここで、Fh=1であると判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了しているとき)には、ルーチンはそのまま終了する。一方、Fh=1ではない(すなわち、Fh=0である)と判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了していないとき)には、ルーチンはステップ204Aに進む。
【0089】
ステップ204においてFh=1ではないと判別され、ルーチンがステップ204Aに進むと、EGRガス導入フラグFegrが再び取得される。次いで、ステップ204Bにおいて、ステップ204Aで取得されたEGRガス導入フラグFegrがリセットされている(Fegr=0)か否かが判別される。ここで、Fegr=0であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が未だ停止されているとき)には、ルーチンはステップ204Cに進む。一方、Fegr=0ではない(すなわち、Fegr=1)であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が再開されているとき)には、ルーチンがステップ212に進む。
【0090】
ステップ204Bにおいて、Fegr=0ではないと判別され、ルーチンがステップ212に進むと、図5のステップ112と同じ処理が実行され、次いで、ステップ202およびステップ203において、図5のステップ102およびステップ103と同じ処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0091】
一方、ステップ204Bにおいて、Fegr=0であると判別され、ルーチンがステップ204Cに進むと、EGRガス導入停止時間カウンタCegrがカウントアップされる。このEGRガス導入停止時間カウンタCegrは、ステップ204においてFegr=1ではないと初めて判別されてから経過した時間、すなわち、EGRガスの導入が停止されてから経過した時間を示すカウンタである。次いで、ステップ204Dにおいて、ステップ204CでカウントアップされたEGRガス導入停止時間カウンタCegrが所定クーラ停止待機時間に相当する値Cegrth以上である(Cegr≧Cegrth)か否かが判別される。ここで、Cegr≧Cegrthであると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が停止されてから所定クーラ停止待機時間が経過したとき)には、ルーチンは図8のステップ205に進む。一方、Cegr≧Cegrthではないと判別されたときには、ルーチンはステップ204Aに戻り、ステップ204DでCegr≧Cegrthであると判別されるまで、ステップ204A〜ステップ204Dが繰り返し実行される。
【0092】
ステップ204DにおいてCegr≧Cegrthであると判別され、ルーチンがステップ205に進むと、図5のステップ105と同じ処理が実行され、次いで、ステップ206〜ステップ211において、図5のステップ106〜ステップ111と同じ処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0093】
次に、第3実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第3実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであるか、あるいは、第3実施形態の構成に鑑みたときに第1実施形態の構成から当然に導き出される構成である。
【0094】
第3実施形態のEGR制御弁の制御は、第1実施形態のEGR制御弁の制御と同じであり、第3実施形態のEGRクーラの制御は、第1実施形態のEGRクーラの制御と同じであるので、これら制御の説明は省略し、第3実施形態のEGRヒータの制御について説明する。
【0095】
第3実施形態では、EGRクーラの作動が停止されてから予め定められた時間(以下この時間を「所定ヒータ作動待機時間」という)が経過した時点でEGRヒータの作動が開始される。そして、(以下このヒータの作動が開始されてから予め定められた時間(以下この時間を「所定ヒータ作動時間」という)が経過した時点でEGRヒータの作動が停止される。したがって、EGRクーラの作動が停止され、所定ヒータ作動待機時間が経過した時点から所定ヒータ作動時間が経過するまでの間、EGRヒータが作動され、EGRヒータによって冷却水が加熱されて冷却水の温度が上昇せしめられ、ひいては、EGR管が加熱されてEGR管の温度が上昇せしめられる。一方、所定ヒータ作動時間が経過した時点から次にEGRクーラの作動が停止され、所定ヒータ作動待機時間が経過するまでの間は、EGRヒータの作動は停止され、冷却水の加熱は行われない。なお、所定ヒータ作動時間中にEGRクーラの作動が開始されたときには、当該EGRクーラの作動開始時点でEGRヒータの作動が停止される。
【0096】
以上説明した制御に従ってEGR装置(すなわち、EGR制御弁、EGRクーラ、および、EGRヒータ)が制御される場合におけるEGR装置によるEGRガスの導入の有無、EGRクーラによる冷却水の循環の有無、および、EGRヒータによる冷却水の加熱の有無の様子の一例が図9に示されている。
【0097】
図9の例では、時刻T0以前は、機関運転状態が領域Xにある。したがって、時刻T0以前では、EGRガスの導入が行われ、冷却水の循環が行われているが、冷却水の加熱は行われていない。そして、時刻T0において、機関運転状態が領域Xから領域Yに移行すると同時にEGRガスの導入が停止され、それと同時に冷却水の循環が停止され、当該冷却水の循環の停止から所定ヒータ作動待機時間が経過した時刻T1において、冷却水の加熱が開始される。そして、時刻T1から所定ヒータ作動時間が経過した時刻T2において、冷却水の加熱が停止される。そして、時刻T2よりも後の時刻T3において、機関運転状態が領域Yから領域Xに移行すると同時に、EGRガスの導入が開始され、それと同時に冷却水の循環が開始されるが、冷却水の加熱は停止された状態に維持される。
【0098】
第3実施形態には、第1実施形態と同様の理由から、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点がある。
【0099】
また、第3実施形態には、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに冷却水の温度が大きく低下しない場合において、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を比較的高い温度にエネルギ効率良く維持することができるという利点がある。すなわち、EGRガスの導入の停止から比較的短時間のうちに冷却水の温度が大きく低下しない場合、EGRガスの導入の停止と同時、すなわち、冷却水の循環の停止と同時に冷却水の加熱を開始しなくても冷却水の温度が上記好ましくない状況を発生させる温度以下の温度になる可能性が低い。したがって、こうした場合に冷却水の循環の停止と同時に冷却水を加熱することがエネルギ効率の観点から不利である。第2実施形態では、冷却水の循環の停止から所定ヒータ作動待機時間が経過した時点で冷却水の加熱が開始されることから、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を比較的高い温度にエネルギ効率良く維持することができるのである。
【0100】
次に、第3実施形態のEGRクーラおよびEGRヒータの制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図10および図11に示されている。なお、図10および図11のルーチンは、所定時間が経過する毎に実行されるルーチンである。
【0101】
図10および図11のルーチンが開始されると、始めに、図10のステップ300において、EGRガス導入フラグFegrが取得される。このEGRガス導入フラグFegrは、図4のステップ12でセットされ、あるいは、図4のステップ15でリセットされるフラグである。次いで、ステップ301において、ステップ300で取得されたEGRガス導入フラグFegrがセットされている(Fegr=1)か否かが判別される。ここで、Fegr=1であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が行われているとき)には、ルーチンはステップ302に進む。一方、Fegr=1ではない(すなわち、Fegr=0である)と判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が停止されているとき)には、ルーチンはステップ304に進む。
【0102】
ステップ301においてFegr=1であると判別され、ルーチンがステップ302に進むと、図5のステップ102と同じ処理が実行され、次いで、ステップ303において、図5のステップ103と同じ処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0103】
一方、ステップ301においてFegr=1ではないと判別され、ルーチンがステップ304に進むと、加熱完了フラグFhがセットされている(Fh=1)か否かが判別される。この加熱完了フラグFhは、EGRガスの導入の停止後に冷却水の加熱が完了したときにステップ311でセットされ、EGRガスの導入が再開されたときにステップ303でリセットされるフラグである。ここで、Fh=1であると判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了しているとき)には、ルーチンはそのまま終了する。一方、Fh=1ではない(すなわち、Fh=0である)と判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了していないとき)には、ルーチンはステップ304Aに進む。
【0104】
ステップ304においてFh=1ではないと判別され、ルーチンがステップ304Aに進むと、電子制御装置から冷却水循環ポンプへのポンプ作動信号SPの供給が停止される。次いで、ステップ304Bにおいて、EGRガス導入フラグFegrが再び取得される。次いで、ステップ304Cにおいて、ステップ204Bで取得されたEGRガス導入フラグFegrがリセットされている(Fegr=0)か否かが判別される。ここで、Fegr=0であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が未だ停止されているとき)には、ルーチンはステップ304Dに進む。一方、Fegr=0ではない(すなわち、Fegr=1)であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が再開されているとき)には、ルーチンがステップ312に進む。
【0105】
ステップ304Cにおいて、Fegr=0ではないと判別され、ルーチンがステップ312に進むと、図5のステップ112と同じ処理が実行され、次いで、ステップ302およびステップ303において、図5のステップ102およびステップ103と同じ処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0106】
一方、ステップ304Cにおいて、Fegr=0であると判別され、ルーチンがステップ304Dに進むと、ポンプ停止時間カウンタCpがカウントアップされる。このポンプ停止時間カウンタCpは、ステップ304Aにおいてポンプ作動信号SPの供給が停止されてから経過した時間(別の言い方をすれば、EGRガスの導入が停止されてから経過した時間)を示すカウンタである。次いで、ステップ304Eにおいて、ステップ304Dでカウントアップされたポンプ停止時間カウンタCpが所定ヒータ作動待機時間に相当する値Cpth以上である(Cp≧Cpth)か否かが判別される。ここで、Cp≧Cpthであると判別されたとき(すなわち、ポンプ作動信号SPの供給が停止されてから所定ヒータ作動待機時間が経過したとき)には、ルーチンは図11のステップ305に進む。一方、Cp≧Cpthではないと判別されたときには、ルーチンはステップ304Bに戻り、ステップ304EでCp≧Cpthであると判別されるまで、ステップ304B〜ステップ304Eが繰り返し実行される。
【0107】
ステップ304EにおいてCp≧Cpthであると判別され、ルーチンがステップ305に進むと、ヒータ作動信号SHが電子制御装置からEGRヒータに供給される。次いで、ステップ306〜ステップ311において、図5のステップ106〜ステップ111と同じ処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0108】
次に、第4実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第4実施形態の構成は、第1実施形態の構成を同じであるか、あるいは、第4実施形態の構成に鑑みたときに第1実施形態の構成から当然に導き出される構成である。
【0109】
第4実施形態では、第1実施形態のEGR制御弁の制御と同様にEGR制御弁が制御され、第1実施形態のEGRクーラの制御と同様にEGRクーラが制御され、第3実施形態のEGRヒータの制御と同様にEGRヒータが制御される。
【0110】
こうした制御に従ってEGR装置(すなわち、EGR制御弁、EGRクーラ、および、EGRヒータ)が制御される場合におけるEGR装置によるEGRガスの導入の有無、EGRクーラによる冷却水の循環の有無、および、EGRヒータによる冷却水の加熱の有無の様子の一例が図12に示されている。
【0111】
図12の例では、時刻T0以前は、機関運転状態が領域Xにある。したがって、時刻T0以前では、EGRガスの導入が行われ、冷却水の循環が行われているが、冷却水の加熱は行われていない。そして、時刻T0において、機関運転状態が領域Xから領域Yに移行すると同時にEGRガスの導入が停止され、当該EGRガスの導入の停止から所定クーラ停止待機時間が経過した時刻T1において、冷却水の循環が停止され、当該冷却水の循環の停止から所定ヒータ作動待機時間が経過した時刻T2において、冷却水の加熱が開始される。そして、時刻T2から所定ヒータ作動時間が経過した時刻T3において、冷却水の加熱が停止される。そして、時刻T3よりも後の時刻T4において、機関運転状態が領域Yから領域Xに移行すると同時に、EGRガスの導入が開始され、それと同時に冷却水の循環が開始されるが、冷却水の加熱は停止された状態に維持される。
【0112】
次に、第4実施形態のEGRクーラおよびEGRヒータの制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図13および図14に示されている。なお、図13および図14のルーチンは、所定時間が経過する毎に実行されるルーチンである。
【0113】
図13および図14のルーチンが開始されると、始めに、図13のステップ400において、EGRガス導入フラグFegrが取得される。このEGRガス導入フラグFegrは、図4のステップ12でセットされ、あるいは、図4のステップ15でリセットされるフラグである。次いで、ステップ401において、ステップ400で取得されたEGRガス導入フラグFegrがセットされている(Fegr=1)か否かが判別される。ここで、Fegr=1であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が行われているとき)には、ルーチンはステップ402に進む。一方、Fegr=1ではない(すなわち、Fegr=0である)と判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が停止されているとき)には、ルーチンはステップ404に進む。
【0114】
ステップ401においてFegr=1であると判別され、ルーチンがステップ402に進むと、図5のステップ102と同じ処理が実行され、次いで、ステップ403において、図5のステップ103と同じ処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0115】
一方、ステップ401においてFegr=1ではないと判別され、ルーチンがステップ404に進むと、加熱完了フラグFhがセットされている(Fh=1)か否かが判別される。この加熱完了フラグFhは、EGRガスの導入の停止後に冷却水の加熱が完了したときにステップ411でセットされ、EGRガスの導入が再開されたときにステップ403でリセットされるフラグである。ここで、Fh=1であると判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了しているとき)には、ルーチンはそのまま終了する。一方、Fh=1ではない(すなわち、Fh=0である)と判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了していないとき)には、ルーチンはステップ404Aに進む。
【0116】
ステップ404においてFh=1ではないと判別され、ルーチンがステップ404Aに進むと、EGRガス導入フラグFegrが再び取得され、次いで、ステップ404B〜ステップ404Dにおいて、図7のステップ204B〜ステップ204Dと同じ処理が実行される。
【0117】
ステップ404DにおいてCegr≧Cegrthであると判別され、ルーチンが図14のステップ404Eに進むと、電子制御装置から冷却水循環ポンプへのポンプ作動信号SPの供給が停止される。次いで、ステップ404F〜ステップ04Iにおいて、図10のステップ304B〜ステップ304Eと同じ処理が実行される。
【0118】
ステップ404IにおいてCp≧Cpthであると判別され、ルーチンがステップ405に進むと、ヒータ作動信号SHが電子制御装置からEGRヒータに供給される。次いで、ステップ406〜ステップ411において、図5のステップ106〜ステップ111と同じ処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0119】
次に、第5実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第5実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであるか、あるいは、第5実施形態の構成に鑑みたときに第1実施形態の構成から当然に導き出される構成である。
【0120】
第5実施形態では、冷却水循環通路内の冷却水の温度(以下この温度を単に「冷却水の温度」という)が予め定められた温度(以下この温度を「目標冷却水温度」または単に「目標温度」という)よりも低くなったときに、EGRガスの導入が行われているか否かにかかわらず、冷却水の循環が停止され、それと同時に冷却水の加熱が開始される。そして、冷却水の温度がその目標温度よりも低い間、冷却水の循環の停止が継続されるとともに冷却水の加熱が継続される。そして、冷却水の温度がその目標温度以上になったときに、冷却水の循環が開始され、それと同時に冷却水の加熱が停止される。
【0121】
なお、上記目標冷却水温度は、内燃機関に所望の性能を発揮させるために必要であると考える冷却水の温度に設定される。たとえば、上記目標冷却水温度は、EGR管の内壁面に凝縮水が生成されることを抑制することができる冷却水の温度(特に、その冷却水の温度のうち最も低い温度)に設定されてもよいし、EGR管の内壁面に凝縮水が生成される可能性を排除することができる冷却水の温度(特に、その冷却水の温度のうち最も低い温度)に設定されてもよいし、EGRガスの温度を所望の温度に維持することができる冷却水の温度(特に、その冷却水の温度のうち最も低い温度)に設定されてもよいし、EGRガスの温度を所望の温度に維持することができる可能性のある冷却水の温度(特に、その冷却水の温度のうち最も低い温度)に設定されてもよい。
【0122】
また、第5実施形態では、冷却水の温度がその目標温度以上になったときに、冷却水の循環が開始され、それと同時に冷却水の加熱が停止されるが、本発明はこれに制限されない。たとえば、冷却水の温度がその目標温度以上になってから予め定められた時間が経過した時点で、冷却水の循環が開始され、それと同時に冷却水の加熱が停止されてもよいし、冷却水の温度がその目標温度以上になったときに、冷却水の循環が開始され、同冷却水の循環の開始から予め定められた時間が経過した時点で、冷却水の加熱が停止されてもよいし、冷却水の温度がその目標温度以上になってから予め定められた時間が経過した時点で、冷却水の循環が開始され、同冷却水の循環の開始から予め定められた時間が経過した時点で、冷却水の加熱が停止されてもよい。これによれば、冷却水の温度がその目標温度よりも比較的高い温度になった時点で冷却水の加熱が停止されることから、冷却水の温度がその目標温度以上になってから直ぐに冷却水の温度がその目標温度よりも低くなることはない。このため、冷却水の循環の停止および開始ならびに冷却水の加熱の開始および停止を行う頻度を少なくするという利点が得られる。
【0123】
また、第5実施形態において冷却水の温度を取得する手段は、特に制限されない。たとえば、冷却水の温度を検出する温度センサを冷却水循環通路に配置し、この温度センサによって検出される温度を冷却水の温度として取得してもよいし、内燃機関に係る各種のパラメータを用いて演算によって冷却水の温度の推定値を算出し、この算出される推定値を冷却水の温度として取得してもよいし、EGR管の温度を検出する温度センサをEGR管に配置し、この温度センサによって検出される温度から推定される冷却水の温度を冷却水の温度として取得してもこの温度センサによって検出される温度自体を冷却水の温度として取得してもよい。
【0124】
また、第5実施形態では、冷却水の温度がその目標温度よりも低くなったときに冷却水の循環の停止と冷却水の加熱の開始とが行われるが、本発明はこれに制限されない。たとえば、冷却水の温度がその目標温度よりも低くなることが予測されたときに冷却水の循環の停止と冷却水の加熱の開始とが行われてもよいし、冷却水の温度がその目標温度よりも低くなったものと推定されたときに冷却水の循環の停止と冷却水の加熱の開始とが行われてもよい。
【0125】
第5実施形態には、冷却水を加熱する必要が生じたときに冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点がある。すなわち、冷却水の温度として種々の理由から必要な温度がある場合、すなわち、内燃機関に所望の性能を発揮させるために必要であると考える目標とすべき冷却水の温度がある場合、冷却水の温度がこうした目標とすべき冷却水の温度(つまり、上記目標冷却水温度)よりも低くなることは好ましくない。したがって、冷却水の温度がその目標温度よりも低くなったときには、冷却水を加熱する必要が生じたことになる。そして、冷却水の温度がその目標温度よりも低くなったときには、冷却水の温度をその目標温度以上の温度まで素早く上昇させること、つまり、冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることが好ましい。
【0126】
第5実施形態では、冷却水の温度がその目標温度よりも低くなったときには、冷却水の循環が停止されたうえで、冷却水の加熱が行われる。冷却水の循環が行われているときには冷却水が冷却されるのであるから、冷却水の循環が停止されたうえで冷却水の加熱が行われる場合、冷却水の循環の実行中に冷却水の加熱が行われる場合に比べて、冷却水の温度上昇率が高い。したがって、第5実施形態には、冷却水を加熱する必要が生じたときに冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点があるのである。
【0127】
次に、第5実施形態のEGRクーラおよびEGRヒータの制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図15に示されている。なお、図15のルーチンは、所定時間が経過する毎に実行されるルーチンである。
【0128】
図15のルーチンが開始されると、始めに、ステップ500において、冷却水の温度Tcが取得される。次いで、ステップ501において、ステップ500で取得された冷却水の温度Tcがその目標温度TTc以上である(Tc≧TTc)か否かが判別される。ここで、Tc≧TTcであると判別されたときには、ルーチンはステップ502に進む。一方、Tc≧TTcではないと判別されたときには、ルーチンはステップ506に進む。
【0129】
ステップ501においてTc≧TTcであると判別され、ルーチンがステップ502に進むと、EGRガス導入フラグFegrが取得される。このEGRガス導入フラグFegrは、図4のステップ12でセットされ、あるいは、図4のステップ15でリセットされるフラグである。次いで、ステップ503において、ステップ502で取得されたEGRガス導入フラグFegrがセットされている(Fegr=1)か否かが判別される。ここで、Fegr=1であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が行われているとき)には、ルーチンはステップ504に進む。一方、Fegr=1ではない(すなわち、Fegr=0である)と判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が停止されているとき)には、ルーチンはステップ505に進む。
【0130】
ステップ503においてFegr=1であると判別され、ルーチンがステップ504に進むと、ポンプ作動信号SPが冷却水循環ポンプに供給されるとともに、ヒータ作動信号SHのEGRヒータへの供給が停止され、ルーチンが終了する。
【0131】
一方、ステップ503においてFegr=1ではないと判別され、ルーチンがステップ505に進むと、ポンプ作動信号SPの冷却水循環ポンプへの供給が停止されるとともに、ヒータ作動信号SHのEGRヒータへの供給が停止され、ルーチンが終了する。
【0132】
また、ステップ501においてTc≧TTcではないと判別され、ルーチンがステップ506に進むと、ポンプ作動信号SPの冷却水循環ポンプへの供給が停止されるとともに、ヒータ作動信号SHがEGRヒータに供給され、ルーチンが終了する。
【0133】
次に、第6実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第6実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであるか、あるいは、第6実施形態の構成に鑑みたときに第1実施形態の構成から当然に導き出される構成である。
【0134】
第6実施形態では、EGR管の温度が予め定められた温度(以下この温度を「目標EGR管温度」または単に「目標温度」という)よりも低くなったときに、EGRガスの導入が行われているか否かにかかわらず、冷却水の循環が停止され、それと同時に冷却水の加熱が開始される。そして、EGR管の温度がその目標温度よりも低い間、冷却水の循環の停止が継続されるとともに冷却水の加熱が継続される。そして、EGR管の温度がその目標温度以上になったときに、冷却水の循環が開始され、それと同時に冷却水の加熱が停止される。
【0135】
なお、上記目標EGR管温度は、内燃機関に所望の性能を発揮させるために必要であると考えるEGR管の温度に設定される。たとえば、上記目標EGR管温度は、EGR管の内壁面に凝縮水が生成されることを抑制することができるEGR管の温度(特に、そのEGR管の温度のうち最も低い温度)に設定されてもよいし、EGR管の内壁面に凝縮水が生成される可能性を排除することができるEGR管の温度(特に、そのEGR管の温度のうち最も低い温度)に設定されてもよいし、EGRガスの温度を所望の温度に維持することができるEGR管の温度(特に、そのEGR管の温度のうち最も低い温度)に設定されてもよいし、EGRガスの温度を所望の温度に維持することができる可能性のあるEGR管の温度(特に、そのEGR管温度のうち最も低い温度)に設定されてもよい。
【0136】
また、第6実施形態では、EGR管の温度がその目標温度以上になったときに、冷却水の循環が開始され、それと同時に冷却水の加熱が停止されるが、本発明はこれに制限されない。たとえば、EGR管の温度がその目標温度以上になってから予め定められた時間が経過した時点で、冷却水の循環が開始され、それと同時に冷却水の加熱が停止されてもよいし、EGR管の温度がその目標温度以上になったときに、冷却水の循環が開始され、同冷却水の循環の開始から予め定められた時間が経過した時点で、冷却水の加熱が停止されてもよいし、EGR管の温度がその目標温度以上になってから予め定められた時間が経過した時点で、冷却水の循環が開始され、同冷却水の循環の開始から予め定められた時間が経過した時点で、冷却水の加熱が停止されてもよい。これによれば、EGR管の温度がその目標温度よりも比較的高い温度になった時点で冷却水の加熱が停止されることから、EGR管の温度がその目標温度以上になってから直ぐにEGR管の温度がその目標温度よりも低くなることはない。このため、冷却水の循環の停止および開始ならびに冷却水の加熱の開始および停止を行う頻度を少なくするという利点が得られる。
【0137】
また、第6実施形態においてEGR管の温度を取得する手段は、特に制限されない。たとえば、EGR管の温度を検出する温度センサをEGR管に配置し、この温度センサによって検出される温度をEGR管の温度として取得してもよいし、内燃機関に係る各種のパラメータを用いて演算によってEGR管の温度の推定値を算出し、この算出される推定値をEGR管の温度として取得してもよいし、冷却水の温度を検出する温度センサを冷却水循環通路に配置し、この温度センサによって検出される温度から推定されるEGR管の温度をEGR管の温度として取得してもこの温度センサによって検出される温度自体をEGR管の温度として取得してもよい。
【0138】
また、第6実施形態では、EGR管の温度がその目標温度よりも低くなったときに冷却水の循環の停止と冷却水の加熱の開始とが行われるが、本発明はこれに制限されない。たとえば、EGR管の温度がその目標温度よりも低くなることが予測されたときに冷却水の循環の停止と冷却水の加熱の開始とが行われてもよいし、EGR管の温度がその目標温度よりも低くなったものと推定されたときに冷却水の循環の停止と冷却水の加熱の開始とが行われてもよい。
【0139】
第6実施形態には、第5実施形態に関連して説明した理由と同様の理由から、冷却水を加熱する必要が生じたときに冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点がある。
【0140】
次に、第6実施形態のEGRクーラおよびEGRヒータの制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図16に示されている。なお、図16のルーチンは、所定時間が経過する毎に実行されるルーチンである。
【0141】
図16のルーチンが開始されると、始めに、ステップ600において、EGR管の温度Tegrが取得される。次いで、ステップ601において、ステップ600で取得されたEGR管の温度Tegrがその目標温度TTegr以上である(Tegr≧TTegr)か否かが判別される。ここで、Tegr≧TTegrであると判別されたときには、ルーチンはステップ602に進む。一方、Tegr≧TTegrではないと判別されたときには、ルーチンはステップ606に進む。
【0142】
ステップ601においてTegr≧TTegrであると判別され、ルーチンがステップ602に進むと、EGRガス導入フラグFegrが取得される。このEGRガス導入フラグFegrは、図4のステップ12でセットされ、あるいは、図4のステップ15でリセットされるフラグである。次いで、ステップ603〜ステップ605において、図15のステップ503〜ステップ505と同じ処理が実行され、ルーチンが終了する。
【0143】
また、ステップ601においてTegr≧TTegrではないと判別され、ルーチンがステップ506に進むと、ポンプ作動信号SPの冷却水循環ポンプへの供給が停止されるとともに、ヒータ作動信号SHがEGRヒータに供給され、ルーチンが終了する。
【0144】
次に、第7実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第7実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであるか、あるいは、第7実施形態の構成に鑑みたときに第1実施形態の構成から当然に導き出される構成である。
【0145】
第7実施形態では、機関運転の停止中に機関運転が始動されると予測されたときに、冷却水の循環が停止され、それと同時に冷却水の加熱が開始される。そして、当該冷却水の加熱の開始から予め定められた時間(以下この時間を「所定ヒータ作動時間」という)が経過した時点で冷却水の加熱が停止される。
【0146】
第7実施形態には、第1実施形態に関連して説明した理由と同様の理由から、EGRガスの導入の停止中に冷却水の温度を高い温度上昇率で上昇させることができるという利点がある。
【0147】
また、第7実施形態には、機関運転の始動直後にEGRガスの導入が開始されたとしても比較的高い温度の排気ガスを吸気通路に導入することができるという利点がある。すなわち、機関運転が停止されると、EGR管内を排気ガスが流れないことから、EGR管の温度が低下する。ここで、EGR管の温度が低すぎると上記想定温度よりも低い温度の排気ガスがEGR装置によって吸気通路に導入される可能性がある。しかしながら、第7実施形態では、機関運転が始動されることが予測されたときに冷却水を加熱する必要が請じたと判断され、冷却水が加熱される。したがって、機関運転が始動されたときには少なくとも冷却水の温度が上昇せしめられ、EGR管の温度が上昇せしめられている。こうした理由から、第7実施形態には、機関運転の始動直後にEGRガスの導入が開始されたとしても比較的高い温度の排気ガスを吸気通路に導入することができるという利点があるのである。
【0148】
次に、第7実施形態のEGRクーラおよびEGRヒータの制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図17および図18に示されている。なお、図17および図18のルーチンは、所定時間が経過する毎に実行されるルーチンである。
【0149】
図17および図18のルーチンが開始されると、始めに、図17のステップ700において、機関運転中であるか否かが判別される。ここで、機関運転中であると判別されたときには、ルーチンはステップ701に進む。一方、機関運転中ではない(すなわち、機関運転の停止中である)と判別されたときには、ルーチンは図18のステップ706に進む。
【0150】
ステップ700において機関運転中であると判別され、ルーチンがステップ701に進むと、EGRガス導入フラグFegrが取得される。このEGRガス導入フラグFegrは、図4のステップ12でセットされ、あるいは、図4のステップ15でリセットされるフラグである。次いで、ステップ702において、ステップ701で取得されたEGRガス導入フラグFegrがセットされている(Fegr=1)か否かが判別される。ここで、Fegr=1であると判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が行われているとき)には、ルーチンはステップ703に進む。一方、Fegr=1ではない(すなわち、Fegr=0である)と判別されたとき(すなわち、EGRガスの導入が停止されているとき)には、ルーチンはステップ705に進む。
【0151】
ステップ702においてFegr=1であると判別され、ルーチンがステップ703に進むと、ポンプ作動信号SPが電子制御装置から冷却水循環ポンプに供給されるとともに、電子制御装置からEGRヒータへのヒータ作動信号SHの供給が停止され、ルーチンがステップ704に進む。
【0152】
一方、ステップ702においてFegr=1ではないと判別され、ルーチンがステップ705に進むと、電子制御装置から冷却水循環ポンプへのポンプ作動信号SPの供給が停止されるとともに、電子制御装置からEGRヒータへのヒータ作動信号SHの供給が停止され、ルーチンがステップ704に進む。
【0153】
ステップ704では、加熱完了フラグFhがリセットされ(Fh←0)、ルーチンが終了する。この加熱完了フラグFhは、冷却水の加熱が完了しているときにセットされており、機関運転が始動されたときにリセットされているフラグである。
【0154】
ステップ700において機関運転中ではないと判別され、ルーチンが図18のステップ706に進むと、機関運転が始動されるものと予測されるか否かが判別される。ここで、機関運転が始動されるものと予測されると判別されたときには、ルーチンはステップ707に進む。一方、機関運転が始動されるものと予測されないと判別されたときには、ルーチンは終了する。
【0155】
ステップ706において機関運転が始動されるものと予測されると判別され、ルーチンがステップ707に進むと、加熱完了フラグFhがセットされている(Fh=1)か否かが判別される。ここで、Fh=1であると判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了しているとき)には、ルーチンはそのまま終了する。一方、Fh=1ではない(すなわち、Fh=0である)と判別されたとき(すなわち、冷却水の加熱が完了していないとき)には、ルーチンはステップ708に進む。
【0156】
ステップ707においてFh=1ではないと判別され、ルーチンがステップ708に進むと、電子制御装置から冷却水循環ポンプへのポンプ作動信号SPの供給が停止されるとともに、ヒータ作動信号SHが電子制御装置からEGRヒータに供給される。次いで、ステップ709において、機関運転中であるか否かが再び判別される。ここで、機関運転中であると判別されたときには、ルーチンはステップ714に進み、ヒータ作動時間カウンタChがクリアされ、ルーチンが終了する。このヒータ作動時間カウンタChは、ステップ708でEGRヒータの作動が開始されてから経過した時間を示すカウンタである。一方、ステップ709において機関運転中ではないと判別されたときには、ルーチンはステップ710に進む。
【0157】
ステップ709において機関運転中ではないと判別され、ルーチンがステップL10に進むと、ヒータ作動時間カウンタChがカウントアップされる。次いで、ステップL11において、ステップL10でカウントアップされたヒータ作動時間カウンタChが所定ヒータ作動時間に相当する値Chth以上である(Ch≧Chth)か否かが判別される。ここで、Ch≧Chthであると判別されたとき(すなわち、EGRヒータの作動が開始されてから所定ヒータ作動時間が経過したとき)には、ルーチンはステップL12に進む。一方、Ch≧Chthではないと判別されたときには、ルーチンはステップL09に戻り、ステップL11でCh≧Chthであると判別されるまで、ステップL09〜ステップL11が繰り返し実行される。
【0158】
ステップL11においてCh≧Chthであると判別され、ルーチンがステップL12に進むと、電子制御装置からEGRヒータへのヒータ作動信号SHの供給が停止される。次いで、ステップL13において、加熱完了フラグFhがセットされる(Fh←1)とともに、ヒータ作動時間カウンタChがクリアされ、ルーチンが終了する。
【0159】
なお、上述した実施形態のEGR装置を備えた内燃機関がいわゆるハイブリッド車両のハイブリッドシステムの動力装置として採用されてもよい。次に、第1実施形態のEGR装置を備えた内燃機関がハイブリッド車両のハイブリッドシステムの動力装置として採用された場合の実施形態(以下「第8実施形態」)について説明する。
【0160】
第8実施形態のハイブリッド車両が図19に示されている。図19において、MG1およびMG2は発電電動機(以下これら発電電動機をそれぞれ「第1発電電動機」および「第2発電電動機」という)、10は内燃機関、60は動力分配機構、80は電子制御装置80はインバータ、91はバッテリ、100はアクセルペダル、101はアクセルペダル踏込量センサをそれぞれ示している。内燃機関10は、上述した実施形態の内燃機関のいずれか1つ(すなわち、図1に示されている内燃機関10)であり、電子制御装置80は、上述した実施形態の電子制御装置のいずれか1つ(すなわち、図1に示されている電子制御装置80)である。なお、図19において、13は内燃機関10の燃焼室内に配置されるピストン、15は内燃機関10のクランクシャフトである。
【0161】
動力分配装置60は、遊星歯車装置61を有する。遊星歯車装置61は、サンギア62とプラネタリギア63とリングギア64とを有する。プラネタリギア63は、サンギア62に噛合せしめられているとともに、リングギア64に噛合せしめられている。サンギア62は、第1発電電動機MG1のシャフト(以下このシャフトを「第1シャフト」という)71に接続されている。したがって、第1発電電動機MG1は、サンギア62から当該第1発電電動機MG1に入力されるトルクによって回転駆動可能であるし、サンギア62にトルクを出力可能である。そして、第1発電電動機MG1は、それがサンギア62から当該第1発電電動機MG1に入力されるトルクによって回転駆動されることによって発電可能である。リングギア64は、リングギアキャリア66を介して第2発電電動機MG2のシャフト(以下このシャフトを「第2シャフト」という)72に接続されている。したがって、第2発電電動機MG2は、リングギア64にトルクを出力可能であるし、リングギア64から当該第2発電電動機MG2に入力されるトルクによって回転駆動可能である。そして、第2発電電動機MG2は、それがリングギア64から当該第2発電電動機MG2に入力されるトルクによって回転駆動されることによって発電可能である。
【0162】
プラネタリギア63は、プラネタリギアキャリア65を介してクランクシャフト15に接続されている。したがって、プラネタリギア63は、クランクシャフト15から当該プラネタリギア63に入力されるトルクによって回転駆動せしめられる。また、プラネタリギア63は、サンギア62およびリングギア64に噛合されている。したがって、プラネタリギア63からサンギア62にトルクが入力されたときには、そのトルクによってサンギア62が回転駆動されるし、プラネタリギア63からリングギア64にトルクが入力されたときには、そのトルクによってリングギア64が回転駆動される。逆に、サンギア62からプラネタリギア63にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア63が回転駆動されるし、リングギア64からプラネタリギア63にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア63が回転駆動される。
【0163】
リングギア64は、リングギアキャリア66を介して出力ギア67に接続されている。したがって、出力ギア67は、リングギア64から当該出力ギア67に入力されるトルクによって回転駆動されるし、リングギア64は、出力ギア67から当該リングギア64に入力されるトルクによって回転駆動される。
【0164】
また、第1発電電動機MG1は、レゾルバ73を有する。レゾルバ73は、電子制御装置80のインターフェース85に接続されている。レゾルバ73は、第1発電電動機MG1の回転角度に対応する出力値を出力する。この出力値は、電子制御装置80に入力される。電子制御装置80は、この出力値に基づいて第1発電電動機の回転数(以下この回転数を「第1MG回転数」という)を算出する。一方、第2発電電動機MG2は、レゾルバ74を有する。レゾルバ74は、電子制御装置80のインターフェース85に接続されている。レゾルバ74は、第2発電電動機の回転角度に対応する出力値を出力する。この出力値は電子制御装置80に入力される。電子制御装置80は、この出力値に基づいて第2発電電動機の回転数(以下この回転数を「第2MG回転数」という)を算出する。
【0165】
また、第1発電電動機MG1は、インバータ90を介してバッテリ91に電気的に接続されている。したがって、第1発電電動機MG1が電力を発電しているときには、第1発電電動機MG1が発電した電力(以下この電力を「第1発電電力」という)は、インバータ90を介してバッテリ91に供給可能である。また、第1発電電動機MG1は、バッテリ91から供給される電力によって回転駆動可能であるし、バッテリ91から供給される電力によって当該第1発電電動機MG1に加えられる制御トルク(以下この制御トルクを「第1制御トルク」という)を制御することによってその回転数が制御可能に構成されている。
【0166】
また、第2発電電動機MG2は、インバータ90を介してバッテリ91に電気的に接続されている。したがって、第2発電電動機MG2は、バッテリ91から供給される電力によって回転駆動可能であるし、バッテリ91から供給される電力によって当該第2発電電動機MG2に加えられる制御トルク(以下この制御トルクを「第2制御トルク」という)を制御することによってその回転数が制御可能である。また、第2発電電動機MG2が電力を発電しているときには、第2発電電動機MG2が発電した電力(以下この電力を「第2発電電力」という)はインバータ90を介してバッテリ91に供給可能である。なお、第1発電電力は、第2発電電動機MG2に直接供給可能でもあるし、第2発電電力は、第1発電電動機に直接供給可能でもある。
【0167】
また、バッテリ91は、電子制御装置80のインターフェース85に接続されている。そして、バッテリ蓄電量(すなわち、バッテリ91に蓄電されている電力量)に関する情報が電子制御装置80のインターフェース85に入力される。また、インバータ90も、電子制御装置80のインターフェース85に接続されている。そして、インターフェース85を介して電子制御装置80から送られる指令によって、インバータ90から第2発電電動機MG2に供給される電力量および第1発電電動機MG1に供給される電力量が制御される。
【0168】
また、出力ギア67は、ギア列75を介してディファレンシャルギア76に接続されている。ディファレンシャルギア76は、ドライブシャフト77に取り付けられている。ドライブシャフト77の両端には、駆動輪78が取り付けられている。したがって、出力ギア67からのトルクは、ギア列75、ディファレンシャルギア76、および、ドライブシャフト77を介して駆動輪78に伝達される。
【0169】
アクセルペダル踏込量センサ101は、アクセルペダル100に接続されている。また、アクセルペダル踏込量センサ101は、電子制御装置80のインターフェース85に電気的に接続されている。アクセルペダル踏込量センサ101は、アクセルペダル100の踏込量に対応する出力値を出力する。この出力値は、電子制御装置80に入力される。電子制御装置80は、この出力値に基づいてアクセルペダル100の踏込量、ひいては、動力装置に要求されている出力を算出する。なお、第1実施形態の動力装置は、概して、内燃機関10と第1発電電動機MG1と第2発電電動機MG2とから構成されている。
【0170】
次に、第1実施形態の制御装置による機関トルク、第1制御トルク、および、第2制御トルクの制御の一例について説明する。なお、以下の説明において「機関トルク」とは「内燃機関のクランクシャフトから出力されるトルク」であり、「機関動作点」とは「機関トルクと機関回転数とによって規定される内燃機関の動作点または内燃機関の動作状態」であり、「要求出力」とは「内燃機関のクランクシャフトから出力される出力として要求される出力」であり、「アクセル踏込量」とは「アクセルペダルの踏込量」であり、「車速」とは「ハイブリッド車両の走行速度」であり、「燃料噴射量」とは「燃料噴射弁から噴射される燃料の量」である。
【0171】
第8実施形態では、要求出力をクランクシャフトから出力させたときに燃費が最も高くなる機関動作点が要求出力毎に最適機関動作点として実験等によって予め求められる。そして、これら最適機関動作点を機関トルクと機関回転数とによって規定されるグラフ上にプロットしてこれら最適機関動作点を結ぶことによって形成されるラインが最適機関動作ラインとして求められる。斯くして求められた最適機関動作ラインに関するデータが電子制御装置80に記憶されている。
【0172】
そして、機関運転中、アクセル踏込量と車速とに基づいて要求出力が算出される。そして、この算出された要求出力を内燃機関から出力させることができる最適機関動作ライン上の機関動作点が選択される。そして、この選択された機関動作点を規定する機関トルクおよび機関回転数がそれぞれ目標機関トルクおよび目標機関回転数に設定される。そして、この設定された目標機関トルクおよび目標機関回転数が達成されるように燃料噴射量、吸入空気量(すなわち、燃焼室に吸入される空気の量)、および、機関回転数が制御される。
【0173】
ところで、第2MG回転数が一定である場合、第1MG回転数が変化すれば機関回転数も変化する。別の言い方をすれば、第1MG回転数を制御することによって機関回転数を制御することができる。そして、第1MG回転数を「NMG1」で表し、第2MG回転数を「NMG2」で表し、機関回転数を「NE」で表し、リングギアの歯数に対するサンギアの歯数の比(すなわち、サンギアの歯数/リングギアの歯数であり、以下この比を「プラネタリギア比」ともいう)を「ρ」で表したとき、第1MG回転数と機関回転数との間には次式1の関係がある。
【0174】
NMG1=(NE−NMG2)/ρ+NE …(1)
【0175】
したがって、目標第1MG回転数を「TNMG1」で表し、目標機関回転数を「TNE」で表したとき、目標第1MG回転数と目標機関回転数との間には次式2の関係があることになる。
【0176】
TNMG1=(TNE−NMG2)/ρ+TNE …(2)
【0177】
そこで、第8実施形態では、要求出力に応じて選択される機関動作点に従って設定される目標機関回転数TNEと現在の第2MG回転数NMG2とを利用して上式2から目標第1MG回転数TNMG1が算出される。そして、斯くして算出された目標第1MG回転数TNMG1に対する現在の第1MG回転数NMG1の偏差(=TNMG1−NMG1)が算出される。そして、この算出された偏差が零になるように第1制御トルクが制御される。
【0178】
ところで、機関トルクを「TQE」で表し、リングギア(すなわち、駆動輪)に入力される機関トルク(以下この機関トルクを「リングギア入力機関トルク」という)を「TQEr」で表し、リングギアの歯数に対するサンギアの歯数の比(すなわち、サンギアの歯数/リングギアの歯数)を「ρ」で表したとき、リングギア入力機関トルクと機関トルクとの間には次式3の関係がある。
【0179】
TQEr=1/(1+ρ)×TQE …(3)
【0180】
すなわち、リングギア入力機関トルクTQErは、機関トルクTQEの一部である。したがって、リングギア入力機関トルクTQErは、要求駆動トルク(すなわち、駆動輪78に入力されるべきトルク)よりも小さい。そこで、第1実施形態では、要求駆動トルクとリングギア入力機関トルクTQErとの差に相当するトルクが第2発電電動機からリングギアに入力されるように第2制御トルクが制御される。斯くして、要求駆動トルクに等しいトルクがリングギアに入力されることになる。
【0181】
なお、上記説明は、第1発電電動機が発電機として機能し、第2発電電動機が電電動機として機能している場合の説明である。しかしながら、ハイブリッド車両に要求される条件によっては、第1発電電動機が電動機として機能したり、第2発電電動機が発電機として機能したり、第1発電電動機が発電機としても電動機としても機能しなかったり、第2発電電動機が発電機としても電動機としても機能しなかったりすることもある。また、第1実施形態では、内燃機関が運転されている。しかしながら、ハイブリッド車両に要求される条件によっては内燃機関が運転されないこともある。
【0182】
上述したハイブリッドシステムでは、機関運転が比較的頻繁に停止されることから、EGRガスの導入も比較的頻繁に停止される。このため、冷却水の温度(ひいては、EGR管の温度)が第1実施形態に関連して説明した好ましくない状況を発生させてしまう温度以下の温度になる可能性が高い。しかしながら、第8実施形態では、機関運転が停止され、EGRガスの導入が停止されたときに、冷却水が加熱されることから、第8実施形態には、機関運転が比較的頻繁に停止され、これに伴ってEGRガスの導入が比較的頻繁に停止される状況下においても、冷却部冷却水の温度を比較的高く維持しておくことができるという利点がある。
【0183】
なお、上述した実施形態では、EGRガスの導入の開始と同時に冷却水の循環が開始される。しかしながら、EGRガスの導入の開始から予め定められた時間が経過した時点で冷却水の循環が開始されてもよいし、EGRガスの導入の開始が予測された時点(すなわち、EGRガスの導入の開始の直前の時点)で冷却水の循環が開始されてもよい。
【0184】
また、上述した実施形態は、EGRヒータによって冷却水を加熱することによってEGR管を加熱する実施形態である。しかしながら、本発明は、EGR管を直接加熱するヒータがEGR管に配置され、このヒータによってEGR管を直接加熱する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0185】
10…内燃機関、30…吸気通路、40…排気通路、50…排気再循環装置(EGR装置)、51…排気再循環管(EGR管)、52…排気再循環制御弁(EGR制御弁)、53…排気再循環クーラ(EGRクーラ)、54…EGRヒータ、55…冷却部、56…冷却水循環通路、57…冷却水循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室から排気通路に排出される排気ガスを吸気通路に導入するための排気再循環管と、該排気再循環管内を冷却することによって該排気再循環管内を流れる排気ガスを冷却する冷却水を循環させる冷却水循環通路を備えた冷却手段と、を具備し、冷却水が前記冷却水循環通路を循環せしめられることによって冷却水の温度が低下せしめられ、吸気通路への排気ガスの導入の停止中に前記冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止される内燃機関の排気再循環装置において、
前記排気再循環管を加熱する加熱手段をさらに具備し、
前記冷却水循環通路内における冷却水の循環の停止中に前記加熱手段によって前記排気再循環管を加熱する内燃機関の排気再循環装置。
【請求項2】
吸気通路への排気ガスの導入の停止と同時に前記冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止される請求項1に記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項3】
吸気通路への排気ガスの導入の停止から予め定められた時間が経過した時点で前記冷却水循環通路内における冷却水の循環が停止される請求項1に記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項4】
燃焼室から排気通路に排出される排気ガスを吸気通路に導入するための排気再循環管と、該排気再循環管を冷却することによって該排気再循環管内を流れる排気ガスを冷却する冷却水を循環させる冷却水循環通路を備えた冷却手段と、を具備し、冷却水が前記冷却水循環通路を循環せしめられることによって冷却水の温度が低下せしめられる内燃機関の排気再循環装置において、
前記排気再循環管を加熱する加熱手段をさらに具備し、
前記排気再循環管を加熱する必要が生じたときには前記冷却水循環通路内における冷却水の循環を停止し、該循環の停止中に前記加熱手段によって前記排気再循環管を加熱する内燃機関の排気再循環装置。
【請求項5】
目標とする前記排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度として設定され、吸気通路への排気ガスの導入の停止中に冷却水の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったときに前記排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断される請求項4に記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項6】
目標とする前記排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度として設定され、吸気通路への排気ガスの導入の停止中に前記排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなると予測されたとき、あるいは、前記排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったと推定されたときに前記排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断される請求項4または請求項5に記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項7】
内燃機関の運転が停止せしめられたときに前記排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなると予測され、あるいは、前記排気再循環管の温度が目標排気再循環管温度よりも低くなったと推定される請求項6に記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項8】
目標とする冷却水の温度が目標冷却水温度として設定され、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったときに前記排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断される請求項4〜請求項7に記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項9】
目標とする冷却水の温度が目標冷却水温度として設定され、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなると予測されたとき、あるいは、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったと推定されたときに前記排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断される請求項4〜請求項8に記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項10】
内燃機関の運転が停止せしめられたときに冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなると予測され、あるいは、冷却水の温度が目標冷却水温度よりも低くなったと推定される請求項9に記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項11】
内燃機関が始動されることが予測されたときに前記排気再循環管を加熱する必要が生じたと判断される請求項4〜請求項10のいずれか1つに記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載の排気再循環装置を備えた内燃機関と、電動機と、を具備し、前記内燃機関から出力される動力と前記電動機から出力される動力との少なくとも一方を動力として出力するハイブリッドシステムにおいて、
前記内燃機関から動力を出力する必要がないときには前記内燃機関の運転が停止せしめられ、前記内燃機関の運転の停止中に該内燃機関から動力を出力する必要が生じたときに該内燃機関が始動されるハイブリッドシステム。
【請求項13】
前記冷却水循環通路内における冷却水の循環の停止と同時に前記加熱手段による前記排気再循環管の加熱が開始される請求項1〜請求項12のいずれか1つに記載の内燃機関の排気再循環装置。
【請求項14】
前記冷却水循環通路内における冷却水の循環の停止から予め定められた時間が経過した時点で前記加熱手段による前記排気再循環管の加熱が開始される請求項1〜請求項12のいずれか1つに記載の内燃機関の排気再循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−24070(P2013−24070A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157546(P2011−157546)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】